「地底のドライ・ライト」はドラえもんとのび太が、石油の代替エネルギーとして太陽光を地底に集めた「ドライ・ライト」を販売するエピソード。
照明にも湯沸かしにも暖房にも使える上に、環境にやさしい夢の燃料だったが、のび太が「これを売って儲ければどら焼き食べ放題」という悪魔のささやきをしてしまったために、ドラえもんがかつてないほど強欲な一面を露呈してしまう。
(てんとうむしコミックス33巻収録、1982年発表)
【あらすじ】(※ネタバレご注意)
冬のある日。
部屋の石油ストーブを「部屋のあちこちでストーブをつけておくなんてもったいない」と、ママに消されてしまったのび太とドラえもん。
ケチだとぶーたれるのび太に、「うちの苦しい経済事情も、わかってあげなくちゃ」と物わかりのよすぎる発言をするドラえもん。
図星でしたが、ママは、地球には石油がもうあまり残っていないから大事に使わないと、と、ごまかします。
それを聞いたのび太は、石油がなくなったら乗り物は止まるし、電気は止まって暗くて寒くなって……とはげしく怯えます(すなお)。
そこで、ドラえもんが22世紀の主要エネルギー資源、「ドライ・ライト」のかけらを見せてあげます。
太陽光線のエネルギーをドライアイスみたいにかためたものだというそれは、非常に温かく、光をはなち、寒さに触れると、暑い場所でのドライアイスのように溶けてしまうという性質を持っていました。
実は夏の間、地面に降り注ぐ日光をドライライトにして、その鉱脈をのび太家〜町内の地下に貯蔵していたドラえもん。保温容器に入れて、いるだけ出して使うことにします。(鉱脈への入り口も要密閉。)
カイロにも、照明にもなり、やかんに入れればお湯を沸かせるという、非常に便利なこの燃料、なんてすばらしい!と感動したのび太は、ドライ・ライトを販売する会社の設立を持ち掛けます。
やがては世界中に輸出して大儲け……と展望を語るのび太を、きみはすぐそんなこと考える!!と強くたしなめるドラえもん。
ところが、「安くて便利なエネルギーが手に入ればみんなよろこぶよ。悪い?」ともっともらしいことを言われた挙句、ドライ・ライトで儲ければドラやき食べ放題とそそのかされたドラえもん、「や、や、やろう。やろう!!」 とよだれをたらしてじたばたし、いそいそ訪問販売を開始します。
100g100円で町内の人々に売り出そうとしましたが、高いからいらないとか、友達相手に金もうけしようなんて!とか言われて、まったく売れずに寒風の中、スゴスゴもどってきます。
やっぱりこんなことで金儲けするのはよくない……と、思いなおそうとしていたドラえもんに対し、昼寝していたのび太(おい)、
「きみを社長にしよう(提案内に出てくるドラえもん社長、なぜかチョビひげスーツ姿)。ビルなんかすぐたつ(ドラ会社)。そうだ、社長室の横にドラやき食堂を作ろう。いつでもすきなだけドラやきが食べられるの」
と、のび太が提案しているコマに描かれているのは、ドラやきをどんぶり飯に乗せた「ドラどん」、熱々の鉄板で焼いた「ドラステーキ」、あん以外にもなにやら挟んである「ドラバーガー」、カレーソースをかけた「ドラカレー」、半分に切ったドラやきを美しく並べてシソ等を添えた「ドラさしみ」。
「ドラさしみ」がギリで(シソいらないけど)、後は到底一般的に食べたいと思うようなラインナップではありませんが、ドラえもん的には理性が崩壊するほど魅力的なプランだったようで、メロメロ目&よだれダラダラになってしまった挙句、なにがなんでも売ってくる!!と飛び出していきます。
(めずらしく「のび太が見送り、ドラえもんが動く」構成なので、ドラえもんの後ろ姿が多い回。足のぐるぐる渦巻きかわいい。〈のび太の「チョロい…」という笑いも趣深い〉)
どうしたら売れるか考えた挙句、今日のところはサービスで見本をくばることにします。
「この便利さがわかれば、買わずにはいられなくなるよ。石油だってそうなんだ。昔の人は石油なんか使わずにちゃ〜んと暮らしていた」
(現代人全員身につまされる台詞。)
