2016年08月16日

100日間リベンジ再び 3週目 記事毎日更新8月15日で中断 ダイエットマイナス1.2kg減


※今回はただの日記です。

ブログ毎日更新とかダイエットとか、生活習慣改善とか頑張るぞー!と、はじめた100日間チャレンジ3週目のご報告です。(これまでのご報告はコチラ



1 記事毎日更新挫折


書くのがとてもつらいしお恥ずかしいのですが、せめてちゃんと向き合います。

3週目を目前にして、記事毎日アップに挫折してしまいました。

8月15日は終戦の日だから、頑張って書きたいと思っていたのに、よりによってこの日に更新を止めてしまうとは……。

原因は疲労、そして、結局のところ飲酒と無駄ネット(※)です。
「またお前らかあああっ!!」とキレたいけど「お前」も何も自分の所業……。

(※)純粋に必要な調べもの以外のネット閲覧を指す自分用語。

「つかれたよーねむいよー」
と思っても頑張りたいとき、つい先送りにしようとネットを見たり、気分転換と称してお酒を飲んだりしてしまった週でした。
(一応適量の範囲内だったけど、自分オキテの「人と一緒にしか飲まない」が守れていなかった。)

前日から疲労がピークで、普段は早朝にアップしていたものを、「よ……夜にしよう……」と先延ばしにしてしまったが最後、寝酒も手伝って寝てしまいました。

とにかくこの日というのがくやしいです。

大岡昇平さんの小説「野火」について書きたかった……。

野火 (新潮文庫) -
野火 (新潮文庫) -


(重い題材なんでパワーダウン時には向かなかったんだろうけど……それならせめてこの日記でも書けていればよかった。当ブログで「野火」について一部ご紹介させていただいている記事はコチラです。)



もし今何か私のように「何日間○○を頑張ろう」と思って、しかし誘惑に苦しんでいるひとがいたら次のことをお伝えしたいです。

1,できれば挫折しないほうがいいです。ほんとーーーーーーーに自分にガッカリする。
もし今、挫折寸前の崖っぷちに立っている気分なら、こうして崖から落ちて数時間の私が申し上げます。
落ちるととてもとても痛いですよ。
そして血を流しながら再度その地点までクライミングをする(立ち直る)エネルギーをひねりだすのも大変です。


2,(頑張ろうの方向がなにかを「やる」の方向の方へ)
どうにもこうにも辛いなら、(社会的な締切が無いものなら)無理にやろうとせずに、大至急寝てしまったほうがいいです。
起きればできるかもしれないし、もし寝過ごしてしまっても、中断の原因が「体調が悪かった」なら、やれなかったことについてさほど落ち込まずにすみます。

同時期に何かを「やめる」つもりの人が無理に起きて頑張ろうとするのは特に危険です。

「ストレスがたまっている」の次に、「疲れているけど頑張りたいけど本音を言えば先送りしたい」という瞬間に、挫折のローレライは歌いはじめるのです。
  
そしてまんまと吸い寄せられて悪習慣に沈み混んだあとの自己嫌悪ときたら……。

「あのとき、あんなことをしなければ頑張れたかもしれないのに!頑張れなかった代わりにやっちゃダメなことをするって、俺のバカバカバカ!!」となり、悔しさの倍率ドン、さらに倍!です。(by大橋巨泉さん)

3,それでも、どうしても挫折してしまったのなら、そのときの状況と、今のお気持ちを書き留めておくといいような気がします。
   
今でこそ「倍率ドン」なんて書けていますが、この文を書き出す直前は「終戦の日に、大岡昇平さんの作品についてご紹介するつもりで挫折するなんて……」と自分のふがいなさに本当に泣きたい気持ちでした。

既に挫折のエキスパートだったとしても、守りたい矜持だったのです。

ただ、挫折のエキスパートゆえに、「ここでそ知らぬフリして口笛吹いて、失敗を見据えなかったら、今まで頑張った20日間が本当に無駄になる(=もう、「いい!いい!どうでもいい〈byドラえもん〉」と投げやりになり、何事もなかったかのようにブログ更新は無論、今まで通り人生全般なんも頑張んなくなる)」とよくわかっていたので、この失敗をつぶさに記録することにしました。

なお、挫折に伴う、魂がぼわわとクチからダダ漏れるような虚脱感と自己嫌悪を復旧させるにあたり、
    
(スタート)寝過ごし寝ぼけていても思い出せる、全漫画好きの魂に刻まれた至言「あきらめたら、そこで試合終了だよ(by『スラムダンク』安西先生)」を心の中で口ずさむ
     
→「せめてこの挫折を書き留めておこう」という気分になる

→実際に肉体を立ち上がらせるにあたり、もう一押しほしかったので、「挫折 立ち直る」でググる(これは僕的には無駄ネットじゃないです。ただ枕元にネット環境があったのがダメだろって話ですが……。)

→エジソンの名言
「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから、成功なんだよ」(※)
が染みた。
ブログ更新を潰した無駄ネットと飲酒を遠ざける方法について、もう少し練り直そう。
(この時点でようやく少し前向きになれ、魂が口内に戻り、体が立ち上がった。)
 (※)キャリアパーク!「挫折から立ち直る方法と参考にしたい名言集」より

……という流れがありました。

そして書いているうちに、さらに気持ちが整ってきて、今にいたります。

こうなった以上、よく言う「この失敗の悔しさをバネに頑張る」の方向で残り約80日も頑張ります。
(ブログ更新については仕切り直してもう100日を目指す〈日数計算サイトによると、11月23日ゴール、勤労感謝の日とはなんだか目指しやすくて有り難い。〉)

具体的な頑張りとして今週は
「お酒は人に注がれた分しか飲まない(周囲に酒豪がいないんで「もっと飲め飲め!!」とかない、自分の意思で飲んじゃってるだけ〈汗〉)」
「ネットツールはPC以外寝室に持ち込まない(着信音大きめにして、隣室に置いておきます。くつろぎスペースにあるからダメみたいなんで)」
を心がけます。


2 ダイエット

先週より1.2kg減りました。やったー!

……ただ、「コレで記事更新も継続できていたらどんなにすがすがしいだろう」とか、
「ここ4日ばかりお酒飲んじゃってたけど、あれが無ければもっと減ったんじゃ……」という気持ちも否めません……。

ちなみに、特に何をやったからというのは無いのですが(寝不足だったし……、単に夏バテでやつれただけか?〈汗〉)強いて言うなら、「拭き掃除」と、「朝夕軽めで昼は好きなもの(※)」というのをある程度心がけました。
(※)好きなものといっても、極力二大好物「つけ麺」と「カツ丼」は避け(つくづくダイエットに向いていない嗜好)、「なんかこう心踊るものを!!」と思ったら「天ざる(お店によるけど600kcal以下のことが多い)」にするくらいの努力はしてみました。「麺欲」「揚げ物欲」が満たされるんでオススメです。
(普通のお蕎麦屋さんで頼むと結構いいお値段だから、急激に行動圏内の立ち食いそば屋さんに詳しくなった……)

もっと目覚ましい結果やメソッドをモノにできたら改めてご報告させていただきたいと思います。

それでも減ってくれて有り難かった……ブログ更新に挫折してしまった今日の体重減は、自分にとって、焼け野原に残った小さな若葉のようで「おおお……(涙)」と体重計の数値を拝みたい思いがしました。(おおげさ)

せめて、こちらだけでも挫折せずに続けたいと思います。また来週ご報告させていただきますので、よろしければお立ち寄りください。

読んでくださってありがとうございます。


posted by Palum at 07:33| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

(ネタバレ編)「ピエロの赤い鼻」(フランス映画)


本日は第二次大戦時フランスを舞台にした映画をご紹介します。

「ピエロの赤い鼻」

親友の男二人が、ごく軽い気持ちでした駐留ナチス軍への反抗。それによって命の危険にさらされた時に出会った心優しいドイツ兵との交流を描いた作品です。



名作なのに今はDVD新品が売っていないと気づいてショックです……。
(個人的には生涯名作映画ベスト10に入るというほど好きな作品なんで……)。

ピエロの赤い鼻 [DVD] -
ピエロの赤い鼻 [DVD] -


(だいぶ前になりますが)一部あらすじを書いた記事はコチラです。

今回はネタバレなので、どうか中古またはレンタルででも一度ご覧になってからお読みください。色彩の限られた、展開も地味な作品ですが、本当に素晴らしい作品です。

以下内容が重複しますが、あらすじです。

小学校教師ジャックは美しい妻と二人の子供を持つ中年男。

お祭りのときはいつも古びた赤い鼻をつけてピエロ姿で演技をするが、息子のリュシアンは毎度父親が笑われるのにうんざりしている。

リュシアンの気持ちに気づいたジャックの親友アンドレは、ジャックがピエロになる理由を話し始める……。


大戦時、名士だったアンドレの屋敷はナチス軍に接収され、ホテルで暮らしていた。

アンドレが足しげく通うレストランにいたのは美しいウェイトレスのルイーズ。ジャックもその店の常連で、実は、二人ともルイーズ目当て。

ルイーズにいいところを見せたかった二人は、抵抗を呼びかけるラジオにあおられ、ナチス軍の物資輸送に使われる線路の信号所を爆破した。

しかし、二人が無人と思っていた信号所の小屋には、村人のフェリクス老人がいて、爆破によって重傷をおってしまう。

ショックを受ける二人だったが、さらにその夜のうち、事件の首謀者が名乗り出るまでの人質として、とらわれた村人4人の中に、当のジャックとアンドレが入れられてしまった。

24時間以内に首謀者が名乗り出なければ、見せしめに処刑する。

ナチス軍にそう宣告され、雨の中、村はずれの水浸しの穴の中に放り込まれるジャックたち。

覚悟を決めて、自分たち二人が犯人だと名乗り出ようとしても、他の村人二人にすら信用されずに、一緒に処刑を待つ身となってしまう。

しかし、穴の底の彼らを見下ろし、冷酷に運命を言い渡すナチス兵士たちの中に、もの言いたげに彼らを見つめる下級の中年ドイツ兵がいた。

他の兵士が軍靴の音高く立ち去る中、その男は一度振り向いて、メガネの奥の穏やかな目を彼らに向けた

ナチス兵たちの駐屯地に戻ると、脇にかかえたヘルメットにリンゴとパンを隠し入れるドイツ兵。

4人が飢えと寒さに震えていると、いつのまにか、穴の上に足を投げ出すようにして、その中年のドイツ兵が腰かけていた。

ふいに、きゅっと寄り目になり、舌を出したおどけ顔をするドイツ兵

馬鹿にされているのかと泥を投げつけてののしる4人。

慌てたドイツ兵が穴に落とした銃を彼に向けて「動くな、はしごを持ってこい!」と叫ぶが、考えてみると戻ってくるわけがない。

どうにもならずに黙り込む4人に向けて、ドイツ兵が手品のしぐさでパッと顔を覆ったハンカチをどかすと、その顔には、薄暗がりにもはっきりわかる真っ赤なピエロの丸い鼻がついていた。

そのままナチス軍を揶揄したおかしなしぐさで歩き回るドイツ兵に、死の恐怖も忘れて笑い出した4人。

穴の上で曲芸を見せていたドイツ兵の手から、やがてパンとリンゴが4人に向かって投げ渡された。

「生きている限り希望はある」

そう、うやうやしいフランス語で語りかけたドイツ兵。

昔、パリでピエロをやっていたというその男の名前はベルント。またの名をピエロのゾゾ。

また明日。そう4人を励まして、戻ろうとしたベルントをジャックが慌てて呼び止めた。

「ベルント、銃を!」

穴から銃が投げ渡された。

苦笑いして、銃を手にふざけ歩きで帰っていくベルント。

しかし、穴から離れてから振り向いたその顔には、重苦しい表情が浮かんでいた。

変な番兵だな。……天使かな。

リンゴをほおばりながら、つぶやくアンドレ。

油断するな、というもう一人の村人に、いいやつだよ、笑わせようとしてくれた、と首を横に振るジャック。

気を紛らわすことのできたジャックたちは、生きて戻れたら、好きな女にプロポーズをしよう、生まれ変わったら何になろうと、軽口を話して時間を過ごす。しかし、刻々と迫る死を前に、穴の底の空気は次第に重くなっていった。



一方、重傷を負ったフェリクス老人は、病室で、思いつめた目をして妻に声をかけた。

「ドイツ軍に言ってくれ、犯人は俺だと」

俺はもう助からない。ほかのみんなが助かるにはこれしかない。

そんなことを頼むなんて、私に恨みでもあるの!?と、涙する妻のマリーに、フェリクスは言った。

「お前には心から感謝しているよ。ひとつひとつお礼を言っている時間はないけど……」

頼む、そう、繰り返す夫に、マリーは、絶対に嫌よ!!と引きつった声で叫んだ。




「朝飯だよ」

少しだけ白んだ空を背に、ベルントが酒瓶を投げてきた。

冷え切った体で身を寄せ合って眠り込んでいた4人は、火のつくような酒をわけあって飲み、人心地つくとベルントに尋ねた。

「命令は?処刑するって?」

腰を下ろして彼らを見守っていたベルントから笑顔が消えた。

「……ルイーズに……」
自分たちの運命を悟ったジャックとアンドレは、そうつぶやいて酒を飲み交わした。

ベルントはカバンから掌に乗るような小さなアコーディオンを出し、他のドイツ兵たちに聞こえないように、そっとささやくような音と声で、フランスの歌を歌いだした。

心が弾む
こんにちは こんにちは ツバメたち
屋根の上に広がる空は 喜びに輝く
路地には太陽が降り注ぎ 心も明るく

ベルントを見上げる彼らの震える唇からも、かすかに同じ歌が漏れ始めた。

いつも僕の胸は ときめき揺れ動く
何かを連れてやってくるのは愛
それは愛 こんにちは こんにちは お嬢さん
世界は喜びに包まれている……

同じころ、司令部にいた銀髪のナチス軍少佐のもとに、二人の訪問者があった。

一人は、見せしめとして早急な処刑命令を要求する冷たい目をした若い大尉。
その必要があるのかと難色を示す上官に、そのような甘い態度には承服しかねます、と、冷笑を浮かべて部屋を出て行ってしまう。

入れ違いに入ってきたのは、フェリクスの妻、マリー。
「爆破の犯人は夫です」
夫の意思でここに来ました。夫は嘘などつきません。
その声は震えていたが、涙の光る瞳は覚悟に大きく見開かれていた。

すこし酔って、ベルントと言葉遊びをしていた4人。
そのやりとりは、大尉たちの足音に断ち切られた。

命令を受け、穴を取り囲むと、銃を構えるナチス兵たち。
最後の時がきた、と、互いに抱き合うジャックとアンドレ。
しかし、ベルントが、銃を構えず、だらりと両手をさげたまま、彼らを見ていた。

「命令だぞ、銃を構えろ!!」
大尉の言葉に、ゆっくりと銃を向けたベルント。
その目に映る、つい先ほどまで一緒に笑って話していた4人。
ベルントは黙って銃を地面に落とした。
そして、カバンから何かを取り出すと、それを鼻にあて、大尉をまっすぐに見つめた。
ピエロの赤い鼻。
大尉がベルントの眉間に拳銃を向けた。
「やめろぉぉぉ!!!」
ジャックの絶叫に銃声が重なった。
その直後、フェリクス老人の自白を受け、処刑を中止する知らせが大尉に届いた。

穴の周囲から立ち去るドイツ兵たち。
何が起こったのかわからない。ただ、ひとつ確かなことがある。
白い泥に長く筋を残して流れたベルントの血。
その先に転がり落ちていたピエロの赤い鼻を、ジャックの震える手が拾い上げた。

「証言は真実だと?」
おそらくそうではないと気づきながら、銀髪のナチス軍少佐はマリーに問いかけた。
「はい」
「すべて覚悟の上で?」
一度息をのみ、それでもマリーはうなずいた。

病室で、両手を組み合わせて天井を見つめていたフェリクス。
数人のナチス兵が乱暴に入ってくると、傷だらけの彼を椅子に乗せて運び出した。
「これでいいんだマリー、もう何も心配はない」
夫の連行を見ていた妻に、そう静かに声をかけると、フェリクスは病院の庭へと連れていかれた。
開け放たれた窓から響く処刑の銃声。マリーが震える唇にハンカチを押し当て悲鳴を呑みこんだ。


後日、ルイーズの口から、何故自分たちが解放されたのかを教えられたジャックとアンドレ。
「俺たちは彼の人生を奪った……」
言葉を失う二人。
そしてこの事件をきっかけに亡くなったのはフェリクスだけではない。


