2016年08月28日

(※ネタバレ)「ツチノコみつけた!」(『ドラえもん』 脇役キャラトップスター登場の回)


ツチノコ1.png

 今回はドラえもんの「ツチノコみつけた」(コミックス9巻)の一部あらすじと周辺情報についてご紹介させていただきます。
(このキャラ大好きなんで、当ブログで、今まで何度か言及させていただいており、一部内容が重複しますが、今回はどんなストーリーなのかの概要をお伝えしたいと思います。)


 コミックス9巻。
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -

 のび太が体の短い幻のヘビ「ツチノコ」の第一発見者になろうと奮闘する話です。

 以下あらすじです。結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。(一部仮名遣いを改めています。)

 「この世に生まれたからには、なにかひとつ足あとを残したい!野比のび太の名前を、歴史の一ページに残したい!それにはどうしたらいいか、真剣に考えよう」
 と真剣な面持ちで目を閉じたのび太、すぐに寝落ちしてしまいましたが(……)未来から帰ってきたドラえもんにたたき起こされます。
(ちなみに、のび太はわりとこの手の思索にふけりますが、寝落ちしなかった場合、思いつくのは「逆立ちで世界一周」とか「大仏様の手で世界一のあやとりを作る」等です。〈真面目に聞こうとしていたドラえもん、このアイディアを聞いた時点で無言で寝室である押し入れにもぐりこむ〉〈コミックス26巻「歩け歩け月までも」より〉)

ドラえもん (26) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (26) (てんとう虫コミックス) -


 見せられたのは未来の百科事典の「ツチノコ」の章。

「昔は単なる想像上の生物とされていたが1975年東京の剛田武さんによって発見され……」
なんと幻のヘビの第一発見者としてジャイアンが歴史に名を残していることが判明。

 それなのに君はのんきに昼寝なんかして……とお説教するドラえもんに対し、ジャイアンの先を越して自分が見つける!と勢いよく飛び出したのび太。

 空き地を捜索中、ジャイアンとスネ夫に、「なんか落とし物か?」と聞かれて、慌てるあまり「関係ない、あっちへ行け!シッシッ!」と失礼極まりない返事をしてしまった結果、尋問にかけられ、ツチノコ探しを白状させられてしまいます。

 しかし、ツチノコの実在を信じていないジャイアンとスネ夫は失笑して立ち去りました。

 ライバルが消えた!と喜ぶのび太。
「必ず見つけてやる。たとえ何か月かかろうと、発見するまであきらめないぞ」
と空き地捜索を再開。

 「あきらめた」
 「まるっきり根性がないんだから」
 舌の根も乾かぬうちにげんなり顔で部屋に戻ってきたのび太にあきれるドラえもん。

 こんな町中にいるなんておかしいよ、と、ふて寝してしまうのび太。しかし、ドラえもんが、未来ではすでに実在が確認され、ペット化されている(笑)ツチノコを連れてきて発見者のふりをすることを思いつきます。

 さっそく、ツチノコブームが起きている2040年代へ行く二人。

 公園では人々に連れられ、たくさんのツチノコが集まっていました。
 
 ヘビがいっぱいいる公園なんてイヤダと思う方もいらっしゃるでしょうが、このツチノコは「オシシ仮面」「宇宙人ハルバルさん」など個性的なキャラを世に送り出した藤子F先生のデザインセンスがさく裂、顔も体ももっちりぷっくりしてごまつぶのような罪の無い目をして、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ!カワイイです。へびってか、オモチの妖精って感じ。

 世間では毒蛇との噂もあるツチノコですが、藤子Fワールドのツチノコは性格も可愛らしくて、おとなしくリードにつながれ、お洋服や赤ちゃん帽子を身に着け、呼ばれると喜んで人の後について歩き、直立してあーんと口をあけておやつをもらい、イイコイイコされるとニコニコ顔で短い尻尾をぴこぴこ振ります。(悩殺)

ツチノコ2.png

ツチノコ3.png

ツチノコ4.png

 ちなみに大福顔の口元にヒゲ?があるタイプと無いタイプがいます。
(大人と子供の違いでしょうか。蛇にヒゲというのが考えてみればフシギですが、それぞれ可愛い。)

 ペットショップでツチノコを入手しようとするも、未来のお金が無かったというミスがありましたが、公園で捨てられかけていたツチノコ(お巡りさんが「ノラツチノコ(←笑)が増える」と無責任な飼い主を注意していた。)を引き取り、喜びいさんで現代に戻る二人。

ツチノコ5.png

 さっそくマスコミに連絡しましたが、記者の人たちが来る前にツチノコがケージから逃げだしてしまいました。

 慌てて探しに行った二人、そこに「あっ!ツチノコ!!」という叫び声。

 興奮した様子のジャイアンの手につかまれ無心にぶら下がるツチノコ。

 ちょうど集まっていたマスコミに取り囲まれ、「僕が見つけたんです!偶然この空き地で!!」と、取材に答えるジャイアンを、二人は渋い顔で見つめるしかできませんでした……。

(完)

 この可愛らしいツチノコは、後年さまざまな形で商品化され、今やドラえもんグッズの常連ともいえる存在です。


ドラえもん ツチノコ のびのびパスケース ぬいぐるみ -
ドラえもん ツチノコ のびのびパスケース ぬいぐるみ -


ドラえもん ツチノコ ティッシュボックスカバー -
ドラえもん ツチノコ ティッシュボックスカバー -

 藤子F不二雄ミュージアムHP内のツチノコグッズ記事はコチラ。
http://fujiko-museum.com/blog/?p=8550/
(ミュージアム公式ブログ「ツチノコ」グッズが大人気!2012年12月28日より)


 しかし、実はツチノコって1970年代のオカルトブームの中では、「体の短い飛ぶ猛毒ヘビ」という存在として「発見者に贈られる懸賞金は欲しいが怖い」と当時の少年少女の間では認識されていたそうです。

 本物の(?)ツチノコのイメージで作られた、フィギュア界の名門、海洋堂さんのツチノコ。
(跳躍して口をカッと開き、攻撃を加える姿〈毒ありげ〉)

カプセルQミュージアム UMA大全 世界の未確認生物 [4.ツチノコ](単品) -
カプセルQミュージアム UMA大全 世界の未確認生物 [4.ツチノコ](単品) -

 当時の「藤子F先生版でないほうのツチノコ」の恐怖イメージについては「ちびまる子ちゃん」(りぼんコミックス4巻)で詳しく描かれています。(こちらも名作です。)

ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -
ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -

 私は藤子F先生のツチノコしか知らなかったので、後年、図書館で、子供向けオカルト図鑑(※)的なものを見て、ツチノコのカワイイイメージが大崩壊してショックを受けた記憶があります。(海洋堂さんのフィギュア同様、短いコブラ的なものが跳躍して人に襲い掛かる図だったような記憶が……。)
(※)昔そういう絵も話題もまったく子供向けじゃない、異様に緻密で高い画力でトラウマページを繰り広げる恐怖図鑑があった。

 怖いツチノコのイメージ真っ盛りの中で、藤子F先生がどうしてツチノコをあんなに可愛らしくて人懐こい生き物として描かれたのかは謎ですが、夢と温かみに溢れた藤子Fワールドを象徴するようなエピソードです。
 
 是非コミックスをお手にとってみてください。

 次回記事ではツチノコ追加情報として上記の「ちびまる子ちゃん」の作品と、子供向けオカルト図鑑についてご紹介させていただきます。
 
 読んでくださってありがとうございました。

※(補足)今回Seesaaのネットワーク障害で8月28日中の更新ができませんでしたが、100日連続記事更新を目指している最中なので、これを28日分記事とさせていただきます。29日記事は夜更新予定です。よろしければまたご覧ください。
http://trouble.seesaa.net/article/441431247.html(障害報告)
【関連する記事】
posted by Palum. at 21:00| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月27日

(※ネタバレ)「未知とのそうぐう機」(『ドラえもん』 コワカワイイ宇宙人ハルバルさんと秀逸なオチ)



未知とのそうぐう機1.png

 今回は「未知とのそうぐう機」(コミックス17巻)の一部あらすじと幻のグッズ情報についてご紹介させていただきます。

 コミックス17巻。(前回ご紹介「驚音波発振機」も収録)

ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -

 宇宙人を呼ぶ電波を発するひみつ道具「未知とのそうぐう機」をのび太が勝手にいじったために、家に宇宙人が訪ねてきてしまうというお話です。

 ドラえもんから「触るな!」ときつく言われただけで(見ていただけなのに、非常に感じ悪く注意されたので、あてつけに触るのび太。ドラえもんもしまっときゃいいのに……)、機械の説明をしてもらわなかったので、単に「UFOが見られる機械」と思い込んで面白がって何度もボタンを押してしまいますが、繰り返すうちにそうぐう機の電波発信源をつきとめた宇宙人ハルバルさん(ハルカ星在住)がのび太の部屋にUFOで乗りこんできます。

 アザラシとおじさんと古風なオバケをミックスしたようなコワカワイイハルバルさん。(17巻表紙に登場)

 異変に気付いたドラえもんが「あー!!やってくれちゃって!!」と。部屋に飛び込んできたとき、のび太はハルバルさんの「NMwwNwW」みたいな喋りに対し、「アハハなんか言っている」とのんきにかまえていましたが、ドラえもんは、のび太を部屋の外に連れ出し、
「態度に気を付けたほうがいい、なにしろ何百光年という遠い星からはるばるくるんだからな。用もないのに気やすく呼ぶなとカンカンに怒って、宇宙戦争になりかけたことさえあるんだぞ」
 と深刻な表情で耳打ちします。

 ホンヤクコンニャクを食べたドラえもん経由でハルバルさんのお話を聞いたところ、

「いいたかないけど地球までの燃料費が二千万円もかかった。ごはんの最中に呼び出されたので、はやく用事を言ってくれ」とのこと。

(まったく個人的な話ですが、子供のときこれ読んではじめて「いいたかないけど」という言い回しを学び、以来これに類するフレーズを聴くたびハルバルさんを思い出すようになりました。児童向け漫画のわりに渋いセリフ……。)

 もちろん用なんかなかったので慌てるのび太。

 様子を察したのかハルバルさんはこうつけ加えます。

「まさか面白半分じゃあるまいな。話は変わるがハルカ星の連合艦隊はこれまでの宇宙戦争で一度も負けたことがないんだ」

 震えあがりながらも、仕方なく食事をごちそうしてごきげんをとってごまかして帰ってもらうことにした二人。
(のび太にコーラをお酌されるハルバルさんの片肘をついたポーズがいかにも接待され中のおじさんっぽい。)

未知とのそうぐう機2.png

 地球の食べ物はうまい、と、はじめて眉間のしわを消して笑顔をみせたハルバルさん(可愛い)でしたが、地球の平和を守るためにおかわりをお出ししようとしたのび太を見とがめたママ、犬か猫でも拾ってきたのかと追及した挙句、ハルバルさんを見て、
「まあっ、アザラシなんかつれこんで……。シッ、シッ」
といきなりほうきでハルバルさんの後頭部を殴り倒します。

未知とのそうぐう機3.png

未知とのそうぐう機4.png

 ドラえもんと同居しているから変わった出来事には慣れているのかもしれませんが、家にアザラシ(違うけど)がいても驚かず、しかも、いきなり派手に殴るなんてママもなかなかスゴイ感性の持ち主です。

 当然激怒したハルバルさん、宇宙艦隊で地球へ攻め寄せる!と言い残してUFOに乗り込もうとします。

 足(ヒレ?)にすがって止めようとするも、衝撃波を受けてふりほどかれてしまう二人。

 「もうだめ!地球はほろびるんだ、君のせいだぞ!」
 「そ、そんな……」
 なすすべなくへたりこむ二人。

 しかし、UFOに向かいかけたハルバルさんが畳に転がるあるものを見て立ち止まります。
 前ヒレでそれを拾い上げると、鼻息荒く、なにやら「NMwwNwW!!」とまくし立てているハルバルさん。
 「ビー玉を見て騒いでいる」
 
 実はハルカ星ではガラスができず、地球のダイヤよりも値打ちがあるとのこと。

 それを聞いたのび太は箱一杯のビー玉を差し出し、
「地球とハルカ星の友情のしるしとして、ビー玉を贈りたいと思って呼んだのです」
 と笑顔で後付けの用事を伝えました。

未知とのそうぐう機5.png

 ハートを一杯まき散らして前ヒレでのび太を熱烈に抱擁したハルバルさん、大喜びで帰宅。

未知とのそうぐう機6.png

「ついに地球は滅亡から救われたのであった!」
 安堵して抱き合うドラえもんとのび太を見て、つい先ほど、息子との共同作業で地球を滅ぼしかけたとも知らないママが、
「テレビの観すぎです」
と、口を「3」にしてあきれていました。

 (完)

 さて、ハルバルさんの交通費片道2000万円は大いなる利益をもたらしたというのはあの熱烈ハグでよくわかりましたが、具体的にハルバルさんはどのくらいうれしかったのかということがちょっと知りたくなりました。

 で、ビー玉の大きさから、きわめていい加減に、ハルカ星のビー玉の価値を予想してみました。
 (寝不足とか具合悪いとか日記回に書いておきながらこういうことには労を惜しまない人)

 一般的なビー玉(ラムネに入っている大きさ)は直径約17oだそうです。
(ウィキペディア記事「ビー玉」より)
 
 (※のび太の手との対比ではもう少し大粒のビー玉にも見えますが一応標準的なサイズとします。)

未知とのそうぐう機7.png

 複雑にカットされているので正確な体積は不明ですが、これに近い大きさのダイヤモンドは約10カラット程度と思われます。(ハリウッドセレブの指輪の記事で10カラットなら親指の爪大とあったので)

(参照:【イタすぎるセレブ達】ジェニファー・アニストンの婚約指輪、関節より大きな10カラット超のダイヤが不評 
http://japan.techinsight.jp/2012/10/yokote2012101017270.html

(本当は1カラット=200mgと重さで換算するそうですが、ダイヤとガラスでは重さが違うので、ここではおおまかな一粒の大きさで考えさせていただきます。)

 上記記事のハリウッドセレブの10カラットの指輪で、石のランクはさほどでもない(らしい)指輪が査定8000万とあるので、カット、透明度、カラーが最高位のダイヤモンドの裸石(ルース ※カット済の粒のこと)以上の価値がビー玉にあるとすると、一粒一億円程度。
(参照:ウィキペディア記事ダイヤモンド)

 箱の中に見えるビー玉は約15個、二段詰まっていると考えると合計30億円。

 しかし、ダイヤと違ってその星に存在もしない物質となると、さらに高値である可能性があります。ダイヤでもピンクダイヤ等希少性があると数倍〜数十倍の値がつくので。
(それにしても、ハルバルさんきっかけで、かつてないほどダイヤ情報を読むとは思わなかった。) 

 なんとなくハルバルさんは星でそれなりの立場のアザラ…方なのかなという印象も受けますが(逆らえない呼び出し電波を受けたとはいえ、すぐに片道2000万の交通費を出しているところとか、連合艦隊とコネがありそうなところとか、接待され慣れた感じのコーラお酌されポーズとか)、のび太のはからいで、一瞬にして超富裕層資産に匹敵する宝石を得たわけですから、そりゃほうきの一撃くらいチャラにしますよね。
 
 ところでこのコワカワイイハルバルさん、2007年に一度フィギュアになったみたいですが(ビー玉つき〈大笑〉)今は特にグッズ化されていないようです。

VCD 1/6計画限定 ハルバル メディコム・トイ -
VCD 1/6計画限定 ハルバル メディコム・トイ -

 地球を滅亡させようとはしましたが、よく見るとマニアックドラキャラの大スター「ツチノコ」(毒すら持っていると噂されるUMAヘビなのに、藤子F先生のデザインにかかるとおもちみたいで人懐こい生き物に変身。こちらはあまりの可愛さにグッズ多数。)の次くらいに可愛いと思うので、またなんかグッズ化されたら見てみたいです。

UDF ツチノコ (警戒色&アルビノセット)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF ツチノコ (警戒色&アルビノセット)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -


 藤子F不二雄ミュージアムでハルバルさんディスプレイについてご紹介なさっている記事はコチラです。巨万の富(ビー玉)に囲まれて幸せそう。
http://fujiko-museum.com/blog/?p=10608/

 是非、原作をお手に取って、この絶妙なデザインのハルバルさんとオチ(そしてママの冷静すぎる反応)をお楽しみください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 18:13| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月26日

(※ネタバレ)「あやうし!ライオン仮面」(『ドラえもん』 超マニアックキャラがまさかの人気)


ライオン仮面5.png

 今回は「あやうし!ライオン仮面」(コミックス3巻)のあらすじと、ここに登場するキャラのこぼれ話をご紹介させていただきます。

コミックス3巻。
(泣ける「ペロ生きかえって!」、ドタバタ恋愛劇(?)「ああ、好き好き好き!」が読めるおすすめ巻。〈結局全巻好きなんだろ〉)

ドラえもん (3) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (3) (てんとう虫コミックス) -


 以下あらすじです。(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)一部仮名遣いを変更させていただいています。


 「ワハハハハ、ライオン仮面。もはやのがれることはできんぞ!」
 ヒーローライオン仮面が、少女とともに悪の組織に取り囲まれ、絶対絶命のピンチに。

ライオン仮面1.png

 「ワーッ!!」
 一斉にレーザーガンで撃たれ、叫び声をあげるライオン仮面。

ライオン仮面2.png
 (10月号につづく)

 「いいところで切れちゃうんだいつも」
「ライオン仮面」を読んでいたのび太とドラえもん。
「10月号ではどうやって助かるんだろう」
 どう考えても助かりそうにないけれど、主人公が死んじゃおしまいだから、きっとなんとかするんだろう。
 でもその展開が知りたい。
 「そうだ!!本人に聞けばいいんだ」
と、ご近所にお住いの作者フニャコフニャ夫(笑)の家へ直接訪ねていくドラえもん。
(※初期ドラえもんは後ののび太の保護者っぽい性格とやや異なり、率先して動く傾向があります。)

 フニャコ先生は売れっ子らしく、家には数人の編集者が不機嫌そうに原稿待機中。

 それなのに、ライオン仮面の続きをさっぱり思いつけずに机に向かって途方に暮れているフニャコ先生。
(細身でお人柄のにじみ出た穏やかなお顔のリアル藤子F先生と異なり、ぽっちゃり体形で不機嫌そうな顔つきですが、フニャコ先生もF先生のトレードマーク、ベレー帽をかぶっています。)
 「あれからどうして助けていのか、見当もつかん」
 そんなことはじめに考えておくべきだと文句を言う担当さんと、あのとき君がせきたてたからだと言い返すフニャコ先生。

 大人同士の責任のなすり合いを見て、本人にもわかっていないんじゃしょうがないと家を出るドラえもん。

 それでも続きが知りたいので、タイムマシンで来月に行って発売済みの10月号を立ち読みします。

 ところが半分しか読んでいないうちに、古風にはたきで本屋のご主人に追い払われるドラえもん。

 今月に戻ってくると、空き地でみんなにライオン仮面の続きについて話しはじめます。

 「あれからね、場面が変わるんだ。ライオン仮面の弟のオシシ仮面が登場する」
 兄を追ってくらやみ団本部へ乗り込んでいく!けど、あとは秘密。
 と、話を終わらせようとした瞬間、「きみっ、ぜひその先を教えてくれたまえ!!」と土管から飛び出してドラえもんにすがりつくフニャコ先生。

 「あんたの描いた漫画だよ」
 「まだ描いてないんだ」
 追いかけっこの末押し問答をする二人を、担当さんが追いかけてきます。

 気分を変えて土管の中で考えていたんだ(珍しい思索スペース)、と言い訳をするフニャコ先生を、早くしてくれないと間に合わない、と急かす担当さん。

 早く続きを教えて!!と先生に激しく揺さぶられ、しかたなくもう一度来月に行って続きを買ってくることになりました。

 担当さんを部屋から追い出し、来月号を読み始めるフニャコ先生。
「死んだはずのライオン仮面をどうやって助ける?」
「それが、オシシ仮面もつかまるよ」

 ドラえもんの言葉通り、紙面の中には、縛り上げられて吊るされ、悪の組織にとりかこまれているオシシ仮面。

ライオン仮面3.png

(獅子舞の面をかぶり、うずまき模様風呂敷風マント(?)姿。アメコミヒーローを思わせる二枚目マッチョの兄と自身を比べてなにか思うところがないのかが、どうしても気にかかる。)

