2016年08月06日

夏向き癒しのイルカ動画

今日はYoutubeよりおススメのイルカ動画をご紹介させていただきます。
(前回の犬動画編はコチラ

まずはコチラ「Cat and Dolphins playing together」



アメリカのマリンパークでの一コマです。

人と一緒にいた猫が、イルカに興味しんしんで身を乗り出し、一方イルカも優しい目をして猫を見つめ、くちばしの先で、ちょこん、ちょこん、と猫の額を触ります。

これにこたえて、猫も一生懸命前足を伸ばして、イルカのくちばしをちゃいちゃい……と引き寄せると、ぷかぷか揺れながらも、できるだけじっとしているイルカにすりすり頭を押し付けはじめました。

「にゃー……つるスベにゃー(ゴーシゴシゴシ)……あ、いっちゃダメ(はしっ)、にゃー……つるスベにゃー……(繰り返し)」
目を閉じたうっとり顔からそんな感想が聞こえてきそうです。

何度も顔を出して猫を見に来るイルカも、
「こっち(水中)じゃ見ない感じだけどカワイイ生き物だわあ」
と、思っているみたいに見えます。

周囲の人たちからの「オーゴッド……」という感嘆のため息まじりの声も、その場に居合わせた幸運を感じさせます。

イギリスの新聞「Dailymail」に、この出来事に関する記事(画像と動画つき)がありましたので、あわせてご参照ください。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2689882/Cat-plays-DOLPHINS-amazing-video.html

それにしても、圧倒的に体格差があり、決して泳ぐのが得意でないであろう家猫が、ここまで身を乗り出して、イルカを自ら引き寄せてスリスリするとは、よほど惹かれるものがあったのでしょうか。

最初に猫を見ているイルカの目とか、おでこをちょんちょんする動きとか、いかにも好意的で優しそうだなあと思いましたが、猫もその辺を感じ取ったのかもしれません。

ちなみに、犬がイルカに興味深々なこんな動画もありました。

タイトルは「Overboard Maverick- Dog jumps on Dolphins 」
Overboadで「船から落ちる」という意味です。Marverickは犬の名前かと)



船に並走して泳ぐイルカたちを舳から見ているジャーマンシェパード(お尻カワユス)。

波間に優雅に姿を現しては消えるイルカの背中にそわそわしていたかと思うと、いきなり海にジャーンプ!!。

釣りをしていた飼い主さんたちが「おい、なにやってんだ!?ほら、こっちまで泳いで来い!!」と慌てて(でも、爆笑が混じっている)船の側面をばしばし叩いて呼ぶと、飛び込んだ時点で我に返ったと思われる犬がしずしずと戻ってきます。

飼い主さんがすぶぬれの犬をずざざ……と首根っこつかんで引き上げてから、
「何考えてんだよお前は……」
とちょっとお説教しています。

人が見てもイルカって「美しい生き物だなあ」と思いますが、犬猫も魅了されてしまうのかもしれません。

さて、コチラはちょうど今大盛況と思われる、長崎県佐世保市の九十九水族館「海きらら」のイルカショーの動画です。

二頭のイルカが同時にハイジャンプして、片方が投げたボールを相方が空中でキャッチするという華麗で高度な技を見せています。(キャッチした後クルリと回転した姿の、尻尾のそりまで美しい。)



このイルカたちが、二頭並んでボールをプールにぶつけて自主練している動画が海きららのFacebookに上げられているのでご覧ください。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=476231242453998&id=183373245017761

練習しながらしきりとふげー、ふげー、と言っているのがカワイイ……運動部みたいに「イチ、ニイ、サン」的なカウントしているんでしょうか。

最後に、「ふげーえ!(訳:そぉーれ!〈かな?〉)」と元気に放ったボールが外に飛びだしてしまい、
「あっ?、あー……」みたいに口をあけてじっと見送っている顔がまたイイです。

参照:ファンファン福岡HP
「親も子も大興奮!自主練するイルカのジャンピングキャッチボール☆九十九島水族館「海きらら」」
http://fanfunfukuoka.com/travel/20744/

当ブログでイルカに関する情報をご紹介している記事はコチラです。よろしければ併せてお読みください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)



読んでくださってありがとうございました。






posted by Palum. at 04:31| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月05日

減酒への道 (わたなべぽんさん「やめてみた」参照)


※今日は主に日記です。(下にぽんさん漫画の情報を少し書かせていただいています。)

ただいま絶賛夏バテ中です。

一昨日減酒の誓いに早くもぷち挫折して飲みすぎたら、なぜか今日ものすごくダルイです。

二日酔いまではいかなかったけど、昨日の起きる時間とか、一日のスケジュールとかを少し変えてしまったら、今日、坂道を転がり落ちるように疲れが襲ってきました。

多分「何時に何をする」って体が新習慣をある程度覚えていて、そこをハズすと普段頑張り慣れない体質なだけにものすごくペースが狂うんでしょうね……。

でも、それを言い訳に「というワケでやっぱり毎日更新はできませんでしたテヘペロ♪」だけは嫌だったので、
(100日目指して10日程度で挫折なんて恥ずかしい上に、上記のような性質上、多分ブログ更新だけではなく、ほかも全部「いい、いい、どうでもいい!」と投げやりになってしまい頑張れなくなる。挫折のエキスパート〈哀〉なんでその辺はもうよ-くわかってる。)とにかく書かせていただきます。

減酒の目標として、「平日原則禁酒(人との外食時は別)」としていたのですが、「『人との外食時』だからいいやあ、飲める飲める飲めるぞぉ〜♪」とハメ外して酔っぱらってしまったんで、この条件に今後は「ただし、原則一日の適量飲酒量を上限とする」をつけ加えます。
(酔っぱらうと「これ以上飲み食いしちゃダメ」のタガが派手に外れるからダイエット的にもマイナス)

ちなみに医学的に適量(※1)飲酒量とされるのは、男性で「一日酒1〜2単位まで」(※2)だそうです。
(※1)性別、体質、体重によって異なる。
(※2)1単位=純アルコール量20g。

一単位はビールなら中びん1本、日本酒なら一合(180ml)、ワインなら小さめのグラス2杯、サワー(アルコール度数7%)なら350mlで一缶だそうです。
(さらに週2日以上はお酒を飲まない「休肝日」を設けることが推奨されている)
参照:タニタ食堂HP「からだカルテ」の「ほどほどならOK?お酒の健康小話」より
http://www.karadakarute.jp/tanita/column/columndetail.do?columnId=54

実は、サッポロビールのHPはこれより厳しい数値(一日一単位まで)を推奨しているのですが、私は飲む頻度自体は低いんで、さしあたり守れそうなほうを選ばせていただきました(汗)。
(ビール会社なんだから「だいじょぶ×2、適量なら体にいいんですよ、飲みましょう!」的な意見になりそうなもんですが、まじめですね。)
参照:サッポロビールHP
http://www.sapporobeer.jp/tekisei/kenkou/susume.html

ところで、日ごろダイエットやお掃除情報をいただいている漫画家のわたなべぽんさんの最新刊「やめてみた」を読んでいちばん衝撃的だったのが、「毎晩の晩酌(ビール一缶)もやめてみた。外食や家族のお祝いの時はおいしくいただく」というおまけページの情報でした。
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -



ぽんさんの「もっと!スリム美人の生活習慣の真似をしたら、リバウンドなしでさらに5キロ痩せました」
の食べたものメモの段階では、少量だけど毎日飲んでいらっしゃるようで、「お食事ヘルシーだけど、休肝日ないんだな」と思っていたので、もんのすごくびっくりした。
(めっちゃ読み込んでます。まだいただいた情報をちゃんといかせてないけど〈汗〉)

もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました<もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました> (コミックエッセイ) -
もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました<もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました> (コミックエッセイ) -

たとえるなら、ほかはともかくこれだけは自分と似たり寄ったりの成績をとっていると思っていた人が、いつのまにかその教科でもはるか高みにいっていたみたいな……(汗)。

ショックでしたが、しかし、飲酒習慣というのはここまで改善できるという実例をいただき励みになりました。
ぽんさんの場合、段階的に減らしていったのが勝因だったんじゃないかなと思います。
(※ 深刻な飲酒依存の場合は、早急な医師の診断が必要です。)

「スリム美人の生活習慣を真似したら1年間で30kg痩せました(以下スリ真似)」、「さらに5kg痩せました」、「やめてみた」と通読すると

スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ダイエット前「350mlビール5缶、缶のまま」

スリ真似時ビール.png

(「スリ真似」より)

→ダイエット中「350mlビール1缶、きれいなグラスに入れて」

スリ真似 アルコールを味方につける.png

(「スリ真似」より)

→ダイエット成功後「原則普段の晩酌は炭酸水果汁入りに変更」

炭酸水.png

(「やめてみた」より)

という流れだそうです。
(ノンアルコールビールをそうと気づかず飲んでいたことがきっかけで、「シュワシュワでカンパーイ♪」の要素があればいいのだとわかったとか。)

おそらく、ダイエット開始時にいきなり炭酸水にしても、定着は難しかったのではと思います。
(実際一度断酒に失敗していらっしゃる。)

スリ真似 失敗.png

(「スリ真似」より)

でもトータル35kgの減量(その前に汚部屋脱出)という達成感と、このことに関するストレスの減少を経て、さらなる美人習慣へとステップアップなさったのではないでしょうか。

まだまだダイエットにも着手したての自分が、ここ(平日炭酸水)を目指して達成できるかは不安ですが(本来、以前のぽんさん程度の飲酒量〈一缶程度〉なら問題ないと思うけど、私は一度飲みだすと止まらない子なんで、炭酸水ゴールにしておきたい……。)、アルコールが入ると体力やその他の習慣にもシワ寄せがきてしまうと、一昨日〜今日でよーくわかったんで、とにかくこの情報をお手本に頑張ります。またいずれ経過をご報告させていただきますんで、よろしければご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 04:34| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月04日

蚊の話(椎名誠「わしらは怪しい探検隊」より)

蚊に刺されました。

酒飲みすぎて、あーもー僕的ノルマのブログ更新とか洗い終わった洗濯物干すとか、なんかやることやってないけどいったん寝ちゃうかあ、みたいになって寝たら、両足がかゆくて目が覚めた。
(ところで、数日前わたなべぽんさんを見習って減酒するとか言ってなかったか。)

しかも、足裏とか足の甲の皮膚がぐにぐにして掻いても痒みがとれないエリアとかを重点的に。

あったあ(頭)きたんで、今PCの脇にキンチョール置いて、今や我が血(含アルコール)をぱんぱんに吸って動きが鈍くなっている奴を仕留めてやろうと待機しながらこのブログを書きはじめました。洗濯物は干し終わりました。ギリ臭くなってない(刺されて良かったんじゃ……)。

かつて箏曲家宮城道雄さんは「蚊の羽音は篳篥(ひちりき)の音のようだ」と書いていましたが、その研ぎ澄まされて風流な感性を美しいと思っても、今はアノ音がしたらバーローンナロー(ジャイアン調)で臨戦態勢に入る予定です。

大体人様の血を吸っておいてカユクするとは何事か、お前ら足裏の角質を食べてくれるドクターフィッシュを見習えブツクサブツクサ……。


愚痴はこの辺にしておいて、せっかくなので(?)蚊にまつわる名文をご紹介したいと思います。

「わしらは怪しい探検隊」(椎名誠)
エッセイスト椎名誠さんが、友人たちで結成した「怪しい探検隊(正式名称 東日本何でもケトばす会〈←?〉)」とともに離れ島へ行きキャンプをしたときの顛末を主に描いた、アウトドアエッセイの傑作です。

わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -
わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -

独特のイラストは、東ケト会(略称)の一員でイラストレーターの沢野ひとしさん。

男たち特有のたくましくもいい意味で馬鹿馬鹿しいノリと、美しかったり恐ろしかったりする島の自然描写が素晴らしい(この本では「恐ろしい」優位)。

「水曜どうでしょう」(大泉洋の出世作番組)の旅シリーズ好きな方には特にお勧めです。

ちなみにこの本のアマゾンの紹介文に

「“おれわあいくぞう ドバドバだぞお…”潮騒うずまく伊良湖の沖に、やって来ました「東日本なんでもケトばす会」ご一行。ドタバタ、ハチャメチャ、珍騒動の連日連夜。男だけのおもしろ世界。」

とあり、なんと簡にして要を得て、しかもインパクトある名文だろう、と思ったら、書かれたのが、ご本人東ケト会の一員で「本の雑誌」の発行人だった目黒考二さんでした。

(「おれわあいくぞう」のくだりは、椎名さんが作った旅のしおり〈笑〉に添えられた歌の歌詞。〈確か〉目黒さんが解説文で「あまりに馬鹿馬鹿しくて誰も歌わなかった」と冷静に報告していらっしゃいました〈手持ちの電子書籍版ではこの解説文が見当たらなかったので、後日もう一度確認いたします。〉)

この作品の中に、椎名さんたちが、キャンプをしていた夜、「蚊柱(かばしら)」という、聞いただけでもカユクなる、それこそ椎名さん流に言うなら、おまーら柱なんか形成するんじゃないよ!なものに襲撃されるというエピソードがあります。

椎名さんいわく、テントの外でうなりをあげる音(怖)から察するに、その数数百万匹とも思われる大群で、実際にこれに襲われたら弱っている人やら馬やらが死んでしまうということもあるという、本当に危険な事態だったのですが、椎名さんの文はその恐怖と緊迫感を余すことなく描きながら、独特すぎる比喩表現と脱線を繰り広げていきます。

以下一部原文と内容をご紹介させていただきます。

「惨劇はこうして(補:みんなでたき火を囲んでしこたま飲んで騒いでテントに転がり込んで)全員が眠り込み、焚火がすっかり消えた午前一時頃、突然襲ってきた。」

蚊柱の襲来です。

「蚊といってもただの「カ」ではない。こういうふうにふだんあまり人類がやってこないような海辺と山村の境界あたりにいる蚊というのは同じ蚊といってもその蚊としての実力がまるっきり違っているのである。」

椎名さん曰く、我々が知っている蚊は、生ごみやらなま温かい排水やらに恵まれた環境(?)に生まれ育ち、獲物(ヒト)は飛べばぶつかるような過密状態。言うなればヘロヘロブロイラータイプの軽薄蚊でしかないのに対し、野生の蚊は「荒地の水たまりで冷たい寒風にさらされ、ゲンゴロウに追い回され、トンボのヤゴにケトばされながらもなんとかようよう日暮れに羽化し、初めて中空に飛び立ったときからすでにきびしくまなじりつりあげ、悲しい怒りを身の内にいっぱい秘めている」ので、都会の蚊とはまるで別格なのだそうです。

その攻撃スタイルにおいても、都会の蚊と野生の蚊は大きく異なり、都会の蚊が鴨居などに身を潜めていて人が寝静まったら血を吸いに来る、言うなれば「様子をうかがって、あとでどうかしたら襲っちゃう」というふうな「イヤラシ的態度および姿勢」なのに対し、野生の蚊は「獲物と見るや直進してきてズバッ、どぴゅう!とばかりに体当たりしつつ刺していくのである」。

その姿は若造テロリストが短刀腰だめにして「でえりゃあおおおう!!」と突進、玉砕していくのとよく似ている。……とのことです。


とにかく、その悲しい怒りに思いつめた「でえりゃあおおう!!」が数百万匹、椎名さんたちのテントにうなりをあげて突っ込んできて、テントの布地にコツンコツンとぶつかってくる音がいたるところから聞こえてくる。という事態が発生。

その時、全員がヒッチコック監督の映画「鳥」(ある日、突然鳥の大群が人間に襲い掛かるという不条理恐怖映画)を思い出して戦慄し、家の壁をたくさんの鳥が一斉にくちばしでつついて、壁が穴だらけになる、というあの場面のように、蚊がテントを突き破るということはまさかあるまいな、と話し合ってしまったそうです。

そして、さすがにそれは無かったけれど、わずかな隙間から突撃してくる蚊が後を絶たず、蚊取り線香の煙を充満させて、暗闇に懐中電灯をあてて蚊を探し出し、敵機の所在をつかんだものが叩き潰して撃墜、という、恐怖と痒さと汗と煙にまみれた戦いが深夜たっぷり二時間続きました。

激闘の果てにようやく蚊柱が去った翌朝、仲間の一人である「陰気な小安(凄い通称)」さんが行方不明になっており、ショックで自殺したのでは、いや人質にとられたのでは(←……)、と、ざわめきつつ、本当にいなくなったのなら探さなければいけないが、めしも食いたい、問題は小安とめしのどちらを優先させるかだが、そりゃめしだ、との結論に達した一同(酷い)でしたが、少し離れたところで、蚊取りの煙を避けて、ツェルト(簡易テント)に潜り込んで苦しそうに寝ている小安さんを発見、何故か全員でツェルトを取り囲んで念仏を唱え合唱したのち、炊事班長の沢野さんがテントにまわしげり(酷すぎる)、崩れ落ちるツェルトとともに、蚊柱事件は幕を降ろしました。