翌朝、穴の側に戻ってきた二人。
しかし、ベルントの埋葬された場所を見つけることはできなかった。
解放された日、自分たちに向かって降ろされたロープのすぐ側についていたベルントの血の跡も、すでに黒ずんで消えかけていた。

彼の名前しか知らない。
ベルント。
ゾゾ。
しゃがみこんだジャックは、小石を拾って不器用にお手玉の真似をした。

この日、ジャックは生涯ピエロを演じることを決めた。
ユーモアと人間味に溢れた男を称えて。



フランスが終戦に湧く中、重い足取りで、マリーの家に向かう二人。

真実を告げられたマリーの態度は、思いのほか静かで毅然としていた。

「夫は勇気ある行動をした。それだけが真実」

それは忘れないで。

マリーは二人にきっぱりと言った。



その後、ジャックはアンドレの橋渡しでルイーズにプロポーズをし、結婚をした。



「私にはわかっていたんだ。君のママは、僕より君のパパが好きだったと」
アンドレはジャックの息子、リュシアンの肩を抱き、そう物語をしめくくった。

とうにふてくされ顔は消えたリュシアンの頬に、涙がつたっていた。

アンドレにうながされ、ジャックのショーのフィナーレに戻るリュシアン。

喝采の中、アンドレとともにショーを見つめるリュシアンも大きな声を上げた。
「ブラボー!!パパ!!」

今はジャックの妻となったルイーズの隣にマリーもいた。

カーテンコールに現れたジャックは、小さなアコーディオンを取り出し、歌い始めた。

心が弾む
こんにちは こんにちは ツバメたち
屋根の上に広がる空は 喜びに輝く……。

今は誰を恐れるでもなく高らかに歌えるこの歌。

明るく合唱をする観客たちの中で、アンドレとリュシアンは、ジャックがこの歌を歌う意味に思いをはせながら、舞台を見つめていた。

(完)

のどかな村で、恋と友情に生きていた二人の男。
戦争の中にあっても明るさのあった日々。

しかし、二人が深く考えずにとった行動をきっかけとして、彼らを救うために、ベルントとフェリクスというこの上なく優しい人たちが命を落としました。
戦火のただ中でなくても、戦争がいかに無意味にあっけなく人の命を奪うかが伝わる話です。

一方で、そのようなすさんだ世の中であっても、最後まで優しさを失わなかったベルントとフェリクス。
「天使かな」とアンドレはつぶやきますが、私は、もし天使という存在があるとすれば、まさにベルントのように、決して人をねじふせる力があるわけではない、人生の苦労や理不尽を知り抜いて、少し老いた優しい目をしているのではないかと思います。

自分の身に何が起こるかわかっていながら、それでも、彼らを撃つことを拒否したベルント。
赤い鼻をつけた彼の表情は、静かで優しく、そして誇り高さを感じさせます。

一方、悪気はなかったとはいえ、ベルントとフェリクスの死に関わってしまったジャックとアンドレ。

ジャックはベルントが生きていれば続けたであろうピエロの道を生きることを決め、アンドレはおそらくルイーズをジャックに譲ることを償いの一つとしたのでしょう。
(実はルイーズはむしろ最初はアンドレのほうが好きだったのではと思わせる二人きりのやりとりがあり、結末部でリュシアンとアンドレを見つめるルイーズの表情にも、どことなく含みがあります。)

痛みや悔いを秘め、それでも生き残った者として歩みを続けるそれぞれの人生がそこにあります。

最後に、構成について触れさせていただきます。

残念ながらこの映画があまり有名でないのは、物語のほとんどが、雨にぬかるんだ暗い穴の中と外のやりとりという地味なものだからかもしれません。

しかし、実はこれは意図的に色彩を絞った構成なのだと思います。

暗い穴の底という、まさしく絶望的な状況に突き落とされた4人の男。
そこにかすかに光のこもった空を背負って現れたベルント。

4人を励まそうとおどけるベルントのピエロの赤い鼻、そして彼らに投げられたリンゴの赤が、ほとんど青灰色に占められた画面の中で、彼のいたわりに溢れた優しさそのもののように際立ちます。
そして4人の代わりに撃たれたベルントの血は穴の中に流れ落ち、その赤が、彼らが生きて外へ出ていく道筋を示しました。

ピエロの赤い鼻を受け継いだジャックは、平和が訪れた村で、今は画面いっぱいに広がる、温かな赤のカーテンを背に、ベルントが自分たちのために歌ってくれた歌を歌います。

色彩を丁寧に抑制することで、最後には人の心の温かさがせつなく胸に残る、非常にすぐれた作品です。

是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうごじました。
posted by Palum at 06:40| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月13日

イギリスの日射病


※ただいま(2016年8月13日深夜)Seesaaブログサイト全体が文字化けしている模様です。(PC表示のみ)
我がツールのみウィルスにやられたのかとびびりましたが、他のサイトは見られるし、どうもSeesaaユーザー皆さんに起きている状況みたいです。(知恵袋「seesaaブログだけが文字化けしています。自分のと他人のブログもです。」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12162872372

ちょっと安心した。こういうときネットはありがたいですねー。こちらの皆さま同様、とりあえず待ってみます。

さて、今回は夏のイギリスの注意点について書かせていただきます。

私は人生で二度日射病にやられたことがありますが、それはいずれもイギリス滞在時でした。

昨今、日射病という言葉が既に熱中症という言葉にとって代わられつつありますが、これがそのときの私にとっては大きな落とし穴だったのです。

そもそも「日射病」と「熱中症」がどう違うかについてですが、情報を非常に大まかにまとめさせていただくと、
日射病……直射日光が原因で起こる。
熱中病……日光の有無にかかわらず、高温が原因で起こる
(ちなみに「熱射病」は熱中症の症状の一つで、汗が止まり、高熱、意識障害等が起こる危険な状態をさすそうです。)

なので、直射日光のささない室内でも、高温なら熱中症に起こる可能性は十分にあり、屋内外にいる人全般に注意を呼びかけるために、「熱中症」の使用が一般的になったのでしょう。

しかし、私は、このために「熱中症は暑いところでナルモンダ」と思い込んで、直射日光の危険性を忘れていたのです……。

イギリスの夏は湿度が低く、原則そこまで暑くなりません。

(具体的に言うと、最高気温が30度を超えることがめったにないケンブリッジでは、「年に何日も必要ないから」という理由で、一般家庭の知人の誰一人クーラーはおろか扇風機すら持っていない。〈日本人のアコガレ、イギリスダイソン社の羽の無いスタイリッシュな高級扇風機〈価格5万数千円程度〉についても、私からご説明したくらいで。〉)
※ただし温暖化の影響か、年々気温は上昇しています。

ダイソン 【扇風機】空気清浄機能付ファン(ホワイト/シルバー)Dyson Pure Cool Link タワーファン TP02WS -
ダイソン 【扇風機】空気清浄機能付ファン(ホワイト/シルバー)Dyson Pure Cool Link タワーファン TP02WS -

第一回日射病は、そんな中、知人と郊外に3時間ばかりウォーキングに行った日に起こりました。

その日も気温はおそらく30度以下、晴天、ちょっと暑いかなくらいだったのですが、風は涼しく、ウォーキング自体は楽しかったのです。

しかし、ホームステイ先に戻った私は、とたんに妙な疲労感に襲われました。

やがて、かなりの寒気、軽い頭痛とめまい。

「あーこりゃ風邪かな、疲れたまってたし」

まずはこの寒気をなんとかしようとホッカイロを枕元に準備した後、今日は具合が悪くて夕飯食べられません、と、お伝えするためにホストマザーのところに行きました。

(以下、そのときの症状に該当する伝えるフレーズを引用させていただきました。)
I have a slight fever.(少し熱があります。)
I feel chilly.(寒気がします。)
I have a headache.(頭が痛いです。)
I feel dizzy.(めまいがします。)
I have a heavy feeling in my stomach.(胃がもたれます)

参照
「English Cafe plus」HP「風邪の症状を説明するときに使える英語表現」
http://ecafeplus.com/study-english/expressions/c_symptoms/
「ナイス!な英語」HP「医療英語」
http://www.nice2.info/medical/medical4.html

そして「I guess I got a cold(風邪をひいたのかもしれません)」と部屋に戻ってホッカイロペタペタ貼りまくって寝ようとしていた私に、ホストマザーが「それは日射病(sunstroke)なんじゃない?」とおっしゃいました。

「日射病=暑いところでなるもの」と思っていた私はきょとんとしてしまいました(同行の知人はけろりとしていましたし)が、ホストマザーいわく、
「帽子をかぶらないで出たでしょ。黒髪の人は頭に日光の熱が集まるからよけい日射病になりやすいのよ。体を冷やして、水分をたくさん飲んで横になりなさい。つらかったらすぐに言うのよ」

「黒髪の人は……」のくだりに妙に説得力を感じ(けろりとしていた知人は淡い髪色だったし、そういや皮膚はどってことないけど髪と頭皮だけは熱くなっていた。)、ホッカイロのかわりに熱冷まシートを脇や首の後ろやオデコや背筋に貼りまくって寝たら、3時間ほどは暑寒いのが続きましたが、翌日には治りました。

なんで思い切り風邪の症状しかお伝えしなかったのに、マザーが日射病と見抜いたのかは謎ですが、指摘していただかなかったら、熱さまシートじゃなくホッカイロを貼りまくって寝酒のひとつも飲んでいた(日射病ならやっちゃダメのダブルパンチ)自分はどうなっていたのかと思うと、ちょっと怖くなります。

気温が高くなくても、イギリスでも、夏の日光は夏の日光、きちんとカンカンに照り、油断していた日本人の頭に3時間熱と紫外線を染み渡らせていたのだと痛烈に思い知りました。

これは日本では起こらなかったことだと思います。

自慢じゃありませんが、根性ナシなんで(本当に自慢にならない)、暑ければさっさと涼むから、3時間も外にいない。

いやあ、気を付けよう……と思っていたのに別の外出時、再度倒れることに。(恥)

海辺を散歩していたとき(やはり別に暑くはない。むしろ上着を羽織って出たくらいの日)、うっかりまたしても帽子をかぶりそこねてしまい、でも、あんなに長時間歩かないから平気だよな、と、思っていたら、急に頭がくらくらして、目の前の海と砂浜が紫色に染まり、一緒に歩いていたマザーに、「す、すみません、ちょっと座っていいですか……」とテトラポットにへたりこみ、それでも足りずに上着を枕に横になってしまいました。
(ちょうど砂浜だから寝そべってもあんまり目立たなかったのがせめてもの救い。)

マザーもこの日光を浴びているんだから、急いで屋根のある所まで移動しないと申し訳ない、と焦りつつも、めまいはおさまらず、郊外の銀色に輝く穏やかな海とヨットと、楽し気に波にたわむれる人々、こんないい景色の中、なんで視界がちょっと紫色になって倒れているんだ……とじりじりしながら、3分ほどで執念で立ち上がって、無理やり笑顔で、歩数を数えるようにして屋内に戻りました。

「長い時間歩かなかったのに……」と、ソファにねそべり無念をつぶやく私に、ホストファーザーは、
「海辺はさえぎるものがないし、直射日光以外に、水面に反射した光も当たるからね」
ととても冷静に分析してくださいました。

(誤解を招くので、ご本人には言えないのですが、レイバンのサングラスの似合う、「刑事コロンボ」の知的な犯人のような味のある風貌をしていらっしゃり〈中でもコロンボ作品の常連、ロバート・カルプ〈「指輪の爪痕」等に出演、パッと見同じ人と思えないほどの演じ分けが見事〉に顔立ちというより雰囲気が似ている〉、おバカな預かり者を叱るでも心配しすぎるでもなく、ただ、原因を解明した上でわかりやすく教えてくださった。)

ちなみにやはり時間が短かったせいか、治るのには前回ほど時間はかからなかったです。

そんなわけなので、夏にイギリスで外出する方は、暑くなくても、日光激LOVEなイギリスの(特に淡い色の髪の)人々が、ごく開放的な服装で日差しを満喫していても、帽子をかぶって歩くことを強くお勧めします。特に旅行時は時差ぼけなど別の疲労がたまっているので、結構簡単にこの症状になってしまいます。くれぐれもご注意ください。

読んでくださってありがとうございました。







posted by Palum at 05:33| イギリスの暮らし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月12日

自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


先日、ウミガメ型カメラで捕えたイルカがフグ毒を好き好んで摂取している映像について書かせていただいたのですが、本日は、こうした映像をイギリスの自然番組スタッフたちがどのようにして撮影しているか、その一端についてさらにご紹介したいと思います。

カメラにおさめられた自然もすごいけど、おさめる人々もまたすんげいのです。


1、Spy‐Cam(カムフラージュした小型カメラ)で撮る

「ソックリウミガメラ(そんな名前じゃない)」同様、動物たちの生活圏にあって、特に構われない存在(岩、雪の塊、魚など)の形をしたカメラを作り、それで、ごく自然な姿をとる、という形式。

Spy‐camの紹介と、ディレクター兼プロデューサーのJohn Downer氏のインタビューが見られる動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=PbDn8LGbYM4

カメラによっては遠隔操作が可能なので、そばに寄っていくことも可能。

ウミガメラは昨今の技術で、ぱっと見わからないほどよくできており、シワもリアルな首をきょろきょろと動かして、近くで細やかな映像を撮ることに成功しています。

ウミガメラがイルカの群れに寄っていったとき、目と鼻の先で泳ぐイルカたちの「あ、カメさん、こんにちは」的穏やかなチラ見などもおさめていました。



https://www.youtube.com/watch?v=80BXZfuevkE

また、なんかちょっとフシギと思われたのか、ホッキョクグマが雪の塊型カメラに寄ってきて、レンズ付近を目いっぱいふぐふぐ嗅いでいる鼻まみれ映像も。
(わが身なら死を覚悟するでしょうが、安全圏で見るとかわいいわ……。)

しかし、別番組で、鳥たちのコロニーに卵型のカメラを置いておいたところ、別の鳥にさらわれてしまい、舞い上がる鳥の脚視点から、広大なコロニーの全景を撮るという、まさかのハプニング映像がとれてしまうことも。

また、その小型カメラを模型ではなくまんま鳥につけてもらい、美しい飛行風景を撮影するケースもありました。

Spy‐camについて詳しくまとめてくださっているページはコチラです。
「BBC野生動物ドキュメンタリーの美麗映像はどうやって撮られているのか?(GIGAZIN)」
http://gigazine.net/news/20140821-bbc-wildlife-filming/


2、人が近寄って撮る

シンプル、しかし常に危険と隣り合わせの方法です。

それでも、カメラにおさめたい瞬間はそう何度もめぐってこないので、ときに気の遠くなるほど繰り返し機を待った専門のカメラマンたちは、ここだと思った瞬間には、一気に飛び込んでいきます。

私が度肝を抜かれたのは「BBC EARTH グレートネイチャー(原題:Nature’s great event)」の撮影風景(DVD/ブルーレイでは、最後に10分程度メイキング映像がでてきます)

BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -
BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -

このシリーズで、偉大なる自然番組プロデューサーにしてナレーターでもあるデイビッド・アッテンボロー氏(ここではナレーターのみ担当)を知り、そしてイギリスの自然番組の凄まじさを知りました。
(当ブログでアッテンボローさんについて書かせていただいた記事〈「デヴィッド・アッテンボローさんのサイン会」〉がありますのでよろしければ併せてお読みください。素晴らしい方です。)

どれも驚異的なのですが、光景としても撮影の苦労としても圧巻だったのは「世界最大の魚群」の回。
南アフリカで、潮流の影響によって発生する、5億匹のイワシの大移動(サーディン・ラン)、そしてそれを追う生き物たちの息をのむ捕食風景を撮影しています。

イワシたちが生き残りをかけて形作る球形群(bait ball)を狙うのは、イルカ、サメ、カツオドリ、クジラ。

自ら超音波を発し、探知する能力を持つイルカたちが、イワシの群れを見つけて、互いに情報を伝達しながら集団で移動、その姿を上空から見つけたカツオドリたちが後を追います。
時を同じくして集結するサメやクジラ。