「グエーッ!!」という絶叫とともに、炎に包まれるオシシ仮面。

ライオン仮面4.png

(11月号に続く)

「なんだこりゃ?こんな終わらせ方じゃあ、あとが困るじゃないか!」
「描いたのあんたでしょ」
フニャコ先生の逆ギレに唇が「3」になるドラえもん。

「あとのことは来月号までに考えようというわけか。」
「そうらしいね」
「なんという無責任なわしだ!!」
「ぼくは知らないよ」

 そうは言っても続きが気になって仕方がないフニャコ先生のために11月号を買いに行くドラえもん。

 「場面が変わって、オシシ仮面のいとこのオカメ仮面が出てる」(もはや「獅子」ですらない。)

 ここで「原稿まだですかっ!」と担当さんに怒鳴られ、12月号に物凄い不安を残しながらも、丸写しをはじめるフニャコ先生。

 その他雑誌の担当者も我慢できずに急かしはじめ、パニックを起こしたフニャコ先生は、ドラえもんにすべての雑誌の来月号を買ってこさせます。

 ドラえもんが戻ってくると、机の前で過労とストレスで倒れていた先生。

 「きみ、その雑誌を見て描き写してくれ」
そう言って強引に仮眠に入ったフニャコ先生を背に、とりあえずベレー帽をかぶらされ、一生懸命模写をするドラえもん。
 「ぼくのうつしたまんががのって、この雑誌がでるとすると……、まんがのほんとうの作者はだれだろう??」

(完)

 読者に期待させておいて難しい物語構成は来月に先送りする大人の事情とか、その渦中で「ライオン仮面」→「オシシ仮面」→「オカメ仮面」と、どんどんキャラ設定からしてシュールになるところとか、そんな自身の仕事ぶりに対するフニャコ先生の「なんという無責任なわしだ!!」という一部大人の深い共感を呼ぶ(含僕)セリフが見所です。

この作品、発表より約40年の月日を経て(1971年「小学4年生」掲載)現実世界で後日談が発生します。

1、2008年「オシシ仮面フィギュア化」
たった二コマしか登場しない、しばりあげられて「グエーッ!!」と叫ぶだけのこのキャラが、フィギュア化されて発売。

しかも、捕まって吊り下げられている姿の「通常バージョン」と、炎に包まれている「グエーッ!!」姿の「バーニングバージョン(大笑)」の二種類。

UDF オシシ仮面 (ノーマルVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF オシシ仮面 (ノーマルVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -


UDF オシシ仮面 (バーニングVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF オシシ仮面 (バーニングVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
アマゾンの購入者レビューには、「友人の誕生日プレゼント用に購入しました」、「会社の机に飾っています」等、原作ファンの方たちのお喜びの声が届いていました。
ちなみに二個セットで買った方が多い模様です。

 (補足、このフィギュアを作られた「メディコム・トイ」様、かの「きれいなジャイアン」等、原作マニア心をくすぐるセレクトのフィギュアを多く作っておいでて、商品紹介ページと愛に溢れた購入者レビューを見ているだけで楽しいです。なお、つい先日〈2016年8月24日〉「美男子のび太(コミックス8巻「消しゴムでのっぺらぼう」)」「カッコイイドラえもん(コミックス2巻「うそつき鏡」)の普及版が発売されたそうです。当ブログの同原作ご紹介記事はコチラです。)

UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

2、「オシシ仮面Lineスタンプ化」

藤子・F・不二雄プロ制作の公式高品質カラー作品。
「ドラえもん(泣いて笑って)」から購入可能。「グエーッ!!」という気持ちを表明したいときにおススメです。

(結局いつ使うんだと思いましたが、ご紹介者様いわく、「大ピンチを表すときに使えます」とのことです。なるほど……)

(参照:Neverまとめ 【ジワジワくる】よく使う?「LINEスタンプ」10選 まとめ作成者:eight-threeさん http://matome.naver.jp/odai/2143990485605740001) 

 この文を書くにあたり、ウィキペディア記事も参考にさせていただきましたが、こちらも非常にこまやかなウィットに飛んだ名文で、みなさんのオシシ仮面愛に胸が熱くなります。

 なんでよりによってこのキャラにこれほどの人気が発生するのかとやや不思議ですが、あの前代未聞のキャラデザインと(兄との差異と)、「グエーッ!!」のインパクトの前には理屈など無力です。

 フィギュア化情報を得てパソコンの前でギャハハと笑った僕もまた、心のどこかで長年オシシ仮面を愛していたのですから。

 たった2コマを約40年間ファンの記憶に刻み付けたフニャコ……いや藤子F先生はやはり素晴らしい。

 ときにはフニャコ先生同様ご苦労をして、土管にこもったこともあったかもしれませんが(それはないんじゃない?)先生の努力の結晶は、こうして不滅のものとして、2コマであってすら多くの方々を魅了し続けています。(オリンピック閉会式にもドラえもんが出てきてくれてうれしかったなあ……。)

 すぐれた作品構成、鮮烈なキャラデザインとギャグセンス、そしてファンの方々の不滅の愛情に心なごむ名作です。是非お手にとってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。



posted by Palum. at 06:10| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月25日

(※ネタバレ)ドラえもん「ホンワカキャップ」(飲めばホンワカ、でも飲みすぎると……)

ホンワカキャップ.png

本日はドラえもんのひみつ道具「ホンワカキャップ」(コミックス30巻収録)についてご紹介させていただきます。

(コミックス30巻 表紙でドラえもんが持っているのがホンワカキャップです。〈※この巻、前回ご紹介の「ねむりの天才のび太」も入っていておススメです〉)

ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -

 これを瓶につけて注いだ液体はホンワカ放射能なるものを帯びて、アルコールによく似たホンワカした気分になれるというひみつ道具です。

 なんと素晴らしい、と、思ったら、酔いすぎると危険というところまでアルコールに似ていて、大人の飲み会そっくりのトラブルが起こってしまいます。

 以下あらすじです。
(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)
一部仮名遣いを変更させていただいています。

 自慢の切手コレクションを、「一緒に切手を集め始めて、おまえばっかりたまるのはどういうわけだ」と逆ギレされたジャイアンと公平に分ける(=大量に持っていかれる)ことになったスネ夫。

 この件についてのび太に愚痴ったら「見せびらかしたりするからだよアハハ」とノー同情だったのに腹を立て、「他人の不幸を笑うな!!」と膝を蹴っ飛ばしてむしゃくしゃ顔で家に帰ります。

 口を滑らせたとはいえ、いきなり蹴られたのび太も非常に面白くない思いで家に帰ると、パパがお友達と家呑み中でした。
「いやなことはみんな忘れて楽しくやろうじゃないの」

 「大人はいいよな。お酒飲んで良い気持ちになれて」
不公平だと嘆くのび太に、ドラえもんが「ホンワカキャップ」を出してくれます。

 ジュースにキャップを付けて注いだものを飲んでみると、ホワ〜といい気持ちになるのび太。

 一口だったのですぐ覚めましたが、これはいい、と、キャップを持ってドラえもんと一緒にしずかちゃんの家に遊びに行きます。

 ホームサイズのコーラでさっそく家呑み開始。

 真っ赤な顔で、飲めや歌えの楽しい時間を過ごします。(しずかちゃんもちゃんと加わってる。)

 楽しかったけど飲みすぎたな、と、千鳥足で帰る途中、ジャイアンに出くわした二人は、
「いいものやるぞ!!いいからとっとけって」
と、ホンワカキャップを渡してしまいますが、酔いが醒めてから半べそで大後悔。

 「宴会やるからコーラ持って俺んちへ来い」
塾へ行こうとしていたのにそんなことをジャイアンに言われたスネ夫は断ろうとしましたが、
「俺とじゃ飲めねえってのか!?」
と嫌な先輩みたいな脅しをかけられ、仕方なしにコーラを一ケース持ってジャイアンの家に行きます。

 「じゃ、かる〜く一杯……」
「せこいこといわねえでガバガバやれ!」
(注、小学生の発言)

 しかし、一杯飲んだらいい気分になったスネ夫は、喜んでグラスを重ねていきます。
「もりあがったところで、カラオケといこう。」
「いよっ、待ってました!!」
 完全にどこかで見た光景です。

ホンワカキャップ2.png

 ジャイアンの家をゆるがす、あの有名な歌声。

 いつもならじっと耐えるスネ夫ですが、その日は違いました。
 しだいに歌を聴く表情が険しくなっていったかと思うと、コーラを手酌でガバっと飲み干し、吐き捨てるように言いました。
「ケッ!やめろやめろ、へたくそ」
「今なんと言った!?」
激怒するジャイアンの顔に激しくあびせかけられたコーラ。
「へたくそをへたくそといってなにが悪いへたくそ!!」

ホンワカキャップ3.png

 さらに、ジャイアンにかけたから空になったグラスをさしだし、
「ほれ、つげよ!!」
と酌を要求するスネ夫。

 「お前コーラぐせが悪いな……」
完全に圧倒されて、コーラをしたたらせながら言われたとおりにするジャイアン。
そろそろ塾へ行かなくていいの?と愛想笑いをしますが、るせえ!もっとつげ!!と命じられ、もうない、と答えた瞬間コーラ瓶が飛んできます。
「買ってこい!!」

ホンワカキャップ4.png

 もはや瓶から直飲みしながら、空瓶のいくつも転がる部屋にあぐらをかき、
「でっかい顔しやがって!!てやんでえ!!みんな泣かされてんだぞ。お前なんか町の公害だぞ!!バーロー」
と、こめかみに青筋を立てながら、日ごろのうっぷんをぶつけるスネ夫に対し、次第にうなだれるジャイアン。

 「グス……なにもそんなに……言わなくても……」
 そしてシャツで顔を覆い、肩を震わせ、さめざめと泣きだします。
「心の中では……みんなに悪いと……あたし、つらい!」

ホンワカキャップ5.png

 何故かオネエ化したジャイアン、その胸ぐらを容赦なく掴んだスネ夫、
「悪いと思ったら切手返せ!!」
と恫喝。
「返すわよ!!ほかの人のおもちゃも本もみーんな返すわよ!!(泣)」

ホンワカキャップ6.png

 家の前でホンワカキャップを手にしたドラえもんと、数冊の本を抱えるのび太。
「さっさと次の家へまわれ!!」
 巨大なふろしきを背負い、涙を浮かべるジャイアンの尻を蹴って追い立てるスネ夫を見て、のび太とドラえもんは
「さめた後が思いやられるなァ」
と、つぶやきます。

 大人の知人に、ドラえもんって大人になってから読むと違った面白さがあるんだよ、と伝えたいとき、一番例示に向いている回かもしれません。

 (絵的なインパクトとしては、ひみつ道具に煽られたしずかちゃんがとんでもない行動に出る「腹話ロボット」や、現代アートをもしのぐシュールさの「からだの部品とりかえっこ」が良いと思いますが。)

 ジャイアンのホンワカハラスメント(≒アルコールハラスメント)と、スネ夫の前代未聞の豹変ぶり(酔ってからの表情や台詞がやたら生々しい)が、大人心にツボです。

 彼らが口にしたのはあくまでホンワカ放射能ですが、私同様アルコールのもたらすいい気分につい惹かれてしまう方も、その先に待ち受けている危険を心に刻みたいとき、あのジャイアンにコーラを浴びせかけるスネ夫を思い出してみるといいかもしれません。

 もう数作、ドラえもん作品についての記事を書かせていただきますので、よろしければおつきあいください。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 06:32| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月24日

おススメテレビ番組情報と100日間リベンジ再び 4週目

 

※今回はおススメテレビ番組紹介+日記です。とりとめがなくなってしまいますがよろしければおつきあいください。

 まず、NHKで近々再放送されるおススメ番組情報です。

1,「フランケンシュタインの誘惑 人が悪魔に変わるとき スタンフォード大学監獄実験」
(2016年8月25日(木)BSプレミアム 午後5:00〜午後6:00)
 1971年、アメリカの名門、スタンフォード大学の、架空監獄施設で行われた実験を紹介した番組です。
 公式番組情報はコチラです。

 人間は与えられた立場により、たった数日で激変するという想定外の結果と、被験者への深刻なトラウマを残した心理学実験史上最大のスキャンダル。

 番組前半は、この出来事の記録を実際の映像と音声で紹介、後半では、この実験で得られた理論を悪用した(軍部が施設職員を残虐行為へと走らせた)と思われるアメリカ軍による捕虜虐待事件について言及しています。

 この警告は非常に示唆に富み、概要を知ることに意義があると思いますが、かなり残酷な場面が多い(特に捕虜虐待の証拠写真については、NHK内でも放送の是非が問われたのではというほどショッキングなものです)ので、ご注意ください。

 当ブログでこのスタンフォード大学監獄実験についてご紹介させていただいた記事はコチラです。

2,「地球ドラマチック 海からの使者 イルカ」

 8月29日(月) 午前0時00分〜0時45分
 野生のイルカたちと彼らを愛する人々との交流を紹介した番組です。(公式番組情報はコチラです。)

 餌付けなどをしなくても、人という生き物に興味を示してコミュニケーションをとろうとするイルカたちの様子や、独自のコミュニケーション能力(ホイッスルと呼ばれる不思議な発声など)について知ることができます。

 注目はアイルランドの島で単独行動をするイルカ「ダスティ」。

 イルカに魅せられたオランダ人人類学者ヤン・プローグ氏(イルカについては専門外ながら、彼が実際に海で出会ったイルカについて紹介しているブログが専門家からも注目を集めています。〈http://www.janploeg.nl/english.html〉)が海に入ると、どうやってか気配に気づいて近寄ってきて、戯れるように一緒に泳ぎます。
(ちなみに番組原題は「Dances with dolphins」。この美しい情景によく合っています。)

 取材で海に潜ったフランスの海洋学者セラノー氏の動きも興味津々で見つめている。

(※ただし、あくまで野生のイルカなので、水族館の人馴れしたイルカのように触ろうとするのは危険と警告されています。)

 ところで、ダスティが単独行動をしている理由として、彼女の理解者であるプローグ氏は、
「群れの中ですばぬけて頭がよかったからでしょう。人間の社会でも抜きんでたものははみ出し者になりがちです。おそらくダスティも群れから追い出されたか、自分から離れたのでしょう」
と推察しています。

 「寂しさに 宿を立ち出でて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ(百人一首 良暹法師)」……。

 せつねえですが、しかし、ゆえにプローグ氏たちとの友情を育むことができたのでしょう。

 ちなみにフランスの番組ですが、放送・番組内使用言語は聞き取りやすい英語なので、英語リスニング教材を探している方にもおすすめです。

当ブログ、イルカ動画ご紹介記事はコチラです。よろしければご参照ください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


3 再放送していただきたいな……。「地球ドラマチック 新種発見!?史上最大の恐竜」

 再放送予定不明なんでただの願望です。

 イルカ番組のためにNHKホームページ見てて、素敵な番組を見逃したことに気づきました……。

 2014年に発掘された巨大恐竜の全貌を追う番組です。番組公式情報はコチラです。

 憧れのBBC自然番組プロデューサー、ディビッド・アッテンボローさんがご紹介役だったのに見逃したあぁぁ!!(悔)

 この番組は今年2月にイギリスに制作されたものとのことなので、アッテンボローさんはこのとき89歳。(8月現在90歳。)

 御年のことを言うのは無粋というものですが、こんな現役バリバリに教養番組に登場なさる90間近の方なんてちょっと例が無いと思うので、是非再放送でその活躍を見せていただきたいです。

 番組情報ページ内、トレードマークの青い半そでシャツ姿の銀髪紳士がアッテンボローさんです。

BBCの動画が一部公開中なのでリンクを貼らせていただきます。(原題は「360° meet the largest dinosaur ever discovered - Attenborough and the Giant Dinosaur」)



https://www.youtube.com/watch?v=rfh-64s5va4

 あーあ、面白そうだなあ(泣)。

 NHKで放送されるとき、この方が出る場合はBBCみたいに「アッテンボロー」のお名前をタイトルに入れておいていただけると嬉しいのですが……。

 (イギリスTV界草創期の功労者にして巨人なので、あちらでは「アッテンボローさんが出る」というところは必ず強調されます。)

 7月23日放送だったそうですが……当時の自分は「もっと頑張んないとなあ……(グダダラ)」みたいな日々でした(今も似たようなもんだがもっとヒドかった)。

 そうこうしているうちに良いものはどんどん発信されていっているのだと痛感……。

 近々、この方の別番組についてもご紹介させていただきたいです。 


 以下より、日記です。俄然無益な情報のみになります。(書かない方がいいのでは)

 ブログ毎日更新とかダイエットとか、生活習慣改善とか頑張るぞー!と、はじめた100日間チャレンジ4週目のご報告です。(これまでのご報告一覧はコチラ

1,ブログ更新日時ミス

 先週、100日連続ブログ更新が寝過ごして20日で途切れてしまいましたうわああああ(嘆)と書き、反省して仕切りなおしたのに、間違えて22日中にブログ更新しそこねてしまいました。先週みたいな思いは二度としたくないと早めに仕上げて寝かしといたのに寝かせすぎた……。

 一度ある程度続けたものに挫折してしまうともう一度軌道に乗せるのが大変だとよくわかりました……(汗)。

 グダグダになってしまい申し訳ないのですが、あきらめたわけではないので、23日より再々仕切り直しとして(汗2)、11月末までの連続更新を目指します。

 今、毎日ブログ更新をしようかな……と思っている方がいらしたら、極力書き溜めておくことをお勧めします(最低でも1週間分)。

 私はそれまで続いていた無気力期から抜け出すために、一番好きなものを頑張ってみようとブログ更新を始めたのですが、「がんばりまーす」とノーストックで宣言だけして始めてしまった結果、自転車操業となってしまいました。そして、書き溜めていないと好きなものですら謎の義務感に圧迫されながらの作業となり、ちょっと辛いときがあります。
 でも、見て頂き始めないと気力がわいてこないっていうのもまた真なんですけどね……(困)。

 今後はこまめに時間をとって先の記事を書いて、忙しい時や体調不良のときに備えます。

2,ダイエット

 一昨日より体重計が壊れていて計測不能なので、来週に持ち越させていただきます。
(家電って壊れるとき同時期にクル気がするのですが、ウチだけでしょうか……今洗濯機や冷蔵庫も一斉に調子悪くて困っています。なんでみんなそんなに仲がいいの。)

 ただ、計測してないけど先週よりちょい増えな予感……(嫌な予感)。
 1の記事書き溜めが順調に進めば、寝不足から抜け出せてペースアップできると思うんで頑張ります。

3,減酒

 先週飲んで寝落ちしたせいでブログ更新できなかったんで、さすがに懲りてあまり手をだしていません。

 ただ、目標の「人といるとき以外は炭酸水に置き換えて完全ノンアル」まではいけてないです。
 忙しいとついビール等を買い物カゴにシノばせてしまい、帰って半缶くらいくぴっとやりたくなっちゃう傾向があります。

 基本半缶なんだからそんなに気にしなくてもと思う自分と、その一口が時に暴走して、ブログとかダイエットを危機に晒すんじゃん!という自分が毎日脳内口論を繰り広げている状況です。頑張れ後者。 

 明日は、愛するドラえもんの中で飲酒の喜びと危険性を暗示した大人向け名作「ホンワカキャップ(コミックス30巻収録)」をご紹介する予定です。
(ドラえもんたちが飲んでるのはアルコールじゃないけど、明らかに大人の飲み会がモチーフになっている作品。)

ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -

 読んでくださってありがとうございました。

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2016年08月23日

(※ネタバレ)ドラえもん「驚音波発振機」(ジャイアンの歌による害虫・ネズミ駆除)

