2010年01月08日

刑事コロンボ 愛情の計算 (コロンボの犬ファン必見)

コロンボの犬 


預かり拒否 - コピー.jpg


(要約文)

今週土曜日(2010年1月9日18:55〜)、NHK衛星放送BShiでアメリカの名作推理ドラマ「刑事コロンボ」「愛情の計算」が放送されます。

コロンボの可愛いバセットハウンドがじっくり観られる回です。



(本文)

今回の犯人は、あるシンクタンク(研究機関)の所長(刑事コロンボは犯人が最初からわかっている「倒叙物」です)。

彼の息子が、故人の論文を盗作したことを、ほかの研究員に暴露されそうになったために、その男を車でひき殺して殺害します。


犯人役のホセ・ファーラー(1950年『シラノ・ド・ベルジュラック』でアカデミー主演男優賞受賞、多数の名作に出演。俳優のジョージ・クルーニーは甥にあたる【DVD『刑事コロンボ』参照】)の、知的で尊大ながら、父性を秘めた演技は味わい深いですが、正直、推理ドラマの出来栄えとしては、コロンボの作品群の中では「普通」といったところです。


※ 補足……僕的「刑事コロンボ三大傑作」と思っている作品については、過去の記事「刑事コロンボ 祝砲の挽歌」をご参照ください。


(同じく三大傑作のひとつと勝手に思っている「別れのワイン」は2010年2月1日にBS2で21:00から放映、しかも終了後の22:35〜23:00に、脚本家三谷幸喜さん【和製コロンボともいわれる『警部補古畑任三郎』を手がけた】らがコロンボについて語るそうです。詳しい情報は下記のURLをご覧ください。http://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/popup01/index.html


ただ、この「愛情の計算」、コロンボの飼っているバセットハウンド(靴のブランド「ハッシュパピー」でお馴染みの、耳の長い、口元や体の皮膚のたるたるした、茶黒白のへにょんとした犬)が、よくストーリーにからんで、コロンボの犬ファンのわたしには(他にどのくらい同好の士がおいでか存じ上げませんが)、何度見ても見飽きない作品となっております。


ウィキペディア(ネット百科事典)の「刑事コロンボ」情報によると、この犬はコロンボ役のピーター・フォーク氏の本当の飼い犬だそうです。


だから、プロの犬みたいに細かい演技をするわけではない。


のん気に尻尾をパタクラ振ったり、コロンボの顔をペタペタ舐めたり、置いてきぼりが淋しいと、ウォウォとゆるく吠えて、コロンボを呼んだりする程度です。


コロンボに抱きあげられて連れて行かれるときも、はしゃぐでも暴れるでもなく、てろーんと、コロンボの歩調に合わせて前後足耳を揺らしているだけ。


この自然体が、マニア(=わたし)にはたまんないのです……。


というのも、以前、イギリスの人気司会者ポール・オグレディ氏と一緒に出演する彼の愛犬たちについてお話しした際にも書かせていただきましたが、これだけくつろいだ気配というのは、常日頃可愛がられて、飼い主と一緒なら、どこにいても絶対安心と信じ切っている犬にしか醸せないものだからです。


その信頼関係を体現したゆるキャラっぷりが、ハキハキと芸達者な犬とは別の魅力。


それにしても、誰のアイディアか存じませんが、ヨレヨレのレインコートを着てマイペースに動き回るコロンボと、コロンボの埃っぽいオンボロ車(これ、古すぎて後にヴィンテージものになるそうですが)、それに乗ったへにょ犬バセット(「愛情の計算」時は、とくに名前は無い、というか、どう呼んでもどうせ来ないから保留状態らしい【のちに、『ドッグ』と、正式だかなんだかわからない呼び方になる】)は一体化しているように絶妙の存在感です。


社会的成功者である犯人たちの、不遜で華やかなオーラや、ファッション、邸内に対して、異彩を放ってものすごく生える。


セレブリティの虚飾と、犯罪者としての張りつめた嘘の中に、のらりくらりと、しかし着実に切り込んでいくコロンボのキャラクターに、あの犬は実にぴったり調和しているのです。


余談ですが、「バセットハウンドと警察関係者」という取り合わせについて、別の作品を思い出すシャパニメーションファンの方もいらっしゃると思います。


押井守監督の世界的に有名なアニメーション映画、『攻殻機動隊(士郎正宗原作)』

(近未来、肉体と頭脳の一部を機械化した人々が多くを占める社会を描いた作品。

現実と仮想世界が交錯する世界観と、スタイリッシュなアクションは、映画『マトリックス』に大きな影響を与えたと言われている。)

の続編『イノセンス』では、メインキャラクターである、公安のバトーの愛犬が、やはりバセットハウンド。


ふちゃちゃちゃ、ぽてっぽてっと駆け寄る、爪と足音まで丁寧に描写されて実に魅力的です。


※「イノセンス」DVDパッケージのイラスト


DVDパッケージ.JPG

(うろ覚えで申し訳ないのですが、バセットハウンド作画担当の人に、押井監督が絵コンテの段階辺りで「ものすごく可愛く」というような指示を出されていた記憶があります。


あれだけ緻密で、謎めいた哲学性を持つ作品に、そのシンプルで主観たっぷりの指示のギャップが、なんか面白かった。)