手短にまとめてさせていただいてしまいましたが、本当はこの事件だけでも、約30ページにわたり稀代の名文が堪能できます。そのほかのエピソードも本当に面白いので是非是非実際にお手に取ってみてください。
(椎名さんと沢野さんが遠泳に行った際の騒動も、いずれご紹介させていただきたいです。)

当ブログで椎名誠さんの「砂の海」をご紹介させていただいた記事はコチラです。

また、同じく蚊にちなんだ名文としてご紹介させていただいた太宰治の「哀蚊(あわれが)」の記事はコチラです。蚊柱事件とはまるで違う、東北の豪家の影を描いた物悲しい作品です。(※)

よろしければ併せてご覧ください。

(※)ちなみに椎名さんはかつてその才能を吉本隆明に「自殺しなかった太宰治」と形容されたことがあります。「太宰はなかなかいい男で、しかもめったやたらと女にもてたらしいからなあ」と喜ぶ椎名さんに、後の東ケト会員である友人たちは「それはあまり関係ないんじゃないか」と冷淡に指摘していました。
(『哀愁の街に霧が降るのだ』より。椎名さんたちが友人同士でボロアパートに暮らした日々を描いた作品。これまた傑作です。)

哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫) -
哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫) -


読んでくださってありがとうございました。
(ところでウチの蚊まだ出てこないな……〈困〉)





posted by Palum. at 02:44| 椎名誠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月03日

放送熱望!イギリス絵画鑑定番組「Fake or Fortune」

イギリスBBCで現在放送中の非常に面白い番組をご紹介させていただきます。

「Fake or Fortune(偽物か幸運か※)」 Fortuneには「財産」の意味もあります。

巨匠の作と考えられる絵画の真贋をあらゆる角度から考察する番組です。

BBCの公式トレーラーはコチラ


https://www.youtube.com/watch?v=oT7d9Mnsn-U

番組公式HPはコチラ(画家や鑑定方法情報があってここからして面白いです。動画つき。)

イギリスの鑑定番組といえば長寿番組「アンティークロードショー」(おそらく「なんでも鑑定団」が影響を受けた番組)が有名ですが、これはいわばそのスピンオフともいえるもので、同番組の司会者で有名ジャーナリストのフィオナ・ブルース(Fiona Bruce)と、同番組鑑定士フィリップ・モウルド(Philip Mould)、研究者でアート・ディーラー、バンドール・グローヴナー(Bendor Grosvenor)の3人が、主に視聴者からの依頼を受けた絵画について調査を進めていきます。

なお、フィリップ・モウルド氏は、うずもれた巨匠の作(通称スリーパー)の発掘者として有名で、「絵画のシャーロックホームズ」という異名をとり、その活躍ぶりは既にNHKのドキュメンタリー「ハイビジョン特集 スリーパー・眠れる名画を探せ 〜イギリス美術界のシャーロック・ホームズ〜」(2004年放送)でも紹介されています。

NHK番組情報はコチラ(動画つき)

美しい絵画と巨万の富をめぐり錯綜する思惑、様々な歴史的背景、古い資料から手がかりをあぶりだす執念、緻密な科学的調査、そして絵の持ち主たちの運命の明暗に圧倒され、一級の推理ドラマのように一度見始めたら目が離せない引力をもつ番組です。

日本でも美術鑑定をめぐる漫画がいくつもありますが(「ギャラリーフェイク」「オークションハウス」「キュレーター」「MASTER KEATON」の一部作品など)言うなればそれのリアル版、しかも、本物の絵(依頼品とともに、その画家の傑作が何度も大写しになって美しい)とともに、数千万円がかかったドラマが各国を又にかけてじっくり一時間かけて展開されるので見ごたえ満点です。

ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -
ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -

オークション・ハウス 1 -
オークション・ハウス 1 -

キュレーター 1巻 -
キュレーター 1巻 -

MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -
MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -

現時点でシーズン5に突入していますが、既に未発見、あるいは行方不明だった名画をいくつも発掘しています。

一方で、アートマーケットの未だ不透明で権威主義な性質や、Forger(贋作家・偽造師)と呼ばれる、過去繰り返し世間を騒がせた贋作家たち(たまに足を洗った本人たちが出てきて、依頼品が自分の筆になるものかどうか確認するという荒業展開あり〈汗〉)の存在といった、芸術界の闇の部分についても詳しく紹介されます。

個人的には「デヴィット・アッテンボローさんたちが手掛けたBBCの自然番組」「Dad’s Army(村の年配男性たちが第二次大戦中にイギリス防衛に立ち上がるまさかの戦中コメディ)」「ギャレス・マローンさんの合唱ドキュメンタリーシリーズ」に引き続き、「イギリステレビ面白すぎる……(ガン見&わななき)」となった作品です。

よそのおうちのものとはいえ大金がかかってるから余計鼻息荒くなる……。

NHK様、どうかどうかなにとぞ放送をご検討ください!!

(いや、「スリーパー」が今年6月に再放送していたらしいので、既に実現に向けて動き出しているかもしれません。その情報を入手したら必ずお伝えいたします。)

放送が決定するまで(←誰もやるとは言ってない、思い込み激しい子か)、当ブログでこのシリーズ各回の魅力を一部お伝えしていきたいと思いますので、よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

参照:ウィキペディア記事(※鑑定結果を含むネタバレ記事になっているのでご注意ください)


posted by Palum. at 04:30| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

(「100日間リベンジ」再び)1週目まとめ……無駄ネット閲覧時間を減らす+毎日記事更新成功


※今回はただの日記です。

「毎日記事アップ」という目標をひっそりと再開して一週間が経過したので、ここしばらくの生活を振り返ってみます。

私のブログを以前から見てくださってる奇特な方はご存じかもしれませんが、私は過去に二回「100日間」「100日間リベンジ」と銘打ってそれぞれダイエットや生活習慣の改善をするべく、三日坊主に毛の生えた努力期間を経て、何事もなかったように挫折しています。(←……)

いや、ダイエットにいたってはこの間に増えている。(ダメじゃん)

一連の挫折した魂の遍歴(聞こえ良く形容)ついてはコチラ

うち「100日間リベンジ」期間で、先の「100日間」期間の努力に挫折した言い訳している記事についてはコチラ

そして、「100日間リベンジ」期間の(間に何度か挫折した果ての)2016年新年、あとで再び挫折することになる抱負を述べている回についてはコチラをご覧ください。(そんな情報いらねえ)

ここまでの文章で何度「挫折」って書いたかわかんないくらいですが、実際それだけの数以上挫折して今にいたります。

これまでの経過をざっくり申し上げると、

「ダイエットも英語も記事書きも全部頑張りたい。(キリッ)」(「100日間」期間)

→「人間として、今の自分はそんなに頑張れるレベルでないことに気づいたので、まずは努力できる生活習慣を整えたい。さしあたり無駄ネット閲覧禁止から(汗)」(「100日間リベンジ」期間)

→「逃亡、消息不明」

以上です。(なんだその他人事口調は)

しかし、これで良いとは決して思っていなかったので、(できない自分にストレス溜まるし、そもそも物理的に入らなくなった服は依然として入らないままだし……。)なんとかしようと重い腰を上げ、まずは「無駄ネット閲覧中止」、「極力毎日記事更新」から徹底させようとしたのが、2016年7月25日。

神社にお参りして、決意表明をして参りました。

帰宅するとすぐ、かねてより思いきって導入していた(けどあんまり使いこなせてなかった)「キッチンセーフ タイムロッキングコンテナ」なるタイマーロックつき収納ボックスにネット関連のものを収納して、ぐがぐぎぎ……状態のネット見たいゴコロを物理的に遮断。

Kitchen Safe タイムロッキングコンテナ (ブルークリア) -
Kitchen Safe タイムロッキングコンテナ (ブルークリア) -

(別に読んで心浮き立つとか、癒されるとかじゃないのに、それがわかりながら見たくてたまらないし、一度見出すと手がとまらないというまさしく中毒状態)

代わりにすっかり勝手がわからなくなっていた文書きという作業を再開しました。

(錆び付き荒んだ心であっても進んでご紹介したくなるカワイイ犬動画の話題からスタート。翌26日記事アップ成功)

その後、人間に対する警鐘として個人的に非常に衝撃的だった「スタンフォード監獄実験」についての番組があると知ってこちらもご紹介。

この頃、大きな助け船が来てくださいました。

楽しみにしていた、わたなべ ぽんさん(35kgダイエットの成功者)のエッセイ漫画「やめてみた」の発売。

やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -

ぽんさんもスマホ依存だったというお話が、依存時の悪影響(生活サイクルガタガタ、どぎつい情報に影響されて、性格疑心暗鬼に陥り、温厚な夫さんに厳しく注意される。)という身につまされる具体的エピソードととも描かれており、夫さんの「もういいかげんネットなんてやめればっ!?」という一コマが自分の魂の待ち受け(無駄ネットしたくなるたびに思い出す画像)となりました。

ぽんさんスマホ依存2.png

(おかげさまで「やめてみた」ご紹介記事は私のブログとしては多くの方に読んでいただき、これもまた毎日続ける支えになりました。お読みいただいた皆様、本当に本当にありがとうございます。)

このあたりから、如実に頭の中がスッキリしはじめ、無駄ネット時間が減少、代わりに記事を書く時間を確保できるようになりました。

やっぱり毒気のある情報って、刺激が強いぶんその場は引きこまれるけど、確実に読んだあとの頭をむしばんでいたんだなと痛感しました。
(嫌なことを忘れたくて強い酒を飲んで二日酔いで余計ぐったりするようなもんですね……。)

ただし、まだ減らせたのは、不必要なだけでなく、自分の精神衛生上悪影響のある、ゴシップや無責任な誹謗中傷が紛れ込む話題(言うなれば「無駄ネット内毒ネット部門」)のみ。

ニュースとか好きな動画とか、あと、少し違いますがダウンロードした電子書籍とか、それ事態は役に立つけど、必要に迫られているわけではない、という情報を気分転換と称し、ぼひゃーっと見てしまう癖は根強く残っています。
(そして、趣味かつ自分ノルマの文書きを後回しにして寝てしまい、こうして早朝に慌てて書いているという要改善な事態継続中。)

なので、次の一週間は、これまでより少しハードルを上げ、目標を以下のとおり定めたいと思います。

1、日付が変わる前に文を書けるように時間をずらしていく。

2、無駄ネット時間を全体的に減らす。

3、平日原則禁酒(ぽんさんの「やめてみた」メソッドをとりいれるつもりなので、これについては近日中に書かせていただきます。)

効果があった方法(キッチンセーフ等)については、随時ご紹介、また、一週間後には再度結果を振りかえる記事をアップさせていただきますので、ご興味のある方は見にいらしてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 03:27| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

「弟の夫」(漫画)Kindle(電子書籍)セール実施中

昨日のこうの史代さんに引き続き、おすすめ漫画のKindle版セール情報をお届けいたします。

「弟の夫」(田亀源五郎)

弟の夫(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) -
弟の夫(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) -

弟の夫 : 2 (アクションコミックス) -
弟の夫 : 2 (アクションコミックス) -
小学生の娘と二人で暮らす男のもとに、彼の弟が同性婚したカナダ人の夫が訪ねてくるというお話です。

急逝した双子の弟が男性と結婚していたという事実と、その夫マイクのセクシュアリティをすんなりとは受け入れられない男弥一のとまどいと、父の気持ちをよそに、優しいマイクとすぐに意気投合する娘夏菜。
そして、亡き夫との約束を果たしに日本に来たというマイクの三人での生活が描かれています。

ゲイであるがために、いやおうなく直面させられる社会の偏見や、家族との関係とともに、弥一のように、ゲイを差別する気は無いけれど、身内となるとどう接していいのかわからないという人の心理が、非常に丁寧に描かれています。

同性愛というテーマを直接集中的に描くのではなく、それを、弥一と夏菜の家庭の事情や、大切な人との死別という、セクシャルマイノリティではない人も体験しうる出来事と併せて描いている点も特徴的です。

同性愛について理解を深めるきっかけとしては勿論、ただ、さまざまに痛みを秘め、しかし絆のある一家庭の日常の物語として、とてもオススメしたい作品です。

双葉社の第一話ためし読みページはコチラです。

以下、見所をすこしご紹介させていただきます。
1、マイクの人柄と表情。

夏菜ちゃんが「サンタさんみたい」と一目で気に入ったとおり、暖かさと包容力が全身からにじみ出ています。(一方、さすが作者がゲイアートの巨匠、なんだかものすごく質感と説得力のある肉体の持ち主なんで、一読目はシャワーシーンなんか出てくると妙に焦ってしまいましたが。)

愛する人を亡くし、悲しみの中で思い出を追う心が、ささいなしぐさやふとしたきっかけにあらわれ、読む者の胸に響きます。

弟の夫.png

亡き夫の部屋に泊まることになり、遠いぬくもりに触れるように畳に手を伸ばす場面。

弟の夫2.png

弥一の後ろ姿に、夫が重なってしまった瞬間のまなざし。

弟の夫4.png


2、弥一の心理描写

高校時代の弟の同性愛カミングアウト以来、少し精神的に距離ができてしまったまま、弟と死に別れた弥一。

兄弟の情は変わらないし、弟の夫のマイクがいい人なのはわかるが、自分の中でどう折り合いをつければいいのかがわからない。
(夏菜のように自然に接したいのは山々だけれど、どうしても色々考えこんでしまう自分がいる。)

そんなとまどいの中、マイクやマイクを慕う夏菜とのやりとりを通じて、少しずつ気の持ちようを調整していきます。

弟の夫3.png

一方で、周囲の人がマイクに持つかもしれない偏見から、どう夏菜の気持ちを守るかという問題についても父親として頭を悩ませます。

弥一が自分や周囲の同性愛に対する目について考え込んでいると、時おり、鏡の中、自分の足元から地面に伸びるシルエットに、弟の面影がよぎります。

この面影が、彼の心をどう変えていくかは今後の展開に託されています。

このように、身内の視点を通じ、自分の身近な人が同性愛者であることに対する悩みと理解の過程を描いた作品というのは非常に画期的な気がします。

弥一の弟の死や、マイクが日本に来た理由など、まだ多くが謎に包まれながら、すでに非常に読みごたえと魅力のある作品ですので、この機会に是非ご覧になってみてください。
(2016年8月1日時点で第一巻100円、第二巻が486円、二日前からはじまったセールのようです(※)。終了期間がわからないのでお早めに。私はまんまとセール期間外に定価で買ってますが〈苦笑〉、それでも満足なので、紙書籍等でも是非。)

読んでくださってありがとうございました。

(※参照)アオシマ書店(電子書籍の販売情報サイト)「ゲイ差別から目を背けるな。差別してしまう自分と戦え『弟の夫』1巻が100円」(7月29日記事)

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2016年07月31日

こうの史代さん漫画 Kindle(電子書籍)セール実施中

Kindleが閲覧できる方限定なのですが、7月29日よりこうの史代さんの漫画がセール中とのことなので、お知らせさせていただきます。

ある女性の原爆投下後の日々、そして、現代を舞台に、被爆した母、祖母を持つ姉弟とその父を描いた「夕凪の街、桜の国」。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス) -
夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス) -

戦中の広島県呉市に嫁いだ女性すずと、彼女が出会った人々の日常を描いた「この世界の片隅に」(上中下巻)。

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス) -
この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス) -

暮らしや街の風景、そこに生きた人々の思いが、ぬくもりのある筆致でこまやかに描かれ、どちらも日本漫画史上に名を刻む傑作です。

我々と同じように、生活し、愛し、悩み、泣き笑いした人々が、どのようにあの時代を生きていったかに触れることで、登場人物たちと、平和な日常への愛情が読み手の胸の中にわいてきます。

戦争や原爆という非常に重たいものを根底に据えながら、抑制された語り口と余韻で、読んで何を思うかは、多くを読み手に託す、非常に珍しい作品です。

すでにどちらの作品も実写化されていますが、映画版「夕凪の街、桜の国」で父親役(すごく合ってる)を演じた堺正章巨匠が「チューボーですよ」で、(確か)田中麗奈さん(同作品主演)と料理をしながら、映画公開後数年経ってるのに「あれはいい話だったね……」と、しみじみと実感のこもった声で言っていたのが印象的でした。

夕凪の街 桜の国 [DVD] -
夕凪の街 桜の国 [DVD] -

今回のセールは、2016年秋(予定)の「この世界の片隅に」のアニメ公開を記念したものだそうです。(アニメ公式情報はコチラ

(参照)「電子書籍の更地(電子書籍セール情報まとめページ)」
同ページツイッター7月29日情報 

セール期間がいつ終了するかわからないので、ご購入はお早めに。

「夕凪の街、桜の国」の99円は、最も意義ある百円玉の使い道になることをお約束します。

定価、または紙書籍でも買う意義は絶対に絶対にありますのでご検討ください。
(絵がきれいで、どちらの作品も見開きの名場面があるので、一番いいのは紙書籍です。私は両方持ち。)

違うサイトでちょっと申し訳ないのですが、「まんが王国」で「この世界の片隅に」数話分試し読みできるのでリンク貼らせていただきます

「この世界の片隅に」については、いずれもう少しご紹介かせていただきたいと思います。

他の作品もセールになっていて、こうのさんの作品はすべて粒ぞろいなのですが、イチオシは「ぴっぴら帳(ノート)」。(全2巻)

