2022年01月27日

『刑事コロンボ』シリーズ最高傑作「別れのワイン」放送

(コロンボと犯人エイドリアン〈ドナルド・プレザンス〉)
別れのワイン 一緒にワインを飲む - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

 『刑事コロンボ』第19話「別れのワイン」は、ワイナリー経営者エイドリアンが、大手ワインメーカーへのワイナリー売却を阻止するために、オーナーで異母弟のリックを殺害するストーリー。

 名犯人エイドリアンのワインへの情熱と、それを捜査の中で知ったコロンボとエイドリアンの不思議な心の交流が描かれ、その品格と情緒で、全シリーズ中最高傑作とも言われている作品。


【NHK HP内あらすじ】
何度見ても新しい!ミステリードラマの金字塔。ワイナリーを経営するカッシーニ兄弟の弟が遺体で見つかる。コロンボは犯行をどう暴くのか?視聴者アンケートで人気第1位!

異母弟リックが所有するワイナリーの経営をまかされ、ワイン作りにすべてを捧げるエイドリアン。しかしてっとり早く金が欲しいリックは、大手の酒造会社にワイナリーを売ると宣言。激高したエイドリアンは、リックを激しく殴打。気を失った彼をワインセラーに運び、空調を切って置き去りにしたままニューヨークへと旅立った。数日後、帰宅したエイドリアンは遺体を海へ投げ落とし、ダイビング中の事故に偽装する。

 ワインを心から愛し、ワインのほかは愛さないエイドリアンの、気品と傲慢のはざまの魅力と、それを表現したドナルド・プレザンスの演技力は必見だ
別れのワイン エイドリアン・カッシーニ - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)


※補足:ドナルド・プレザンスが出演する名画『大脱走』が2022年2月放送予定

大脱走 (アルティメット・エディション) [DVD] - スティーブ・マックィーン, ジョン・スタージェス
大脱走 (アルティメット・エディション) [DVD] - スティーブ・マックィーン

BSプレミアム 2022年2月28日(月)午後1時00分〜3時53分

第二次大戦下、ドイツの捕虜収容所からの脱走を計画した兵士たちの物語。スティーヴ・マックィーンのバイクでの脱走シーンが有名。

プレザンスは兵士たちの国外脱出のために偽造パスポートを作る贋作師コリンを演じている。


20221月現在、以下で、「刑事コロンボ」が配信中

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『刑事コロンボ』シリーズ一覧 - (吹替版)

『刑事コロンボ』シリーズ一覧 -字幕版

刑事コロンボ傑作選 別れのワイン/野望の果て [Blu-ray] - ピーター・フォーク
刑事コロンボ傑作選 別れのワイン/野望の果て [Blu-ray] - ピーター・フォーク


(画像引用動画)


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2022年01月21日

刑事コロンボ「毒のある花」(脇役悪徳社長にホラー映画のレジェンド、ヴィンセント・プライス登場)

(コロンボとラング社長〈ヴィンセント・プライス〉)

コロンボとラング ヴィンセントプライス - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(コロンボと犯人のビベカ〈ベラ・マイルズ〉)

コロンボとヴィヴェカ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

「刑事コロンボ」「毒のある花」は、化粧品業界の社長であり、その美しさで自ら広告塔も務めるビベカが、会社の命運を左右するような化粧クリームの機密を、ライバル会社に持ち込もうとした研究員(彼女の元愛人)を殺害するストーリー。

 放映情報 BSプレミアム 1月22日(土)午後4:46〜午後6:00

 ビベカの会社の吸収を狙うライバル会社社長ラングを、蝋人形作家の凶行を描いた「肉の蝋人形(1953年版)」やエドガー・アラン・ポー原作「アッシャー家の惨劇(1960年)」などに出演した、クラシック・ホラー映画のレジェンド、ヴィンセント・プライスが演じている

肉の蝋人形(1953)(字幕版) - ビンセント・プライス, フランク・ラブジョイ, フィリス・カーク, キャロリン・ジョーンズ, チャールズ・ブチンスキー/チャールズ・ブロンソン, アンドレ・ド・トス, クレ−ン・ウィルバー, ブライアン・フォイ
肉の蝋人形(1953)(字幕版) - ビンセント・プライス, 


 ラングは金のためならなんでもやる男で、ビベカの会社の研究員カール(マーティン・シーン)から、クリームの機密を買い取ろうとしていた。


 カールがビベカに殺害された後、聞き込みに来たコロンボに、知らぬ存ぜぬを通そうとしたが、カールの遺品にラング直通の電話番号があったことを知らされると、なぜそれを先に言わないと憮然する理不尽な人物。

(コロンボの聞き込みにしらばっくれるラング〈英語音声〉)


 ビベカに「この50年間一度も真実を語ったことが無い男」と軽蔑され(クリームより前にも、ビベカの会社からアイシャドウの機密を盗んで自社製品としてヒットさせている)、自分の秘書のシャーリーにも非常に嫌われている人物。(このためシャーリーはひそかにビベカにラングの情報を流している)


(実に見事な「いけすかない顔」)

ラング(ヴィンセントプライス)悪人顔 - コピー.jpg

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(コロンボもよく思っていなさそう)

ラングを見るコロンボ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 このひたすら「食えない男」の役を、ヴィンセント・プライスのような大御所が演じたことが意外だが、ラングが完璧な「卑劣で強欲な人間」のために、ビベカがなんとしてもラング社への吸収を回避しようとして、結果殺人まで犯したこと、シャーリーがビベカ側のスパイになっていることに説得力が出ている。


(ラングと秘書のシャーリー) 

シャーリーとラング(ヴィンセントプライス) - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

 冒頭、ファッションショーで会ったビベカとラングの、遠目には和やかだが、猛烈にけん制し合っている会話シーンは迫力がある。

毒のある花 ビベカとラングリサイズ - コピー.jpg

ラングの嫌味リサイズ - コピー.jpg

ビベカの皮肉リサイズ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

Best of Vincent Price | Columbo

 自分に魅力的な見せ場がある「もうけ役」でなくても、名優が脇役として犯人とぶつかると、その火花に照らされて、犯人の個性の輪郭が際立つのだ。


(この点、ロディ・マクドウォールが犯人役の「死の方程式」で、軽薄な甥を社から追放しようとして殺害される叔父を演じたベテラン俳優、ジェームズ・グレゴリーも素晴らしかった。)

(犯人ロジャー〈ロディ・マクドウォール〉と叔父バックナー〈ジェームズ・グレゴリー〉の口論 英語音声)

 ところで、ヴィンセント・プライスは、マイケル・ジャクソンのファンにとっても、重要な人物だ。

スリラー - マイケル・ジャクソン
スリラー - マイケル・ジャクソン

 世界最大のヒット曲「スリラー」

 彼はこの有名な映像の、ゾンビが蘇るシーンのまがまがしい語りと、結末の不気味な笑い声を演じている。

(ヴィンセント・プライスの語りのシーン)

 ヴィンセント・プライスが1987年、13日の金曜日のトークショーで、その語りと笑いをテレビではじめて再現している映像が、2021年にネット上であらためて話題となった。

 ゲストとしてスタジオにエレガントに座っているヴィンセント・プライスは、ホラーどころか、悪徳社長ラングを演じたことさえチラとものぞかせないような、にこやかな紳士だ。

トークショーのヴィンセントプライス - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 しかし、司会者の「あのスリラーの声を演じてほしい」という頼みに了解すると、照明が落とされ、音楽がはじまった瞬間、大きな影を生む彫りの深い顔に、悪魔の笑みを浮かべて、地獄の底から湧き上がるような声を響かせる。

スリラー語り佳境ヴィンセントプライス - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

スリラーの笑い声 ヴィンセントプライス - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 その切り替えと迫力に、観客は拍手喝さいを送っていた。

(悪魔の高笑いをしていたヴィンセントの声と表情が、拍手に包まれ、スタジオが明るくなるにつれ、人間に戻っていくのも印象的)

スリラー演技終了の切り替え - コピー.jpg

Image Credit:Youtube



(トークショーでスリラーを再現するヴィンセント・プライス)

 動画を観た人々もこの圧巻の演技に賛辞を送り、海外掲示板には、ヴィンセント・プライスに会ったことがある人物から聞いた話として(恐ろしい役を数多く演じていたが、本当の彼は)「『後ろから背中を刺されるような詐欺師ばかりの業界で、彼は正真正銘の良い人であり、彼以外にそんな人と出会ったことはなかった』と教えてもらった」と書き込んでいる人もいた。(らばQより)

 また、2013年には、イギリスの代表的ハードロック・バンド「ディープ・パープル」も、恐怖の象徴として、彼のクラシック・ホラー映画をオマージュした曲、ずばり「ヴィンセント・プライス」を発表している。

(最後の一瞬までひねりが効いていて、ハードロックが好きな方ならおすすめのMVだ。)

 ヴィンセント・プライスは、その唯一無二の演技と声で、今も、クラシックホラーを愛する人々を魅了し続ける、不滅のアイコンなのだ。


 当ブログ関連記事 

コロンボ史上最もセクシーな被害者(刑事コロンボ「毒のある花」より、若き日のマーティン・シーンの名演技)


20221月現在、以下で、「刑事コロンボ」が配信中

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刑事コロンボ傑作選 二つの顔/毒のある花 [Blu-ray] - ピーター・フォーク
刑事コロンボ傑作選 二つの顔/毒のある花 [Blu-ray] - ピーター・フォーク

(画像出典動画)英語音声


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参照記事:

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2022年01月14日

刑事コロンボ「二つの顔」(名優マーティン・ランドーと、コロンボの天敵ペックさん登場)

(コロンボと双子の容疑者〈ともにマーティン・ランドー〉)

(料理研究家のデクスター〈弟〉)

二つの顔デクスターの料理ショーに出演したコロンボ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube 

(銀行勤務のノーマン〈兄〉)

二つの顔 ノーマンの職場に行く - コピー.jpg

Image Credit:Youtube 


 「二つの顔」(1973年3月放送)富豪の叔父の財産を狙った甥が、若い女性との結婚を控えた叔父を感電死させるストーリー。

 一見心臓麻痺と思われた死に疑問を抱くコロンボ。

 だが、容疑者となる甥は二人いて、しかも双子だったために、コロンボの捜査は混乱する。

 映画「北北西に進路をとれ」(59)、大人気ドラマシリーズ「スパイ大作戦」(66〜73)などに出演、その後も名優として長く活躍したマーティン・ランドーが、性格の異なる双子の兄弟を一人二役で演じた。

 最初から犯人がわかる「コロンボ」シリーズには珍しく、犯行シーンで犯人が登場しているのに、視聴者にも双子のどちらの犯行かわからないという、ひねりの効いた展開になっている。


20221月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能

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(NHK HP内あらすじ)BSプレミアム2022年1月15日午後4:46放送

何度見ても新しい!ミステリードラマの金字塔。結婚式前日に殺された富豪。容疑者は遺産相続人の双子のおい?料理番組にコロンボが出演するコミカルなシーンが楽しい。 孫のように若いリサとの結婚式を控えた富豪パリスの遺体が発見された。入浴中、電源を入れたままのミキサーを放り込まれて感電死したのだ。彼の死は心臓まひによるものと判断されかけるが、コロンボは殺人とみて、遺産相続人である双子の甥(おい)に目をつける。仲が悪くお互いに罪をなすりつけあう双子の兄弟のうち、どちらが真犯人なのか!?