(余談……今回押井守監督の公式HPを拝見したら、最初のページが、すばりバセットハウンドでした)


押井守監督ご自身が、バセットハウンドを飼っていらっしゃるそうで、しかも、犬を家族とするたいていの(含、わたし)人間がそうであるように、ご自分の犬にそりゃもうメロメロのようなので

「なぜバトーはバセットハウンドを飼っているのか?」

ということについては、第一に、ご自分が好きだからかなのかもしれません。


しかし、あの作品も、無機質な電脳社会で、現実と仮想との極めて曖昧な狭間で生きざるをえないような人々の中で、ふにふにずっしりと、温かくくつろいだ風情のバセットハウンドは、生き物のたしかで優しい手ごたえを感じさせて象徴的です。


コロンボとバセットが、てろんとゆるやかな地続きのような存在なら、機械化された強靭マッチョな義体と電脳を持ち、重厚な凄みを放つバトーと彼のバセットは、対極的な存在といえるかもしれません。


そして、バトーはその犬をどこまでも大切にしている。


多分どちらの作品も、犬を出すにしても、バセットハウンドでなかったら、作品の味わいは全然違ってきたでしょう。


全っ然個性の違う作品の、偶然の一致に過ぎないのですが、さすがどちらも世界的名作、単なる「家族出演」とはならず、実に効果的に、作品の特性と犬の個性を活かした登場のしかたをさせているな、と思ったので付け加えてご紹介させていただきました。


ともあれ、刑事コロンボ「愛情の計算」、コロンボ作品屈指の犬活躍度(特に捜査上ためになることをするわけではないけれど、作品内で効率よく笑いをとるという意味)なので、ご覧になってみてください。ヒジョーになごみます……。


「刑事コロンボ」のNHKの公式HPは以下のとおりです。



(補足:この回のある名場面について追加ご紹介記事を書かせていただきました。よろしければ併せてご覧ください。追加記事はコチラです。)


 読んでくださってありがとうございました。
posted by pawlu at 15:12| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年11月18日

刑事コロンボ 祝砲の挽歌


(要約文)
明日(2009年11月19日)、NHKのBS2午後9時〜10時40分、アメリカのドラマ「刑事コロンボ」シリーズの「祝砲の挽歌」が放映されます。
僕的「刑事コロンボ」三大傑作の一つ、とてもオススメです。

陸軍幼年学校の校長が、学校の大砲の暴発事故を装い、理事長を殺害する事件に、刑事コロンボが挑みます。

校長に扮するパトリック・マクグーハン(コロンボシリーズの常連の一人)はこの演技でエミー賞を受賞しました。

己の信念を貫こうとする軍人の、冷徹ながら凄みのある姿と、飄々としているようで眼光鋭い刑事コロンボ(ピーター・フォーク)。

互いの静かな頭脳戦は大人の魅力に溢れています。

NHKの「祝砲の挽歌」番組情報ページは下記のアドレスです。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2009-11-19&ch=12&eid=5444

NHKの「刑事コロンボ」シリーズのHPは下記のアドレスです。
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/



(本文)

英語のリスニングのために、海外番組を色々探して観ていますが、やはり個人的に一番面白いのは「刑事コロンボ」です。

(いちばんわかりやすいのはアンシア・ターナーさんの家事番組。
【これも明日木曜放映。(2009年11月19日NHK教育午前11時半〜55分)】
観てると、さすがの無精者のわたしでも掃除したくなりますし【笑】)

有名なドラマですが、一応コンセプトをご説明させていただきます。

コロンボはロスの腕利き警部補。

ヨレヨレのレインコートにボサボサ頭の冴えない風貌、一見のらくら雑談ばかり(「うちのカミさん」の話題多し)したり、どうでもいいことにこだわっているように見えるけれど、それをきっかけに、犯罪の真相をえぐっていきます。

(犯人はたいてい権力者や大富豪。ゴージャスな衣装や屋敷とインテリな態度が、コロンボと好対照)

わたしは今までイギリス英語を勉強していたんで、違うじゃんと言われればそこまでなのですが、現時点では
「発声がしっかりしている」
「セリフがカッコイイ」
作品なら、なんでも構わないのが現状で……。

大雑把ですみません。もっと英語巧者なら、どこそこアクセントとかわかるのでしょうが。

(しかし、このシリーズはコロンボの小池朝雄さんを筆頭に、豪華声優陣の名演技、セリフの洒落た邦訳と、吹き替え版も超面白いので、そっちに引き込まれてしまうこともしばしば……【もはや英語の勉強じゃないではないか。】)

そんなわけですっかりハマってしまったのですが、秀作ぞろいの「刑事コロンボ」シリーズの中でも、(すみません、まだ全部観てないので、現時点で、ですが)個人的に傑作だと思っているのは以下の三本です。

1,「別れのワイン」

(犯人はワイン製造会社の経営者。手塩にかけた会社を売却しようとする弟を殺害。)

