(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」映画オープニング)
Back to the Future | Opening Scene in 4K Ultra HD | Marty McFly Is Just Too Darn Loud
(※主題歌「パワー・オブ・ラブ」が4:54からフルでかかる、爽快な幕開け)
NHKBS1でドキュメンタリー番組「バック・トゥ・ザ・フューチャー あせない魅力の裏側」が放送される。
番組放送情報:BS1 10月15日(日) 午後4:30 〜 午後5:20
NHK HP 番組紹介
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はなぜ不朽の名作になったのか。脚本家、俳優、制作スタッフのインタビューやアーカイブス映像を使い、制作の裏側を掘り下げる。 1985年の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はなぜ今も多くの人の心を動かすのか。脚本家ボブ・ゲイル、プロデューサーのスティーブン・スピルバーグ、母親役のリー・トンプソン、歌手兼俳優のヒューイ・ルイスほか、多くのスタッフが制作の裏側を解き明かす。ファン必見のドキュメンタリー。
原題:Marty&Doc The Inside Story of a Phenomenon(フランス 2022年)(C)ARTE France / CAPA PRESSE - 2022
今も世界中で愛される名作映画が、実は複数の映画会社からアイディアを却下されたこと、マイケル・J・フォックスがキャスティングされるまでの裏話、物語の魅力を支えた音楽(テーマソング「パワー・オブ・ラブ」やマーティーの演奏シーン)など数々のエピソードが語られている。
とくに面白かったのは、あの作品が、コメディの中に、アメリカの1950年代の問題を描き出していたという部分。
魅力的なファッションや華やかなライフスタイルで、アメリカの黄金時代のようにも見える1950年代を「そんなにいい時代だったか?」と、とても冷静に振り返っている。
❝「『古き良き時代』は実際にはひどかったんです。私たちは過去を美化して記憶をゆがめています」
(脚本・プロデューサーのボブ・ゲイル談)
❝「昔(1950年代)のほうが良かったというのは、異性愛者の白人男性の見方に過ぎません」
(マーティの母親ロレイン役のリー・トンプソンのコメント)
第二次大戦後、男が戦地から戻り、女はキッチンに押し戻され、窮屈な人生の中で完璧さを求められた多くの妻が、夫の帰宅前にアルコールや薬で気持ちを落ち着けていたという。
(ロレインはそんな母親の隠し持つ酒を未成年のころから盗み飲み、1980年代にはアルコールが手放せなくなっている)
そして、公然と行われていた人種差別。入れる店まで分けられていた。
カフェの店員ゴールディは、マーティーの父ジョージが不良のビフにいじめられるままなのを見て、「自信を持てよ!やつらに一生こきつかわれてもいいのか?」と奮起させようとする。
(ゴールディ登場シーン)※英語音声
Back to the Future: Two McFly HD CLIP
「俺は立身出世してやる」と向上心に燃えるゴールディは、1980年代に、見事市長になっており、その未来を知っているマーティが彼に「市長になる」と言ったのを聞いて、将来の夢を決める。
ゴールディを演じたドナルド・フュリラブは、ちょっといたずらっぽいチャーミングな笑顔でこう語っている。
「バラク・オバマが私の役を見て大統領に立候補しようと思ったとしたら、うれしいけど。もしそうなら、すごいな」
そして、自信をもってこうつけくわえた。
「オバマも、あの映画は観ているからね」
(帽子が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロゴデザイン入りなところに、愛を感じる)
「自分の運命は自分で決めろ」
これは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の一番大切なテーマで、この点については、様々な差別が当たり前のようにあった1950年代よりも、1980年代のほうが圧倒的に素晴らしいということが、映画を観ると伝わってくる。
(個人の自由が完全に実現できているかと言われれば、1980年代どころか、いまだに「まだ」だが、少なくとも「他人の人生を偏見で阻むな」という考えは広まった)
【補足】
ドキュメンタリーの中でも紹介されているマイケル・J・フォックスの出世作のテレビシリーズ「ファミリー・タイズ」には、マイケルが演じるアレックスの幼馴染で大学の同級生のジャレットという青年が登場し、人種のことなど何一つ触れずに、普通にしょっちゅう友達ならではのケンカをしている。 彼らがボランティアで自殺志願者の電話相談に応対した回(1984年)は本当に名作だった(DVDに収録)。 (電話応対中にいつもの癖で張り合ってしまい、まともなアドバイスをする前に間違えて電話を切ってしまったアレックスとジャレット。相談者がかけなおしてくれるのを祈る思いで待ちながら、反省点を探ろうとしたが、思い返すと反省点以外何もなかった)
マイケルが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に選ばれたのは、このシリーズでの素晴らしい演技があったからだし、映画に通じるユーモアや前向きな聡明さのある最高のドラマなので、ぜひご覧いただきたい。
販売元 : パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン c2008 CBS Studios, Inc. All Rights Reserved.
一方で、映画のパート2では、ビフが億万長者になり、富を間違った方向に使った結果、1985年の町が荒れ果てるという世界も見せている。
1950年代の限界を示しつつ、80年代から顕著になった拝金主義の行きつく先を見せ、未来なら確実に良いわけではないという警告もしていたのだ。
(番組では、暴走するビフのモデルはドナルド・トランプ元大統領〈当時は大富豪として有名だった〉だと明言し、現実がフィクションに追いついてしまったと言っている〈でも、それをテレビで言い切れる自由さはアメリカの強みだと思う〉)。
番組内で語られているとおり、その後も映画は数々産み出されてきたが、生き残れた作品はわずかだ。
その時大ヒットする作品と、長年愛される作品が同じとも限らない。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、世界的大ヒットと普遍性を実現した、数少ない幸運な傑作だ。
(脚本家ボブ・ゲイルは、良い映画を作るために学び、苦労し、あの映画でついに夢をかなえたと語っている)
そういう奇跡を掴むまでの、人々の真剣な試行錯誤の道のりを知ることができる、とても魅力的なドキュメンタリーだった。
(本国アメリカではなく、フランスがアメリカのサブカルチャーを敬意をもって分析した番組という点も面白い)
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が「未来も生き残る作品」だと時間が証明した今、あの作品を楽しみながら学ぶことは、時代を超える名作を作るには何が必要か、そして1950年代、80年代の続きの時代を生きる私たちの心が、本当に求めているものは何かを知る、最高のヒントになるだろう。
(C)ARTE France / CAPA PRESSE - 2022
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(※「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と同時代にスピルバーグが製作総指揮を務めた、80年代SF映画の名作ご紹介記事。同じく1950年代の文化を取り入れた作品でもある)
(関連動画)
(1955年の父に会ったマーティ。ビフやゴールディも登場するシーン)
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