見どころ1 料理ショー(二人の名優のアドリブ合戦)

 容疑者の一人、デクスターが料理研究家のため、捜査のためにスタジオに行ったコロンボ。

 生放送で料理番組を撮影中だったデクスターは、コロンボを指名して一緒に料理を作り始める。

 デクスターにエプロンを着せられて、アシスタントを務めるコロンボは、緊張で作業中「あ〜…」としか言えない。

 (確かに料理をしながら、カメラに向かって流ちょうに話すというのは、できる人とできない人がいるだろう)

 しかし、デクスターの

「『あ〜…』なんです?アハハ」

という、軽妙な「いじり」と、おかげで「温まってきた」コロンボの

「こりゃ失敗しちゃった。いいですよね見えなかったから」

「(こぼしちゃったのは)あんた(デクスター)のせいですよ」

という掛け合いで、観客は爆笑、収録は大成功だった。

(二人ともものすごくいい笑顔〈注、容疑者と刑事〉)

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Image Credit:Youtube


 『刑事コロンボ完全捜査ブック』(p.67)によれば、この収録シーン、「(「コロンボ」には)珍しくもすべてアドリブだった」そうだ。

 楽しい場面だが、互いの呼吸を捉えて盛り上げるピーター・フォークとマーティン・ランドーの華麗なアドリブ合戦でもある。

 そして、このシーンは、ドラマ全体にも大切な役割を果たしている。

 実は、生活の派手なデクスターは、堅実な銀行員のノーマンよりも犯人の可能性が高いとコロンボに思われていた。

(デクスターの私生活については、彼と不仲のノーマンが告げ口していた)。

 この収録直後、コロンボにハンドミキサー(犯人が感電死に使った凶器)の所在に聞かれたデクスターは、コロンボがノーマンの差し金でここに来たとすぐに気づく。

 そして、兄にも叔父の金を欲しがる動機があると言い、コロンボをノーマンの「動機」の場所に連れていく。

 「番組収録」から、「料理器具の話題に絡めた捜査」、そして「兄弟の深刻な確執」へのスムーズな展開。

 徐々に緊張感を増していくストーリーの前に、コロンボとデクスターの大笑いを入れるギャップ。

 場面展開の意味でも、ユーモアとシリアスの緩急で視聴者を疲れさせないという意味でも効果的な、陰の名場面なのだ。

(コロンボとデクスターの料理ショーと、収録直後の聞き込み)※英語音声


見どころ2 最強の敵、ペックさん

(コロンボとペックさん)

葉巻の灰を床に落とすコロンボ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 「二つの顔」には、ある意味、全シリーズ中で最もコロンボを苦しめた人物が登場する。

 犯人ではない。被害者の屋敷を管理していた女性「ペックさん」だ。

 この女性は、屋敷と、雇い主であった被害者と、双子の甥を愛し、屋敷はちりひとつないほど完璧に整えている。

 遺体発見現場である屋敷のジム(犯人が心臓発作に見せかけるためにそこの運動器具に遺体を座らせた)にやってきたコロンボは、うっかり葉巻の灰を落としたことがきっかけで、ペックさんに、そりゃもう視聴者も引くほど猛烈に怒られ、以後、おっかなびっくり捜査しなければならなくなる。

 別にコロンボに悪気があったわけではないのだが、通報が遅い時間で寝起きだったのが災いした。

二つの顔 寝起きコロンボ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 コロンボの寝起きの悪さは「溶ける糸」でも発揮されていて、コーヒーが無いか探し回った挙句、ゆで卵の殻をむくために、凶器の工具を使うという信じられない行為に走り、現場に殻を散らかすなと捜査担当者に叱られている。

 それに比べれば葉巻の灰などまだマシなのだが。

(ジムの床なので「家の中」感が薄かったのかもしれない)

 ペックさんからすれば、つい先ほど、「今後も屋敷のことはあなたに頼む」と言って微笑んでいた大切な「旦那様」が突然帰らぬ人となり、呆然としている最中。

 まだ、「旦那様」の死を受け止められていないのに、旦那様の亡骸があった運動器具に、いかにも眠そうによりかかった男が、葉巻の灰をぽんぽんと指ではじいて床に落としたのだ。

「あなた、ここをなんだと思っているんですか。だらしない。おうちでそんなことしますか?」

ペックさんにとって、まだここは「大切な旦那様のお屋敷」だった。

それを、絶望的に寝起きが悪いとはいえ、いちいち感情移入していたら仕事にならないとはいえ、いきなり「事件現場」にして、雑に扱ったのは、やはりコロンボがよくない。

(この台詞を思い出した)

公平にみて君にも反省すべき点があるよ(3巻ママをとりかえっこ) - コピー.jpg


 この後、慌てて床をきれいにしようとして、「旦那様の大切な」水差しまで割ってしまったコロンボは、捜査の一挙一動を彼女に監視されるようになる。


(ペックさんの激怒)


 ドラマの中でコロンボに腹を立てるのはペックさんに限ったことではないが、その多くが犯人で、コロンボも、もうその人物が犯人だと思っていることが多い。

 だから相手をいらつかせても、「あともうひとつだけ」と、のらくら食い下がれるし、なんならわざと「怒らせて」ペースを崩そうとしている節すらある。

 また、警察側の人間はコロンボが「いい加減でも優秀な刑事」なことをよく知っている。

 (そうでなければ、殺人現場に卵の殻なんて散らかしたら始末書ものだろう)

 しかし、ペックさんは犯人でも警察側の人間でもない。

 そして、コロンボは女性に強く出られない性格だ(犯人相手ですら)。

 こうなるとペックさんにとってのコロンボは「ただひたすら失礼でだらしのない人間」で、コロンボにとってのペックさんも「犯人だから怒らせてもいい」わけでも、「警察側の人間だから大目に見てもらえる」わけでもなく、落ち度のない女性を威圧するのは彼の流儀ではないので、平謝りする以外、なすすべがないのだ。

 後日、高級な銀食器に葉巻を放り込んで再びペックさんの逆鱗に触れたコロンボ(弁解「灰皿かと思って……うちにあれとそっくりものがあるもんで」(←火に油))は、困り果ててついに彼女に抗議する。

ペックさん。

あたしはハナからあなたの気に障るようなことばかりやってきました。

あんたが宝のように思っている屋敷にずかずか入りこんできたんだから、嫌われるのも無理はないでしょうけれども、あたしにだって感情はありますよ。

そりゃあ、だらしがなかったのはお詫びします。

こいつはどうもあたしの悪い癖で、長年治そう治そうとは思っているだが、どうも治らない。つまり生まれつきだらしがないらしいんですよ。

しかし、あんたに不作法を働いたことはありませんよ。

あたしゃぁ、あんたの長年のご主人を殺した犯人を一生懸命探そうと来ているのに、そのあたしを目の敵にして責めるんじゃあ、そりゃあ筋が違うんじゃないでしょうかね。

(コロンボのペックさんへの謝罪と抗議)

 この謝罪と抗議に、ペックさんはようやく少し態度を軟化させ、「旦那様のお好きだった」クッキーとミルクを出してくれる(残念ながら長くはもたなかったが)。

 このやり取りではコロンボが自分自身について本音で話している。

 他の回でも、コロンボは、「うちのカミさん」や多彩な親戚についてなど、捜査中事件に関係の無い話をするが、その多くが、犯人たちとのかけひきの中のもので、本当のことか(親戚に至っては実在するかどうかも)わからない。

 そのコロンボが、自分にも怒られれば傷つく感情があることや、自分のだらしなさを治そうと努力しているけれど、どうにも治らないということなどを打ち明けている。

 逮捕を狙う犯人相手なら、どんなに怒られようと「あらあら、ごめんなさいね」くらいで済ませて傷つきもしないし(実際、「殺人処方箋」では、犯人フレミングから名士のコネを用いて捜査から降ろすと凄まれても、柳に風で受け流している)、引き続いてだらしなさを戦略的に用いそうだが、ペックさん相手ではそういうわけにはいかないからだろう。

 「一見さえないけれど有能」と、犯人も警察も認めているコロンボが、本当に自分の弱点を認めてさらけだしている印象的なシーンだ。

 だが、コロンボが被害者はジムではなく浴室で殺されたと気づいたのは、彼が眠気覚ましに顔を洗おうと勝手に屋敷の浴室のタオルを使ったことと、ペックさんがそのタオル一枚に至るまで厳重に管理していたことがきっかけだった。

 コロンボのだらしなさとペックさんの神経質なまでの几帳面さは、捜査中常に衝突してきた(というか、あの抗議までは、コロンボが防戦一方だった)が、最終的には、この二人の性格が事件を解決に導いた。

 しかし、それはペックさんが旦那様と屋敷に負けないくらい、愛情を傾けた人間が犯人だったという結末だった。

 物語の終わり、犯人が連行される瞬間、コロンボはペックさんの手を取り、支えるようにして彼女を連れていく。

 コロンボに投げつけられ続けた彼女の怒りが、屋敷の一家への愛情のためだったと知っているコロンボの優しさがそうさせ、ペックさんもその手を振り払わずに一緒に歩いていく。



「あともう一つだけ」マーティン・ランドー主演の名作映画「やさしい嘘と贈り物」


 2008年、マーティン・ランドーが主演した「やさしい嘘と贈り物」。

 ひとりで暮らしているロバート(マーティン・ランドー)が、隣に引っ越してきた素敵な女性メアリーに恋をする物語だ。

 ロバートとスーパーマーケットを共同経営する若き友人マイクのサポートも受けながら、ロバートはメアリーと素晴らしい時間を過ごす。

 恋をした人の、世界が明るく色づいていく感覚を、雪やイルミネーションがまぶしいクリスマスの景色が彩る、美しい映画だ。

(映画トレーラー ※英語音声)

 「二つの顔」で独特の大きくはっきりした目鼻立ちに凄みがあったマーティン・ランドー。

 この作品では、その大きな目を子犬のように輝かせ、顔いっぱいに笑うチャーミングな紳士を演じてくれている。

 (本当に素敵な年齢の重ね方をなさった)
二つの顔 デクスターアップ - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)
デートに誘われたロバート - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)
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(Image Credit:Youtube)


 日本公開当時、公式宣伝でもネタバレの多かった作品で(それでもとても美しい作品だが)、やはりそれはもったいないので、是非、何も先入観無しにご覧いただきたい。本当に名作だ。



(映画トレーラー、ロングバージョン)


(マーティン・ランド―ご本人が「スパイ大作戦」ほか過去の出演ドラマのダイジェストを紹介している動画)



【ディスクと配信情報】※一部。2022年1月14日時点情報

刑事コロンボ傑作選 二つの顔/毒のある花 [Blu-ray] - ピーター・フォーク
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第17話「二つの顔」 - ロバート・バトラー , マーティン・ランドー, ポール・スチュワート, ジャネット・ノーラン
第17話「二つの顔」 - ロバート・バトラー , マーティン・ランドー, ポール・スチュワート, ジャネット・ノーラン



(画像引用動画)※英語音声。結末部など作品の重要場面を含む






(参考文献)

刑事コロンボ完全捜査ブック - えのころ工房, 町田暁雄
刑事コロンボ完全捜査ブック - えのころ工房, 町田暁雄


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2022年01月08日

刑事コロンボ「断たれた音」(時代背景と前作「溶ける糸」との関係)

(コロンボと、犯人クレイトン〈ローレンス・ハーヴェイ〉)

クレイトン 体形 病院で書き物をしている - -.jpg

(Image Credit:Youtube)


 「断たれた音」(1973年)はチェスのチャンピオン、クレイトンが、彼と対戦するためにカムバックした往年の名選手の殺害を企てるストーリー。

 イギリスの舞台出身で、本作完成後に45歳の若さで世を去ったローレンス・ハーヴェイが、耳の聴こえない犯人クレイトンを演じた。

20221月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能

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(NHK HP内あらすじ)BSプレミアム2022年1月8日16:16放送

何度見ても新しい!ミステリードラマの金字塔。現役チェス・チャンピオンがかつての名人を殺害!冒頭に登場するチェスをモチーフにした犯人の悪夢のシーンが印象的。

チェスの世界でチャンピオンとして名をはせるクレイトンは、かつてのチャンピオン、デューデックとの世紀の対決を控えていた。試合前夜、二人だけで行った勝負の結果は、クレイトンの惨敗。追い詰められたクレイトンは、デューデックを地下のゴミ粉砕機に突き落とし、彼が試合におじけづいて逃げたように工作する。しかしデューデックは一命を取りとめ入院。クレイトンは彼の息の根を止めるため、再度犯行に及ぶ



見どころ1 クレイトンの悪夢と時代背景

 オープニング、クレイトンは自分がチェスの盤上に立ち、巨大なチェスの駒にじわじわと取り囲まれる悪夢を見る。

クレイトンの悪夢 - コピー.jpg

 自分を追い詰めるキングの駒の顔が、対戦者デューデックに重なり、声にならない叫びをあげるクレイトン。

 この強烈な幕開けには、ドラマが制作された1970年代のチェスの時代背景がある。

 当時、アメリカとソ連は冷戦下にあり、長年チェスの世界大会で勝利を独占していたソ連の牙城をどう崩すか、どう死守するか、それは、選手個人の勝敗を超え、国家間のプライドを賭けた戦いになっていた。

(当時、チェスの世界大会は「知の代理戦争」とまで言われていた。)

 1972年、無敗のソ連にアメリカのボビー・フィッシャーが勝利したことは、全米で大ニュースになった。

(ボビー・フィッシャーのドキュメンタリーと映画)






(※補足:「名探偵ポアロ」にもロシアのチェスの名手が登場する『ビッグ4』という作品がある)

 「断たれた音」はこの出来事の後(1973年3月)に放送されたドラマだ。

 クレイトンの対戦相手デューデックの出身国は、ソ連ではなく架空の国に置き換えられているが、当時の視聴者は、ボビー・フィッシャーの勝利を覚えていただろう。

(一瞬だが、クレイトンの試合時、アメリカの国旗と向き合う形で、対戦者デューデックの架空の祖国の赤い旗が見える。当時の視聴者ならそこにソビエトの国旗をイメージしたはずだ)


 クレイトンが、試合前に多くの記者に囲まれていたこと、デューデックのコーチ、ベロスキー(ロシア的な響きの名前)が、デューデックの一挙一動に神経を尖らせ、彼に異変が起きた時、即座にコロンボたち警察、FBI、自国大使館にまで連絡をとっていることも、チェスの世界戦が国家の威信を賭けたものだったからだ。

 クレイトンが極端に敗北を恐れ、彼に温かく接した、偉大な前王者デューデックを葬ろうとした動機も、おそらくここにある。

 彼の勝敗は、アメリカ中の関心事だったのだ。

 (クレイトンの犯行は、彼の精神状態を心配して駆けつけたデューデックの同情を逆手に取った悪質なもので、彼の元恋人リンダが言う通り、彼の「卑劣な」性格が起こしたものだが、この「チェスの東西冷戦下の意味」も、彼を追い詰めていたのだろう。)

(クレイトンを落ち着かせようとするデューデック)

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(Image Credit:Youtube)