ぴっぴら帳 : 1 (アクションコミックス) -
ぴっぴら帳 : 1 (アクションコミックス) -

ちょっと天然な女の子きみちゃんとインコのぴっぴらさんの暮らしを描いた4コマ漫画。

上記二作で「戦争漫画家」のようなイメージがあるこうのさんですが、同じくこまやかな日常描写と、抜群の観察力で、ほのぼの笑える、今数多くみられる動物漫画の中でも傑作のひとつだと思います。

インコも話しかけてかわいがって育てるとあんなになつくし、色々面白いリアクションを見せてくれるんだなとこの漫画で知りました。
(作品はフィクションですが、ぴっぴらさんの表情やしぐさはこうのさんが実際に目にしたものだと思います。)
ぴっぴらさんの描き方がかわいいキャラ化されすぎてなくて、「まんまインコ」な感じがまたいい……。

読むと犬派の私も猛烈にインコと住みたくなりました。きみちゃんの周りの人々とのやりとりや、ういういしい恋の話も読んでいて楽しいです。

各回オープニングの、季節感あふれるきみちゃんとぴっぴらさんのカットが、カワイイ上に少し大正の叙情画を思わせます。

ぴっぴら帖カット(部分).png

傑作コマ(いっぱいあるけど) 

きみちゃんの前衛的粘土細工インコを熱烈に気に入るぴっぴらさん

粘土インコに求愛するぴっぴらさん.png

カミナリに緊張して細くなるぴっぴらさん

ぴっぴらさんほそくなっている.png

頭がかごの隙間にはまってしまったぴっぴらさん

頭がはまってしまったぴっぴらさん.png

こちらも是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。


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2016年07月30日

映画「クレアモントホテル」(イギリス/アメリカ 2005年制作)ご紹介


クレアモントホテル [DVD] -
クレアモントホテル [DVD] -

明日(2016年7月30日〈土〉午前8時〜)イマジカTVでイギリスを舞台にした素敵な映画が放送されます。(8月8日〈月〉14:30より再放送)
(イマジカTV公式情報はコチラ


「クレアモントホテル(原題「Mrs Palfrey At The Claremont」)」。

ロンドンのホテルに暮らすことになった老婦人と、物書き志望の青年の心の交流を描いた作品です。

「年を取ったらホテル暮らし」

憧れる響きですが、実際の暮らしはどのようなものかをこの映画で見ることができます。
そして、偶然出会った老婦人と青年との、名前をつけるのが難しいけれど温かな関係が印象に残ります。

原作は小説家エリザベス・テイラー(あの女優さんとは別の方です)の1970年代の同名小説、記憶がおぼろげで申し訳ないんですが、かなり忠実に映画化されていたと思います。元ネタが良ければ、この映画みたいにそれを大事に使えばいいと思うんだけどなー(←なんか他の作品で色々不満を抱いている模様)

クレアモントホテル (集英社文庫) -
クレアモントホテル (集英社文庫) -

映画の予告動画です。




以下、あらすじと見どころをご紹介させていただきます。

(あらすじ)
夫に先立たれたパルフリー夫人は、自立した生活をするために、ロンドンのホテルに引っ越してくる。
(海外には、いわゆる旅行者向け宿ではなく、長期滞在に対応する「retirement hotel(退職〈隠居〉者向けホテル)」というものがあるそうです。)

しかし、ホテルは思って以上に質素、既に同じ目的で長期滞在しているエキセントリックな人々や、愛想の悪い従業員にはどうも馴染めず……と、パルフリー夫人の期待や気合はさっそく裏切られてしまう。

ホテルの滞在者たちに、連れてきてほしいとせっつかれ、ロンドンにいる孫にも連絡をとってみるが、そもそも電話からしてつながらない始末。

独りロンドンの町を歩いていたパルフリー夫人はつまづいて転んでしまう。

その時、近くの建物から出てきた青年ルードが、「お手伝いさせてください」とパルフリー夫人に駆け寄ってきた。

ルードの部屋でケガを治療してもらったことをきっかけに、二人は意気投合。
パルフリー夫人はルードに、孫のふりをして、ホテルの皆に挨拶してほしいと頼み込む。

ハンサムなルードの登場に目を見張るホテルの人々。

ルードに感謝したパルフリー夫人は、以来、ルードを気にかけ、ルードもまた、優しくチャーミングでしっかり者のパルフリー夫人に、自分の実の母親には無い、女性の理想を見て、彼女を慕うようになる。

(見どころ)
友情、家族愛、そして恋心、そのどれでもありうるような感情が、魅力的な二人の確かな演技で表現されています

個人的な話になりますが、パルフリー夫人のくりくりして愛嬌があるけれど、はっきりと気丈さがみてとれる目と、聞いてる側が焦るほど人生を達観した台詞がなんか私の祖母に似ていて、それだけでポイント高くなってしまう……。
(あんなに毎日気合いれてオシャレしてなかったっつーか、よく髪放置爆発させてたけど、あと、あんなにウィットに富んだ喋り方じゃなく、率直すぎて過激発言連発だったけど、でも、面白くていい祖母だったんです。)

女性にはルードのハンサムっぷりを観ていただきたいです。

彼の登場シーンは、半地下からなんですが、パルフリー夫人が道で倒れた直後、階段を駆け上がってきて姿を現した瞬間からもうハンサム。転んだ直後にあんな綺麗な異性がいきなり地下から出てきて助け起こされたら、転んだことよりびっくりすると思う……。
「乙女の愛の夢(※ジャイアン作詞作曲の歌のタイトル〈なぜここに挟む〉)」全開シーンで、相手が同年代の女性だったら、都合の良い少女漫画か恋愛ゲームかと総スカン食らいそうですが、パルフリー夫人なのでなんとなくセーフ。

パルフリー夫人もそんな美しいルードに亡き夫の思い出を託して、ほのかな感情を抱いていると思われる場面がいくつかありますが、パルフリー夫人の好きな映画(「逢引き(Brief Encounter)」)を観てみようと店に入ったルードは、その時言葉を交わした女の子と恋に落ちます。

ルードと、その女の子から慕われ、一抹の寂しさを感じながらもルードの恋を応援するパルフリー夫人。

そうやって夫人とルードの穏やかな愛情の季節は少しずつ移り変わっていきます……。

派手さは無いけれど、チャーミングで味わい深い映画です。よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

(参照URL)
Wikipedia記事日本語版
同、英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Mrs._Palfrey_at_the_Claremont
(「Rotten Tomatoes」レビュー一覧ページ)https://www.rottentomatoes.com/m/mrs_palfrey_at_the_claremont/
(「Allmovie」英語あらすじ紹介ページ Mark Deming筆)http://www.allmovie.com/movie/v338298
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2016年07月29日

「やめてみた」(わたなべ ぽん作 コミックエッセイ)ご紹介

35kgのダイエットで話題となった漫画家わたなべ ぽんさん(ご本人ブログはコチラhttp://ameblo.jp/watanabepon/)のエッセイ漫画をご紹介させていただきます。
※続編、『もっと、やめてみた』のご紹介記事はコチラです。

(一部ネタバレありなのでご注意ください)

タイトルは「やめてみた」

やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -


これまで、ダイエットや汚部屋脱出に挑戦してきた(そして見事成功、今もキープに奮闘している)ぽんさんが、それまで自分の生活の中であたり前だった、家具家電、習慣、思いグセなどについて見直し、不要と思えたものについてはやめてみる、そのための手段と結果を描いたコミックエッセイです。
(続編『もっと、やめてみた』の当ブログご紹介記事はコチラです。)

ぽんさんのダイエット、掃除関連漫画はコチラ。

スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

もっと! スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
もっと! スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術 (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術 (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ダメな自分を認めたら、部屋がキレイになりました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
ダメな自分を認めたら、部屋がキレイになりました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ぽんさんの作品すべてに言えることですが、彼女が目標達成する方法はいつもいたってシンプルです。
(例、リンゴだけ食べるダイエットに挫折→栄養バランスの良い低カロリーメニューと、継続しやすいウォーキングに変更)

なので、もし、斬新で効率的なノウハウを知りたい!と思う場合は、掃除やダイエットの専門家の本の方が合っていると思います。

ぽんさんの本の魅力は、人の習慣やアドバイスをとても素直にとりいれるご本人のお人柄。

そして、そうやって謙虚に頑張った先の結果と、それに伴って自分の気持ちがどう変化していったかが描かれているところです。

今回の本でもその魅力を十分に味わうことができます。

また、ぽんさんの上記4作品と併せて読むと、1人の人の習慣と気持ちがどうやって変わっていくかがわかるのでいっそう面白いです。(別に関係者じゃないですよ……)

炊飯器や掃除機をやめてみたという話については、「ふむふむなるほど、良さそうですね」みたいな感じで、のんきに楽しく読ませていただきました。

ぽんさんも、「はじめに」で「やめてみたものはあくまで私の生活には必要なかったものであり、もしかしたら皆さんの生活には必要不可欠なものかもしれません。でも、「こんな生活もあるんだな〜」と楽しんで読んでもらえるとうれしいですし、自分にとって本当に必要なものとはなんだろう?と考えてみるきっかけにでもしてもらえたら、もっとうれしいです」と書いていらっしゃいます。

(補)逆に、たかぎなおこさんは長年のほうき・フロアモップ生活から掃除機に切り替え、あまりの便利さに「すんごいよね掃除機って、スイッチひとつでゴミを吸ってくれるなんてさあ(※)」と、鼻息荒く昭和三十年代の主婦のようなことを言って友人に怪訝な顔をされていました。ひとそれぞれ。
(※)『ひとりぐらしな日々「ちょっといい暮らし…の巻より」』

ひとり暮らしな日々。 -
ひとり暮らしな日々。 -

ですが、自他ともに「どー考えても減らしたほうがいいだろ」と思われる、そして現在進行形で私自身が戦っている、「無駄ネット閲覧(スマホ)」についてのお話はぐっさりきました。

今週月曜日(つまり発売日2日前)からその依存を断ち切るべく、七転八倒していた私にとってはまさにベストタイミングの助け舟です。
(いやもうかれこれ数年、ほぼ毎日欠かさず「やめよう→当日中に挫折」だったけど、今度こそと頑張りだしたのが今週月曜。)

ぽんさんの場合、スマホ閲覧がやめられず、朝から深夜3時ごろまでとりとめのないサイト(投稿者の悩み相談にユーザーがこたえるページなど)を見続けた結果、

「寝坊」→「仕事メール確認忘れ」→「締切に追われ、ごみ出し、洗濯もの片づけができず」→「夕飯が作れず、夫さんに買いにいってもらう(片づけも夫さん任せ〈平日の家事は基本ぽんさん担当〉)」と、雪だるま式にミスをしてしまいます。

しかも、夫さんが買ってきてくれたお弁当を食べているとき、夫さんから、「明日は同僚女性(ぽんさん宅に何度も来ている人)の相談にのるために飲み会に行ってくる」と報告を受けたぽんさんは、
「ネットではそういうのを“相談女”といって、相談を口実に男性との距離を縮める嫌な女の手口らしいよ」
……と、かつてみたこともないようなワルイ顔で言ってしまいます。

ぽんさんスマホ依存1.png

(「人の悪口を言うと顔が曲がる」ってこういうことですかね)

ここでとうとう
「ダラダラネットをみているせいで、最近生活もだらしないし、仕事にも影響が出て、性格までキツくなっている気がする。もういいかげんネットなんかやめればっ!?」
と、旦那さんに厳しく注意されます。

ぽんさんスマホ依存2.png

(「あの夫さんが怒った……」とぽんさんは無論、既刊愛読者も驚いた場面)

この本の中で、このエピソードが二つの意味でとても印象に残りました。

まず第一に、ネットの強烈な依存性。

どうやらこの出来事は、ぽんさんが半年にわたる大掃除を決行した後のようなのですが、苦労して素敵な部屋を作り上げ、仕事のスケジュール上やむをえない時以外は、維持を心がけていたであろうぽんさんが、赤の他人の人生相談(その相談内容自体もぽんさんには無縁)という、観なくても全く困らない情報に釘付けになった挙句、それまで積み上げてきた生活習慣をガタガタにしてしまっています。

第二に、他人のトラブルやゴシップ情報にはまることの弊害。

これまでのぽんさんのお掃除、ダイエット本を読むとわかるのですが、ぽんさんの夫さんは、ぽんさんが、お掃除が苦手だったときも、今より35kg太っていたときも、彼女に説教めいたことを言っていません。
(でもぽんさんが頑張ったときには一緒に喜んでくれる優しい人。)

その(直前にも「頑張れ〜」といいながら片づけと買い出しをしてくれていた)夫さんが、「もういいかげんネットなんかやめればっ!?」と強く言っている。

夫さんにとっては、多少部屋や汚いとかぽっちゃりしているとかよりも、ぽんさんの性格がキツくなるほうが、よっぽどイヤなことだったのでしょう。

ちなみに、こういうとき、その手の相談サイトだと火に油をそそぐように、
「(女性側)相談女にまんまと騙されちゃって、男ってホントバカ、まんざらでもなかったから逆ギレしてんじゃないの?」
「(男性側)ちゃんと報告してんのに、家事もやらずに疑うなんてサイテーだな、ハズレ嫁だ」
と、泥沼が続くのが定番です。

この手のサイトのやりとりは、悩み相談の皮をかぶった口げんかや誹謗中傷に発展することが多いんです。ええ詳しいですとも、私こそが今この手の閲覧中毒と闘っているから……。

ネット依存については、「ゲームサイトへの過度の課金がやめられなくなる」、「長期間画面を見続けることにより頭痛、自律神経失調症を引き起こす」などの危険性はよく指摘されていますが、「生活サイクルがどう乱れてしまい、家族とのコミュニケーションに悪影響を及ぼしてしまうか」という段階を描写してくださっている例はあまりなかったと思います。
(ええ詳しいですとも2、どうやったら治せるか、ネットをむさぼり読んでいましたから、そして脱線してその手の相談サイトに舞い戻っていましたから〈←……〉)

普段穏やかな夫さんの厳しい注意に激しく反省したぽんさんは、「ネットを見るときのルール」を設定することにします。

その方法はいつも通りシンプル。「自分にとって害になるサイトを閲覧できないようにブックマークを外す」、「アラーム代わりに布団に持ち込んでいたスマホを遠ざけるために、目覚まし時計を使う」などです。

正直、この「方法」だけならそこまでの効力があるかどうか疑問ですが、ぽんさんのトラブルと夫さんのお叱りを読んでからだととても響きます。セットで有難い。

その後、素直に謝ったぽんさんに、夫さんも「キツく言いすぎた」と言ってくれて、ふたり仲良く、その同僚女性のお礼のプリンを食べていました。(ほっこりするオチ)

この他の「やめてみた」情報もとても面白いので是非(できれば既刊本とセットで)読んでみてください。

(補、ぽんさんは何気ないことのようにおまけ欄に描いているけど「酒」「タバコ」という人類二大依存品をやめるまでというスゴイ情報も入っていて衝撃だった。当ブログでぽんさんの減酒方法についてご紹介している記事はコチラです(※記事後半部です)。)

よろしければ併せてご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。

(補足)
・ 幻冬舎HPに、前作『やめてみた』の太っ腹試し読みページがあるので貼らせていただきます。併せてごらんください。

http://www.gentosha.jp/category/yametemita

・当ブログ、わたなべぽんさん作品ご紹介記事は以下のとおりです。
「やめてみた」(わたなべ ぽん作 コミックエッセイ)ご紹介
『ダメな自分を認めたら部屋がきれいになりました』(わたなべぽんさん作 お片付けコミックエッセイ)
減酒への道 (わたなべぽんさん「やめてみた」参照)
(一部ネタバレあり)わたなべぽんさん 『もっと、やめてみた。』ご紹介 


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2016年07月28日

「野火」(大岡昇平作の戦争文学)


野火 (新潮文庫) -
野火 (新潮文庫) -

明日(2016年7月29日〈金〉13:00〜14:45)BSプレミアムで大岡昇平の小説「野火」の映画版が放送されるそうです。(監督は巨匠、市川崑監督)
参照 http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/calendar.html?next

野火 [DVD] -
野火 [DVD] -
第二次大戦時のフィリピン、日本軍敗戦を目前とし、食糧や薬が欠乏する中、病気のために切り捨てられた兵士「私(田村)」が、病院に入ることも許されずに、米軍や地元民から逃れて、孤独にさまよう中で、飢えと病、そして「私」と同じように絶望的な状況に陥った果てに、もはや仲間の肉体すらも生き延びるための食糧とみなすようになった日本兵同士の殺し合いを目の当たりにするという作品です。
(「野火」のウィキペディア記事はコチラ

映画版は、今回放送される市川崑監督版(1959)と、塚本晋也監督版(2015)があるそうですが、後者は、そのあまりの凄惨さに、映画祭出品時、作品途中で席を立つ人が続出したそうです。(参照AFP記事 http://www.afpbb.com/articles/-/3024845