イワシが散ってしまう前に、それぞれが銀色の群れに向かって一斉に突撃します。

数頭隊列を組んで横一列に飛び込み、イワシの群れを乱して捕えるイルカたち。
縦横無尽に泳ぎ回るサメ。口を開けて群れをすくいとるクジラ。

特に目を奪われるのはカツオ鳥たちの攻撃です。

上空で様子をうかがっていた鳥たちは、ひとたびふわりと身をひるがえすと、鋭いくちばしを水面に向け、両翼を閉じて全身を細く細く縮め、海へと突っ込んでいきます。

まるで、数百の剣が海中に撃ち込まれるような勢いと鋭さで。



https://www.youtube.com/watch?v=1Cp1n_vPvYY

この、鳥にとっても危険なダイブ(加減や角度を間違えると首の骨を折る)で潜れるのはせいぜい10メートル、しかし、優れた潜水技術を持つ個体は、そこからさらに翼で強く水をかき、深く潜ってイワシを追います。

この水中の鳥の群れのすぐそばをサメたちも泳いでいるのですが、互いにイワシしか目に入っておらず、鳥が襲われることはないようです。

こうして、銀色の花吹雪のようなイワシの群れの中、白く羽をひろげたカツオドリ、サメ、イルカがそれぞれに水泡をまとい鋭く乱舞する、驚くべき光景が繰り広げられます。



https://www.youtube.com/watch?v=DHeZrLnY3Dk


……で、その渦中にカメラマンが混じって撮るわけです。

メイキングによると、そもそも、このサーディン・ランを見つけるのに大変な苦労があり、海に入って様子をうかがっていたカメラマン氏が、サメに遭遇して慌ててボートにあがるという一幕がありました。
(イワシがいなければ人間も標的になってしまう。)

「危なかったな……」という風に声をかける他のスタッフに向かって、カメラマン氏は「(ダイビング用の)ヒレを少し噛まれた。蹴って追い払ったけど」と恐ろしい報告をしています。
(撮影に使用しているのは数人乗りの小型ゴムボートで、あんなにサメがいる地域にあんなので行く時点でイヤダ。)

それでもひるまないクルーたちは、上空からセスナで偵察していた撮影班から、「千頭近いサメが集結している、きっとサーディン・ランだ」という情報を得ると全速力でそこへ向かい(「全速力で逃げ」ではない)、カメラマン氏は、サメとイルカがぶつかりあうようにしてひしめき、カツオドリ魚雷ナイフがひゅっひゅっと鋭い音を立てて突き刺さる海に「今だ!!」と飛び込んでいます。もはや人間の防衛本能を超越している。

こうして撮影されたのが、かの銀色の花吹雪の中の捕食者たちの映像です。

そして確かに原則サメはイワシ以外は狙わないのですが、この状況で冷静なはずもなく、牙を剥いたまま、カメラマン氏の方へも繰り返し突っ込んできていました。

しかし、カメラマン氏は、おそらくは武士の気配を殺す技術のような絶妙な距離感で、サメを逆なでせず、しかしカメラは手放さずに、身をひるがえし、ときにそっと手や足やカメラでサメの方向を変えて撮影を続けていました。

サメってそっとなら蹴っていいんだ……。

いや、常人がやったなら、その足をもってかれるでしょうけれど、この人たちはおそらく繰り返し死線を乗り越えた果てに、野生動物の攻撃性を刺激しない間合いを身に着けているのでしょう。

驚異の撮影風景(一部)はコチラ。



https://www.youtube.com/watch?v=AGKa8wlXvhk

(日本でこういう番組を放送してくださる方々〈NHKやWOWWOW等〉が万が一この記事をご覧になってくださったらお伝えしたいのですが、アッテンボローさんたちの美しくて聞き取りやすい英語ナレーションと、こういう撮影秘話は絶対に削らないでいただきたいです……)

また同シリーズ「大いなる海の宴」では、アラスカが舞台となっています。

壮絶な冬を超えて生き延びているわりに無邪気なところがあるアシカたちが、カメラマン氏の水中撮影に「アラマフシギフシギ、ナニコレダレコレ」とカメラやカメラマン氏本人にコンコン鼻を近づけているというほほえましい映像がある一方、サーディン・ラン同様の魚群(今回はニシン)捕食の際、鳥たちに上空と海中から襲われ、一か所においつめられて水面スレスレでびちびちのたうっている魚群を水中撮影していたカメラマンの目と鼻の先をかすめ、水面そのものが割れ、波間に山の立ち上がるように、体長十数メートルのザトウクジラがぱっくりと大口をあけて突っ込んでいく瞬間がありました。(HPの解説によれば、「Within a feet」なのでその巨大口とカメラマン氏は約30pしか離れていなかった。)



https://www.youtube.com/watch?v=quwebVjAEJA

人なら呑みこんでも多分吐き出してくれるだろうと言ったって、そのとき無傷でいられる保証はどこにもなく(そもそも吐き出してくれる保証からしてない)まさしく命がけの映像でした。

(ザトウクジラが海面に姿を現した際、魚群近くでカメラマンを見守っていたボートから叫び声が上がっていた。)

「怖かった……」
そう言いながら上がってきたカメラマン氏、しかし、その顔は、前代未聞の映像をものにし、その目に焼き付けた達成感に紅潮していました。

スタッフたちの撮影風景ダイジェスト版動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=qPS3mP3fIQs

壮大で厳しい自然の驚異、スタッフたちの度胸と執念、美しい音楽にアッテンボロー氏の重厚かつ熱のこもったナレーション、どれをとっても素晴らしい作品なので、是非ご覧になってみてください。

各回エピソード紹介や動画を含む「Nature's Great Event」のHPはコチラです。
(動画集はコチラ)

当ブログの海の生物にまつわる記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum at 05:01| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月11日

「哀蚊(あわれが)」(太宰治短編ご紹介3)


本日は、太宰治のごく短い作品についてご紹介させていただきます。
(ネタバレですのでご了承ください。)

「哀蚊」(あわれが)

太宰治初期の作品「葉」の一部に「自分が過去に書いた作品」として含まれている掌編小説です。(小説集『晩年(1936年発行)』に収録)

晩年 (新潮文庫) -
晩年 (新潮文庫) -

太宰治本人を思わせる「私」の言によるとこの「哀蚊」を書いたのは、自身が19才のとき。(※1)

「それはよい作品であった。(中略)自身の生涯の渾沌を解くだいじな鍵となった。形式には、「雛(※2)」の影響が認められた。けれども心は、彼のものであった。」
と、自ら思い入れを語っている作品です。

(※1)戦前は年齢を数え年で言うのが一般的だったので、おそらく現在で言えば18歳。
(※2)芥川龍之介の短編。太宰は芥川の熱烈なファンだった。

「秋まで生き残されている蚊を哀蚊と言うのじゃ。蚊燻し(かいぶし※蚊取り線香)は焚かぬもの。不憫ゆえにな。」

そう語る、東北の富裕な一族に生きた、若き日の絶世の美貌を色濃く残す老女。

死に顔すら夏木立の影も映らんばかりに透き通り、しかし、その肌を誰にも触れられぬまま死んだ、その無念をひっそりと描いた作品です。



「おかしな幽霊を見たことがございます」

物語は本家の娘のそんな語りからはじまります。

本家の娘「私」は、幼いころ、同じ屋敷に住む、美しい「婆様」に可愛がられて育ちました。

「わしという万年白歯(※)を餌にして、この百万の身代ができたのじゃぞえ」
それが婆様の口癖。財産を分けずに済むよう、一族が結婚を禁じたのでしょう。

(※)未婚の意、昔、既婚女性は鉄漿(おはぐろ)で歯を黒く染めたため。

家の繁栄の犠牲となった美しい老女は、実の孫ではない「私」への秋の寝物語として、生き残った哀蚊の不憫を語って聞かせます。
「なんの哀蚊はわしじゃぞな。はかない……。」
幼い「私」を抱きしめ、その両足を自分の脚の間にはさんだまま、老女はそうつぶやきました。

そしてこの美しい「お婆様」を誰よりも慕っていた「私」は、ある晩、幽霊を見たのです。

やはり秋、「私」の姉の祝言の晩。騒々しかった宴会も静まった頃。
目をさますと、「私」に添い寝していたはずの「婆様」が居ず、厠に行こうと一人こわごわ部屋を出た娘の目の先に、見えたもの。

青蚊帳にうつした幻燈のようにぼんやりと、しかし確かに夢ではなく。
暗く長い廊下の片隅、新婚の二人の寝室の前に、白くしょんぼりとうずくまり、中をうかがう小さな幽霊。

「幽霊。いえいえ、夢ではございませぬ。」

(完)

確かに「」に一部似たところがあります(※没落した名家の父が、手放すことになったひな人形を飾り、夜中に独りそれを眺める姿を、娘が見つけるという内容。作品が娘の回想として語られる点、夜中、娘が家族と家の悲哀を思いがけず目撃するという部分が共通している。)しかし、こと凄味という点ではそれを上回っています。

幼い「私」を抱きしめることで独寝のわびしさを紛らわせ、自分は迎えることを許されなかった初夜を垣間見ようとする「婆様」。

太宰は実家が非常に裕福ながら、その実かなり内外に重苦しい業を重ねて財を蓄えたというのは、しばしば作品の中で語られているところです。

太宰の実家である津島家、あるいは近隣の似たような裕福な家でも、この「婆様」のように、家の財を保つために、結婚を禁じられて、大きな冷たい屋敷から出ることを許されず、本家の人間の面倒を見、彼らだけに許された婚姻を、寂しさと羨望を押し殺して眺めながら、老いて死んだ女性たちがいたのかもしれません。

(なお、作中では、同じ夜、「私」の父が祝いの席に呼んだ芸者と関係を持っていることをほのめかす場面もあり、婆様に孤独を強制しながら、淫蕩に走る本家の男たちのエゴが浮かびあがる構成になっています。)

そういう現実を念頭にしているせいなのか、「葉」自体の、いかにも太宰作品らしい、まだ若いのに人生が苦しくて仕方がないといった口調や、心が疲弊しきって現実と幻影の区別があまりつかない茫洋とした灰色の世界観の中で、この「哀蚊」の廊下の暗さや、美しい老女の肌の不幸な輝き、空気の冷たさはリアルで異彩を放っています。

もし本当に未成年のうちにこの作品をものにしたのなら、まさにおそるべき才能です。

ご存知のとおり、太宰はこれ以後も数々の傑作をものにしていきますが、これはこれで、短いながら、既にこれ以上足し引きできない完成されたものを感じさせる。

(ただ、まだ若いうちに、圧倒的富裕の裏返しとして、身近にこのような不幸とエゴを感じていたのなら、それは確かに苦しいことだったでしょう。)

これを読んで以来、この薄幸の「婆様」と、「あわれが」という言葉の響きも相まって、秋の蚊には「もう死んでしまう、しかし、いつどう死ぬのか、なんのために生まれてきて死んでしまうのか自分でも知らない、はかない、さびしい、ちいさな命」というイメージがつき、しんみりしそうになります。

(「しそうになる」だけで、しないけど。現実の秋の蚊は体が大きいし、いつ死ぬのかわからないせいか、羽音も殺気だって、どこだろうとお構いなしに刺しまくるから、ある意味夏の蚊より速やかに葬り去らないとひどい目に遭う。)

蚊の季節から秋にかけて、先日ご紹介した椎名誠さんの蚊の話(「わしらはあやしい探検隊」より)と真逆の才能として、いつも対で思い出す作品です。

ネット上の「青空文庫」でも閲覧することもできるので、よろしければご覧になってみてください。

当ブログ太宰治関連記事は以下の通りです。併せてお読みいただければ幸いです。
「黄金風景」(太宰治短編ご紹介1)
「花吹雪」(太宰治短編ご紹介2)
「哀蚊(あわれが)」(太宰治短編ご紹介3)

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 05:00| 太宰治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

(「100日間リベンジ」再び)2週目まとめ ダイエット、減酒、減無駄ネットの経過ご報告


※今回はただの日記です。

100日間色々生活習慣の改善をするというチャレンジをしていますが、その第二週目の経過報告をさせていただきます。

今回のチャレンジに至るまでの経緯(かいつまんでお伝えすれば「挫折しかしてこなかった」です〈汗〉)と第一週目の経過報告はコチラです。


第一週目最大の収穫は「無駄ネット閲覧時間削減に伴い、ブログを毎日更新できた」で、これは今も継続中です。

以下、今週の変化です。

1、ダイエットについて
さしあたりの目標は、2年前に一気に増えてしまった10kgをもとに戻すことです。
んが(鼻濁音)、先週から200g増えました。ぐぬぬ……(悔)。

100日間チャレンジ開始時から週4日ウォーキングをしていたのですが、一向に減らない……のは、今週半ばに暴飲暴食をしてしまったのと、新習慣を定着させようと粘ってもイマイチうまく時間を使えてないので、結果睡眠時間が減っているためかと思われます。
(寝不足だとむくむし食欲増だし脂肪燃焼効果が下がるんだとか。ていうか実際わが身が痩せないや〈汗〉)

また、週4ウォーキングだと必要な用事や英語の勉強まで後回しになることがあるので、今週は週3に減らしてみます。
(早くも自分に甘いかな……来週体重増えてたらもとに戻してなんとかやりくりします。〈汗〉)

代わりに、磨き掃除時間を増やす予定です。

掃除の消費カロリーはあなどれないとのことで、コチラのサイトによると、体重50kgの人が「床磨き:手や膝をついて、浴室や浴槽磨き、ほどほどの労力」を60分やると約183kcal消費(コンビニのツナマヨおにぎり一個分くらい〈カロリー参照:生活情報サイト ミュンティ「コンビニコーナー」ページ〉)。

ジョギング30分(157kcal)を上回るそうなので、「部屋がきれいになる+天気を気にしないでいい+ウエアに着替えなくてもいい」という長所を考えるとなかなか効率的です。
(このサイト、エクササイズだけでなく家事等の細かい動作のカロリーも計測できるのでとても便利です。)
(「かんたん消費カロリー計算」トップページ)http://hbb.amary-amary.com/


2、飲酒について

上述週半ばのやらかしに深く反省してから、無事減酒継続中です。
その晩蚊に刺されまくったのですが、酔うと、実際普段以上に蚊を引き寄せるそうです(※)。今はこういうマイナス情報も積極的に集めて、モチベーションの足しにしています。
(参照:「面白ニュース秒刊SUNDAY」「酒を飲むと蚊に刺される確立が15%上昇することが判明」、出典「Dailymail」)

お酒代わりの炭酸水(わたなべ ぽんさん情報をいただいた)について、「クエン酸」と「重曹」(いずれも薬局で入手可)で自分で作れるという話を聞き、湯冷ましに適当にそれらをぶっこんで作っておいといたら、炭酸のほとんど感じられないヌルイバリウム(胃カメラの時に飲むアレ)みたいな、人を憂鬱にさせる味になり(重曹が多すぎたらしい)、別の意味で飲酒する気が失せました。

すごく懲りて、コチラのサイト(iemo)でちゃんと調べたところ、以下がポイントだとわかりました。

・冷やした水を使う(炭酸ガスが水に溶けやすくなる)
・保存には元々炭酸水が入っていたペットボトルを使い(強度が他の物と違う)、密閉できるかを事前に確認する。
(補足:重曹には塩分が含まれているので過剰摂取に注意、とのことです。)

両方のコツを見事に外して、まだヌルイ湯冷ましでベこべこの炭酸用じゃないペットボトルつかっちゃってました。そりゃ憂鬱なバリウムになるな。リベンジします。
(個人的には作ったら早めに飲んだほうがいいのかなとも思います。)

3、続、無駄ネット閲覧について

これはかなり減らせています。寝不足が積み重なってそれどころじゃなく寝ちゃってるだけかもですが……。

自分なりにネットを見たくなる瞬間について考えたところ、以下のどちらかだと気づきました。
「夜、まだやらなきゃいけないことがあるから寝たくないけど、着手するには疲れすぎていてめんどくさいので無意識に先のばそうとしているとき」
「ストレスがたまっているとき」

前者のみの場合、
「そこそこネットで気晴らししたら、よし!と、やらなきゃいけないことを始めた」
ということが100回に1回も無く、結局そのまま寝落ちパターンなので、自分がバクゼンとネットをいじりだしたら、「もうこれ以上はできないんだな」とあきらめ、最低限の作業(締め切りがあるものとか、すぐやらないと不潔になっちゃう家事とか)のみ済ませ、あとは「同じことならやらずにねる(※)」というのび太の至言を魂の待ち受けに、寝てしまうようにしました。(「ドラえもん」てんとうむしコミックス27巻より)