見どころ2 『溶ける糸』との類似点と相違点

 コロンボファン必携の名著『刑事コロンボ完全捜査ブック』には、「断たれた音」(1973年3月4日放送)のひとつ前に放送された第15話「溶ける糸」(1973年2月11日放送)との関係についてのこんな指摘がある。


 2つの前例(「悪の温室」と「溶ける糸」)が、どちらもゲストスタッフによる優れた工夫であったことを考えると、今回(ブログ筆者補「断たれた音」)のそれはレヴィンソン、リンク、ギリス(補、原案、脚本を担当した当時の「刑事コロンボ」シリーズの功労者たち)というメインスタッフから彼等への感謝と挑戦が半々のアンサーだったとも思えるのである。

 その仮説に立って比較してみると、前作「溶ける糸」との関連は興味深い。

 (中略)

自信家でどこまでも冷静な「溶ける糸」のメイフィールド医師に対し、ローレンス・ハーヴェイ(名演!)は、その知性と傲慢さの裏に強度のコンプレックスが見て取れる点で個性的である。

 逆に類似点も、例えば、犯人が入院中の被害者の薬に細工をして容体を急変させるという、隣り合ったエピソードとしては異例なほど似たシークエンスがあること、どちらも被害者と親しく犯人を嫌っている女性が登場することなど、偶然とは思い難いものを数えることができる。

(『刑事コロンボ完全捜査ブック』EPISODE16「断たれた音」p.65)


 「刑事コロンボ」シリーズは、メインの制作者以外に、ゲストの脚本家や監督が携わることがあった。

 「溶ける糸」はゲストの作品、「断たれた音」は従来のメンバーの作品。

 「断たれた音」は「溶ける糸」のポイントを敢えて踏まえ、違う魅力のある作品を生み出したのではないか、という指摘だ。

 「溶ける糸」の犯人は心臓外科医、「断たれた音」はチェスチャンピオンと、境遇は異なるが、確かに二作品には共通点が多い。

・人格温厚で優秀な先輩に自分の成功を阻まれそうになったために殺すという動機

・女性が被害者を慕っている一方、周囲からは評価の高い犯人の本性を見抜いて嫌っている

・被害者が一度入院し、その生死の行方がドラマに緊張感を添えている


 こうしたドラマの筋立てだけでなく、犯人、被害者、被害者をサポートする女性の背格好まで似ている。


・犯人は長身でスマート、ダークヘアで知的な顔立ち

(「溶ける糸」の心臓外科医、メイフィールド〈レナード・ニモイ〉)

メイフィールドとコロンボ - コピー - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

(「断たれた音」の、クレイトン)

断たれた音 コロンボとクレイトン - コピー - コピー.png
(Image Credit:Youtube)



・女性は生真面目な雰囲気で金髪の美人

(「溶ける糸」のシャロン)

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(Image Credit:Youtube)

(「断たれた音」のリンダ)

彼はあなたなど恐れていなかった - -.jpg

(Image Credit:Youtube)


・被害者はやや長めの銀髪に口ひげの、温厚さがにじみでた風貌

(「溶ける糸」のハイデマン博士)
ハイデマン博士 - コピー.jpg
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(「断たれた音」のデューデック)
クレイトンの話を聞くデューデック - - -.jpg
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 さらに、こんな細かい場面まで、類似点がある。

・犯人がエレベーターの到着を待っている間、コロンボが事件の重要な指摘をする。

(溶ける糸)
コロンボとメイフィールド - コピー - コピー.jpg
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(「断たれた音」)
コロンボとクレイトン - コピー - コピー.jpg
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・犯人がコロンボの有能さを称えつつ、彼の問題点を語る台詞がある

(「溶ける糸」のメイフィールドの台詞)
君は立派な刑事だ。知性もあり、勘も鋭い。そして粘り強い。だが証拠がないのが惜しいなあ
Luitenant Columbo,you're remarkable.
You have intelligence.
You have perception.
You have great tenacity.
You've got everything except proof.
(「断たれた音」のクレイトンの台詞)
コロンボ君。君は愛想のいい男だ。よく働くし、その熱心さは尊敬に値する。だが芝居だけはやめてくれ。
Luteinant, you're plesant enough man.
You work hard and I respect your motivations,
but please stop this pretense.

 一方、『完全捜査ブック』の指摘にある通り、数多くの類似点を持ちながら、犯人の性格は真逆といえるほど異なっている。

 計画外の事態が起きても、粛々と障害(他人)を排除する、悪魔と機械の狭間のような「溶ける糸」のメイフィールドと、犯行の前から、悪夢にうなされるほどデューデックを恐れるクレイトン。

(そして、前者は並外れた冷静さが、後者は精神的な脆さが、犯行の綻びとなった)

  二つの作品は、コロンボ(ピーター・フォーク)VS犯人(を演じる俳優)の対決なだけではなく、犯人役のレナード・ニモイとローレンス・ハーヴェイの対決にもなっている。

 この試みは、もしも二人に実力差があったら、(容姿に共通点があり、どちらの脚本も優れているだけに)それが際立つ残酷な結果になっただろうが、二人の名演技は、特に犯行とコロンボへの敗北の瞬間の表情に、鮮烈なコントラストを生み出した。

(犯行の瞬間)
殺人の瞬間の表情 - コピー - コピー.jpg
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デューディックを突き落とすクレイトン - -.jpg
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(敗北の瞬間)
敗北の瞬間の表情 - コピー.jpg
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断たれた音 敗北 - -.jpg
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 日本の和歌の世界にも、同じ題を出された歌人たちが、作品の優劣を競う「歌合」という遊びがある。

これと同じように、「溶ける糸」と「断たれた音」は、共通のテーマを盛り込みながら、どこまで特色が出せるかという競演だったのではないだろうか。

(「溶ける糸」側のゲスト製作者や両作品の俳優たちが事前にそれを了解していたかはわからないが、チーム・コロンボの人々は、それを狙い、レナード・ニモイとローレンス・ハーヴェイの実力が、この不思議な対決を見事に完成させた)

 それぞれ単独で名作として成立しているが、一対の作品として観ると、また違う面白さがにじみ出てくる、豪華で大胆な知的遊戯。

 だが、一般家庭に録画機器が無かった時代、この試みは、スタッフと、熱狂的なファン以外には伝わらない、ひそやかな仕掛けでしかなかっただろう。

(コロンボ自身「黒のエチュード」(1972年9月放送)の中で、テレビの再放送を見て「録画があった!」とようやく気付くシーンがある。)

 現代の視聴者である私たちは、録画、ディスク、ネット配信と、様々な方法で、二つの作品を気軽に楽しむことができる。

 この贅沢な知的遊戯を是非見比べてみていただきたい。


「あともう一つだけ」 獣医ベンソン先生

 「断たれた音」には、「黒のエチュード」に続き、コロンボのバセットハウンドと獣医のベンソン先生が再登場する。

チェスをするコロンボと先生 - -.jpg

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 ベンソン先生、コロンボとうまが合うらしく、今回は治療後、犬の麻酔が切れるまで、コロンボとチェッカーというゲームに興じている。

(ちなみに治療は「耳に入ったエノコログサをとってもらった」というもの)

 大きな眼鏡がよく似合う、上品でいかにも頼りになりそうな先生を演じたのはマイケル・フォックス

ベンソン先生 - -.jpg

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 法廷弁護士ドラマ「ペリー・メイスン」シリーズの検死官役のほか、医者の役をよく演じていた。

(『刑事コロンボ完全捜査ブック』p・64より)

 映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で日本でも大人気となったマイケル・J・フォックスは、このベンソン先生役のマイケル・フォックスを意識して、芸名に「J」を付け加えたそうだ。

バック・トゥ・ザ・フューチャー (吹替版) - マイケル・J・フォックス, クリストファー・ロイド, リー・トンプソン, トーマス・F・ウィルソン, クリスピン・グローヴァー, クローディア・ウェルズ, ビリー・ゼイン, ケーシー・シマーシュコ, ロバート・ゼメキス, ボブ・ゲイル, ロバート・ゼメキス, ボブ・ゲイル, ニール・キャントン
バック・トゥ・ザ・フューチャー (吹替版) - マイケル・J・フォックス






【画像引用動画】
※2022年1月時点公開のもの 英語音声 作品の重要シーンや結末部を含む

(断たれた音)

(犯行)
(事件発生直後のクレイトンとコロンボ)

(デューデックの入院している病院で話すコロンボとクレイトン)

(事件直前のデューデックについて尋ねるコロンボ)


(結末部)(※ネタバレ注意)


(溶ける糸)
(メイフィールドがハイデマン博士に最初の手術をするシーンから、メイフィールドの犯罪に気付いたシャロンが殺害されるまでのダイジェスト)
(メイフィールドを追及するコロンボ、ハイデマンの二度目の手術から結末までのダイジェスト)(※ネタバレ注意)


(「断たれた音」でベンソン先生とチェスをするコロンボ)

posted by pawlu at 12:47| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年12月25日

「あたしゃねぇ!あんたがシャロンを殺したと思ってる!!」(刑事コロンボ「溶ける糸」より)コロンボ激怒の瞬間

あんたが殺した - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

真顔に戻るメイフィールド - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)


「あたしゃねぇ!あんたがシャロンを殺したと思ってる!そして今度はハイデマン先生をも殺そうとしていると!」

(I believe you killed Sharon Martin, And I believe you're trying to kill Dr. Hiedeman.)

  いつものほほんとした様子でつかみどころのないコロンボが、犯人である冷酷な外科医に激怒する珍しい一瞬。

(『刑事コロンボ』第15話「溶ける糸」(1973年)の重要場面)

※2021年12月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能

(場面紹介)※ややネタバレ

 コロンボは、犯人の外科医メイフィールド(レナード・ニモイ)が、彼の共同研究者ハイデマン博士の心臓手術したときに、彼が数日以内に自然死に似た状態で死亡する「仕掛け」をしたと推理。

 何者かに殴り殺された看護師のシャロン(アン・フランシス)も、メイフィールドの工作に気付いたために口を封じられたと考えているが、メイフィールドはコロンボの話を聞いて「まさか本気で言っておられるんじゃないでしょうな」と声を上げて笑い出す。

コロンボの推理を笑うメイフィールド - コピー.jpg
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 その延々と続くあざけり笑いの間にも、二人目の死が、刻一刻と近づいている。

笑い出すメイフィールド - コピー.jpg

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 コロンボはメイフィールドのデスクに置かれた水差しを手にとり、思い切り机に叩きつけて、メイフィールドの笑いを断ち切る。

水差しを手に取るコロンボ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)


 あんたがシャロンを殺した。そしてハイデマン先生をも殺そうとしている。

 「ハイデマン先生の面倒をよく見ることだ」

 もしも彼が死んだら、必ず検死して死因を暴いて見せる。

 そう言い捨ててコロンボが出ていった後、メイフィールドは静かに電話に手をのばす。


(コロンボの推理を聞いて失笑する〈演技をする〉犯人メイフィールドと、怒りをあらわにするコロンボ)※英語音声
Columbo Tries To Trick A Surgeon | Columbo

 (ピーター・フォークの演技は凄んでいる感じ、小池朝雄さんの吹き替えは激高している感じなので、それぞれ聴き比べるのも面白い。)

 

(作品紹介)

 犯人役のレナード・ニモイは、SF映画「スター・トレック」シリーズのミスター・スポック役でよく知られている。



 計画外だった口封じのシャロン殺害から、犯行隠ぺい工作まで、顔色一つ変えずに粛々と遂行するメイフィールドを見事に演じた。


(メイフィールドがハイデマン博士の手術で何をしたか気付いたシャロン〈そして鏡越しに彼女の様子を見るメイフィールド〉)

手術後のシャロンとメイフィールド - コピー.jpg

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メイフィールドとシャロン - コピー.jpg

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(シャロン殺害の瞬間。シャロンの恐怖にゆがんだ顔と、凶器の工具(画面左側の棒)が振り上げられていなければ、何をしようとしているのかわからないほど冷静な表情)

驚くシャロン - コピー.jpg

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殺人の瞬間の表情 - コピー - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 優秀な心臓外科医でありながら、一方、その、人の生死に一切動揺しない性格で、次々と犯行を重ねていく、静かだが危険な人物。


(ちなみに、コロンボがメイフィールドを疑いだしたのは、彼がシャロン死亡の知らせを電話で聞きながら、置き時計の時間を合わせていたのを偶然目撃したため。桁外れの冷静さが、逆に犯行の綻びとなった)

時計を合わせるメイフィールド - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

 愛妻家で名刑事のコロンボは、善良な女性を傷つける者と、人の命を軽く扱う者が許せない。

 ハイデマンを守ろうとしたシャロンを殺し、その罪を着せるために、ベトナム帰還兵でトラウマと戦っていた青年を罠に嵌め、メイフィールドの技術を信頼しているハイデマンも死に向かわせながら、笑い続ける演技ができるメイフィールド。


(術後入院中のハイデマン博士 メイフィールドと対照的に温かで人間味のある人物)

ハイデマン博士 - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)


 メイフィールドに対するコロンボの激怒が、逆上したためか、計算づくなのかはわからない。

 だが、「ハイデマン先生の面倒をよく見ることだ」という言葉は、ハイデマンの命を巡る、コロンボとメイフィールドの対決の重要な挑発になった。

 メイフィールドはハイデマンの命を時間に任せることはできなくなる。

 (コロンボがオフィスを出ていった直後の電話はそのための一手。しかし、相変わらず動揺していない。)