ジャイアンたちをはじめとして、まちの人々に「とにかく使ってみて、明日からは100グラム100円」と言いながら気前よくサンプルを配ったドラえもん。
効果は絶大で、家に戻ってくるころにはもう、大勢の人々が見本をもらいにつめかけていました。
「そんなに大人気か!?ドラやきは近い!!」
ハート目になりつつ、見本をくばるために鉱脈の入り口を開けていたのび太に
「あけはなすなと言ったろ。溶けちゃうんだ」
と、慌てて扉を閉めました。
有料化は明日から、と言っていたのに、あまりの反響にサンプル配布を締め切ってしまったドラえもん。それでもいいから分けてと頼む町の人に、
「100グラム100……いや200円!!」
と、いきなり倍の値段を提示します。
のび太が販売開始早々の値上げを止めようとしても「倍に売れば、ドラやきが倍買えるよ」と、耳を貸しません。
300円……500円!!と訪れる人ごとにうなぎ上りに価格を吊り上げ、「高い!」と町の人(空き地の隣にお住いの厳格なおじさん神成さん)とのび太に驚かれますが、
「高くていやなら、買わなきゃいいんだ。ドラやき…いやドライ・ライトはここにしかないんだから!」
と、独占企業の横暴丸出しの論理を振りかざします。
「500円でいいから売ってくれ」
折れざるを得なかった神成さん。
「それみろそれみろ」
経営方針に余計な口をはさもうとしたのび太に振り向いたときのワッルイ顔ときたら、もはや我々が知っているドラえもんではありませんでした。
すぐに掘りだしてきます、と、イソイソ鉱脈へ行ったドラえもん。一方、「ドラやきのことになると人がかわったようになる」……と、長い付き合いながら知らなかった友の一面に困惑するのび太。
そうとは知らず、ドラえもんは、大いにゴキゲンでつるはしをふるって、「おまちどおさま〜」とカモの顧客にドライライトを持っていきました。
部屋に戻ると、来年の夏はもっと広い場所でドッサリ作ろう、と、のび太に業務拡大を提案し、
「世界中へ輸出して、世界中のドラやきを輸入しよう。ウヒョヒョ。」(ドラえもんには悪いが、どら焼きはそんなにワールドワイドな食べ物ではない。)
そう言いながら、畳一畳分ほどによだれを派手にたらしまくりますが、ふと気づくと、なんだか暑くなっていました。
しまった!と庭に戻るドラえもん。
浮かれて鉱脈の扉を閉め忘れてしまい、時すでに遅し、ドライライトが溶けて町中に流れでていました。
空き地で半そでやノースリーブ姿で汗をかきながら遊ぶジャイアン、スネ夫、しずかちゃん。
「みんな夏すがただよ。この暑さ当分続くだろうね」
のび太のことばに、ひげまでうなだれきったドラえもんは「フニャ……」と声にならない声をもらすだけでした……。
一般的な味覚ではあまり魅力を感じられない「ドライ・ライトドラ会社のドラやき食堂(『体脂肪計タニタの社員食堂』的なノリで)」や、「世界中のドラ焼き」などのドラえもんの暴走するドラやき愛と、それに起因する悪徳経営者っぷりが印象に残る回です。
ふだんは性格いいんだけど、のび太が言うとおり、ドラやきがからむと豹変してしまうドラえもん。
でも、そんな奥行きがあるからこそ、大人になった今でもドラえもんから目が離せません。
いかにも子供向けに正しいことしか言わない、しないキャラだったら、子供時代が終わるとともに読むのもやめていただろうなと思います。(多分、どんな話だったかもすぐ忘れたはず)
こんなふうにエキセントリックだったり欲にかられちゃうところがあるから余計好きなんだと思います。
この回が収録されている33巻、あの、「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」というジャイアンの歴史的名言も読めますし(「横取りジャイアンをこらしめよう」の回)、その他、「フィーバー!!ジャイアンFC(ファンクラブ)」感動作「さらば、キー坊」など名作揃いなので是非お手にとってみてください。
(※2026年5月6日一部加筆、画像追加)
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