野火 -
野火 -

ここで、監督の異なる映画版二作についてネット上の批評を引用させていただきます。

市川崑の『野火』ではカニバリズム(補、人肉食)を拒絶し、人とケダモノの境をぎりぎりの理性で線引きしてみせた田村は、人が普通の人間らしい暮らしをしているはずの野火のありかを目指して仏のように歩み出て銃弾に倒れる。戦時の記憶が国民の多くにまだ鮮やかであった時代、そんな美しい表現に託さなければこの主題は重すぎて観るにたえないものになったかもしれない。だが、世紀をまたいで戦争の記憶を継承する人々もいなくなり、やおら社会がきな臭くなってきている今、塚本晋也は逆に戦争の残酷さ、残虐さを真っ向から突きつけてくる。塚本監督がかねて露悪的に描いてきたグロテスクな、もしくはスプラッタ的なイメージが、本作ではその遊戯性抜きに正視が難しいほどの陰惨さで動員される。

(「樋口尚文の千夜千本 第17夜「野火」(塚本晋也監督)」より)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/higuchinaofumi/20141123-00040926/

通常、戦争映画は実際に戦場で起こるその悲惨さや残酷さを伝え、観客は映画館という安全な場所でその非日常的な現実を体験する。しかし『野火』はそうした悲惨さや残酷さより、実際の戦場で兵士が何を思い感じているのかということに焦点が置かれている。観客は映画館で、ちょっとしたことで現地人を銃殺するだろうこと、挙げ句は「猿の肉」を人肉と知りつつ喰らうだろうことに適応していくのだ。いわゆる戦争映画とは別の視点で戦争がどんなものかを伝えてくれる

そしてそれが、1959年に市川崑により映画化された『野火』との大きな違いでもある。


(映画紹介ページ「Lucky Now」内「【野火】これは、いわゆる戦争映画ではない(執筆者 今川 幸緒)」より http://luckynow.pics/nobi/ )

「まだ戦争の記憶が生々しかった時代に、原作とは異なり、主人公「私」が人肉食というタブーを最後まで拒絶する姿を通じ、極限状態の中に残された『人間の理性』を表現した市川版」と、
「戦争の記憶が薄れた今、観客たちに向けて、『戦争は人間の心を完膚なきまでに崩壊させる』ということを表現した(そのため、原作通り「私」は人間の肉を口にする)塚本版」
という違いがあるようです。

どちらが正解ということもないのですが、個人的には、映画鑑賞を検討している方も、是非先に小説を読んでいただきたいと思います。

そこには、小説という表現方法でなければ描けない、また別の、戦争と人の心が描かれているからです。

著者自身が戦地に赴いて体験したことと、それまで学んできた知識、おそるべき冷静さを秘めた精神力、文学的才能を融合させることによって生まれた、おそらくは世界的にも類を見ない、「極限状態におかれた、ある特異な一個人の魂」がそこにある。

「人間」全般ではなく、遭遇した出来事と、個人の思考によって姿を変えていった魂。

いわゆる社会的な善悪とは既に切り離された人々のうちの、ある男が思い、感じること、その心に写る世界のありようが。

私は最初にこの小説を読んだとき、内容のあまりの惨さにうちのめされ、「一度は知識として知っておくべき戦争と人間の暗部を学んだ。でも、繰り返し読まなくてもいい」と思っただけで、何年も放置していましたが、なにかのきっかけで、もう一度読んだとき、今度は、「私」の、地獄にあってすら、(いっそ現実離れしているほどの)静かで知的な視点や語り、そして、病に蝕まれて、正気を失った末に、死の間際に澄んだ目で「私」に語りかけてきた兵士、その男の言葉によって変容してしまった「私」の葛藤に、心をゆさぶられました。

この小説は戦いを描いています。

国籍の異なる者たちの戦争、同じ国の、生き延びるために互いの肉を奪い合おうとする者たちの争い。そして、

死の前にどうかすると病人を訪れることのある、あの意識の鮮明な瞬間、彼は警官のような澄んだ目で、私を見凝めて(みつめて)言った。
「なんだお前、まだいたのかい、可哀想に。俺が死んだら、ここを食べてもいいよ」


餓死したくない、しかし、「食べるために仲間を殺す」というタブーを避けたいがために、命が尽きる寸前の病人を見張っていた「私」に対し、そう言って、自分の痩せ衰えた腕を示して死んだ男。

「食べてもいいよ」と言われたがために、誰も見ていない、誰も助けてくれるはずもない、誰からも、食べようとしているその男からも責められない状況になってすら、「私」はその男を食べられなくなりました。

彼の意識が過ぎ去ってしまえば、これは既に人間ではない。それは普段我々がなんの良心の呵責なく、採り殺している動物や植物と変わりもないはずである。
この物体は「食べてもいいよ」と言った魂とは別のものである。


そう自分に言い聞かせ、「食べてもいいよ」と言われたその腕から、肉を切り取ろうと剣を振り下ろす「私」。しかし、


その時、変なことが起こった。剣を持った私の右の手首を、左手が握ったのである。


地上の誰も「私」を見ていない、裁かない。死んだ男は既に許している。それでも、完全に孤立した「私」の中で起こった、剣を下そうとした右手と、それを掴んだ左手の間に生まれた戦い。

人の心は環境の変化で数日で崩壊する。
それは、人の肉体が重い岩をどうしても背負えずに潰されていくのと全く同じように、人間の限界がもうそこにあるから。

それを感じさせる世の中の出来事をさんざん見聞きし、自らの心にもそのきしみ、ゆがみ、くずれを見た後に、この作品を読むと、そのたびに、「『食べてもいいよ』と言われたがために、「私」の右手と左手の間に起った戦い」が、既に失望を刻み込んだ心臓に、何か異なる温度をもって突き刺さります。

「野火」という文学は、国家と人間同士の戦いの他に、その渦中にあってすら、孤独な個人が自身の中で激しく葛藤した、その戦いを描いているために、稀有な作品なのだと思います。

是非、小説を手にとって、この心の動き、読み手を圧倒する「私」の左手の確かな手ごたえを実感していただきたいと思います。

いずれ、この小説の優れている点について、もう少し書かせていただきたいと思いますので、よろしければご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。









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2016年07月27日

スタンフォード監獄実験(NHK BSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑」放送内容)

明日(2016年7月28日〈木〉)21:00より、BSプレミアムの、科学史の闇を描いたシリーズ「フランケンシュタインの誘惑」で「スタンフォード監獄実験」が紹介されます。(公式情報はコチラ
(再放送7月30日午後6時00分〜 午後7時00分、8月25日午後5時00分〜 午後6時00分)

「スタンフォード監獄実験」
「与えられた役割や立場が人間の行動に与える変化」を調べるため、1971年、アメリカの名門、スタンフォード大学の、架空監獄施設で行われた実験です。

その実験環境の過酷さ、その後の被験者への深刻な影響などから、史上最も残酷な心理実験といわれ、その後、繰り返し映画の題材になりました。

(ドイツ映画「es」、「es」のアメリカ版リメイク「エクスペリメント」、2015年に再び「The Stanford Prison Experiment」として映画化されたそうです)

「The Stanford Prison Experiment」の予告動画



「es」(※実際の事件以上に残虐性が強い内容となっています。)
es[エス] [DVD] -
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エクスペリメント [DVD] -
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この実験は、「囚人役」「看守役」に分けられた一般人たちが、ごく短期間のうちに激変、看守役が囚人役を虐待しはじめ、実験を観察していたはずの学者すらも状況にひきずられて判断力が欠如、実験を中止できなくなるという事態を引き起こしました。

監獄環境の過酷さと看守役からの虐待により、精神に変調をきたす被験者が出ても実験は継続され、危険性に気づいた牧師(実際の刑務所カウンセラーを担当、学者に招かれて実験を見に来た)と被験者の家族により実験開始より六日目で急きょ中止となりましたが、(当初2週間の予定で実施)その際も看守役の被験者は中止に抗議したそうです。
(詳しくはウィキペディア記事をご参照ください。非常に詳しく書かれています。)

人間が普段持ち合わせていると自分でも思っている倫理観や判断力は、環境と立場の変化により(それが架空のものであってすら)たった数日で崩壊する、そしてそれを外部から観察しているだけのつもりだった人間さえも、いつのまにか巻き込まれて、目の前で被害に遭っている人間を見ても(本来自分はそれをやめさせられる立場のはずなのに)事態を変えられなくなる。

実験は、こうした、当初の想定をはるかに超えた人間の心のあやうさをあぶり出し、しかも後遺症をおった被験者たちの心を癒すためには10年の月日を要しました。
(実験を実施した心理学者ジンバルドー本人がカウンセリングを担当、今回の番組でご本人が登場するそうです。)

心理学上の大スキャンダルとなったこの実験は、しかし、「人間は立場と集団によって、一瞬で変貌してしまう」という重要な警告を残しました。

「正義を信じて組織に加わったはずの人間が残虐行為に加担してしまう」
「自分は相手を嫌っていないのに、周囲がその人をいじめているからと、それを止めずに逆に参加してしまう」
など、外部からみたら、なぜそのようなことがおこってしまったのかと思わせる事態も、この人間のあやうさに起因しているのではないでしょうか。
(番組では、併せてその後アメリカ心理学会が「テロとの戦争」の中で犯したスキャンダルについても触れられるそうです。)

実験がもたらした事態の異常性に目がいきがちですが、自分を含めた人間という生き物、そして集団の怖さを思い知らされる、もっと多くの人に警告として広められるべき事件だと思います。

よろしければ、番組をご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。
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2016年07月26日

夏向き癒しの犬動画2作(「ゴールデンレトリバー、フロート(大型の浮具)を盗む」&「ドッグスパ」)


今日はYoutubeより夏にぴったりの犬動画を2作品ご紹介させていただきます。
(イルカ動画編はコチラ

一つ目のタイトルは「Golden Retriever steals pool float」



https://www.youtube.com/watch?v=0wNcMcTV_4k

昼下がり、個人宅と思われるプールで、女の子二人がフロートに寝そべりくつろいでいます。そして、二人の間で、最初は水色のフロートにつかまらせてもらっている、ゴールデンレトリバーのミロ。

ところが、もう一人の女の子の白いフロートにつかまろうとしたとたん、一人と一匹の重みでずぶずぶと沈みかけます。(でも離さないミロ)

水色のフロートに乗っていた女の子が気を聞かせて、「(ミロがそれを使いたいみたいだから)こっちに移ってあげたら?」と、ピンクのフロートを彼女に渡します。「んもー(笑)」みたいな感じで女の子が離れると同時に白いフロートによじのぼり、独り占めできたミロ。(譲ってくれた女の子にフロートを押されて、しっぽを半分水に浸して、ツーと独りただよう姿が可愛い)

再び静かな昼下がり……と思いきや、んじーっと女の子が移ったフロートを見つめていたミロは、白いフロートからすぐにおりてしまい、さぱさぱさぱ……と、ピンクのフロート、そして水色のフロートの間をさまよいます。

そして白いフロートをゆずってくれた女の子が乗るピンクのフロートに泳ぎ着くと、しばらく女の子と向かい合ってフロートにつかまってましたが、やがてのしのしよじのぼり、フロートを占拠してしまいます。

苦笑した女の子が再びミロにフロートをゆずって(やさしい)、白いフロートを使い始めると、「あっ、おねえちゃん……」みたいに見送っていたミロは少し眠たげながらも、また、そちらをんじーっと見つめていました……。

なにがしたいんだよ……とつっこみたくなる、けど、「だが許す(岸辺露伴「だが断る」風に※)」とそのカワイサで全犬好きをねじふせる光景です。

(※)ジョジョの奇妙な冒険第四部に登場する漫画家、仕事にかける情熱と問題のある性格が魅力の(←?)名脇役

女の子たちは、「人のが欲しいのかしら」というようなことをつぶやいていますが、コメント欄には、「He just wants to share a floatie---not his own. LOL What a lucky dog、一緒にフロートを使いたいんだよね、独りでじゃなく(大笑)、すごくラッキーな犬だ(←率直)」という意見が寄せられています。

レトリバーと、優しい女の子たちと、昼下がりの静かなプール……、という、涼と癒しのある画像です。

ちなみに、ミロの白いフロートを女の子二人が支えてくれて、みんなで川の字にプカプカしている動画もありました。女の子たちに挟まれ、フロートの上でおもちゃをしゃぶしゃぶして、
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば(※)」状態のミロ。本当にラッキーだなオイ。

(※平安時代栄華を極めた藤原道長の和歌)


https://www.youtube.com/watch?v=lasRk5rqkJU

※動画説明に「Milo and his best buds floating around the pool.」とあり、この場合の「bud」は「芽、蕾」ではなく、「buddy(相棒)」の略のようです。(参照Weblio辞書)なので「ミロと彼の大親友たちがプールで浮いてます」みたいなニュアンスかと。

ところで、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーはもともと水鳥専門の猟犬で、湖などで飼い主が撃った獲物を、泳いでとりに行くのが仕事でした。こういう遺伝を継いだ犬種を英語ではまんま「Water dog」というそうです。
「Water Dog」Wikipedia情報
https://en.wikipedia.org/wiki/Water_dog

このため、犬の中では非常に水好きで、いやっほーうい♪とばかりに水に飛び込み、スイスイ泳ぐ動画が数多く見られ(まるいおでことつぶらな瞳だから、アザラシっぽくなる)、今はその特性を利用して水難救助犬としても活躍しています。

(ちなみに我が愛犬は、水とは無縁の犬種らしく、当初、バスタブに入れてシャワーをひねると、殺される寸前のごとく、ずだだどすばた!と派手に浴槽を鳴らして抵抗し、慣れてすらこの世の終わりのような悲痛な面持ちで、頭も耳も尾も、とにかく全身全霊ぐったりとうなだれてシャワーから目をそむけ、ひたすら時が過ぎ去るのを待っていた。態度悪い。〈だが許す2〉)

併せて、水好きの犬(犬種書いてないけどゴールデンレトリバーっぽい)の癒し動画をご紹介させていただきます。

タイトルは「Dog Spa」
(すみません、一度中国っぽいと書いてしまいましたが、投稿者さんいわく、かかっている曲はタイの歌手Pai Pongsathonの「ความฮัก(読めない……〈汗〉)」とあるので、タイの動画みたいです。)



https://www.youtube.com/watch?v=EubuphQ79z4 (参考http://grapee.jp/16407)

歌謡曲がどこからともなくゆるく流れる屋外、おおきなタライ(ちょっとへにょってるから多分ゴム製)の泡風呂にあおむけに身をゆだねるゴールデンレトリバー。

ラフないでたちのおじさんが自分の手をこすりあわせてきめこまやかに泡立てたシャンプーでしゃわしゃわと長毛の毛並みを洗っています。

目を閉じ、お腹をおっぴろげに、おじさんに前脚をみよみよーんと伸ばされても、後脚をわしゃわしゃかきまぜられても、うっとりとろーんとなすがまま。

そんなおじさんのゴットハンドに夢心地な犬のそばをうろうろするゴールデンがもう一頭(兄弟?)。
実にうらやましげにじとっと覗き込むもう一頭に対し、どこまでも慣れた手つきで、しゃぐしゃぐしゃぐ……と犬の毛足を洗いながら、おじさんは「まーて!(順番だよ)」みたいなことを言ってます。

常に朗らかで忠実というイメージの犬が、逆に人に気を許しきっているがために、なにもしない姿というのも、また非常に味わい深いのですが、犬界でも特に聡明で献身的と名高いレトリバー犬(その性質ゆえに、家庭内で小さな子供の面倒をみてくれたり、セラピードッグとして福祉施設で働いていたりする)が、おじさんがせっせと泡立ててくれたシルキー泡にとろけるばかりでろってる姿はいっそうギャップ萌えです。大らかな歌謡曲も平和な生活感を漂わせて泣かせる。

この動画にはこんなコメントが寄せられています。(意訳)
「I want in SO BAD. I'm not sure I've ever felt that good in my entire life!(ものすごーくまざりたい。自分の全人生を通じてこんな(この洗ってもらっている犬級の)良い気分を味わったことがあるかどうかわからないよ)」

この犬の信頼とくつろぎに満ち溢れた顔を見るとつくづくそう思います。

今後もおススメしたい世界の動物動画をご紹介させていただきますので、よろしければご覧ください。
読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 02:16| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月31日

「ポーの一族」続篇掲載『月刊フラワーズ7月号』、現在在庫切れ

月刊flowers(フラワーズ) 2016年 07 月号 [雑誌] -
月刊flowers(フラワーズ) 2016年 07 月号 [雑誌] -

(今回は、ひたすら愚痴と自責です。)
 楽しみにしていたのに、なぜおれは買いに行くのを4日も遅らせてしまったんだろう……。
 別にそこまでせっぱつまった用事があったわけじゃないじゃないか。そもそも4月から発売のことは知っていたじゃないか……。
 28日に時間を見つけて本屋に行けばよかったのに、いや、ファンを自称するならさっさと予約しておけばよかったのに……。
 バカッバカッ、ミノルのバカッおれはほんとにバカな男さ。(『ちびまる子ちゃん』内の脇役キャラミノル風)