電話をかけるメイフィールド - コピー.jpg
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 ハイデマン博士の手術の場面は、シリーズの中でも異色の、コロンボと名犯人の対決シーンだ。

 メイフィールドの手術中、コロンボは手術室の上にある見学エリアから、彼の一挙一動を監視している。

コロンボに見張られながら手術 - コピー.jpg

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 そしてメイフィールドは、コロンボの視線を知りながら、自分が殺そうとしていた相手の手術をして、その時限爆弾のような「仕掛け」をさりげなく解除し、隠さなければなければならない。


 この時のコロンボの手術の凝視は、彼の執念を感じさせる。

 本当はコロンボは、刑事なのに血にとても弱く、この直前まで、ハイデマンが注射されても顔をそむけ、聞き込みで手術の見学室に入ったときには、即座に全身をそむけ、やたら嬉しそうに手術の実況中継をする医師に

手術の見学 - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

即顔をそむけるコロンボ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

「話だけで……見るのはいいんだけど……」

と絞り出すように言っている。

手術を見たくないコロンボ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 だが、ハイデマンに施された死の仕掛け(同時にシャロン殺しの証拠)があらわになるのは、このハイデマンへの手術の時しかないとわかっているコロンボは、瞬き一つせずに、メイフィールドを見下ろしている。

手術を凝視するコロンボ アップ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 コロンボ執念の凝視を頭上に感じながら、メイフィールドは手術を進める。

手術を続けるメイフィールド - コピー.jpg

 シャロンを殺したときのように、冷静に、淡々と……。


 この、「溶ける糸」と、続く第16話「断たれた音」(チェスのチャンピオンが犯人)は、スリリングなストーリーと、並外れた知能を持つ犯人のキャラクターが際立つ、コロンボシリーズ中期の傑作なので、是非併せてご覧いただきたい。


【当ブログ関連記事】

刑事コロンボ「断たれた音」(時代背景と前作「溶ける糸」との関係)

コロンボとクレイトン - コピー - コピー.jpg

c 1972 Universal City Studios LLLP. All Rights Reserved.







【画像引用動画】
※英語音声 作品の重要シーンや結末部を含む

A Doctor's Ingenious Plan For Murder | Columbo
(メイフィールドのシャロン殺害シーン)


全体(ハイデマン最初の手術から、メイフィールドの犯罪に気付いたシャロンが殺害されるまでのダイジェスト)

※(補足)シャロンを演じたアン・フランシスは、「死の方程式」で犯人ロジャーの恋人役も演じている(この中では真面目で仕事熱心だが、少しお人好しでロジャーの正体を見抜けない秘書役)。美しいだけでなく感情演技が巧みな女優

(「死の方程式」アン・フランシス登場シーン)

The Killers Agenda | Columbo
(コロンボが手術を見たがらないシーン)

全体(作品中盤から後半のダイジェスト)


The Face Of A Killer Who WON | Columbo ※結末部あり

(メイフィールドの手術を見張るコロンボ)



全体(メイフィールドを追及するコロンボ、ハイデマンの緊急手術から結末までのダイジェスト)(※ネタバレ注意)


Columbo Tries To Trick A Surgeon | Columbo
(コロンボがメイフィールドに怒りをあらわにするシーン)


(レナード・ニモイの息子で監督のアダム・ニモイ制作のドキュメンタリー映画「スポックのために」(2016)の予告編)

ラベル:名言・名場面
posted by pawlu at 18:19| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月19日

刑事コロンボ「黒のエチュード」名監督ジョン・カサヴェテスが犯人役で登場(そしてコロンボの犬も)※一部ネタバレあり

(コンサート会場でピアノを弾くコロンボと、拍手をする犯人アレックス〈ジョン・カサヴェテス〉)
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(Image Credit:Youtube)

 「黒のエチュード」(1972年)は名指揮者アレックスが、妻との離婚を迫るピアニストの愛人をガス自殺に見せかけて殺害するストーリー。

 映画「グロリア」(※1)ほか、インディペンデント映画の監督として活躍したジョン・カサヴェテスが犯人アレックスを演じた。

アレックス(犯人役ジョンカサヴェテス) - コピー - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

※2021年11月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能



(NHK HP内あらすじ)

一流楽団の理事長の娘を妻に持ち、楽団の指揮者を務めるアレックス・ベネディクトは、愛人のピアニスト、ジェニファーから離婚を迫られていた。離婚すれば今の地位を確実に失うアレックスは、コンサート本番前に楽屋を抜け出し、ジェニファーを殺害。用意しておいた遺書をタイプライターに残して自殺に見せかける。だが、タキシードの襟につけていた花を現場で落としたことに気づく。

見どころ1 華麗な世界観

 犯人が指揮者のため、作品全体にクラシック音楽が流れ、美しい妻と愛人、高級車、大豪邸が登場する、シリーズ中最も華麗な世界観で、場面展開も洗練されている。

 たとえば次のような場面。

・犯行シーン

 犯人アレックスは、コンサート直前、タキシードに着替え、控室で休憩しているふりをして抜け出したのち、愛人のピアニスト、ジェニファーの家を訪れる。

 彼女がピアノを演奏している隙に背後から頭を殴って気絶させ、キッチンに運ぶアレックス。

 花の飾られた豪華なインテリアの部屋(そして重厚な音楽)の中、タキシードの男が、リボンベルトを垂らしたドレス姿の美しい女性を抱きかかえて運ぶ光景は、現実の犯行とはかけ離れ、フィクションドラマならではの、不思議な「絵になるシーン」を作り上げている。

犯行シーン リビング - コピー.jpg

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 ジェニファーを殴る瞬間も、打撃、悲鳴などはカットされ、インパクトのある音楽と、驚いてとさかを逆立てたインコの激しい鳴き声がそれをほのめかしている。

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 (このインコは、アレックスがガス自殺を細工した際に、ジェニファーとともに死んでしまう。そして、籠の中のインコの亡骸を見たコロンボは、自殺なら、なぜ、その前に逃がしてやらなかったのかと思い、殺人の疑いを強めていく。被害者が殴られたときの鳴き声と、その死によって、アレックスの犯罪を告発する存在。)

(犯行準備から実行までのシーンダイジェスト動画)


・花を落としたことに気づくシーン

 アレックスはコンサートの時には、いつもタキシードの胸元にカーネーションを付けている。

 しかし、犯行後のコンサートで、情熱的に指揮棒を振っているとき、彼はその胸にカーネーションが無いことに気づく。

 オーケストラの音楽と眩しい照明の中、画面が静止し、凍り付いたアレックスの脳裏によぎる、ジェニファーの部屋と、インコの悲鳴にも嘲笑にも似た声。


 それでも動揺は一瞬、アレックスはコンサートをやり遂げるが、そこにジェニファー自殺の報が入り、駆け付ける体を装って彼女の家に戻る。

 この時、すでに警察が入っている部屋で、さりげなく花を探す彼のサングラスに床に落ちた花が映る。

 現実にはあり得ないほどくっきりと、黒いレンズに淡いピンクの花が浮き上がるのだが、その不自然な鮮明さがアレックスの緊張を視聴者に追体験させる。

レンズに映る落ちた花 - コピー.jpg

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※犯人のレンズの反射を際立たせる演出は、過去に「指輪の爪あと」にも登場している。

(「指輪の爪あと」犯人ブリマーが証拠隠滅をする過程が本人のレンズに映っているシーン)

指輪の爪あと 証拠隠滅シーン2 ロバートカルプ - コピー - コピー - コピー.jpg

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(花を落としたことに気づくシーン〜事件現場でさりげなく花を拾うまで)


見どころ2 ジョン・カサヴェテスの存在感と、犯人とコロンボの関係

 監督でありながら、性格俳優としても活躍したジョン・カサヴェテス。

鋭い眼光で、激高する姿すら、創作者のほとばしるエネルギーを感じさせる。

(「映画監督」という彼の本業は、人々を指揮してひとつの作品を創り上げるオーケストラの指揮者に通じるものがあったのかもしれない。はまり役だ。)

その独特の存在感と演技力で、口封じに愛人を殺害する身勝手な犯人に「天才のエゴと残酷」という深みを与えた。

 この回のコロンボは、アレックスの熱狂的なファンということで、サインを貰いに行ったり、聞き込みのときには、アレックスの友達と名乗ったりと、やけに親しげだ。

(話しながらアレックスの袖を離さないコロンボ)

アレックスの袖をつかまえるコロンボ - コピー.jpg

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(高級なジャケットが皺になってしまい、さりげなく払うアレックス。おそらくコロンボが自殺説を否定していることへの不快感も相まっての行動)

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 捜査のためなのか公私混同か、相変わらずつかみどころがないが、刑事と犯人が額を合わせるような距離で話す絵面とテンポの良さは、スリルとユーモアの入り混じる妙味がある。

アレックスにタイプライターを見せるコロンボ - コピー.jpg

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コロンボとアレックスアップ 自動車修理工場にて - コピー.jpg

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 ただ、コロンボは指揮者としてのアレックスのことは、本当に敬愛していたのだろう。

そして、最後にはアレックスもコロンボの名刑事ぶりを認め、握手をする。

まるでもう一人のアーティストに対するように。


 事件の解決後、コロンボはある形で、アレックスの音楽にもう一度耳を傾ける。

このドラマらしい、コロンボと犯人の不思議な心の交流が、美しい音楽に姿を変えて、アレックスの去った部屋に余韻を残す。


(修理工場での会話シーン)


(コンサート会場での会話シーン)


・カサヴェテスとピーター・フォークの友情

 ジョン・カサヴェテスとコロンボ役のピーター・フォークとは親友で、彼が珍しく映画ではなくテレビドラマに出演したのも、その友情が縁だった。(※2)

❝ 

フォークはカサヴェテスを尊敬をこめて“親しいライバル”と呼び、カサヴェテスはフォークを「自分自身に対して絶対に真正な演技をする驚異の男優」「微笑みながらどんな状況も切り抜けられる」「これほど才能のある人間を見たことがない」と評しています。

(※)『刑事コロンボ完全捜査ブック』「調書 ピーター・フォーク (共鳴 ピーター&ジョン)」p.25 文:国分佑子より

 コロンボとアレックスの火花散る対決に、フォークとカサヴェテスの絆を重ねると、心に染みる光景に変わる。

 彼らは嫉妬と欲望渦巻く芸能界で、互いの才能が響き合う、数少ない「盟友」だったのだ。

握手するコロンボとアレックス - - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

 

見どころ3 コロンボの犬と車

 この回で、コロンボの飼い犬「ドッグ」が初登場。

 池で溺れていたところを助けられ、そのままコロンボに飼われることになる。

(獣医にて。助かった直後の割に非常にくつろいでいる。)

コロンボの犬獣医にて黒のエチュード - コピー.jpg 

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 この時、獣医さんは、犬の名前の候補として「ファイド(Fido、「忠実なる者」という意味)」という素敵な名前を提案してくれるが、捜査中に会った女の子に「ダサい」と一刀両断され、この後も「ドッグ」と曖昧に呼ばれるだけになる。

(「どう呼ぼうが来ない」から結局同じことらしい。確かに忠実なる者とは言い難い)

 この犬は、ピーター・フォーク自身の愛犬で、「愛情の計算」「断たれた音」などにも登場する。

(登場はするが、警察犬のように活躍したりはしない。しかし、その「特に何もしないところ」がかわいい)

コロンボの犬、二回目の獣医さんにてくつろぐ姿 - コピー.jpg

(寝そべると、ほっぺたのふちと分厚い耳が、つきたてのおもちのように広がるのもかわいい)

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 抱っこされると、たるたるした姿と緊張感のなさが、しわだらけのレインコートと調和して、どこからどこまでがコロンボだかわからないくらいだ。

抱き上げられるコロンボの犬拡大 - コピー.jpg

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 そして、コロンボの車。

(高級外車専門修理工場にて。聞き込みのついでに自分の車の調子も見てほしいと頼むコロンボと、見るからにあまり見たくなさそうな修理工場の人)

コロンボの車 黒のエチュード - コピー.jpg

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 黒のエチュードでは、アレックスの高級車が犯行に使われる。

アレックスの車 - コピー.jpg

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 聞き込み中のコロンボが勝手に乗り込み、大絶賛するとおり、しなやかな猫科の獣のような、艶やかな音色を秘めた楽器のような、気品ある光沢と流線型が美しい、アレックスの車。


 かたやコロンボの車は、「エンジン落っことしたって感じ(ひどい)」で、しぶしぶ点検したエンジニアに、「買い換えちゃどうです?」と言いにくそうに言われる。

 くったりした犬とボロボロの車。

 コロンボ自身を象徴するような、重要なキャラクターふたり(あえてそう呼ばせていただく)がこの回で出揃う。

 彼らは、特に裕福ではない、冴えない風貌のコロンボが、成功者たちの世界に連れて行く、コロンボの日常を共に生きる仲間。

 おかげで捜査がはかどるということはあまりないが(とくに犬)、ドラマにアクセントと奥行きを作ってくれる。

 彼らが出てきた瞬間に、華麗で洗練された、だがどこか雲の上の出来事のようなストーリーに親近感が湧くし、犯人たちの世界の「豪華さ」と「殺人」という非日常性も際立つ。

 「美しい女性たちと高級車」と、「拾われた犬と買い換えを勧められる車」が合わせ鏡のように登場する「黒のエチュード」は、特にそのコントラストが鮮やかだ。


(自殺に見せかけるためにジェニファーを運ぶアレックス)