 
 今日もドラえもんの話題です。(好きなんで……。)

 害虫に悩まされるこの時期、「あんなこといいな、できたらいいな」と言うにはリスクが高いけれど、しかし駆除効果抜群のひみつ道具のお話です。(コミックス17巻収録)

ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -


(以下、結末までネタバレですのであらかじめご了承ください)一部仮名遣いをひらがなから漢字に一部改めさせていただいています。

 冒頭、不機嫌そうに町を歩くジャイアン。
 
 新曲を作ったのに(作ったから)、突如子供たちが町から姿を消したのでストレスが溜まっています。

 ドラえもんに何とかしてもらおうとジャイアンから身を隠しながら逃げ帰ってきたのび太でしたが、家から飛び出してきたドラえもんと正面衝突します。

 ジャイアンのことを話そうとしてもテンパってて聞きもしないドラえもん。家でドラえもんの天敵、ネズミに出くわしてしまったのです。
「おおそうだ!爆弾で家もろともふっとばしてやれ!」

驚音波発振機1.png

 なんて物市販してんだ未来デパート。
 
 ドラえもんをなだめて、未来のネズミ取り機を使えば良い、とアドバイスをするのび太。

 浮かない顔で、「驚音波発振式ネズミ・ゴキブリ・南京虫・家ダニ・シロアリ退治機(※)」を出すドラえもん。(※全ドラえもんのひみつ道具の中で最長の名前を持つそうです。ウィキペディアより。)
 超音波で害虫、害獣を駆除する機械を発展させたものだけれど、その驚音波のテープは無くしてしまって手元にない状態。

 するとのび太が、ジャイアンの新曲を使うことを思いつきます。
 のび太の提案に瞠目するドラえもん。
「そうか!!歌わせてこの機械にかけて、音波の中でも特に有毒な部分を取り出し、うんと強めれば……」
 ひどいこと言ってる。
驚音波発振機2.png

 ジャイアンに、是非新曲を家で聴かせてほしいと頼みに行く二人。

 「心の友よ!!」と感涙するジャイアンを連れて戻ってきますが、有毒音波を流すにあたりママを避難させなければなりません。(ジャイアンの歌≧バルサン)

 しかし、なんのことかわからないママからぴしゃりと断られてしまったので、やむをえずタケコプターを付けてはるか上空へ強制退避させることに。
「ママの命をまもるためしかたがなかった」

(地味に笑いを誘う一コマ)
驚音波発信機3.png

 ひそかに耳栓をして、度胸を決めると、部屋にある驚音波発振機については「歌の力を強める機械」とボヤかし、歌い始めてもらう二人。

 耳栓すらも貫通する驚音波に耐えていると、押し入れからゴキブリがよろけ出てきて、力尽きて息絶えます。

 「すごいすごいその調子!」「もっともっと」
二人の喝采に気を良くして歌いまくるジャイアン、やがて、窓や壁にひびが走ります。

 そして激しく揺れきしむ天井。

 敵とはいえ、ネズミたちの阿鼻叫喚に、

 「ものすごい悲鳴!この世のものとも思えない」
と戦慄して身を寄せ合うドラえもんとのび太。

驚音波発信機4.png

 劇場の大シャンデリアを揺らしたという伝説のオペラ歌手マリア・カラスに匹敵するほどの超絶声量です。(質はともかく。)

 「あっ、見ろ!」
窓からネズミ一家が命からがら逃げ出してゆくのを確認したドラえもんは
「よかった!!」
とのび太にしがみついて泣き崩れます。

「喜んでくれて俺も嬉しい」
食い違ったまま満足げに汗をぬぐうジャイアン。

驚音波発信機5.png

 数日後。

「ネズミ・ゴキブリ・南京虫・家ダニ・白アリ!! 全滅させます。料金――百円 のび太消毒社」
部屋に散らばるチラシを見て大慌てするドラえもん。

 のび太はしずかちゃんからの白アリ駆除依頼電話応対中でした。
「うんすぐ行く。あぶないから誰も家に残っていちゃいけないよ」
 そしてすぐにジャイアンに電話。
「やあジャイアン。またきみの芸術にひたりたくなったんだけど……」(←笑)
 今日の会場はしずかちゃんの家だよ、とワルイ顔で電話を切るのび太に、ドラえもんは「ばれたら殺されるぞ」と警告します。
 方法は秘密にしてあるんだからばれっこない、と、聞き入れようとしないのび太。

 「ジャイアンもよろこぶ。しずちゃんもよろこぶ。ぼくはもうかる。こんないいことやめられないや」
……とドラえもんの心配をよそに、笑顔で驚音波発振機を持って出かけてしまいます。

 しかし、さらに数日後。

 「心の友よ、頼みがある」
のび太宅を訪ねてきたジャイアン。
「スネ夫の家のゴキブリを退治したそうだな。うちも頼む」

 ジャイアンの家。
「なんだ、歌の機械じゃないか。それでどうやってゴキブリとるんだい。はやくやってみせろよ」
 笑顔で興味津々のジャイアン。無言で機械を操作するしかないのび太。

 その顔をうかがい知ることはできませんが、その後ろ姿からは幾筋もの冷たい汗が流れていました……。

驚音波発信機6.png

(完)

 かけたものがなんでもおいしくなる「味のもとのもと」をかぶってしまったジャイアンを一口でいいから食べようと目のイってしまったのび太たちが追いかけまわす「ジャイアンシチュー(コミックス13巻収録)」と並ぶホラーエンディング。

ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -

 前者がパニックムービー調なら、こちらは迫りくる惨劇をほのめかしながら無情にもフェードアウトしていく静的構成です。

 100円で全害虫害獣が駆除できるなら(窓と壁の修繕費が発生するかもしれないけど)破格だから、アイディア自体は良かったんですけどね……。

 のび太はよくドラえもんの道具を活用(≒悪用)して(しばしば無断で)新商売を始めるのですが、軌道に乗るかと思いきや何らかの理由で水泡に帰すというのが定番です。その中でも一番恐ろしい結果になった(に違いない)のがこの回。

 このコミックス17巻には、この他にも、ふりかけたものが五分おきに倍になる薬(一個の栗饅頭にかけたら二時間で1677万7216個に増える)「バイバイン」、宇宙人を呼び寄せてしまう「未知とのそうぐう機」など、扱いを間違えると恐ろしいことになるひみつ道具(そしてもちろんのび太は間違える)が登場して面白いです。
 是非お手にとってみてください。(当ブログ「未知とのそうぐう機」ご紹介記事はコチラです。)

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 00:00| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月21日

(※ネタバレ)のび太、オリンピック選手候補に?「ねむりの天才のび太」


ねむりの天才のび太5.png


 前回、射撃のオリンピック出場者(張 富升選手〈中国〉)がのび太に似てるとのウワサが……という話題をご紹介させていただきましたが、原作内でのび太が未来のオリンピック選手としてその才能を嘱望された回がありました。

 種目名は「いねむり」(スポーツじゃない)。

 どうして誰も射撃の選手になることを勧めてあげなかったのかということについては残念ですが、ネット上の、
「のび太がオリンピックのクレー射撃に出たら、金メダルですか?」
「出たら金メダルですが、のび太君の場合、寝坊→遅刻→失格という天敵がいます」
という秀逸なやりとりどおり、大いにありうること(※)なので、ならば種目「いねむり」のほうがより選手として安定した活躍が見込めそうです。

(Yahoo!知恵袋よりhttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13142800933

 (※)大人になっても、愛するしずかちゃんとの結婚式にすら寝坊して遅刻しかけている。(日にちを間違えるというダブルミスでセーフ)(「のび太の結婚前夜」コミックス25巻)

ドラえもん (25) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (25) (てんとう虫コミックス) -

 こののび太のいねむりの才能について余すところなく堪能できるのが、「ねむりの天才のび太」(コミックス30巻)です。

ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -


 のび太が「もしもボックス」で世の中を「ねむればねむるほどえらいという世界」に変えた結果、身の回りの人々はおろか、日本中から尊敬を集めるというお話です(笑)。



 以下あらすじです。(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)



 今日も学校で居眠りをして先生にきつく叱られたのび太。

 学校からの電話を受けてお説教をするママの前ですら寝てしまい、怒りを倍増させてしまいます。

 「いねむりしながらおきていられるくすり(難しい)をだして」とドラえもんに泣きつこうとしますが、ドラえもんが部屋にいなかったのでまたひるね。

 帰ってきたドラえもんが「ゆめグラス」でのび太の夢の中を覗いてみると、見ていたのはひるねの夢(南国でハンモックにゆられているという、なかなか大人心をくすぐるリラクゼーション夢)。

ねむりの天才のび太2.png

 あきれかえるドラえもんに、
「むりしておきたってべつにいいことがあるわけじゃなし……」
と、何やら目の奥がツンとするセリフで反論し、おきてりゃえらいなんて誰がきめたんだろう、と、また眠りかけたのび太。
 しかし、ここで、「もしもボックス」を使って、逆に眠ればえらいという世界にすることを思いつきます。

 翌日より、授業中の居眠りも先生から絶賛され、眠れない他のクラスメート全員が廊下に立たされる羽目に。

 女の子たちや出木杉君にまでその能力を羨望のまなざしで称えられ、いい気分で帰宅するのび太
(ジャイアンとスネ夫は「へんな世の中になったなあ」と腑に落ちない顔。)

 昼寝をせずに家事をしているママを見とがめて、
「やる気がないんだ、ねむくないからとおきていれば、いつまでたっても眠れないよ」
 と正座でお説教、ママは優秀な息子に頭が上がりません。

 うとうとしかけていたのにのび太の帰宅で目がさめてしまったというドラえもんに、こんなことくらいで目が覚めるのは本物じゃないからだ、と、一蹴するのび太。
「ぼくなんかこうだぞ」
 枕代わりの座布団を手に、本物のいねむり(?)を披露するのび太。
 見事、たたまれた座布団が床に落ちると同時に眠りに落ちます(本当にすごいはすごい)。

 そこにしずかちゃんが訪ねてきて、中学進学時の「ひるねテスト」を習得するべく、のび太先生の指導を申し込みます。

「体の力を抜いて、頭の中をからっぽにして、なんにも考えないで……」
 のび太にそう言われても、テストのことなど考えてしまうしずかちゃんはなかなか眠れません。
「頭の中をからっぽ!ど〜してこんなかんたんなことができないの!?」
「そりゃのび太の頭はもともとからっぽだもの」
 隠れ失言王ドラえもんの冷酷な指摘から口論になる二人。やかましくて眠れないとしずかちゃんが起きてしまいます。

ねむりの天才のび太1.png


 「やりかたをかえよう。目を閉じて……なにか楽しいことでも考えよう。と、いっても、ワクワクこうふんするようなことはだめだよ。なにかおだやかな、のんびりした……そうだ春の野原を想像しよう。お日様、そよ風、一匹の蝶がひらひらと……つづいて二匹目のちょうがひらひら……」
 今流行の瞑想を先取りしたような見事な誘導で、しずかちゃんを眠りにいざなうことに成功します。
(真面目な話、今個人的に、眠りに落ちるためのリラクゼーション音声とかちょいちょい聞いていますが、結構、誘導時の間の取り方とかイメージするものとかが似ています。のび太すげえ。)

 涙すら浮かべて感謝するしずかちゃんの口コミで先生のもとへつめかける女の子たち。

 さらに、教養番組「正しいひるね」への出演依頼が舞い込みます。

 いねむり評論家由目見さんから
「眠りは世界を救う!!ねむりながら戦争はできません。平和のため、のび太先生をお手本にして、みんなねむりましょう」
と、部屋に入ったロケカメラの前で紹介されます。

ねむりの天才のび太3.png

 さっそくもはん演技として、かの「座布団落下時にはもう寝ている」技を披露するのび太。

 この驚異の早業に対し、スローモーションによる分析が入ります。
 
 今回は頭の上で手を組んで寝るスタイルだったのですが、実は中空ですでに両手を上げて、たたまれかけた座布団の上で目を閉じ、眠りのポージングをとっています。(「う〜む、むだのないアクションですなあ」〈by由目見さん〉)
 眠りに落ちるまでの時間は驚異の0.93秒。(「おそらく世界新記録でありましょう!!」)

ねむりの天才のび太4.png

 「あのねすがたのみごとなこと。一すじのよだれがなんともいえませんねえ。ねむりの天才というほかありません」

 テレビの中でアップになるのび太のスヤ顔(一すじのよだれ付)。
「オリンピックのいねむり種目に、日本代表として、大活躍が期待されます」
(そりゃもうウサイン・ボルトばりの伝説の絶対王者ぶりを発揮することでしょう。)

 テレビでののび太の圧倒的ないねむりぶりを知り、これまでの非礼を土下座して泣きながら詫びるジャイアンとスネ夫。
 絶対王者は、王者の風格漂う笑みを浮かべ
「つまらないうらみは水に流し、手をとりあってねむりの道をきわめよう」
と二人を赦します。

「しずかだねえ……この平和が永久につづくよう祈ってぼくらもねむろうか」
 ねむりの天才がゆったりと見つめる先には美しい満月。
 天才の慈悲深さに感涙するジャイアンとスネ夫。

 しかしその前に晩御飯たべなくちゃ、と、空腹を抱えて家に戻るのび太。

 息子の言いつけどおり寝ていたママは食事の準備はおろか買い物も済ませておらず、あくび混じりにでかけましたが、みんなすでに眠っていて何も買えませんでした。

 愕然とするのび太、しかし次の瞬間に居眠り運転のダンプが突っ込んできて、居間が大破。
 さすがの天才もたまらず「もとに戻して!!」と「もしもボックス」に駆け込んだのでした。

(完)

 中学入試の「ひるねテスト」って何とか、由目見さんって誰とか、ねむりの道って極めた先はどことか、気にになるところまみれですが、のび太の「あたまをからっぽに」という誘導とか(ドラえもんには酷いこと言われていたけど……)、のどかな野原を想像させるところとかは、ヨガや瞑想の世界に通じていると気づいて、ちょっと真面目に感心してしまいました。

 クライマックスは、放り投げた座布団の着地点を確認せずに中空で眠りのポージングに入っているスローモーション映像。スピードを妨げないという点において、今回王者ボルトのいるジャマイカチームに次いで銀メダルをとった男子陸上400mリレーのバトンパス技術をも彷彿とさせます(しないよ)。

 のび太がもしもボックスに入って世の中の価値観を逆転させるエピソードは他にも数編あり(お金のいらない世界とか)、いずれもこの回に劣らぬウィットに富んでいます。いずれまたご紹介させていただきたいです。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:03| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月20日

きれいなのび太、オリンピック射撃競技に出場?(歴代きれいなのび太ご紹介つき)


きれいなのび太.png

 オリンピックで盛り上がる2016年8月中旬、こんな話題がネット上をにぎわせました。


 「中国の射撃の選手にのび太ソックリな人がいる」

 「男子25mラピッドファイアピストル」という種目で、決勝進出まで果たしたその選手の名前は張 富升(チャン フーシェン)。

 惜しくも4位でメダルを逃しましたが、丸いメガネにかっちりとした前髪で射撃の名手というスペックがまんまのび太だろと日本で騒がれ、果ては中国までその話題が波及していったとのことです。

 ちなみに、のび太の射撃能力についてですが、「未来のシューティングゲームで世界最高記録をたたき出す」「タイムマシンで西部に行った際に、たったひとりでならず者の集団を(麻酔銃で)壊滅させる」など、けた外れのものがあります。(コミックス24巻「ガンファイターのび太」より)

 ドラえもん (24) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (24) (てんとう虫コミックス) -

 世界最高得点獲得時には、ドラえもんからも興奮した口調で天才とたたえられますが、興奮が過ぎて「じつにふしぎだ!ほかになんのとりえもない、頭も悪い、のろまでぐずで……」とド失礼な感想が付け加えられています。
(大人ドラファンの間では有名ですが、ドラえもんはちょいちょいのび太にシビアな発言をします。)

 のび太の射撃シーンとしておそらくもっとも名高いのは大長編「のび太の宇宙開拓史」のクライマックス。

大長編ドラえもん (Vol.2)  のび太の宇宙開拓史(てんとう虫コミックス) -
大長編ドラえもん (Vol.2) のび太の宇宙開拓史(てんとう虫コミックス) -

 悪役ギラーミンから、「腕利きのガンマンときいた。おまえと対決できるのを楽しみにしていたぞ」と決闘を申し込まれています。

 これに対し「ぼくにまかせてくれ。なあにまけるもんか」とみんなを下がらせて受けて立つのび太。繰り返しますがのび太。

のび太の宇宙開拓史.png

 射撃がかかるとのび太はこんなにも頼もしくてカッコイイのです。

 (補足)のび太の射撃について、驚くべき緻密さで統計をとっていらっしゃるサイトを見つけました。
射撃エピソードを含む全タイトルや標的、命中率まで読むことができます!
 「遠足新報」(のび太の特技分析・射撃編―「スナイパーのび太」の射撃シーン全リスト より)
 http://www.hatosan.com/ensoku/2011/05/post-32.html


 そんなかっこいいほうののび太実写版と日本をざわつかせた張 富升選手の画像が見られるURLはコチラ。(おそらくオリンピック期間中限定公開と思われます。)
「男子ラピッドファイアピストル決勝見逃し」(8月14日)

http://sports.nhk.or.jp/video/element/video=27319.html

 張選手は17:10ごろに登場します。黒いサンバイザーが目の上ギリギリの直線前髪みたいに見えるから余計似ているんですね。

張選手についての「R25」掲載のニュースはコチラhttp://r25.jp/off/00052263/ 
(「東京五輪ではメダル獲得なるか のび太が射撃で五輪出場?「思った以上に似てる」の声」)

 読ませていただいた範囲で、一番張選手について細かに情報を集めてくださっていたニュースはコチラです。(芸能ニュースJP 8月18日「【画像】リオ五輪に野比のび太現る…&彼女持ちか??」)
(原作のび太の華麗な拳銃さばき画像も見られます。)

 さて、動画や写真を観ていただくとおわかりになると思いますが、張選手は鋭い目に整った顔立ちで、クールなイケメンです。

 しかも身長184pで立ち姿がきれいですし、あの無造作な髪形やメガネ男子っぷりもスタイリッシュに見え、のび太だとしても「表参道を歩く個性派モデルのび太」といった趣です。

 メガネの形がちょっと違えば、普通にカッコイイ選手と認識されたでしょうが、僕としては「きれいなのび太」として好感度うなぎのぼりです。
 まだ22歳とのことなので、東京オリンピックにも是非そのままのスタイルでいらしてください!!

 ところで、張選手ほどかどうかはわかりませんが、コミックス内には「きれいなのび太」が見られるエピソードがいくつかあります。
(※「ドラえもん」全作品内でも屈指のレジェンド「きれいなジャイアン」についての当ブログ記事はコチラ

以下にまとめさせていただきましたので、是非コミックスをお手にとってみてください。

 1,「うそつき鏡」(コミックス2巻)

ドラえもん (2) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (2) (てんとう虫コミックス) -

 「今までぼくの顔はまんがみたいだと思っていたけど、こ、これはほんとにぼくだろうか!?」
と鏡をのぞき込むのび太。(当記事冒頭引用画像)

 今となるときれいなのび太の側に時代を感じるところがまたいい。

 人間に偽りの美貌を見せて虜にした挙句、もっと美しくなるためにと無茶苦茶なアドバイスをする、なんのために開発されたのか、まったくわからないタチの悪い鏡の話。

 まんまとそそのかされてキメ顔(と、うそつき鏡に言われた変顔)をするのび太は、ドラえもんに叱られても鏡にへばりついておせじを聞くのをやめられなくなります。(怖い)

 なお、この作品のタイトルページにすらりと足の長い、ダンディなドラえもんが登場するのですが、こちらは「かっこいいドラえもん」の名でフィギュア化されています
((笑)と書こうと思ったら、限定版は現在8万円近辺でひっくりかえりそうになった。)。

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
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VCD かっこいいドラえもん ワンダーフェスティバル2010(冬)開催記念限定 -
VCD かっこいいドラえもん ワンダーフェスティバル2010(冬)開催記念限定 -



2,「消しゴムでノッペラボウ」(コミックス8巻)

ドラえもん (8) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (8) (てんとう虫コミックス) -

 しずかちゃんが、絵の上手な五郎君の描いた絵を素敵とほめたことから、この絵の少年のような顔になりたいと考えたのび太。

 それではとドラえもんが「取り消しゴム」と「目鼻ペン」を使い、のび太の元の顔を消して書き直すことを提案します。
(最初はドラえもんが絵を元に描いてくれようとしたが、失敗した福笑いみたいにされてしまったので、五郎君のもとに紙袋をかぶって尋ねていく羽目に〈笑〉)

 五郎君作ののび太(後で嫉妬したスネ夫に加筆されて台無しになります。)

きれいなのび太2.png


 こののび太のフィギュアも「美男子のび太」として8月24日発売予定だそうです。(スネ夫に加筆されちゃった顔付〈笑〉)張選手効果で売れ行きアップしそうですね。

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

 ところでこのとき、容姿にこだわるのび太に対し、ドラえもんが「くだらないことを気にするんじゃないよ。男の価値は顔じゃないぞ。中身だぞ。……もっとも君は中身も悪いけど……」と、はげますつもりでうっかりのび太の価値を全否定してしまっていました。


3,「顔か力かIQか」(コミックス40巻)←シビアなタイトル……

ドラえもん (40) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (40) (てんとう虫コミックス) -

 出木杉君との全方位的な差異を嘆くのび太に、「いいとこ選択しボード」を貸してあげるドラえもん。

 自身の総力の範囲内で、顔、力、IQの数値を変更できる(なにかの力を上げるなら代わりになにかを下げなければいけない)ボードを利用し、「体力を下げてでもかっこよくなったのび太」

きれいなのび太3.png

 なお
「たいしたことないな」
と鏡の前で不満げなのび太に
「もとがもとだからね、ぜいたくいっちゃいけない」
と、またしても問題発言を混ぜ込むドラえもん。
(この後、きれいなのび太がジャイ子に惚れられてしまい、大トラブルに発展していました。)

 以上です。全エピソードとても面白くておススメです。(個人的にはエキセントリックな「うそつきかがみ」が推し回です。)

 当ブログでは今後もドラえもんご紹介をさせていただきますので、よろしければまたお立ち寄りください。(次回記事は原作のび太が実際オリンピック選手候補になりかけた「ねむりの天才のび太」についてです。)

 読んでくださってありがとうございました。

(訂正)引用画像内の藤子先生のお名前を一度「不二夫」と誤記してしまいましたので、お詫びして訂正させていただきます。大変申し訳ありませんでした。

posted by Palum. at 04:29| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月19日

ロシアの犬風狐たち(50年間の実験で明かされた遺伝の秘密)(NHKドキュメンタリー「オオカミはこうして犬になった」より)

 本日は約50年前からロシアで実施された、風変わりな狐の実験についてご紹介させていただきます。

 NHKドキュメンタリー「オオカミはこうして犬になった」(2011年初回放送)でもとりあげられた、犬の進化の過程を解き明かすための実験です。

 比較的人に警戒心を示さない狐を代々つがいにした結果起こった、驚くべき変化。

 それは、それまで突然変異と思われていた、オオカミから犬への性質や容姿の変化を解き明かすヒントといわれ、遺伝学上の大きな発見でした。

 個人的な話をしますと、正直、理数系は壊滅的な奴なんで、遺伝がどうのと言われてもよくわからないのですが、わが愛する犬という種族がからんでいるのと、可愛いのとで番組ガン見してみたら(細かいことはイマイチよくわからないなりに)とても面白かったです。

 1959年、動物の家畜化、特にオオカミが犬に進化した過程を調べていた遺伝学者ドミートリ・ベリャーエフ氏は、当時、ロシアで毛皮採取用に飼われていた毛皮農場の銀狐たちの中に、野生そのままに人間に強い警戒心を見せる狐と、人間が近寄っても威嚇せずに好奇心を示す狐がいることに注目、狐たちをその性質で二分割して集め、繁殖を開始しました。

 実験の様子がわかる動画はコチラです。

「Dogs evolution contradicts Darwin, Rate My Science」(RateMyScienceチャンネルより)※英語解説付



https://www.youtube.com/watch?v=ZEOjlsUd7j8

 実験中、警戒心が薄い穏やかな狐カップルから何割か両親の資質を引き継いだ穏やかな子ぎつねが生まれ、またその子供たちのうち穏やかな狐同士をつがいにし……ということを繰り返した結果、以下の現象が起こりました。

 1,世代を重ねるごとに、(可愛がられて後天的に、ではなく)生まれながらに人を恐れない狐(研究所では「エリート」と呼ばれる)が生まれる確率が高くなった。
  ※6世代目ではわずか1.8パーセントだったものが、50世代目では85パーセントまで増加

 2,狐たちがただ人を恐れないだけでなく、犬のように尻尾を振る、甘え鳴きをするなど、人に積極的に親愛の情を示すようになった
  ※ヴェリャーエフ氏の弟子で研究の後継者トルート博士によれば、尻尾を振りだしたのは4代目から。

 3,「エリート」狐は野生の狐と異なる形状になっていった。
  (例1)額が広く、鼻面が短くなる
  (例2)たれ耳、巻尾になる
  (例3)白いぶちが生じる、または全身白くなる 
     ※元々は黒地に表面のみ白い毛が覆っている

 そして今。

 おでこの広い、鼻先の丸い(心なしか眼もくりくりしている)狐が「ふめめぇぇぇ!」と、本来赤ちゃんが母親にする甘え鳴きをして、ふさふさ尻尾をばっさばっさ振ってお腹を見せて撫でてアピールをしたり、人を見るとテンション上がってふぐふぐ鼻息をあらくして、口をぱかっと開けた笑顔で、あがが…とさしだされた手を甘噛みしたりするようになりました。


 美しい毛皮とすらりとした端正な姿で、顔と声は赤ちゃんみたいで朗らかで人懐っこい。

 この世にいまだかつてこれほどギャップ萌えな生物がいたでしょうか。

 ウィキペディア記事に画像があったのでご覧ください。(画像提供:Kayfedewa)

「A Russian Domesticated Red Fox with Georgian White fur color」

Georgian_white_Russian_domesticated_Red_Fox.jpg

「A Russian Domesticated Red Fox with classic red fur color」

Red_Color_Russian_domesticated_Red_Fox.jpg

 か、かわいい……鼻が……鼻の先がこう、ぷくっと丸いのが……ぜえはあ(落ち着け)。

 この狐たんたちと一緒に狭い部屋に閉じ込められたら「死因、萌死」で密室殺人が完成してしまいそうです。

 いやしかしホントに可愛いので、NHKで取材に行かれた生物学者の福岡伸一(※)先生も、犬みたいに綱つけてお散歩に行った狐たんが、先生から差し出されたペットボトルを、「ナニコレナニコレ」と、あががと噛んで遊んだり、お腹出してコロコロ転がって先生に撫でてもらったりするもんだから「ちょっと……日本に持って帰りますかね……」と笑顔で悩殺されていました。

(※)前回、記憶の遺伝を扱った阿刀田高氏のエッセイ「遠い記憶」の記事で、最新のネズミの記憶実験について引用させていただきましたが、そのコラムの筆者が福岡先生でした。気づかなかった……。

 ちなみに、今はこのエリート狐の親戚たちが、ペットとしてロシアで飼われているそうです。まあそうなりますよね……。

 こうして、野生動物から人馴れした性質の動物が生まれるまでの過程として、単純な突然変異の産物ではなく、穏やかな性質のカップルを選んで、その子を育てるという方法を繰り返したのではという説が有力視されるようになりました。

 (別の番組で観たのですが、逆に言えば、野生の本能というのは単に幼い頃から可愛がっていればどうにかなるとは限らず、犬と遺伝子上は非常に似通っている狼を、ごく小さい頃から人と同居させても、大きくなるにつれて動作や気象が荒くなり、同じ場所にいることはできなくなる可能性が高いそうです。)

 では、なぜ「エリート」狐たちに形質的変化が出てきたのか(お鼻ぷっくり萌え萌えわんこ顔とかになってきたのか)ということについてですが、これは警戒心の減少により、大人になってもストレスホルモンを分泌する遺伝子が機能せず、野生なら成長した時点で起こる遺伝子の働きによる容姿の変化が無い、言い換えれば子供の姿を残したままで成長するという結果になるからだそうです。

 そして、このように野生の狐と「エリート」狐が同様の遺伝子を持ちながら、「エリート」狐は警戒心が無いために、特定の遺伝子の働くタイミングが野生の個体と異なる、そのタイミングの差異(そしてそれに伴う容姿の変化)すらも、子は受け継ぐということが、この研究で裏付けられたそうです。
(耳や尾の形、体色の違いも、このタイミングの差異が影響を与えたものと考えられています。)


 ……この「顔が野生の狐と違う理由」という話を聞いて我が愛犬を思い出しました。

 鼻面が短く、大きなぷっくり鼻をして、眼も大きく、晩年にいたるまで、なにやらきょとんとした童顔でした。

 そして基本穏やかな犬だったのですが、身内にはテンションが高く、この狐たんたちのようにぐーとかあーとか変な声を出したり、あががと手をくわえる癖がありました。
(※ 現在は甘噛みはしつけで治すのが一般的みたいですが、ほんとにくわえるだけだったので別にやめさせなかったです)

 ずいぶんと苦労をかけてしまったのですが、なぜかあまり容姿が大人化しなかったのは、私ら一家があれだけ頼っても、あの犬が警戒心やストレスを感じないようにしてくれていたからなのだろうかと思うと、ありがたいような、済まないような気がします……。

 元来、人を支えて働く優しい犬種だから、あの犬もその気質を引き継いで頑張ってくれたのかな……。

 すみません、最後は勝手にしんみりしてしまいましたが、以上、不思議なカワイイ狐のお話でした。

 参照したウィキペディア記事はコチラです。
 https://en.wikipedia.org/wiki/Russian_Domesticated_Red_Fox

 近日中に、ロシアではないのですが、同様に非常に人馴れした狐たちのおススメ動画をご紹介させていただきますので(この記事書くんでいろいろ見ていて見つけて鼻血ブーだった)、よろしければまたお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 00:01| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月18日

(ネタバレあり)「垂直デスマッチ」(椎名誠『わしらはあやしい探検隊』より)


先日、蚊の話でもご紹介させていただいた、椎名誠さんの名作エッセイ『わしらはあやしい探検隊』より、椎名さんたちが遠泳に行った際に起きた事件を描いた「恐怖の神島トライアングル」「垂直デスマッチ」についてご紹介させていただきます。

わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -
わしらは怪しい探険隊 (角川文庫) -

椎名さんと沢野さんでなければもしかすると死んでいたのではという状況(二人とも運動神経が良い)なのですが、椎名さんの独特の比喩と妄想がさく裂し、申し訳ないけれど人の大ピンチに大笑いさせられてしまう名文です。

以下あらすじご紹介です。


(ネタバレですのであらかじめご了承ください。当然原文のほうが全然断然面白いので、読んでない方は先に是非そちらをお読みください。)


前に椎名は10km泳げるって言っていたよな。神島一周なら約4kmだから余裕だろう。

そんな話をキャンプの同行者にされた椎名さんは、つい「できる」と答えてしまいます。

そして同じく泳ぎが得意だと言っていた沢野さんとともに、遠泳に旅立つことに。

(実はこの出発の二日前、参加者全員が数百万匹の蚊の大群、通称「蚊柱」に襲われ、テント内でリアルに命の危険を感じながら死闘を繰り広げたというのに、翌日は襲われずよく眠れたからと4km泳ごうとする丈夫な人々。)

島のへりはそのほとんどが崖に囲まれているとはいえ、歩ける浜辺は歩いていいというルールでスタートしたので、当初は海に落ちる滝などの奇観を楽しみ、世間話をしながら探検気分を味わっていました。
(このとき沢野さんは頭にタバコとライターをくくりつけていたので、頭を濡らす泳法はできず、泳ぎながらも言葉を交わせる、比較的ゆるやかな進み方でした。この持参品が後の運命をわけることになります。)

やがて、崖がけわしくなり、泳ぐしかなくなったころ、事件は起こりました。

岩場にたたきつける波を避けようと、少しだけ陸を避けて泳いでいたつもりの二人が、ふと振り返ると、いつのまにか、思っていたよりはるかに沖に流されていたのです。

驚いて陸に向かって泳ぎだした椎名さんの全身を恐怖がつきぬけました。
まるで川の流れに逆行するような明らかな水の抵抗を感じたのです。

伊勢海と太平洋の真ん中に位置する神島は、実は非常に複雑な潮流の中にあり、二人はまさに今その渦中を泳いでいたのです。

こういうときは、抵抗しても疲れておぼれてかえって危険なので、流されるだけ流された方がいい、と、退廃的な人生のような助言を聞いたことはあるけれど、どうしてもそのとおりにする気にはなれない。
だってそのまま流されていったら行きつく先は太平洋かもしれないのだから。

そんな風に予備知識と生理的にどうしようもなくこみげる恐怖の間で葛藤していた椎名さんでしたが、奇跡的に「肩先から腰をくるみ、足の先まで重苦しくのしっかかっていた潮の圧力が急にこそげとったように消えてなくなり、体がいっぺんに軽くなったような感じ」がする瞬間が訪れました。
(この辺体感した人ならではの説得力のある文だなあと思います。)

「おい、今だぜ!」
同じ感覚があったらしき沢野さんがそう声をかけ、猛然とクロールで陸に向かって泳ぎだしたのを慌てて追いかけた椎名さん。

「生涯の力をありったけ絞り出すようにして」ようやく二人とも無事に岩場にたどりつくことができました。

しかし、そこから先はせりだした崖、背後もまた垂直の崖(背後の崖を泳いで避けようとして流された)。

しかも、激しくたたきつける波によってえぐられた洞窟から、老いた怪獣の咆哮のような不気味な音が聞こえてくる。

後で聞いたら、この洞穴は島の西側まで貫通しており、船が難破してこの中を仮死状態で流され、それで助かったものもいるが、そのまま追ってきた荒波によって西側の海まで吐き出されて行方知れずになった者もいるという、正真正銘の危険地帯だったそうです。

そうとは知らず、思い切って泳いでこの地点を超えてしまおうかといったんは思った椎名さんでしたが、とにかくその咆哮が尋常でないので怖くて断念。(泳いだらその洞窟に吸い込まれる可能性があった。)

結局、前後の海に戻るというのはあり得ないので、崖を登るしかない。比較的傾斜がゆるやかで「ガレ場」と呼ばれる岩と土がまじりあう部分と、枯れ沢で形成された部分があるからそこを行こう、という意見で合意した二人。

幸運にも二人ともロッククライミングの経験があるけれど、裸に裸足なのがどうにも(二つの意味で)痛い。
(お二人のロッククライミング歴については「ハーケンと夏ミカン」で読めます。面白いし、装備の重要性もよくわかります。)

ハーケンと夏みかん (集英社文庫) -
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そもそもザイル(ロープ)がないので、二人でロッククライミングをするときの利点、一人が滑落しても、一人がロープで体を確保する、というのができない。下の人間が落ちていったら、ただ見ているしかできない。

しかもその下に待ち構えているのは、あのぎざぎざの岩場と怒涛の波間。

(以下引用)
「おーやだやだ」
と、俺は言った。神島一周などという身の程を知らぬばか気に満ちた挑戦などせず、ベースキャンプでカレーライスの下ごしらえとか四の字固めの練習でもしていればよかった。長老とにごり眼(補:友人のあだ名、相変わらず〈特に後者は〉失礼なネーミングセンス)におだてられてこんなところで抜き差しならぬ状態になっている自分が情けない。


……確かに、別に大切な使命があったわけでもないどころか、特にやりたかったわけですらないことをきっかけに、下手したら太平洋まで流されていたかもしれないところを生還してもなお、海パンいっちょうで岩登り(吹き上げる咆哮海風つき)をしなければならないとくればしみじみと嘆かわしいことでしょう。しかしこの目の前の状況としては相当危険というタイミングで笑いを挟んでくるのが椎名さんのセンスです。

しかし嘆いていても始まらないので、二人はクライミングを開始します。
二人が選んだルートは、足場となる石がたくさんあり、経験者の二人としてはやりやすかったのですが、反面かなりもろく、いつ足をかけた石を踏み外すかわからない場所でした。
(本人が足を滑らすのも、上から石が落ちてくるのも怖い。)

休憩をはさみつつ、どうにかこうにかある程度登ると、しかし、二人ともその高さに青ざめます。

こういうとき、登るより下りる方がはるかに難しく、もはや後戻りができないとよくわかっていたからです。

そうなると、もしこれから先、身動きがとれなくなったら、はてしなくその場にくぎ付けにされてしまう……ここからまた、心底危険なのに、なぜかそういうときほど不毛な妄想が延々とさく裂する椎名作品の真骨頂が展開します。

(以下引用)
そんなのは厭だ。たぶん、こんなところにはめったに島の人もやってこないだろう。クギづけになってしまい、やがてそのまま朽ち果て、白骨になってしまうだろう。
 そうして何年かたったある日、島の人が偶然変わり果てたおれたちを発見する。(中略)すると島の人たちは一様に首をかしげるに違いない。
 俺たち二人は水泳パンツしか身に着けていない。すなわち、その崖の中腹に貼りついていたふたりの白骨死体は、なぜか黄色と緑のシマシマパンツ(炊事班長〈沢野さん〉のもの)と赤茶、市松模様のパンツ(おれのもの)しか身に着けていなかった。この二人はこんな崖の真ん中でいったい何をしていたのだろう――ということが永遠の謎となるはずだ。
 どうせならなにかしらの謎を残して死ぬ、というのはわるくないが、しかしこの程度の謎というのではちょっとロマンがない。つまり早い話があまり恰好がよくない。そんなのはいやだわ、いやだわ、


……この切実なんだか悠長なんだかわからない妄想は、沢野さんの「早く来いよ!」という檄によって断ち切られます。

その後、ロッククライミングの基本姿勢は三点確保(手足計4本のうち3つで体を支え、残り一つで手がかり、足がかりを探す)だけれど、厳しい場所(今)だとどうしても四点確保(両手足でその場にしがみつく)になってしまう。最も安全だけれど、このままだと何時間たっても進めない。四点確保がロッククライミングの主流にならないのは、実にここのところの問題が未解決であるからだ、とか、さっきの「白骨パンツのミステリー(←笑)」についてだが、考えてみれば死んだ時点で崖から落ちるからは成立しないんだな、とか考えながらじりじり進んでいた椎名さんでしたが、あと少しであのクマザサが生えた手がかりの多い楽なルートにたどりつける、という希望が、沢野さんの叫び声に断ち切られます。

突然滑り落ちてきた沢野さんを、椎名さんの左手と付近の石が止めましたが、そんな腕力に長けた椎名さんが、沢野さんの次の発言に震えあがりました。
「へびだよ、蛇……」
沢野さんの目の前を、ヘビが素早く横切り、驚いて足を滑らせてしまったのです。
考えてみれば蛇がいないほうがおかしいような状況。遭遇したのがまむしだったかもしれないというのがいっそう不気味でした。
(ここでまたしても妄想〈以下引用〉)

これが、よく小説やドキュメンタル述べるに出てくる豪胆の探検家であれば、
「まむしごときにおののいていたら地球のデコボコはどこも制服はできない、おのれ、まむちゃん!」とか言ってすばやくひっつかまえ、花結びにして海に放り投げてしまうのだろうが、おれたちはどちらかというと「全日本蛇よりも蜘蛛が嫌いな会」というものよりも、「全日本蜘蛛よりも蛇が嫌いな会」の方の会員になりたいと思っている人々なのである。
 しかし、それじゃあ大蜘蛛中蜘蛛小蜘蛛蜘蛛蜘蛛たくさんうじゃうじゃいる穴ぼこと、赤蛇青蛇まだら蛇がのたくりからまる穴ぼこがあってじゃあ蜘蛛穴にはいんな、といわれたら即座に「全日本どちらの穴にも入りたくない会」に加入してしまうヒトでもある。
 ま、しかしこれは当たり前のことであろう。


……というわけで、荒海を泳ぎぬいても、崖を海パンで登れても、大の大人の滑落を支えても、蛇にだけは遭遇したくない椎名さんは、今回お前が助かったのはお前より10kg重い俺が下にいたからで、逆だったら二人そろって落ちてただろ、だからやっぱりお前が先に行け、と主張するも、同「全日本蜘蛛より蛇が嫌いな会」加入予定の沢野さんは、ずっと俺がトップだったんだからこんどはお前が先に行け、と、譲らず、「あまり論理的でない会話」の果てに、二人同時に極力物音を立ててヘビを威嚇しながら進もうという結論に達し、とにかく平地の藪の中までたどり着くことができました。

とはいえ、こんなところにこそまむしが大量にいそうだと思った二人は「そこで再びまたあまり論理的でない、どちらかというと感情的な部類に入る会話をした。」(←笑)

しかし、ここで、あの、海を流されかけた時ですら沢野さんが落とさなかったタバコとライターが役に立ちました。

蛇はタバコの煙が大嫌いらしい、という予備知識を思い出した二人。

じゃんけんに負けて先頭を行くこととなった(笑)椎名さんは、湿気たタバコを激しくふかし、後ろに続く沢野さんは枯れ枝を握りしめて、
「こらあ、ヘビ、くるんじゃねえぞ」「こら、こらあ!」
等簡潔に叫びながら「完全無欠なおよび腰」でじわじわと進むこと30分(辛長)。

ようやく、すり傷だらけになりながら、確かな道にたどりついた二人は、すわりこんで安堵の笑いを交わしました。


……椎名さんと沢野さんでなければ大変なことになっていたのではという場面が3度ほどありましたが(泳ぎが得意でロッククライミングができて、腕力とタバコを手放さない執念があって初めて生還が果たせた。)、そんな窮地を肌身に迫るような具体的な感覚と、よくそんなことを思いついたというか、むしろピンチのときほど人はいろいろ余計なことを考えるのか思わせるほど壮大な妄想を織り交ぜて描いた名文です。

隅から隅までこうした独特の名調子が楽しめる名作なので、是非ご覧ください。

当ブログ椎名誠さんご紹介記事一覧は以下の通りです。よろしければ合わせてお読みになってみてください。

「私のかわりに大地にあおむけに寝てください。そして、天を眺めてください」(椎名誠と井上靖。「砂の海(楼蘭・タクラマカン砂漠探検記)」より)
蚊の話(椎名誠「わしらは怪しい探検隊」より)
(ネタバレあり)「垂直デスマッチ」(椎名誠『わしらはあやしい探検隊』より)

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 08:01| 椎名誠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月17日

「遠い記憶」(阿刀田 高 著 『恐怖コレクション』より)


残念ながら現在あまり簡単に入手できないのですが、面白い短編集があったので一部をご紹介させていただきます。

阿刀田 『恐怖コレクション』

恐怖コレクション (新潮文庫) -
恐怖コレクション (新潮文庫) -

阿刀田氏はショート・ショートの名手として、毒や奇妙な味のあるミステリー・ホラー作品等を数多く世に送り出し、またそのような分野の作品の審査員、編者としても有名な方です。

一方で、聖書、ギリシャ神話、コーラン等の古典の紹介者としても知られています。

その阿刀田氏が、1985年に、恐怖にまつわるエッセイとして発表したのがこの『恐怖コレクション』。

はっきりとした怪奇現象というより、彼や彼の知人が体験した、説明できるようでしきれない不思議な話や、日常にそっと紛れ込んだ人生の闇を描いた作品集です。

その中でも個人的に特に印象深かった話が「遠い記憶」です。

(以下ネタバレですので、あらかじめご了承ください。)




語り手「私」は、何度も同じ、怖い夢を見る。

夜の海を泳いでいたら、浜辺の光が消えてしまい、星の無い夜、どちらに向けて泳いで良いのかわからなくなるという夢。

陸と信じた方に泳ぐしかないが、もしかしたら今自分はどんどん沖に出ているのかもしれない。そんな恐怖の中、自分が水を掻く音だけが聞こえる。

波にあおられ塩水を飲み、真っ暗な海はどんどん深さを増しているような気がする。
もがきながら、疲労に重くなる体、死が間近であるという予感……。

いつ見ても怖い夢。しかし目覚めると、恐怖のほかに不思議さがこみあげてくる。

なぜ、こんな夢をみるのだろうか。

「私」がこの夢を見始めたのは、小学校6年生のとき。

そして、中学生になったとき、「私」は自分の父が若いころ、軽い気持ちで真夜中の海に入り、戻ろうとしたときに島が停電になって、どちらへ戻ればいいのかわからないままに、不安に駆られて泳ぎつづけたという話を聞かされる。

「後天的な形態変化は遺伝しないが、学習内容は遺伝する」という生物学の一説がある。

左の通路を選ぶと、感電する巣箱にネズミを入れ、何世代か飼い続けると、とうとうはじめから左へ行かなくなるネズミが誕生する。

「左に行くと感電する」という経験の恐怖と学習が、子孫のネズミにはあらかじめ植え付けられているということになる。

(※補:2013年、これに似た実験がアメリカで行われ、「ネズミに桜の香りを嗅がせた後に、電気ショックを与える」という実験を数世代にわたり行った結果、孫の代のネズミはより微弱な桜の香りでも事前に身構えるようになったということです。つまり現時点で、「先祖の学習内容がある程度遺伝され、同じ目に遭った時の脳内の反応が、前の世代より敏感で早くなる」ということまでは実証されたそうです。〈参照:「ソトコト」HP「福岡伸一(生物学者)の生命浮遊 記憶は遺伝するか1同2」より〉)


あるいは覚えていないだけで、父以外のだれかがこの夜の海での体験を「私」に聞かせ、それを夢に見ただけなのかもしれないけれど、あの暗い海の夢を見たあとに自分の心のうちにめぐってくる遠い記憶めいたものは、人に伝え聞いたという形では、現れえないのではないか、と戸惑う「私」。

奇妙な夢を描いた夏目漱石の短編、「夢十夜」第三夜に、語り手である「自分」がいつのまにやら盲目の幼児の父となり、その子を背負って雨夜の田舎道を歩く、という夢がある。

文鳥・夢十夜 (新潮文庫) -
文鳥・夢十夜 (新潮文庫) -

その状況になぜか言い知れぬ恐怖を覚えながら、「自分(子を背負う父)」が道を歩き続けると、最後に森の中に来た時にその子が、
「文化五年辰年だろう。御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」
と言い、「自分」の脳裏に、100年前のこんな夜に、自分は盲目の子を殺したのだという記憶がよみがえる、という話である。

この「夢十夜」の男も、先祖の遠い記憶を受け継いで、それを夢に見るのかもしれない、と、「私」は思い、もう一つ、「私」から離れてくれない怖い夢を思う。

夢に現れる光景自体は怖いものではない。

ただ、一人の女がそこにいる。

髪を古風に丸髷に結い、黙って薄笑いをしている。よく見ると、口以外は無表情で、紙のように白い顔をしている。

それだけなのに、「あ、いけない」と「私」の身の内に狼狽がかけぬける。

誰なのか、なぜ笑っているのか、わからない。恐怖だけが尋常でない。目覚めても、その戦慄はしつこく「私」につきまとう。

「私」は思う。

この白い顔で薄笑いをする女と、自分の細胞に潜む誰か先祖の間に、忌まわしい過去があり、それがこんな夢を見させているのではないか。

いったい何があったのか。

寝ざめに、わが身は知らない遠い記憶をたぐろうとしても、「ただうらうらと白ずんだもどかしさが残るばかりで、何も見えない。」

(完)

不思議といえば不思議な話なのですが、しかし、現実にありそうといえばそうでもあり、実際、今現在、科学はその現象の糸口をつかみつつあります。

特に恐怖の記憶が遺伝するというのは、ある意味、種の生き残りをかけた必要な情報伝達なのかもしれません。

今、確実に実証できているのは「子孫は先祖と同じ危険を体験したとき、より早く、敏感に反応する」というところまでのようですが、もしかしたらこの阿刀田氏や漱石の短編のように、もっと細かい記憶が、世代を隔てた子孫の細胞まで、メモリのように受け渡されるということが実際にあり、そのメカニズムもいずれは解明されていくのかもしれません。

私は犬との付き合いで、「遺伝は思いのほか世代を隔て、また細かいところまで伝わっているのではないか」と思わされることが何度かあったので、ご先祖様の恐怖や忌まわしい過去はご免こうむりたいけれど(「私の細胞の中に潜む先祖」という一文が妙に怖かった。「私」は冷静に因縁を見極めようとしているけれど、こんな怖い記憶を子孫の身の内に持ち込まれたら困る。)、この「記憶の遺伝」ということについては、妙に興味をひかれるところがあります。
(私が体験した犬の話については、また改めて書かせていただきます。)

この『恐怖コレクション』、何か出没して怖いというより、自分の身近、あるいは身の内に覚えがあるような不思議や恐怖を描いていて、虚実のあわいがあいまいな読後感ですが、そこが非常に面白いです。

どのエピソードもごく短く(5ページ程度)、ショートショートの達人らしい明瞭ながら余韻のある文、著者の幅広い知識も盛り込まれていて時間を忘れて楽しめます。是非お手にとってみてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 08:02| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月16日

100日間リベンジ再び 3週目 記事毎日更新8月15日で中断 ダイエットマイナス1.2kg減


※今回はただの日記です。

ブログ毎日更新とかダイエットとか、生活習慣改善とか頑張るぞー!と、はじめた100日間チャレンジ3週目のご報告です。(これまでのご報告はコチラ



1 記事毎日更新挫折


書くのがとてもつらいしお恥ずかしいのですが、せめてちゃんと向き合います。

3週目を目前にして、記事毎日アップに挫折してしまいました。

8月15日は終戦の日だから、頑張って書きたいと思っていたのに、よりによってこの日に更新を止めてしまうとは……。

原因は疲労、そして、結局のところ飲酒と無駄ネット(※)です。
「またお前らかあああっ!!」とキレたいけど「お前」も何も自分の所業……。

(※)純粋に必要な調べもの以外のネット閲覧を指す自分用語。

「つかれたよーねむいよー」
と思っても頑張りたいとき、つい先送りにしようとネットを見たり、気分転換と称してお酒を飲んだりしてしまった週でした。
(一応適量の範囲内だったけど、自分オキテの「人と一緒にしか飲まない」が守れていなかった。)

前日から疲労がピークで、普段は早朝にアップしていたものを、「よ……夜にしよう……」と先延ばしにしてしまったが最後、寝酒も手伝って寝てしまいました。

とにかくこの日というのがくやしいです。

大岡昇平さんの小説「野火」について書きたかった……。

野火 (新潮文庫) -
野火 (新潮文庫) -


(重い題材なんでパワーダウン時には向かなかったんだろうけど……それならせめてこの日記でも書けていればよかった。当ブログで「野火」について一部ご紹介させていただいている記事はコチラです。)



もし今何か私のように「何日間○○を頑張ろう」と思って、しかし誘惑に苦しんでいるひとがいたら次のことをお伝えしたいです。

1,できれば挫折しないほうがいいです。ほんとーーーーーーーに自分にガッカリする。
もし今、挫折寸前の崖っぷちに立っている気分なら、こうして崖から落ちて数時間の私が申し上げます。
落ちるととてもとても痛いですよ。
そして血を流しながら再度その地点までクライミングをする(立ち直る)エネルギーをひねりだすのも大変です。


2,(頑張ろうの方向がなにかを「やる」の方向の方へ)
どうにもこうにも辛いなら、(社会的な締切が無いものなら)無理にやろうとせずに、大至急寝てしまったほうがいいです。
起きればできるかもしれないし、もし寝過ごしてしまっても、中断の原因が「体調が悪かった」なら、やれなかったことについてさほど落ち込まずにすみます。

同時期に何かを「やめる」つもりの人が無理に起きて頑張ろうとするのは特に危険です。

「ストレスがたまっている」の次に、「疲れているけど頑張りたいけど本音を言えば先送りしたい」という瞬間に、挫折のローレライは歌いはじめるのです。
  
そしてまんまと吸い寄せられて悪習慣に沈み混んだあとの自己嫌悪ときたら……。

「あのとき、あんなことをしなければ頑張れたかもしれないのに!頑張れなかった代わりにやっちゃダメなことをするって、俺のバカバカバカ!!」となり、悔しさの倍率ドン、さらに倍!です。(by大橋巨泉さん)

3,それでも、どうしても挫折してしまったのなら、そのときの状況と、今のお気持ちを書き留めておくといいような気がします。
   
今でこそ「倍率ドン」なんて書けていますが、この文を書き出す直前は「終戦の日に、大岡昇平さんの作品についてご紹介するつもりで挫折するなんて……」と自分のふがいなさに本当に泣きたい気持ちでした。

既に挫折のエキスパートだったとしても、守りたい矜持だったのです。

ただ、挫折のエキスパートゆえに、「ここでそ知らぬフリして口笛吹いて、失敗を見据えなかったら、今まで頑張った20日間が本当に無駄になる(=もう、「いい!いい!どうでもいい〈byドラえもん〉」と投げやりになり、何事もなかったかのようにブログ更新は無論、今まで通り人生全般なんも頑張んなくなる)」とよくわかっていたので、この失敗をつぶさに記録することにしました。

なお、挫折に伴う、魂がぼわわとクチからダダ漏れるような虚脱感と自己嫌悪を復旧させるにあたり、
    
(スタート)寝過ごし寝ぼけていても思い出せる、全漫画好きの魂に刻まれた至言「あきらめたら、そこで試合終了だよ(by『スラムダンク』安西先生)」を心の中で口ずさむ
     
→「せめてこの挫折を書き留めておこう」という気分になる

→実際に肉体を立ち上がらせるにあたり、もう一押しほしかったので、「挫折 立ち直る」でググる(これは僕的には無駄ネットじゃないです。ただ枕元にネット環境があったのがダメだろって話ですが……。)

→エジソンの名言
「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから、成功なんだよ」(※)
が染みた。
ブログ更新を潰した無駄ネットと飲酒を遠ざける方法について、もう少し練り直そう。
(この時点でようやく少し前向きになれ、魂が口内に戻り、体が立ち上がった。)
 (※)キャリアパーク!「挫折から立ち直る方法と参考にしたい名言集」より

……という流れがありました。

そして書いているうちに、さらに気持ちが整ってきて、今にいたります。

こうなった以上、よく言う「この失敗の悔しさをバネに頑張る」の方向で残り約80日も頑張ります。
(ブログ更新については仕切り直してもう100日を目指す〈日数計算サイトによると、11月23日ゴール、勤労感謝の日とはなんだか目指しやすくて有り難い。〉)

具体的な頑張りとして今週は
「お酒は人に注がれた分しか飲まない(周囲に酒豪がいないんで「もっと飲め飲め!!」とかない、自分の意思で飲んじゃってるだけ〈汗〉)」
「ネットツールはPC以外寝室に持ち込まない(着信音大きめにして、隣室に置いておきます。くつろぎスペースにあるからダメみたいなんで)」
を心がけます。


2 ダイエット

先週より1.2kg減りました。やったー!

……ただ、「コレで記事更新も継続できていたらどんなにすがすがしいだろう」とか、
「ここ4日ばかりお酒飲んじゃってたけど、あれが無ければもっと減ったんじゃ……」という気持ちも否めません……。

ちなみに、特に何をやったからというのは無いのですが(寝不足だったし……、単に夏バテでやつれただけか?〈汗〉)強いて言うなら、「拭き掃除」と、「朝夕軽めで昼は好きなもの(※)」というのをある程度心がけました。
(※)好きなものといっても、極力二大好物「つけ麺」と「カツ丼」は避け(つくづくダイエットに向いていない嗜好)、「なんかこう心踊るものを!!」と思ったら「天ざる(お店によるけど600kcal以下のことが多い)」にするくらいの努力はしてみました。「麺欲」「揚げ物欲」が満たされるんでオススメです。
(普通のお蕎麦屋さんで頼むと結構いいお値段だから、急激に行動圏内の立ち食いそば屋さんに詳しくなった……)

もっと目覚ましい結果やメソッドをモノにできたら改めてご報告させていただきたいと思います。

それでも減ってくれて有り難かった……ブログ更新に挫折してしまった今日の体重減は、自分にとって、焼け野原に残った小さな若葉のようで「おおお……(涙)」と体重計の数値を拝みたい思いがしました。(おおげさ)

せめて、こちらだけでも挫折せずに続けたいと思います。また来週ご報告させていただきますので、よろしければお立ち寄りください。

読んでくださってありがとうございます。


posted by Palum. at 07:33| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月14日

(ネタバレ編)「ピエロの赤い鼻」(フランス映画)


本日は第二次大戦時フランスを舞台にした映画をご紹介します。

「ピエロの赤い鼻」

親友の男二人が、ごく軽い気持ちでした駐留ナチス軍への反抗。それによって命の危険にさらされた時に出会った心優しいドイツ兵との交流を描いた作品です。



名作なのに今はDVD新品が売っていないと気づいてショックです……。
(個人的には生涯名作映画ベスト10に入るというほど好きな作品なんで……)。

ピエロの赤い鼻 [DVD] -
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(だいぶ前になりますが)一部あらすじを書いた記事はコチラです。

今回はネタバレなので、どうか中古またはレンタルででも一度ご覧になってからお読みください。色彩の限られた、展開も地味な作品ですが、本当に素晴らしい作品です。

以下内容が重複しますが、あらすじです。

小学校教師ジャックは美しい妻と二人の子供を持つ中年男。

お祭りのときはいつも古びた赤い鼻をつけてピエロ姿で演技をするが、息子のリュシアンは毎度父親が笑われるのにうんざりしている。

リュシアンの気持ちに気づいたジャックの親友アンドレは、ジャックがピエロになる理由を話し始める……。


大戦時、名士だったアンドレの屋敷はナチス軍に接収され、ホテルで暮らしていた。

アンドレが足しげく通うレストランにいたのは美しいウェイトレスのルイーズ。ジャックもその店の常連で、実は、二人ともルイーズ目当て。

ルイーズにいいところを見せたかった二人は、抵抗を呼びかけるラジオにあおられ、ナチス軍の物資輸送に使われる線路の信号所を爆破した。

しかし、二人が無人と思っていた信号所の小屋には、村人のフェリクス老人がいて、爆破によって重傷をおってしまう。

ショックを受ける二人だったが、さらにその夜のうち、事件の首謀者が名乗り出るまでの人質として、とらわれた村人4人の中に、当のジャックとアンドレが入れられてしまった。

24時間以内に首謀者が名乗り出なければ、見せしめに処刑する。

ナチス軍にそう宣告され、雨の中、村はずれの水浸しの穴の中に放り込まれるジャックたち。

覚悟を決めて、自分たち二人が犯人だと名乗り出ようとしても、他の村人二人にすら信用されずに、一緒に処刑を待つ身となってしまう。

しかし、穴の底の彼らを見下ろし、冷酷に運命を言い渡すナチス兵士たちの中に、もの言いたげに彼らを見つめる下級の中年ドイツ兵がいた。

他の兵士が軍靴の音高く立ち去る中、その男は一度振り向いて、メガネの奥の穏やかな目を彼らに向けた

ナチス兵たちの駐屯地に戻ると、脇にかかえたヘルメットにリンゴとパンを隠し入れるドイツ兵。

4人が飢えと寒さに震えていると、いつのまにか、穴の上に足を投げ出すようにして、その中年のドイツ兵が腰かけていた。

ふいに、きゅっと寄り目になり、舌を出したおどけ顔をするドイツ兵

馬鹿にされているのかと泥を投げつけてののしる4人。

慌てたドイツ兵が穴に落とした銃を彼に向けて「動くな、はしごを持ってこい!」と叫ぶが、考えてみると戻ってくるわけがない。

どうにもならずに黙り込む4人に向けて、ドイツ兵が手品のしぐさでパッと顔を覆ったハンカチをどかすと、その顔には、薄暗がりにもはっきりわかる真っ赤なピエロの丸い鼻がついていた。