2,「忘れられたスター」

(犯人は往年の名女優。自分の再起を賭けた主演ミュージカルへの援助を断る富豪の夫を殺害。)

3,「祝砲の挽歌」

いずれも、大人の人生の哀愁を感じさせます。

全部観てから言えとお叱りを受けそうですが、この三本を名作に挙げるファンの方は多いのではないかと思います。


それはそれとして、明日(2009年11月19日【木】)放映の、「祝砲の挽歌(放題もいいですね……原題は『By dawn's early light』です。)」について、書かせていただきたいと思います。
(以下ややネタバレなので、大丈夫な方だけお読みください)

陸軍幼年学校(男子校)という、きびっっしー軍人養成カリキュラムの学校の校長ラムフォード大佐は、理事長ヘインズと対立、経営難にある学校を、「もはや軍隊ごっこは時代遅れ」と、普通の共学短大に変えようとする理事長ヘインズを、大砲の暴発事故を装い殺害します。

一見、つむじからつま先までガチガチに厳格で、規律で生徒を支配する冷たい人間のように見えるラムフォード大佐ですが(ありがちなドラマに出てくる悪役みたいにですね)、実は彼はそれだけの人間ではありません。

この作品を僕的三大名作にならしめたのは、このラムフォード大佐の、人間としての意外な奥行きと、それを見事に演じきったパトリック・マクグーハン氏の素晴らしい演技力です。

(彼は、同シリーズの「仮面の男」や、その他の回でも登場するそうです。
コロンボシリーズの面白いのは、案外こうして複数回、まるっきり別の人間として犯人を演じる人がいるということ。

【和製コロンボといわれる『警部補古畑仁三郎(田村正和氏の当り役のひとつ)』で、キムタクが二度登場していたように。あるいは「寅さん」シリーズのマドンナ女優たちに近いとも言えるかもしれません】。

そしてその演じ分けの素晴らしさたるや圧巻です。

ほかにも、脇役で同じ人が違う役柄を演じていることが結構あるんで、二度観するとこれまた面白い。)

冒頭、額に汗をにじませて、入念に砲弾に細工をするうつむき顔からして、「悪事を企むアブナイ人」ではなく、「ただならぬもの」を漂わせていて目を惹きつけます。


この校長ラムフォード大佐の殺害動機、それは自分の立場の保身ではなく、祖国の安全のために、いまだ軍備は必要であり、そのために学校を存続させねばならないという、強い使命感です。

(なので、もし、このラムフォード大佐を、リアルに若い人たちの教育者として考えたら、かなりとんでもないです。
彼の使命感は「国防のための強い軍隊」に向けられていますから、生徒個人個人に対してはかなり非情な部分も。)

しかし、彼の犯罪は、コロンボの粘り強い捜査と、ある「時代の変化」により(それがなんであるかは、是非ごらんになってみてください。それに直面せざるをえなくなったときの大佐の姿が忘れがたいです)、ジワジワとほころびをみせてゆきます……。

うとまれることを承知で、若者たちに規律を叩き込もうとする彼は、彼の中の「正義」や、それを貫くためにとった手段はどうであれ、
「時流に乗り遅れた冷たい乱暴者」
と片付けられない、物寂しい孤高の品をかすかに漂わせています


わたしも、若いころ、あんな厳しい学校に入学することになったら

「無理×3!!」

と500回くらい言って(トータル1500回?)、まあ入学後二時間くらいで、いろいろ不適格で放り出されるでしょう。
(そもそも入学できないでしょうが)

あの校長ラムフォード大佐についても、陰でメーメー、違ったブーブー言う(間違えないだろう)でしょうが、いい加減大人になった今は、長年信念を貫き、覚悟を決めて、憎まれ役を引き受けようとする人に対して、それが自分の価値観と相容れようがいれまいが、やはりなにかしらの敬意を感じずにはいられません。



のちに、別の作品(「死者のメッセージ」老推理小説作家のエピソード、これも名作です)で、コロンボは、

「ときには犯人でも好きになることがある(犯した罪は許せないが、人間性や知性に好感を抱く部分もあるという意味)」

というようなことを言っていますが、このラムフォード大佐は、コロンボがそう思ったタイプの犯人の一人なんじゃないかなと思います。

捜査中二人が、

「もしも人が人を殺すということが無かったら」

という観点に基づいて、お互いの仕事について話を交わす場面は、ひそかに敵対関係にありながら、不思議な共感が芽生えているような雰囲気があります。

(このときのラムフォード大佐の、ちらりと人間味をのぞかせる演技とセリフ、それを受けたコロンボの間合いは絶品です。)


そんなわけで、味のある一作、いままでコロンボを観ていなかった方たちも、一話完結なのでお気軽にご覧になってみてください。


(再掲載)
NHKの「祝砲の挽歌」番組情報ページは下記のアドレスです。
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2009-11-19&ch=12&eid=5444

NHKの「刑事コロンボ」シリーズのHPは下記のアドレスです。
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/columbo/
posted by pawlu at 17:58| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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