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(連れて帰るためにドッグを運ぶコロンボ)

ドッグを抱き上げるコロンボ 拡大2 - コピー.jpg

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(コロンボの犬初登場シーン)

(二度目の予防接種で再び獣医を訪れるシーン〈背後でアレックスのコンサートが放送されている〉)



(見どころ番外)ドアマンのミヤギさん

 コロンボがアレックスの豪邸を訪ねた際、応対してくれたアジア系のドアマン。

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 空手映画「ベスト・キッド」で主人公ダニエルの空手指導をした「ミヤギさん」こと、パット・モリタ氏が演じている。

ベスト・キッド (字幕版) - ラルフ・マッチオ, ノリユキ・パット・モリタ, エリザベス・シュー, マーティン・コーヴ, ウイリアム・ザブカ, John G. Avildsen, Jerry Weintraub
ベスト・キッド (字幕版) - ラルフ・マッチオ, ノリユキ・パット・モリタ,

 コロンボは警察手帳を見せて刑事であることを説明しているが、「ミュージシャンで、楽団員になりたがっているらしき変な男」と勘違いされてしまう。

(いまいちよくわかってくれていないが笑顔がチャーミング)

玄関でコロンボを招き入れるパットモリタさん - コピー.jpg

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 (パット・モリタ氏登場シーン)



見どころ4 「優しいジャニス」ブライス・ダナーの美しさ

ジャニス - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 今回、アレックスの妻で、オーケストラの理事長の娘ジャニスを演じたのは、ブライス・ダナー

 グウィネス・パルトロウの母としても知られ、今も活躍する名女優だ。

 憂いを帯びた青く大きな瞳、月光に縁どられたような淡い金髪、細い顎と華奢な肩の線、少しかすれた柔らかな声で、「銀河鉄道999」のメーテルを思わせる神秘的な美しさ。

「刑事コロンボ」には大勢の美女が登場するが、個人的には彼女が一番印象深い。

 事件が起きた時から、アレックスが被害者と関係を持っていたのではないかと疑いつつ、夫を問い詰めきることができない「優しいジャニス」。

 才能あるアレックスがなぜ自分と結婚したのか(理事長の娘だという理由だけではないか)と不安を抱き続けている。

 コロンボの推理が核心に近づきつつあることを感じたアレックスは、コロンボとの最後の対決の直前、彼女を無言で見つめて頬に触れる。

 自分の過ちによって、彼女をこれから失うことになるのかもしれないと思っているように。

こうなって初めて彼女の大切さに気付き、その心を繋ぎとめようとするように。


 

見どころ5 (※結末部あり)アレックスの退場シーン(吹き替えと英語の台詞の違い)

 コロンボによってジャニスの前で犯行を明らかにされたアレックスは、彼をかばいきることのできなかったジャニスを抱き寄せ、「僕は有罪だよ」と耳元にささやく。

君を愛していた - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)


 この後、アレックスがジャニスに語りかける言葉が、吹き替え版と英語版で少しニュアンスが異なっている。

【吹き替え版】

僕は有罪だよ。

だが今わかった。愛していたよ。

僕は君を愛していた。証言の時それを思い出してくれ。

いいね。



【英語版】

I'm guilty, you know that.

Just for the record, I love you.

I always loved you.

I hope you don't have to go through your life alone.


※ブログ筆者意訳

僕は有罪だよ。

(だが)言っておく、君を愛している。

僕はいつも君を愛していた。

君が孤独な人生を送る必要がないことを願っているよ。


 吹き替え版のアレックスの台詞は、裁判のときに、ジャニスが自分に有利な証言をしてくれるよう、情に訴えかける意味合いが強い。


 一方、英語版は、もはや彼女の夫ではいられないことを覚悟し、新しいパートナーを見つけて幸福になってほしいと告げているように響く。

(軽い刑で釈放され、また一緒に生きられるよう助けてほしいと言っているなら、吹き替え版とほぼ同じ意味だが。)


 「愛していた」と繰り返して、その言葉を彼女の心に刻み付けようとしたアレックス。

それは、彼女を不実で傷つけてもなお、彼女の愛を引き出して自分を守ろうとする、天才の並外れたエゴのためなのか。

それとも全て失う瞬間に、ようやく自分が本当は抱いていた彼女への真実の愛を、思い知ったためなのか。

 囁いた後、彼女の髪に頬を寄せて、虚空をめぐる鋭いまなざしは、どちらとも解釈できる。

しかし、個人的には、英語版の台詞を、ただ、その言葉通りに聴きたい。

 立ち去り際、アレックスは指揮棒をまっすぐに立てて顔の前に掲げ、彼女にかすかにウィンクをする。

騎士が戦いに赴く前に、剣を掲げて礼をするように。

 過ちを犯し、それを殺人で隠そうとしたアレックス。

犯行自体は確かに非常に身勝手だ。

だが、彼は最後にコロンボに敗北を認め、彼を讃えている。

そして、手錠もかけられず、楽団の関係者たちに別れを告げて、自ら部屋を出て行っている。

そういう潔さや、ジャニスの頬に触れたときの沈黙、指揮棒での騎士のようなしぐさ、最後に流れる彼の音楽。

それは、保身のために殺人まで犯した強烈なエゴが、コロンボへの敗北で打ち砕かれた瞬間、浮き彫りになった妻への愛、そして芸術家の誇り、本質的にははじめから持っていた、彼の人としての魅力を物語っているのではないだろうか。

 どちらの解釈がしっくりくるか、ご覧になってみていただきたい。


【引用動画(英語音声※ドラマの重要シーンや他の回の内容を含む)】

(アレックス他、シーズン2の犯人たちの犯行シーンダイジェスト)

(自動車修理工場での会話、車の買い替えを勧められる)

(コンサート会場での会話)
※ちなみにここでコロンボが弾いている「チョップスティック」という曲は、日本の「猫踏んじゃった」のような「とても有名な誰でも弾ける曲」の位置づけのようだ。
(マリリン・モンローの映画「七年目の浮気」でも、彼女の気を引きたい主人公が、ラフマニノフを弾きたいけど無理なのでこの曲を弾いているシーンがある)


(邸宅を訪問し、玄関ホールでアレックスと話すコロンボ〈冒頭にパット・モリタ氏登場〉)
How Much Money Do You Make? | Columbo

(コロンボの犬登場シーンダイジェスト〈他の回も含む〉)


(「黒のエチュード」12分ダイジェスト〈※結末部を含む〉)
'Etude in Black' in 12 Minutes | Columbo

(※1)「グロリア」(1980年)

 麻薬取引のトラブルで家族を殺された少年を連れて逃げることになった女、グロリアの物語。
 リュック・ベッソン監督の映画「レオン」はこの作品を下敷きにしている。
 グロリアを演じたジーナ・ローランズ(カサヴェテスの妻。コロンボシリーズにも「ビデオテープの証言」で出演している)が、少年をかばいながらハイヒールで走り、小さな拳銃で裏社会の男たちと渡り合う凄みは必見。



(※2)『刑事コロンボ完全捜査ブック』EPISPDE 10「黒のエチュード」p.52 監修:町田暁雄



ラベル:
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2021年10月26日

刑事コロンボ「死の方程式」(ロディ・マクドウォールの悪役名演)

(コロンボと犯人ロジャー〈ロディ・マクドウォール〉)
葉巻についてビショップに訪ねるコロンボ ロジャーのシャツとメダル - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

 刑事コロンボの「死の方程式」は、素行の悪い甥が、会社での地位を狙って、社長である叔父を、葉巻に仕掛けた時限式爆弾で殺害するストーリー



 名優ロディ・マクドウォールが演じた犯人ロジャーの、知能は高いがどこまでも軽薄なキャラクターと、断崖絶壁をゆくロープウェイでの、コロンボとロジャーの緊迫の会話シーンが見どころだ。

(事件現場へ向かうロープウェイ)

断崖を登るロープウェイ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(コロンボの「高い所苦手顔」も味わい深い

ロープウェイを楽しめないコロンボ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 ロジャーの吹替は、数々の名優、名キャラクターを演じた野沢那智。

 粋な声で、ひねりの効いた台詞が際立つ。

 ジャズやディスコなどの70年代のスタイリッシュな音楽がふんだんに使われ、耳でも楽しめる作品だ

父が築いた大会社の御曹子であるロジャーは、現社長の叔父に過去の悪事を調べられ、会社を辞めるよう勧告される。その上、叔父は会社を売ろうともくろんでいた。ロジャーは叔父の殺害を決意し、手製の爆弾を愛用の葉巻に仕掛ける。叔父は山荘に向かう車の中で葉巻ケースを開け、車は爆発炎上・・・。その後コロンボは、ロジャーのささいな行動から彼に目をつける

ロジャー役のロディ・マクドウォールは、映画『猿の惑星』『フライトナイト』シリーズで人気を得た。同役吹き替えの野沢那智は、アラン・ドロン、アル・パチーノ、ブルース・ウィリスなど数多くの吹き替えを担当した。




・ロジャーのキャラクター

 犯人のロジャーは、女好きで陽気、奔放な言動に派手なファッションと、どこか「ルパン三世」に似ている。

 しかし、似ているのはあくまで上辺だけ。

 愛嬌と知能以外のルパンの長所(盗みの美学や、仲間との絆、女性に鼻の下を伸ばすが基本的には優しいところなど)が、ロジャーにはかけらもない。

 それどころか、少年の面影を残す童顔と、お調子者のキャラクターを最大限悪用して、鼻歌交じりに爆弾を作り、人々を陥れる「悪党」だ。

(自分のオフィスの暗室で手際よく爆弾を作るロジャー)

手際の良い犯罪準備(祝砲の挽歌との比較) - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 ※ちなみに、野沢那智氏はパイロット版のルパン三世を演じたことがある。また長年ルパン三世を演じた山田康夫氏も、ロディ・マクドウォールの声を何度か担当している(『猿の惑星』の、猿の学者コーネリアス役など)。

(ロジャーの葉巻爆弾準備シーン)

 ロジャーの叔母のドリス(ロジャーの父の妹、現会社社長の叔父バックナーは彼女の夫)と秘書の女性ビショップは、ロジャーを憎めない男と思い、苦笑混じりに愛情を注いでいるが、ロジャーの目に映る彼女たちは、「利用できる道具」。

 そしてロジャーを軽蔑し、会社の売却を機に追い出そうとしている叔父バックナーと、叔父をサポートする運転手クインシーは「取り除くべき障害」だった。


 元警官のクインシーが調べ上げたロジャーの素行をネタに、会社から去るように叔父から脅されたロジャー。

(叔父バックナー〈左〉と運転手でロジャーの素行の調査役だったクインシー〈右〉)

ロジャーの素行を調べ上げていた叔父とクインシー - コピー.jpg

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 すでに雲行きを察してか、葉巻爆弾を作り終えていた彼は、「負けました」とあっさり引き下がるふりをし、社長室から出ていこうとするが、ふと踵を返して、叔父の頬をぴたぴたと叩く。

 「おやすみ、おじさん」

 ロジャーが交渉に応じたことに気をよくしていたバックナーは、ロジャーのいつものおちゃらけと思って、ただ苦笑いして流す。

 経営者としてはしたたかで、きっちりロジャーの弱みも握っていたバックナーだが、さすがの彼にも読めなかった。

 それが自分の人生に向けられた最後のあいさつであること。

 彼がまさに見下していた、ロジャーの軽薄無反省な性格は、殺人さえためらわないほど危険なものであったことを。

 (この、社長室でのロジャー、バックナー、クインシーのやりとり、三者三様の感情が透ける演技が見事だ。)


(叔父から会社を去るように命令される場面)



・ロディ・マクドウォールの緻密な演技

 他人に対して平気で残酷なことをやってのけるロジャー。

 しかし、それは何かの鬱屈や、加虐心からではなく、とにかく他人については、自分の利害以外、全く何も考えていないから。

 その無思考ぶりを、ロディ・マクドウォールが見事に表現している。

ローガンに質問されてしらばっくれるロジャー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube



 1、爆弾を仕掛けるシーン

 時限爆弾入りの葉巻の箱を、叔父の車に仕掛けようとするロジャー。

 叔父の車の整備係に、自分の車の様子がおかしいから見てほしいと頼み、その隙に車にあった葉巻の箱を、爆弾入りのものとすり替え、確実に箱を開けるよう、ダッシュボードにあった葉巻も抜き取る。

 それが整備係にも、会社から出てくる叔父と運転手のクインシーにも見つからないようにと、目をくばるロジャー。

しかし、その、「彼なりには緊張しているのかもしれない顔」、ベロを出した半笑いのような、奇妙なしかめっ面には、彼が、自分の犯行について、「小学生が嫌いな先生の持ち物にカエルのおもちゃをしのびこませる」程度の意識しか持っていないことがありありと出ている。

爆弾を仕掛けるときの表情 - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 権力欲しさに二人の人間(しかも一人は雇い主の指示を受けて動いただけの人物)を爆死させるというのに。