そのままナチス軍を揶揄したおかしなしぐさで歩き回るドイツ兵に、死の恐怖も忘れて笑い出した4人。

穴の上で曲芸を見せていたドイツ兵の手から、やがてパンとリンゴが4人に向かって投げ渡された。

「生きている限り希望はある」

そう、うやうやしいフランス語で語りかけたドイツ兵。

昔、パリでピエロをやっていたというその男の名前はベルント。またの名をピエロのゾゾ。

また明日。そう4人を励まして、戻ろうとしたベルントをジャックが慌てて呼び止めた。

「ベルント、銃を!」

穴から銃が投げ渡された。

苦笑いして、銃を手にふざけ歩きで帰っていくベルント。

しかし、穴から離れてから振り向いたその顔には、重苦しい表情が浮かんでいた。

変な番兵だな。……天使かな。

リンゴをほおばりながら、つぶやくアンドレ。

油断するな、というもう一人の村人に、いいやつだよ、笑わせようとしてくれた、と首を横に振るジャック。

気を紛らわすことのできたジャックたちは、生きて戻れたら、好きな女にプロポーズをしよう、生まれ変わったら何になろうと、軽口を話して時間を過ごす。しかし、刻々と迫る死を前に、穴の底の空気は次第に重くなっていった。



一方、重傷を負ったフェリクス老人は、病室で、思いつめた目をして妻に声をかけた。

「ドイツ軍に言ってくれ、犯人は俺だと」

俺はもう助からない。ほかのみんなが助かるにはこれしかない。

そんなことを頼むなんて、私に恨みでもあるの!?と、涙する妻のマリーに、フェリクスは言った。

「お前には心から感謝しているよ。ひとつひとつお礼を言っている時間はないけど……」

頼む、そう、繰り返す夫に、マリーは、絶対に嫌よ!!と引きつった声で叫んだ。




「朝飯だよ」

少しだけ白んだ空を背に、ベルントが酒瓶を投げてきた。

冷え切った体で身を寄せ合って眠り込んでいた4人は、火のつくような酒をわけあって飲み、人心地つくとベルントに尋ねた。

「命令は?処刑するって?」

腰を下ろして彼らを見守っていたベルントから笑顔が消えた。

「……ルイーズに……」
自分たちの運命を悟ったジャックとアンドレは、そうつぶやいて酒を飲み交わした。

ベルントはカバンから掌に乗るような小さなアコーディオンを出し、他のドイツ兵たちに聞こえないように、そっとささやくような音と声で、フランスの歌を歌いだした。

心が弾む
こんにちは こんにちは ツバメたち
屋根の上に広がる空は 喜びに輝く
路地には太陽が降り注ぎ 心も明るく

ベルントを見上げる彼らの震える唇からも、かすかに同じ歌が漏れ始めた。

いつも僕の胸は ときめき揺れ動く
何かを連れてやってくるのは愛
それは愛 こんにちは こんにちは お嬢さん
世界は喜びに包まれている……

同じころ、司令部にいた銀髪のナチス軍少佐のもとに、二人の訪問者があった。

一人は、見せしめとして早急な処刑命令を要求する冷たい目をした若い大尉。
その必要があるのかと難色を示す上官に、そのような甘い態度には承服しかねます、と、冷笑を浮かべて部屋を出て行ってしまう。

入れ違いに入ってきたのは、フェリクスの妻、マリー。
「爆破の犯人は夫です」
夫の意思でここに来ました。夫は嘘などつきません。
その声は震えていたが、涙の光る瞳は覚悟に大きく見開かれていた。

すこし酔って、ベルントと言葉遊びをしていた4人。
そのやりとりは、大尉たちの足音に断ち切られた。

命令を受け、穴を取り囲むと、銃を構えるナチス兵たち。
最後の時がきた、と、互いに抱き合うジャックとアンドレ。
しかし、ベルントが、銃を構えず、だらりと両手をさげたまま、彼らを見ていた。

「命令だぞ、銃を構えろ!!」
大尉の言葉に、ゆっくりと銃を向けたベルント。
その目に映る、つい先ほどまで一緒に笑って話していた4人。
ベルントは黙って銃を地面に落とした。
そして、カバンから何かを取り出すと、それを鼻にあて、大尉をまっすぐに見つめた。
ピエロの赤い鼻。
大尉がベルントの眉間に拳銃を向けた。
「やめろぉぉぉ!!!」
ジャックの絶叫に銃声が重なった。
その直後、フェリクス老人の自白を受け、処刑を中止する知らせが大尉に届いた。

穴の周囲から立ち去るドイツ兵たち。
何が起こったのかわからない。ただ、ひとつ確かなことがある。
白い泥に長く筋を残して流れたベルントの血。
その先に転がり落ちていたピエロの赤い鼻を、ジャックの震える手が拾い上げた。

「証言は真実だと?」
おそらくそうではないと気づきながら、銀髪のナチス軍少佐はマリーに問いかけた。
「はい」
「すべて覚悟の上で?」
一度息をのみ、それでもマリーはうなずいた。

病室で、両手を組み合わせて天井を見つめていたフェリクス。
数人のナチス兵が乱暴に入ってくると、傷だらけの彼を椅子に乗せて運び出した。
「これでいいんだマリー、もう何も心配はない」
夫の連行を見ていた妻に、そう静かに声をかけると、フェリクスは病院の庭へと連れていかれた。
開け放たれた窓から響く処刑の銃声。マリーが震える唇にハンカチを押し当て悲鳴を呑みこんだ。


後日、ルイーズの口から、何故自分たちが解放されたのかを教えられたジャックとアンドレ。
「俺たちは彼の人生を奪った……」
言葉を失う二人。
そしてこの事件をきっかけに亡くなったのはフェリクスだけではない。


翌朝、穴の側に戻ってきた二人。
しかし、ベルントの埋葬された場所を見つけることはできなかった。
解放された日、自分たちに向かって降ろされたロープのすぐ側についていたベルントの血の跡も、すでに黒ずんで消えかけていた。

彼の名前しか知らない。
ベルント。
ゾゾ。
しゃがみこんだジャックは、小石を拾って不器用にお手玉の真似をした。

この日、ジャックは生涯ピエロを演じることを決めた。
ユーモアと人間味に溢れた男を称えて。



フランスが終戦に湧く中、重い足取りで、マリーの家に向かう二人。

真実を告げられたマリーの態度は、思いのほか静かで毅然としていた。

「夫は勇気ある行動をした。それだけが真実」

それは忘れないで。

マリーは二人にきっぱりと言った。



その後、ジャックはアンドレの橋渡しでルイーズにプロポーズをし、結婚をした。



「私にはわかっていたんだ。君のママは、僕より君のパパが好きだったと」
アンドレはジャックの息子、リュシアンの肩を抱き、そう物語をしめくくった。

とうにふてくされ顔は消えたリュシアンの頬に、涙がつたっていた。

アンドレにうながされ、ジャックのショーのフィナーレに戻るリュシアン。

喝采の中、アンドレとともにショーを見つめるリュシアンも大きな声を上げた。
「ブラボー!!パパ!!」

今はジャックの妻となったルイーズの隣にマリーもいた。

カーテンコールに現れたジャックは、小さなアコーディオンを取り出し、歌い始めた。

心が弾む
こんにちは こんにちは ツバメたち
屋根の上に広がる空は 喜びに輝く……。

今は誰を恐れるでもなく高らかに歌えるこの歌。

明るく合唱をする観客たちの中で、アンドレとリュシアンは、ジャックがこの歌を歌う意味に思いをはせながら、舞台を見つめていた。

(完)

のどかな村で、恋と友情に生きていた二人の男。
戦争の中にあっても明るさのあった日々。

しかし、二人が深く考えずにとった行動をきっかけとして、彼らを救うために、ベルントとフェリクスというこの上なく優しい人たちが命を落としました。
戦火のただ中でなくても、戦争がいかに無意味にあっけなく人の命を奪うかが伝わる話です。

一方で、そのようなすさんだ世の中であっても、最後まで優しさを失わなかったベルントとフェリクス。
「天使かな」とアンドレはつぶやきますが、私は、もし天使という存在があるとすれば、まさにベルントのように、決して人をねじふせる力があるわけではない、人生の苦労や理不尽を知り抜いて、少し老いた優しい目をしているのではないかと思います。

自分の身に何が起こるかわかっていながら、それでも、彼らを撃つことを拒否したベルント。
赤い鼻をつけた彼の表情は、静かで優しく、そして誇り高さを感じさせます。

一方、悪気はなかったとはいえ、ベルントとフェリクスの死に関わってしまったジャックとアンドレ。

ジャックはベルントが生きていれば続けたであろうピエロの道を生きることを決め、アンドレはおそらくルイーズをジャックに譲ることを償いの一つとしたのでしょう。
(実はルイーズはむしろ最初はアンドレのほうが好きだったのではと思わせる二人きりのやりとりがあり、結末部でリュシアンとアンドレを見つめるルイーズの表情にも、どことなく含みがあります。)

痛みや悔いを秘め、それでも生き残った者として歩みを続けるそれぞれの人生がそこにあります。

最後に、構成について触れさせていただきます。

残念ながらこの映画があまり有名でないのは、物語のほとんどが、雨にぬかるんだ暗い穴の中と外のやりとりという地味なものだからかもしれません。

しかし、実はこれは意図的に色彩を絞った構成なのだと思います。

暗い穴の底という、まさしく絶望的な状況に突き落とされた4人の男。
そこにかすかに光のこもった空を背負って現れたベルント。

4人を励まそうとおどけるベルントのピエロの赤い鼻、そして彼らに投げられたリンゴの赤が、ほとんど青灰色に占められた画面の中で、彼のいたわりに溢れた優しさそのもののように際立ちます。
そして4人の代わりに撃たれたベルントの血は穴の中に流れ落ち、その赤が、彼らが生きて外へ出ていく道筋を示しました。

ピエロの赤い鼻を受け継いだジャックは、平和が訪れた村で、今は画面いっぱいに広がる、温かな赤のカーテンを背に、ベルントが自分たちのために歌ってくれた歌を歌います。

色彩を丁寧に抑制することで、最後には人の心の温かさがせつなく胸に残る、非常にすぐれた作品です。

是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうごじました。
posted by Palum. at 06:40| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月13日

イギリスの日射病


※ただいま(2016年8月13日深夜)Seesaaブログサイト全体が文字化けしている模様です。(PC表示のみ)
我がツールのみウィルスにやられたのかとびびりましたが、他のサイトは見られるし、どうもSeesaaユーザー皆さんに起きている状況みたいです。(知恵袋「seesaaブログだけが文字化けしています。自分のと他人のブログもです。」http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12162872372

ちょっと安心した。こういうときネットはありがたいですねー。こちらの皆さま同様、とりあえず待ってみます。

さて、今回は夏のイギリスの注意点について書かせていただきます。

私は人生で二度日射病にやられたことがありますが、それはいずれもイギリス滞在時でした。

昨今、日射病という言葉が既に熱中症という言葉にとって代わられつつありますが、これがそのときの私にとっては大きな落とし穴だったのです。

そもそも「日射病」と「熱中症」がどう違うかについてですが、情報を非常に大まかにまとめさせていただくと、
日射病……直射日光が原因で起こる。
熱中病……日光の有無にかかわらず、高温が原因で起こる
(ちなみに「熱射病」は熱中症の症状の一つで、汗が止まり、高熱、意識障害等が起こる危険な状態をさすそうです。)

なので、直射日光のささない室内でも、高温なら熱中症に起こる可能性は十分にあり、屋内外にいる人全般に注意を呼びかけるために、「熱中症」の使用が一般的になったのでしょう。

しかし、私は、このために「熱中症は暑いところでナルモンダ」と思い込んで、直射日光の危険性を忘れていたのです……。

イギリスの夏は湿度が低く、原則そこまで暑くなりません。

(具体的に言うと、最高気温が30度を超えることがめったにないケンブリッジでは、「年に何日も必要ないから」という理由で、一般家庭の知人の誰一人クーラーはおろか扇風機すら持っていない。〈日本人のアコガレ、イギリスダイソン社の羽の無いスタイリッシュな高級扇風機〈価格5万数千円程度〉についても、私からご説明したくらいで。〉)
※ただし温暖化の影響か、年々気温は上昇しています。

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第一回日射病は、そんな中、知人と郊外に3時間ばかりウォーキングに行った日に起こりました。

その日も気温はおそらく30度以下、晴天、ちょっと暑いかなくらいだったのですが、風は涼しく、ウォーキング自体は楽しかったのです。

しかし、ホームステイ先に戻った私は、とたんに妙な疲労感に襲われました。

やがて、かなりの寒気、軽い頭痛とめまい。

「あーこりゃ風邪かな、疲れたまってたし」

まずはこの寒気をなんとかしようとホッカイロを枕元に準備した後、今日は具合が悪くて夕飯食べられません、と、お伝えするためにホストマザーのところに行きました。

(以下、そのときの症状に該当する伝えるフレーズを引用させていただきました。)
I have a slight fever.(少し熱があります。)
I feel chilly.(寒気がします。)
I have a headache.(頭が痛いです。)
I feel dizzy.(めまいがします。)
I have a heavy feeling in my stomach.(胃がもたれます)

参照
「English Cafe plus」HP「風邪の症状を説明するときに使える英語表現」
http://ecafeplus.com/study-english/expressions/c_symptoms/
「ナイス!な英語」HP「医療英語」
http://www.nice2.info/medical/medical4.html

そして「I guess I got a cold(風邪をひいたのかもしれません)」と部屋に戻ってホッカイロペタペタ貼りまくって寝ようとしていた私に、ホストマザーが「それは日射病(sunstroke)なんじゃない?」とおっしゃいました。

「日射病=暑いところでなるもの」と思っていた私はきょとんとしてしまいました(同行の知人はけろりとしていましたし)が、ホストマザーいわく、
「帽子をかぶらないで出たでしょ。黒髪の人は頭に日光の熱が集まるからよけい日射病になりやすいのよ。体を冷やして、水分をたくさん飲んで横になりなさい。つらかったらすぐに言うのよ」

「黒髪の人は……」のくだりに妙に説得力を感じ(けろりとしていた知人は淡い髪色だったし、そういや皮膚はどってことないけど髪と頭皮だけは熱くなっていた。)、ホッカイロのかわりに熱冷まシートを脇や首の後ろやオデコや背筋に貼りまくって寝たら、3時間ほどは暑寒いのが続きましたが、翌日には治りました。

なんで思い切り風邪の症状しかお伝えしなかったのに、マザーが日射病と見抜いたのかは謎ですが、指摘していただかなかったら、熱さまシートじゃなくホッカイロを貼りまくって寝酒のひとつも飲んでいた(日射病ならやっちゃダメのダブルパンチ)自分はどうなっていたのかと思うと、ちょっと怖くなります。

気温が高くなくても、イギリスでも、夏の日光は夏の日光、きちんとカンカンに照り、油断していた日本人の頭に3時間熱と紫外線を染み渡らせていたのだと痛烈に思い知りました。

これは日本では起こらなかったことだと思います。

自慢じゃありませんが、根性ナシなんで(本当に自慢にならない)、暑ければさっさと涼むから、3時間も外にいない。

いやあ、気を付けよう……と思っていたのに別の外出時、再度倒れることに。(恥)

海辺を散歩していたとき(やはり別に暑くはない。むしろ上着を羽織って出たくらいの日)、うっかりまたしても帽子をかぶりそこねてしまい、でも、あんなに長時間歩かないから平気だよな、と、思っていたら、急に頭がくらくらして、目の前の海と砂浜が紫色に染まり、一緒に歩いていたマザーに、「す、すみません、ちょっと座っていいですか……」とテトラポットにへたりこみ、それでも足りずに上着を枕に横になってしまいました。
(ちょうど砂浜だから寝そべってもあんまり目立たなかったのがせめてもの救い。)

マザーもこの日光を浴びているんだから、急いで屋根のある所まで移動しないと申し訳ない、と焦りつつも、めまいはおさまらず、郊外の銀色に輝く穏やかな海とヨットと、楽し気に波にたわむれる人々、こんないい景色の中、なんで視界がちょっと紫色になって倒れているんだ……とじりじりしながら、3分ほどで執念で立ち上がって、無理やり笑顔で、歩数を数えるようにして屋内に戻りました。

「長い時間歩かなかったのに……」と、ソファにねそべり無念をつぶやく私に、ホストファーザーは、
「海辺はさえぎるものがないし、直射日光以外に、水面に反射した光も当たるからね」
ととても冷静に分析してくださいました。

(誤解を招くので、ご本人には言えないのですが、レイバンのサングラスの似合う、「刑事コロンボ」の知的な犯人のような味のある風貌をしていらっしゃり〈中でもコロンボ作品の常連、ロバート・カルプ〈「指輪の爪痕」等に出演、パッと見同じ人と思えないほどの演じ分けが見事〉に顔立ちというより雰囲気が似ている〉、おバカな預かり者を叱るでも心配しすぎるでもなく、ただ、原因を解明した上でわかりやすく教えてくださった。)

ちなみにやはり時間が短かったせいか、治るのには前回ほど時間はかからなかったです。

そんなわけなので、夏にイギリスで外出する方は、暑くなくても、日光激LOVEなイギリスの(特に淡い色の髪の)人々が、ごく開放的な服装で日差しを満喫していても、帽子をかぶって歩くことを強くお勧めします。特に旅行時は時差ぼけなど別の疲労がたまっているので、結構簡単にこの症状になってしまいます。くれぐれもご注意ください。

読んでくださってありがとうございました。







posted by Palum. at 05:33| イギリスの暮らし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月12日

自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


先日、ウミガメ型カメラで捕えたイルカがフグ毒を好き好んで摂取している映像について書かせていただいたのですが、本日は、こうした映像をイギリスの自然番組スタッフたちがどのようにして撮影しているか、その一端についてさらにご紹介したいと思います。

カメラにおさめられた自然もすごいけど、おさめる人々もまたすんげいのです。


1、Spy‐Cam(カムフラージュした小型カメラ)で撮る

「ソックリウミガメラ(そんな名前じゃない)」同様、動物たちの生活圏にあって、特に構われない存在(岩、雪の塊、魚など)の形をしたカメラを作り、それで、ごく自然な姿をとる、という形式。

Spy‐camの紹介と、ディレクター兼プロデューサーのJohn Downer氏のインタビューが見られる動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=PbDn8LGbYM4

カメラによっては遠隔操作が可能なので、そばに寄っていくことも可能。

ウミガメラは昨今の技術で、ぱっと見わからないほどよくできており、シワもリアルな首をきょろきょろと動かして、近くで細やかな映像を撮ることに成功しています。

ウミガメラがイルカの群れに寄っていったとき、目と鼻の先で泳ぐイルカたちの「あ、カメさん、こんにちは」的穏やかなチラ見などもおさめていました。



https://www.youtube.com/watch?v=80BXZfuevkE

また、なんかちょっとフシギと思われたのか、ホッキョクグマが雪の塊型カメラに寄ってきて、レンズ付近を目いっぱいふぐふぐ嗅いでいる鼻まみれ映像も。
(わが身なら死を覚悟するでしょうが、安全圏で見るとかわいいわ……。)

しかし、別番組で、鳥たちのコロニーに卵型のカメラを置いておいたところ、別の鳥にさらわれてしまい、舞い上がる鳥の脚視点から、広大なコロニーの全景を撮るという、まさかのハプニング映像がとれてしまうことも。

また、その小型カメラを模型ではなくまんま鳥につけてもらい、美しい飛行風景を撮影するケースもありました。

Spy‐camについて詳しくまとめてくださっているページはコチラです。
「BBC野生動物ドキュメンタリーの美麗映像はどうやって撮られているのか?(GIGAZIN)」
http://gigazine.net/news/20140821-bbc-wildlife-filming/


2、人が近寄って撮る

シンプル、しかし常に危険と隣り合わせの方法です。

それでも、カメラにおさめたい瞬間はそう何度もめぐってこないので、ときに気の遠くなるほど繰り返し機を待った専門のカメラマンたちは、ここだと思った瞬間には、一気に飛び込んでいきます。

私が度肝を抜かれたのは「BBC EARTH グレートネイチャー(原題:Nature’s great event)」の撮影風景(DVD/ブルーレイでは、最後に10分程度メイキング映像がでてきます)

BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -
BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -

このシリーズで、偉大なる自然番組プロデューサーにしてナレーターでもあるデイビッド・アッテンボロー氏(ここではナレーターのみ担当)を知り、そしてイギリスの自然番組の凄まじさを知りました。
(当ブログでアッテンボローさんについて書かせていただいた記事〈「デヴィッド・アッテンボローさんのサイン会」〉がありますのでよろしければ併せてお読みください。素晴らしい方です。)

どれも驚異的なのですが、光景としても撮影の苦労としても圧巻だったのは「世界最大の魚群」の回。
南アフリカで、潮流の影響によって発生する、5億匹のイワシの大移動(サーディン・ラン)、そしてそれを追う生き物たちの息をのむ捕食風景を撮影しています。

イワシたちが生き残りをかけて形作る球形群(bait ball)を狙うのは、イルカ、サメ、カツオドリ、クジラ。

自ら超音波を発し、探知する能力を持つイルカたちが、イワシの群れを見つけて、互いに情報を伝達しながら集団で移動、その姿を上空から見つけたカツオドリたちが後を追います。
時を同じくして集結するサメやクジラ。

イワシが散ってしまう前に、それぞれが銀色の群れに向かって一斉に突撃します。

数頭隊列を組んで横一列に飛び込み、イワシの群れを乱して捕えるイルカたち。
縦横無尽に泳ぎ回るサメ。口を開けて群れをすくいとるクジラ。

特に目を奪われるのはカツオ鳥たちの攻撃です。

上空で様子をうかがっていた鳥たちは、ひとたびふわりと身をひるがえすと、鋭いくちばしを水面に向け、両翼を閉じて全身を細く細く縮め、海へと突っ込んでいきます。

まるで、数百の剣が海中に撃ち込まれるような勢いと鋭さで。



https://www.youtube.com/watch?v=1Cp1n_vPvYY

この、鳥にとっても危険なダイブ(加減や角度を間違えると首の骨を折る)で潜れるのはせいぜい10メートル、しかし、優れた潜水技術を持つ個体は、そこからさらに翼で強く水をかき、深く潜ってイワシを追います。

この水中の鳥の群れのすぐそばをサメたちも泳いでいるのですが、互いにイワシしか目に入っておらず、鳥が襲われることはないようです。

こうして、銀色の花吹雪のようなイワシの群れの中、白く羽をひろげたカツオドリ、サメ、イルカがそれぞれに水泡をまとい鋭く乱舞する、驚くべき光景が繰り広げられます。



https://www.youtube.com/watch?v=DHeZrLnY3Dk


……で、その渦中にカメラマンが混じって撮るわけです。

メイキングによると、そもそも、このサーディン・ランを見つけるのに大変な苦労があり、海に入って様子をうかがっていたカメラマン氏が、サメに遭遇して慌ててボートにあがるという一幕がありました。
(イワシがいなければ人間も標的になってしまう。)

「危なかったな……」という風に声をかける他のスタッフに向かって、カメラマン氏は「(ダイビング用の)ヒレを少し噛まれた。蹴って追い払ったけど」と恐ろしい報告をしています。
(撮影に使用しているのは数人乗りの小型ゴムボートで、あんなにサメがいる地域にあんなので行く時点でイヤダ。)

それでもひるまないクルーたちは、上空からセスナで偵察していた撮影班から、「千頭近いサメが集結している、きっとサーディン・ランだ」という情報を得ると全速力でそこへ向かい(「全速力で逃げ」ではない)、カメラマン氏は、サメとイルカがぶつかりあうようにしてひしめき、カツオドリ魚雷ナイフがひゅっひゅっと鋭い音を立てて突き刺さる海に「今だ!!」と飛び込んでいます。もはや人間の防衛本能を超越している。

こうして撮影されたのが、かの銀色の花吹雪の中の捕食者たちの映像です。

そして確かに原則サメはイワシ以外は狙わないのですが、この状況で冷静なはずもなく、牙を剥いたまま、カメラマン氏の方へも繰り返し突っ込んできていました。

しかし、カメラマン氏は、おそらくは武士の気配を殺す技術のような絶妙な距離感で、サメを逆なでせず、しかしカメラは手放さずに、身をひるがえし、ときにそっと手や足やカメラでサメの方向を変えて撮影を続けていました。

サメってそっとなら蹴っていいんだ……。

いや、常人がやったなら、その足をもってかれるでしょうけれど、この人たちはおそらく繰り返し死線を乗り越えた果てに、野生動物の攻撃性を刺激しない間合いを身に着けているのでしょう。

驚異の撮影風景(一部)はコチラ。



https://www.youtube.com/watch?v=AGKa8wlXvhk

(日本でこういう番組を放送してくださる方々〈NHKやWOWWOW等〉が万が一この記事をご覧になってくださったらお伝えしたいのですが、アッテンボローさんたちの美しくて聞き取りやすい英語ナレーションと、こういう撮影秘話は絶対に削らないでいただきたいです……)

また同シリーズ「大いなる海の宴」では、アラスカが舞台となっています。

壮絶な冬を超えて生き延びているわりに無邪気なところがあるアシカたちが、カメラマン氏の水中撮影に「アラマフシギフシギ、ナニコレダレコレ」とカメラやカメラマン氏本人にコンコン鼻を近づけているというほほえましい映像がある一方、サーディン・ラン同様の魚群(今回はニシン)捕食の際、鳥たちに上空と海中から襲われ、一か所においつめられて水面スレスレでびちびちのたうっている魚群を水中撮影していたカメラマンの目と鼻の先をかすめ、水面そのものが割れ、波間に山の立ち上がるように、体長十数メートルのザトウクジラがぱっくりと大口をあけて突っ込んでいく瞬間がありました。(HPの解説によれば、「Within a feet」なのでその巨大口とカメラマン氏は約30pしか離れていなかった。)



https://www.youtube.com/watch?v=quwebVjAEJA

人なら呑みこんでも多分吐き出してくれるだろうと言ったって、そのとき無傷でいられる保証はどこにもなく(そもそも吐き出してくれる保証からしてない)まさしく命がけの映像でした。

(ザトウクジラが海面に姿を現した際、魚群近くでカメラマンを見守っていたボートから叫び声が上がっていた。)

「怖かった……」
そう言いながら上がってきたカメラマン氏、しかし、その顔は、前代未聞の映像をものにし、その目に焼き付けた達成感に紅潮していました。

スタッフたちの撮影風景ダイジェスト版動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=qPS3mP3fIQs

壮大で厳しい自然の驚異、スタッフたちの度胸と執念、美しい音楽にアッテンボロー氏の重厚かつ熱のこもったナレーション、どれをとっても素晴らしい作品なので、是非ご覧になってみてください。

各回エピソード紹介や動画を含む「Nature's Great Event」のHPはコチラです。
(動画集はコチラ)

当ブログの海の生物にまつわる記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


読んでくださってありがとうございました。

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2016年08月11日

「哀蚊(あわれが)」(太宰治短編ご紹介3)


本日は、太宰治のごく短い作品についてご紹介させていただきます。
(ネタバレですのでご了承ください。)

「哀蚊」(あわれが)

太宰治初期の作品「葉」の一部に「自分が過去に書いた作品」として含まれている掌編小説です。(小説集『晩年(1936年発行)』に収録)

晩年 (新潮文庫) -
晩年 (新潮文庫) -

太宰治本人を思わせる「私」の言によるとこの「哀蚊」を書いたのは、自身が19才のとき。(※1)

「それはよい作品であった。(中略)自身の生涯の渾沌を解くだいじな鍵となった。形式には、「雛(※2)」の影響が認められた。けれども心は、彼のものであった。」
と、自ら思い入れを語っている作品です。

(※1)戦前は年齢を数え年で言うのが一般的だったので、おそらく現在で言えば18歳。
(※2)芥川龍之介の短編。太宰は芥川の熱烈なファンだった。

「秋まで生き残されている蚊を哀蚊と言うのじゃ。蚊燻し(かいぶし※蚊取り線香)は焚かぬもの。不憫ゆえにな。」

そう語る、東北の富裕な一族に生きた、若き日の絶世の美貌を色濃く残す老女。

死に顔すら夏木立の影も映らんばかりに透き通り、しかし、その肌を誰にも触れられぬまま死んだ、その無念をひっそりと描いた作品です。



「おかしな幽霊を見たことがございます」

物語は本家の娘のそんな語りからはじまります。

本家の娘「私」は、幼いころ、同じ屋敷に住む、美しい「婆様」に可愛がられて育ちました。

「わしという万年白歯(※)を餌にして、この百万の身代ができたのじゃぞえ」
それが婆様の口癖。財産を分けずに済むよう、一族が結婚を禁じたのでしょう。

(※)未婚の意、昔、既婚女性は鉄漿(おはぐろ)で歯を黒く染めたため。

家の繁栄の犠牲となった美しい老女は、実の孫ではない「私」への秋の寝物語として、生き残った哀蚊の不憫を語って聞かせます。
「なんの哀蚊はわしじゃぞな。はかない……。」
幼い「私」を抱きしめ、その両足を自分の脚の間にはさんだまま、老女はそうつぶやきました。

そしてこの美しい「お婆様」を誰よりも慕っていた「私」は、ある晩、幽霊を見たのです。

やはり秋、「私」の姉の祝言の晩。騒々しかった宴会も静まった頃。
目をさますと、「私」に添い寝していたはずの「婆様」が居ず、厠に行こうと一人こわごわ部屋を出た娘の目の先に、見えたもの。

青蚊帳にうつした幻燈のようにぼんやりと、しかし確かに夢ではなく。
暗く長い廊下の片隅、新婚の二人の寝室の前に、白くしょんぼりとうずくまり、中をうかがう小さな幽霊。

「幽霊。いえいえ、夢ではございませぬ。」

(完)

確かに「」に一部似たところがあります(※没落した名家の父が、手放すことになったひな人形を飾り、夜中に独りそれを眺める姿を、娘が見つけるという内容。作品が娘の回想として語られる点、夜中、娘が家族と家の悲哀を思いがけず目撃するという部分が共通している。)しかし、こと凄味という点ではそれを上回っています。

幼い「私」を抱きしめることで独寝のわびしさを紛らわせ、自分は迎えることを許されなかった初夜を垣間見ようとする「婆様」。

太宰は実家が非常に裕福ながら、その実かなり内外に重苦しい業を重ねて財を蓄えたというのは、しばしば作品の中で語られているところです。

太宰の実家である津島家、あるいは近隣の似たような裕福な家でも、この「婆様」のように、家の財を保つために、結婚を禁じられて、大きな冷たい屋敷から出ることを許されず、本家の人間の面倒を見、彼らだけに許された婚姻を、寂しさと羨望を押し殺して眺めながら、老いて死んだ女性たちがいたのかもしれません。

(なお、作中では、同じ夜、「私」の父が祝いの席に呼んだ芸者と関係を持っていることをほのめかす場面もあり、婆様に孤独を強制しながら、淫蕩に走る本家の男たちのエゴが浮かびあがる構成になっています。)

そういう現実を念頭にしているせいなのか、「葉」自体の、いかにも太宰作品らしい、まだ若いのに人生が苦しくて仕方がないといった口調や、心が疲弊しきって現実と幻影の区別があまりつかない茫洋とした灰色の世界観の中で、この「哀蚊」の廊下の暗さや、美しい老女の肌の不幸な輝き、空気の冷たさはリアルで異彩を放っています。

もし本当に未成年のうちにこの作品をものにしたのなら、まさにおそるべき才能です。

ご存知のとおり、太宰はこれ以後も数々の傑作をものにしていきますが、これはこれで、短いながら、既にこれ以上足し引きできない完成されたものを感じさせる。

(ただ、まだ若いうちに、圧倒的富裕の裏返しとして、身近にこのような不幸とエゴを感じていたのなら、それは確かに苦しいことだったでしょう。)

これを読んで以来、この薄幸の「婆様」と、「あわれが」という言葉の響きも相まって、秋の蚊には「もう死んでしまう、しかし、いつどう死ぬのか、なんのために生まれてきて死んでしまうのか自分でも知らない、はかない、さびしい、ちいさな命」というイメージがつき、しんみりしそうになります。

(「しそうになる」だけで、しないけど。現実の秋の蚊は体が大きいし、いつ死ぬのかわからないせいか、羽音も殺気だって、どこだろうとお構いなしに刺しまくるから、ある意味夏の蚊より速やかに葬り去らないとひどい目に遭う。)

蚊の季節から秋にかけて、先日ご紹介した椎名誠さんの蚊の話(「わしらはあやしい探検隊」より)と真逆の才能として、いつも対で思い出す作品です。

ネット上の「青空文庫」でも閲覧することもできるので、よろしければご覧になってみてください。

当ブログ太宰治関連記事は以下の通りです。併せてお読みいただければ幸いです。
「黄金風景」(太宰治短編ご紹介1)
「花吹雪」(太宰治短編ご紹介2)
「哀蚊(あわれが)」(太宰治短編ご紹介3)

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 05:00| 太宰治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月10日

(「100日間リベンジ」再び)2週目まとめ ダイエット、減酒、減無駄ネットの経過ご報告


※今回はただの日記です。

100日間色々生活習慣の改善をするというチャレンジをしていますが、その第二週目の経過報告をさせていただきます。

今回のチャレンジに至るまでの経緯(かいつまんでお伝えすれば「挫折しかしてこなかった」です〈汗〉)と第一週目の経過報告はコチラです。


第一週目最大の収穫は「無駄ネット閲覧時間削減に伴い、ブログを毎日更新できた」で、これは今も継続中です。

以下、今週の変化です。

1、ダイエットについて
さしあたりの目標は、2年前に一気に増えてしまった10kgをもとに戻すことです。
んが(鼻濁音)、先週から200g増えました。ぐぬぬ……(悔)。

100日間チャレンジ開始時から週4日ウォーキングをしていたのですが、一向に減らない……のは、今週半ばに暴飲暴食をしてしまったのと、新習慣を定着させようと粘ってもイマイチうまく時間を使えてないので、結果睡眠時間が減っているためかと思われます。
(寝不足だとむくむし食欲増だし脂肪燃焼効果が下がるんだとか。ていうか実際わが身が痩せないや〈汗〉)

また、週4ウォーキングだと必要な用事や英語の勉強まで後回しになることがあるので、今週は週3に減らしてみます。
(早くも自分に甘いかな……来週体重増えてたらもとに戻してなんとかやりくりします。〈汗〉)

代わりに、磨き掃除時間を増やす予定です。

掃除の消費カロリーはあなどれないとのことで、コチラのサイトによると、体重50kgの人が「床磨き:手や膝をついて、浴室や浴槽磨き、ほどほどの労力」を60分やると約183kcal消費(コンビニのツナマヨおにぎり一個分くらい〈カロリー参照:生活情報サイト ミュンティ「コンビニコーナー」ページ〉)。

ジョギング30分(157kcal)を上回るそうなので、「部屋がきれいになる+天気を気にしないでいい+ウエアに着替えなくてもいい」という長所を考えるとなかなか効率的です。
(このサイト、エクササイズだけでなく家事等の細かい動作のカロリーも計測できるのでとても便利です。)
(「かんたん消費カロリー計算」トップページ)http://hbb.amary-amary.com/


2、飲酒について

上述週半ばのやらかしに深く反省してから、無事減酒継続中です。
その晩蚊に刺されまくったのですが、酔うと、実際普段以上に蚊を引き寄せるそうです(※)。今はこういうマイナス情報も積極的に集めて、モチベーションの足しにしています。
(参照:「面白ニュース秒刊SUNDAY」「酒を飲むと蚊に刺される確立が15%上昇することが判明」、出典「Dailymail」)

お酒代わりの炭酸水(わたなべ ぽんさん情報をいただいた)について、「クエン酸」と「重曹」(いずれも薬局で入手可)で自分で作れるという話を聞き、湯冷ましに適当にそれらをぶっこんで作っておいといたら、炭酸のほとんど感じられないヌルイバリウム(胃カメラの時に飲むアレ)みたいな、人を憂鬱にさせる味になり(重曹が多すぎたらしい)、別の意味で飲酒する気が失せました。

すごく懲りて、コチラのサイト(iemo)でちゃんと調べたところ、以下がポイントだとわかりました。

・冷やした水を使う(炭酸ガスが水に溶けやすくなる)
・保存には元々炭酸水が入っていたペットボトルを使い(強度が他の物と違う)、密閉できるかを事前に確認する。
(補足:重曹には塩分が含まれているので過剰摂取に注意、とのことです。)

両方のコツを見事に外して、まだヌルイ湯冷ましでベこべこの炭酸用じゃないペットボトルつかっちゃってました。そりゃ憂鬱なバリウムになるな。リベンジします。
(個人的には作ったら早めに飲んだほうがいいのかなとも思います。)

3、続、無駄ネット閲覧について

これはかなり減らせています。寝不足が積み重なってそれどころじゃなく寝ちゃってるだけかもですが……。

自分なりにネットを見たくなる瞬間について考えたところ、以下のどちらかだと気づきました。
「夜、まだやらなきゃいけないことがあるから寝たくないけど、着手するには疲れすぎていてめんどくさいので無意識に先のばそうとしているとき」
「ストレスがたまっているとき」

前者のみの場合、
「そこそこネットで気晴らししたら、よし!と、やらなきゃいけないことを始めた」
ということが100回に1回も無く、結局そのまま寝落ちパターンなので、自分がバクゼンとネットをいじりだしたら、「もうこれ以上はできないんだな」とあきらめ、最低限の作業(締め切りがあるものとか、すぐやらないと不潔になっちゃう家事とか)のみ済ませ、あとは「同じことならやらずにねる(※)」というのび太の至言を魂の待ち受けに、寝てしまうようにしました。(「ドラえもん」てんとうむしコミックス27巻より)

(※)「きりかえ式タイムスコープ」という、自分の選択した行動によってそれぞれどんな未来が訪れるかがわかるひみつ道具で、「朝宿題をやる」「寝る前に宿題をやる」のどちらが良いかをのぞき見たところ、
「(朝の場合)わあ、ひとつもやっていない。どうしよう!!」
「(寝る前の場合)わあ、机に向かっていねむりして朝になった!!」
と、叫んでいただけだったので、上記のセリフとともに寝てしまうのび太。

同じことならやらずにねる.png


見ていたドラえもんは素晴らしく味わいのあるあきれ顔ですが、結局布団の中で寝られるだけ前者のが心身楽でマシなのは事実だと大人になってから気づいた。
(むしろ大人になればなるほどのび太の言動に共感する。〈おい大丈夫か〉)

ただ、さすがに「わあ、ひとつもやっていない。どうしよう!!」は困るんで、「早起きしてやる」にしています。

寝る前に設定した起床時間を寝過ごしてしまうことはしょっちゅうですが(汗)、布団の中でゴシップネット見続けて、精神的にすさんで熟睡を阻むブルーライトを浴びてから寝るよりは、はるかに早起き成功率高くなりました。

でも、起きて直近の締め切り作業があるのは寝てる間もそわそわするし、目覚め楽しくないんで、寝る前にあともうひとがんばりできるようにはしたいですね……。

なお「やらなきゃいけないことがあるけどめんどくさい」と「ストレスがたまっている」のダブルパンチになった際、寝ようにもなんだか脳がカッカして寝つけない、となってしまい、ネット閲覧という負のスパイラルに陥ってしまうことがあるんですが、これは、ネットの代わりに「寝つきがよくなるCD」系を聴くに変えることで対応しています。
(ダウンロードもできるけど、それだとネット触っちゃって危険なんでCD派。〈どんだけネットローレライ状態なんだ。〉)

ただ、あまりにも疲れていると、気力判断力が低下し、CDプレイヤーに手も伸ばせないことがあるんで、ここをどう突破するかが早急に解決すべき課題です……。

以上、2週目のご報告でした。3週目は「睡眠時間の確保」と「体重の減少」がご報告できるように頑張ります。

読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum. at 04:09| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

(ネタバレ編)七年目の浮気(マリリン・モンロー主演映画)

前回に引き続き、マリリン・モンローの代表作「七年目の浮気」をご紹介させていただきます。

妻子が避暑に出かけて単身都会に取り残された生真面目な夫リチャードが、上の階に住み始めた美女への浮気心に七転八倒するというコメディです。
(※今回は、結末部までネタバレです)

美女が(半分エアコン目当てに)部屋に遊びに来た時、出来心でキスを迫ったものの、かろうじて正気に返れたリチャード。

このままではマズい、と妻を追って避暑地に行くため休暇を願い出ますが、同じく避暑に出ている女房の不在を命一杯満喫している上司は理解を示してくれず、情緒不安定になったリチャードは、駆け出しの女優でもある美女が、生放送CM中に昨日のことを視聴者に吹聴したらどうしよう(しないしない)等とのたうちまわります。

その(存在しない)映像を妻が見ているのではと、おそるおそる避暑地に電話したリチャードは、電話を受けたベビーシッターから「妻ヘレンが知人のトムや他の人々と同じ干し草を積んだ馬車でドライブに出かけたと」聞き一安心。

ところがいけすかないトムがメンバーに加わっているということを拡大解釈しはじめ、しまいには、ヘレンがトムと干し草の上で情熱的な抱擁を交わす場面を想像してしまいます。(「他の人々」はいずこに。)

「上等だ、そっちがその気なら!(←???)」と怒りにかられたリチャードは美女を映画に誘い出します。

一方、美女は、夏の間だけ避暑に出かけた上の階の住人の留守番を引き受けたものの、エアコンのないその部屋にほとほと困っており、喜んで誘いについてきます。

(マリリン モンローの代名詞ともいえる白いドレスのスカートが舞い上がるシーンはこの帰路の一コマです。)



部屋に戻ろうとした美女を、少し涼んでいかない?と自宅に呼び(エアコン最強)、いいムードに持ち込もうとするリチャード。

しかし美女は聞いちゃあおらず、上の階は暑すぎるから、今晩はここに泊めてほしいと頼み込んできます。

翌朝、結局ソファーに寝ているリチャード。

リチャードが明け渡したベッドでスヤスヤ寝ている美女に朝ご飯を作ってあげようとしますが、こんなところを妻に見られたら大変だ、と思ったのをきっかけに、また例の妄想癖が頭をもたげ、なぜか急に避暑地から舞い戻ってきた妻に有無を言わさず銃で撃たれて息も絶え絶えという気分に陥ります。
(余談ですが、リチャードが使っている可愛らしい緑色のガラス製オレンジ絞り器〈ジューサー〉はおそらくファイヤーキング、今ではプレミアがついている人気ヴィンテージブランドです。)

一人でヨロヨロと末期のタバコを探している瀕死の(つもりの)リチャードに、「何をしているの?」と尋ねる美女(本当に何をしているんだ)。

我に返ったリチャードは、どうも自分は想像がたくましすぎるという欠点があって……と弁解しながら、実際のところは、妻は君を見たところで疑いもしないだろう、シャワーを浴びて出てきた君を見ても、配管工だと思うだろうね、と言います。

その場面の動画です。



こんな冴えない中年男を気に入る女がいるわけがない。だから疑わないし嫉妬なんかしない。

前にパーティーで女性にぶつかって服にキスマークをつけて帰ってきたときも、クランベリーソースのシミと勘違いしただけだった。

そう肩をすくめるリチャードに、それまでいつもふわふわと笑っていた美女がまじめな顔になりました。
「ひどいわ」

実際、美人は自分など素通りだから、と、苦笑するリチャードに対し、美女は「あなたは女性をみくびっているわ(You think every girl's a dope.)」(※dope=口語だと「まぬけ」の意味)、と、憤慨して、リチャードに言い聞かせます。

パーティーでよくいる、全身キザな恰好をした、女なんかすぐに落とせると思っている自信過剰な男、あんなのに女は落ちない。

(以下、セリフを引用、私なりに直訳させていただきましたので、動画と併せてご参照ください。(上記動画1:25秒頃より)

But there's another guy in the room, way over in the corner. Maybe he's kind of nervous and shy, perspiring a little.

でもその部屋に別の男性がいる、部屋の片隅に。緊張して恥ずかしがりやで、少し汗をかきながら。

First, you look past him, but then you sort of sense, he's gentle and kind and worried, and he'll be tender with you, nice and sweet. That's what's really exciting!

最初は彼のことを見過ごしてしまう。でも彼は穏やかで親切でシャイで、優しくしてくれる、いい人、素敵な人。そういう人にこそ、女はときめくの!

(手持ちのDVD字幕版では「He’s gentle……」以下が、「男の本当の優しさがわかるの、女が求めるのはこれよ」となっていて、素敵な訳だなあと思いました……)

私があなたの妻ならとてもとても嫉妬するわ。

そういうと彼女はリチャードによりそい、そっとキスをします。

そして、「あなたは最高よ(I think you're just elegant.)」と微笑みます。

うろたえながら「ありがとう」とつぶやくリチャード。

そこにドアベルが鳴り、入ってきたのは愛する妻ヘレンを奪おうとした(とリチャードが妄想した)トム。
(美女が、「あんなのには女は落ちない」と言ったそのままのキザ男の恰好。)

「いったん戻ってきたけれどすぐ避暑地に戻る。息子さんが家に忘れたカヌーのカイを持ってきてほしいそうだから預かっていくよ」と話すトム。

しかし、美女の言葉で奮い立っていたリチャードは、彼の言葉に2%程度しか耳を貸さずに、

カイは君になど託さない、自分で持っていく、妻とは離婚しないぞ!妻は私を愛してる!なぜなら私は穏やかで親切で優しいからだ!!

そう高らかに宣言してトムを殴り飛ばします。(トム、とんだ災難)

トムをつまみだすと、カイを手に避暑地へ向かおうとするリチャード。

美女に、この部屋は好きに使っていい。エアコンも、と言うと、美女は「奥様に伝言を」と彼を呼び止めます。

そして、もう一度彼にキス。

無言で唇についた口紅をぬぐおうとしたリチャードを、美女が優しくおしとどめ、こうささやきます。

「もし奥様がそれ(キスマーク)をクランベリーソースだと思ったら、彼女に『頭にサクランボの種が入っているのね』と言って(If she thinks that's cranberry sauce, tell her she's got cherry pits in her head.)」

(「tell her she's got cherry pits in her head」の字幕意訳としては、過去「『おばかさんね』と言って」というのがありました。コレが一番モンローの可愛いしゃべり方に合ってると思います。。)

有頂天になってカイを片手に靴下で飛び出していくリチャードに、窓から笑顔で靴を投げ渡す美女。

靴が脱げたり、荷物を散らばせたり、にぎやかに妻のもとへと飛んでいくリチャード。

(完)

女が本当に素敵だと思うのは、目立たなくてもとても優しい男の人。
あなたは最高よ。

こんな美しいひとに、あんな風にいわれたらもーたまんないっっ!と、シンプルにウットリもしますし、その甘くかわいらしいながらも、まじめで温かな情のこもった語りに胸を打たれつつ、それは波乱の日々と苦しい恋に生きたモンローの、心底からの思いだったのでは、そう言う人を探し続けていたのでは、という印象も抱く、かすかにせつなさの漂う名場面です。

モンロー演じる美女も、妄想たくましいけどなんか憎めないリチャードも魅力に溢れた、何度観ても笑えて愛すべき名作です。是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 00:00| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月08日

七年目の浮気(マリリン モンロー主演映画)


本日は夏にちなんだ映画をご紹介いたします。

「七年目の浮気」(1955年 アメリカ)

七年目の浮気(特別編) [DVD] -
七年目の浮気(特別編) [DVD] -

妻子を避暑に送り出して束の間の一人暮らしをはじめた中年男リチャード(トム・イーウェル)が、上の階に越してきた美女(マリリン・モンロー〈役名無し〉)への浮気心に振り回されるという物語です。

タイトルやあらすじからもっと生々しい修羅場な展開かと思いきや(当時としては相当スキャンダラスな作品だったそうですが)、リチャードが妻への愛と美女へのヨコシマな思いに右往左往する姿や、驚くばかりにたくましい妄想癖が笑えるコメディです。

既婚者とはいえ、このうろたえっぷりや、一人でどんどん思いこむ姿は、今となるとむしろ独身非モテ男子の愛嬌と悲哀を思わせます。
(リチャードが美女の無邪気な色気に動揺する姿が、Wエンジンの「惚れてまうやろー!!」っぽい)

そしてマリリン・モンロー!

「ブロンドグラマーで白いスカートがめくれている美女」というイメージしかなかったのですが、この映画で「可愛らしくてちょっと天然で、でもとても温かい」というキャラクターを見事に演じ切っています。

波乱の人生を送り謎の死を遂げた人で、実際この撮影中も野球界の大スター、ジョー・ディマジオとの離婚を経験、精神的にも非常に不安定だったそうですが、作品の中の彼女は、まさしく男の理想といってもいいほどに明るく魅力的でした。

【あらすじ】
ニューヨークでは、夏になると妻子は夫を置いて数週間避暑地に繰り出す。

その間、夫たちは蒸し暑いニューヨークで仕事に励むわけだが、駅で見送りをして踵をかえす男たちの顔は案外晴れやか。これからしばらくの間、独身気分であれこれアソブ気満々である。

そんな夫たちに一瞬まぎれこみそうになりながらも、踏みとどまり、「俺はああはならない(No, not me.)」と呟くリチャード。

美しいが少々彼をみくびっている妻と、憎まれ口真っ盛りの息子を持つ、出版社勤務の中年男。

妻の言いつけどおり、酒もタバコも断ち、菜食主義のレストランに通って清く正しく暮らすのだ……。

そう思いながら帰ってきたその日、彼は目の覚めるようなブロンド美女に出くわす。



リチャードの妻子と同じく避暑に出かけた上の階の住人に代わって、しばらくその部屋に住むことになったとのこと。

男なら100人中1億人が鼻の下を伸ばすような美女が天井を隔てて上に……。

絶好のチャンス、いや危機的状況にリチャードの心は激しく乱れるが、上の階から鉢植えが落ちてくるというハプニングをきっかけに、ついその美女を部屋に呼んでしまう……。

 【見どころ】

この作品、「夏」がストーリーを大きく左右しているところが面白いです。

本来、カタブツを心がけるリチャードは家族と波風の無い日々を送っていたはずですが、暑いから妻子が不在となった。

そして、2階の住人もいなくなり、入れ代わりに若い美女が一人で暮らすことになった。

さらに、いかにも遊び慣れていなさそうなリチャードが、ごく自然に美女と親しくなるのは、実は彼の家にクーラーがあるからです。すごく即物的な理由です。

(ちなみに有名な白いスカートがめくれるシーンも、暑いから喜んで地下鉄通過時に吹き出す排気口からの風を受けているという状況です。)

美女の住む部屋にはクーラーが無いのでリチャードはうちに涼みに来ない?と、言えてしまうし、美女も彼の家に長居する。

当然、美女としては部屋に行くことイコール「そういうことになっていいわよ」ではないのですが、彼女も相当天然無邪気な性格で、呼ばれたら露出度の高い服でニコニコ笑って来てしまい、とりあえず、「部屋に二人っきり……」という事態になるもんだから、リチャードは、これはイケルと思い込んでしまうわけです。
 
そういう雰囲気に持っていこうとロマンチックな音楽(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番)を準備して待ち構えるリチャード。

妄想の中では彼自身が(おそらく実際には持ってないであろうツヤツヤの赤いガウンを着て)それを自ら流麗に演奏し、セクシーなドレスの美女が、
「鳥肌が立つわ……この曲を聴くと自分が誰で何をしているのかもわからなくなるの……」と身もだえします。
(それにしても、モテに関して都合の良い妄想をたくましくしている人を見ると妙にいとしく思うのはなぜだろう。同朋愛だろうか。)



しかし現実はそうはうまくいかず、美女はラフマニノフ(レコード)そっちのけで、「チョップスティック(日本の「猫踏んじゃった」的な位置づけの曲の模様)」をリチャードと一緒に弾いて大喜びをしています。

それでも隣に美女が座って笑っているのを見て、村々してきたリチャードは、思わず美女にキスを迫ってしまい、ピアノの椅子から転げ落ちて正気に返ります。
 
反省しきりのリチャード、しかし、美女はこんな事態には慣れっこで、さほど怒りません。

むしろ、平謝りして、彼女を部屋に帰そうとするリチャードに、彼女は振り返って言います。
「立派な方ね」

リチャードは自分をケダモノだと激しく呪いますが、逆に美女はこの件をきっかけにリチャードに好感を持ったようです。

引き続き下心に煩悶しているというのに、それを知ってか知らずか、美女はリチャードと親しくなっていきます。

……二人の関係がどうなるかについてはまた改めて「ネタバレ編」で書かせていただきますが、もう一つ面白かったのは、リチャードが自分の暴走する浮気心を持て余して精神科医に泣きつくところです。

七年目の浮気2.jpg

医師は本の出版の打ち合わせに来たのですが、仕事が多忙らしく、分刻みで動いている医師と、そそくさと仕事部屋の長椅子に横たわって手馴れた様子で即席カウンセリングを受けているリチャードの姿から、既に1950年代、アメリカではカウンセリングがメジャーになっていたことがうかがえます。

ここから先は推測ですが、第二次大戦時、ドイツから、ユダヤ系知識人が多数アメリカに亡命し、その中には多くの心理学者が含まれていたそうですから、60年前にメンタルヘルスに対する意識がここまで発達しているのは、そうした歴史的背景に基づいているのかもしれません。

アメリカでのカウンセリングの浸透ぶりをうかがわせる一例として、スヌーピーのキャラクタールーシーの精神分析も挙げられます。
露店的な場所で開業しており(有料)、スヌーピーの飼い主チャーリーブラウンがしょっちゅうカウンセリングを受けている。
(なお、そのアドバイスは彼女の性格を反映して非常にストレートかつ明快で、なるほど悩んでいるのが馬鹿らしくなるという意味では優秀と言えなくもない。)

さて、ちょっと脱線してしまいましたが、『七年目の浮気』、究極の「真夏の男の愛の夢」としても、粋で愛すべきドラマとしてもとても面白いので、ぜひともご覧になってみてください。

(女性も是非!マリリン・モンローの美しさと可愛さ、そしてラストシーンの魅力は必見です。)

次回は、ラストシーンの台詞について、ネタバレ編として書かせていただきます。

読んでくださってありがとうございました。
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2016年08月07日

イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)


前回は、「夏向き癒しのイルカ動画」と銘打って、僕が「イルカかーわいい(愛)!」と思った動画をご紹介しましたが、今回はそのときちょっと脇によせといた動画をご紹介します。度肝をぬかれましたが、かーわいい(愛)!とか、癒しとかとはちょっと違うな……と思ったので……(汗)。

動画タイトルは「Dolphins purposely 'getting high' on pufferfish(直訳 イルカたち、意図的にフグでハイになる)」
pufferには「ぷっと吹く」の意味もあるそうですが、それで「pufferfish」って、音の感じといい、なんかイメージにあっていますね。



https://www.youtube.com/watch?v=msx3BAhIeQg

Dolphins: Spy in the Pod(直訳イルカ:群れの中のスパイ)」というBBCドキュメンタリーでウミガメ姿の隠しカメラ(かわいい)が偶然とらえた映像だそうです。
Pod……この場合、イルカやクジラの少数の群れのこと

Youtube動画の説明文を引用させていただきます。

Bottlenose dolphins play with toxic pufferfish that secrete a neurotoxin that in high doses can kill but in small doses seemingly have a narcotic effect.
(直訳)バンドウイルカが摂取量が多ければ致死性だが少量なら麻薬効果があると思われる神経毒を分泌する有毒フグで遊んでいる。

冒頭、一頭のイルカがフグをくわえてつーっと水面にあがっていきます。

それに他の4頭が加わり、水面近くに垂直に体を寄せ合って、ぶきゅきゅぶきゅきゅ……と言いながら、フグをつついたりくわえたりしています。

ご存知のとおり、フグは猛毒の持ち主で、イルカに捕らわれ身の危険を感じたこのフグは、青酸カリをはるかにしのぐという猛毒(テトロドトキシン)を分泌させているのですが(水面の茶色いもやのようなものがそれらしいです。)イルカは絶妙な力加減でフグをくわえたりつついたりすることで、この毒を弱く出させて、ハイになってる模様です。
(ていうかいくら弱く出してしかも水中で薄まっているといっても、これ好きで吸うなんてイルカって物凄く丈夫なんだなと思いました。この近く人が泳いでいたら死んじゃうんじゃ……?)

驚いたことに、最初にフグを「おー、いいブツが手に入ったぜい」みたいな感じでいそいそ捕まえてきたイルカは、集まってきた仲間たちに、フグを口移ししたり、ボールのようにパスして互いにシェアしています。

まるで外国の街のかたすみで、たむろする若者たちが「お前も一服やるか?」と自分が吸っていたナニカを仲間に手渡すように……。

ぷきゅぶぶ、ぴゅいーと相変わらず声はカワイイですが、途中から目はうつろ、口は半開き、互いに折り重なるようにバクゼンと水中を漂い、明らかに「ウケケケケ!」状態。
前回ご紹介した動画の優しく真面目そうな素面のイルカさんたちと見比べてみてください。)

こんなウケケケ状態で、うすめた青酸カリちょいなめみたいなことやっていて、たとえば間違えてフグ強くくわえて毒汁ブシャー!(ふなっしー調)で事故死なんてことがイルカ史史上なかったのかと心配になりますが、このときはイルカたちが自分の世界にトリップしている最中に(エキゾチックなBGMがまた別世界ムード醸してる)、命からがら抜け出したフグが「ひいいい……!」という悲鳴が聞こえてきそうなほど一目散に逃げだして(うん、ウケケケイルカにあんなに取り囲まれちゃあ怖いよね……)過激なパーティーは幕を閉じています。

ある意味では人間をもしのぐのではないかと言われる高い知性の持ち主であるイルカが、それゆえに人間同様、その知性を、危険な方面にも活かしてしまっているというお話でした。

今回参照させていただいた記事は以下のとおりです。(どちらも動画、画像つき)
「Flipper's bad boy cousins! Dolphin pod gets 'high' off pufferfish toxins (and they're too buzzed to spot their prey slip away)」(「Mail online」2015年3月9日記事

イルカはフグ毒で”ドラッグ遊び”をしていることが判明…英BBC調査」(Technity 2014年1月1日記事)


ちなみに、上記「Mail online」のWeb記事のタイトルは、意訳すると「フリッパーの悪いいとこたち!イルカの群れがフグ毒でハイになる(そして彼らはあまりに酔っ払いすぎて獲物〈フグ〉が逃げ出したことに気づかなかった)」ですが、この「Flipper」は、アメリカのテレビドラマ(後、繰り返し映画でリメイクされている)に登場するイルカの名前だそうです。なんかステキなセンス……。

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それしても、この映像で、イルカの生態そのものにも驚きましたが、この映像をものにしたイギリスBBCの製作者たちの執念と技術にも圧倒されました。イギリスの自然番組は総じて非常にレベルが高く、いつも、どうやって撮ったの!?と思わされる、鮮明でユニークな映像が見られますが、今回の「ソックリウミガメラ(勝手にドラえもんのひみつ道具みたいなネーミングにするな)」もそのひとつ。
当ブログ「自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)」でご紹介させていただきましたので、よろしければ併せてお読みください。


https://www.youtube.com/watch?v=80BXZfuevkE

当ブログでイルカに関する情報をご紹介している記事はコチラです。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


読んでくださってありがとうございました。
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