(※)「きりかえ式タイムスコープ」という、自分の選択した行動によってそれぞれどんな未来が訪れるかがわかるひみつ道具で、「朝宿題をやる」「寝る前に宿題をやる」のどちらが良いかをのぞき見たところ、
「(朝の場合)わあ、ひとつもやっていない。どうしよう!!」
「(寝る前の場合)わあ、机に向かっていねむりして朝になった!!」
と、叫んでいただけだったので、上記のセリフとともに寝てしまうのび太。

同じことならやらずにねる.png


見ていたドラえもんは素晴らしく味わいのあるあきれ顔ですが、結局布団の中で寝られるだけ前者のが心身楽でマシなのは事実だと大人になってから気づいた。
(むしろ大人になればなるほどのび太の言動に共感する。〈おい大丈夫か〉)

ただ、さすがに「わあ、ひとつもやっていない。どうしよう!!」は困るんで、「早起きしてやる」にしています。

寝る前に設定した起床時間を寝過ごしてしまうことはしょっちゅうですが(汗)、布団の中でゴシップネット見続けて、精神的にすさんで熟睡を阻むブルーライトを浴びてから寝るよりは、はるかに早起き成功率高くなりました。

でも、起きて直近の締め切り作業があるのは寝てる間もそわそわするし、目覚め楽しくないんで、寝る前にあともうひとがんばりできるようにはしたいですね……。

なお「やらなきゃいけないことがあるけどめんどくさい」と「ストレスがたまっている」のダブルパンチになった際、寝ようにもなんだか脳がカッカして寝つけない、となってしまい、ネット閲覧という負のスパイラルに陥ってしまうことがあるんですが、これは、ネットの代わりに「寝つきがよくなるCD」系を聴くに変えることで対応しています。
(ダウンロードもできるけど、それだとネット触っちゃって危険なんでCD派。〈どんだけネットローレライ状態なんだ。〉)

ただ、あまりにも疲れていると、気力判断力が低下し、CDプレイヤーに手も伸ばせないことがあるんで、ここをどう突破するかが早急に解決すべき課題です……。

以上、2週目のご報告でした。3週目は「睡眠時間の確保」と「体重の減少」がご報告できるように頑張ります。

読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum at 04:09| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

(ネタバレ編)七年目の浮気(マリリン・モンロー主演映画)

前回に引き続き、マリリン・モンローの代表作「七年目の浮気」をご紹介させていただきます。

妻子が避暑に出かけて単身都会に取り残された生真面目な夫リチャードが、上の階に住み始めた美女への浮気心に七転八倒するというコメディです。
(※今回は、結末部までネタバレです)

美女が(半分エアコン目当てに)部屋に遊びに来た時、出来心でキスを迫ったものの、かろうじて正気に返れたリチャード。

このままではマズい、と妻を追って避暑地に行くため休暇を願い出ますが、同じく避暑に出ている女房の不在を命一杯満喫している上司は理解を示してくれず、情緒不安定になったリチャードは、駆け出しの女優でもある美女が、生放送CM中に昨日のことを視聴者に吹聴したらどうしよう(しないしない)等とのたうちまわります。

その(存在しない)映像を妻が見ているのではと、おそるおそる避暑地に電話したリチャードは、電話を受けたベビーシッターから「妻ヘレンが知人のトムや他の人々と同じ干し草を積んだ馬車でドライブに出かけたと」聞き一安心。

ところがいけすかないトムがメンバーに加わっているということを拡大解釈しはじめ、しまいには、ヘレンがトムと干し草の上で情熱的な抱擁を交わす場面を想像してしまいます。(「他の人々」はいずこに。)

「上等だ、そっちがその気なら!(←???)」と怒りにかられたリチャードは美女を映画に誘い出します。

一方、美女は、夏の間だけ避暑に出かけた上の階の住人の留守番を引き受けたものの、エアコンのないその部屋にほとほと困っており、喜んで誘いについてきます。

(マリリン モンローの代名詞ともいえる白いドレスのスカートが舞い上がるシーンはこの帰路の一コマです。)



部屋に戻ろうとした美女を、少し涼んでいかない?と自宅に呼び(エアコン最強)、いいムードに持ち込もうとするリチャード。

しかし美女は聞いちゃあおらず、上の階は暑すぎるから、今晩はここに泊めてほしいと頼み込んできます。

翌朝、結局ソファーに寝ているリチャード。

リチャードが明け渡したベッドでスヤスヤ寝ている美女に朝ご飯を作ってあげようとしますが、こんなところを妻に見られたら大変だ、と思ったのをきっかけに、また例の妄想癖が頭をもたげ、なぜか急に避暑地から舞い戻ってきた妻に有無を言わさず銃で撃たれて息も絶え絶えという気分に陥ります。
(余談ですが、リチャードが使っている可愛らしい緑色のガラス製オレンジ絞り器〈ジューサー〉はおそらくファイヤーキング、今ではプレミアがついている人気ヴィンテージブランドです。)

一人でヨロヨロと末期のタバコを探している瀕死の(つもりの)リチャードに、「何をしているの?」と尋ねる美女(本当に何をしているんだ)。

我に返ったリチャードは、どうも自分は想像がたくましすぎるという欠点があって……と弁解しながら、実際のところは、妻は君を見たところで疑いもしないだろう、シャワーを浴びて出てきた君を見ても、配管工だと思うだろうね、と言います。

その場面の動画です。



こんな冴えない中年男を気に入る女がいるわけがない。だから疑わないし嫉妬なんかしない。

前にパーティーで女性にぶつかって服にキスマークをつけて帰ってきたときも、クランベリーソースのシミと勘違いしただけだった。

そう肩をすくめるリチャードに、それまでいつもふわふわと笑っていた美女がまじめな顔になりました。
「ひどいわ」

実際、美人は自分など素通りだから、と、苦笑するリチャードに対し、美女は「あなたは女性をみくびっているわ(You think every girl's a dope.)」(※dope=口語だと「まぬけ」の意味)、と、憤慨して、リチャードに言い聞かせます。

パーティーでよくいる、全身キザな恰好をした、女なんかすぐに落とせると思っている自信過剰な男、あんなのに女は落ちない。

(以下、セリフを引用、私なりに直訳させていただきましたので、動画と併せてご参照ください。(上記動画1:25秒頃より)

But there's another guy in the room, way over in the corner. Maybe he's kind of nervous and shy, perspiring a little.

でもその部屋に別の男性がいる、部屋の片隅に。緊張して恥ずかしがりやで、少し汗をかきながら。

First, you look past him, but then you sort of sense, he's gentle and kind and worried, and he'll be tender with you, nice and sweet. That's what's really exciting!

最初は彼のことを見過ごしてしまう。でも彼は穏やかで親切でシャイで、優しくしてくれる、いい人、素敵な人。そういう人にこそ、女はときめくの!

(手持ちのDVD字幕版では「He’s gentle……」以下が、「男の本当の優しさがわかるの、女が求めるのはこれよ」となっていて、素敵な訳だなあと思いました……)

私があなたの妻ならとてもとても嫉妬するわ。

そういうと彼女はリチャードによりそい、そっとキスをします。

そして、「あなたは最高よ(I think you're just elegant.)」と微笑みます。

うろたえながら「ありがとう」とつぶやくリチャード。

そこにドアベルが鳴り、入ってきたのは愛する妻ヘレンを奪おうとした(とリチャードが妄想した)トム。
(美女が、「あんなのには女は落ちない」と言ったそのままのキザ男の恰好。)

「いったん戻ってきたけれどすぐ避暑地に戻る。息子さんが家に忘れたカヌーのカイを持ってきてほしいそうだから預かっていくよ」と話すトム。

しかし、美女の言葉で奮い立っていたリチャードは、彼の言葉に2%程度しか耳を貸さずに、

カイは君になど託さない、自分で持っていく、妻とは離婚しないぞ!妻は私を愛してる!なぜなら私は穏やかで親切で優しいからだ!!

そう高らかに宣言してトムを殴り飛ばします。(トム、とんだ災難)

トムをつまみだすと、カイを手に避暑地へ向かおうとするリチャード。

美女に、この部屋は好きに使っていい。エアコンも、と言うと、美女は「奥様に伝言を」と彼を呼び止めます。

そして、もう一度彼にキス。

無言で唇についた口紅をぬぐおうとしたリチャードを、美女が優しくおしとどめ、こうささやきます。

「もし奥様がそれ(キスマーク)をクランベリーソースだと思ったら、彼女に『頭にサクランボの種が入っているのね』と言って(If she thinks that's cranberry sauce, tell her she's got cherry pits in her head.)」

(「tell her she's got cherry pits in her head」の字幕意訳としては、過去「『おばかさんね』と言って」というのがありました。コレが一番モンローの可愛いしゃべり方に合ってると思います。。)

有頂天になってカイを片手に靴下で飛び出していくリチャードに、窓から笑顔で靴を投げ渡す美女。

靴が脱げたり、荷物を散らばせたり、にぎやかに妻のもとへと飛んでいくリチャード。

(完)

女が本当に素敵だと思うのは、目立たなくてもとても優しい男の人。
あなたは最高よ。

こんな美しいひとに、あんな風にいわれたらもーたまんないっっ!と、シンプルにウットリもしますし、その甘くかわいらしいながらも、まじめで温かな情のこもった語りに胸を打たれつつ、それは波乱の日々と苦しい恋に生きたモンローの、心底からの思いだったのでは、そう言う人を探し続けていたのでは、という印象も抱く、かすかにせつなさの漂う名場面です。

モンロー演じる美女も、妄想たくましいけどなんか憎めないリチャードも魅力に溢れた、何度観ても笑えて愛すべき名作です。是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum at 00:00| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月08日

七年目の浮気(マリリン モンロー主演映画)


本日は夏にちなんだ映画をご紹介いたします。

「七年目の浮気」(1955年 アメリカ)

七年目の浮気(特別編) [DVD] -
七年目の浮気(特別編) [DVD] -

妻子を避暑に送り出して束の間の一人暮らしをはじめた中年男リチャード(トム・イーウェル)が、上の階に越してきた美女(マリリン・モンロー〈役名無し〉)への浮気心に振り回されるという物語です。

タイトルやあらすじからもっと生々しい修羅場な展開かと思いきや(当時としては相当スキャンダラスな作品だったそうですが)、リチャードが妻への愛と美女へのヨコシマな思いに右往左往する姿や、驚くばかりにたくましい妄想癖が笑えるコメディです。

既婚者とはいえ、このうろたえっぷりや、一人でどんどん思いこむ姿は、今となるとむしろ独身非モテ男子の愛嬌と悲哀を思わせます。
(リチャードが美女の無邪気な色気に動揺する姿が、Wエンジンの「惚れてまうやろー!!」っぽい)

そしてマリリン・モンロー!

「ブロンドグラマーで白いスカートがめくれている美女」というイメージしかなかったのですが、この映画で「可愛らしくてちょっと天然で、でもとても温かい」というキャラクターを見事に演じ切っています。

波乱の人生を送り謎の死を遂げた人で、実際この撮影中も野球界の大スター、ジョー・ディマジオとの離婚を経験、精神的にも非常に不安定だったそうですが、作品の中の彼女は、まさしく男の理想といってもいいほどに明るく魅力的でした。

【あらすじ】
ニューヨークでは、夏になると妻子は夫を置いて数週間避暑地に繰り出す。

その間、夫たちは蒸し暑いニューヨークで仕事に励むわけだが、駅で見送りをして踵をかえす男たちの顔は案外晴れやか。これからしばらくの間、独身気分であれこれアソブ気満々である。

そんな夫たちに一瞬まぎれこみそうになりながらも、踏みとどまり、「俺はああはならない(No, not me.)」と呟くリチャード。

美しいが少々彼をみくびっている妻と、憎まれ口真っ盛りの息子を持つ、出版社勤務の中年男。

妻の言いつけどおり、酒もタバコも断ち、菜食主義のレストランに通って清く正しく暮らすのだ……。

そう思いながら帰ってきたその日、彼は目の覚めるようなブロンド美女に出くわす。



リチャードの妻子と同じく避暑に出かけた上の階の住人に代わって、しばらくその部屋に住むことになったとのこと。

男なら100人中1億人が鼻の下を伸ばすような美女が天井を隔てて上に……。

絶好のチャンス、いや危機的状況にリチャードの心は激しく乱れるが、上の階から鉢植えが落ちてくるというハプニングをきっかけに、ついその美女を部屋に呼んでしまう……。

 【見どころ】

この作品、「夏」がストーリーを大きく左右しているところが面白いです。

本来、カタブツを心がけるリチャードは家族と波風の無い日々を送っていたはずですが、暑いから妻子が不在となった。

そして、2階の住人もいなくなり、入れ代わりに若い美女が一人で暮らすことになった。

さらに、いかにも遊び慣れていなさそうなリチャードが、ごく自然に美女と親しくなるのは、実は彼の家にクーラーがあるからです。すごく即物的な理由です。

(ちなみに有名な白いスカートがめくれるシーンも、暑いから喜んで地下鉄通過時に吹き出す排気口からの風を受けているという状況です。)

美女の住む部屋にはクーラーが無いのでリチャードはうちに涼みに来ない?と、言えてしまうし、美女も彼の家に長居する。

当然、美女としては部屋に行くことイコール「そういうことになっていいわよ」ではないのですが、彼女も相当天然無邪気な性格で、呼ばれたら露出度の高い服でニコニコ笑って来てしまい、とりあえず、「部屋に二人っきり……」という事態になるもんだから、リチャードは、これはイケルと思い込んでしまうわけです。
 
そういう雰囲気に持っていこうとロマンチックな音楽(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番)を準備して待ち構えるリチャード。

妄想の中では彼自身が(おそらく実際には持ってないであろうツヤツヤの赤いガウンを着て)それを自ら流麗に演奏し、セクシーなドレスの美女が、
「鳥肌が立つわ……この曲を聴くと自分が誰で何をしているのかもわからなくなるの……」と身もだえします。
(それにしても、モテに関して都合の良い妄想をたくましくしている人を見ると妙にいとしく思うのはなぜだろう。同朋愛だろうか。)



しかし現実はそうはうまくいかず、美女はラフマニノフ(レコード)そっちのけで、「チョップスティック(日本の「猫踏んじゃった」的な位置づけの曲の模様)」をリチャードと一緒に弾いて大喜びをしています。

それでも隣に美女が座って笑っているのを見て、村々してきたリチャードは、思わず美女にキスを迫ってしまい、ピアノの椅子から転げ落ちて正気に返ります。
 
反省しきりのリチャード、しかし、美女はこんな事態には慣れっこで、さほど怒りません。

むしろ、平謝りして、彼女を部屋に帰そうとするリチャードに、彼女は振り返って言います。
「立派な方ね」

リチャードは自分をケダモノだと激しく呪いますが、逆に美女はこの件をきっかけにリチャードに好感を持ったようです。

引き続き下心に煩悶しているというのに、それを知ってか知らずか、美女はリチャードと親しくなっていきます。

……二人の関係がどうなるかについてはまた改めて「ネタバレ編」で書かせていただきますが、もう一つ面白かったのは、リチャードが自分の暴走する浮気心を持て余して精神科医に泣きつくところです。

七年目の浮気2.jpg

医師は本の出版の打ち合わせに来たのですが、仕事が多忙らしく、分刻みで動いている医師と、そそくさと仕事部屋の長椅子に横たわって手馴れた様子で即席カウンセリングを受けているリチャードの姿から、既に1950年代、アメリカではカウンセリングがメジャーになっていたことがうかがえます。

ここから先は推測ですが、第二次大戦時、ドイツから、ユダヤ系知識人が多数アメリカに亡命し、その中には多くの心理学者が含まれていたそうですから、60年前にメンタルヘルスに対する意識がここまで発達しているのは、そうした歴史的背景に基づいているのかもしれません。

アメリカでのカウンセリングの浸透ぶりをうかがわせる一例として、スヌーピーのキャラクタールーシーの精神分析も挙げられます。
露店的な場所で開業しており(有料)、スヌーピーの飼い主チャーリーブラウンがしょっちゅうカウンセリングを受けている。
(なお、そのアドバイスは彼女の性格を反映して非常にストレートかつ明快で、なるほど悩んでいるのが馬鹿らしくなるという意味では優秀と言えなくもない。)

さて、ちょっと脱線してしまいましたが、『七年目の浮気』、究極の「真夏の男の愛の夢」としても、粋で愛すべきドラマとしてもとても面白いので、ぜひともご覧になってみてください。

(女性も是非!マリリン・モンローの美しさと可愛さ、そしてラストシーンの魅力は必見です。)

次回は、ラストシーンの台詞について、ネタバレ編として書かせていただきます。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 00:00| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月07日

イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)


前回は、「夏向き癒しのイルカ動画」と銘打って、僕が「イルカかーわいい(愛)!」と思った動画をご紹介しましたが、今回はそのときちょっと脇によせといた動画をご紹介します。度肝をぬかれましたが、かーわいい(愛)!とか、癒しとかとはちょっと違うな……と思ったので……(汗)。

動画タイトルは「Dolphins purposely 'getting high' on pufferfish(直訳 イルカたち、意図的にフグでハイになる)」
pufferには「ぷっと吹く」の意味もあるそうですが、それで「pufferfish」って、音の感じといい、なんかイメージにあっていますね。



https://www.youtube.com/watch?v=msx3BAhIeQg

Dolphins: Spy in the Pod(直訳イルカ:群れの中のスパイ)」というBBCドキュメンタリーでウミガメ姿の隠しカメラ(かわいい)が偶然とらえた映像だそうです。
Pod……この場合、イルカやクジラの少数の群れのこと

Youtube動画の説明文を引用させていただきます。

Bottlenose dolphins play with toxic pufferfish that secrete a neurotoxin that in high doses can kill but in small doses seemingly have a narcotic effect.
(直訳)バンドウイルカが摂取量が多ければ致死性だが少量なら麻薬効果があると思われる神経毒を分泌する有毒フグで遊んでいる。

冒頭、一頭のイルカがフグをくわえてつーっと水面にあがっていきます。

それに他の4頭が加わり、水面近くに垂直に体を寄せ合って、ぶきゅきゅぶきゅきゅ……と言いながら、フグをつついたりくわえたりしています。

ご存知のとおり、フグは猛毒の持ち主で、イルカに捕らわれ身の危険を感じたこのフグは、青酸カリをはるかにしのぐという猛毒(テトロドトキシン)を分泌させているのですが(水面の茶色いもやのようなものがそれらしいです。)イルカは絶妙な力加減でフグをくわえたりつついたりすることで、この毒を弱く出させて、ハイになってる模様です。
(ていうかいくら弱く出してしかも水中で薄まっているといっても、これ好きで吸うなんてイルカって物凄く丈夫なんだなと思いました。この近く人が泳いでいたら死んじゃうんじゃ……?)

驚いたことに、最初にフグを「おー、いいブツが手に入ったぜい」みたいな感じでいそいそ捕まえてきたイルカは、集まってきた仲間たちに、フグを口移ししたり、ボールのようにパスして互いにシェアしています。

まるで外国の街のかたすみで、たむろする若者たちが「お前も一服やるか?」と自分が吸っていたナニカを仲間に手渡すように……。

ぷきゅぶぶ、ぴゅいーと相変わらず声はカワイイですが、途中から目はうつろ、口は半開き、互いに折り重なるようにバクゼンと水中を漂い、明らかに「ウケケケケ!」状態。
前回ご紹介した動画の優しく真面目そうな素面のイルカさんたちと見比べてみてください。)

こんなウケケケ状態で、うすめた青酸カリちょいなめみたいなことやっていて、たとえば間違えてフグ強くくわえて毒汁ブシャー!(ふなっしー調)で事故死なんてことがイルカ史史上なかったのかと心配になりますが、このときはイルカたちが自分の世界にトリップしている最中に(エキゾチックなBGMがまた別世界ムード醸してる)、命からがら抜け出したフグが「ひいいい……!」という悲鳴が聞こえてきそうなほど一目散に逃げだして(うん、ウケケケイルカにあんなに取り囲まれちゃあ怖いよね……)過激なパーティーは幕を閉じています。

ある意味では人間をもしのぐのではないかと言われる高い知性の持ち主であるイルカが、それゆえに人間同様、その知性を、危険な方面にも活かしてしまっているというお話でした。

今回参照させていただいた記事は以下のとおりです。(どちらも動画、画像つき)
「Flipper's bad boy cousins! Dolphin pod gets 'high' off pufferfish toxins (and they're too buzzed to spot their prey slip away)」(「Mail online」2015年3月9日記事

イルカはフグ毒で”ドラッグ遊び”をしていることが判明…英BBC調査」(Technity 2014年1月1日記事)


ちなみに、上記「Mail online」のWeb記事のタイトルは、意訳すると「フリッパーの悪いいとこたち!イルカの群れがフグ毒でハイになる(そして彼らはあまりに酔っ払いすぎて獲物〈フグ〉が逃げ出したことに気づかなかった)」ですが、この「Flipper」は、アメリカのテレビドラマ(後、繰り返し映画でリメイクされている)に登場するイルカの名前だそうです。なんかステキなセンス……。

フリッパー [DVD] -
フリッパー [DVD] -

それしても、この映像で、イルカの生態そのものにも驚きましたが、この映像をものにしたイギリスBBCの製作者たちの執念と技術にも圧倒されました。イギリスの自然番組は総じて非常にレベルが高く、いつも、どうやって撮ったの!?と思わされる、鮮明でユニークな映像が見られますが、今回の「ソックリウミガメラ(勝手にドラえもんのひみつ道具みたいなネーミングにするな)」もそのひとつ。
当ブログ「自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)」でご紹介させていただきましたので、よろしければ併せてお読みください。


https://www.youtube.com/watch?v=80BXZfuevkE

当ブログでイルカに関する情報をご紹介している記事はコチラです。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 00:00| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月06日

夏向き癒しのイルカ動画

今日はYoutubeよりおススメのイルカ動画をご紹介させていただきます。
(前回の犬動画編はコチラ

まずはコチラ「Cat and Dolphins playing together」



アメリカのマリンパークでの一コマです。

人と一緒にいた猫が、イルカに興味しんしんで身を乗り出し、一方イルカも優しい目をして猫を見つめ、くちばしの先で、ちょこん、ちょこん、と猫の額を触ります。

これにこたえて、猫も一生懸命前足を伸ばして、イルカのくちばしをちゃいちゃい……と引き寄せると、ぷかぷか揺れながらも、できるだけじっとしているイルカにすりすり頭を押し付けはじめました。

「にゃー……つるスベにゃー(ゴーシゴシゴシ)……あ、いっちゃダメ(はしっ)、にゃー……つるスベにゃー……(繰り返し)」
目を閉じたうっとり顔からそんな感想が聞こえてきそうです。

何度も顔を出して猫を見に来るイルカも、
「こっち(水中)じゃ見ない感じだけどカワイイ生き物だわあ」
と、思っているみたいに見えます。

周囲の人たちからの「オーゴッド……」という感嘆のため息まじりの声も、その場に居合わせた幸運を感じさせます。

イギリスの新聞「Dailymail」に、この出来事に関する記事(画像と動画つき)がありましたので、あわせてご参照ください。

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2689882/Cat-plays-DOLPHINS-amazing-video.html

それにしても、圧倒的に体格差があり、決して泳ぐのが得意でないであろう家猫が、ここまで身を乗り出して、イルカを自ら引き寄せてスリスリするとは、よほど惹かれるものがあったのでしょうか。

最初に猫を見ているイルカの目とか、おでこをちょんちょんする動きとか、いかにも好意的で優しそうだなあと思いましたが、猫もその辺を感じ取ったのかもしれません。

ちなみに、犬がイルカに興味深々なこんな動画もありました。

タイトルは「Overboard Maverick- Dog jumps on Dolphins 」
Overboadで「船から落ちる」という意味です。Marverickは犬の名前かと)



船に並走して泳ぐイルカたちを舳から見ているジャーマンシェパード(お尻カワユス)。

波間に優雅に姿を現しては消えるイルカの背中にそわそわしていたかと思うと、いきなり海にジャーンプ!!。

釣りをしていた飼い主さんたちが「おい、なにやってんだ!?ほら、こっちまで泳いで来い!!」と慌てて(でも、爆笑が混じっている)船の側面をばしばし叩いて呼ぶと、飛び込んだ時点で我に返ったと思われる犬がしずしずと戻ってきます。

飼い主さんがすぶぬれの犬をずざざ……と首根っこつかんで引き上げてから、
「何考えてんだよお前は……」
とちょっとお説教しています。

人が見てもイルカって「美しい生き物だなあ」と思いますが、犬猫も魅了されてしまうのかもしれません。

さて、コチラはちょうど今大盛況と思われる、長崎県佐世保市の九十九水族館「海きらら」のイルカショーの動画です。

二頭のイルカが同時にハイジャンプして、片方が投げたボールを相方が空中でキャッチするという華麗で高度な技を見せています。(キャッチした後クルリと回転した姿の、尻尾のそりまで美しい。)



このイルカたちが、二頭並んでボールをプールにぶつけて自主練している動画が海きららのFacebookに上げられているのでご覧ください。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=476231242453998&id=183373245017761

練習しながらしきりとふげー、ふげー、と言っているのがカワイイ……運動部みたいに「イチ、ニイ、サン」的なカウントしているんでしょうか。

最後に、「ふげーえ!(訳:そぉーれ!〈かな?〉)」と元気に放ったボールが外に飛びだしてしまい、
「あっ?、あー……」みたいに口をあけてじっと見送っている顔がまたイイです。

参照:ファンファン福岡HP
「親も子も大興奮!自主練するイルカのジャンピングキャッチボール☆九十九島水族館「海きらら」」
http://fanfunfukuoka.com/travel/20744/

当ブログでイルカに関する情報をご紹介している記事はコチラです。よろしければ併せてお読みください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)



読んでくださってありがとうございました。






posted by Palum at 04:31| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月05日

減酒への道 (わたなべぽんさん「やめてみた」参照)


※今日は主に日記です。(下にぽんさん漫画の情報を少し書かせていただいています。)

ただいま絶賛夏バテ中です。

一昨日減酒の誓いに早くもぷち挫折して飲みすぎたら、なぜか今日ものすごくダルイです。

二日酔いまではいかなかったけど、昨日の起きる時間とか、一日のスケジュールとかを少し変えてしまったら、今日、坂道を転がり落ちるように疲れが襲ってきました。

多分「何時に何をする」って体が新習慣をある程度覚えていて、そこをハズすと普段頑張り慣れない体質なだけにものすごくペースが狂うんでしょうね……。

でも、それを言い訳に「というワケでやっぱり毎日更新はできませんでしたテヘペロ♪」だけは嫌だったので、
(100日目指して10日程度で挫折なんて恥ずかしい上に、上記のような性質上、多分ブログ更新だけではなく、ほかも全部「いい、いい、どうでもいい!」と投げやりになってしまい頑張れなくなる。挫折のエキスパート〈哀〉なんでその辺はもうよ-くわかってる。)とにかく書かせていただきます。

減酒の目標として、「平日原則禁酒(人との外食時は別)」としていたのですが、「『人との外食時』だからいいやあ、飲める飲める飲めるぞぉ〜♪」とハメ外して酔っぱらってしまったんで、この条件に今後は「ただし、原則一日の適量飲酒量を上限とする」をつけ加えます。
(酔っぱらうと「これ以上飲み食いしちゃダメ」のタガが派手に外れるからダイエット的にもマイナス)

ちなみに医学的に適量(※1)飲酒量とされるのは、男性で「一日酒1〜2単位まで」(※2)だそうです。
(※1)性別、体質、体重によって異なる。
(※2)1単位=純アルコール量20g。

一単位はビールなら中びん1本、日本酒なら一合(180ml)、ワインなら小さめのグラス2杯、サワー(アルコール度数7%)なら350mlで一缶だそうです。
(さらに週2日以上はお酒を飲まない「休肝日」を設けることが推奨されている)
参照:タニタ食堂HP「からだカルテ」の「ほどほどならOK?お酒の健康小話」より
http://www.karadakarute.jp/tanita/column/columndetail.do?columnId=54

実は、サッポロビールのHPはこれより厳しい数値(一日一単位まで)を推奨しているのですが、私は飲む頻度自体は低いんで、さしあたり守れそうなほうを選ばせていただきました(汗)。
(ビール会社なんだから「だいじょぶ×2、適量なら体にいいんですよ、飲みましょう!」的な意見になりそうなもんですが、まじめですね。)
参照:サッポロビールHP
http://www.sapporobeer.jp/tekisei/kenkou/susume.html

ところで、日ごろダイエットやお掃除情報をいただいている漫画家のわたなべぽんさんの最新刊「やめてみた」を読んでいちばん衝撃的だったのが、「毎晩の晩酌(ビール一缶)もやめてみた。外食や家族のお祝いの時はおいしくいただく」というおまけページの情報でした。
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -



ぽんさんの「もっと!スリム美人の生活習慣の真似をしたら、リバウンドなしでさらに5キロ痩せました」
の食べたものメモの段階では、少量だけど毎日飲んでいらっしゃるようで、「お食事ヘルシーだけど、休肝日ないんだな」と思っていたので、もんのすごくびっくりした。
(めっちゃ読み込んでます。まだいただいた情報をちゃんといかせてないけど〈汗〉)

もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました<もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました> (コミックエッセイ) -
もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました<もっと!スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました> (コミックエッセイ) -

たとえるなら、ほかはともかくこれだけは自分と似たり寄ったりの成績をとっていると思っていた人が、いつのまにかその教科でもはるか高みにいっていたみたいな……(汗)。

ショックでしたが、しかし、飲酒習慣というのはここまで改善できるという実例をいただき励みになりました。
ぽんさんの場合、段階的に減らしていったのが勝因だったんじゃないかなと思います。
(※ 深刻な飲酒依存の場合は、早急な医師の診断が必要です。)

「スリム美人の生活習慣を真似したら1年間で30kg痩せました(以下スリ真似)」、「さらに5kg痩せました」、「やめてみた」と通読すると

スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ダイエット前「350mlビール5缶、缶のまま」

スリ真似時ビール.png

(「スリ真似」より)

→ダイエット中「350mlビール1缶、きれいなグラスに入れて」

スリ真似 アルコールを味方につける.png

(「スリ真似」より)

→ダイエット成功後「原則普段の晩酌は炭酸水果汁入りに変更」

炭酸水.png

(「やめてみた」より)

という流れだそうです。
(ノンアルコールビールをそうと気づかず飲んでいたことがきっかけで、「シュワシュワでカンパーイ♪」の要素があればいいのだとわかったとか。)

おそらく、ダイエット開始時にいきなり炭酸水にしても、定着は難しかったのではと思います。
(実際一度断酒に失敗していらっしゃる。)

スリ真似 失敗.png

(「スリ真似」より)

でもトータル35kgの減量(その前に汚部屋脱出)という達成感と、このことに関するストレスの減少を経て、さらなる美人習慣へとステップアップなさったのではないでしょうか。

まだまだダイエットにも着手したての自分が、ここ(平日炭酸水)を目指して達成できるかは不安ですが(本来、以前のぽんさん程度の飲酒量〈一缶程度〉なら問題ないと思うけど、私は一度飲みだすと止まらない子なんで、炭酸水ゴールにしておきたい……。)、アルコールが入ると体力やその他の習慣にもシワ寄せがきてしまうと、一昨日〜今日でよーくわかったんで、とにかくこの情報をお手本に頑張ります。またいずれ経過をご報告させていただきますんで、よろしければご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum at 04:34| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月04日

蚊の話(椎名誠「わしらは怪しい探検隊」より)

蚊に刺されました。

酒飲みすぎて、あーもー僕的ノルマのブログ更新とか洗い終わった洗濯物干すとか、なんかやることやってないけどいったん寝ちゃうかあ、みたいになって寝たら、両足がかゆくて目が覚めた。
(ところで、数日前わたなべぽんさんを見習って減酒するとか言ってなかったか。)

しかも、足裏とか足の甲の皮膚がぐにぐにして掻いても痒みがとれないエリアとかを重点的に。

あったあ(頭)きたんで、今PCの脇にキンチョール置いて、今や我が血(含アルコール)をぱんぱんに吸って動きが鈍くなっている奴を仕留めてやろうと待機しながらこのブログを書きはじめました。洗濯物は干し終わりました。ギリ臭くなってない(刺されて良かったんじゃ……)。

かつて箏曲家宮城道雄さんは「蚊の羽音は篳篥(ひちりき)の音のようだ」と書いていましたが、その研ぎ澄まされて風流な感性を美しいと思っても、今はアノ音がしたらバーローンナロー(ジャイアン調)で臨戦態勢に入る予定です。

大体人様の血を吸っておいてカユクするとは何事か、お前ら足裏の角質を食べてくれるドクターフィッシュを見習えブツクサブツクサ……。


愚痴はこの辺にしておいて、せっかくなので(?)蚊にまつわる名文をご紹介したいと思います。

「わしらは怪しい探検隊」(椎名誠)
エッセイスト椎名誠さんが、友人たちで結成した「怪しい探検隊(正式名称 東日本何でもケトばす会〈←?〉)」とともに離れ島へ行きキャンプをしたときの顛末を主に描いた、アウトドアエッセイの傑作です。

わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -
わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -

独特のイラストは、東ケト会(略称)の一員でイラストレーターの沢野ひとしさん。

男たち特有のたくましくもいい意味で馬鹿馬鹿しいノリと、美しかったり恐ろしかったりする島の自然描写が素晴らしい(この本では「恐ろしい」優位)。

「水曜どうでしょう」(大泉洋の出世作番組)の旅シリーズ好きな方には特にお勧めです。

ちなみにこの本のアマゾンの紹介文に

「“おれわあいくぞう ドバドバだぞお…”潮騒うずまく伊良湖の沖に、やって来ました「東日本なんでもケトばす会」ご一行。ドタバタ、ハチャメチャ、珍騒動の連日連夜。男だけのおもしろ世界。」

とあり、なんと簡にして要を得て、しかもインパクトある名文だろう、と思ったら、書かれたのが、ご本人東ケト会の一員で「本の雑誌」の発行人だった目黒考二さんでした。

(「おれわあいくぞう」のくだりは、椎名さんが作った旅のしおり〈笑〉に添えられた歌の歌詞。〈確か〉目黒さんが解説文で「あまりに馬鹿馬鹿しくて誰も歌わなかった」と冷静に報告していらっしゃいました〈手持ちの電子書籍版ではこの解説文が見当たらなかったので、後日もう一度確認いたします。〉)

この作品の中に、椎名さんたちが、キャンプをしていた夜、「蚊柱(かばしら)」という、聞いただけでもカユクなる、それこそ椎名さん流に言うなら、おまーら柱なんか形成するんじゃないよ!なものに襲撃されるというエピソードがあります。

椎名さんいわく、テントの外でうなりをあげる音(怖)から察するに、その数数百万匹とも思われる大群で、実際にこれに襲われたら弱っている人やら馬やらが死んでしまうということもあるという、本当に危険な事態だったのですが、椎名さんの文はその恐怖と緊迫感を余すことなく描きながら、独特すぎる比喩表現と脱線を繰り広げていきます。

以下一部原文と内容をご紹介させていただきます。

「惨劇はこうして(補:みんなでたき火を囲んでしこたま飲んで騒いでテントに転がり込んで)全員が眠り込み、焚火がすっかり消えた午前一時頃、突然襲ってきた。」

蚊柱の襲来です。

「蚊といってもただの「カ」ではない。こういうふうにふだんあまり人類がやってこないような海辺と山村の境界あたりにいる蚊というのは同じ蚊といってもその蚊としての実力がまるっきり違っているのである。」

椎名さん曰く、我々が知っている蚊は、生ごみやらなま温かい排水やらに恵まれた環境(?)に生まれ育ち、獲物(ヒト)は飛べばぶつかるような過密状態。言うなればヘロヘロブロイラータイプの軽薄蚊でしかないのに対し、野生の蚊は「荒地の水たまりで冷たい寒風にさらされ、ゲンゴロウに追い回され、トンボのヤゴにケトばされながらもなんとかようよう日暮れに羽化し、初めて中空に飛び立ったときからすでにきびしくまなじりつりあげ、悲しい怒りを身の内にいっぱい秘めている」ので、都会の蚊とはまるで別格なのだそうです。

その攻撃スタイルにおいても、都会の蚊と野生の蚊は大きく異なり、都会の蚊が鴨居などに身を潜めていて人が寝静まったら血を吸いに来る、言うなれば「様子をうかがって、あとでどうかしたら襲っちゃう」というふうな「イヤラシ的態度および姿勢」なのに対し、野生の蚊は「獲物と見るや直進してきてズバッ、どぴゅう!とばかりに体当たりしつつ刺していくのである」。

その姿は若造テロリストが短刀腰だめにして「でえりゃあおおおう!!」と突進、玉砕していくのとよく似ている。……とのことです。


とにかく、その悲しい怒りに思いつめた「でえりゃあおおう!!」が数百万匹、椎名さんたちのテントにうなりをあげて突っ込んできて、テントの布地にコツンコツンとぶつかってくる音がいたるところから聞こえてくる。という事態が発生。

その時、全員がヒッチコック監督の映画「鳥」(ある日、突然鳥の大群が人間に襲い掛かるという不条理恐怖映画)を思い出して戦慄し、家の壁をたくさんの鳥が一斉にくちばしでつついて、壁が穴だらけになる、というあの場面のように、蚊がテントを突き破るということはまさかあるまいな、と話し合ってしまったそうです。

そして、さすがにそれは無かったけれど、わずかな隙間から突撃してくる蚊が後を絶たず、蚊取り線香の煙を充満させて、暗闇に懐中電灯をあてて蚊を探し出し、敵機の所在をつかんだものが叩き潰して撃墜、という、恐怖と痒さと汗と煙にまみれた戦いが深夜たっぷり二時間続きました。

激闘の果てにようやく蚊柱が去った翌朝、仲間の一人である「陰気な小安(凄い通称)」さんが行方不明になっており、ショックで自殺したのでは、いや人質にとられたのでは(←……)、と、ざわめきつつ、本当にいなくなったのなら探さなければいけないが、めしも食いたい、問題は小安とめしのどちらを優先させるかだが、そりゃめしだ、との結論に達した一同(酷い)でしたが、少し離れたところで、蚊取りの煙を避けて、ツェルト(簡易テント)に潜り込んで苦しそうに寝ている小安さんを発見、何故か全員でツェルトを取り囲んで念仏を唱え合唱したのち、炊事班長の沢野さんがテントにまわしげり(酷すぎる)、崩れ落ちるツェルトとともに、蚊柱事件は幕を降ろしました。

手短にまとめてさせていただいてしまいましたが、本当はこの事件だけでも、約30ページにわたり稀代の名文が堪能できます。そのほかのエピソードも本当に面白いので是非是非実際にお手に取ってみてください。
(椎名さんと沢野さんが遠泳に行った際の騒動も、いずれご紹介させていただきたいです。)

当ブログで椎名誠さんの「砂の海」をご紹介させていただいた記事はコチラです。

また、同じく蚊にちなんだ名文としてご紹介させていただいた太宰治の「哀蚊(あわれが)」の記事はコチラです。蚊柱事件とはまるで違う、東北の豪家の影を描いた物悲しい作品です。(※)

よろしければ併せてご覧ください。

(※)ちなみに椎名さんはかつてその才能を吉本隆明に「自殺しなかった太宰治」と形容されたことがあります。「太宰はなかなかいい男で、しかもめったやたらと女にもてたらしいからなあ」と喜ぶ椎名さんに、後の東ケト会員である友人たちは「それはあまり関係ないんじゃないか」と冷淡に指摘していました。
(『哀愁の街に霧が降るのだ』より。椎名さんたちが友人同士でボロアパートに暮らした日々を描いた作品。これまた傑作です。)

哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫) -
哀愁の町に霧が降るのだ 上 (小学館文庫) -


読んでくださってありがとうございました。
(ところでウチの蚊まだ出てこないな……〈困〉)





posted by Palum at 02:44| 椎名誠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月03日

放送熱望!イギリス絵画鑑定番組「Fake or Fortune」

イギリスBBCで現在放送中の非常に面白い番組をご紹介させていただきます。

「Fake or Fortune(偽物か幸運か※)」 Fortuneには「財産」の意味もあります。

巨匠の作と考えられる絵画の真贋をあらゆる角度から考察する番組です。

BBCの公式トレーラーはコチラ


https://www.youtube.com/watch?v=oT7d9Mnsn-U

番組公式HPはコチラ(画家や鑑定方法情報があってここからして面白いです。動画つき。)

イギリスの鑑定番組といえば長寿番組「アンティークロードショー」(おそらく「なんでも鑑定団」が影響を受けた番組)が有名ですが、これはいわばそのスピンオフともいえるもので、同番組の司会者で有名ジャーナリストのフィオナ・ブルース(Fiona Bruce)と、同番組鑑定士フィリップ・モウルド(Philip Mould)、研究者でアート・ディーラー、バンドール・グローヴナー(Bendor Grosvenor)の3人が、主に視聴者からの依頼を受けた絵画について調査を進めていきます。

なお、フィリップ・モウルド氏は、うずもれた巨匠の作(通称スリーパー)の発掘者として有名で、「絵画のシャーロックホームズ」という異名をとり、その活躍ぶりは既にNHKのドキュメンタリー「ハイビジョン特集 スリーパー・眠れる名画を探せ 〜イギリス美術界のシャーロック・ホームズ〜」(2004年放送)でも紹介されています。

NHK番組情報はコチラ(動画つき)

美しい絵画と巨万の富をめぐり錯綜する思惑、様々な歴史的背景、古い資料から手がかりをあぶりだす執念、緻密な科学的調査、そして絵の持ち主たちの運命の明暗に圧倒され、一級の推理ドラマのように一度見始めたら目が離せない引力をもつ番組です。

日本でも美術鑑定をめぐる漫画がいくつもありますが(「ギャラリーフェイク」「オークションハウス」「キュレーター」「MASTER KEATON」の一部作品など)言うなればそれのリアル版、しかも、本物の絵(依頼品とともに、その画家の傑作が何度も大写しになって美しい)とともに、数千万円がかかったドラマが各国を又にかけてじっくり一時間かけて展開されるので見ごたえ満点です。

ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -
ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -

オークション・ハウス 1 -
オークション・ハウス 1 -

キュレーター 1巻 -
キュレーター 1巻 -

MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -
MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -

現時点でシーズン5に突入していますが、既に未発見、あるいは行方不明だった名画をいくつも発掘しています。

一方で、アートマーケットの未だ不透明で権威主義な性質や、Forger(贋作家・偽造師)と呼ばれる、過去繰り返し世間を騒がせた贋作家たち(たまに足を洗った本人たちが出てきて、依頼品が自分の筆になるものかどうか確認するという荒業展開あり〈汗〉)の存在といった、芸術界の闇の部分についても詳しく紹介されます。

個人的には「デヴィット・アッテンボローさんたちが手掛けたBBCの自然番組」「Dad’s Army(村の年配男性たちが第二次大戦中にイギリス防衛に立ち上がるまさかの戦中コメディ)」「ギャレス・マローンさんの合唱ドキュメンタリーシリーズ」に引き続き、「イギリステレビ面白すぎる……(ガン見&わななき)」となった作品です。

よそのおうちのものとはいえ大金がかかってるから余計鼻息荒くなる……。

NHK様、どうかどうかなにとぞ放送をご検討ください!!

(いや、「スリーパー」が今年6月に再放送していたらしいので、既に実現に向けて動き出しているかもしれません。その情報を入手したら必ずお伝えいたします。)

放送が決定するまで(←誰もやるとは言ってない、思い込み激しい子か)、当ブログでこのシリーズ各回の魅力を一部お伝えしていきたいと思いますので、よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

参照:ウィキペディア記事(※鑑定結果を含むネタバレ記事になっているのでご注意ください)


posted by Palum at 04:30| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月02日

(「100日間リベンジ」再び)1週目まとめ……無駄ネット閲覧時間を減らす+毎日記事更新成功


※今回はただの日記です。

「毎日記事アップ」という目標をひっそりと再開して一週間が経過したので、ここしばらくの生活を振り返ってみます。

私のブログを以前から見てくださってる奇特な方はご存じかもしれませんが、私は過去に二回「100日間」「100日間リベンジ」と銘打ってそれぞれダイエットや生活習慣の改善をするべく、三日坊主に毛の生えた努力期間を経て、何事もなかったように挫折しています。(←……)

いや、ダイエットにいたってはこの間に増えている。(ダメじゃん)

一連の挫折した魂の遍歴(聞こえ良く形容)ついてはコチラ

うち「100日間リベンジ」期間で、先の「100日間」期間の努力に挫折した言い訳している記事についてはコチラ

そして、「100日間リベンジ」期間の(間に何度か挫折した果ての)2016年新年、あとで再び挫折することになる抱負を述べている回についてはコチラをご覧ください。(そんな情報いらねえ)

ここまでの文章で何度「挫折」って書いたかわかんないくらいですが、実際それだけの数以上挫折して今にいたります。

これまでの経過をざっくり申し上げると、

「ダイエットも英語も記事書きも全部頑張りたい。(キリッ)」(「100日間」期間)

→「人間として、今の自分はそんなに頑張れるレベルでないことに気づいたので、まずは努力できる生活習慣を整えたい。さしあたり無駄ネット閲覧禁止から(汗)」(「100日間リベンジ」期間)

→「逃亡、消息不明」

以上です。(なんだその他人事口調は)

しかし、これで良いとは決して思っていなかったので、(できない自分にストレス溜まるし、そもそも物理的に入らなくなった服は依然として入らないままだし……。)なんとかしようと重い腰を上げ、まずは「無駄ネット閲覧中止」、「極力毎日記事更新」から徹底させようとしたのが、2016年7月25日。

神社にお参りして、決意表明をして参りました。

帰宅するとすぐ、かねてより思いきって導入していた(けどあんまり使いこなせてなかった)「キッチンセーフ タイムロッキングコンテナ」なるタイマーロックつき収納ボックスにネット関連のものを収納して、ぐがぐぎぎ……状態のネット見たいゴコロを物理的に遮断。

Kitchen Safe タイムロッキングコンテナ (ブルークリア) -
Kitchen Safe タイムロッキングコンテナ (ブルークリア) -

(別に読んで心浮き立つとか、癒されるとかじゃないのに、それがわかりながら見たくてたまらないし、一度見出すと手がとまらないというまさしく中毒状態)

代わりにすっかり勝手がわからなくなっていた文書きという作業を再開しました。

(錆び付き荒んだ心であっても進んでご紹介したくなるカワイイ犬動画の話題からスタート。翌26日記事アップ成功)

その後、人間に対する警鐘として個人的に非常に衝撃的だった「スタンフォード監獄実験」についての番組があると知ってこちらもご紹介。

この頃、大きな助け船が来てくださいました。

楽しみにしていた、わたなべ ぽんさん(35kgダイエットの成功者)のエッセイ漫画「やめてみた」の発売。

やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -

ぽんさんもスマホ依存だったというお話が、依存時の悪影響(生活サイクルガタガタ、どぎつい情報に影響されて、性格疑心暗鬼に陥り、温厚な夫さんに厳しく注意される。)という身につまされる具体的エピソードととも描かれており、夫さんの「もういいかげんネットなんてやめればっ!?」という一コマが自分の魂の待ち受け(無駄ネットしたくなるたびに思い出す画像)となりました。

ぽんさんスマホ依存2.png

(おかげさまで「やめてみた」ご紹介記事は私のブログとしては多くの方に読んでいただき、これもまた毎日続ける支えになりました。お読みいただいた皆様、本当に本当にありがとうございます。)

このあたりから、如実に頭の中がスッキリしはじめ、無駄ネット時間が減少、代わりに記事を書く時間を確保できるようになりました。

やっぱり毒気のある情報って、刺激が強いぶんその場は引きこまれるけど、確実に読んだあとの頭をむしばんでいたんだなと痛感しました。
(嫌なことを忘れたくて強い酒を飲んで二日酔いで余計ぐったりするようなもんですね……。)

ただし、まだ減らせたのは、不必要なだけでなく、自分の精神衛生上悪影響のある、ゴシップや無責任な誹謗中傷が紛れ込む話題(言うなれば「無駄ネット内毒ネット部門」)のみ。

ニュースとか好きな動画とか、あと、少し違いますがダウンロードした電子書籍とか、それ事態は役に立つけど、必要に迫られているわけではない、という情報を気分転換と称し、ぼひゃーっと見てしまう癖は根強く残っています。
(そして、趣味かつ自分ノルマの文書きを後回しにして寝てしまい、こうして早朝に慌てて書いているという要改善な事態継続中。)

なので、次の一週間は、これまでより少しハードルを上げ、目標を以下のとおり定めたいと思います。

1、日付が変わる前に文を書けるように時間をずらしていく。

2、無駄ネット時間を全体的に減らす。

3、平日原則禁酒(ぽんさんの「やめてみた」メソッドをとりいれるつもりなので、これについては近日中に書かせていただきます。)

効果があった方法(キッチンセーフ等)については、随時ご紹介、また、一週間後には再度結果を振りかえる記事をアップさせていただきますので、ご興味のある方は見にいらしてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 03:27| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月01日