 その後、叔父の乗せた車が出発したのを見届けると、ロジャーは葉巻に火をつけ、大きく煙を吐き出す。

 確実に叔父とクインシーを葬るために、車のダッシュボードから盗んだ葉巻のうちの一本を。

(この時の表情がまた酷い)

くすねた葉巻で一服 - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(叔父の車に葉巻爆弾を仕掛ける場面)


 ロジャーはこの葉巻を、ビショップとのデートでディスコに行くときも持参している。

 退廃的なディスコと、雷鳴の中、山道を走る叔父たちの乗る車内の光景が交錯する。

 (ロジャーが盗んだために)どこにも葉巻がなかったので、クインシーに渡された葉巻の箱を開ける叔父。

 ビショップにしなだれかかられながら、セクシーなダンサーによそ見をした後、そろそろ爆発する頃合いかと、ビショップの肩に回した腕の時計に、さりげなく目をやるロジャー。

 そして、ロジャーが暗室の秒数計で実験した通り、開けてから60秒が経過した葉巻の箱から火花が散り、車が爆発で砕け散った。

 ディスコの煽情的な音と光、暗い山道の雷鳴と爆発がオーバーラップするこの場面は不遜で、ロジャーの人間性を象徴している。


(ディスコでデートするロジャーと、車の爆発がオーバーラップする場面)

2、電話の録音音声を聴くシーン。

 叔母のドリスは行方不明になった夫を心配して、警察に電話。そして、「えりぬきの刑事」としてコロンボが屋敷にやって来る。

 ロジャーは、叔父さんたちはどこかに寄っているだけだ、と、取り乱す叔母をなだめるが、コロンボは、そんな簡単なことではないと考えていた。車中から電話があった直後、連絡がとれなくなったからだ。

その時の叔父の声は、留守番電話に録音されている。

 それを聞いたロジャーの顔から、笑みが引いた。


 録音を再生するコロンボたち。

 録音の中で、叔父は叔母に伝言を残しながら、葉巻の箱を開けている。

車中の会話でそれがわかったロジャーの視線が、録音機とコロンボ達、そして暗室での起爆実験の記憶の間で、せわしなくさまよう。

 爆発まであと数十秒、それまでに電話が終わらなかったら……。

ロジャーは無意識に袖をめくって時計を見た。

 録音を聴いていたコロンボは、ロジャーの動きに気づいた。

が、何も言わずに、彼の様子を時折さりげなく盗み見る。

 爆発より前に、叔父は電話を切った。


 帰り際、コロンボはふと、ドアの前で彼を見送るロジャーに尋ねた。

「時計が狂うんですか?」

 葉巻のことがばれずに済んだロジャーは、いつもの態度を取り戻していた。きょとんとした顔で、コンコン、と時計をつついて、耳に近づけた後、「いや、狂ってないよ、どうして?」と聞き返す。

 「どうしてってこともないけれど、さっき、ちょくちょく覗いてたでしょ」

「何かと思えば……癖ですよ、よくあるでしょう」

「ああ……それもそうですな、どうも……じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

これが、対決のはじまりだった。


 叔父が葉巻を探し、箱を開けるちょうどそのときに電話をして、車中の状況が事細かに録音されている。そしてそれを聴いているロジャーがつい時計を見てしまう。

 コロンボに大ヒントが与えられるこの場面、推理ドラマとしては、少し強引かもしれない。

 しかし、優れた演技を見られるという点では名場面だ。


 録音、コロンボと叔母の視線、起爆実験の記憶、時計の秒針の四つに気をとられているロジャーの表情。

 お調子者の陽気さはぬぐったように消え失せ、押し殺してもなお、皮膚の下にのたうつ焦りと冷たい凶暴が、視線、左右の眉、頬、口元の小刻みな、ときに痙攣のような動きに閃く。

 顔の上下左右各パーツに感情を乗せて、コンマ、ミリ単位で、自在に動く、ロディ・マクドウォールの表情演技。

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Image Credit:Youtube

 もちろん、コロンボ役のピーター・フォークも負けていない。額をかく手の陰から、左右に流れる視線のはざまから、さりげなくロジャーの異変を観察している。

ロジャーの態度に不信感を抱くコロンボの表情 - コピー.jpg

ロジャーの態度に不信感を抱くコロンボの表情2 - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 (試しに録音を聴く場面で、動画速度を最も遅くして再生してロディ・マクドウォールとピーター・フォークの顔を観ていただきたい〈画面右下にある歯車マークの右クリックで指定可能〉。0.25%にしても、視線と表情筋が一瞬で自在に動いている。こういう繊細な技を、数十秒間台詞無しのアップで見せてくれる映像作品には、なかなか出会えない。)

(ロディ・マクドウィールとピーター・フォークの表情演技)


(叔父の電話音声を聴くロジャーと、彼の態度に不信感を抱くコロンボ)



3、肖像を伏せる手

(叔父に社長室に呼び出されたときのロジャーと机の上の叔父の肖像画)
ロジャーと叔父の肖像画 - コピー - コピー.jpg


 犯行後、ロジャーはクインシーの調査を捏造するために、彼が住んでいた部屋に忍び込む。

クインシーの机に偽の調査結果を置いたロジャーは、ふと机に飾られた写真に目をやる。

そしてそのフレームをポンポンと叩いた。

気軽に知り合いの肩を叩くように。

写真の中のクインシーは、美しい女性とくつろいだ様子で地面に腰を下ろし、幸せそうに笑っていた。


 この時の工作のおかげで、叔母の信頼を得て、社長となるロジャー。

社長室の椅子に腰を下ろし、座り心地よさげにくるくると回ると、ふんぞりかえって足を机に投げだす。

叔父のものだった机に。

そこにはまだ叔父の小さな肖像画が立てられていた。

ロジャーは、これを伏せて、また、ポンポンとやった。

ぐずる子供を寝かしつけるように。


 そこへコロンボと副社長のローガンが入ってくる。

 ロジャーとローガンのやりとりの間、コロンボは伏せられた肖像画を手に取り、しげしげと眺めた後、 

「えと、倒れたんですかね、こりゃあ」

トン、と、音をたて、再びロジャーと向き合わせた。

それまでローガン相手に調子よく喋っていたロジャーが言葉を失う。

「ねえ、刑事さん……取り立てて要件が無いんでしたら、帰ってもらえませんか」

ロジャーは目を伏せ、肖像画から顔をそむけていた。


 自分が殺した人間の写真と肖像画をぽんぽんと叩くロジャー。

彼は、自分が相手の人生を奪ったことも、与えた恐怖や苦痛もまるで考えていない、だから、恐ろしいことが平気でできる。


 一方、すでにロジャーを疑っているコロンボは、彼が伏せた叔父の肖像画を、「倒れたんですかね」と、とぼけつつ、トン、と鳴らして立て直し、ロジャーを、「故人」と「殺人」に、向き合わせる。

 故人の肖像を扱う、ロジャーとコロンボ、それぞれの小さなしぐさが示す、二人の思考。


 そして、叔父とクインシーの人生を、軽々しく無かったことにしようとしたロジャーは、この後、自分がしたことの意味を思い知らされる。

爆弾を作る知能はあっても「他者の痛みへの想像力」はいっさい持ち合わせていない。

そんな彼にも、いやというほどわかる形で。


 この「死の方程式」という作品、TV局のごり押しで急遽制作が決定し、脚本の練り上げに時間が足りなかったという裏事情があったそうだ。

 このため、「いくつもの名シーンがあるのに細部での詰めの甘さが散見される」、「じつにもったいない」作品と言われている。(町田暁雄『刑事コロンボ完全捜査ブック』p.48〜49より)

 確かにこの作品に「緻密な構成のミステリードラマ」を期待して観ると、裏切られてしまうかもしれない。

 だが、「想像力の欠如ゆえの無意味な残酷」という現代に通じるテーマ、それでいて、そんな危険な人物を、ドラマの中の悪役キャラクターとしては、ある種の愛嬌と哀れのある人物として演じきったロディ・マクドウォール(そして吹替の野沢那智)の演技力と、それを丁寧に追った場面。

(とくに、何かにつけて賑やかなロジャーがしゃべらないときのしぐさや表情に、彼の本性が垣間見える瞬間、そしてそういう人間が無残に敗北する結末は凄みがある。)

 演技力の見せ場が多いということと、キャラクターの味という点では、コロンボシリーズの中でも屈指の見ごたえのある作品だ。


【当ブログ関連記事】
NightGallery_201910_12 - コピー.jpg
映画「猿の惑星」、ドラマシリーズ「ミステリーゾーン」を手掛けた脚本家ロッド・サーリングのドラマご紹介記事。

ロディ・マクドウォールが第一話「復讐の絵画」で主役として登場。伯父の財産を狙って殺人を犯す軽薄な甥というキャラクターだけでなく、彼が着ているシャツまで共通している。おそらく「死の方程式」の設定の下敷きになった作品。
(上記の「脚本を練る時間の無さ」が原因で設定が使用されたのかもしれない)
ナイトギャラリー復讐の絵画ジェレミー 死の方程式と同じシャツ - コピー.jpg
(c)2019 Universal Studios. All Rights Reserved.

「復讐の絵画」以外の二作品も本当に大傑作なので、ぜひご覧いただきたい

レンタル購入可能期間:〜2025年7月31日 23時59分 配信終了日:〜2025年8月2日 23時59分

(1969年当時のトレイラー(※音量注意))マクドウォールをはじめとして、全員演技力が凄まじい。
Night Gallery (1969) Pilot Trailer


【参考文献】


【参照動画】※英語音声、作品の重要場面を含む

(爆弾準備から殺人までのダイジェスト)
The Look Of A Murderer Who THINKS He Got Away | Columbo

(犯人ロジャーとコロンボの対面)
Suspects Are NEVER Ready To Meet Columbo | Columbo


(叔父の電話音声を聴くロジャーと、彼の態度に不信感を抱くコロンボ)
Observations Of A Killer | Columbo


(ロープウェイで現場に向かうコロンボ)
COLUMBO... Is Not A Fan Of Heights | Columbo

(工場で捜査をするコロンボと協力するふりをするロジャー)

The Missing Clue | Columbo

posted by pawlu at 13:59| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年10月07日

『刑事コロンボ』「指輪の爪あと」名犯人役ロバート・カルプ登場

(犯人ブリマー役のロバート・カルプ)
指輪の爪あと ロバートカルプ - コピー - コピー - コピー - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

三回犯人を演じた名優、ロバート・カルプ

 『刑事コロンボ』第4話「指輪の爪あと」(1971年)は、コロンボ作品で三回犯人を演じたロバート・カルプ(1930〜2010)が探偵社の社長役で初登場した作品だ。


探偵社の社長ブリマーは、新聞王のケニカットから妻の浮気調査を依頼されるが、彼女は潔白だと報告をする。しかし実は不貞をはたらいており、うその報告の見返りとして夫人にある要請をする。だが、それを断られたブリマーは彼女を殴りつけ殺害。物取りの犯行に見せかけた上、警察の捜査に協力を申し出る。だがコロンボは遺体のほほにあった傷あとから、犯行の状況に疑問を持つ。
※2021年11月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能

 ロバート・カルプは、この「指輪の爪あと」のほか、「アリバイのダイヤル」(1972)、「意識の下の映像」(1973)で、それぞれ犯人役を演じた(また、「新刑事コロンボ」シリーズの「殺人講義」では犯人の父親役で登場している)。

(「アリバイのダイヤル」フットボールチームのジェネラルマネージャー、ポール・ハンロン役)

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Image Credit:Youtube


(「意識の下の映像」バート・ケプル博士役)

意識の下の映像 映像編集シーン ロバートカルプ - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube


 同じく何度も犯人を演じたジャック・キャシディパトリック・マクグーハンと並ぶ、コロンボシリーズには欠かせない名優だ。
カルプは、「刑事コロンボ」シリーズの犯人のひとつの典型である都会的でスマートなインテリの犯人像を創り上げ、高く評価された。(Wikipediaより

 知的な容姿と長身で、仕立ての良いジャケットや凝ったデザインのシャツを着こなし、コロンボの質問に理路整然と受け答えをする。

 冴えない身なりで、あちこちに話題が脱線するコロンボとは対照的なキャラクターだ。

 都会的でスマートな風貌のインテリ犯人と言えば、「殺人処方箋」のジーン・バリー、「5時30分の目撃者」のジョージ・ハミルトンなども存在感があったが、彼等の、論理的思考の果ての冷酷と比べると、カルプの演じる名犯人は、かすかに人間味を残していて、コロンボとの対決が進み、緻密な嘘が崩れていくとき、そのほころびから垣間見える、焦燥、敗北感、後悔などが、ドラマに陰影を添える。


(「殺人処方箋」で犯人フレミングを演じたジーン・バリー)

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(「5時30分の目撃者」で犯人コリア―を演じたジョージ・ハミルトン)

ジョージハミルトン5時30分の目撃者Too Many Inconsistencies  - コピー.jpg

mage Credit:Youtube


 とくに『指輪の爪あと』の殺人は突発的なものだったため、何食わぬ顔で捜査に協力するふりをしつつ、コロンボの目を真相からそらそうとするブリマーの計算と苛立ちには、カルプの名犯人に通底する「都会的インテリの奥の脆さ」が最もはっきり出ている。

(そして、視聴者は、ブリマーを追うコロンボと、コロンボに追われるブリマーの両方に感情移入して、複雑なスリルを味わう)


 【補足情報】

 被害者ジェーンの夫で新聞王のケニカット役だったレイ・ミランドは、第11話「悪の温室」で、財産目当てに甥を殺害する叔父ジャービス役で再登場する。

(ケニカット役のレイ・ミランド)

新聞王で被害者の夫ケニカット - コピー - コピー - コピー.jpg

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 ケニカットは、年下の妻を心から愛し、真相解明のためにコロンボに協力しながら、一方で捜査が迷宮入りしないようにと圧力をかけてくる。

(そして、遺族で権力者である彼の存在が、ブリマーにとってもプレッシャーになる)

 悲しみと威厳をにじませるケニカットと「悪の温室」の皮肉屋で強欲なジャービスの演じ分けもまた見事だ。

(「悪の温室」の犯人、ジャービス)

悪の温室 ジャービスとコロンボ - コピー - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

コロンボVSブリマー 静かなる対決シーン

 「刑事コロンボ」の見どころ、コロンボと犯人が表向き別の会話をしながら、頭脳戦を繰り広げる「対決」シーン。

 コロンボが、ブリマーのオフィスで検視報告書を見せながら、遺体のほほについた奇妙な傷あとについて話す場面は、歴代のコロンボと名犯人対決の中でも、最も大胆でスリリングだ。


(※以下、吹き替え版の台詞引用)


「色々と考えた末、ふっと気が付いたんですよ。(ほほの傷は)指輪で出来たんだって。」

「指輪だって……?というと、例えばこういうような指輪かね?」

 ブリマーは手を翻し、自分の指にはまっている(殺人のときにもはめていた)指輪を見せた。

指輪を見せる - コピー - コピー - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

コロンボはブリマーの指輪を指さす。

「ええ、そういうやつです。殴られた時当たったんでしょう」

 ブリマーは深くうなずきながらコロンボの報告書に目を落とした。

「ところで女性殴るときどうします?相手が女だと拳固はつかわないでしょう?そりゃまあもちろん……例外もあるけど、大抵の人は平手を使って、こうやるか、こうやる」

 コロンボはブリマーのほほに向けて左右に平手打ちのしぐさをした。

「そしてこう殴ったとすれば、指輪のせいで傷がつくはずがない」

 てのひらをほほに向けていたとすれば。

「だからバックハンドでやったことになる。こういうふうだ。うん!」

 コロンボは手の甲を、ブリマーの顔の手前で止めた。ブリマーは身じろぎもせず、その目は、大きな銀縁眼鏡の奥で怪訝そうに細められている。

「どういうわけで殴りかたにそんなにこだわるのかな。ねらいがわからないな」

「今右手でやったでしょう。この右手に指輪がはまってるとすりゃあ、切り傷は、右頬につくはずです」

ブリマーはコロンボの言葉を継いだ。

「だが夫人の傷は、左の頬……つまり犯人は左利きで、こういう具合に殴った」

ブリマーの手がコロンボに降り上げられた。

ブリマーの犯行再現 - コピー - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

もちろん直前で止まったが、その鋭さに、思わず顔をそむけかけたコロンボは、ブリマーの手の向こうで、ぱちぱちと目をしばたかせた。

「推理としては面白いねえ……ホシは左利きか……」

 ブリマーは書類を手にデスクの向こうにまわった。

「しかしそれだけのことで、はたして逮捕の手がかりになるかなあ」


 コロンボの言葉に応えて、「例えば」と前置きをしながら、まさに殺人のときにはめていた指輪を見せ、左利きの人間の犯行を再現する、ブリマーの冷静沈着さ、殴る仕草の鋭さに垣間見える殺気。

 二人がはじめて顔を合わせた時、(既にほほの傷を気にしていた)コロンボは手相に凝っていると称して、ケニカットとブリマーの手をしげしげと見ている。

手相を観るコロンボ - コピー - コピー - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

 「今更隠したら不自然になるという葛藤」から、「堂々と例示して無関係を装う戦略」への転換が、形の良い手を翻して指輪を見せる、ブリマーのなめらかなしぐさに秘められている。


 最初から犯人がわかっている「倒叙物」の推理ドラマでは、犯人役の俳優は「無実を演じる演技」をする。

 そしてその演技には、

「(視聴者のために)嘘をつく者の白々しさをかすかに含ませる」

「敗北に直面するまでは、犯人の本心を台詞で表現することが出来ない(無実だと嘘をついているから)」

という、縛りがある。

 「刑事コロンボ」の犯人役の俳優は、この繊細で複雑な演技を、名優ピーター・フォークと渡り合いながらこなさなければならないのだが、ロバート・カルプはそれを見事にやってのけた。

 この静かな対決シーンでの、コロンボに自分の犯行を再現されても瞬きもしないブリマーと、ブリマーの鋭い動きに一瞬気おされながらも、彼の反応を見極めようとするコロンボの、表情の対比は見事だ。

コロンボの犯行再現 バックハンドで殴ったはず - コピー - コピー - コピー.jpg
Image Credit:Youtube
平静を装うブリマー さぐりを入れているコロンボ - コピー - コピー - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

 刃物も銃も突きつけあっていないのに、そこには火花が閃いている。
 それは、コロンボとブリマーの対決であり、フォークとカルプの演技力のぶつかり合いでもあるのだ。

(二人の対決シーン動画)※英語音声
A Left- Handed Lead | Columbo



人工的な映像と音楽が斬新な犯行シーン

 「指輪の爪あと」は映像や音楽が緻密に作りこまれている。

 特に、突発的殺害から隠蔽工作までの展開は独特だ。

 スローモーションと音楽の中、被害者ジェーンを殴るブリマー。

 倒れたジェーンがガラスのテーブルに後頭部を打ち付け、飛散するガラスの破片と、暴力から我に返りかけているブリマーが重なる。

指輪の爪あと 砕け散るガラス - コピー - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(これはジェーンの最期の視界であり、同時にブリマーがその頭脳で築き上げてきた成功が砕け散ったことを象徴しているのだろう)


 そして、不穏な音楽が流れる中、呆然と目を見張るブリマーの眼鏡のレンズ左右それぞれに反射して、彼自身の証拠隠滅の一部始終が展開する。

指輪の爪あと 証拠隠滅シーン1ロバートカルプ - コピー - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

指輪の爪あと 証拠隠滅シーン2 ロバートカルプ - コピー - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(さらに車で死体を運ぶ時には、BGMがジャズに切り替わる。)


 この人工的な表現が、カルプの存在感と相まって、この作品は「ニュースでよく見る血なまぐさい殺人の話」ではなく「洗練されたミステリードラマ」に仕上がっている。


(犯行シーン動画)




 「何度見ても新しい!刑事ドラマの金字塔」

 これは、2021年のNHKBSプレミアムの『刑事コロンボ』番組紹介ページに添えられた言葉だ。

 50年以上前に生まれた『刑事コロンボ』が、今、「新しい」のはなぜか。

 テレビやネットから、情報が絶え間なくなだれ込んでくる現代。

 人々の脳は、現実の事件や人間関係の生々しい情報に埋め尽くされている。

 一方、旧シリーズ『刑事コロンボ』(1968〜1978)は、死体や性的シーンなどの直接描写は避け、犯人のキャラクター、画面、音楽など全てにおいて、観る者を魅了するように「創られた」作品だ。

 この50年前の製作コンセプトが、今、暗くドロドロとしたリアル情報に窒息しかけている人々の目には、非常に「斬新」に映るのだ。

 中でも、最も作為に徹した「指輪の爪あと」は、今、一番「新しい」作品かもしれない。



【当ブログ関連記事】

(ロバート・カルプが三回目の犯人役を演じた作品のご紹介記事)
スーパーで話すコロンボとケプル博士 - コピー.jpg
c 1973 Universal City Studios LLLP. All Rights Reserved.



画像出典動画(引用順)※注:他の回や物語の核心シーンを含む












参考文献





刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX [Blu-ray] - ピーター・フォーク, ジョン・カサヴェテス, ベン・ギャザラ, ジーナ・ローランズ, アン・バクスター, パトリック・マグーハン, サム・ワナメイカー, リー・グラント, ハロルド・グールド, ロバート・カルプ, レイ・ミランド, レスリー・ニールセン, ロディ・マクドウォール, アイダ・ルピノ, ピーター・フォーク, ジョン・カサヴェテス, ベン・ギャザラ, パトリック・マグーハン, サム・ワナメイカー, スティーヴン・スピルバーグ
posted by pawlu at 18:31| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月18日

刑事コロンボ「殺人処方箋」コロンボと犯人フレミングの対決シーン


めしばな刑事タチバナ 究極の一本 - コピー.jpg




 2021年9月18日からBS1で名作刑事ドラマ『刑事コロンボ』が再放送される。

(番組公式HPはこちら


 第一回目の放送『殺人処方箋』は、コロンボがシリーズ化される前の「パイロット版」のひとつだ。

 そのため、コロンボのキャラクターも作品のテイストも少し異なり、そのシャープさは、シリーズ化されたあとの作品とは別の魅力がある。

めしばな刑事タチバナ 最初のコロンボ - コピー.jpg

出典:『めしばな刑事タチバナ』4「アイス捜査網1」

普段は、主人公のタチバナほか、警察署の人々が食べ物談義をするコメディ漫画だが、この回はコロンボ役のピーター・フォークを追悼し、ドラマの名作と、作品に登場する食べ物をテーマにしている。

刑事課長の韮沢(左)は、自分の中の究極の一本として、「殺人処方箋」を挙げた。


【あらすじ】

 精神分析医のレイ・フレミングは、患者の若い女優と愛人関係にあった。
彼は妻のキャロルから、離婚してこのスキャンダルを公表すると言われ、愛人と共謀して妻の殺害計画を実行する。
自宅で強盗に襲われ殺されたように工作し、その後、キャロルに変装した愛人と共に、大芝居を打って完璧なアリバイを作った。 (NHK番組紹介文より)

(コロンボ〈左〉とフレミング〈右〉髪型を含め、コロンボの身だしなみがシリーズ化後よりもきっちりしている。)
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【名場面】 コロンボと犯人フレミングの対話

 コロンボに疑われていることに気づいたフレミングは、友人である検事に訴え、コロンボが捜査から外れるように圧力をかける。
 しかし、捜査から外されたはずのコロンボが、自分の精神分析をしてほしいと、図々しくフレミングのオフィスを訪ねてくる。
 既にお互いの意図に気付いているが、コロンボとフレミングは、表面上は笑みを浮かべて相対峙する。
 (以下、吹き替え版の台詞引用)

「あたしの問題っていうのはですねぇ。疑り深いって言うことです。人を信じない。これが問題なんですよ。 たとえば担当を外されたりすると、すぐ、誰かの圧力じゃないかと勘繰るんです。裏に何かあるなってねぇ……。 どうすりゃいいんでしょうかねぇ」

 フレミングは「職務をよく考えるんだな」と冷たく言い放つが、コロンボは「へぇえ?」とぴんとこないふりをする。

「君は公務員だろう。公務員とは我々市民の公僕のはずだ。今後僕につきまとったら本当に上司に話すよ」
「このところあちこちに話していらっしゃるようですが?」
 フレミングはとうとう笑みを漏らす。
「ふふ……君は実に見事な男と言えるな」
「あれ、どうしてですか先生?」
「君のようにしつこい人物ははじめてだよ。だが愛嬌がある。驚くべきはその愛嬌だな。道化だと言われたことは?」
「あたしが?」
「そう。君だ」
「そりゃないですよ。いくらなんでも」
「まさしくそうさ。君は油断も隙もないずるがしこい妖精のような男だ。担当を外されたという口の下からまだ信じられないほどのあつかましさでおしかけてくるんだから。見上げたことだ。癇に触ることではあるが敬意を払う」

 フレミングは豪華な棚から酒を出し、二人はバーボンを傾けながら会話をはじめる。
(コロンボの名物であるコロンボと犯人の表向き和やかな対話〈その実「対決」〉シーン)

「ひとつ君の分析をしてあげよう。 精神医にかかりたいと言ったろう。その必要の有無は別として、君のは典型的な代償作用の実例と言える」
「何ですって?」
「欠点をカバーする代償作用さ。きみは優れた知性を持つがそれを隠している。 道化のようなふりをしている。なぜか?その外見のせいだ。外見のせいで押しも利かないし、尊敬もされない。 が、君はその弱点を逆に武器とする。君は不意打ちをかける。見くびっていた連中はそこで見事につまずく。 今夜の訪問もそうだ」
「いやあ、こうやられちゃあ手も足も出ません。先生の前じゃあよっぽど気を付けないと。さすがに、よくわかってらっしゃる。」
「こんどはおだてかね」
「いえいえ、お世辞じゃなくほんとです」

 コロンボは、ほんの少し話しただけで、全てを見透かすフレミングの手腕を讃嘆する。
 そして「こいつは無理でしょうなあ」と前置き(という形の挑発を)しつつ「見ず知らずの」「仮定の殺人者」の「タイプ」の精神分析を持ちかける。

