2016年09月30日

ドラえもん「王冠コレクション」補足情報


 前回ご紹介の「王冠コレクション」(ドラえもんがふざけて「ジュースの王冠のコレクションがはやる」という作用のあるウィルス(ネコシャクシビールス〈笑〉)をばらまいた結果、効き目が強すぎて、大の大人が200万出してでも買おうとする事態になってしまうというお話。)に関連して補足情報(というかこぼれ話)を書かせていただきます。
 

【1】印刷ズレについて
 スネ夫が自分のレア物コレクションとして、王冠のふたからラベルの印刷がずれているものを見せていましたが、これに近いエラー品プレミアというものが実際に切手の世界であるそうです。


王冠コレクション1.png

 「何でも鑑定団」(テレビ東京)でも、印刷ミスの切手が何度か出ていました。
 番組公式HP情報はコチラ。
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20120807/05.html
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20150728/03.html(ニ色刷り切手が一色刷りで出回ってしまった珍品で、800万!)

 この他にも、切手の場合だと、パンチ穴が空いていないなどというのが価値のあるものだそうです。
(ウィキペディア記事はコチラ)

 https://ja.wikipedia.org/wiki/エラー切手#.E7.94.A8.E7.B4.99.E3.82.A8.E3.83.A9.E3.83.BC

 【2】王冠コレクションについて

 実際にネットオークション等で出回っているそうです。
 「1日眺めていても飽きないわ(ビールス保菌中のしずかちゃん談)」……とまで思うかはさておき、確かに色もデザインもさまざまで、改めて見てみるとなかなか面白いものなので、売り物になるのわかる気がします。
 コレクターズポイントとして以下のようなものがあるそうです(ちなみに英語では王冠のことをシンプルに「bottle cap」と言っている模様。)

 1、純粋にコインや切手のノリで珍しいものを集める人と、アクセサリーやキーホルダーなど創作品の材料としてまとめ買いする人がいる。
 2、価格は(上記材料としての袋買いを除くと)1個100円〜500円程度。
 3、人気があるのは以下のような条件のもの。
 ・時代が古いもの
 (なかには戦前の飲み物のキャップなどもありました。)
 ・外国の物
 (たとえばメキシコとか、東南アジアとか、購入者のいる国からすると入手が難しい国の飲み物。
  実際カラフルだったり文字がエキゾチックだったりして味があります。)
 ・未使用のもの
 (実際には瓶にとりつけられたことがないままにデッドストックとして市場に出回ったものが
けっこうあるみたいです。当然無傷なので評価が高い)
 ・スターウォーズ、スーパーカーなど、デザイン自体に人気があるもののシリーズをひととおり揃えたもの
  (これはメンコとかミニカーみたいな、わかりやすいノスタルジックな魅力があります。)
 ・くじつきのもの、さらにそれが未開封のもの
  (王冠の裏側に封がされているデザインではがすと、10円分のコインがわりになるとか、キャラクターが描いてあるなどの特典があった。これがさらにはがされていない状態だとそれはそれで評価が高い。)

 のび太が集めていたものはおそらく1970年代初期のものでしょうから、今となるとものによっては1個100円くらいにはなっているかもしれません。
 (数百円台は1960年代以前のものが多いので、たぶんバクゼンと集めていたのび太は持っていない。)
 それでも箱一杯持っているから、立派なへそくりになりそうですね。

 参照URL 
ヤフオク(コカ・コーラグッズ)
http://closedsearch.auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/%E3%82%B3%E3%82%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E7%8E%8B%E5%86%A0/0/
・E-bey:http://www.ebay.com/sch/Soda-Bottle-Caps/35693/bn_3018786/i.html

 なお、少し違いますが、シャンパンの王冠(ミュズレ)のコレクションはよりメジャーで、こんな専門グッズも販売されています。

 シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
 
 【3】王冠より瓶

 コカ・コーラの空き瓶、あるいは中身入りのものは、王冠以上に高値で取引されています。ものによっては数万円するものも。
 確かにレトロな味があるかんじなので、個人コレクターのほか、お店の人が飾りとして買っていくのかもしれません。

 ・参照 E-beyコカ・コーラボトルオークション情報 

 http://www.ebay.com/sch/Coca-Cola-Bottles/13603/bn_3117489/i.html

 以上、ドラえもん「王冠コレクション」補足情報でした。

 こうやって周辺情報を集めてみると、あの短編の面白いのは、王冠が、「まじまじ見るとコレクションアイテムとして結構そそる」という絶妙なラインを突いていたからかもしれません。スネ夫たちの暴走をなにやってんだかと思う一方で、ちょっと引きずり込まれそうな……。
 そしてこんな感じで実際に似たような売買が成り立っていました(笑)。

 なお、九月になったので、「芸術の秋」ということで、ドラえもん作品の中からアート・鑑定に関わる作品をもう少しご紹介させていただく予定です。よろしければお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。







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2016年09月29日

(※ネタバレ)ドラえもん「王冠コレクション」

王冠コレクション1.png

 本日は「ドラえもん」より、「王冠コレクション」をご紹介させていただきます。

 コミックス9巻収録

ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -

 物の価値について意外とシニカルな目を持つドラえもん。

 周囲のコレクション熱に振り回されるのび太を見て、ちょっとしたいたずらを思いつくというお話です。

 以下あらすじです。結末までネタバレなので、あらかじめご了解ください。
  

「ありがたぁくおがめよ」
 スネ夫の切手用ピンセットの先で燦然と輝くプレミア切手、「月に雁」(※)

(※)歌川広重の浮世絵を元にした800円切手。希少性から切手ブームのこの頃(1970年代)、価格が高騰した(購入価格1万8千円〈スネ夫談〉)。2016年現在でも状態の良いものは1万円近いプレミアがついている。

 目を丸くするのび太たちの前で、
「切手マニアならこの程度のものをひとつくらい持ちたいもんだねえ」
と、自慢を兼ねて感慨にふけるスネ夫。(たまに言動が妙に中年じみる)

 パパは骨董品、ママは宝石。道は違えど、うちの家族に共通しているのは一級品しか相手にしないってことだね。

 それを聞いたしずかちゃんとジャイアンは、それぞれシールとコインのコレクションなら自信がある、と、胸を張りました。

 のび太一人うかない顔をして家に帰り、切手を集めたいとママに資金援助を願い出るが、どうせあきるんだから無駄なことだ(一度挫折しているから)と、見事な正論で却下されてしまいます。
 「こういうわからないことを言うんだよ!」と愚痴るのび太に対し、ママに完全同意するドラえもんでしたが、自慢できるコレクションがなくて肩身がせまい、としょんぼりする姿を見て、君だってすごいコレクション持ってるじゃないの、と、押し入れから談ボール箱を出してきます。

 中にぎっしりはいっていたのは飲み物の王冠。(昔特に意味もなく集めていたモノ)

 こんなもん持ち出して僕をバカにしてるの!?と怒るのび太を笑ってなだめるドラえもん。
「そもそも物のねうちってなんだろう。みんなが欲しがるってことじゃないかな。切手だって宝石だって、みんなが欲しがらなければ、ただの紙切れや石ころにすぎない」(←おおお……〈汗〉)

 おそるべき達観を披露して終わりかと思いきや、「だからなんだっての?」とちっとも納得していない様子ののび太に対し、「ちょっとしたイタズラをやろうっての」と部屋を出ていくドラえもん。

 取り出したのは「流行性ネコシャクシビールス」。

 ウィットに富んだ名を持つこのひみつ道具、流行させたいものをビールスに言い聞かせて培養し、空中散布すると、感染した周辺の人々にブームを巻き起こすことができます。

 ドラえもんが何をしていたか知らないのび太が外出すると、ジャイアン、しずかちゃん、スネ夫が王冠コレクションを見せあっていました。

  中でもスネ夫の1ダースものコレクション (専用ケース入〈笑〉)には、印刷ズレの珍品があり、二人の羨望を集めます。

 なんにするのこんなもん集めて、と、勝手にレア物王冠を手に取り、スネ夫に派手に叱り飛ばされるのび太。
「ピンセットで扱うもんだぞ。錆がついたらどうする!」

 さっぱり状況が飲み込めずにいると、三人が「遅れてる」のび太に口々に説明します。

 切手やコインなんて時代遅れ、この一日眺めていても飽きない形の美しさ、面白さ、王冠コレクションはすぐに世界的ブームになる。  
 
 それを聞いたのび太が、3人に自宅の箱一杯のコレクションを披露すると、三人は「いつのまに!?」と言葉を失います。
「いやあ、たいしたことないよ。諸君とはちょっとばかり目の付け所が違っていただけさ」
 のび太くんは進んでいるからね。と、ブーム仕掛人のドラえもんもさりげなく煽ります。

 完敗を認めるも羨ましくてならない3人は、家に駆け戻り、「3食おやつも全部コーラにして、とママに一生のお願いとして懇願(しずかちゃん)」、「コーラ10本一気のみして、ザブンザブンのお腹を抱え、サイダーを買いに行く(ジャイアン)」、「親のビールを6本一気に開栓(スネ夫)」等の暴走をはじめます。

 町の子供達が数を競う中、悠々と登場した希代の収集家のび太は、数が少ないものにこそ値打ちがあるんだよ、と、「王冠コレクション道」を説きます。

 そしてドラえもんがピンセットで(笑)とりだしたのは、「8月12日三河屋で売れたコラコーラ」。
 この日三河屋で売れたコラコーラはこれ一本!世界中探してもこれしかないんだ。10万円だしても、100万円だしても手に入らないんだよ。と、熱弁をふるうと、素直に瞠目する子供達。

王冠コレクション2.png

 ああおもしろい、と、密かに笑う二人でしたが、ママから、「駅前の切手屋が王冠屋になった」と聞かされたり、パパが「5月7日にスーパーで売れたスポライト」を2000円もしたんだぞ!と、達成感ある笑顔で買って帰ってきたのを見て、ビールスが予想以上に広範囲に広まってしまったことに気づき、にわかに恐怖を覚えます。

 はやく効き目が消えないかな……と、落ち着かない気持ちの二人。

 そこへ、恰幅と身なりのよい紳士が訪ねてきます。

「わたくし、王冠のコレクションをやってるものです」
 のび太に丁重に名刺を差し出した紳士。

王冠コレクション3.png

「素晴らしい王冠をお持ちだとか……是非、8月12日の三河屋の王冠を200万円で売ってください」
 金額にあっけにとられ、あんなもの売るわけには!と言う二人に、どうしてもほしいのです!と札束を差し出して粘る紳士。

「おねがい!おねがい!」
 畳に手をついて懇願する紳士を前に、顔を見合わせる二人。

王冠コレクション5.png

 「いいのかなあ……」
 我が物となった三河屋のコラコーラ王冠をピンセットでとり、歓喜の面持ちで眺めていた紳士。
 しかし、急に「!?」と真顔になると、
「……なんでこんなもん欲しがったんだろう」
 と首をかしげて、王冠をぽい捨て、札束を手に帰っていきます。

 あとには「ビールスのききめが消えたらしい」と、ほっとしたの2割、残念8割みたいな顔をしたのび太とドラえもんがのこされました。

王冠コレクション6.png

(完)


 何とは言いませんが、わからない人間にはまさしく王冠をつまむのび太のごとく「こんなもん集めてどうすんの」と思うものに高値と熱狂的コレクターがつくことがありますよね……。そういう現象を実に巧みに描いています。

 なお、この「流行性ネコシャクシビールス」は、過去にもファッションの流行に一石を投じるというイタズラで登場しており(コミックス6巻)、「ドラえもん」という作品それ自体は圧倒的クオリティと知名度を誇りながら、流行や物の価値評価については一定の距離をおいていることがわかります。

ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -

 こういう奥深い世界観だからこそ、40年経過した今も、流行を超えて伝説として生き延びているのかもしれません。

 先日、贋作師の人々のお話をいくつかご紹介させていただきましたが、ああいう事件は、
「『形の美しさ面白さ』が好きなら、十分ご希望に沿うものを作ってあげたでしょ、だから買ったんでしょ、たしかに『8月12日三河屋でただ一本売れた』という話は嘘だけど、それって作品の美とは関係ないでしょ、え?美じゃないところの価値ってなになにそんなに重要?」というリクツのもとに、あの200万の紳士みたいな人のお財布開かせちゃうんだろうなぁと思い当たったので、書かせていただきました。

 よろしければ当ブログ以下の記事を併せてご覧になってみてください。


「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜 (NHK BS世界のドキュメンタリー)」 番組情報ご紹介
イギリスの贋作師ジョン・マイアット(NHK BS世界のドキュメンタリー 「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜」によせて) 
(※ネタバレ)「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」あらすじと感想(NHK BS世界のドキュメンタリー)


 読んでくださってありがとうございました。
 
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2016年09月28日

おすすめ映画放送日のお知らせ(「ラストエンペラー」と「世にも怪奇な物語」)

 本日は取り急ぎご連絡まで。

 2016年10月2日(日)おすすめ映画二作品が放送されるので、それぞれ情報ページをご紹介させていただきます。

1,「世にも怪奇な物語」(イマジカTV)※10月31日深夜再放送

世にも怪奇な物語 -HDリマスター版- [Blu-ray] -
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 タモリさんのあの名物番組ではなく、エドガー・アラン・ポーの小説を下敷きにした短編映画3作からなる作品です。

 「黒馬の哭く館(監督:ロジェ・ヴァディム)」はジェーン・フォンダとピーター・フォンダ姉弟、「影を殺した男(監督:ルイ・マル)」はアラン・ドロンとブリジット・バルドー、「悪魔の首飾り(監督:フェデリコ・フェリーニ)」は、テレンス・スタンプと、監督も俳優も驚きの顔ぶれ。

 タイトルはまがまがしそうですが、グロテスク描写はほとんどなく、むしろ幻想的な作品です。ポーを原作としながら、あの重厚な不吉の気配はそのままに、豪華監督たちが奔放に、原作超えな恐怖と映像美を作り出しています。

(ポーの中では面白いとは言えない「悪魔に首をかけるな」を、テレンス・スタンプの壮絶な演技力を生かして、ある映画俳優の破滅的心象風景に作り替えた「悪魔の首飾り」は特に圧巻。)

放送予定公式情報はこちらです。

 http://www.imagica-bs.com/program/episode.php?prg_cd=CIID105126&episode_cd=0001&epg_ver_cd=06&epi_one_flg=index.php

当ブログ内、作品ご紹介記事はこちらです。よろしければ併せてお読みください。

「世にも怪奇な物語」@「悪魔の首飾り(トビーダミット)」(『アンコール!』のテレンス・スタンプ主演)
ポー短編「悪魔に首を賭けるな」(映画『世にも怪奇な物語』「悪魔の首飾り」の補足として)
「フレデリック……」誰かの呼ぶ声(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」より)
「メッツェンガーシュタイン」(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」の原作として)※ネタバレ


2,ラストエンペラー(洋画専門チャンネル・ザ・シネマ)※10月14日、17日、22日再放送

ラストエンペラー ディレクターズ・カット  [DVD] -
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 最後の清王朝皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた大作です。
放送予定公式情報はこちらです。


http://www.thecinema.jp/detail/index.php?cinema_id=01314

 幼くして西大后により皇帝に選ばれ、広大な閉鎖空間である紫禁城から出られないまま成人した溥儀は、清王朝の滅亡、日本軍の政治的介入に翻弄されながら清王朝復活を目指そうとし、夢敗れていきます。

 一般的に、困難な人生を送った実在の人物を映画化するのは非常に難しいと思いますが(自他の思惑や歴史的背景などがからみ、綺麗に起承転結がつくものではないから)、この作品は、音楽(坂本龍一担当)や絢爛豪華な映像、溥儀の若き日とその後を交錯させた編集で、長編ながら冗長なところなく、重厚な歴史と人間のドラマに仕上げられた名作です。
(ラストシーンは史実と違うと賛否あったそうですが、あれが一番すぐれた演出だと思います。どんな場面かはぜひご覧になってみてください。)
 
 主演のジョン・ローンは、かつてダウンタウン松ちゃんに「世界三大美男の一人」と称えられた気品あふれる美しさの持ち主で、鋭いまなざし、抑制の利いた繊細な演技力で、この壮麗にして重厚な作品の世界観に説得力を与えています。

(ちなみ松ちゃん選定の残りの二美男はというと、加藤剛と俺と言って浜ちゃんにはたかれ、アラン・ドロンと訂正していたそうなので、この日世界三大美男のうちの二人がみられることになります。)
 
 以上、おすすめ映画情報でした。読んでくださってありがとうございました。



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2016年09月27日

(100日間リベンジ再び)9週目 (ダイエット微減、減酒継続中、運動サボり気味……〈またか〉)


※今回は日記です。

100日間、文書きとか悪習慣断ち(無駄酒、無駄インターネット)とか、ダイエットとか英語とか頑張ります!と宣言させていただいた、その経過とその他つれづれを書かせていただきます。
 これまでの経過一覧はコチラです。

1,ダイエット

 先々週より0.5kg減りました。ダイエットを開始した7月26日より、63日間で2.1kg減です。
 
 ジワジワとしか減っていないのですが、半年ぶりの数値なのでうれしいです。
 (抜群のいやな安定感でちょい減っちゃあ戻っていた。エクセルで日付と体重数値の表をつけているのですが、折れ線グラフにしたら見事なゆるーいさざなみ線となることでしよう……。)
 
 でも相変わらず運動(ウォーキングとストレッチ)をする時間をうまく確保できていないので、今週は頑張ります。(と、三週間言っていると気づけるのが記録のいいところです。〈他人事みたいなとらえ方ヤメロ。〉)
 
 今週減ったのはお酒を減らしたのと、朝晩の炭水化物を少し減らしたおかげかもしれません。
 (あとは夏の終わりで、代謝が少しマシになったのかも。)

 あとは相変わらず野菜スープを続けています。カレー風味にすると、スパイスの風味で脳ストレスがやわらいで、ストレス性食欲(またの名を炭水化物への暴走的欲求)がやわらぐ感じを実感しています。
(カレーの黄色味にかかわる、ターメリック〈ウコン〉が適量なら脳にいいという説があるそうです。)

 出典:「カレーがイヤな記憶を吹き飛ばすという実験結果 ストレス解消、うつ病への効果期待」(セルフドクターズニュースより)
 http://news.selfdoctor.net/2015/01/29/3770/

 カレースパイスの脳ストレスへの効能有無については、諸説あるけれど私は効くと思っています。チャイでもホッとできる。

 でもまだ「カレースープダイエットやってます!!」と言い切れるほど結果出せてないので、もう少し減るまで、楽な範囲で(重要)おいしく作れるレシピを追及しておきます。

 ところで、常々「男性発のダイエット漫画もあればいいのにあんまり見かけないな」と思っていたのですが、ついに見つけました。

 「おつきあい」の壁をのりこえ、48s痩せました(歌川たいじ著)

「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました -
「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました -
 
 著者が、職場や営業先での「飲み会、ランチ、お茶」や、ダイエットを阻む人々(人の容姿に対する無神経な発言をする人から悪気ないけれど食べ物勧めてくる人まで)という壁を乗り越え、なんと48sの減量に成功するまでを描いている作品です。

 (以下ややネタバレです。)

 仕事上避けては通れない多様な人間関係、根深い自虐、そしてキープをすることのむずかしさも丁寧に描いていて、大人の心の本として読み応えがありました。

 伴侶ツレさんや、子供のころに出会ったクラスメートのお父さんの素敵な言葉を胸に、自分を卑下しすぎずに地道な努力を重ね、結果を出した歌川さん。

 でも、太りやすい体質はなかなか変えられないともうわかっている。忙しいときは大リバウンドを防ぐのが精一杯だ。

 と腹をくくり、太っている時期の自分も甘やかすという意味ではなく、認めていくつもりという境地にいたるまでを読んだときには、ダイエット成功の有無を超えた感動がありました。

 ダイエットの方法は基本的なものでしたが(ヘルシー自炊と歩数を多くすることがメイン)、生きている以上必ずつきあわなければいけないトラウマやストレスと折り合いをつけて、いつの時代の自分を認めていけるようになるまでという、より大きな視点で描かれている本でした。おすすめです。
  
2,無駄ネット

 ゴシップ記事閲覧禁止継続は順調です。

 「無駄とは言い切れないけど、今読まなきゃダメか?」的部門の「ニュース、Kindle本検索」の閲覧時間についてですが、これも先週より減っています。

 自分がバクゼンと画面を見ていると気づいたときに、閲覧履歴を見るようにすると「うへえ」となれてかなり効くと気づきました。
(どうせバクゼンと見てると気づいた時点で自分で思っている以上に積み重なっている。)

3,減酒

 先週、「『一日おきに、アルコール度数が少ない甘いお酒を半缶くぴ飲み』が依然として残っております」と書きましたが、「半缶」が「三分の一缶」くらいに減りました。

 もう買わなきゃいいじゃんという話なのですが、まだ買い物している最中に、つい手が伸びてしまいます。
 (同じ銘柄でアルコール度数を把握しつつ飲んでいるのがせめてもの良心〈汗〉)

 ただ、そうこうしているうちに、「飲んでもいい日(人と飲む日)」もあまり強いお酒を飲みたいと思わなくなりました。

 単に夏バテでそういう気が起きないだけかもしれませんが、とりあえず先週よりましになったと思います。
 
(まとめ)
 
 ダイエット、ネット、飲酒について、それぞれすこし先週より改善できました。
 「来週は頑張ります」と運動について書き続けているナァというところは自分でも痛感しているので、今週こそは(とも書き続けているので)ましな状況に持っていきます。

 以上、日記でした。
 読んでくださってありがとうございました。
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2016年09月26日

オバマ大統領と絵画(エドワード・ホッパー、二コラ・ド・スタール、ジョルジォ・モランディ作品に注目して)


 先日、オバマ大統領の広島演説の際に、大統領と対面したお二方(坪井直さん森重昭さん)についてご紹介記事を書かせていただきましたが、今日は、オバマ大統領がホワイトハウスに飾るために選んだ絵について書かせていただきます。

 アメリカでは、新しい大統領が就任すると、国内の美術館が、ホワイトハウスに飾る絵や彫刻をレンタルするという慣習があるそうです。

 貸し出された作品の一覧は所蔵美術館名とともに公開され、美術マーケットの熱い注目を集めるとか。
(「オバマ大統領が選んだ画家」とキャッチフレーズがつけられれば、知名度がグンと上がるからですかね。)
 ・「The Guardian」掲載の貸し出し作品リスト

   https://www.theguardian.com/culture/charlottehigginsblog/2009/oct/07/art-barack-obama


 絵のほとんどはアメリカ出身、またはアメリカ国籍を取得した画家から選ばれ、また、画家の性別やルーツ、テーマが全アメリカ国民を配慮した選択であるよう心掛けられるそうです。
(男性だけとか、アメリカ人でも○○系だけ等に偏らないように注意して選ぶ。)

 「The Wall Street Journal」によると、オバマ夫妻は歴代大統領と異なり、現代アートを多く選んだことが話題になったそうです。

・出典URL

 http://www.wsj.com/articles/SB10001424052970203771904574175453455287432


 また、夫妻は、アメリカの歴史や風土がよく伝わる絵や、ルーツを感じさせるアフリカ系アメリカ人画家の絵を好まれたようです。

 ホワイトハウスのブログでは、アメリカモダンアート界の巨人、エドワード・ホッパー(都会でも郊外でも、どこか寂寥感の漂う世界観が特色)の絵が大統領執務室(Oval office)にかけられたことが話題になっていました。
(ホッパーの絵を眺めるオバマ大統領の後ろ姿という味のある写真つき。ちなみに「大統領執務室にかけられた」というステイタスは時に絵の価値を3倍にアップさせることもあったとか。〈前出The Wall Street Journalより〉)

 https://www.whitehouse.gov/blog/2014/02/10/new-additions-oval-office

 ホッパーの作品群を見られる「Wikiart」ページはこちらです
  http://www.wikiart.org/en/edward-hopper/mode/all-paintings

しかし、このような絵画のチョイスの中、二人だけ、アメリカとほとんどゆかりの無い画家の作品が選ばれました。

 一人目は、ニコラ・ド・スタール。選ばれたのは「Nice(ニース)」という作品でした。

 ・「ニューヨークタイムズ」の「Nice」紹介画像(スライドショー12枚中10枚目)

  http://www.nytimes.com/slideshow/2009/10/07/arts/design/20091007BORROW_10.html?_r=0

 二コラ・ド・スタールはロシア出身の画家で、独特の色使いで、抽象と具象のあわいのような絵を描きました。

 「ジョジョの奇妙な冒険」ファンの間では、エキセントリックな天才漫画家、岸辺露伴が、「創作のために全財産を使い果たしてもなお手元に残したのが、このスタールの画集」というエピソードにより一躍有名になりました。
(単行本「岸辺露伴は動かない」より)

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス) -
岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス) -

 スタールの絵の魅力については、岸辺露伴が、そのとき唯一の財産である画集を開いて、担当編集に絵の説明をしていたときの台詞に尽きると思います。

岸辺露伴は動かない.png


「抽象画でありながら同時に風景画でもあって、そのぎりぎりのせめぎあいをテーマにしている。こんなに簡単な絵なのに光と奥行きがあって泣けるんだ。つまり「絵画」で心の究極に挑戦しているんだ」

 泣ける。

 なぜだかわかりませんが、確かにスタールの絵にはそのような力があります。

 独特の色遣いで厚塗りされた油絵具が、にじむようなしっとりとした質感を醸し、涙の向こうの光景のような、寂しいけれど温もりも感じられる作品です。(モノトーンで描かれた絵すらどこか温度のゆらぎがある。)

 この特異な才能と挑戦的なまなざしを持つ画家は、貧困の果てに成功をつかみましたが、1955年、「コンサート」という名の色鮮やかで伸びやかなタッチの大作を絶筆に、わずか41歳で謎の自死を遂げました。

 スタールの作品群を見られる「Wikiart」ページはこちらです

 http://www.wikiart.org/en/nicolas-de-sta-l

  ※遺作「Le concert」ほか、露伴先生が漫画の中で開いて見せている絵「Agrigente(イタリアの地名)」も観ることができます。

もう一人の外国人画家は、イタリアの抽象画の巨匠、ジョルジォ・モランディ。こちらは二枚の静物画「Still life」が選ばれました。

モランディの作風がわかる動画(The Phillips Collection紹介動画)





 実際にホワイトハウスで選ばれた静物画のひとつはこちらです。

http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.103748.html

(なぜか貸出元のナショナル・ギャラリーではなく、国立郵便博物館のブログでどの絵か教えてくれていた……。)


 モランディはその生涯を通じイタリアからほとんど出ることがなく、独身を通し、母と妹たちと暮らしながら、主に静物画を描き続けた画家でした。

 「ひとり静かに仕事をさせてくれ」が口癖で、第二次大戦時、国内にファシズムの嵐が吹き荒れる中でも、ただひたすらに己の作風を貫き通した人です。

 アトリエに意図的に埃を積もらせ、彼の所蔵する静物の配置とともにその埃を描くことで、色のくすみや光のゆらぎを描いたという画家の作品は、寄り添うように卓上に集うボトルや箱の姿と空間の中に、物、埃、光、影、すべてを等しく見据える静まり返った心とまなざしを感じさせます。
 
 モランディの作品群が見られる、Wikiartページはこちらです。

http://www.wikiart.org/en/giorgio-morandi

 ホッパー、スタール、モランディ。

 どの絵にも共通するのは、ある対象を見つめる、静かで孤独な心が感じられるということです。
 
 それは、味方がいないという意味ではなく、ただ、他の誰の考えとも関わりなく、独り物思うような心境。
 
 こうした絵を居住エリアや執務室で眺めるために選んだオバマ大統領という方は、アメリカ大統領という、ある意味世界でも屈指の重圧と権謀術策の中に生きなければならない立場の中で、できうる限り、誰の賛辞にも奢らず、思惑にも振り回されずに、一人の人間として、自分の心がどう感じ、思うかということをとても大切にしているのではないでしょうか。

 広島演説の際に、オバマ大統領と言葉を交わした坪井直さんの「真面目な人で、人を思う心が強いのか、話をするたびにどんどん握手が強くなっていった」という印象(※)と、この静かな孤高の絵画たちは、どこか相通じているように思われます。

(※)(時事通信社記事より引用)

 オバマ大統領の政治的手腕や、アメリカの方針については、知識に乏しいため、何も意見を申し上げられないのですが、選ばれた絵の中に通底する気配から、あの方の美意識とともに、何か人としての信念を感じたような気がしたので、ご紹介させていただきました。

 読んでくださってありがとうございました。

 

(参照)
・Smithsonian’s National Postal Museum Blog(02/15/2010 Mark Haimann )
「Philatelic Musings on Art: The Obama's Art Selections on Stamps」
http://postalmuseumblog.si.edu/2010/02/philatelic-musings-on-art-the-obamas-art-selections-on-stamps.html


・The Wall Street Jornal
「Changing the Art on the White House Walls」
By AMY CHOZICK and KELLY CROW
Updated May 22, 2009 12:01 a.m. ET
http://www.wsj.com/articles/SB10001424052970203771904574175453455287432 

・The New York Times
「Whitehouse Art」
http://www.nytimes.com/slideshow/2009/10/07/arts/design/20091007BORROW_10.html?_r=0

・The Whitehouse Blog
「New Additions to the Oval Office」
https://www.whitehouse.gov/blog/2014/02/10/new-additions-oval-office

・時事通信社「Jiji.com」「核廃絶「決意感じた」=被爆者ら高い評価−オバマ氏広島訪問」 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052700939&g=soc

(※)一部モランディの情報については、NHK「日曜美術館」の特集「埃(ほこり)まで描いた男〜不思議な画家・モランディ〜」を参照させていただきました。
http://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2016-05-15/31/2185/1902680/


 
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2016年09月25日

(※ネタバレあり)犬とイルカの友情(ナショナルジオグラフィックチャンネル「動物界の意外なお友達2 犬と野生動物の強い絆」より)

 先日、ナショナルジオグラフィックチャンネルで、素晴らしい番組が放送されていたのでご紹介させていただきます。

「動物界の意外なお友達2(Unlikely animal friends) 犬と野生動物の強い絆」です。

 犬と野生動物の間に生まれた友情を、実際の映像と周囲の証言をもとに紹介している番組です。
(犬たちの行動について、カリスマドッグトレーナー、シーザー・ミランが分析、解説。)

 番組公式情報HPはコチラです。
「動物界の意外なお友達 2(原題:Unlikely Animal Friends 3)」

 http://www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/1017(放送予定)
 http://www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmepisode/index/prgm_cd/1017(各回エピソード)

 ロバ、熊、鹿、キツネといった、犬と種族を超えて友情を築いた動物たちの中に、陸と海の垣根すら超えて、犬と友達になったイルカのお話がありました。

(明日2016年9月26日〈月〉18:00〜19:00のナショナルジオグラフィックチャンネルでは、同シリーズで、「 人間と動物の特別な関係 (Man's Other Best Friend) 」という人と他の野生動物の友情物語が紹介されるそうなので、併せて御覧ください。)

 以下、番組で紹介されていた犬とイルカのお話です。
(結末までネタバレなのでご了承ください。また、10月3日、10月4日放送の「最愛のベストフレンド」という傑作選回で、この二頭のエピソードが再放送される模様です。詳細は上記URLをご覧ください。)

 二頭のエピソードを紹介している「National Geographic」の記事はこちらです。(動画付き)

 http://video.nationalgeographic.com/wild/unlikely-animal-friends/ben-the-dog-and-duggie-the-dolphin?source=relatedvideo

 アイルランドのニュースを扱った「Irish Central」で引用されていた、二頭を取材している動画はこちらです。
 「Tory Island dog swimming with dolphin」(投稿者Franklin Sinclair)
 
https://www.youtube.com/watch?v=l2vU8U0j_4E

http://www.irishcentral.com/news/amazing-footage-of-a-dog-playing-with-a-dolphin-off-the-coast-of-ireland-video-127888298-237406421

 アイルランド、トリー島でホテルを経営するパトリックさんの愛犬ベン(薄茶のラブラドールレトリバー・鼻はピンクがかっており、顔はうっすら鉢割れ模様で、額の中心から鼻先にかけてが少し白い。)と雌のイルカ、ドゥギィの友情が始まったのは2006年のことでした。

 ある日、パトリックさんが購入したばかりの船にイルカがついてくるという出来事がありました。

 そして後日、パトリックさんがベンと埠頭近くを散歩をしていたときに、ベンが急に埠頭に降りてゆき、海に飛び込みました。

 そこへ姿を現したのがドゥギィ。

 彼女はベンの周りを回るように泳ぎ、そこから、この二頭の風変わりな友情は始まりました。

 何度も埠頭に訪れるドゥギィと、それをどうやってか察し、住まいのホテルから数百メートル先の船着き場まで走ってゆくベン。

 海に飛び込むベンと、彼と一緒に泳ぐドゥギィの交流は、島で評判となり、島の人々はその姿を見ようと埠頭に集まりました。
(その中にニコニコしながら二頭を見つめ、アコーディオンを演奏するおじさんがいて、アイルランドらしい風情がありました。)

 イルカは、仲間と遊ぶときに、水中で泡をポコポコと相手に向かって吹きだすことがあるのですが、ドゥギィは、泳ぐベンの体の下にもぐって、体を垂直にし、この泡を吹きだすしぐさを何度もしていました。

 「なんかめずらしーものがいる!」と、寄っていく犬と、「しょうがないわねえ」と、向こう見ずな犬が寄ってきてもとりあえず危害を加えない野生動物、という状況を超えて、ベンとドゥギィは明らかに互いにコミュニケーションをとっていたのです。

 泳ぎの得意なベンはどこまでもドゥギィと一緒に泳ごうとし、ときには3時間も海にいたことがあるそうです。

(レトリバー犬はもともと水鳥専門の狩猟犬なので水を怖がらないことが多いのです。)

 そして、ドゥギィを追って沖に行ってしまい、さすがに疲れてしまったベンに気づくと、ドゥギィは、仲間の疲れたイルカにそうするように、泳ぐベンの下にもぐりこみ、頭でベンの体を支えながら、岸辺まで運んでくれたそうです。

 ベンとドゥギィの友情は約4年続きましたが、2010年から、急にドゥギィが何らかの理由で、埠頭に姿を現さなくなりました。

 島の裏側ではイルカの姿が目撃されていたのですが、埠頭に戻ってくる気配はありません。

 それでもドゥギィを待ち続けるベン。

 パトリックさんは、ベンを船に乗せて、晴れた日の夕暮れ、島の裏側に行ってみました。

 すると岩場近くの波間にイルカの姿が見えました。

 途端に船から身を乗り出して吠えるベン。そわそわと歩き回り、海に飛び込もうとしました。

 パトリックさんはベンを一生懸命おさえました。ベンが泳ぐには波が荒すぎたのです。

 身を乗り出すベンのそばに立ち、ドゥギィの背びれを指さすパトリックさん。その指先を一心に見つめるベン。

 この夕暮れの出会いが、ベンとドゥギィの別れとなりました。

 翌年の冬、ベンは車にひかれてこの世を去ったのです。

 ベンのことを振り返るパトリックさんは、その死について語った後、一度きゅっとくちびるを噛むと、静かな、暖かな声で言葉をつづけました。

 ベンは特別な犬でした。ベンのような犬は、まずいないでしょう。私たちがドゥギィのことを話すと、いつも聞き耳を立てていました。ドゥギィが大好きだったのです、と。

 
 この番組では語られていなかったのですが、なぜドゥギィが埠頭に通うようになったのかについて、島でこんなうわさがあったそうです。

 ドゥギィが来るようになる直前に、島の岸辺近くでイルカの死体が見つかるという出来事があり、もしかしたら、あれは彼女の夫だったのではないか。ドゥギィはその死を悲しみ、彼を探しに来たのではないかと。

(Irish Central記事より)

 ドゥギィが訪れなくなった理由はわからないままですが、埠頭かその途中の道のりが安全でなくなったか、新しい家族ができて、連れていくことはできなかったのかもしれません。

 いずれにせよ、事情を抱えてふいにその場所を訪れた誰かと、その場所の住人が友情をはぐくみ、訪れた側がそこから離れた後も、その場所の住人は深い思いを胸に、相手を待ち続けるという物語が、イタリアの名作映画「イル・ポスティーノ」を思い出させ、単に仲良しの動物同士という構図を超えて心に染みます。


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 島の夕暮れ時の金色に染まる海や、パトリックさんの優しさも美しい。
 (ドゥギィを待って芝生に寝そべるベンの黄昏時の姿や、埠頭にたたずむベンが海風をうけて、小さめの耳をひらひらさせているのも妙に胸に迫る。)

 ベンはドゥギィが来るときにはそれを察して何百メートルも歩いて埠頭に向かっていたそうですが、ドゥギィにもこの不思議な力が備わっていたのでしょうか。

 彼女はベンがこの世を去ったことを知っているのでしょうか。

 昔、ドゥギィを追って沖まで泳ぎ続けたベンの下に潜り、頭で彼を支えるようにして岸まで連れて行ってくれたドゥギィ。

 ベンがこの世から彼岸に旅立つとき、ドゥギィが彼の魂を支えて、海の向こうの天国へ連れて行ってくれたのだろうか、そうであってほしい。

 そう、思います。

 ぜひ番組や引用させていただいた記事で、この風変りだけど心温まる、そしてせつない友情のお話をご覧になってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。



(参照)
・「Irish Central」
「Amazing footage of a dog playing with a dolphin in Ireland (VIDEO)」
(Cathy Hayes September 09, 2016)
http://www.irishcentral.com/news/amazing-footage-of-a-dog-playing-with-a-dolphin-off-the-coast-of-ireland-video-127888298-237406421

・「National Geographic」
「UNLIKELY ANIMAL FRIENDS Ben the Dog and Duggie the Dolphin」
http://video.nationalgeographic.com/wild/unlikely-animal-friends/ben-the-dog-and-duggie-the-dolphin
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2016年09月24日

森重昭さんのご活動について (NHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」によせて)


「オバマ米大統領、広島訪問 被爆者とハグ Obama hugs Hiroshima survivor」
AFPBB News (AFP通信日本語ニュースサービス)



https://www.youtube.com/watch?v=D8MtsB636Tg

 
2016年9月27日(火) 午前1時30分より、バラク・オバマ大統領広島訪問時に大統領と言葉を交わした被爆者の一人、坪井直(すなお)さん(91歳・日本原水爆被害者団体協議会代表委員)をご紹介する番組が再放送されます。
 (前出動画内で最初にオバマ大統領と言葉を交わされている方です。)

 番組公式HPはこちらです。
 もっとNHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」

 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2075058/index.html

 この再放送にちなみ、今回は、坪井さんと一緒にオバマ大統領とお話をされた森重昭(しげあき)さんの、被爆したアメリカ人捕虜の調査活動についてご紹介させていただきます。

 森さんは動画で坪井さんの後にお話をされている方で、涙を浮かべる森さんと、オバマ大統領の抱擁の瞬間は世界中のニュースで大きくとりあげられました。

 オバマ大統領の手は温かかった。

 そう、その瞬間を振り返った森さん。

「夢のようでした。今まで苦労に苦労を重ねた。大変な思いをしたけど、最高のおもてなしを今日はアメリカ側がしてくれた」
(日テレNEWS24記事より)

 その言葉どおり、森さんの活動は困難を極める地道な作業の連続だったそうです。

 森さんが被爆したのは8歳のときでした。

 「爆風で小川に飛ばされ、気が付いたらきのこ雲の中にいたのです。あまりにも暗くて、10センチメートル前の自分の指先を見ようとしても真っ暗で見えないほどでした」
(nippon.com記事より)

 家や木々も爆風で吹き上げられ、自分の側を歩いていた人や、親せきが亡くなるという出来事に遭遇した森さん。
 ご自身が無傷だったのは奇跡だ、そう思われたそうです。

 その後、歴史学の教授になりたいと、会社勤めをしながら、週末に研究を行っていた森さんは、38歳のときに、終戦間際、撃墜されたアメリカの爆撃機2機の乗組員が、捕虜として広島の憲兵隊司令部に連行されたことを知ります。

 被爆者の中にアメリカ人捕虜がいたはずだ。以前よりそう思っていた森さんは、1974年、NHKが視聴者から募集した原爆の絵2000枚の中から、米兵を描いた絵二十数枚を見つけ出し、その絵を描いた被爆者のもとを訪ね、聞き取りをすることから調査を開始しました。

 捕虜となったアメリカ兵は全部で13名。ただ一人、尋問のために後に東京に送られたトーマス・カートライト中尉を除いた12名は、原爆投下により亡くなった。

 調査の末に、この12名の犠牲者の氏名を突き止めた森さんは、遺族を探し出して、彼らのことを伝えたいと考え、国際電話オペレーターの通訳を通じ、犠牲者と同じ姓の人を探すという、気の遠くなるような作業を開始しました。(心臓がお悪かったので、現地に行くことはできず、この方法を選ばれたそうです。)

 「死ぬまでに、何とかご遺族を探し出して、亡くなった米兵捕虜の写真と名前を平和祈念資料館に原爆犠牲者として登録しようと心に決めたのです」。
(nippon.comより)

 終戦直後の混乱で調査ができなかったこともあり、アメリカ人兵士が原爆の犠牲となったことを長年認めなかったアメリカ政府。

 遺族の中には、未だ帰らない家族の状況について「行方不明」としか知らされないままの方たちも多かったそうです。

 しかし、ついに森さんは犠牲となった兵士の兄、フランシス・ライアン氏の連絡先を突き止め、乗組員たちの写真を入手することができました。

 そして、これをきっかけに唯一捕虜の中で生き残った元機長カートライト中尉と手紙でのやりとりがはじまり、カートライト氏が亡くなるまでの20年間、100通以上の手紙を交わしたそうです。

「私は、奇しくも生き残りました。ですから何としても、遺族を探し出して、愛する人の最後についてお伝えしようと、そう心に誓ったのです」。
(nippon.comより)

 森さんの約40年にもわたる調査は実を結び、12名すべての犠牲者の氏名は、原爆による死没者として広島の名簿に登録され、オバマ大統領は演説で、被爆者として、日本、朝鮮半島の方たちとともに「12人の米軍捕虜」の存在について語りました。



 こうして、森さんとオバマ大統領との抱擁という瞬間が訪れたのです。

「被爆死した12人の米兵も天国できっと喜んでいる」
(毎日新聞より)

 あの抱擁の瞬間を、そう感慨深げに振り返っていた森さん。

 今は、長崎の原爆投下で犠牲となったイギリス、オランダ兵捕虜の調査を続けていらっしゃるそうです。

 森さんのこの活動は、亡くなった米兵捕虜の親友を通じて、甥である映画監督、バリー・フレシェット監督に伝わり、感銘を受けたフレシェット監督は、森さんに連絡をとり、2年間かけて、森さんの活動を追ったドキュメンタリー映画「Paper Lanterns(灯篭流し)」を完成させました。



 森さんの執念の調査は、同国のアメリカ人の命も奪った原爆と戦争の恐ろしさを伝え、また、その一方で、幼くして死の恐怖に直面し、地獄のような光景を目の当たりにしながらも、「アメリカのご遺族も同じように原爆で愛する人を失ったのだ」と思い、数十年不屈の調査をすることができる人の心を世界に知らしめました。
 
 葛藤を乗り越え、オバマ大統領に笑顔で「核兵器のない世界、私たちも行きますよ」と伝え、未来の平和へ向かおうとされている坪井直さんのお話とともに、心に刻まれたエピソードだったので、ご紹介させていただきました。
 
 以下に今回の記事作成にあたり、読ませていただいた記事は以下の通りです。より詳しい情報が書かれていますので、ご覧になっていただければ幸いです。 

(参考資料)
 ・ウィキペディア「森重昭」

 https://ja.wikipedia.org/wiki/森重昭

 ・nippon.com「広島被爆米兵の名前を刻んだ日本の歴史家 森重昭さんのライフ・ワークを描いたドキュメンタリー」(筆者:ジュリアン・ライオール  Julian RYALL 2016.05.24)
※非常に詳しく紹介してくださっている記事です。今回の記事の多くの内容は最初にこちらで読ませていただきました。

  http://www.nippon.com/ja/people/e00097/ (日本語版記事)
  http://www.nippon.com/en/people/e00097/ (英語版記事)

 ・山陽新聞digital「被爆米兵捕虜を調査した森重昭さんに聞く 同じ犠牲者追悼したいとの思い」
 (2016年08月05日)http://www.sanyonews.jp/article/393191/1/

 ・日テレNEWS24「被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話」(2016年5月28日)
  http://www.news24.jp/articles/2016/05/28/07331263.html

 ・日本記者クラブ「記者による会見リポート 米兵捕虜12人の被爆死をたった一人で突き止めた森さん
オバマ大統領のハグに隠された意味」(日本記者クラブ顧問 中井 良則)

 http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2016/06/r00033513/

 ・毎日新聞「米大統領広島訪問 米兵の被爆調査 森さん 抱き合い、涙」
(2016年5月27日【原田悠自、鵜塚健】)

 http://mainichi.jp/articles/20160528/k00/00m/040/141000c

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:37| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月23日

NHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」再放送のお知らせ(NHK総合)

「オバマ米大統領、広島訪問 被爆者とハグ Obama hugs Hiroshima survivor」
AFPBB News (AFP通信日本語ニュースサービス)



https://www.youtube.com/watch?v=D8MtsB636Tg

 2016年9月27日(火) 午前1時30分より、バラク・オバマ大統領広島訪問時に大統領と言葉を交わした被爆者の一人、坪井直(すなお)さん(91歳・日本原水爆被害者団体協議会代表委員)をご紹介する番組が再放送されます。
 (前出動画内で最初にオバマ大統領と言葉を交わされている方です。)

 番組公式HPはこちらです。
 もっとNHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」

 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2075058/index.html

 20歳のとき、爆心地から約1.2km地点で被爆、顔や手や背中に大きなやけどを負い、壮絶な光景を目の当たりにした坪井さん。
(大怪我を負い、橋の欄干近くに座り込んで救援を待つ坪井さんの姿が当時の記録写真に残されているそうです。)

 本当は原爆を投下をされたことに対する強い怒りがある。

 それでも、オバマ大統領と対面した坪井さんは、笑みを浮かべ、力強く握手を交わしながらこう伝えました。
「核兵器のない世界、私たちも行きますよ」

 チェコのプラハでやったあなたの「“核兵器のない世界”をつくろう」、そのことは今も私に脈打っていますよ。だからあなたが(来年の)1月に(大統領を)辞められても、広島へ来てください。

 坪井さんのその言葉を手を握り続けながら聞いたオバマ大統領。
 
 広島を訪れてからずっと、張り詰めた真剣な表情を浮かべていた顔に、はじめて笑みが浮かびました。

 「謝って下さい、とか悪いことをしましたとか私は一切いりません」

 そう語る坪井さん。

「憎しみを出しても、わかってもらえなければ意味がない。乗り越えんとね、平和はない。幸せはない」

 被爆の後遺症にも苦しめられながら、その心境に達するまでには、さまざまな葛藤があったはずですが、戦後71年、被爆国である日本でも戦争の記憶が薄れつつある今この時、まず必要なのは、謝罪の言葉の有無ではなく、ともに核兵器の恐ろしさを考え、平和に向かうという未来へ向けた思いであるというお考えが、このご発言になっているのだと思います。

 番組では、坪井さんに密着取材をし、被爆体験、そして怒りや憎しみを乗り越えて、「ここから」の平和への歩みを見据える思いが紹介されるそうです。

 当ブログでは、後日、この番組の内容や、同じく被爆者としてスピーチ後にオバマ大統領と言葉を交わされた、森重昭(しげあき)さん(動画内で坪井さんの後に会話をし、オバマ大統領と抱擁を交わしている方です)のご活動について紹介させていただく予定です。

 よろしければまたいらしてください。

 読んでくださってありがとうございました。


 (参照):
 ・「被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話」
  日テレNEWS24(2016年5月28日)
   http://www.news24.jp/articles/2016/05/28/07331263.html
 ・フジテレビ「ユアタイム」2016年5月27日 放送内容
 ・ウィキペディア記事「坪井直」
https://ja.wikipedia.org/wiki/坪井直
posted by Palum. at 01:05| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月22日

「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品4 宮川香山「色絵金彩鴛鴦置物」「「菖蒲文花瓶」)

 先日概要をご紹介させていただいた上野の東京芸術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工芸」について、引き続き個人的におススメだった展示品について書かせていただきます。

 展覧会公式HPは以下のとおりです。
 http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

 初代・宮川香山(こうざん)「色絵金彩鴛鴦置物」(白磁 幅18cm 高さ11.3cm)

宮川香山 縮小版.png

 穏やかな目をしたつがいのオシドリが向かい合って寄り添う、愛らしい作品です。
 シンプルな姿のようですが、よく見ると、金で羽毛の流れが一筋一筋微細に書き込まれており、このふっくらとした質感をつくりあげています。

 宮川香山は京都の楽焼の家に生まれ、幼いころから焼き物に親しんでいましたが、のちに、輸出用陶磁器を製作するために、横浜に窯を開き、「眞葛焼(まくずやき)」を生み出しました。

 眞葛焼の特色として「金襴手(きんらんで)」と呼ばれる、彩色した陶磁器に金彩を加えた技法と、「高浮彫(たかうきぼり)」という、陶器からはみ出すように立体的な彫刻的表現があります。

 高浮彫の作例は「田邊哲人コレクション」HPで観ることができます。「渡蟹水盤」は圧巻。
 http://www.tanabetetsuhito-collection.jp/makuzu_select01.html#img_top 

 強烈な印象を残す「高浮彫」の作品は、1876年開催のフィラデルフィア万国博覧会で評判を集めましたが、一方でこのあまりにも緻密な作品は時間がかかり、焼いた際の縮みで失敗する可能性もあるという問題があったため、新たな技法として、中国清朝陶磁などに見られる「釉下彩(ゆうかさい)」技法(※下地に着彩し、上から透明な釉薬をかけて焼き上げたもの)を採り入れ、作風の幅を大きく広げ、清澄で淡く優しい色合いの作品でも高い評価を得ました。

 展覧会出品作品の中の釉下彩作品「菖蒲文花瓶」(青磁)

宮川香山 菖蒲文花瓶.jpg

 鴛鴦は、ビックリする感じの典型的高浮彫の真葛焼とは異なり、ややデフォルメしたような穏やかな曲線で作られています。
しかし、羽毛の描き方には卓越した集中力と技量が感じられ、だまし絵のようなくっきりと立体的な技巧と、釉下彩にみられるような穏やかな作風とのちょうど中間に位置するような作品です。

 当記事で参照させていただいたネット情報は以下のとおりです。

 宮川香山真葛ミュージアムHP
  http://kozan-makuzu.com/

 ウィキペディア記事
 https://ja.wikipedia.org/wiki/宮川香山

 没後百年「宮川香山」(サントリー美術館)HP
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_1/index.html

 各地美術館、博物館、展覧会を紹介してくださっているHP「インターネットミュージアム」で記事とともに「驚きの明治工芸展」動画を公開してくださっていました。肉眼では細部の鑑賞が難しいほどの緻密な作品も数多くあるので、こちらでご覧になってみてください。

 インターネットミュージアム取材レポート「驚きの明治工芸展」( 取材・撮影・文:古川幹夫氏)
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=863

(会場全体と陶磁器)

https://www.youtube.com/watch?v=ezWCq3mMgJw

(主に自在作品)


https://www.youtube.com/watch?v=1mT5K2D03-E

(壁掛、天鵞絨〈ビロード〉友禅)


https://www.youtube.com/watch?v=Qc5DF4z99Z0

(根付と木工)


https://www.youtube.com/watch?v=ZMIaeh0GxPA

 当ブログのこの展覧会関連ブログ記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。
  「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)

  「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品1 加納夏雄 「梅竹文酒燗器」)
  「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品2 海野勝a 「背負籠香炉」海野a乗「犬図薬缶」)
  「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)
 「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品3 宮川香山「色絵金彩鴛鴦置物」「「菖蒲文花瓶」)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:20| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月21日

「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)

 先日概要をご紹介させていただいた上野の東京芸術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工芸」について、展示作品のうち、個人的におススメだったものについて書かせていただきます。

 展覧会公式HPは以下のとおりです。
 http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

 今回ご紹介させていただくのは、虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」。

 ともに繊細にして絢爛豪華な象嵌(※)細工「芝山」の名作でした。

 (※)象嵌(ぞうがん)……象嵌、工芸技法のひとつ。
象は「かたどる」、嵌は「はめる」と言う意味がある。象嵌本来の意味は、一つの素材に異質の素材を嵌め込むと言う意味で金工象嵌、木工象嵌、陶象嵌等がある。
ウィキペディアより)


 虎爪(※)作「蒔絵螺鈿芝山花瓶」(胴径15.5p、高さ24.5cm)

(※)作者名の本当の読みがわからないのですが、一応これで「こそう」と読めるそうです。

蒔絵螺鈿芝山花瓶.png

 抑えた金色の地の花瓶に紫陽花、牡丹、菊、藤、百合、柘榴などの花や果実が活けられた姿。

 本物の花瓶の中に、鳳凰の舞う豪奢な花瓶の模様という図案の遊びも利いています。

蒔絵螺鈿芝山花瓶部分.png
 
 鳳凰の花瓶は細工のほどこされた台に乗り、そのそばにはぽってりとした茶器らしき急須。
(ちなみに本体花瓶土台は、まるっこい銀の獅子が「んあー」ってしてる顔で、上の花々の繊細な美貌とギャップ萌え)

 開いたザクロの実の粒のひとつひとつ、藤や紫陽花の小さな花びらなどが、象嵌の立体で、風に揺れて光りながら零れ落ちんばかりに緻密に描かれている。

 圧巻の技巧が、これみよがしでなくやわらかな動きを感じさせる作品です。

 私の写真では暗くてわかりにくいのですが、「驚きの明治工芸」の公式HP「みんなで作る工芸図鑑」欄に来館者の方々のツイッターがアップされていて、皆さん撮影のより鮮明な写真を観ることができます。

 以下、「芝山」について、「Google Arts&Culture 芝山象嵌」を参照しながら書かせていただきます。
出典URL:
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/exhibit/芝山象嵌/lAIisfPbYrziIg?hl=ja
(非常に詳しくて目の保養なページです。立命館アートリサーチセンター情報提供)


「Google Arts & Culture 芝山象嵌」(制作過程と作品紹介動画)



https://www.youtube.com/watch?v=iVpUqYYowCo

 「芝山」とは、「芝山象嵌(ぞうがん)」と呼ばれる、貝(蝶貝、夜光貝、あわびなど)、サンゴ、べっ甲、象牙などで作ったモチーフを表面にはめこんで作る明治工芸のことです。

 「芝山」の名はもともと現在の千葉県の地名でした。

 江戸時代、安永年間(1772〜1881)の頃にこの地に生まれた大野木専蔵が創案した象嵌技法を、この地にちなんで「芝山」と名付け、自身の姓も「芝山」と変えたことから、この呼び方が広く使われるようになりました。

 芝山の特色は、はめこんだ模様が立体的に浮き出ていることで、この細工のみを「芝山」と呼ぶこともあります。
 
 その繊細な美は、当初裕福な武家や商人の調度品として好まれ、「大名物」と呼ばれましたが、明治に入ってからは、欧米への土産物として人気を集めました。

 特にパリ万国博覧会(1867)で日本の工芸品の超絶技巧が絶賛されるようになってからは、「東洋のモザイク」と呼ばれ、輸出品として海外向けの品が作られるようになりました。
 
 創始者「芝山専蔵」の名は代々受け継がれてきましたが、弟子たちも技術とともに「芝山」姓を受け継ぐことになり、「シバヤマ」の名はその象嵌の技法として海外にも知られるようになりました。

 (以前、明治工芸に詳しいイギリスの方と偶然お話しする機会があったのですが、綺麗な陳列品を指さして「シバヤマ」「シバヤマ」と何度も言われ、「え?シブヤマ(違った)?誰?」と思ったのでよく覚えています。ていうかその方に教えていただいてはじめて「芝山象嵌」の存在を知った。〈日本通外国人と通ジャナイ日本人あるある〉)

 ロンドンの、「ヴィクトリア&アルバート美術館」所蔵の「芝山」一覧はこちらです(展示されていない物も含む)。
http://m.vam.ac.uk/collections/search/?offset=0&limit=10&q=shibayama&commit=Search&quality=2

 非常に美しかった「Yasumasa」作の衝立にとまる鷹を描いた硯屏(けんびょう※〈英語ではシンプルに「Screen(衝立・屏風)」と呼ばれています。〉)
http://m.vam.ac.uk/collections/item/O232966/screen-yasumasa/
拡大画像
http://m.vam.ac.uk/collections/cis/enlarge/id/2006BE7281

 この写真だとちょっと明るいのですが、金色が闇をはらんだように底光りし、桃色の花散る中、柔らかい色の、少し優しい雰囲気の鷹が羽を広げ、珊瑚製と思われる紐が繊細な結び目を垂らしている、神秘的な作品でした。竹を模した象牙の彫も素晴らしかった。

 ※硯屏……硯(すずり)のそばに立てて、ちりやほこりなどを防ぐ小さな衝立(ついたて)。(コトバンクより)


 芝田易信(やすのぶ)作「蒔絵螺鈿芝山硯屏(けんびょう)」(幅13p 高さ30p)

蒔絵螺鈿柴山硯屏風2.jpg

 象牙製の枠組みの中に、上部は見開きで咲き誇る木蓮の大木と牡丹。その上で尾羽を豪奢に垂らす孔雀。

 左側の牡丹の足元には雄の孔雀の妻なのか、雌の孔雀がたたずんでいます。

蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分2.png

蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分3.png
 華やかな情景の中に、舞う白い蝶や大木の下に咲く菫など、つつましくで可憐なモチーフも描かれた、奥行きのあるデザインです。
 咲き初めの木蓮の、光を透かして輝く小さなつぼみとそれを支える細い枝が、ほろほろとした動きを感じさせます。

 下部では蒔絵の中に二匹の鯉が金の波紋を揺らして泳いでいます。
蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分1.png

 (なお、裏側にもカラフルな花紋を散らした蒔絵があったのですが、暗くて撮れませんでした……)

 おそらく、この展覧会女性ウケという点では最も人気を集めそうな品。

 この豪華さと雅を感じさせるデザイン、奥行きのあるやわらかな透明感は、かつて美しさで騒然となった、大和和紀先生版源氏物語「あさきゆめみし」のイラストを思い出させました。

源氏物語 あさきゆめみし 完全版(1) (Kissコミックス) -
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 どちらの写真も暗くて申し訳ないのですが、実物は金地があたたかく光る中に、かわいらしい色彩が緻密に華やかに舞う絶品です。

 是非お出かけになってその美をご覧になってみてください。

 当ブログのこの展覧会関連ブログ記事は以下のとおりです。よろしければ併せて御覧ください。
 「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)

 「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品1 加納夏雄 「梅竹文酒燗器」)
 「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品2 海野勝a 「背負籠香炉」海野a乗「犬図薬缶」)
 「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:55| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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