「弟の夫」(漫画)Kindle(電子書籍)セール実施中

昨日のこうの史代さんに引き続き、おすすめ漫画のKindle版セール情報をお届けいたします。

「弟の夫」(田亀源五郎)

弟の夫(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) -
弟の夫(1) (アクションコミックス(月刊アクション)) -

弟の夫 : 2 (アクションコミックス) -
弟の夫 : 2 (アクションコミックス) -
小学生の娘と二人で暮らす男のもとに、彼の弟が同性婚したカナダ人の夫が訪ねてくるというお話です。

急逝した双子の弟が男性と結婚していたという事実と、その夫マイクのセクシュアリティをすんなりとは受け入れられない男弥一のとまどいと、父の気持ちをよそに、優しいマイクとすぐに意気投合する娘夏菜。
そして、亡き夫との約束を果たしに日本に来たというマイクの三人での生活が描かれています。

ゲイであるがために、いやおうなく直面させられる社会の偏見や、家族との関係とともに、弥一のように、ゲイを差別する気は無いけれど、身内となるとどう接していいのかわからないという人の心理が、非常に丁寧に描かれています。

同性愛というテーマを直接集中的に描くのではなく、それを、弥一と夏菜の家庭の事情や、大切な人との死別という、セクシャルマイノリティではない人も体験しうる出来事と併せて描いている点も特徴的です。

同性愛について理解を深めるきっかけとしては勿論、ただ、さまざまに痛みを秘め、しかし絆のある一家庭の日常の物語として、とてもオススメしたい作品です。

双葉社の第一話ためし読みページはコチラです。

以下、見所をすこしご紹介させていただきます。
1、マイクの人柄と表情。

夏菜ちゃんが「サンタさんみたい」と一目で気に入ったとおり、暖かさと包容力が全身からにじみ出ています。(一方、さすが作者がゲイアートの巨匠、なんだかものすごく質感と説得力のある肉体の持ち主なんで、一読目はシャワーシーンなんか出てくると妙に焦ってしまいましたが。)

愛する人を亡くし、悲しみの中で思い出を追う心が、ささいなしぐさやふとしたきっかけにあらわれ、読む者の胸に響きます。

弟の夫.png

亡き夫の部屋に泊まることになり、遠いぬくもりに触れるように畳に手を伸ばす場面。

弟の夫2.png

弥一の後ろ姿に、夫が重なってしまった瞬間のまなざし。

弟の夫4.png


2、弥一の心理描写

高校時代の弟の同性愛カミングアウト以来、少し精神的に距離ができてしまったまま、弟と死に別れた弥一。

兄弟の情は変わらないし、弟の夫のマイクがいい人なのはわかるが、自分の中でどう折り合いをつければいいのかがわからない。
(夏菜のように自然に接したいのは山々だけれど、どうしても色々考えこんでしまう自分がいる。)

そんなとまどいの中、マイクやマイクを慕う夏菜とのやりとりを通じて、少しずつ気の持ちようを調整していきます。

弟の夫3.png

一方で、周囲の人がマイクに持つかもしれない偏見から、どう夏菜の気持ちを守るかという問題についても父親として頭を悩ませます。

弥一が自分や周囲の同性愛に対する目について考え込んでいると、時おり、鏡の中、自分の足元から地面に伸びるシルエットに、弟の面影がよぎります。

この面影が、彼の心をどう変えていくかは今後の展開に託されています。

このように、身内の視点を通じ、自分の身近な人が同性愛者であることに対する悩みと理解の過程を描いた作品というのは非常に画期的な気がします。

弥一の弟の死や、マイクが日本に来た理由など、まだ多くが謎に包まれながら、すでに非常に読みごたえと魅力のある作品ですので、この機会に是非ご覧になってみてください。
(2016年8月1日時点で第一巻100円、第二巻が486円、二日前からはじまったセールのようです(※)。終了期間がわからないのでお早めに。私はまんまとセール期間外に定価で買ってますが〈苦笑〉、それでも満足なので、紙書籍等でも是非。)

読んでくださってありがとうございました。

(※参照)アオシマ書店(電子書籍の販売情報サイト)「ゲイ差別から目を背けるな。差別してしまう自分と戦え『弟の夫』1巻が100円」(7月29日記事)

posted by Palum at 03:57| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月31日

こうの史代さん漫画 Kindle(電子書籍)セール実施中

Kindleが閲覧できる方限定なのですが、7月29日よりこうの史代さんの漫画がセール中とのことなので、お知らせさせていただきます。

ある女性の原爆投下後の日々、そして、現代を舞台に、被爆した母、祖母を持つ姉弟とその父を描いた「夕凪の街、桜の国」。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス) -
夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス) -

戦中の広島県呉市に嫁いだ女性すずと、彼女が出会った人々の日常を描いた「この世界の片隅に」(上中下巻)。

この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス) -
この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス) -

暮らしや街の風景、そこに生きた人々の思いが、ぬくもりのある筆致でこまやかに描かれ、どちらも日本漫画史上に名を刻む傑作です。

我々と同じように、生活し、愛し、悩み、泣き笑いした人々が、どのようにあの時代を生きていったかに触れることで、登場人物たちと、平和な日常への愛情が読み手の胸の中にわいてきます。

戦争や原爆という非常に重たいものを根底に据えながら、抑制された語り口と余韻で、読んで何を思うかは、多くを読み手に託す、非常に珍しい作品です。

すでにどちらの作品も実写化されていますが、映画版「夕凪の街、桜の国」で父親役(すごく合ってる)を演じた堺正章巨匠が「チューボーですよ」で、(確か)田中麗奈さん(同作品主演)と料理をしながら、映画公開後数年経ってるのに「あれはいい話だったね……」と、しみじみと実感のこもった声で言っていたのが印象的でした。

夕凪の街 桜の国 [DVD] -
夕凪の街 桜の国 [DVD] -

今回のセールは、2016年秋(予定)の「この世界の片隅に」のアニメ公開を記念したものだそうです。(アニメ公式情報はコチラ

(参照)「電子書籍の更地(電子書籍セール情報まとめページ)」
同ページツイッター7月29日情報 

セール期間がいつ終了するかわからないので、ご購入はお早めに。

「夕凪の街、桜の国」の99円は、最も意義ある百円玉の使い道になることをお約束します。

定価、または紙書籍でも買う意義は絶対に絶対にありますのでご検討ください。
(絵がきれいで、どちらの作品も見開きの名場面があるので、一番いいのは紙書籍です。私は両方持ち。)

違うサイトでちょっと申し訳ないのですが、「まんが王国」で「この世界の片隅に」数話分試し読みできるのでリンク貼らせていただきます

「この世界の片隅に」については、いずれもう少しご紹介かせていただきたいと思います。

他の作品もセールになっていて、こうのさんの作品はすべて粒ぞろいなのですが、イチオシは「ぴっぴら帳(ノート)」。(全2巻)

ぴっぴら帳 : 1 (アクションコミックス) -
ぴっぴら帳 : 1 (アクションコミックス) -

ちょっと天然な女の子きみちゃんとインコのぴっぴらさんの暮らしを描いた4コマ漫画。

上記二作で「戦争漫画家」のようなイメージがあるこうのさんですが、同じくこまやかな日常描写と、抜群の観察力で、ほのぼの笑える、今数多くみられる動物漫画の中でも傑作のひとつだと思います。

インコも話しかけてかわいがって育てるとあんなになつくし、色々面白いリアクションを見せてくれるんだなとこの漫画で知りました。
(作品はフィクションですが、ぴっぴらさんの表情やしぐさはこうのさんが実際に目にしたものだと思います。)
ぴっぴらさんの描き方がかわいいキャラ化されすぎてなくて、「まんまインコ」な感じがまたいい……。

読むと犬派の私も猛烈にインコと住みたくなりました。きみちゃんの周りの人々とのやりとりや、ういういしい恋の話も読んでいて楽しいです。

各回オープニングの、季節感あふれるきみちゃんとぴっぴらさんのカットが、カワイイ上に少し大正の叙情画を思わせます。

ぴっぴら帖カット(部分).png

傑作コマ(いっぱいあるけど) 

きみちゃんの前衛的粘土細工インコを熱烈に気に入るぴっぴらさん

粘土インコに求愛するぴっぴらさん.png

カミナリに緊張して細くなるぴっぴらさん

ぴっぴらさんほそくなっている.png

頭がかごの隙間にはまってしまったぴっぴらさん

頭がはまってしまったぴっぴらさん.png

こちらも是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum at 03:10| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月30日

映画「クレアモントホテル」(イギリス/アメリカ 2005年制作)ご紹介


クレアモントホテル [DVD] -
クレアモントホテル [DVD] -

明日(2016年7月30日〈土〉午前8時〜)イマジカTVでイギリスを舞台にした素敵な映画が放送されます。(8月8日〈月〉14:30より再放送)
(イマジカTV公式情報はコチラ


「クレアモントホテル(原題「Mrs Palfrey At The Claremont」)」。

ロンドンのホテルに暮らすことになった老婦人と、物書き志望の青年の心の交流を描いた作品です。

「年を取ったらホテル暮らし」

憧れる響きですが、実際の暮らしはどのようなものかをこの映画で見ることができます。
そして、偶然出会った老婦人と青年との、名前をつけるのが難しいけれど温かな関係が印象に残ります。

原作は小説家エリザベス・テイラー(あの女優さんとは別の方です)の1970年代の同名小説、記憶がおぼろげで申し訳ないんですが、かなり忠実に映画化されていたと思います。元ネタが良ければ、この映画みたいにそれを大事に使えばいいと思うんだけどなー(←なんか他の作品で色々不満を抱いている模様)

クレアモントホテル (集英社文庫) -
クレアモントホテル (集英社文庫) -

映画の予告動画です。




以下、あらすじと見どころをご紹介させていただきます。

(あらすじ)
夫に先立たれたパルフリー夫人は、自立した生活をするために、ロンドンのホテルに引っ越してくる。
(海外には、いわゆる旅行者向け宿ではなく、長期滞在に対応する「retirement hotel(退職〈隠居〉者向けホテル)」というものがあるそうです。)

しかし、ホテルは思って以上に質素、既に同じ目的で長期滞在しているエキセントリックな人々や、愛想の悪い従業員にはどうも馴染めず……と、パルフリー夫人の期待や気合はさっそく裏切られてしまう。

ホテルの滞在者たちに、連れてきてほしいとせっつかれ、ロンドンにいる孫にも連絡をとってみるが、そもそも電話からしてつながらない始末。

独りロンドンの町を歩いていたパルフリー夫人はつまづいて転んでしまう。

その時、近くの建物から出てきた青年ルードが、「お手伝いさせてください」とパルフリー夫人に駆け寄ってきた。

ルードの部屋でケガを治療してもらったことをきっかけに、二人は意気投合。
パルフリー夫人はルードに、孫のふりをして、ホテルの皆に挨拶してほしいと頼み込む。

ハンサムなルードの登場に目を見張るホテルの人々。

ルードに感謝したパルフリー夫人は、以来、ルードを気にかけ、ルードもまた、優しくチャーミングでしっかり者のパルフリー夫人に、自分の実の母親には無い、女性の理想を見て、彼女を慕うようになる。

(見どころ)
友情、家族愛、そして恋心、そのどれでもありうるような感情が、魅力的な二人の確かな演技で表現されています

個人的な話になりますが、パルフリー夫人のくりくりして愛嬌があるけれど、はっきりと気丈さがみてとれる目と、聞いてる側が焦るほど人生を達観した台詞がなんか私の祖母に似ていて、それだけでポイント高くなってしまう……。
(あんなに毎日気合いれてオシャレしてなかったっつーか、よく髪放置爆発させてたけど、あと、あんなにウィットに富んだ喋り方じゃなく、率直すぎて過激発言連発だったけど、でも、面白くていい祖母だったんです。)

女性にはルードのハンサムっぷりを観ていただきたいです。

彼の登場シーンは、半地下からなんですが、パルフリー夫人が道で倒れた直後、階段を駆け上がってきて姿を現した瞬間からもうハンサム。転んだ直後にあんな綺麗な異性がいきなり地下から出てきて助け起こされたら、転んだことよりびっくりすると思う……。
「乙女の愛の夢(※ジャイアン作詞作曲の歌のタイトル〈なぜここに挟む〉)」全開シーンで、相手が同年代の女性だったら、都合の良い少女漫画か恋愛ゲームかと総スカン食らいそうですが、パルフリー夫人なのでなんとなくセーフ。

パルフリー夫人もそんな美しいルードに亡き夫の思い出を託して、ほのかな感情を抱いていると思われる場面がいくつかありますが、パルフリー夫人の好きな映画(「逢引き(Brief Encounter)」)を観てみようと店に入ったルードは、その時言葉を交わした女の子と恋に落ちます。

ルードと、その女の子から慕われ、一抹の寂しさを感じながらもルードの恋を応援するパルフリー夫人。

そうやって夫人とルードの穏やかな愛情の季節は少しずつ移り変わっていきます……。

派手さは無いけれど、チャーミングで味わい深い映画です。よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

(参照URL)
Wikipedia記事日本語版
同、英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Mrs._Palfrey_at_the_Claremont
(「Rotten Tomatoes」レビュー一覧ページ)https://www.rottentomatoes.com/m/mrs_palfrey_at_the_claremont/
(「Allmovie」英語あらすじ紹介ページ Mark Deming筆)http://www.allmovie.com/movie/v338298
posted by Palum at 00:02| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月29日

「やめてみた」(わたなべ ぽん作 コミックエッセイ)ご紹介

35kgのダイエットで話題となった漫画家わたなべ ぽんさん(ご本人ブログはコチラhttp://ameblo.jp/watanabepon/)の最新刊が先日(2016年7月27日)発売されたので、ご紹介させていただきます。

(一部ネタバレありなのでご注意ください)

タイトルは「やめてみた」

やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -


これまで、ダイエットや汚部屋脱出に挑戦してきた(そして見事成功、今もキープに奮闘している)ぽんさんが、それまで自分の生活の中であたり前だった、家具家電、習慣、思いグセなどについて見直し、不要と思えたものについてはやめてみる、そのための手段と結果を描いたコミックエッセイです。

ぽんさんのダイエット、掃除関連漫画はコチラ。

スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似したら 1年間で30キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

もっと! スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
もっと! スリム美人の生活習慣を真似したら リバウンドしないでさらに5キロ痩せました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術 (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
スリム美人の生活習慣を真似して痩せるノート術 (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ダメな自分を認めたら、部屋がキレイになりました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -
ダメな自分を認めたら、部屋がキレイになりました (メディアファクトリーのコミックエッセイ) -

ぽんさんの作品すべてに言えることですが、彼女が目標達成する方法はいつもいたってシンプルです。
(例、リンゴだけ食べるダイエットに挫折→栄養バランスの良い低カロリーメニューと、継続しやすいウォーキングに変更)

なので、もし、斬新で効率的なノウハウを知りたい!と思う場合は、掃除やダイエットの専門家の本の方が合っていると思います。

ぽんさんの本の魅力は、人の習慣やアドバイスをとても素直にとりいれるご本人のお人柄。

そして、そうやって謙虚に頑張った先の結果と、それに伴って自分の気持ちがどう変化していったかが描かれているところです。

今回の本でもその魅力を十分に味わうことができます。

また、ぽんさんの上記4作品と併せて読むと、1人の人の習慣と気持ちがどうやって変わっていくかがわかるのでいっそう面白いです。(別に関係者じゃないですよ……)

炊飯器や掃除機をやめてみたという話については、「ふむふむなるほど、良さそうですね」みたいな感じで、のんきに楽しく読ませていただきました。

ぽんさんも、「はじめに」で「やめてみたものはあくまで私の生活には必要なかったものであり、もしかしたら皆さんの生活には必要不可欠なものかもしれません。でも、「こんな生活もあるんだな〜」と楽しんで読んでもらえるとうれしいですし、自分にとって本当に必要なものとはなんだろう?と考えてみるきっかけにでもしてもらえたら、もっとうれしいです」と書いていらっしゃいます。

(補)逆に、たかぎなおこさんは長年のほうき・フロアモップ生活から掃除機に切り替え、あまりの便利さに「すんごいよね掃除機って、スイッチひとつでゴミを吸ってくれるなんてさあ(※)」と、鼻息荒く昭和三十年代の主婦のようなことを言って友人に怪訝な顔をされていました。ひとそれぞれ。
(※)『ひとりぐらしな日々「ちょっといい暮らし…の巻より」』