「あたしの言うのは、すぐかっとなって酒瓶でぶんなぐっちゃうような手合いじゃなくって……つまりですね……。 その……殺すにしてもです……。しっかり計画を立てて、確実に実行するようなタイプですが……。 そういうタイプは、どういうんでしょうねぇ……?」
「普通ならかなりの相談料を頂くんだが、ま、あなたのことだからね、特別に無料としておこう」
「そりゃどうも」
「よろしい。ここで対象とするのは犯罪者ではあるが……それも……単純な口論などによるものではなく、発作的な凶行によるものではなく、極めて緻密な、知的な計画殺人者だ。それはどのような人物か?衝動的でないのは明らかだ。立案し、計画し、危険を最低限とし、感情ではなく理性によって方向づけられている。それにおそらく学歴も高いな」
「つまりある分野の専門家で?」
「かもしれん。とにかく普通の人間だが、非常に緻密で、勇気もある」
「勇気ですか?」
「もちろんだ。いかなる犯罪にせよ、やり遂げるにはね、強靭な意志が必要だ」
「ええ……そりゃあそうでしょうが……でもあたしがひっかかるのは……この場合それが殺人だってことなんです」

 コロンボは、犯人が心のバランスを欠いた状態なのではないかとフレミングに問う。

「どうして?道徳に反する行動をしたからかね?道徳は絶対ではないからね。現代では他の全てと同様相対的だ。 その男は君や僕と同じく正常かもしれん。殺人に嫌悪を抱いたとしてもだ。唯一の解決法であれば用いる」

 フレミングは、犯行は犯人の「現実主義」によって成されたものだと断言する。
 あくまで冷静に、それが必要な行為であることを疑わずに、計画を練って殺人を実行できる人間。

「そういう人物を、どうやって捕まえましょう」
 フレミングは、酒を飲みながらコロンボを見据え、グラスから唇を放した。
「捕まらんね」
「かもしれませんね。 敵は随分と頭が良さそうだし、刑事ってのはそれほど秀才揃いってわけじゃないしね。 そいでも、まあ、あたしたちだってプロですからね。 たとえばいまのその殺人犯にしてもです。頭はいいが、素人ですからね。一遍こっきりしか経験していないわけです。 ところが、あたしらにとって、殺しって奴は、「仕事」でしてね。年に100回は経験しています。ねぇ先生、これはたいした修練です」
「君の場合役立ってないねぇ。それほどの経験がありながら間違った結論に飛びついている」
「結論って?」
「僕は家内を殺していない」
「……そんなこと言ってやしませんよ」
「たしかにそうだ、ほのめかしていると言うべきだ。だが、仮にぼくが殺したとしても、いいかね。仮にだよ。君には立証できないだろうな。……だから気持ちよく別れて別な仕事にかかりたまえ。僕も忘れることにしよう」


【考察1】「妖精」で「道化」のコロンボ(「枠外」の存在)

 このバーボンを傾けながらの一見優雅な「対決」シーンには、その後の「コロンボ」シリーズの骨組みとなる要素が表れている。

 検事から圧力をかけられてもなお、「つい人を怒らせてしまう癖を治したいと思っている患者」というていで、フレミングのオフィスまでおしかけてくる、コロンボの世間の枠組みから外れたキャラクターだ。

 富と名声とコネクションが支配するロサンゼルスにあって、フレミングも指摘する冴えない風貌で人を油断させておきながら、事件の核心を突くコロンボ。
 この、成功者たちとの対をなす個性は、後に、「ぼさぼさ頭」と「雨の降らないロスでよれよれのレインコートを愛用している」という特徴でより強調されていく。

 フレミングは「君は公務員だろう、公務員とは我々市民の公僕のはずだ」
と暗にコロンボに立場をわきまえさせようとするが、ひるまないコロンボが、検事に圧力をかけさせたことをほのめかすと、今度はコロンボのことを
「油断も隙もないずるがしこい妖精のような男」
「道化のようなふりをしている」
と言っている。

 「公務員」から「妖精」「道化」という形容の変化は、富や権力が支配する社会の枠外から、成功者たちの罪を追求していく、コロンボ独自の立ち位置を示している。

 ところで、「ぼさぼさ頭によれよれの服装」といえば、『犬神家の一族』などで知られる日本の名探偵「金田一耕助」も当てはまる。





(映画『犬神家の一族』(1976年版)の金田一耕助〈石坂浩二〉)
石坂浩二の金田一耕助 犬神家の一族1976 - コピー.jpg
Image credit:Youtube

(『犬神家の一族』予告編 ※注、グロテスクなシーンを含む)


 映画『犬神家の一族』の市川崑監督は、外の世界からやってきて、代々続く閉鎖的な人間関係から生じた事件を解決し、その後は人々の感謝から逃げるように去っていく金田一のことを、「神様や天使のような存在」と語っていた。

 そして、金田一を好演した石坂浩二氏が、金田一の孤独を指摘したとき、「天使なんだから孤独で当たり前だ」と答えていたそうだ。(※1)
(2006年のリメイク版結末では、見送りの人々が来る前に姿を消してしまった金田一に対する「あの人、まるで天から来た人のようだなあ」という台詞が付け加えられている)

 この市川崑監督の金田一耕助への「天使」という言葉と、フレミングのコロンボへの「妖精」「道化」という言葉は、どちらも「枠外から訪れ、その場のルールに左右されずに罪を明るみにしようとする存在」を言い表している。

 (作者の横溝正史も「刑事コロンボ」のファンだったが、金田一の初登場は1946年と、約20年先んじていたことを自負してか、「金田一耕助の弟分みたいなコロンボ」と語っている。(※2)



(※2)『刑事コロンボ完全捜査ブック』p.203「コロンボと日本ミステリの大家たち 横溝正史・鮎川哲也はコロンボファンだった」文/早見慎司

【考察2】コロンボと『罪と罰』

(1,コロンボのモデル「ポルフィーリィ」)
(主人公で殺人犯のラスコーリニコフ(右)と判事ポルフィーリィ(左))
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 ドストエフスキーの小説『罪と罰』には、守銭奴の老婆とその妹を殺して金を奪った主人公の青年ラスコーリニコフを追い詰める、判事ポルフィーリィという男が登場する。

 刑事コロンボの脚本を担当したウィリアム・リンクは、コロンボのキャラクターはこのポルフィーリィがモデルだと発言している。(※)


 ポルフィーリィはラスコーリニコフと対面したとき、すでに彼に疑いを抱いていて、ラスコーリニコフが過去に記した論文にあった
「天才は社会に有益な目的のためならば法を犯してもいい(殺人すらも)」
という論調を持ち出し、彼と討論する形で、疑惑を追求していく。

 そしてラスコーリニコフも疑われていることに気づきながら、自分の論文の意図を説明していく。

罪と罰 対決 - コピー.jpg

 この互いに策略を秘めながらの応酬が、コロンボのイメージの源泉になっている。

(※)刑事コロンボ - Wikipedia『私が愛した"刑事コロンボ"』NHK衛星第2テレビジョン脚本家ウィリアム・リンクインタビューより

(2,フレミングのキャラクター)
「殺人処方箋」のフレミングは、
「道徳は絶対ではないからね。現代では他の全てと同様相対的だ。 その男は君や僕と同じく正常かもしれん。殺人に嫌悪を抱いたとしてもだ。唯一の解決法であれば用いる」
と語っていて、彼の、道徳は相対的なものだという考えと、自分の知性への自負は、ラスコーリニコフと重なる。
(途中で、事件に全く関係ない男が、自分が殺したと思い込んで自白する展開も一致している)

 ただし、ラスコーリニコフの動機は貧困、そして、その後、巻き添えに殺した善良な妹への罪の意識に苦悩するなど、根本的な性格はまるで違っている。

 コロンボはフレミングの殺人に罪悪感を抱かない性格を見抜いて、
「そういう人物を、どうやって捕まえましょう」
と、彼に聞き、フレミングは
「捕まらんね」と、あざけるように答える。

 物的証拠は無く、良心の呵責による自白も期待できない、極めて知能の高い犯人。

 コロンボは、フレミング自身から真相を引き出すことを断念する。

 だが、自分が浮気を繰り返したことが原因なのに、殺人までも、「唯一の解決法であれば用いる」と言い放つ、自分以外の全ての他人に対する冷淡さが、フレミングの犯罪者としての強みであり、致命的な欠点でもあった。





 このように、「殺人処方箋」はコロンボの中で、最も『罪と罰』と重なる部分の多い作品であり、また「完全に罪の意識を感じない現代の成功者」という、犯人側のキャラクターのずらしが、『罪と罰』とは大きく異なる印象を与える。

 世界最高の文学を下敷きに、現代社会と、そこで成功する人間の乾いた一面を組み込んだこの作品。

 「究極の一本」という意見もうなずける。

 しかし、『刑事コロンボ』は、ここからさらにユーモアや哀愁を加えた、エンターテイメント性の高いドラマへと変化していく。

 どちらが好みかは、人により、またその時の気分により、変わってくるだろう。見比べてみていただきたい。

参照作品:












posted by pawlu at 15:30| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月13日

「刑事コロンボ」NHKBS1で再放送開始(2021年9月18日〜)


 刑事ドラマの名作『刑事コロンボ』シリーズ。

 冴えない風貌の刑事コロンボが、ロサンゼルスの成功者たちを相手に繰り広げる上質のミステリードラマだ。

(初代コロンボ役の小池朝雄さんら、日本の声優陣の素晴らしい吹き替えも見どころ)
(刑事コロンボ コンプリート ブルーレイBOX トレーラー※『新刑事コロンボ』を含む69編収録のもの)

(放送予定日:9月18日(土)午後4:20午後6:00


(1)「殺人処方箋(しょほうせん)」 何度見ても新しい!ミステリードラマの金字塔。記念すべき『刑事コロンボ』シリーズ第一作。愛人と共謀して妻を殺害した精神科医をコロンボがじわじわと追い詰めていく。 精神分析医のレイ・フレミングは、患者の若い女優と愛人関係にあった。彼は妻のキャロルから、離婚してこのスキャンダルを公表すると言われ、愛人と共謀して妻の殺害計画を実行する。自宅で強盗に襲われ殺されたように工作し、その後、キャロルに変装した愛人と共に、大芝居を打って完璧なアリバイを作った。  (NHK番組HP内紹介より)

 最初に犯人が事件を起こし、コロンボが捜査の中で彼らの嘘を暴いていく「倒叙物」の形式で、名優ピーター・フォーク演じるコロンボと、豪華なゲストスター犯人がぶつかり合う、「対決の快感」(※1)は、今も観るものを惹きつけてやまない。
(故、田村正和さんの名作『古畑任三郎』は、このシリーズのオマージュとなっている。)

 罪という境界線を隔てて「隠す者」と「暴く者」が向かい合い、たくらみを秘めたまま言葉の応酬をする、独特の緊張感。

 それは、ときに互いの知性や人柄に一目置く者同士の、奇妙な心の交流にすら発展し、「名探偵」に相対する「名犯人」という言葉を生み出した。(※2)

(最高傑作とも言われる「別れのワイン」で、犯人のエイドリアンとワインを飲むシーン
別れのワイン 一緒にワインを飲む - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

(「死者の身代金」で、犯人アビゲイルと彼女の亡き姪の事故について話すシーン)
死者のメッセージ 海辺での対話 - コピー.jpg
Image Credit:Youtube



【コロンボの「名犯人」たち】

(「指輪の爪あと」の探偵社経営者ブリマー〈ロバート・カルプ〉)
指輪の爪あと ロバートカルプ - コピー.jpg
Image Credit:Youtube


(「別れのワイン」のワイナリー経営者エイドリアン〈ドナルド・プレザンス〉)
別れのワイン エイドリアン・カッシーニ - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

(「祝砲の挽歌」の陸軍幼年学校校長ラムフォード大佐〈パトリック・マクグーハン〉
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Image Credit:Youtube

(「魔術師の幻想」のマジシャン、サンティーニ〈ジャック・キャシディ〉
魔術師の幻想 ジャック・キャシディ - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

(「死者のメッセージ」の小説家、アビゲイル・ミッチェル〈ルース・ゴードン〉)
死者のメッセージ アビゲイル・ミッチェル - コピー.jpg
Image Credit:Youtube

(こうして彼らの一瞬の表情を切り取っただけでも、名犯人を演じたスターたちの素晴らしい演技力と存在感が浮かび上がる)

 また、よれよれのレインコートにぼさぼさ頭のコロンボが、ロサンゼルスの成功者たちの世界に足を踏み入れる世界観のコントラストも魅力的。

(それに合わせて登場する1960年代〜1970年代の豪邸やファッション、車なども見逃せない。)

 死体や血をほとんど映さない抑制された場面展開と、緊張感とユーモアの入り混じる、圧巻の演技対決。

 今、いっそう存在感を増している傑作シリーズだ。



(ブログ参照動画)※引用順 

「別れのワイン」


「死者のメッセージ」

「指輪の爪あと」


「祝砲の挽歌」


「魔術師の幻想」



(※1)『刑事コロンボ 完全捜査ブック』「全エピソードガイド「別れのワイン」」p.71ほか
(『刑事コロンボ』の魅力として繰り返し解説に登場する言葉) 監修/町田昭雄 絵/えのころ工房

(※2)同上「名犯人10傑」 p.10


posted by pawlu at 20:20| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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