『のび太の恐竜(原作漫画版)』の化石発掘シーン

大長編ドラえもん1 のび太の恐竜 (てんとう虫コミックス) - 藤子・F・不二雄
『のび太の恐竜』は、のび太が発掘した恐竜の卵から生まれた首長竜の「ピー助」とのび太たちが、ピー助の生まれ故郷の白亜紀で繰り広げる冒険の物語。
大長編ドラえもんシリーズの中でも傑作のひとつで、繰り返し映画化されている。
最新の2020年公開リメイク版では、発掘体験に行ったのび太が新種の恐竜二頭をふ化させるという話になっているが、原作の化石発掘の経緯は次のようなものだった。
ティラノサウルスの爪の化石をスネ夫に自慢され(しかもあまりよく見せてもらえなかった)、くやしさのあまり、自分で恐竜まるごとの化石を発掘してみせる!!と、うっかり宣言してしまったのび太。
「できることかできないことかよく考えてからしゃべってくれ!!」
だいたいきみは…無責任というか……。かるはずみ!おっちょこちょい!
助けてもらうつもりだったドラえもんに立て続けにお説教をされたのび太は、「もういい!」と、自力で発掘をするべく、本をかき集めて勉強をはじめる。
(かき集めた五冊の本のうち『太古の動物』『恐竜の発見』『化石の見つけ方』はいいとして、のこり二冊が『怪獣図鑑』と『回虫のおろし方』なところがのび太らしい。〈藤子F先生の緻密なギャグ〉)
「あの頭では半分も理解できないと思うし……。すぐあきて投げだすだろうけれど……」
(半分理解できたとして、そのうちの五分の二は怪獣と回虫の知識になるけれど……。)
「自分の力でやってみようという心がけはりっぱだ!失敗してもいいさ!温かい目で見守っててやろう!」
そう思ったドラえもんは、読書にいそしむのび太を「あったかーい目……のつもり」で見つめるが、振り向いたのび太は、
「なんだよ。ニタニタとしまらないうす笑いなんかうかべて……」
と、バッサリ切り捨て、ドラえもんを憮然とさせる。
(「あったかーい目……のつもり」の丸っこい手書き文字が味わい深い)
独学の結果、近所のガケを有望とにらんで、朝から発掘を始めたのび太。
しかし、手が痛くなるまで掘っても、化石が出てこない。
「こらあ!そんなところで何してる!」
ガケ下の家のおじさんの怒鳴り声がした。
「どうも今朝から屋根や庭に泥が降ってくると思ったら……」
ガケから降りてきたのび太は言った。
「よろこんでください、いやになってやめるところです」(言い方)
「やめればいいというものではない!」
おじさんは、罰としてゴミを捨てる穴をのび太に掘らせることにした。
(当時、生ごみは庭に穴を掘って埋める家が多かった。)
これもドラえもんが手を貸してくれなかったせいだ、と、あんなに「あったかーい目」で見守ってくれていたドラえもんを逆恨みしながら、穴掘りをしていたのび太だったが、そのシャベルが恐竜の卵の化石を掘り当てた。
卵をタイムふろしきでよみがえらせ、孵化させると、かわいい首長竜(フタバスズキリュウ)の赤ちゃん「ピー助」が生まれた。
ピー助は、布団の中で卵をあたためてくれたのび太によくなつき、ふたりは固い絆で結ばれることになる。
(この作品は、のび太のピー助を守ろうとする姿や、ジャイアンとの友情、しずかちゃんへの思いなど、感動的なシーンがたくさんあって本当におすすめだ。)
「恐竜さん日本へようこそ」(てんとう虫コミックス31巻収録)
「中国の恐竜展」(1981年上野国立科学博物館で開催)を観に行ったのび太。
日本でも中国のように恐竜の化石がたくさん見つかってほしいと思い、飲んだ相手を招待できる薬「招待錠」を使って、大昔の中国の恐竜たちを、日本に招待しようとする。
(当時はフタバスズキリュウ以外、日本の恐竜の化石はあまり見つかっていなかった。)
「ぼくがうちの庭から掘りだしたりして」
「ノビタサウルスなんて名前がついたりして」
ワクワクしながらタイムマシンに乗り込んだ二人は、来てほしい恐竜たちを探して「招待錠」を飲んでもらうが……。
「恐竜の足あと発見」(てんとう虫コミックス44巻収録)
のび太の「足あと」の夢
昼寝をこよなく愛し、怠け者のイメージの強いのび太だが、実は、大きな夢があった。
「とにかくこの世に生まれたからには、何か一つ足あとをのこしたい!」
野比のび太の名を歴史の一ページに残したい!
「ツチノコ見つけた!(てんとう虫コミックス9巻収録)」の中で、そう決意したのび太は、そのためにはどうすればいいのか、真剣に考えながら寝落ちしてしまい、鼻チョウチンとともにいびきをかく。
しかし、この直後、ドラえもんから、幻のヘビ「ツチノコ」の第一発見者として、ジャイアンが未来の図鑑に名を残していることを知らされ、ジャイアンより先にツチノコを見つけようと捜索に乗り出す。

ドラえもん(9) (てんとう虫コミックス) - 藤子・F・不二雄
また、「歩け歩け月までも」(てんとう虫コミックス26巻収録)でも、
「せっかくこの世に生まれたからには、歴史に名を残したいんだよ。だれもやっていないようなことをして…………」
と、人生について、夜更けまで考え込んでいる。
感心したドラえもんが、「たとえばどんな?」と、真剣に耳を傾けると、
「さか立ちで世界一周するとか、大仏さんの手で、世界一のあやとりを作るとか」
あれこれ考えているとねむれなくて……。
ドラえもんが無言で押入れの寝床に戻る中、のび太は引き続いて物思いにふけっていた。(そして翌朝寝坊した。)
(省略の効いた絶妙のテンポ。あとドラえもんのお尻かわいい)

ドラえもん (26) (てんとう虫コミックス) - 藤子・F・不二雄
どちらも、オチはいつもののび太だが、とにかく、彼にはそういう少年らしい夢があったのだ。
ツチノコ探しに奔走したり、大仏さんの手で世界一のあやとりを作ろうかと考えたり、恐竜の足あとの化石を発見しようとして「サルのような生き物がころんだ跡の化石」を作ってしまって進化論を大混乱に陥れたりしていたのび太だが、今回、足あとの化石が見つかり、シン先生が、その足あとを残した新種の恐竜の名前を「ノビタイ」にしてくださったことで、「この世に生まれたからには何かひとつ足あとをのこしたい!野比のび太の名を、歴史の一ページにのこしたい!」というのび太の夢が実現した。
ピー助を育て、庭で発見した化石に「ノビタサウルス」なんて名がついたりして、と、ドラえもんと嬉しそうに話し合っていたのび太にとって、最高の「足あと」を、ついに残すことができたのだ。
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