ミノルのバカッ(『ちびまる子ちゃん』5巻より).png

リボンマスコットコミックス5巻「みんなでフランス料理を食べにいく」より。まる子一家の隣席にいたデート中の男が、「洋風弁当」なる珍しいメニューを頼んでしまったせいで、まる子に大注目されてしまい、ムードぶち壊しのチョイスをしてしまったことを嘆く一コマ。)

(ミノルのインパクトのあるルックスも手伝い、私の周辺で、このシーンにハマる人が続出、「ミノルのバカッ」フレーズは大流行を通り越して十年越しのロングランヒットを飛ばし、以後、自分の迂闊さに身悶える際の決まり文句として、ごく自然に用いられるようになった。〈なんでだよ〉)

 ……ミノルの説明が長くなってしまいましたが、今、本気でがっかりしています。ひさびさにミノルのことを鮮明に思い出すくらいに。

 前回記事で、萩尾望都さんの『ポーの一族』40年ぶり続篇発表についてご紹介させていただきましたが、その掲載誌「月刊フラワーズ」(七月号)をまんまと買い逃しました。(恥)

 あー、今日(発売日28日)は本屋に寄るには遅くなっちゃったなあ、週明けに大きな書店の近くに行くからそんとき買おう。
 と、デートで「洋風弁当」を頼む以上の見通しの甘さで出遅れてしまった(ことに気づいていなかった)今日5月31日。

 ちょっとモジモジしながら(普段少女漫画雑誌買わないんで)ミノル(誰)は「月刊フラワーズ」を探したのですが、棚に無い、店員さんに聞いても無い。

 しかも、その聞かれたときの店員さん反応がすごく早い。
「ありますか「在庫切れです、再入荷についてはわかりません」みたいな手馴れたお返事。
 もー同じことを散々返答した後、みたいな空気が漂う。

 急激に嫌な予感がして、近場にもう何軒か書店があったので、足を延ばしてみたのですが、同じ感じの反応、駅ナカ本屋さんに至るまで全滅。

 なんでも、発売元の小学館に在庫がもう無い状態だそうです……。

 わらにもすがる思いでAmazonで検索をかけてみたら(自分のブログ記事にリンクはっておいたからそれ使いましたよアハハ〈乾笑〉)新本在庫切れどころか、既に3倍以上のプレミアつきで、古本(というか新品未読品)として売りに出ていました。(通常価格560円で、今売値2000円前後)

 なんかすごく自分が情けないです……本当に好きだったのに、萩尾望都さんと「ポーの一族」の人気をよくわかっていなかった…そしていつもの先送りクセでぐずぐずしている間に、その価値がちゃんとわかっている人々はすみやかに予約してわが物にしていたし、マーケットは動いていた……。

 (冗談抜きで、最近「先送りをやめる方法」みたいなのを模索して本屋さんで関連書籍探したりしていたんですが、それを先送りにして、その場で予約しておけばよかったんじゃんと思うとしみじみと情けない。)

 萩尾さんと山岸涼子さん(※1)との対談掲載や、傑作短編「訪問者」(※2)が付録につくと知った時点で、これは早めに買わなければいけないとは思っていたんですけどね……。
 (※1)山岸涼子……代表作「日出処の天子(若き日の聖徳太子を描いた歴史ファンタジー漫画)」ほか、歴史漫画、バレエ漫画、ホラー漫画等多彩な作品を描く。萩尾さんと同じ「24年組(※3)」の一人。

日出処の天子 第1巻 完全版 (MFコミックス) -
日出処の天子 第1巻 完全版 (MFコミックス) -

(※2)「訪問者」……1980年発表の短編。不仲な父母の両方を愛しながらも、家庭に違和感と居場所の無さを感じていた少年オスカーが母の死をきっかけに、父と放浪の旅に出る。旅の中で、父はオスカーの出生と妻の死について大きな苦悩を抱えていたことが明らかになってくる。
(オスカーは、萩尾作品の代表作の一つである「トーマの心臓」の主要登場人物で、物語もスピンオフとなっている。)

訪問者 (小学館文庫) -
訪問者 (小学館文庫) -

トーマの心臓 (小学館文庫) -
トーマの心臓 (小学館文庫) -

(※3)「24年組」……1970年代に活躍した昭和24年生まれの女性漫画家たちの総称。お二人のほか、竹宮恵子、大島弓子等、少女漫画に心理描写や歴史性・社会性を盛り込み、革命を起こした人々が集う。(参照「ウィキペディア」)

 なんか今回は本格的に反省しました。もっとフットワークよく生きようと思います。

 そんなわけで残念ながら私が40年ぶりの「ポーの一族」続篇「春の夢」の全貌を知ることができるのは、単行本発売以降になってしまうかもしれません。
(前後編で、後編掲載は冬を予定しているそうですのでもっと後ってことですね〈泣〉)

 無性にくやしいので、せめて以後しばらく、可能な限りの速度で、萩尾作品の傑作についてブログでご紹介させていただこうと思います。(我ながらよくわかんないけど、自分なりの反省の仕方)

 近々、今回付録になっている「訪問者」について、少し書かせていただきますのでよろしければご覧ください。
 読んで下さってありがとうございました。(byミノル〈だから誰〉)

posted by Palum. at 22:51| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月28日

(ネタバレ)「ポーの一族」(1972年)あらすじご紹介(『ポーの一族』40年ぶりの続篇発表によせて)

お久しぶりです。

今日は少女漫画界の不朽の傑作漫画についてご紹介させていただきます。

萩尾望都作『ポーの一族』

ポーの一族(1) (フラワーコミックス) -
ポーの一族(1) (フラワーコミックス) -
吸血鬼となった少年エドガーと、彼と共に永い時間を生き続ける吸血鬼「ポー」の一族、そして彼らが出会った人々のドラマを描いた作品です。

 詩的な画面と台詞、人生や時代に対する深い洞察が、余情となって心に焼付き、数ある萩尾望都作品のなかでも、いや、古今の漫画のなかでも屈指の名作と言って過言では無いでしょう。

 この「ポーの一族」の続篇が、2016年7月号(5月28日頃発売)で、40年ぶりに発表されました。
(色々な本屋さんで懐かしい「ポーの一族」の単行本があらためて置かれているので目にされた方も多いかと。)

月刊flowers(フラワーズ) 2016年 07 月号 [雑誌] -
月刊flowers(フラワーズ) 2016年 07 月号 [雑誌] -

 続篇は、第二次大戦の戦火を逃れたエドガーと、彼と共に旅をする友アランが、ドイツ人の少女と出会うという内容だそうです。(紹介記事はコチラ〈マイナビニュースより〉)

 当記事では、エドガーとアランの出会いと、二人の長い旅の始まりを描いた中編「ポーの一族」(※)についてご紹介します。
(※)この作品はエドガーたちを描いた連作短編となっていて、シリーズ名と同じこの中編の他にも「ポーの村」「グレンスミスの日記」「小鳥の巣」等、別のタイトルの作品が存在し、それらを総括して『ポーの一族』と呼ばれています。
 中編「ポーの一族」が一部試し読みできるページはコチラです。
(色々な電子書籍で読めますが、今回は一番長く閲覧できるところを引用させていただきました。)

 以下より、作品の内容について、書かせていただきます。(思い入れがありすぎて、長くなっています……あとネタバレなので、その点あらかじめご了承ください。)


 薔薇の咲くポーの村に暮らす兄妹、エドガーとメリーベルは、ある日、愛する村を離れ、彼らの養父母ポーツネル男爵夫妻と共に、ある海辺の新興都市へとやってくる。

ポーの一族 画像1.png

 その土地の人間たちの中から選び取った者を自分たちと同じ吸血鬼(バンパネラ)とし、彼ら「ポーの一族」に迎え入れるため。

ポーの一族 画像2.png

 町のレストランにあらわれたエドガーたちに、人々は感嘆のため息をもらした。
 美しい家族。まるで一枚の完璧な絵だ!
 ひそかに賛辞をおくる人々の中に、町の医師カスターと彼の教え子、美男のクリフォードがいた。
 彼の目をことにとらえたのは、美しいシーラ夫人。
 食事中に貧血でメリーベルが倒れてしまったことをきっかけに、クリフォードたちと知り合いになるポーツネル一家。

ポーの一族 画像3.png

 エドガーはクリフォードのシーラに対する態度を嫌悪するが、ポーツネル夫妻は、彼を一族に加えることを考えはじめていた。

 一方、エドガーは偶然出会った(外見上は自分と同じ年頃の)少年、アラン・トワイライトを一族に加えたいと思うようになる。

ポーの一族 画像4.png

 アランの通う学校の名を知ったエドガーは、(彼のことは伏せて)ポーツネル男爵に学校に通いたいと頼む。話を聞いていた男爵は、エドガーの姿が窓にうつっていないことに気づいて、強い口調で注意した。
 胸にクイをうち込まれたくなかったら、人間であるふりを忘れてはいけない。
 息があるふり、脈のあるふり、鏡に写るふり、ドアに指をはさまれたら痛がるふり
 それくらいできる。やってみせるよ。
 窓に姿を映したエドガーはそう答えた。 

 一方、町一番の貿易商トワイライト家の一人息子だったアランは、転入早々、自分に親しげに近づいてきても、決して他の同級生たちのように服従しようとしなかったエドガーに苛立ち、手下となっている少年たちを使ってエドガーに嫌がらせを仕掛けるが、それをきっかけとした乱闘騒ぎでエドガーに怪我を負わせてしまう。

 この事件をきっかけに、エドガーがアランと交流を持とうとしているのを知ったポーツネル男爵は彼を厳しく叱責した。
 男爵の威圧的な態度に、エドガーはとげのある声で答えた。
「わかっているよ、一族にくわえるには、成人でなけりゃだめだってことはね。ぼくたちを連れてるおかげで父さまたちは同じ土地に二年続けていられない」
 大人になる前に吸血鬼になった者は、成長しないことをあやしまれ、人間の住む土地に長くいることはできない。
(その暗黙の掟がありながら、14歳と13歳で吸血鬼となって人間の時を止めたエドガーとメリーベルには、それぞれに理由があった。)
 父さまたちの考えは、十分わかっている。
 でもぼくがどんなに孤独か、あなたがたにはわかるまい……!

 永遠に少年のままである孤独に常に苛まれていたエドガーは、同じような悲しみを抱えるであろうメリーベルのためにも、アランを一族に加えることを諦めようとはしなかった。

 そして、アランもまた、尊大さの奥に深い孤独をかかえる少年だった。

 名家ではあるものの、父を早く亡くし、愛する母は病弱、そして、財産目当てに屋敷に居つく父方の伯父夫婦からは、従姉妹との愛の無い結婚を強制されようとしている……。
 知っているのは自分を利用しようとする人間か、こびへつらう人間だけだったアランは、自分と対等な友人になろうとしていたエドガーのことが気にかかるようになっていく。
「あんなやつ、はじめてだ……」

 アランはきっと自分を訪ねてくる。

 人とは異なる回復力を持ち、とうに怪我の治っていたエドガーだったが、療養中と称して学校を休み、アランを待っていた。
 しかし、やって来たのはアランに命じられて様子を探りに来た同級生たちだった。
 彼らを追い帰して、トワイライト家に赴くことにしたエドガー。

 道すがらの森の中で、ふいに背後から聞こえた、弱弱しい妹の声。
 メリーベルが、エドガーを追いかけてきていた。強い日差しに青ざめてふらつく妹を木陰に休ませ、エドガーは、すぐに戻るから動かないようにと、彼女に言い聞かせる。
(メリーベルは不老ではあるが体が弱く、湿気や陽の光など些細な理由で倒れてしまう体質だった。)

 同じころ、伯父一家と激しい口論になって屋敷を飛び出したアランが、エドガーに出くわす。

 アランを連れてメリーベルのところに戻ってきたエドガー、兄の姿を見て一瞬微笑んだメリーベルが彼の腕にくずおれた。
「水を、アラン!」
 貧血なんだ、早く!エドガーの鋭い声にわけもわからず駆けていくアラン。

 二人きりになってから、エドガーは妹の首に口づけ、自分の血をわけ与える。
 目を覚まし、面倒をかけたことを詫びるメリーベルに、エドガーは哀しい目をしてつぶやく。
 「君は僕を許しちゃくれない」
 憎んでも、殺しても良い。メリーベルがこんな呪われた身で生きるようになったのは、自分のせいなのだから……。
 エドガーの苦しげな言葉を制止し、彼を抱きしめるメリーベル。
「兄さんだけよ!いつもわたしのそばにいて、いつもわたしのこと考えてくれるの。ずっと小さなころから、そうよ」
 遠い昔、二人が人間だったころから。

 メリーベルは気づいていた。
 メリーベルの療養のためにしばらく村を離れる。
 吸血鬼だけが住むポーの村を出て、この町に来た理由を、エドガーと養父母はメリーベルにそう教えていた。
 しかし、本当の目的は、新たに人間を吸血鬼の仲間に加えること。
 そしてそれはメリーベルのため。
 新しい仲間の、新しい血。それが、一族で際立って弱いメリーベルには必要だったから。
 兄はこの町の少年の一人から、友達として信頼を得、それを裏切り、人としての生を奪おうとしている。
 でも、それはメリーベルのため、そして、自分と同じに、大人になることができないエドガー自身の孤独のため。
 メリーベルはわかっていた。
「君は……それでいいの……?」
 言葉をしぼりだすエドガーを見つめる大きな瞳から、ただ、一筋の涙が流れた。

 そのとき、水を手に駆け戻ってきたアランが、メリーベルを見て、目を見張った。
 彼女は、幼い頃のアランの婚約者で、たった七歳で事故によって命を落とした少女ロゼッティに生き写しだった。

ポーの一族 画像5.png

 この日を境に、メリーベルに惹かれる一方、エドガーにも心を許していくアラン。

 エドガーとアランの友情に気づいたポーツネル男爵は、先手を打つべく、クリフォード医師へと接近し始める。

 彼の恩師カスター医師の招待に応じ、ディナーへと赴くポーツネル夫妻。(二人ともシーラに対するクリフォードの好意に気づいているが、彼を一族にするために、その気持ちを利用するつもりでいる)

 カスター家に同居していたクリフォードは、準備にいそしむ婚約者のジェイン(カスターの娘)に目もくれず、シーラの到着を待ちわびていたが、偶然、カスターの書斎入口の真向かいにかかる鏡を見ていた彼の目が奇妙な一瞬をとらえた。

 ドアを開けて入ってくるジェイン。
 誰かを招き入れる仕草をするジェインと誰もいない廊下。そして閉じられたドア。
 振り向くと、すぐそこにポーツネル夫妻が立っていた。
 驚いて目を戻した鏡に、何事もなかったように写っている美しいシーラ。

 つつがなく流れる和やかな晩餐のひととき。
 だが、クリフォードはシーラの気を引くことも忘れ、先ほど目にしたはずの光景について考え続けていた。
 鏡に写らなかった……ドアだけが閉じて、鏡に写らなかった……!

 ディナーの間中、押し黙るクリフォードを見て、彼がシーラ夫人の美しさにうわの空になっているのだと誤解する婚約者ジェイン。
 クリフォードは恩師である父への義理立てで自分と婚約しただけで、地味で目立たない私など愛してはいない……。
 肩を震わせるジェイン。

 一方、カスター宅を後にしたシーラは、おどおどと頬をそめてうつむくばかりだった彼女を思い出し、こんなことを夫につぶやいた。
「あのジェインという娘……わたしとても気に入りましたわ」

 一方、クリフォードは、友人から、その夜の彼のジェインに対する態度を叱責されていた。
 それに少しも耳を貸さずに、クリフォードは呟く。
「人間が…… 鏡に写らないとしたらそれはなんだろう?」
「知るか、そりゃバンパネラだ!」
 では人間ではないことになる。まさか。
 自分の考えのバカバカしさに笑うクリフォード。
 激怒して部屋を出ていく友人をよそに、クリフォードはもう一度自分に言い聞かせる。
 錯覚だ……バカバカしい。もう二十年もすれば二十世紀がくるというこの科学時代に……。

 日曜日、アランはエドガーを誘って断崖の砦跡に出かける。
 強い海風に髪を散らしながら、ようやく本心を口にするアラン。
「君と知りあって良かった。」
 エドガーは今までむらがってきた奴らとは違う、何でも話せる友達になってくれそうだ。
 その言葉を耳にして、エドガーの心によぎる重苦しい影。
 このアランを、自分はバンパネラ一族に加えようとしている。
 メリーベルにそうしたように。

 靄混じりの帰路、エドガーは彼の計画を実行する。

 二人きりの淋しい道、言葉を交わすアランの隙を突いて、耳の下に唇を寄せるエドガー。
 異変を感じ、アランは激しくエドガーを突き飛ばした。押さえた耳の下に残る、ただならぬ感触。
 唇をぬぐう指、その指の陰に垣間見える真紅。冷静に笑う青い目が、靄の中で光る。

ポーの一族 画像7.png

「アラン、おどろかないで。なんでもないんだ」
 エドガーがゆっくりと近づいてくる。
 アランのこわばった唇から、とぎれとぎれに言葉がもれた。
「もろもろの…天は神の栄光をあらわし…大空は御手の……わざをしめす……」
 アランに伸びた手が止まる。
 この日、ことばをかの日につたえ、この夜、知識をかの世に送る……語らず、言わずその声聞こえざるに……そのひびきは全土にあまねく……
 凍り付いた時間に響く聖書の言葉。
 靄に遠ざかっていくエドガーの足音。

 正体がばれてしまった。すぐにここを出よう。
 屋敷に戻ってきたエドガーから状況を確認したポーツネル男爵は、この土地を捨てるには及ばないと言い聞かせる。
 近代化が進み、信仰が篤いわけでもなく、バンパネラ伝説を信じない人々、良い土地だ。
 バンパネラにとって真に恐ろしいのは異端を認めない信仰の心。
 聖句や教会や十字架は象徴に過ぎず、それ自体への恐怖は克服することができる。
 疑惑など打ち壊せ!信じさせるな!