ひとり暮らしな日々。 -
ひとり暮らしな日々。 -

ですが、自他ともに「どー考えても減らしたほうがいいだろ」と思われる、そして現在進行形で私自身が戦っている、「無駄ネット閲覧(スマホ)」についてのお話はぐっさりきました。

今週月曜日(つまり発売日2日前)からその依存を断ち切るべく、七転八倒していた私にとってはまさにベストタイミングの助け舟です。
(いやもうかれこれ数年、ほぼ毎日欠かさず「やめよう→当日中に挫折」だったけど、今度こそと頑張りだしたのが今週月曜。)

ぽんさんの場合、スマホ閲覧がやめられず、朝から深夜3時ごろまでとりとめのないサイト(投稿者の悩み相談にユーザーがこたえるページなど)を見続けた結果、

「寝坊」→「仕事メール確認忘れ」→「締切に追われ、ごみ出し、洗濯もの片づけができず」→「夕飯が作れず、夫さんに買いにいってもらう(片づけも夫さん任せ〈平日の家事は基本ぽんさん担当〉)」と、雪だるま式にミスをしてしまいます。

しかも、夫さんが買ってきてくれたお弁当を食べているとき、夫さんから、「明日は同僚女性(ぽんさん宅に何度も来ている人)の相談にのるために飲み会に行ってくる」と報告を受けたぽんさんは、
「ネットではそういうのを“相談女”といって、相談を口実に男性との距離を縮める嫌な女の手口らしいよ」
……と、かつてみたこともないようなワルイ顔で言ってしまいます。

ぽんさんスマホ依存1.png

(「人の悪口を言うと顔が曲がる」ってこういうことですかね)

ここでとうとう
「ダラダラネットをみているせいで、最近生活もだらしないし、仕事にも影響が出て、性格までキツくなっている気がする。もういいかげんネットなんかやめればっ!?」
と、旦那さんに厳しく注意されます。

ぽんさんスマホ依存2.png

(「あの夫さんが怒った……」とぽんさんは無論、既刊愛読者も驚いた場面)

この本の中で、このエピソードが二つの意味でとても印象に残りました。

まず第一に、ネットの強烈な依存性。

どうやらこの出来事は、ぽんさんが半年にわたる大掃除を決行した後のようなのですが、苦労して素敵な部屋を作り上げ、仕事のスケジュール上やむをえない時以外は、維持を心がけていたであろうぽんさんが、赤の他人の人生相談(その相談内容自体もぽんさんには無縁)という、観なくても全く困らない情報に釘付けになった挙句、それまで積み上げてきた生活習慣をガタガタにしてしまっています。

第二に、他人のトラブルやゴシップ情報にはまることの弊害。

これまでのぽんさんのお掃除、ダイエット本を読むとわかるのですが、ぽんさんの夫さんは、ぽんさんが、お掃除が苦手だったときも、今より35kg太っていたときも、彼女に説教めいたことを言っていません。
(でもぽんさんが頑張ったときには一緒に喜んでくれる優しい人。)

その(直前にも「頑張れ〜」といいながら片づけと買い出しをしてくれていた)夫さんが、「もういいかげんネットなんかやめればっ!?」と強く言っている。

夫さんにとっては、多少部屋や汚いとかぽっちゃりしているとかよりも、ぽんさんの性格がキツくなるほうが、よっぽどイヤなことだったのでしょう。

ちなみに、こういうとき、その手の相談サイトだと火に油をそそぐように、
「(女性側)相談女にまんまと騙されちゃって、男ってホントバカ、まんざらでもなかったから逆ギレしてんじゃないの?」
「(男性側)ちゃんと報告してんのに、家事もやらずに疑うなんてサイテーだな、ハズレ嫁だ」
と、泥沼が続くのが定番です。

この手のサイトのやりとりは、悩み相談の皮をかぶった口げんかや誹謗中傷に発展することが多いんです。ええ詳しいですとも、私こそが今この手の閲覧中毒と闘っているから……。

ネット依存については、「ゲームサイトへの過度の課金がやめられなくなる」、「長期間画面を見続けることにより頭痛、自律神経失調症を引き起こす」などの危険性はよく指摘されていますが、「生活サイクルがどう乱れてしまい、家族とのコミュニケーションに悪影響を及ぼしてしまうか」という段階を描写してくださっている例はあまりなかったと思います。
(ええ詳しいですとも2、どうやったら治せるか、ネットをむさぼり読んでいましたから、そして脱線してその手の相談サイトに舞い戻っていましたから〈←……〉)

普段穏やかな夫さんの厳しい注意に激しく反省したぽんさんは、「ネットを見るときのルール」を設定することにします。

その方法はいつも通りシンプル。「自分にとって害になるサイトを閲覧できないようにブックマークを外す」、「アラーム代わりに布団に持ち込んでいたスマホを遠ざけるために、目覚まし時計を使う」などです。

正直、この「方法」だけならそこまでの効力があるかどうか疑問ですが、ぽんさんのトラブルと夫さんのお叱りを読んでからだととても響きます。セットで有難い。

その後、素直に謝ったぽんさんに、夫さんも「キツく言いすぎた」と言ってくれて、ふたり仲良く、その同僚女性のお礼のプリンを食べていました。(ほっこりするオチ)

この他の「やめてみた」情報もとても面白いので是非(できれば既刊本とセットで)読んでみてください。

(補、ぽんさんは何気ないことのようにおまけ欄に描いているけど「酒」「タバコ」という人類二大依存品をやめるまでというスゴイ情報も入っていて衝撃だった。当ブログでぽんさんの減酒方法についてご紹介している記事はコチラです(※記事後半部です)。)

また、当ブログで、ぽんさんのお掃除、片付けエッセイ「ダメな自分を認めたら部屋がきれいになりました」をご紹介している記事はコチラです。

よろしければ併せてご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 04:40| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月28日

「野火」(大岡昇平作の戦争文学)


野火 (新潮文庫) -
野火 (新潮文庫) -

明日(2016年7月29日〈金〉13:00〜14:45)BSプレミアムで大岡昇平の小説「野火」の映画版が放送されるそうです。(監督は巨匠、市川崑監督)
参照 http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/calendar.html?next

野火 [DVD] -
野火 [DVD] -
第二次大戦時のフィリピン、日本軍敗戦を目前とし、食糧や薬が欠乏する中、病気のために切り捨てられた兵士「私(田村)」が、病院に入ることも許されずに、米軍や地元民から逃れて、孤独にさまよう中で、飢えと病、そして「私」と同じように絶望的な状況に陥った果てに、もはや仲間の肉体すらも生き延びるための食糧とみなすようになった日本兵同士の殺し合いを目の当たりにするという作品です。
(「野火」のウィキペディア記事はコチラ

映画版は、今回放送される市川崑監督版(1959)と、塚本晋也監督版(2015)があるそうですが、後者は、そのあまりの凄惨さに、映画祭出品時、作品途中で席を立つ人が続出したそうです。(参照AFP記事 http://www.afpbb.com/articles/-/3024845

野火 -
野火 -

ここで、監督の異なる映画版二作についてネット上の批評を引用させていただきます。

市川崑の『野火』ではカニバリズム(補、人肉食)を拒絶し、人とケダモノの境をぎりぎりの理性で線引きしてみせた田村は、人が普通の人間らしい暮らしをしているはずの野火のありかを目指して仏のように歩み出て銃弾に倒れる。戦時の記憶が国民の多くにまだ鮮やかであった時代、そんな美しい表現に託さなければこの主題は重すぎて観るにたえないものになったかもしれない。だが、世紀をまたいで戦争の記憶を継承する人々もいなくなり、やおら社会がきな臭くなってきている今、塚本晋也は逆に戦争の残酷さ、残虐さを真っ向から突きつけてくる。塚本監督がかねて露悪的に描いてきたグロテスクな、もしくはスプラッタ的なイメージが、本作ではその遊戯性抜きに正視が難しいほどの陰惨さで動員される。

(「樋口尚文の千夜千本 第17夜「野火」(塚本晋也監督)」より)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/higuchinaofumi/20141123-00040926/

通常、戦争映画は実際に戦場で起こるその悲惨さや残酷さを伝え、観客は映画館という安全な場所でその非日常的な現実を体験する。しかし『野火』はそうした悲惨さや残酷さより、実際の戦場で兵士が何を思い感じているのかということに焦点が置かれている。観客は映画館で、ちょっとしたことで現地人を銃殺するだろうこと、挙げ句は「猿の肉」を人肉と知りつつ喰らうだろうことに適応していくのだ。いわゆる戦争映画とは別の視点で戦争がどんなものかを伝えてくれる

そしてそれが、1959年に市川崑により映画化された『野火』との大きな違いでもある。


(映画紹介ページ「Lucky Now」内「【野火】これは、いわゆる戦争映画ではない(執筆者 今川 幸緒)」より http://luckynow.pics/nobi/ )

「まだ戦争の記憶が生々しかった時代に、原作とは異なり、主人公「私」が人肉食というタブーを最後まで拒絶する姿を通じ、極限状態の中に残された『人間の理性』を表現した市川版」と、
「戦争の記憶が薄れた今、観客たちに向けて、『戦争は人間の心を完膚なきまでに崩壊させる』ということを表現した(そのため、原作通り「私」は人間の肉を口にする)塚本版」
という違いがあるようです。

どちらが正解ということもないのですが、個人的には、映画鑑賞を検討している方も、是非先に小説を読んでいただきたいと思います。

そこには、小説という表現方法でなければ描けない、また別の、戦争と人の心が描かれているからです。

著者自身が戦地に赴いて体験したことと、それまで学んできた知識、おそるべき冷静さを秘めた精神力、文学的才能を融合させることによって生まれた、おそらくは世界的にも類を見ない、「極限状態におかれた、ある特異な一個人の魂」がそこにある。

「人間」全般ではなく、遭遇した出来事と、個人の思考によって姿を変えていった魂。

いわゆる社会的な善悪とは既に切り離された人々のうちの、ある男が思い、感じること、その心に写る世界のありようが。

私は最初にこの小説を読んだとき、内容のあまりの惨さにうちのめされ、「一度は知識として知っておくべき戦争と人間の暗部を学んだ。でも、繰り返し読まなくてもいい」と思っただけで、何年も放置していましたが、なにかのきっかけで、もう一度読んだとき、今度は、「私」の、地獄にあってすら、(いっそ現実離れしているほどの)静かで知的な視点や語り、そして、病に蝕まれて、正気を失った末に、死の間際に澄んだ目で「私」に語りかけてきた兵士、その男の言葉によって変容してしまった「私」の葛藤に、心をゆさぶられました。

この小説は戦いを描いています。

国籍の異なる者たちの戦争、同じ国の、生き延びるために互いの肉を奪い合おうとする者たちの争い。そして、

死の前にどうかすると病人を訪れることのある、あの意識の鮮明な瞬間、彼は警官のような澄んだ目で、私を見凝めて(みつめて)言った。
「なんだお前、まだいたのかい、可哀想に。俺が死んだら、ここを食べてもいいよ」


餓死したくない、しかし、「食べるために仲間を殺す」というタブーを避けたいがために、命が尽きる寸前の病人を見張っていた「私」に対し、そう言って、自分の痩せ衰えた腕を示して死んだ男。

「食べてもいいよ」と言われたがために、誰も見ていない、誰も助けてくれるはずもない、誰からも、食べようとしているその男からも責められない状況になってすら、「私」はその男を食べられなくなりました。

彼の意識が過ぎ去ってしまえば、これは既に人間ではない。それは普段我々がなんの良心の呵責なく、採り殺している動物や植物と変わりもないはずである。
この物体は「食べてもいいよ」と言った魂とは別のものである。


そう自分に言い聞かせ、「食べてもいいよ」と言われたその腕から、肉を切り取ろうと剣を振り下ろす「私」。しかし、


その時、変なことが起こった。剣を持った私の右の手首を、左手が握ったのである。


地上の誰も「私」を見ていない、裁かない。死んだ男は既に許している。それでも、完全に孤立した「私」の中で起こった、剣を下そうとした右手と、それを掴んだ左手の間に生まれた戦い。

人の心は環境の変化で数日で崩壊する。
それは、人の肉体が重い岩をどうしても背負えずに潰されていくのと全く同じように、人間の限界がもうそこにあるから。

それを感じさせる世の中の出来事をさんざん見聞きし、自らの心にもそのきしみ、ゆがみ、くずれを見た後に、この作品を読むと、そのたびに、「『食べてもいいよ』と言われたがために、「私」の右手と左手の間に起った戦い」が、既に失望を刻み込んだ心臓に、何か異なる温度をもって突き刺さります。

「野火」という文学は、国家と人間同士の戦いの他に、その渦中にあってすら、孤独な個人が自身の中で激しく葛藤した、その戦いを描いているために、稀有な作品なのだと思います。

是非、小説を手にとって、この心の動き、読み手を圧倒する「私」の左手の確かな手ごたえを実感していただきたいと思います。

いずれ、この小説の優れている点について、もう少し書かせていただきたいと思いますので、よろしければご覧ください。

読んでくださってありがとうございました。









posted by Palum at 04:40| おすすめ日本文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年07月27日

スタンフォード監獄実験(NHK BSプレミアム「フランケンシュタインの誘惑」放送内容)

明日(2016年7月28日〈木〉)21:00より、BSプレミアムの、科学史の闇を描いたシリーズ「フランケンシュタインの誘惑」で「スタンフォード監獄実験」が紹介されます。(公式情報はコチラ
(再放送7月30日午後6時00分〜 午後7時00分、8月25日午後5時00分〜 午後6時00分)

「スタンフォード監獄実験」
「与えられた役割や立場が人間の行動に与える変化」を調べるため、1971年、アメリカの名門、スタンフォード大学の、架空監獄施設で行われた実験です。

その実験環境の過酷さ、その後の被験者への深刻な影響などから、史上最も残酷な心理実験といわれ、その後、繰り返し映画の題材になりました。

(ドイツ映画「es」、「es」のアメリカ版リメイク「エクスペリメント」、2015年に再び「The Stanford Prison Experiment」として映画化されたそうです)

「The Stanford Prison Experiment」の予告動画



「es」(※実際の事件以上に残虐性が強い内容となっています。)
es[エス] [DVD] -
es[エス] [DVD] -

エクスペリメント [DVD] -
エクスペリメント [DVD] -

この実験は、「囚人役」「看守役」に分けられた一般人たちが、ごく短期間のうちに激変、看守役が囚人役を虐待しはじめ、実験を観察していたはずの学者すらも状況にひきずられて判断力が欠如、実験を中止できなくなるという事態を引き起こしました。

監獄環境の過酷さと看守役からの虐待により、精神に変調をきたす被験者が出ても実験は継続され、危険性に気づいた牧師(実際の刑務所カウンセラーを担当、学者に招かれて実験を見に来た)と被験者の家族により実験開始より六日目で急きょ中止となりましたが、(当初2週間の予定で実施)その際も看守役の被験者は中止に抗議したそうです。
(詳しくはウィキペディア記事をご参照ください。非常に詳しく書かれています。)

人間が普段持ち合わせていると自分でも思っている倫理観や判断力は、環境と立場の変化により(それが架空のものであってすら)たった数日で崩壊する、そしてそれを外部から観察しているだけのつもりだった人間さえも、いつのまにか巻き込まれて、目の前で被害に遭っている人間を見ても(本来自分はそれをやめさせられる立場のはずなのに)事態を変えられなくなる。

実験は、こうした、当初の想定をはるかに超えた人間の心のあやうさをあぶり出し、しかも後遺症をおった被験者たちの心を癒すためには10年の月日を要しました。
(実験を実施した心理学者ジンバルドー本人がカウンセリングを担当、今回の番組でご本人が登場するそうです。)

心理学上の大スキャンダルとなったこの実験は、しかし、「人間は立場と集団によって、一瞬で変貌してしまう」という重要な警告を残しました。

「正義を信じて組織に加わったはずの人間が残虐行為に加担してしまう」
「自分は相手を嫌っていないのに、周囲がその人をいじめているからと、それを止めずに逆に参加してしまう」
など、外部からみたら、なぜそのようなことがおこってしまったのかと思わせる事態も、この人間のあやうさに起因しているのではないでしょうか。
(番組では、併せてその後アメリカ心理学会が「テロとの戦争」の中で犯したスキャンダルについても触れられるそうです。)

実験がもたらした事態の異常性に目がいきがちですが、自分を含めた人間という生き物、そして集団の怖さを思い知らされる、もっと多くの人に警告として広められるべき事件だと思います。

よろしければ、番組をご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 04:20| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする