(なのでネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス24巻、あるいは小学館コロコロ文庫『ドラえもんジャイアン編』に収録されています。

ドラえもん 24
「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」
ご存知の通り、ジャイアンと言えばゴキブリから魔物にいたるまで逃げ出す、逆奇跡の歌声の持ち主ですが、そんな彼のリサイタルを生き延びるために、のび太とドラえもんがある奇策に打って出るという異色作です。
以下結末までのあらすじです。
パパがまたしても禁煙に挫折したのを知ったのび太は、ママの言っていた「ニコチン中毒」という言葉の意味をドラえもんに尋ねます。
「ニコチンという成分が体にしみつくとタバコを吸わずにはいられなくなる。頭がボーッとしてイライラして仕事も手につかない」
という説明を聞いたのび太は、怖いものだと思いつつ、中毒を治す薬を持ってない?と聞きます。
無いけど中毒にする薬はある、とドラえもんが出したのは
「ヤメラレン」(笑)
嫌いなものを好きにさせるときに使うとのこと。
(使用例:ニンジン嫌いの子にこの薬と一緒にニンジンを食べさせると、ニンジンが好きでたまらなくなる。)
と、そこにジャイアンが尋ねてきた声がします。
「隠れろ!居留守を使え!!」
突然押入れに飛び込むドラえもん。
なんでそんなことしなきゃならないんだと、忠告を聞かずに降りて行ったら、ジャイアンに手渡されたのは、間もなく開始のリサイタル「ジャイアン激唱」(笑2)のチケット。
友達全員(居)留守で見つからなかったが、のび太がいてくれて助かった、と、喜ぶジャイアンは、残りの観客も草の根分けても探し出して聴かせる、と言いながら出ていきます。
自分の分までチケットもらってくるなんて酷い、と、泣いて責めるドラえもんですが、なすすべもなく、おそらく、たったふたりであの殺人的な歌をたっぷり聞かされることになるであろう事態を思い浮かべ、
「はたして無事に耐えきれるだろうか!?」
「神様、お救いください!!」
と、互いにすがって泣きます。(かわいそう)
しかし、そのときのび太に妙案が浮かびます。
どうせ聞かされるなら、「ヤメラレン」を飲もう。
「『ジャイアンの歌中毒』になろうっていうこと?」
ドラえもんはあまり気が進みませんでしたが、しかし、ほかに道はありません。
会場(空き地)に集まった観客はやっぱり二人だけ。
ジャイアンはおかんむりでしたが、
「君たち二人は真の芸術の理解者だ」
と、のび太たちをねぎらい、
「のどがさけるまで俺は歌うぞ!!」との熱い決意表明(「ありがたいなあ」と拍手する二人、涙目)とともに
「歌こそ命〜、我が命よ〜。オ〜オオ〜オ〜」
と熱唱しはじめます。
聴くなり大急ぎで薬を飲んだ二人。
「ボエ〜」
響き渡る人体に有害な音波の前で顔を見合わせ、
「それほど悪くないんじゃない?」
「わるくないどころか……」
「天才だよこりゃ」
とたちまち目を見張り、
「いいぞいいぞ」
「日本一!いや世界一!」
とステージ(木箱)上のジャイアンに声援を送ります。
「ほんとか、おい。ありがとよ…歌一筋に生きてきた甲斐があった」
感涙にむせび、歌い続けるジャイアンに
「キャー!ジャイちゃーん!!」
「しびれるぅ!!おしっこもれそう!!」
と、マイケル・ジャクソン相手にも言わないような声援とともにスタンディング・オベーションで大熱狂するのび太とドラえもん。
一方、こっそり様子を見に来たスネ夫たちは、空き地をのぞきこんで、
「ここから聴いててさえ寒気のする歌なのに」
「ありゃお世辞じゃなさそうだぜ」
「どういう神経しているんだ」
と、あきれ返ります。
二時間で終わるはずのコンサートに、アンコールを要求したのび太とドラえもん。
「そ、そんなにも俺の歌を……」
熱い涙で頬を濡らし、二人を抱きしめたジャイアンは再び歌い続けます。(あまりの感動に泣き叫び、鼻水まで流してテープを投げて声援を送る二人)
さすがに夜になって声がかれ、立ち上がることもできなくなってしまったジャイアンは、「かんべんしてくれよう、明日続きをやるから」と頼み込んでコンサートを終わらせます。
「根性がないぞ!!」
「そんなことでプロになれるか」
と不満そうな二人でしたが、
「約束を忘れるなよ!!」
と、ジャイアンの家の前までついてきて念押しをしてから家に帰ります。
いいクスリだ、と、すっかり満足の二人。
そのときパパの禁煙問題を思い出したのび太は、パパをチューインガム中毒にすることを思いつきます。(ガムを噛みながらタバコは吸えないから)
「ガムってうまいものだなあ!」
最初はしぶっていましたが、まんまとチューインガム中毒になったパパ。
これで一安心と思っていたのですが、その翌日。
「約束破るなんてそれでも男か!!」
怒りながらジャイアンを探し回るのび太とドラえもん。
(ジャイアンは物陰に隠れて、目の前のスネ夫に「しーっ」の仕草〈スネ夫あっけ〉)
「ああ聴きたいなあ」
「頭がボーッとしてイライラする」
食事をしながらも、二人とも中毒症状でうわのそらです。
一方パパはママが呼んでも食事に出てきません。
「今口に入れたこの一枚を噛み終わるまで待って」
ソワソワしながらも一生懸命ガムを噛むパパを見たドラえもんはのび太に
「あの薬効き目が強すぎるのかな」
と、言います。
(完)
とにかく、全ドラえもん作品中二度と観られない、「ジャイアンの歌にマジ熱狂するのび太とドラえもん」が観られるところが最大の魅力です。
「キャー!ジャイちゃーん!!」
「しびれるぅ!!おしっこもれそう!!」
……このコマは子供の時読んでも大爆笑だった記憶が残ってます。(そして、それにドン引きなスネ夫たちの反応も。)
あと、草の根わけても観客を探そうとしていたジャイアンが、のび太たちから逃げ惑う逆転現象ですね。
しかし、中毒になってしまったあとの状況については、逆に大人になってから読むと、ひやりとするところもあります。
こういう作品を読むと、やっぱり、藤子F先生は、ドラえもんを子供たちだけに向けて書いていないんじゃないかなと思わされます。
子供はもちろん、その子の親も笑わせ、その子が大人になったらそのときも笑わせ、となるような仕掛けがたくさん盛り込まれています。
だから、いくつになっても、何度読んでも面白いのです。
もし、この文がもう一度ドラえもんを手に取ってくださるきっかけになれば幸いです。
読んでくださってありがとうございます。
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