 翌朝、学校に姿を現すエドガー。
 声をかけられたたアランは、青ざめたまま、何かを握り締めた手を差し出す。
 エドガーの手に、鎖とともに零れ落ちた、細い十字架。
 一瞬のこわばりをすぐに笑みに変え、くれるの?じゃ、きのうのこと怒っていないんだね、と、エドガーは十字架をしっかりと握りしめた。
 からかってキスをしようとしたけれど、怒らせてしまったかと思っていた。メリーベルも待っているから、今度はうちに遊びにおいでよ。
 エドガーの屈託の無い様子に、アランは戸惑うが、それは母の容体急変の知らせに断ち切られた。
 なんとか持ち直したものの、処置を終えたクリフォードから教えられた事実は過酷なものだった。
 とても心臓が弱っている、次に大きな発作が起きれば……。
 母との別れの日が迫っている。でもこの苦しみに寄り添ってくれる人は、この屋敷のどこにもいない……。

 翌日、伯父夫婦から、母が生きているうちに従姉妹と結婚することを持ちかけられ、アランは声を荒げて拒絶する。
 部屋の外で言い争いを耳にしていた年上の従姉妹マーゴットは、アランに冷ややかに言い放った。
 アランのことは何ともおもっていないが、やさしくしてやってもいい。かわいそうなお金持ちのみなしごになるのだから。
 耐え切れずに飛び出していったアラン、どしゃぶりの中、その足はエドガーたちの住む岬の屋敷へと向かっていた。

 ずぶぬれでやって来たアランを、メリーベルが驚きながら迎え入れた。
 彼女を引き寄せ、アランは静かに問いかけた。
「ぼくがプロポーズしたら怒る?」
 目をみはるメリーベルに、アランは彼女の華奢な両手をにぎりしめてひざまずいた。
 本気だ、約束だけ今してほしい。もっと後、君が大人になったら……。
 「それは……ムリよ……」
 なぜと聞かれても、ただ首を振る、メリーベルの苦しそうな瞳に涙が浮かんでいた。
 アランは立ち上がり、硝子戸に手をかけて、もう一度彼女を見た。
 困らせてごめん、でも君を好きなのは本当だ。好きだ……。
 出て行こうとしたアランに、メリーベルが駆け寄った。
「アラン!わたしたちと一緒に遠くへ行く?」
 ……ときをこえて……遠くへ行く?

ポーの一族 画像8.png

 吹き込む強い風に巻き毛を乱し、アランに問いかけるメリーベル。
 謎めいた問いかけ、だが、投げかけられたその声、そのまなざしがアランの胸に焼付いた。
『ときをこえて』……?
 冷え切った体で屋敷に帰りついたアランは、そのまま倒れ込んでしまう。

 心配ない、ただの風邪です。往診したクリフォードが伯母にそう説明している間、アランは夢の中にいた。
『わたしたちと一緒にときをこえて行く?アラン』
 メリーベルの声、自分をとりまく冷たくわずらわしい人間関係、エドガー、君はバンパネラだ。いつも、いやなことを忘れるために、砦跡の崖から、身を投げ出すようにして見ていた波の渦。
 いこう、いこう、メリーベル。……どこへ行くって?

 目を開くと、枕元にエドガーが立っていた。見舞いに来たという彼のほかに誰も部屋にいない。
 たいしたことはない、と話すアランの喉元に、いつのまにか伸びたエドガーの手。
 薄く微笑む青い瞳に、得体のしれない沈黙。
 開かれた扉の向こうで、黒く尖った悪魔の羽を広げたエドガーが、アランに刃を振り上げた。
 クリフォードは思わず声を上げた。アランの寝室に入ろうとしたとき、自分がそのような光景を目にした気がして。
 実際に目の前にいたのは、落ち着いた様子で自分に挨拶をするエドガーと、ただ横たわっているアラン。
 それでも、クリフォードの体は、エドガーが去ったその部屋で、まだ総毛だっていた。
 部屋に異様な冷気が漂っている。
 「……伝説を信じます?」
 アランの唐突な問いかけが沈黙を破った。
 たとえば、バンパネラは実在したと思います? 
 クリフォードは言葉を失ったが、少し笑って首を横に振った。ただ、その顔色にまだ血の気はもどっていなかった。

「あら!おひさしぶり、ジェイン!」
 帽子屋の前で、シーラがジェインに声をかけた。連れていたメリーベルを紹介し、一緒に店に入ることを誘う。
 まるで引き立て役だと恥ずかしく思うジェインをじっと見つめたシーラが、ふいに言った。
 髪を結いあげて、緑より青があなたには似合うわ。
 何を着たって私ではみっともなくて……ジェインの言葉をシーラが押しとどめた。
 みっともない若い娘なんていやしません。髪は少し古風に結い上げて、でも娘らしく細い流行の、もちろん青いドレスを着て、あなたに似合いそうな青い帽子を持っているので、是非合わせてあげたいわ。目にうかぶでしょう?とても素敵になったあなた。
「母さま……」
 シーラは言葉を切った。青ざめたメリーベルが、ふらつく体を寄せてきていた。
 うちが近いので少しお休みになっては?と提案するジェイン。
 それでは、娘がお世話になっている間に、あの、あなたに似合う青い帽子をとってきます、と、シーラはジェインの呼び止めをふりきって踵を返す。
 親しげな方!ジェインは、シーラの思いがけない温かな態度に驚いていた。

 実は、シーラ達がカスター家の近くにある帽子屋にやってきたのは、ジェインの様子をうかがうためだった。
 クリフォードを愛しているジェインも、一族に加えて村に連れ帰れば良い。そのために彼女の信頼を勝ち得たい。シーラは屋敷へと急いだ。

「ひと雨くるな……」
 浜辺に響くかすかな雷鳴、顔を上げたクリフォードは、屋敷へと向かうシーラに気づいた。
 強くなりかけた海風にドレスをなびかせ、明るくクリフォードに声をかけたシーラ。
 その笑みが、雲間からの一瞬の稲光に消えた。
 悲鳴を上げて激しく怯えるシーラの手を引き、クリフォードは目に入った農家の倉庫で彼女を雨宿りさせることにした。

「雷がこわいんですか」
「ええ……まるで私に向かって走ってきそうで……!」
 小屋の中で、震えながらクリフォードにすがりつくシーラに、まるで、罪人のようなことをおっしゃる、とクリフォードは苦笑いをした。落雷は神の怒りで、罪人はこれに撃たれて命を落とすという言い伝えを思い出しながら。
 気をまぎらわせようと、今日、ジェインに会ったことを話すシーラ。 
 腕の中のシーラの、青ざめた美しさがあらためてクリフォードの心をとらえた。なぜこの人を、一瞬でも魔性だなどとうたがったのか。
 無言で彼女の顔を引き寄せ、クリフォードはシーラに口づけた。
 しかし、次の瞬間、シーラの首筋に指先をあてていたクリフォードの全身に、電流のような衝撃が駆け抜けた。
 脈がない……!
 すべての血脈が死んでいる……これは人間ではない!!
 今もまだ彼に身を寄せているシーラ。
 クリフォードの目の隅に、小屋に置かれた干し草用のフォークが写った。クリフォードはかすかに呟く。
「あなたは現実のものではない……打ち砕かねば……これがわたしのつとめだ」 
 このまぼろし……!
 シーラを払いのけ、クリフォードはフォークを振り上げた。
 切っ先から伝わる手ごたえと共に、激しく吹き込んだ風雨。
 視界を奪われたすきに、シーラの姿が消えていた。

 日が落ち、暗くなった屋敷で打つ雨音に耳をかたむけていたエドガーが、ドアの動くかすかな物音に気付いた。
「とうさま!!」
 扉を開けたエドガーに、深手を負ったシーラが倒れ込んできた。

 夫の手当てをうけながら、朦朧としたまま、シーラは告げた。クリフォードに気づかれたと。
 すぐに町をでようと支度をするポーツネル男爵、今、母さまを動かしたら助からないというエドガーに、今逃げなければ終わりだ!と声を荒げる。
 10万人の市民がここに押し寄せてきたら?吸血鬼を滅ぼそうとする人間たちの群れ。いくどもそういう光景を見てきた、お前も覚えているだろう?
 そのとき、エドガーの顔色が変わった。
 メリーベルは。
「母さま、メリーベルはどこ!?」

 落雷に怯えるメリーベルを抱きしめて落ち着かせているジェイン。ふわりとしたきれいな巻き毛に触れ、あなたもシーラに似て美しい婦人になるのでしょうね、と、つぶやく。
 メリーベルははじめて自分の話をした。
 シーラは自分の本当の母親ではない、メリーベルにそっくりだったという実の母は自分を生んですぐに死んでしまった。
「ジェイン、シーラが好き?」
 シーラは美しい大人の女性。でも、ときが立てば、ジェインも大人になるわ。メリーベルはやわらかく微笑む。

 激しい音を立てて、扉が開け放たれた。
「ジェイン、はなれろ!!」
 すぶぬれのクリフォードが叫んだ。
 一体何が、と彼に駆け寄ったジェインに、クリフォードは告げた。
 シーラを殺した。
 目をみはるジェイン。メリーベルの体がこわばる。
 戸棚から、銀の弾をこめた魔除けの銃を取り出したクリフォード、彼を落ち着かせようとするジェインに、クリフォードは叫ぶ。
 岬の家に住んでいるのは悪魔の一家だ!!ちがうというのなら、これで十字を切ってみろ!
 メリーベルは、投げつけられた十字架のネックレスに短く悲鳴を上げた。
 雷鳴の中、小さな細い十字架が、メリーベルに向かって組み合わされた巨大な刃のように光を放つ。
 なにをしているの、十字架を拾って!
 ジェインの声。メリーベルにはできない。
 壁にすがり、メリーベルは叫んだ。
「エドガー!エドガー!」

 漂うようにゆっくりと崩れ落ちるメリーベルの体。
 閉じ行く瞳の奥で、いくつかの思い出が、波紋のように現れては溶けていく。
 幼かった自分、いつも優しかったエドガー。
 孤児だった自分を最初に育ててくれた老婆。
 木々の間から木漏れ日のように現れた金色の髪の少年。はじめての恋……。
 その体が倒れ落ちる前に、メリーベルの淡く伸べられた細い腕が、全身の輪郭が、風の中の光る砂のように散り、そして、あとかたもなく、消えた。
 壁の前に、流れ落ちた一掴みの灰のような跡、拾われることのなかった十字架。
 銃の硝煙の向こうに、それを見たジェインは、クリフォードに振り向きかけて気をうしなってしまう。

 銃声に駆けつけたカスターと、クリフォードの友人。
 ジェインも見ました!あの一家は悪魔だ!十字架をかかげて、打ち砕け、悪魔を!
 興奮して叫ぶクリフォード。ジェインを介抱する二人に、まず着替えてから、話を聞かせろと言われ、ねがってもない!ジェインも見たんだから、と足早に自分の部屋に戻る。

 あれも神がつくりたもうたものか?なんのために? 
 部屋に戻り、繰り返し光る空に目を向けたクリフォード。
 隣の部屋から小さな物音がした。
「メリーベルの悲鳴が外まで聞こえた。……ぼくは、まにあわなかった……」
 はためくカーテンの向こう、開け放たれた大窓に、エドガーが立っていた。
「これは、あなたがメリーベルを撃った銃だ」
 クリフォードに向けられた銃口。
「悪霊……!消えろ……!お前たちは実在しない!」
 実在している、あなたがたよりはずっと長い時間を。……なにかいいのこすことは?
「消えろ!おまえたちはなんのためにそこにいる!」
 なぜ生きてそこにいるのだ、この悪魔!
 クリフォードの憎悪に満ちた叫びと、ひときわ激しい落雷が、銃声を覆い隠した。

 なぜ生きているのかって?それがわかれば!
 創るものもなく、生み出すものもなく、うつる次の世代にたくす遺産もなく、長いときを、なぜ、こうして生きているのか。
 ……すくなくともぼくは、ああ、すくなくともぼくは……

 同じころ、夫にささえられて馬車に乗り込もうとしていたシーラが、力尽きて塵となって消えた。
 驚愕する御者を一撃して馬車を奪い取り、ポーツネル男爵は馬に激しいむちをくれ、一気に馬車を走らせた。
 急坂を転がるように駆け下りたとき、彼をよけきれずに迫りくるもう一台の馬車を目前にして、ポーツネル男爵は胸の内で愛する者たちに別れを告げた。

 割れた街灯、大破した二台の馬車、生き残った馬のいななきと、駆け付ける人々。
 一人、馬車の下敷きになったのを確かに見た。いや、誰もいない。救助に向かう男たちの声。
 混乱の中、かけつけたエドガーの足元に、ポーツネル男爵の帽子が、転がってきた。
 帽子を拾い上げ、何が起こったかを理解したエドガーから、やがて、嗚咽まじりの笑い声がもれた。
 幕だ、すべてはおわった!ぼくは自由、ぼくはこの世でただひとり、もうメリーベルのために、あの子をまもるために、生きる必要もない。
 生きる必要も、ない……。
 
 「アラン様、お起きになってもよろしいのですか」
 ああ、熱はないんだよ。老執事にそう告げたあと、母の部屋を尋ねていくアラン。ドアの隙間から、伯父の話す声が聞こえてくる。覗き込んだアランは息をのんだ。
 伯父の手はベッドで身を起こした母の肩を抱き、母の手は腰かける叔父の膝に置かれ、互いに寄り添う二人。
 母を「おまえ」と夫のように呼んで、アランに結婚を承諾させてほしい頼む伯父に、彼女は言った。
「いいわよ、話しておくわよ、あなた」
 震える手でドアを閉じるアラン。その物音に伯父が彼を追った。

 階段を駆け上るアランを呼び止めて手をかける伯父、振り向きざまに激しくその手をふりほどいた瞬間、伯父の体がバランスを崩して大きくのけぞって階段を転げ落ちていった。
 飛び出してくる執事たちと伯母たち。
 人殺し!
 繰り返し響く従姉妹の悲鳴に、アランは踵をかえして部屋に飛び込んだ。
 
 追ってきた老執事が、鍵のかかった扉越しに声をかけた。「そこにいらっしゃるんですよ!」
すぐに先生を……。執事の声はほとんど耳に入らなかった。震えながら膝をつき、何度も叫んだ。メリーベル、メリーベル、たすけて……メリーベル!
「メリーベルはもういないよ」
 エドガーが窓辺に訪れていた。

ポーの一族 画像9.png

「メリーベルはどこ?」
「知ってる?きみは人が生まれる前にどこからくるか」
 知らない、そう答えたアランに、エドガーは言った。
「ぼくも知らない、だからメリーベルがどこへいったかわからない」
 ……生まれるまえに……?
 向かい合う二人によぎる、心から愛していた少女の姿。
 ぼくは行くけど…君はどうする?……くるかい?
 開かれた窓。雨は止み、夜の少し強い風が二人の髪をなでる。
 エドガーはアランに手を差し伸べた。
「おいでよ……」
 きみもおいでよ、ひとりではさみしすぎる……。
 その青い目に、もう、あの魔性の光、凍り付いた沈黙はなかった。
 そこにたたえられていたのは、ただ、アランと同じ悲しみ。
 エドガーの瞳に魅入られるように、アランは、エドガーの手をとった。

 伯父の無事を告げながら、老執事がアラン部屋の鍵を開けた。
 だが、そこにもう彼の姿は無く、カーテンを激しく乱す夜風にまじり、どこかから、長く響く少年の笑い声。
 老執事は茫然とつぶやいた。
 風につれていかれた……?

 地球儀に置かれた教師の手。
 来るべき、人が宇宙へと旅立てる未来について話していた教師が授業を終え、少年たちが元気に教室を飛び出してくる。
 お気に入りのレコードや、家族への電話について話していた彼らは、やがて門の前にいる人影に気づいて窓辺に集まってくる。
 転入生かな?どこから来たんだろう?

 彼らの視線の先に、エドガーとアランが立っていた。
                                     (おわり)



 これが、エドガーとアランの出会い、そしてメリーベルの死を描いた中編「ポーの一族」の物語です。
 もっとコンパクトにまとめたかったのですが、130ページに満たない、流れるように展開する中編ながら、様々な人間の疑惑と思惑が交錯して、いざ手を付けてみたら、思いのほかはしょるできませんでした……。
 (おまけに、この時期の萩尾望都作品特有の、独特で印象的な台詞をどうしてもきちんと引用したかったので余計長くなってしまいました〈汗〉。)

 ここでは紹介しきれなかった、後の作品につながる伏線や、登場人物たちの表情や美しさ、漫画ならではのすぐれた間合い表現などがあるので、是非本編をお読みになってみてください。

 これからしばらくは、萩尾さんの名作群についてご紹介させていただきたいと思います。よろしければまたいらしてください。

 読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum. at 22:40| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月02日

本郷VS力石、見逃せない直接対決!(そして今野魯粛……)「食の軍師・焼肉の軍師編」(ドラマ)

東京MXテレビで毎週水曜23時30分から放映されているドラマ、「食の軍師」についてご紹介させていただきます。
過去の当ブログご紹介記事はコチラ。
ドラマの公式HPはコチラです。
「食の軍師」。
http://s.mxtv.jp/gunshi/episode.php

原作はドラマ化もされた「孤独のグルメ」で有名な久住昌之氏原作、和泉晴紀の漫画です。
食の軍師 1 -
食の軍師 1 -
主人公本郷が、脳内に住まう食の軍師諸葛亮孔明の策に従い、名城を攻略していく(=美味しい店でかっこよく食べる)ことを目指すも、たいていフラリと同じ店に入ってくる謎の青年力石の、無為自然にして洗練された所作に完膚なきまでに敗北するという筋立てです。

名城攻略のために己に禁欲すら課す(例、焼肉に行くと決めたら、一カ月を肉断ちする)本郷のいじらしさと、その本郷渾身の陣立て(食べ方)を眼中にすら置かずに易々と超えていく、力石のモーツァルトのごとき天才がそれぞれに味わい深い……。

と、この基本的構図は漫画もドラマも同じなのですが、(特に力石にしてやられたときの本郷がカウンターから足だけのぞかせピクピクとずっこける姿は驚異の再現率)実は力石のキャラ設定が原作とドラマでは異なります。

ドラマではほとんど本郷を言葉を交わすことが無く、独り我が道を行く品を醸していた力石ですが、漫画では結構自分から話しかけています。そしてそのほとんどが「余計なお世話にして極めて的を得ている」というコンニャロな感じ。

でも、なぜかその鮮やかな戦略や発言に本郷と一緒にドバッサリ切られるのがキモチよかったりするんです。いいわ、いいわその手があったのねハアハア(変態か。)

いや真面目な話、若いのに金持ちそうで、気負わずハードル高い店でサラリとうまいもん食って、年上の本郷にも物怖じせずにいらんこと言うという、ちょっと聞き死ねこのやろう的なキャラが不思議とカッコよく、原作でも、力石の登場回数が少ない2巻では「力石がいない!!」という嘆きの読者レビューが続出しています。(私もその一人)
食の軍師 2 -
食の軍師 2 -

ちなみにそんな「悪気はなくてセンスはいいけど感じが良くない」原作力石語録の最高傑作は「とんかつの軍師」の回。
揚げたてのトンカツを前に、精魂込めて一口一口味付けを変えて食べ進めていた本郷の前に現れた力石。席には座らず、予約しておいたお持ち帰り弁当を手に。
「今日は天気がいいからこれ持って釣りに行くんだ。川で食べるこの寝かせた(※)とんかつ弁当とビールがこたえられないんだ」
(※ソースを衣にしみこませてしばらく置いておくこと。本郷も最後の一口はソレと決めて大切にとっていたが、力石はハナからそれだけを目当てに持ち帰るという大技に出た。)
じゃね。ガラガラピシャッ(←引き戸を閉める音)
と去っていく力石に、本郷は「天候を味方に外の国に進出していくとは!」と取り残されて歯噛みをします。

これまでドラマ版ではこの手の発言はなく、孤高の力石を勝手に目の敵にしている本郷という構図が際立っていたのですが、今回の「焼肉の軍師」では、混んでいるために顔見知りの本郷を力石が相席に誘うという展開で、ドラマ内の二人がはじめてまともに言葉を交わしています。

原作の名言
「(一杯目は酒を飲まず)まずはこいつ(無料で美味しい麦茶)で喉を開いてから酒に行こうかなと思って」や、
「ホルモンが歌い出したぜ(※)」(焼ける音で食べごろを見極めるという巧者の発言)
などが聞ける上に、ハラミについて
「内臓の中でもハラミは別格で昔は『ソフトカルビ』って言われてたくらいだから」
と、ドヤ顔で講釈をたれる本郷に対し、笑顔で
「でも、その『ソフトカルビ』って呼び方ダサいッスね」
と、やっぱりコイツ毒舌だったか、とわかる一言も飛び出しています。(本郷ビールバフー)
孤高の力石もカッコイイけど、やっぱりドラマでもたまにはこうやってバサーッと斬ってくれる展開が観られるといいなあ。

ところで、今回の焼肉の軍師後編、もう一つの見どころは、本郷の脳内軍師諸葛亮孔明のもとに現れる新たな軍師魯粛の存在です。(※三国志呉国の軍師)
次週予告観て、「キャア今野さんだわッ(愛)」と乙女のごとく胸が高鳴りました。
キングオブコメディ今野浩喜さん。
個性的な風貌と威風堂々たる声での大理不尽発言で、他の追随を許さない爆発力を誇る芸人さんです。
彼にふりまわされながらも、その暴走の一つ一つに、大人の胸に染み入る味わい深い突っ込みを入れる高橋さん(容姿は西島秀俊風味)とのコントは必見。

(「キングオブコント」優勝時の演技)


放映前からの期待を裏切らない、いかにも時代物が似合う端正さと重厚な演技力でこれまでもドラマをいっそうバカバカしくしてくださった(何?)篠井孔明の隣でどのような活躍をみせてくださるか、超楽しみです。てか何度も出てほしい!

本日は以上になります。この話題でまだ追記したいので、よろしかったらまたいらしてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 07:52| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月01日

ドラマ放送開始!「食の軍師」(食べ物漫画)

すごく好きな漫画が今日(2015年4月1日23:30〜 東京MXテレビ)からドラマ放映されるとのことなのでご紹介させていただきます。(ネット配信もアリ)

「食の軍師」。


食の軍師
ドラマ化もされた「孤独のグルメ」で有名な久住昌之氏原作、和泉晴紀氏作画。(泉昌之名義)

孤独のグルメ 新装版

食を戦と心得、三国志の軍師諸葛亮孔明のごとく緻密な策のもとに、店(名城)を攻め落とす男、本郷と、彼の狙った店に何故か高確率で現れる謎の青年、力石の手に汗握る頭脳戦(?)を描いた作品です。

ドラマの公式HPはコチラ(このページ、原作ファンからみてもかなり良いカンジです。期待大!)
http://s.mxtv.jp/gunshi/

……要は、本郷が単においしいお店でいかにカッコ良く美味しく食べて帰るかについて、一人でこだわっているだけなんですが。(そして力石はマイペースに食事を楽しんでいるだけ。)
中年男が一人で食事をするといえば、久住氏のヒット作「孤独のグルメ」の設定と重なりますが、味わいが全然違います。そしてそこがこの作品の魅力。
なにげなく立ち寄った店で淡々と食事する「孤独のグルメ」の五郎と違い、本郷は超気合入れて入店し、熱意と妄想全開で食事(=戦)に臨む(そしてちょいちょい空回りする)愛すべきおバカキャラです。
もちろん美味しそうな料理とお店の個性も見どころ。
 一話完結でどこからでも読めるので是非お手に取ってみてください。

 登場人物について簡単に説明させていただきます。
(ドラマ公式HPの「キャスト」ページは以下の通り、漫画のキャラ画像も見られます。)
http://s.mxtv.jp/gunshi/cast.php
 
本郷
 主人公。食べることに人並み外れた情熱を燃やし、名城を落とす(=美味しいお店に行ってスマートに美味しく食べて店を出る)ことに心血を注ぐ中年男性。職業は不明だがなんらかの個人事業を営んでいる。(このため常に一人で入店、サラリーマンのランチタイムなどを外して比較的ゆったり食事をしていることが多い。)
 食事の時に綿密に策を練り、事前にすきっ腹を作って最高のコンディションで入店、「○○の計」「○○の陣」と脳内で名付けた食べ進め方や注文方法をとる。
 この策については脳内に住まう自分と似た目鼻立ちの軍師「諸葛亮孔明(※)」の采配に従っているが、策を練りすぎるあまり、計算が外れたときは結構初歩的なミスをする(無駄に食べ過ぎるとか)。
 高級店や大規模チェーン店以外の店に入ることを好み、そこの店に合った振る舞いをすることにこだわる。(そしてできないととても落ち込む。)料理が非常に美味しい時、あるいは自分が食べ方に失敗した時は、カウンターから足だけ出してズッこけるという、平成が始まるよりだいぶ以前にすたれた大技を披露する。
かなりの酒飲みで午前中からチューハイ1リットルとカラにしたりするが、酒癖はイマイチで、脳内から流出した妄想を口にして隣席の力石(口述)を困惑させたりする。
 (※)ドラマでは孔明が本郷とは別人格のようで、端正かつ曲者演技の出来る巧者篠井英介さんが演じています。楽しみルンルン。

 力石
 本郷永遠の宿敵(と本郷に勝手に思われている青年)。屋台のおでん、ひとり焼肉、寿司のカウンターなど、あらゆる局面で粋に楽しめる食のオールラウンダー。
 本郷より数歳若い模様だが、常に本郷の緻密な戦略の一、二段上を行き(=より美味しそうな食べ方をして)、本郷に「キー!くやしー!」的な思いをさせるニクイ奴。(ただし本人はほとんど本郷の対抗心に気づいていない。)彼が店に現れると、動揺のあまり本郷はよく飲み物を派手に吹き出す(そしてお店の人に迷惑をかける。)
トレンチコートに帽子でキマッたファッションの本郷と対照的に、常にフードつきのパーカー姿(寿司屋に行ってもそれ)で、着席と同時にフードをとるのが決めポーズ。職業は本郷以上に謎だがおそらくは自由業(そしていっちゃあなんだが軍資金も結構潤沢な模様。)登場時のテーマソングは「ズンチャーカズンズンチャッカ♪」「ジャカジャーン♪」など(本郷の脳内限定で鳴り響く)。埼玉出身。

以上、取り急ぎご紹介させていただきました。

引き続いてドラマ放映期間はこの作品の名場面や「孤独のグルメ」との比較などをご紹介させていただきたいと思います。よろしければまたいらしてください。
読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 07:48| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月04日

たかぎなおこさん思い出のフレンチトースト(漫画「浮き草デイズ」と「はらぺこ万歳!」)

元旦早々流血記事を書いてしまったので、今回は別系統の話題をご紹介させていただきます。

大人気エッセイコミック作家たかぎなおこさんの最新作「はらぺこ万歳!」に出てくるフレンチトーストについて。

はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん -
はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん -

たかぎなおこさんは、ご本人の温かな人柄がにじみでたほんわかした作風で、女性のひとりぐらしや、旅、趣味のマラソン、そしてご自分の上京物語などを描いている作家さんです。

ひとりぐらしも5年め -
ひとりぐらしも5年め -

ひとりたび1年生 -
ひとりたび1年生 -

マラソン1年生 -


上京はしたけれど。 -
上京はしたけれど。 -

また、カラフルで可愛らしい絵で描かれた食べ物の絵がとっても美味しそうなのも魅力のひとつ。

ご本人の自炊風景も旅ごはんも見ているだけでワクワクします。

そんな彼女が描いてきた食べ物エピソードの中でも、ファンの間で名高いのが『浮き草デイズ』2巻の「モモセさんのフレンチトースト」。

浮き草デイズ〈2〉 -
浮き草デイズ〈2〉 -

三重のご実家からたかぎさんが上京してきたとき、イラストレーターとしての仕事がまったくとれずに、ホテルの朝食係としてバイトしていたときのお話です。

ギリギリ生活のたかぎさんにとって、このバイトでのまかないは貴重な栄養源。

そのなかでも、顔は怖いけれど、実は優しいホテルのシェフ「モモセさん(どろぼうひげで目つきが厳しい)」のおいしくて量の多い朝ごはんを、たかぎさんはとても楽しみにしていました。

 (例)実は優しいモモセさん、凄味のある顔で「お前パパイヤって、食ったことあるか?(ギロ…)」と、たかぎさんに余ったパパイヤを渡す(笑)。

浮き草デイズ パパイヤ1.png

浮き草デイズ パパイヤ2.png

モモセさんの大盛りカレーや、前日から仕込んだスープとチャーシューで作ったラーメン。

なかでもたかぎさん憧れの一皿はフレンチトーストでした。

「ふわふわで黄金色でめちゃめちゃおいしそう」

と、お客様に運ぶときから羨望のまなざしで見ていたフレンチトースト。

ついに、
「今日のまかないはフレンチトーストだ!!」(だん!〈怖い顔〉)←このコマ好き(笑)

浮き草デイズ フレンチトースト.png

と、出てきた黄金色ふわふわフレンチトーストを、たかぎさんたちはうまうまーと感激しきりで食べていました。



イラストレーターになるという難しい夢を抱きながら、どこかあぶなっかしいたかぎさんを、「めしはちゃんと食ってんのか?」「変なバイトしてないだろうな?」と、怖い顔でちょいちょい心配してくれていた「モモセさん」。

たかぎさんはこの人のことをひそかに「東京の母」と慕っていましたが(笑)、自身も上京者だった「モモセさん」は地元青森に店を出すという夢をかなえるべく、やがて東京を去りました。

「まったくよ〜、どうなるんだろうな、おめ〜のこれからの東京生活はよ〜」
(ホテルの厨房で卵を割りながらためいきをつくモモセさん。)
「まあ…メシくらいはちゃんと食えよ」
そんな言葉をたかぎさんに残して。

これがたかぎさんの上京物語「浮き草デイズ」のエピソードですが、月日は流れ、いまや売れっ子コミックエッセイストとなったたかぎさんが、「モモセさん」のモデルとなったシェフ「ハヤセさん」の姿をネットで見つけ、13年ぶりの再会を果たすというエピソードが最新刊「はらぺこ万歳!」に登場します。

「モモセさん」ことハヤセさん、現在は「海坊厨(うみぼうず)」という地元の人気店を経営、青森駅から徒歩6分というナイスな立地で、ランチ1380円、夜のおまかせコースは2730円で華やかなデザートまでついた素敵な創作料理を提供しているそうです。

「ぐるなび」内「海坊厨」紹介ページ
http://r.gnavi.co.jp/t672500/

(ちなみにたかぎさんが見つけたのと同じページを拝見したらば、当時より20kg御痩せになったハヤセさんは、お笑いコンビ「バイきんぐ」の小峠さんをがっちりさせたと言えなくもない感じだった。)
「あなたもきっと海坊厨(うみぼうず)の虜に」(青森2722の魅力 No.850)※この記事の住所は旧店舗のものです。

そんなわけでひさびさの再会を果たした二人。

このときの感慨を、たかぎさんは、
「思えば絵で仕事がしたいと思いつつバイトに明け暮れていた当時の私は……厨房で働くハヤセさんを見て、手に職があるっていいなぁ〜とうらやましく思ってましたが……ハヤセさんはハヤセさんでいつかは店を持ちたいというさらなる夢があったようで……それがイラストレーターとして、そしてレストラン店主として再会できるなんて……時がたつというのも素敵なもんだなぁ〜と思いました」
……と語っていらっしゃいました。

さて、フレンチトーストですが、たかぎさんの訪問をきっかけにメニューにのることとなり(前日仕込みが必要なので要予約)、しっかりぐるなびで「たかぎなおこ著、浮き草デイズに登場しております」という一言とともに宣伝されております(笑)。
http://r.gnavi.co.jp/t672500/kodawari/

二回目の訪問で泣きながらフレンチトーストを食べるたかぎさん。(今回はハヤセさんお得意の素晴らしい飴細工つき)


はらぺこ万歳!フレンチトースト.png


たかぎさんのイラストおよび数々の写真を観るに、本当に創意工夫が行き届いて、おいしそうで、しかもその華やかさや食材の良さのわりに価格も相当リーズナブル、なんとかして取り急ぎ青森に行けないもんかとすら思いますが、今のところ無理です。うーむ……。(ラーメン者〈誰?〉としては、同じくたかぎさんのまかない思い出話をきっかけにメニュー入りしたという具だくさんラーメンも超気になる。)

ともあれ、このせちがらい世の中で、「才能があり、真面目に努力した人柄のよい人がそれぞれに成功し、片方がそのときの相手の優しさを忘れずに義理堅く訪ねて行った。(そして今もそれぞれの夢の仕事で輝いている)」という事実に心温まります。

 この名エピソード「フレンチトースト」以外にも、たかぎなおこさん作品は読むとほんわかしますので(食べ物がおいしそうすぎて空腹時にはおすすめできませんが……)男性女性を問わずとてもおススメです。ぜひお手にとってみてください。

 「はらぺこ万歳」「浮き草デイズ」のWEB特設ページは以下の通りです。(試し読みつき)

「はらぺこ万歳」
http://hon.bunshun.jp/sp/harapeko
「浮き草デイズ」
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163712703

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 00:07| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月01日

(のこり90日)「100日間」リベンジ 今年の抱負

 新年あけましておめでとうございます。本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

 今年が皆様にとって実り多い年でありますように。

 さて、元旦ですので、個人的な話ですが、本年の抱負を報告させていただきたいと思います。

「インターネットを断つ」(今ブログ書いてるのに?)

 厳密に申しますと、「必要のないインターネット接続を断つ」です。

 実は私と無駄ネットとの戦いの歴史は非常に長く泥沼化しており、かれこれ数年、「もうやめる!」と誓い、ありとあらゆる手を尽くしていながら挫折の繰り返しです。

 日常生活に差し支えるレベルではギリ無いのですが……しかしいともたやすく数時間無駄にするので、他にしたいことがあっても時間をひねりだせないのです。(特に休日蝕み度が酷い。)

 認めるのはつらいのですが、前回の100日チャレンジ挫折の最大の理由でもありました。
(ダラダラネット観た後、どうにかして課題をこなそうとして寝不足が続いて最終的に体調崩した。〈虚〉)
 
 ちなみに、何にハマっているかというと、ゲームでもSNSでもなく、なんというか、ゴシップとか対人トラブルとか、人間関係のドロドロを扱う幾つかのサイト閲覧がやめられなかった……。

 普段その手の話題を口にすることも無く、そして観てもちっとも楽しくないのに、です。

 自分自身や環境にストレスがたまると見たくなるというか、気づいたら見ていて、とめられなくなっているのです。(呪いか。)
 
 ストレス解消ならもっと楽しいものや綺麗なものに接した方が後味はずっと良いのも自分でわかっていたのに、なんかそれを求められずに、うわあ嫌だなあ怖いなあと思いつつ見続けている。

 このまさしく中毒症状としか言えない現象を自分なりに分析してみたところ、どうも「自分のストレスを、もっと強烈なストレスを感じているであろう他人の話で塗り込めて思考回路を麻痺させる」という行動に出ているようだと気づきました。

 この心理を自覚した後、思い出したのは伝説的ギャグ漫画『お父さんは心配性』の中のこんなくだりです。

お父さんは心配症 (3) (りぼんマスコットコミックス (405)) -
お父さんは心配症 (3) (りぼんマスコットコミックス (405)) -

 主人公の佐々木光太郎(通称パピイ、彼に全く似ていない常識人で可愛い娘を溺愛している。)が、お見合い交際中のナース安井さんに会いたいがために医者に変装して病院を徘徊するうち、本物の医者と間違われて手術をしなければならなくなる。(りぼんコミックス3巻収録「病院は大パニック!」内)

 で、その筋の方らしき患者が、ピストルで撃たれた腹を押さえて
「先生…腹が…腹が痛えよ!なんとかしてくれよ」
と訴えてきたときのこと……。(画像参照)

佐々木光太郎なりのオペ.png

 困り果てた佐々木パピイ、「わ、わかりました」と言ったかと思うと、そのヤクザ屋さんの腕にメスをまっすぐ「ぶすっ」と……。

 当然悲鳴をあげる患者に対し、佐々木パピイ。

「新たな傷の痛さでお腹の痛さを忘れることができます。」
「バカヤロー今度は腕が痛いよ!」
「それでは腕の痛さを忘れるために新たな傷を……」
(鎌〈どっから持ってきたんだ〉をふりかざして看護師たちに止められるパピイ。)

 ……「人のストレスで自分のストレスを忘れることができます。」というカラクリで時間を湯水のように浪費し、そして本当にストレスを無くすために必要な努力は怠っているというのは、「それではストレスを忘れるために新たな傷を……」と自らグサグサやっているも同然だよなとつくづく痛感したのです。

 ここまで反省しても、ときおり無駄ネット閲覧にのめりこんでいるのが現状なので、今色々手を講じています。こうしてブログで懺悔宣誓するのもそのひとつです。(『新しい自分に生まれ変わる「やめる」習慣』という本に書いてあった手法〈怠惰なりに必死〉)

新しい自分に生まれ変わる 「やめる」習慣 -
新しい自分に生まれ変わる 「やめる」習慣 -


 なんとか佐々木パピイ的「今ある傷の痛みを忘れるために新しい傷を増やす」系統の処置はやめて、いや、少なくとも徐々に減らして、まっとうに自分を良くしていきたいです。

 新年いきなり流血シーンからスタートしてしまいましたが、そんな決意を込めて、皆様に時折、ネット離脱のためにしている工夫や状況報告をお伝えしていきたいと思います。

 しかしこれで元旦記事を終わらせるのもなんなので、もうひとつご紹介。

 超短編の名手、星新一の作品「大黒様」(『妄想銀行』収録)で、ある男に福をもたらすべく現れた大黒様がこんなお言葉をかけるシーンがあります。

妄想銀行 (新潮文庫) -
妄想銀行 (新潮文庫) -

「福とはその障害になっているものを取り除けば簡単に手に入る。」

 まあ、星新一ワールドは往々にしてぷちブラックなので、オチとしては、せっかく大黒様にいらしていただいたのに、「悪いところをとりのぞいて幸せに導く」のが仕事だというお話を皆まで聞かずに、持ち前の「あわてもので欲深」という「悪いところ」を発揮した男が、大黒様の大きな袋を奪い取った挙句、ほうぼうから回収してきた袋一杯の「悪いところ」を吸い込んでしまう……というものなのですが。

 ともあれ、私は大黒様のお言葉を胸に刻んで、自分の中にある壁をけずりとるようにしてでも減らしていく、今年はそういう挑戦の一年にしたいと思います。

 いいご報告ができるように頑張ります。

 そして今回ご紹介した『お父さんは心配性』と『妄想銀行』、ジャンルは違えど(ホントだいぶ違う)、どちらも稀有な才能に圧倒される名著中の名著なので、是非お手に取ってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 23:44| 「100日間」リベンジ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月22日

「朔旦冬至(さくたんとうじ)」に「100日間」リベンジ

忘れてない
あきらめてない
「100日間」

おひさしぶりです。
以前、当ブログで「100日頑張ったら人はどのくらい変われるか自分人体実験してみたい」と書いた者です。(間が開きすぎて自己紹介から入っている。)

あの時頑張りたいと思ってたこと(100日間のうちに、1「英語毎日勉強する」2「痩せる」3「ブログ記事毎日書く」)は繰り返しつんのめり、長い言い訳をはしょって結論にだけ申し上げますと、事態はあんまり変わっていません。

いや、「痩せる」「ブログ記事を毎日書く」に至っては、事態は大きく後退しております。

 もともと100日ダイエットで目覚ましい肉体改造を遂げたKAZUさんに憧れての計画でした。



が、途中で、「僕の場合、そもそも100日努力できる人に成長できるよう努力するところからスタートせねばならない」ということに気づき、しかし、その「努力できるようにするための努力」の仕方がさっぱりわからず、右往左往している間にはや年末です。

 でもその間、自責の念だけは止まず、どうにかこうにか、こうして机に戻ってきました(どこに行っていたんだ)。

 このまま暗く寒い冬を過ごし、除夜の鐘を聞くのだけは避けたい……(クリスマス予定無)。

 というわけなので、ハードルを下げ「努力できる人になるための試行錯誤を100日続けてみる。できる範囲で」ということからはじめようと思います。(下げたねえ……。)

 きっと僕の自己観察記録は人様をイラッとさせるほどヌルいでしょうが、それでも「頑張るための参考資料」として名著を色々読んでおりますので、その情報だけは少しお役に立つかと存じます。
 その顛末は毎日アップします!100日後には、バイリンガルで、細マッチョです!!とか書くとどうなるかは既に当ブログでくどいほど実証済ですので、そしてそんな自分に「生まれてすみません(太宰治)」感をつのらせた後、ビジュアル系(?)ジャイアンのパネルを撮影せねばならなくなったドラえもん並みに「いい、いい、どうでもいい!」とおのれの全身全霊を投げ遣りたくなるので、まずとにかく、やれる範囲ではじめたいと思います。

いい、いい、どうでもいい.png

 ちなみに本日(12月22日)は冬至と新月が重なる19年に1度の「朔旦冬至」。太陽と月が復活する日とされ、ものごとをはじめるのに最適な日だそうです。(参考資料『grape』「今日は19年に1度の『朔旦冬至(さくたんとうじ)』 太陽と月が復活する日」)
 http://grapee.jp/25042

「今日こそは100日を復活させる」と思って居たら偶然そんな話をうかがってうれしかったので、今度こそ頑張りたいと思います。やれる範囲で(さっきも書いた)
つぎの100日後は2015年3月31日、きりがいいです。(起算日を含めた場合。含めないとエイプリルフールになってしまう〈汗〉)
今日できたこと「机に戻ってきた」。
……ちょっとずつ積み重ねたいと思います。よろしければこの魂の迷走をときおり見守ってやってください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:27| 「100日間」リベンジ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年08月25日

夏の音(筝曲家宮城道雄の随筆「春の海」より)

本日は夏にちなんだ文章をご紹介いたします。

筝曲家(そうきょくか)宮城道雄(1894〜1956)。

Michio_Miyagi.jpg(ウィキペディアより)


盲目の天才奏者にして作曲家。

この方の作曲した「春の海」を聴けば、全日本人100人中120人がお正月を思い出すというほどメジャーです。
「国会図書館デジタル図書館」内「春の海」(宮城道雄演奏)音源は以下のとおりです。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1319027

 実は名文家でもあり、その類まれな鋭さと繊細さを併せ持つ感覚でとらえた独自の世界観の随筆をいくつか世に送り出しています。

 食卓に置く音で、その器の大きさや厚み、形状を感じ取れたとか、部屋に入った時の空気感で広さや洋室か和室かを測れたとか、やってくる靴音で性別やおおよその立場(職業)を当てることができたなどのエピソードが記されていますが、そうした怖いほどの達人の感性の中に、夏ならではの音についての名文がありました。

 『「春の海」宮城道雄随筆集』(岩波文庫)内「四季の趣」という作品の一節です。

新編 春の海―宮城道雄随筆集 (岩波文庫) -
新編 春の海―宮城道雄随筆集 (岩波文庫) -


 (以下引用)

 夏は、朝早いのも気持ちが良いが、何といっても、夜がよい。蚊遣り(かやり)のにおいや、団扇(うちわ)をしなやかに使っておる物音などは、よいものである。夏になると、部屋を明け(開け)広げるせいか、近所が非常に近くなって、私の耳に響いてくる。横笛の音などは夏にふさわしいものだと思う。蚊に刺されるのは嫌だけれど、二、三匹よって、プーンと立てている音は、篳篥(ひちりき※)のような音がしてなかなか捨てがたいものである。
(※補:)篳篥……雅楽などで用いられる小型のたて笛

 ……『枕草子』「はるはあけぼの」を思わせる名調子です。

 窓を開けたら笛の音が聞こえてくるなどというのは、昔だからか、宮城さんがお住まいなくらいだから芸事が盛んな土地柄だったのかはわかりませんが、いかにも風流です。

 しかし、蚊の羽音すらも「篳篥のような音がする」とはさすが芸術家です。

 私なら「ギャー!一匹ならずいる!!(怒)」とベープ仕掛けてキンチョール持ってキンカン待機で、その音源を目ェ吊り上げて、ドタバタと追いかけまわすでしょう。

 篳篥の音が聴ける動画があったので添付させていただきます。(単独で音が聴けるのは1分38秒頃)



……なるほど似てなくもありません。

 絶対に刺されない、刺されてもカユクないという前提なら、あの羽音はもしかして美しいものなのかもしれません。

 私は凡人なので、宮城さんのように、どこからでも美を抽出できるほど人間が出来上がっておりませんが。

 蚊は「うーむさすが、たしかに、でも……(カユイし憎たらしいし……)」みたいな感じで読みましたが、個人的に以下のくだりには非常に共感いたしました。

 (以下引用)
 扇風機のあのうなる音をじっと聴いていると、どこか広い海の沖の方で、夕日が射していて、波の音が聞こえるように思われる。一人ぼっちで、放っておかれたような感じがする。なんとなく淋しいような、悲しいような気持ちになって、大きなセンチメンタルな感じがするのである。時々私は、扇風機の音にじいっと聴き入っていることがある。

 ……これを読んで、急に、子供の頃、夏休みにおそらく親戚の家に泊まりにいったとき、一人で目が覚めてしまった時のなんとも言えない気持ちを思い出しました。

 近くに身内は寝ているのだけれども、寝静まった今、誰とも話すことができなくて、心細く、退屈で、自分の側でゆっくりと首を振っている扇風機の音だけが響き。

 聴くでもなく耳にしていると、それは確かに波の音に似ていたのです。

 私には、浜辺に打ち寄せた波が引いていくときの音に聞こえ、暗くて淋しい中、ただ、海にいる気持ちになって自分を慰めながら、やがて、うとうとと眠りに落ちた。

 あの時間を思い出しました。

 蒸し暑い中かすかに涼しい、淋しいけれど静かな、独特の長い時間。

 朝までの時間を待つことも、音楽ではなく音をじっと聴くことも、せわしなく生きる今となっては遠い感覚です。

 このくだりを読んで以来、扇風機の音の奥に、寄せては返す波を感じるとともに、そういう、心細く寂しいけれども、今とは違う感覚で生きていた幼い頃への郷愁もよぎるようになりました。

 そして、それとは別に、この穏やかなたたずまいの天才奏者が扇風機の側に座り、つくづくと耳を傾け、そこに海を思っているという、その姿それ自体に美とやさしい趣を感じます。
 

 宮城道雄は琴を教えたのがきっかけで、随筆家内田百(うちだひゃっけん)と親しくなったそうです。

(内田百閨@ウィキペディア記事より)
内田百.jpg

 とおりいっぺんの付き合いではなく、互いに尊敬しあい、思いやり、心を許した本当の友人でした。(宮城道雄の文章は内田百閧フ紹介で、口述筆記によってなされたそうです。)

 この二人の交友を知る前、漱石ファンの私は、漱石の病床まで借金を頼みに来て、その帰りの交通費まで借りたという百閧ヘ、才能豊かとはいえずいぶんキョーレツなキャラだったのだなあという印象を持っていたのですが(あと漱石の鼻毛収集家だったという逸話もある〈あの鋭敏すぎる感性を持つ端正な面立ちの明治の文豪には、原稿用紙に抜いた鼻毛を植え付けるという奇癖があり、それを百閧ェ謹んで頂戴した〉、このあたり、あいまいな記憶で申し訳ありませんが、『私の「漱石」と「龍之介」』【ちくま文庫】)に所収されているようです)、宮城道雄の文章から、歯に衣着せぬ態度ながら、茶目っ気のある温かな人柄のよき友であったことが伝わってきました。

 ここから先は孫引きで申し訳ないのですが、宮城道雄と内田百閧フ間にはこんなやりとりがあったそうです。

(「百鬼園の図書館」という内田百闃ヨ連のHP内「宮城道雄側からの百閨vより引用させていただきました)
 参照URL http://www.biwa.ne.jp/~tamu4433/miyagi.html
 両隣が近く、琴の稽古の音がうるさいのではないかと気を使う宮城道雄に、百閧ヘこう言います。

(以下引用、現代仮名遣いに改めてあります)

百閨u(家の境の)板壁に、蓆(むしろ)いっぱいに打ち付けて、ぶらさげておけばよろしい」
道雄「そうすると、どうなりますか」
百閨uそうすると、お稽古の音が蓆にぶつかります」
道雄「それで」
百閨uそれで夕方お稽古のすんだ後で、蓆を外してはたきますと、一日中溜まっていた音がみんな落ちますから、それを掃きよせて捨てればよろしい」
道雄「本当かと思ひました」


……内田百閧フ「明暗交友録」という作品集に収録されているそうです。

 お恥ずかしい話ですが、これを最初に読んだとき「蓆(むしろ)」を「簾(すだれ)」と読み間違えまして、勝手に、
「簾の隙間に、宮城さんの奏でた美しい音が、ガラスや蜘蛛の糸のように透き通って、いくつも絡まっている」
という図を思い浮かべ、簾だからそれはやはり夏で、夕暮れにはたくと、音の余韻がさらさらと涼しい音を立てて落ちるのだろう……
と、ひとり想像たくましくしてウットリしていました。

「あ……ムシロ……か……あの松本清張や横溝正史ドラマなんかで、発見された死体にかけられているあれか……(なんだその偏ったイメージは)」
と、後に気づいて、勝手に無い話でウットリしていたことを恥ずかしく思ったものです。

 しかし、それでもやはり、琴の音が絡まってはらえば落ちるというウィットと風流は素敵だと思いました。そしてそれを「本当かと思いました」と答える宮城道雄の物やわらかな返答も。

 思い出すと、その話の中の季節はやはり夏で、琴の音は細くしなやかに光って透き通り、払い落とされるとき夕暮れに涼しく硬質な余韻を奏でているような気がするのです。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 19:20| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする