2016年12月03日

没後100年、NHK漱石関連番組一覧

取り急ぎご連絡まで

夏目漱石の命日と没後100年にちなんで、NHKEテレと BSプレミアムで漱石関連の番組がいくつか放送されるので、見つけた範囲でネット情報をご紹介させていただきます。
(Eテレ)
・2016年12月3日 午後11時00分〜 午前0時30分(10日0時〜再放送
 ETV特集「漱石が見つめた近代〜没後100年 姜尚中がゆく〜」
http://www4.nhk.or.jp/etv21c/x/2016-12-03/31/1576/2259555/

 漱石を深く敬愛する政治学者姜尚中さんが、新発見の資料をもとに、ロンドンから韓国までの都市をめぐり、漱石の見据えた近代の姿を読み解いていく作品です。

(ご本人の、あの象徴性を感じさせる静かな語りと言葉選び、深奥を探すようなまっすぐな視線は、漱石作品の登場人物によく似ていらっしゃると思います。)

 姜さんが漱石を思い入れ深く分析した著書がいくつか存在し、いずれも読みごたえがありましたので、併せてお手にとってみてはいかがでしょうか。

漱石のことば (集英社新書) -
漱石のことば (集英社新書) -

悩む力 (集英社新書 444C) -
悩む力 (集英社新書 444C) -

(BSプレミアム)
・2016年12月6日 午前9時00分〜 午前10時26分
「プレミアムカフェ ロンドン 1900年 漱石“霧の街”見聞録」
http://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2016-12-06/10/3248/2315706/
 漱石が留学したころのロンドンを紹介する番組です。

・同12月7日 午前9時00分〜 午前11時01分
「プレミアムカフェ シリーズ恋物語 “虞美人草”殺人事件 漱石 百年の恋物語」
 http://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2016-12-07/10/3675/2315709/
三角関係を描き、当時熱狂的反響を巻き起こした小説『虞美人草』について、「ヒロインの死を巡る三角関係の謎を徹底議論する」番組だそうです。

・同12月8日 午前9時00分〜 午前11時10分
「食は文学にあり 漱石と鴎外▽猫を愛した芸術家の物語 夏目漱石」
 http://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2016-12-08/10/4411/2315714/
 胃弱なのに食い意地の非常に張っていた漱石と、彼と並び称される明治の文豪森鴎外の食をテーマとした「食は文学にあり 漱石と鴎外・文豪の食卓」と、「吾輩は猫である」に代表される、漱石と猫の関わりをテーマとした「おまえなしでは生きていけない〜猫を愛した芸術家の物語〜夏目漱石 吾輩は福猫である」の二作品を一挙放送。

 ※ちなみに、漱石は猫をテーマに大いに名声を博しましたが、本人はどちらかというと犬派らしいということがわかる資料が残されているので、近々ご紹介させていただきます。

・同12月10日 後7:30〜9:00
スーパープレミアム「漱石悶々(もんもん)」
 http://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=07831
 ※祇園の茶屋の女将、磯田多佳と漱石の書簡を基にしたドラマです。豊川悦司、宮沢りえ主演。

 以上になります。次の記事では、「虞美人草殺人事件」にちなんで、小説『虞美人草』の私的おススメポイントをご紹介させていただきますので、よろしければまたお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 09:44| 夏目漱石 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月02日

おすすめ漫画『ごはんのおとも』(たな 作)ご紹介その2


前回、食べ物とそれを食べる人々の日常を描いた漫画『ごはんのおとも』についてご紹介させていただきました。

ごはんのおとも -
ごはんのおとも -

ごはんのおとも 2 -
ごはんのおとも 2 -
前回は一話ずつ単独で読んだときの見どころについて触れましたが、今回はこの本の最大の特色「一冊読みとおしたときに良さが増す仕掛け」についてご紹介させていただきます。
※ややネタバレなのであらかじめご了承ください。

前回記事「おススメ漫画『ごはんのおとも』(たな 作)ご紹介1はコチラ



 各巻第一話が試し読みができるページはコチラです。
http://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=20&iKey=123(第一巻)
http://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=20&iKey=585(第二巻)
 
仕掛け1 繰り返し現れる登場人物たちと情景

 この作品、一話ごとに短編として起承転結があるのですが、そこに出てきた人たちが、別の話で主人公になったり、逆に通りすがりだったりと、何度も姿を現します。

 そして、ときに、同じ出来事が別の人物の視点から、改めて描かれたりします。

(例)一巻第一話「きみとの出会いは」内、主人公タブチ君がコンビニで女の子と言葉を交わす場面

ごはんのおとも1.png

 ここで、タブチ君と話した女の子マイちゃんは、二話目「騒がしいことのは」の主人公として登場します。
 そして、二人が出くわす場面が、今度はマイちゃんの視点から描かれます。
(例)上のお菓子のカットが、同じ瞬間であることをさりげなく示しています。

ごはんのおとも2.png

 心理学では「単純接触効果」と呼ばれる、繰り返し接すると次第にその人に好感を持つようになる現象があるそうですが、この仕掛けによって、読者は、「あ、タブチ君。あ、マイちゃんあのときの女の子だったんか(確かにグリーンのカーディガン着てるわ)」と二人を二度見かけた気になり、彼らに対し、一話完結のキャラとは異なる印象がついていきます。

 さらに、この、繰り返しの登場は、リレーのように他のキャラクターにも広がっていきます。

(例)二話目、「騒がしいことのは」でマイちゃんのバイト先に顔を出しているお得意さんの青年。この後「一膳分のあまやかし」の主人公として登場、二話ではナイショだった事実も出てきます(笑)。

 ごはんのおとも4.png

 この、「別の話の脇役が、後で主人公になる」という仕掛けが一番活きていたのが、一話目でタブチ君の上司として登場したトウドウさんのが主役の回「ずうっと」。

 第一話にトウドウさんがタブチ君にお土産買ってきてくれる場面などがあり、面倒見のいい優しい人だというイメージがもうついていたから、本人が主役の回が染みました。

 トウドウさん
ごはんのおとも8.png

 逆に、前の回で主人公だった人が、別の話でエキストラ的に出てくるシーンもあるのですが、こういうところでは、その人の人間関係や状況が、進展しているのが垣間見えてこれまた面白い。

 こういうとおりすがり的な使い方は、特に漫画の長所を活かしていると思いました。

「すぐ見直せる(映像だと『録って巻き戻して』という作業が必要)」
「気づいても気づかなくても本編の理解には支障がないくらいさりげなく存在を見せられる(文章だと、たとえば通りすがりのあの人は実はマイちゃんだ、とわからせるために、本編の展開に関係無い描写をある程度書き込まなければいけない)」
というのは漫画ならではだと思います。

 各巻最終話でそれまでの登場人物たちが集合し、皆さんそれぞれの物語を経て、自分や周りの人との関係がどう変化したかがほのめかされています。これもなんとなく、いままでそっと見守っていた先を見るような心地がしてほほえましい。

 仕掛け2 ページの隅から隅まで行き届いた描写

 登場人物や場面だけではなく、ページの使い方にも、「短編集でありながら、連続性がある」と感じさせる工夫がなされています。

 小学生すずちゃんがとても美味しそうに給食をほおばっているという可愛らしい幕開けが目次の見開きページへとつながってゆき(その見開きページは目次と同時に、物語の一部でもある)、さらに、この幕開けのお話が、短編と短編の間に挟まる見返しのページで、さりげなく続いてゆきます。
目次
ごはんのおとも5.png

見返しのページ
ごはんのおとも6.png

 そして、みんなが集合している最終話「ごはんのあいず」の回で、再び見開きページ、キャラクターたちに重なるように、著者たなさんをはじめとする、出版社や製作者の情報が映画のエンドロールのように出て、おしまい……。

 ……最近の映画ってエンドロールの最後の最後に素敵なオマケがついていますよね……。

 と、いうわけで、最後の一ページまで、きっちりめくってください!すごく良かったし、そこが二巻で屈指の名作への幕開けへと続いていきます。

 正直、一巻が一冊の本としてあまりにもきれいにまとまっていたので、これで完結なのではと思っていたのですが、二巻も勝るとも劣らない魅力があります。というか二巻を読んで、ますますこの仕掛けにハマり、さらにこの人たちのことが好きになってしまいました。

 丁寧に創り上げられた素晴らしい名作、本当におススメなのでご覧になってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。


 参照:日経トレンディネット「ヒットの芽」「“たまごの黄身のしょうゆづけ×独身男子”などレシピを描いた漫画が売れている」(2015年04月27日)
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20150424/1064009/?rt=nocnt
※実業之日本社の編集さんが、この本が出来上がるまでの経緯や、工夫について丁寧に説明してくださっています。
posted by Palum. at 23:34| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月01日

おすすめ漫画「ごはんのおとも」(たな 作)ご紹介1

最近「孤独のグルメ」をはじめとして、食にまつわる面白いマンガが、数多く発表されています。

そのひとつが、「ごはんのおとも」。

ごはんのおとも -
ごはんのおとも -

少し懐かしい風情を漂わせる町に住む人々と、彼らが集うお店を、食べ物と共に描いた作品です。

 最近この作品の第二巻が発売され、相変わらずの見事な面白さだったので、ご購入を考えている方のために、一巻について少し書かせていただきます。

ごはんのおとも 2 -
ごはんのおとも 2 -
 各巻第一話が試し読みができるページはコチラです。
http://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=20&iKey=123(第一巻)
http://j-nbooks.jp/comic/original.php?oKey=20&iKey=585(第二巻)
 
 第一巻の一話目は、ぽっちゃり青年タブチ君のマイペースな日常が、コンビニでの「ある出会い」によって変化する、というお話です。

 このお話でタブチ君の職場の人々や、行きつけのカフェ、飲み屋の店主と常連たちが登場していますが、実はこの人たち全員、後で何度も作品内に姿を現します。(とおりすがりだったり、別の作品の主人公だったり。)

 一話ごとにしゃれて温かみのある起承転結がついていて、素朴なごはんのおともメニューとそれを食べながら日常のこもごもを生きる人々の姿にほのぼのしたり、しんみりしたりできます。オールカラーでノスタルジックな色使いと、すみずみまで工夫を凝らしたページも美しい。

ちなみに、登場する料理とレシピそのものはとてもシンプルなのですが、アレンジが載っているところが便利です。
(この後、セロリとじゃこの炒め物&ツナとひじきの煮物が我が家の定番になりました。あとなめたけのアレンジレシピでパスタにのせるというのがあり、美味しかったです。)

 本当に全話外れ無しなのですが、個人的に一冊目の好きなお話を少しだけ並べさせていただきます。

・「たったひとこと」
 昆布が大好きという渋い味覚の幼稚園児アキちゃんのお話。

 その味覚がきっかけで、誤解とはいえ女心を傷つけられ、行きつけ(お母さん同行)の「カフェ・ノンブル」の店主ノブさん(オネエ男子)に、そのことを打ち明けに行きます。 

・「魔法みたいに」
 路地裏の小さな料理屋「ひとくちや」が舞台。

 お客さんたちがその日食べたいものを、魔法のようにさりげなく出してくれる不思議な店主クマさんの少年時代のお話。


・「ずうっと」
 「ひとくちや」の常連のひとり、トウドウさん(第一話タブチ君の上司)のお話。
 タッパーの片隅に残る、冷凍したきんぴらごぼうを、ただじっと見つめている理由とは……。
 
 登場する人みんな魅力的なのですが、もの柔らかなオネエ男子のカフェ店主ノブさんと、アキちゃんの関係がイチオシ。
(「アキ」「ノブ」と名前で呼び合い、アキちゃんが相談事をしたり、それを受けたノブさんがアキちゃんを子供扱いせずに丁寧に接しているところがイイ。)

 アキちゃんとノブさん。

ごはんのおとも7.png


(ちなみにカフェの名前は「カフェ・ノンブル(※)」、「ひとくちや」と並んで町の人々の憩いの場)
 (※)「nombre」フランス語で「ページ番号(をうつ)」という意味と、ノブさんの名前をかけている模様。

 このように、各話独立した短編集として読んでも十分楽しめる作品です。

 しかし、この作品は丸一冊読みとおしたときに魅力が増す仕掛けが隠されています。

 次回記事では、この作品の「一冊読み通し、読み返したときに気づく愉しみ」について、ご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 22:55| おすすめ漫画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月30日

再放送のお知らせ「スリーパーズ 眠れる名画を探せ」

本日は取り急ぎお勧め番組再放送のお知らせです。

2016年12月2日(金)午前9時〜10時55分より、BSプレミアムで、NHKプレミアムカフェ選「スリーパーズ 眠れる名画を探せ」という番組が再放送されます。(3日午前2時45分より再度放送あり)
番組情報は以下の通りです。
http://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2016-12-02/10/317/2315531/(番組HP)
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3599/2315531/(放送情報)

 高い価値がありながら、さまざまな理由でそのことが忘れ去られ、うずもれていった「スリーパー」と呼ばれる名画を探し出し、その真価を明らかにする画商たち。

 その中でも優れた目利きで、「美術界のシャーロック・ホームズ」と呼ばれるフィリップ・モウルド(Philip Mould)氏の活動と、スリーパーとなった絵画の数奇な運命を紹介した番組です。(日本では2004年に初回放送)

 フィリップ・モウルド氏はイギリスの美術番組では非常に有名な人物で(日本の中島誠之助さんポジション)、「なんでも鑑定団」のモデルになったと思われるイギリスの長寿番組「Antique Road Show」の鑑定師の一人として登場したり、絵画の真贋鑑定をめぐるスリリングなドキュメンタリー(本当に面白い!!)「Fake or Fortune?」のメインプレゼンターの一人としても活躍しています。

「Fake or Fortune?」トレーラーのモウルド氏


https://www.youtube.com/watch?v=oT7d9Mnsn-U


 安値で売りに出された絵が、実は歴史的価値のある名画で、価値が大きく膨れ上がるという展開も、数々のくすんだ絵から、豊富な知識と第六感で、それを見つけ出すという画商たちの鑑定眼にも惹きつけられますが、そうしたドラマに絡む、美術界と絵画の歴史の裏事情も非常に面白いです。

 彼が書いた「スリーパー 眠れる名画を競り落とせ」にも、こうした逸話が紹介されていました。

眠れる名画―スリーパーを競り落とせ! -
眠れる名画―スリーパーを競り落とせ! -

 とりあえず本の中のモウルドさんのお話しで個人的に「そうなの!?」と思ったのはこんなエピソード。
(いくつかはテレビの中でも紹介されると思います。)

 1、オークション前に展示される絵のうち、時代を経てほこりなどで汚れてしまった作品のオリジナルの色をみるために、指につばをつけて目立たない場所をこすることが黙認されている。

→ものによっては数百年の月日の間に醤油で煮しめたんかというほど汚れる作品もある。つばでこすると、濡れている間だけ、レンズの役割を果たし、もとの色彩が垣間見えるそうです。
このため、もしやこの絵は名画なのでは?と思わせる作品ほど、複数のオークション参加者がこっそり文字通り「つばをつけて」確認する事があるそうです。

2、名門オークション会社(サザビーズ、クリスティーズなど)といえども、数多く寄せられる作品が、本当に名のある作者のものかを、オークション開始前に見極められるとは限らない。

→ゆえに価値があいまいな作品の説明には「〜とされる(Attributed to)」とか「〜派の(School of)」「〜工房の(〜 Studio)」などというぼやかした表現が使われ、ときには、作者の名前の一部をイニシャルにすることで、それが確実ではないことを示すそうです。(オークション会社の説明書きで「ジョン・コンスタブル作」と書いてあれば確実性が高く、「J・コンスタブル作」だとそれより確率が下がるんだとか。わからんがな)

3、昔の人はけっこう平気で絵をいじりたおす。

 →これぞ「スリーパー」が生まれる原因の一つ。我々の感覚では完成した絵画はもはや第三者が手を加えてはならない存在ですが、飾るにあたってサイズが大きすぎるとか、もっと好みの絵にしたいとかいう理由で、わりと気軽に絵を切ったり継ぎ足したり、上から違う背景や衣装を描いたりしたそうです。(ヒイイ……)

4、オークション会社は、オークションで作品が落札された後、その会社の見立てと実際の絵の出自が大きく異なることが判明した場合、作品の出品者の申し立てを受け、ある程度の補償金を支払うことがある。

 →オークション会社が「名もなき絵画」と鑑定し、そうした評価で安値で売りさばいた絵が、モウルド氏のような人物によって、改めて分析され、スリーパーとして莫大な利益をもたらしたとき、このようなやりとりがありうるんだとか。
(でも短時間に大量の絵画を鑑定する中で、お醤油煮みたいな絵画を精査するのは物理的に難しいから、このリスクは避けられないとのことです。)

 5、絵の汚れや後世の書き足しを「洗浄」してオリジナルの姿を取り戻す際に用いる薬品の中には、兵器レベルの毒性を持つものがある。

 →修復士がその薬品を使ったがために、(防毒マスクをしていたのに)後日アレルギー性の皮膚の腫れに何日も悩まされたということがあったそうです。

 このように「スリーパー」の真の姿を見出すまでには、多くの手間と時間を費やし、しかも結果たいしたものが出てこなかった場合、書き足しがあった元の絵以下の価値に成り下がるのですから、いろいろな意味で危険があるといえます。
(そんなことをする手間は省けないからオークション会社は絵の価値を追求しきれないのでしょう。)

 モウルドさんたちは己の見立てを信じて絵を競り落として持ち帰り、数々の調査や洗浄作業で時間とお金を費やすというリスクを冒して、賭けに出るわけです。

 歴史の流れと大金に翻弄されながら、真の姿を現す名画と、それを追う人々の姿を知ることができる番組です。是非ご覧になってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 21:36| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月05日

(ネタバレ)イギリスの怪物番組Dad’s Army、「Ring Dem Bells」あらすじご紹介(メンバーがナチスの軍服を着て大暴走……の回)

Dad's Army - The Complete Sixth Series [1973] [DVD] [2006] by Arthur Lowe -
Dad's Army - The Complete Sixth Series [1973] [DVD] [2006] by Arthur Lowe -

本日は第二次大戦下の地元防衛チーム(若い男性は徴兵されているためシルバー世代率高し)を描いたイギリスの大人気コメディ「Dad’s Army」より、「Ring Dem Bells」(※)のあらすじをご紹介させていただきます。(1975年製作、第八シリーズ、第67エピソード)

(※)「Ring Dem Bells」……「鐘を鳴らせ」の意味。「Dem」は「Them」の口語。1930年にヒットしたデューク・エリントンの同名曲が由来。


最近欅坂47がナチスを想起させる衣装を着たとして問題になりました(※)が、こちらは想起ではなくそのままナチスの軍服を着たメンバーたちが大騒動を起こすという結構な過激回です。
(そもそも第二次大戦下をコメディにする時点で過激ですが。)

(※)参照:ハフィントンポスト11月1日記事「欅坂46の衣装が「ナチスそっくり」 Twitter炎上、英紙も報道」


 ちなみにこのドラマシリーズのオープニングソングはこんな感じ。
(ナチスの進攻におびえる戦況を軽やかに歌うという絶句ノリ)



 エンドクレジットはこんな感じ(ほほえましい)。




 以下あらすじです。結末までネタバレ+あくまで私の語学力を通過した、意訳どころか「間違ってるかもだけど多分こんなニュアンス訳」で構成されているのであらかじめご了承ください……。


 拠点としている教会に集合している、ホームガードの面々。

 数少ない若手メンバーであるパイク青年はウキウキしている。
「映画に出られるなんて」
 髭でも生やそうかしらと浮かれるパイクに対し、フレイザー氏(スコットランド出身、葬儀社経営)は冷ややか。
「くだらない。映画ったってただの訓練用フィルムだよ」

 しかし、実は執務室にいるマインワリング隊長(村の銀行支店長)もイソイソと、自分の「キメ角度」をご検討中。
(帽子をとったほうがいいかな、と、とって、頭部の艶やかな光沢を見て静かに戻してみたりしている。)

 しかし、そんな男心も知らず、部屋に入ってきたウィルソン軍曹(同銀行副支店長)は、マインワリング隊長に「どっち向きの角度がいいと思う?」と聞かれ、「別に左右でどっちが良いとかない……どちらも悪くなりようはないです」とやんわりと否定する。

 そうこうしているうちに、大佐と制作スタッフが到着。
 (それを告げに来たパイクはさっそく髭を書いていたが、マインワリング隊長に汚れてるから拭けと言われてむくれる。)

 スタッフの一人である女性が衣装係と知らされ、「この(ホーム・ガードの)制服がありますが……?」と大佐に尋ねるマインワリング隊長。
「ああ、いや、君たちはホーム・ガードではなく、ナチス軍の役なんだ」

 なんですと!?不快感をあらわにするマインワリング隊長。

いやまあ、遠くから撮るだけで、皆さん映ってもせいぜいこのくらいですから。と、スタッフに卵大の大きさを示され、しぶしぶ承諾するも、ここで新たな問題が。

 「あぁらまあ……」
マインワリング隊長のサイズを測りながら繰り返しつぶやく衣装係のおねえさん(失礼)。

 隊長が着られるナチス将校の制服が無いとのことで、サイズの合うウィルソン軍曹とパイクが急きょ将校役に抜擢されることに。
 隊の中でカッコイイ方担当であるウィルソン軍曹(悪意なき毒舌が散見されるものの、外見はロマンスグレー)に対し、
「きっと素敵な将校になるわ」
と、笑顔でなんか問題発言をする衣装係のおねえさん。

 度重なる屈辱に耐えかねたマインワリング隊長、一般兵を演じることだけは拒否し、隊の引率に終始することに。

 拒否権の無かったほかの人々は、この世の終わりのような顔をして、ナチス一兵卒の制服に身を包み、黒いヘルメットを被ることに。

 我ながらバカみたいだ、一人だけ逃げてマイワリング隊長ズルいセコい!と、愚痴るフレイザー氏に対し、バカみたいなんてことはありませんよ、そのヘルメットを被っていらっしゃると鷹のようです、と無茶な慰め方をするゴッドフリー氏(チーム最年長、温厚)、こんな鉄鍋を被ったみたいな敵兵姿を、亡くなった将軍が見たら墓の中でびっくりしてひっくり返るだろうと嘆くジョーンズ氏(軍隊経験者、肉屋経営)。

 一方、将校の衣装をまとったウィルソン軍曹とパイク。

 グレーのかっちりと仕立てられた服は、翼を広げた鷲の紋章やモールで彩られ、幅広のパンツの裾を細身のブーツで絞ったデザイン。制帽は黒い硬質なつばよりも天井部がせりだした独特のフォルム。

 「実に洗練された制服だな(These uniforms are awfully smart aren’t they?)」
ウットリ鏡を見つめるウィルソン軍曹の大爆弾発言。

 パイクの暴走ぶりはそれ以上で、頼まれてもいないのに、「っぽく見える」鎖付き片眼鏡を、ちょいちょい落としながら無理やりかけた姿で現れたかと思うと、ドイツ語アクセントらしき英語で高圧的に喋り、マインワリング隊長の椅子にふんぞりかえって机に両足を乗っける始末。

 将校役楽しい♪(おい)と、足をまっすぐに上げる軍隊式行進の歩き方(「ガチョウ足行進(Goose‐step)」)の練習までしているところをマインワリング隊長に見つかり、当然叱られるも、衣装の魔力はすさまじく、指揮官マインドのまま反省しない二人。

 この姿を見られて、一般の人たちに誤解されては大変だから、と、暑い日にも関わらず、運転役のマインワリング隊長を除き、全員バン(ジョーンズ肉店の車)に詰め込まれて、撮影場所の郊外まで移動することに。

 しかし、到着するや否や、役者たちのスケジュール変更で撮影延期となり、抗議もむなしくすぐにバンに戻ることになった面々。

(帰りの道すがらも、バンの天窓から身を乗り出しパレードよろしく「ハイル・ヒットラー」ポーズをやりつづけて隊長に叱られるパイク。)

 司令部に連絡をするために電話ボックスの前で停車したマインワリング隊長。

 皆に姿を見せないようにと厳命したものの、暑さで具合が悪くなってきた面々は、こっそり後部ドアを全開にしてしまう。

 その目に飛び込んできたパブ。(ビール等を提供するイギリス独特の飲み屋)

「一杯やりたいな……」
 パイクをたしなめるウィルソン軍曹。
「マインワリング隊長から外に出るなと言われたろう」
「……隊長なんて一介のホームガードの責任者でしょ。僕らはドイツ軍将校だ」(違う)
「……そうだな……」(違う2)

 かくしてこっそりゾロゾロパブにもぐりこむナチス軍姿の面々(計16名)。
 
 「いけません、軍曹」 
ただひとり命令に忠実なジョーンズ氏が、ウィルソン軍曹を止めようとした。
「何にする?」
「ビールで」(←「命令に忠実な」……)

 「いらっしゃい、なにになさいますか?」
 店の奥から出てきた愛想の良いご主人、一同の姿を見て目をむいて凍り付く(そりゃそうだ)。

 よせばいいのに、例によって調子に乗ってるパイクが「オヤジ、飲み物を持ってこい!」的な横柄な口調のドイツアクセントで話すのが追い打ちとなり、わが村に敵軍が!!と思い込んだご主人は、店の奥にいた従業員に大至急警察に連絡するようにと耳打ちする。

 一方マインワリング隊長が電話を終えて戻ってくると、バンはもぬけの殻。
「やると思った……」

 パブに駆け込むと、全員がなごやかに一杯やってる最中。

 騒ぎを大きくしたくないと思うあまり、「誤解なんです」程度の大雑把な説明で早々に退散しようとしたのが仇となり、ご主人は「ホームガード一同=本物のナチス軍、マインワリング隊長=売国奴(Quisling※)」と思い込み、バンが怒れる村人たちに取り囲まれる結果に。

 (※)元はノルウェーの政治家の姓、ナチスに協力的だったことから、「裏切者」「売国奴」の意味を持つようになった。

  駆け付けた警官に詰問され、マインワリング隊長が「彼らは本物のナチス軍ではなく……」と説明している最中も、バンの天窓から顔を出して将校演技を続けてぶち壊すパイク(ド空気読めない子)。

 というわけで、「この裏切り者!!」とおばあちゃんに杖で殴られた(強い)マインワリング隊長、慌ててバンに乗り込み、村を逃げ出す。

 怒れる村人たちは、危機を知らせるべく、隣村(マインワリング隊長たちの村)に、ナチス軍の侵攻を知らせる電話をする。

 マインワリング隊長の留守中、教会にいた空襲監視員ホッジズ氏、司祭、聖堂番イェットマン氏の3人(ホームガードと建物を共用しているが、普段からあまり隊長と仲が良くない)が、パブのご主人より「イギリス人の隊長に先導されナチス軍がそちらに向かっている」との知らせを受ける。

 酔ってんの?的な感じで、本気にしていなかった3人だが、マインワリング隊長が整列するナチス兵(まずいことに全員背中を向けている)に指示をしているのを見て、奴が売国奴か!!と震撼する。

 急いで鐘楼のカギをかけ、緊急事態を告げる鐘を鳴らす3人。
 (3人の様子がわかるBBCの画像はコチラ。) 

「ナチス軍襲来だ!慌てるな、慌てるな!!(Don’t panic!)」
 鐘の音にナチス軍姿でパニックを起こすジョーンズ氏をよそに、誰かが我々を見て勘違いしたんだ、と、慌てて鐘楼に向かう一同。

 違うんだ、鐘を止めてくれ!!とドアを叩くも、力の限り鐘の紐を引いている3人には聞こえず、ドアの鍵を銃で撃ち壊して入ることにしたマインワリング隊長。

 中の3人に弾が当たらないように警告の紙を差し入れようとするジョーンズ氏。
「避難しなさい……銃で鍵を壊します……敬具……ジョ…」
「早く入れろ!!」
 ドアに立ちはだかるフレイザー氏
「弁償させられるのでは!?」
「どけ!!」

 マインワリング隊長が鍵を撃った次の瞬間、別の入り口から入ったウィルソン軍曹に招き入れられた一同。
頭上には、ホッジス氏ら三人が、避難のために鐘の紐におさるのように並んでぶら下がっていた。

 隊長が三人の大ブーイングを浴びる中、状況説明の電話を司令部にかけていたパイクが戻ってきて、
「海岸周辺の町全部に一時的に非常事態宣言が発令されてしまって、准将が『どこの底抜けバカの仕業だ』とカンカンでしたアハハ」
 と軽いノリで言った後、
「隊長に話があるから月曜日朝に来るようにとのことです」
 と付け加えると、マインワリング隊長、パイクをまじまじと見つめたながら、苦々しげに一言。
「馬鹿者が……(You, stupid boy.)」

 聞こえているのかいないのか、いそいそ片眼鏡をかけなおしているパイク(まだやってる)。 

(完)

「Stupid boy(馬鹿な少年)」は、マインワリング隊長がパイクに憤慨したとき(頻度高)つぶやく、言うなれば決め台詞です。

 地方の小さな村で、あまり周辺の情報が流れてこなかったせいか、ナチスの制服を、デザインだけ見て「洗練されている」とこともあろうに称賛しながら着た挙句、気分が高揚してマインワリング隊長の言うことをちっとも聞かなくなるという展開。

(別の話でも、パイクがナチス軍の制服デザインを褒めて隊長に叱られているエピソードがありました。物資不足で服も限られていた分、デザイン性の高いものに飢えていたのかもしれませんね……。)
 
 ウィルソン軍曹がイソイソ行進の練習をしていたり、パブでご主人が固まっている中、パイクが将校演技をやめなかったり、「ドイツ軍将校は(?)ホームガード隊長の言うことなんか聞かないで良い」と訳の分からない理屈で命令違反をするシーンなどには笑わされてしまいますが、一方で、人間が恰好や架空の立場などに一瞬にして強烈に洗脳されるという現実の危険性(※)を、笑いの中にさりげなく織り込んだ、奥深い作品でもあります。
(パイクはアホの子だからやらかすのわかるが、普段落ち着いているウィルソン軍曹まで命令違反するのは結構怖い。)

(※)こうした現象についてご興味のある方は、当ブログ「スタンフォード大学監獄実験」をご参照ください。
 心理学実験のため、囚人服、看守服を着せられ、その役を演じることとなった被験者たちが激変したという1971年に起きた実際の事件についてご紹介しています。

 個人的にこのドラマシリーズが非常に好きなのは、こういう「笑えるけれど深い、ときに深いを通り越して怖い(でも笑える)」という味わいがあり、それは、同じく40年以上不動の人気を誇る、わが日本の宝、「ドラえもん」の魅力にも相通じるものがあると思います。

 題材上、日本での放送は難しそうですが、イギリスでは、日本でいうところのドラえもん、サザエさん、寅さん級の不朽の名作として現在も圧倒的支持を集める名作ドラマです。

 (イギリスで販売中のコンプリートDVD‐BOX(700件を超えるレビューが全て4〜5の好意的意見で占められているという驚異の愛され度合)。イギリスのDVDの視聴が可能な環境をお持ちの方ならおすすめです。私も愛蔵しております。)

Dad's Army - The Complete Collection [DVD] [1968] by Arthur Lowe -
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 ウィキペディアの「Ring Dem Bells」あらすじ紹介記事はコチラです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ring_Dem_Bells
(詳細なあらすじページがある辺りイギリスでの愛され度合がわかるのですが、他国の知名度は〈アメリカですら〉低いという謎のドラマなのです。)

 当ブログDad's Army関連記事は以下のとおりです。今後も時々この作品のあらすじをご紹介させていただきますのでよろしければお立ち寄りください。

 ・イギリスの怪物番組 『Dad's Army』
 ・「Dad’s Army」のボタン

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 11:09| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月19日

「贋作師ベルトラッチ」再放送のお知らせ

 取り急ぎご連絡まで。
 NHKBS1、BS世界のドキュメンタリーで、10月20日17:00より「贋作師ベルトラッチ 超一級のニセモノ」が再放送されます。


(番組トレーラー映像)

https://www.youtube.com/watch?v=TS6a3XochQU

 現代アートの精巧な贋作を次々と売りさばき、被害総額45億円以上とも言われる贋作師ベルトラッチが、服役直前に自らの贋作人生と製作風景を明かした異色のドキュメンタリーです。


 数奇な実話と編集の妙により、スタイリッシュな犯罪映画のようにしあげられた作品です。


番組公式HP情報はこちらです。
 


 当ブログでも、贋作・鑑定にまつわる記事をいくつか書かせていただいていますので、よろしければ併せてご覧ください。

「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜 (NHK BS世界のドキュメンタリー)」 番組情報ご紹介

(※ネタバレ)「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」あらすじと感想(NHK BS世界のドキュメンタリー)

イギリスの贋作師ジョン・マイアット(NHK BS世界のドキュメンタリー 「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜」によせて) 

放送熱望!イギリス絵画鑑定番組「Fake or Fortune」


(※ネタバレ)ドラえもん「王冠コレクション」

 毎日記事更新が目標だったのですが、最近諸事情でめっきり更新が滞ってしまっていました。以後は極力頻度をあげていきたいと思っていますので、よろしければまたお立ち寄りください。
posted by Palum. at 04:11| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月09日

(おすすめ映画)イル・ポスティーノ


 イマジカTVがご覧になれる方に、オススメ映画のお知らせです。

 2016年10月10日(月)深夜 3:00〜5:00(※日付は火曜)放送「イル・ポスティーノ」(イタリア・1994)。

イル・ポスティーノ オリジナル完全版 [Blu-ray] -
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 イタリアの小さな島に、チリの国民的詩人で外交官のパブロ・ネルーダが亡命してきたという史実をもとに、彼と、島の若者マリオとの友情を描いた作品です。

 

公式HP情報はこちらです。
http://www.imagica-bs.com/program/episode.php?prg_cd=CIID165061&episode_cd=0001&epg_ver_cd=06&epi_one_flg=index.php

(あらすじ)
 鮮やかな紺碧の海に浮かぶ小さな島に暮らす青年マリオは、成人したものの、父のあとをついで漁師になるでもなく、ぼんやりと日々を過ごしていた。

 ある日、退屈な島が大きなニュースに沸き立つ。チリの大詩人パブロ・ネルーダが、彼の所属する共産党への弾圧から逃れ、この島に亡命してくることになった。

 しかし、「人民の詩人」と呼ばれるネルーダの世界的名声にも無頓着なマリオは、ニュース映画を見ても、彼が美しい女性たちに熱狂されているのに気をとられる始末。

 島に滞在するネルーダのもとには、世界中から手紙が届けられ、マリオは彼のためだけに臨時で郵便配達人となる。

 ある日、ネルーダの詩を読んでみたマリオは、不思議な喜びを感じた。
 
 それは、明るい詩ではなかったけれど、マリオが感じていながら、形にできなかった思いが言葉になってそこにあったから。

 思いきって詩の意味をネルーダに訪ねてみたマリオ。

 このことをきっかけに、マリオの単調な日常に、ネルーダとの友情とともに、「詩の言葉」という新しい世界が少しずつ広がって行く。

 こうして、言葉の世界に足を踏み入れたマリオは、美しい娘ベアトリーチェと出会い、一瞬で恋に落ちる。

 マリオは、ネルーダに彼女への恋心を打ち明け、自分なりの詩の言葉で彼女の心をつかもうとする。

(みどころ)
 美しい風景と音楽の他は非常に落ち着いた展開の作品です。しかし、現実と同じように、人生をうつろう光と影が流れていきます。 

 パブロ・ネルーダは「ニュー・シネマ・パラダイス」で映像技師アルフレードを演じたフランスの名優フィリップ・ノワレ。

 マリオを演じ、脚本にも携わったマッシモ・トロイージはこのとき病に冒されていましたが、執念で作品を作り上げ、映画の完成12時間後に41才の若さで世を去りました。

 映画を観終わったあとだと、「all chinema」紹介記事の「悔しくも彼はこの作品のクランクアップ直後に他界してしまったが、ここにその足跡はしかと刻まれた。」という一文に目頭が熱くなります。
 
 作品の作り手として、演者として、人生を捧げる意味がある作品だと思われたのでしょう。まさしくそういう映画です。

 個人的に「生涯ベスト映画10」に入る勢いで好きな作品です。(いずれもう少し感想の詳細を書かせていただけたらと思います。)

 ぜひご覧になってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。


 参照「all chinema」「イル・ポスティーノ」
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=28682
posted by Palum. at 11:36| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月30日

ドラえもん「王冠コレクション」補足情報


 前回ご紹介の「王冠コレクション」(ドラえもんがふざけて「ジュースの王冠のコレクションがはやる」という作用のあるウィルス(ネコシャクシビールス〈笑〉)をばらまいた結果、効き目が強すぎて、大の大人が200万出してでも買おうとする事態になってしまうというお話。)に関連して補足情報(というかこぼれ話)を書かせていただきます。
 

【1】印刷ズレについて
 スネ夫が自分のレア物コレクションとして、王冠のふたからラベルの印刷がずれているものを見せていましたが、これに近いエラー品プレミアというものが実際に切手の世界であるそうです。


王冠コレクション1.png

 「何でも鑑定団」(テレビ東京)でも、印刷ミスの切手が何度か出ていました。
 番組公式HP情報はコチラ。
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20120807/05.html
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20150728/03.html(ニ色刷り切手が一色刷りで出回ってしまった珍品で、800万!)

 この他にも、切手の場合だと、パンチ穴が空いていないなどというのが価値のあるものだそうです。
(ウィキペディア記事はコチラ)

 https://ja.wikipedia.org/wiki/エラー切手#.E7.94.A8.E7.B4.99.E3.82.A8.E3.83.A9.E3.83.BC

 【2】王冠コレクションについて

 実際にネットオークション等で出回っているそうです。
 「1日眺めていても飽きないわ(ビールス保菌中のしずかちゃん談)」……とまで思うかはさておき、確かに色もデザインもさまざまで、改めて見てみるとなかなか面白いものなので、売り物になるのわかる気がします。
 コレクターズポイントとして以下のようなものがあるそうです(ちなみに英語では王冠のことをシンプルに「bottle cap」と言っている模様。)

 1、純粋にコインや切手のノリで珍しいものを集める人と、アクセサリーやキーホルダーなど創作品の材料としてまとめ買いする人がいる。
 2、価格は(上記材料としての袋買いを除くと)1個100円〜500円程度。
 3、人気があるのは以下のような条件のもの。
 ・時代が古いもの
 (なかには戦前の飲み物のキャップなどもありました。)
 ・外国の物
 (たとえばメキシコとか、東南アジアとか、購入者のいる国からすると入手が難しい国の飲み物。
  実際カラフルだったり文字がエキゾチックだったりして味があります。)
 ・未使用のもの
 (実際には瓶にとりつけられたことがないままにデッドストックとして市場に出回ったものが
けっこうあるみたいです。当然無傷なので評価が高い)
 ・スターウォーズ、スーパーカーなど、デザイン自体に人気があるもののシリーズをひととおり揃えたもの
  (これはメンコとかミニカーみたいな、わかりやすいノスタルジックな魅力があります。)
 ・くじつきのもの、さらにそれが未開封のもの
  (王冠の裏側に封がされているデザインではがすと、10円分のコインがわりになるとか、キャラクターが描いてあるなどの特典があった。これがさらにはがされていない状態だとそれはそれで評価が高い。)

 のび太が集めていたものはおそらく1970年代初期のものでしょうから、今となるとものによっては1個100円くらいにはなっているかもしれません。
 (数百円台は1960年代以前のものが多いので、たぶんバクゼンと集めていたのび太は持っていない。)
 それでも箱一杯持っているから、立派なへそくりになりそうですね。

 参照URL 
ヤフオク(コカ・コーラグッズ)
http://closedsearch.auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/%E3%82%B3%E3%82%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E7%8E%8B%E5%86%A0/0/
・E-bey:http://www.ebay.com/sch/Soda-Bottle-Caps/35693/bn_3018786/i.html

 なお、少し違いますが、シャンパンの王冠(ミュズレ)のコレクションはよりメジャーで、こんな専門グッズも販売されています。

 シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
 
 【3】王冠より瓶

 コカ・コーラの空き瓶、あるいは中身入りのものは、王冠以上に高値で取引されています。ものによっては数万円するものも。
 確かにレトロな味があるかんじなので、個人コレクターのほか、お店の人が飾りとして買っていくのかもしれません。

 ・参照 E-beyコカ・コーラボトルオークション情報 

 http://www.ebay.com/sch/Coca-Cola-Bottles/13603/bn_3117489/i.html

 以上、ドラえもん「王冠コレクション」補足情報でした。

 こうやって周辺情報を集めてみると、あの短編の面白いのは、王冠が、「まじまじ見るとコレクションアイテムとして結構そそる」という絶妙なラインを突いていたからかもしれません。スネ夫たちの暴走をなにやってんだかと思う一方で、ちょっと引きずり込まれそうな……。
 そしてこんな感じで実際に似たような売買が成り立っていました(笑)。

 なお、九月になったので、「芸術の秋」ということで、ドラえもん作品の中からアート・鑑定に関わる作品をもう少しご紹介させていただく予定です。よろしければお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。







posted by Palum. at 23:58| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月29日

(※ネタバレ)ドラえもん「王冠コレクション」

王冠コレクション1.png

 本日は「ドラえもん」より、「王冠コレクション」をご紹介させていただきます。

 コミックス9巻収録

ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -

 物の価値について意外とシニカルな目を持つドラえもん。

 周囲のコレクション熱に振り回されるのび太を見て、ちょっとしたいたずらを思いつくというお話です。

 以下あらすじです。結末までネタバレなので、あらかじめご了解ください。
  

「ありがたぁくおがめよ」
 スネ夫の切手用ピンセットの先で燦然と輝くプレミア切手、「月に雁」(※)

(※)歌川広重の浮世絵を元にした800円切手。希少性から切手ブームのこの頃(1970年代)、価格が高騰した(購入価格1万8千円〈スネ夫談〉)。2016年現在でも状態の良いものは1万円近いプレミアがついている。

 目を丸くするのび太たちの前で、
「切手マニアならこの程度のものをひとつくらい持ちたいもんだねえ」
と、自慢を兼ねて感慨にふけるスネ夫。(たまに言動が妙に中年じみる)

 パパは骨董品、ママは宝石。道は違えど、うちの家族に共通しているのは一級品しか相手にしないってことだね。

 それを聞いたしずかちゃんとジャイアンは、それぞれシールとコインのコレクションなら自信がある、と、胸を張りました。

 のび太一人うかない顔をして家に帰り、切手を集めたいとママに資金援助を願い出るが、どうせあきるんだから無駄なことだ(一度挫折しているから)と、見事な正論で却下されてしまいます。
 「こういうわからないことを言うんだよ!」と愚痴るのび太に対し、ママに完全同意するドラえもんでしたが、自慢できるコレクションがなくて肩身がせまい、としょんぼりする姿を見て、君だってすごいコレクション持ってるじゃないの、と、押し入れから談ボール箱を出してきます。

 中にぎっしりはいっていたのは飲み物の王冠。(昔特に意味もなく集めていたモノ)

 こんなもん持ち出して僕をバカにしてるの!?と怒るのび太を笑ってなだめるドラえもん。
「そもそも物のねうちってなんだろう。みんなが欲しがるってことじゃないかな。切手だって宝石だって、みんなが欲しがらなければ、ただの紙切れや石ころにすぎない」(←おおお……〈汗〉)

 おそるべき達観を披露して終わりかと思いきや、「だからなんだっての?」とちっとも納得していない様子ののび太に対し、「ちょっとしたイタズラをやろうっての」と部屋を出ていくドラえもん。

 取り出したのは「流行性ネコシャクシビールス」。

 ウィットに富んだ名を持つこのひみつ道具、流行させたいものをビールスに言い聞かせて培養し、空中散布すると、感染した周辺の人々にブームを巻き起こすことができます。

 ドラえもんが何をしていたか知らないのび太が外出すると、ジャイアン、しずかちゃん、スネ夫が王冠コレクションを見せあっていました。

  中でもスネ夫の1ダースものコレクション (専用ケース入〈笑〉)には、印刷ズレの珍品があり、二人の羨望を集めます。

 なんにするのこんなもん集めて、と、勝手にレア物王冠を手に取り、スネ夫に派手に叱り飛ばされるのび太。
「ピンセットで扱うもんだぞ。錆がついたらどうする!」

 さっぱり状況が飲み込めずにいると、三人が「遅れてる」のび太に口々に説明します。

 切手やコインなんて時代遅れ、この一日眺めていても飽きない形の美しさ、面白さ、王冠コレクションはすぐに世界的ブームになる。  
 
 それを聞いたのび太が、3人に自宅の箱一杯のコレクションを披露すると、三人は「いつのまに!?」と言葉を失います。
「いやあ、たいしたことないよ。諸君とはちょっとばかり目の付け所が違っていただけさ」
 のび太くんは進んでいるからね。と、ブーム仕掛人のドラえもんもさりげなく煽ります。

 完敗を認めるも羨ましくてならない3人は、家に駆け戻り、「3食おやつも全部コーラにして、とママに一生のお願いとして懇願(しずかちゃん)」、「コーラ10本一気のみして、ザブンザブンのお腹を抱え、サイダーを買いに行く(ジャイアン)」、「親のビールを6本一気に開栓(スネ夫)」等の暴走をはじめます。

 町の子供達が数を競う中、悠々と登場した希代の収集家のび太は、数が少ないものにこそ値打ちがあるんだよ、と、「王冠コレクション道」を説きます。

 そしてドラえもんがピンセットで(笑)とりだしたのは、「8月12日三河屋で売れたコラコーラ」。
 この日三河屋で売れたコラコーラはこれ一本!世界中探してもこれしかないんだ。10万円だしても、100万円だしても手に入らないんだよ。と、熱弁をふるうと、素直に瞠目する子供達。

王冠コレクション2.png

 ああおもしろい、と、密かに笑う二人でしたが、ママから、「駅前の切手屋が王冠屋になった」と聞かされたり、パパが「5月7日にスーパーで売れたスポライト」を2000円もしたんだぞ!と、達成感ある笑顔で買って帰ってきたのを見て、ビールスが予想以上に広範囲に広まってしまったことに気づき、にわかに恐怖を覚えます。

 はやく効き目が消えないかな……と、落ち着かない気持ちの二人。

 そこへ、恰幅と身なりのよい紳士が訪ねてきます。

「わたくし、王冠のコレクションをやってるものです」
 のび太に丁重に名刺を差し出した紳士。

王冠コレクション3.png

「素晴らしい王冠をお持ちだとか……是非、8月12日の三河屋の王冠を200万円で売ってください」
 金額にあっけにとられ、あんなもの売るわけには!と言う二人に、どうしてもほしいのです!と札束を差し出して粘る紳士。

「おねがい!おねがい!」
 畳に手をついて懇願する紳士を前に、顔を見合わせる二人。

王冠コレクション5.png

 「いいのかなあ……」
 我が物となった三河屋のコラコーラ王冠をピンセットでとり、歓喜の面持ちで眺めていた紳士。
 しかし、急に「!?」と真顔になると、
「……なんでこんなもん欲しがったんだろう」
 と首をかしげて、王冠をぽい捨て、札束を手に帰っていきます。

 あとには「ビールスのききめが消えたらしい」と、ほっとしたの2割、残念8割みたいな顔をしたのび太とドラえもんがのこされました。

王冠コレクション6.png

(完)


 何とは言いませんが、わからない人間にはまさしく王冠をつまむのび太のごとく「こんなもん集めてどうすんの」と思うものに高値と熱狂的コレクターがつくことがありますよね……。そういう現象を実に巧みに描いています。

 なお、この「流行性ネコシャクシビールス」は、過去にもファッションの流行に一石を投じるというイタズラで登場しており(コミックス6巻)、「ドラえもん」という作品それ自体は圧倒的クオリティと知名度を誇りながら、流行や物の価値評価については一定の距離をおいていることがわかります。

ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -

 こういう奥深い世界観だからこそ、40年経過した今も、流行を超えて伝説として生き延びているのかもしれません。

 先日、贋作師の人々のお話をいくつかご紹介させていただきましたが、ああいう事件は、
「『形の美しさ面白さ』が好きなら、十分ご希望に沿うものを作ってあげたでしょ、だから買ったんでしょ、たしかに『8月12日三河屋でただ一本売れた』という話は嘘だけど、それって作品の美とは関係ないでしょ、え?美じゃないところの価値ってなになにそんなに重要?」というリクツのもとに、あの200万の紳士みたいな人のお財布開かせちゃうんだろうなぁと思い当たったので、書かせていただきました。

 よろしければ当ブログ以下の記事を併せてご覧になってみてください。


「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜 (NHK BS世界のドキュメンタリー)」 番組情報ご紹介
イギリスの贋作師ジョン・マイアット(NHK BS世界のドキュメンタリー 「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜」によせて) 
(※ネタバレ)「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」あらすじと感想(NHK BS世界のドキュメンタリー)


 読んでくださってありがとうございました。
 
posted by Palum. at 23:57| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月28日

おすすめ映画放送日のお知らせ(「ラストエンペラー」と「世にも怪奇な物語」)

 本日は取り急ぎご連絡まで。

 2016年10月2日(日)おすすめ映画二作品が放送されるので、それぞれ情報ページをご紹介させていただきます。

1,「世にも怪奇な物語」(イマジカTV)※10月31日深夜再放送

世にも怪奇な物語 -HDリマスター版- [Blu-ray] -
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 タモリさんのあの名物番組ではなく、エドガー・アラン・ポーの小説を下敷きにした短編映画3作からなる作品です。

 「黒馬の哭く館(監督:ロジェ・ヴァディム)」はジェーン・フォンダとピーター・フォンダ姉弟、「影を殺した男(監督:ルイ・マル)」はアラン・ドロンとブリジット・バルドー、「悪魔の首飾り(監督:フェデリコ・フェリーニ)」は、テレンス・スタンプと、監督も俳優も驚きの顔ぶれ。

 タイトルはまがまがしそうですが、グロテスク描写はほとんどなく、むしろ幻想的な作品です。ポーを原作としながら、あの重厚な不吉の気配はそのままに、豪華監督たちが奔放に、原作超えな恐怖と映像美を作り出しています。

(ポーの中では面白いとは言えない「悪魔に首をかけるな」を、テレンス・スタンプの壮絶な演技力を生かして、ある映画俳優の破滅的心象風景に作り替えた「悪魔の首飾り」は特に圧巻。)

放送予定公式情報はこちらです。

 http://www.imagica-bs.com/program/episode.php?prg_cd=CIID105126&episode_cd=0001&epg_ver_cd=06&epi_one_flg=index.php

当ブログ内、作品ご紹介記事はこちらです。よろしければ併せてお読みください。

「世にも怪奇な物語」@「悪魔の首飾り(トビーダミット)」(『アンコール!』のテレンス・スタンプ主演)
ポー短編「悪魔に首を賭けるな」(映画『世にも怪奇な物語』「悪魔の首飾り」の補足として)
「フレデリック……」誰かの呼ぶ声(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」より)
「メッツェンガーシュタイン」(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」の原作として)※ネタバレ


2,ラストエンペラー(洋画専門チャンネル・ザ・シネマ)※10月14日、17日、22日再放送

ラストエンペラー ディレクターズ・カット  [DVD] -
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 最後の清王朝皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた大作です。
放送予定公式情報はこちらです。


http://www.thecinema.jp/detail/index.php?cinema_id=01314

 幼くして西大后により皇帝に選ばれ、広大な閉鎖空間である紫禁城から出られないまま成人した溥儀は、清王朝の滅亡、日本軍の政治的介入に翻弄されながら清王朝復活を目指そうとし、夢敗れていきます。

 一般的に、困難な人生を送った実在の人物を映画化するのは非常に難しいと思いますが(自他の思惑や歴史的背景などがからみ、綺麗に起承転結がつくものではないから)、この作品は、音楽(坂本龍一担当)や絢爛豪華な映像、溥儀の若き日とその後を交錯させた編集で、長編ながら冗長なところなく、重厚な歴史と人間のドラマに仕上げられた名作です。
(ラストシーンは史実と違うと賛否あったそうですが、あれが一番すぐれた演出だと思います。どんな場面かはぜひご覧になってみてください。)
 
 主演のジョン・ローンは、かつてダウンタウン松ちゃんに「世界三大美男の一人」と称えられた気品あふれる美しさの持ち主で、鋭いまなざし、抑制の利いた繊細な演技力で、この壮麗にして重厚な作品の世界観に説得力を与えています。

(ちなみ松ちゃん選定の残りの二美男はというと、加藤剛と俺と言って浜ちゃんにはたかれ、アラン・ドロンと訂正していたそうなので、この日世界三大美男のうちの二人がみられることになります。)
 
 以上、おすすめ映画情報でした。読んでくださってありがとうございました。



posted by Palum. at 23:58| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月27日

(100日間リベンジ再び)9週目 (ダイエット微減、減酒継続中、運動サボり気味……〈またか〉)


※今回は日記です。

100日間、文書きとか悪習慣断ち(無駄酒、無駄インターネット)とか、ダイエットとか英語とか頑張ります!と宣言させていただいた、その経過とその他つれづれを書かせていただきます。
 これまでの経過一覧はコチラです。

1,ダイエット

 先々週より0.5kg減りました。ダイエットを開始した7月26日より、63日間で2.1kg減です。
 
 ジワジワとしか減っていないのですが、半年ぶりの数値なのでうれしいです。
 (抜群のいやな安定感でちょい減っちゃあ戻っていた。エクセルで日付と体重数値の表をつけているのですが、折れ線グラフにしたら見事なゆるーいさざなみ線となることでしよう……。)
 
 でも相変わらず運動(ウォーキングとストレッチ)をする時間をうまく確保できていないので、今週は頑張ります。(と、三週間言っていると気づけるのが記録のいいところです。〈他人事みたいなとらえ方ヤメロ。〉)
 
 今週減ったのはお酒を減らしたのと、朝晩の炭水化物を少し減らしたおかげかもしれません。
 (あとは夏の終わりで、代謝が少しマシになったのかも。)

 あとは相変わらず野菜スープを続けています。カレー風味にすると、スパイスの風味で脳ストレスがやわらいで、ストレス性食欲(またの名を炭水化物への暴走的欲求)がやわらぐ感じを実感しています。
(カレーの黄色味にかかわる、ターメリック〈ウコン〉が適量なら脳にいいという説があるそうです。)

 出典:「カレーがイヤな記憶を吹き飛ばすという実験結果 ストレス解消、うつ病への効果期待」(セルフドクターズニュースより)
 http://news.selfdoctor.net/2015/01/29/3770/

 カレースパイスの脳ストレスへの効能有無については、諸説あるけれど私は効くと思っています。チャイでもホッとできる。

 でもまだ「カレースープダイエットやってます!!」と言い切れるほど結果出せてないので、もう少し減るまで、楽な範囲で(重要)おいしく作れるレシピを追及しておきます。

 ところで、常々「男性発のダイエット漫画もあればいいのにあんまり見かけないな」と思っていたのですが、ついに見つけました。

 「おつきあい」の壁をのりこえ、48s痩せました(歌川たいじ著)

「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました -
「おつきあい」の壁を乗り越え48キロやせました -
 
 著者が、職場や営業先での「飲み会、ランチ、お茶」や、ダイエットを阻む人々(人の容姿に対する無神経な発言をする人から悪気ないけれど食べ物勧めてくる人まで)という壁を乗り越え、なんと48sの減量に成功するまでを描いている作品です。

 (以下ややネタバレです。)

 仕事上避けては通れない多様な人間関係、根深い自虐、そしてキープをすることのむずかしさも丁寧に描いていて、大人の心の本として読み応えがありました。

 伴侶ツレさんや、子供のころに出会ったクラスメートのお父さんの素敵な言葉を胸に、自分を卑下しすぎずに地道な努力を重ね、結果を出した歌川さん。

 でも、太りやすい体質はなかなか変えられないともうわかっている。忙しいときは大リバウンドを防ぐのが精一杯だ。

 と腹をくくり、太っている時期の自分も甘やかすという意味ではなく、認めていくつもりという境地にいたるまでを読んだときには、ダイエット成功の有無を超えた感動がありました。

 ダイエットの方法は基本的なものでしたが(ヘルシー自炊と歩数を多くすることがメイン)、生きている以上必ずつきあわなければいけないトラウマやストレスと折り合いをつけて、いつの時代の自分を認めていけるようになるまでという、より大きな視点で描かれている本でした。おすすめです。
  
2,無駄ネット

 ゴシップ記事閲覧禁止継続は順調です。

 「無駄とは言い切れないけど、今読まなきゃダメか?」的部門の「ニュース、Kindle本検索」の閲覧時間についてですが、これも先週より減っています。

 自分がバクゼンと画面を見ていると気づいたときに、閲覧履歴を見るようにすると「うへえ」となれてかなり効くと気づきました。
(どうせバクゼンと見てると気づいた時点で自分で思っている以上に積み重なっている。)

3,減酒

 先週、「『一日おきに、アルコール度数が少ない甘いお酒を半缶くぴ飲み』が依然として残っております」と書きましたが、「半缶」が「三分の一缶」くらいに減りました。

 もう買わなきゃいいじゃんという話なのですが、まだ買い物している最中に、つい手が伸びてしまいます。
 (同じ銘柄でアルコール度数を把握しつつ飲んでいるのがせめてもの良心〈汗〉)

 ただ、そうこうしているうちに、「飲んでもいい日(人と飲む日)」もあまり強いお酒を飲みたいと思わなくなりました。

 単に夏バテでそういう気が起きないだけかもしれませんが、とりあえず先週よりましになったと思います。
 
(まとめ)
 
 ダイエット、ネット、飲酒について、それぞれすこし先週より改善できました。
 「来週は頑張ります」と運動について書き続けているナァというところは自分でも痛感しているので、今週こそは(とも書き続けているので)ましな状況に持っていきます。

 以上、日記でした。
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:57| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月26日

オバマ大統領と絵画(エドワード・ホッパー、二コラ・ド・スタール、ジョルジォ・モランディ作品に注目して)


 先日、オバマ大統領の広島演説の際に、大統領と対面したお二方(坪井直さん森重昭さん)についてご紹介記事を書かせていただきましたが、今日は、オバマ大統領がホワイトハウスに飾るために選んだ絵について書かせていただきます。

 アメリカでは、新しい大統領が就任すると、国内の美術館が、ホワイトハウスに飾る絵や彫刻をレンタルするという慣習があるそうです。

 貸し出された作品の一覧は所蔵美術館名とともに公開され、美術マーケットの熱い注目を集めるとか。
(「オバマ大統領が選んだ画家」とキャッチフレーズがつけられれば、知名度がグンと上がるからですかね。)
 ・「The Guardian」掲載の貸し出し作品リスト

   https://www.theguardian.com/culture/charlottehigginsblog/2009/oct/07/art-barack-obama


 絵のほとんどはアメリカ出身、またはアメリカ国籍を取得した画家から選ばれ、また、画家の性別やルーツ、テーマが全アメリカ国民を配慮した選択であるよう心掛けられるそうです。
(男性だけとか、アメリカ人でも○○系だけ等に偏らないように注意して選ぶ。)

 「The Wall Street Journal」によると、オバマ夫妻は歴代大統領と異なり、現代アートを多く選んだことが話題になったそうです。

・出典URL

 http://www.wsj.com/articles/SB10001424052970203771904574175453455287432


 また、夫妻は、アメリカの歴史や風土がよく伝わる絵や、ルーツを感じさせるアフリカ系アメリカ人画家の絵を好まれたようです。

 ホワイトハウスのブログでは、アメリカモダンアート界の巨人、エドワード・ホッパー(都会でも郊外でも、どこか寂寥感の漂う世界観が特色)の絵が大統領執務室(Oval office)にかけられたことが話題になっていました。
(ホッパーの絵を眺めるオバマ大統領の後ろ姿という味のある写真つき。ちなみに「大統領執務室にかけられた」というステイタスは時に絵の価値を3倍にアップさせることもあったとか。〈前出The Wall Street Journalより〉)

 https://www.whitehouse.gov/blog/2014/02/10/new-additions-oval-office

 ホッパーの作品群を見られる「Wikiart」ページはこちらです
  http://www.wikiart.org/en/edward-hopper/mode/all-paintings

しかし、このような絵画のチョイスの中、二人だけ、アメリカとほとんどゆかりの無い画家の作品が選ばれました。

 一人目は、ニコラ・ド・スタール。選ばれたのは「Nice(ニース)」という作品でした。

 ・「ニューヨークタイムズ」の「Nice」紹介画像(スライドショー12枚中10枚目)

  http://www.nytimes.com/slideshow/2009/10/07/arts/design/20091007BORROW_10.html?_r=0

 二コラ・ド・スタールはロシア出身の画家で、独特の色使いで、抽象と具象のあわいのような絵を描きました。

 「ジョジョの奇妙な冒険」ファンの間では、エキセントリックな天才漫画家、岸辺露伴が、「創作のために全財産を使い果たしてもなお手元に残したのが、このスタールの画集」というエピソードにより一躍有名になりました。
(単行本「岸辺露伴は動かない」より)

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス) -
岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス) -

 スタールの絵の魅力については、岸辺露伴が、そのとき唯一の財産である画集を開いて、担当編集に絵の説明をしていたときの台詞に尽きると思います。

岸辺露伴は動かない.png


「抽象画でありながら同時に風景画でもあって、そのぎりぎりのせめぎあいをテーマにしている。こんなに簡単な絵なのに光と奥行きがあって泣けるんだ。つまり「絵画」で心の究極に挑戦しているんだ」

 泣ける。

 なぜだかわかりませんが、確かにスタールの絵にはそのような力があります。

 独特の色遣いで厚塗りされた油絵具が、にじむようなしっとりとした質感を醸し、涙の向こうの光景のような、寂しいけれど温もりも感じられる作品です。(モノトーンで描かれた絵すらどこか温度のゆらぎがある。)

 この特異な才能と挑戦的なまなざしを持つ画家は、貧困の果てに成功をつかみましたが、1955年、「コンサート」という名の色鮮やかで伸びやかなタッチの大作を絶筆に、わずか41歳で謎の自死を遂げました。

 スタールの作品群を見られる「Wikiart」ページはこちらです

 http://www.wikiart.org/en/nicolas-de-sta-l

  ※遺作「Le concert」ほか、露伴先生が漫画の中で開いて見せている絵「Agrigente(イタリアの地名)」も観ることができます。

もう一人の外国人画家は、イタリアの抽象画の巨匠、ジョルジォ・モランディ。こちらは二枚の静物画「Still life」が選ばれました。

モランディの作風がわかる動画(The Phillips Collection紹介動画)





 実際にホワイトハウスで選ばれた静物画のひとつはこちらです。

http://www.nga.gov/content/ngaweb/Collection/art-object-page.103748.html

(なぜか貸出元のナショナル・ギャラリーではなく、国立郵便博物館のブログでどの絵か教えてくれていた……。)


 モランディはその生涯を通じイタリアからほとんど出ることがなく、独身を通し、母と妹たちと暮らしながら、主に静物画を描き続けた画家でした。

 「ひとり静かに仕事をさせてくれ」が口癖で、第二次大戦時、国内にファシズムの嵐が吹き荒れる中でも、ただひたすらに己の作風を貫き通した人です。

 アトリエに意図的に埃を積もらせ、彼の所蔵する静物の配置とともにその埃を描くことで、色のくすみや光のゆらぎを描いたという画家の作品は、寄り添うように卓上に集うボトルや箱の姿と空間の中に、物、埃、光、影、すべてを等しく見据える静まり返った心とまなざしを感じさせます。
 
 モランディの作品群が見られる、Wikiartページはこちらです。

http://www.wikiart.org/en/giorgio-morandi

 ホッパー、スタール、モランディ。

 どの絵にも共通するのは、ある対象を見つめる、静かで孤独な心が感じられるということです。
 
 それは、味方がいないという意味ではなく、ただ、他の誰の考えとも関わりなく、独り物思うような心境。
 
 こうした絵を居住エリアや執務室で眺めるために選んだオバマ大統領という方は、アメリカ大統領という、ある意味世界でも屈指の重圧と権謀術策の中に生きなければならない立場の中で、できうる限り、誰の賛辞にも奢らず、思惑にも振り回されずに、一人の人間として、自分の心がどう感じ、思うかということをとても大切にしているのではないでしょうか。

 広島演説の際に、オバマ大統領と言葉を交わした坪井直さんの「真面目な人で、人を思う心が強いのか、話をするたびにどんどん握手が強くなっていった」という印象(※)と、この静かな孤高の絵画たちは、どこか相通じているように思われます。

(※)(時事通信社記事より引用)

 オバマ大統領の政治的手腕や、アメリカの方針については、知識に乏しいため、何も意見を申し上げられないのですが、選ばれた絵の中に通底する気配から、あの方の美意識とともに、何か人としての信念を感じたような気がしたので、ご紹介させていただきました。

 読んでくださってありがとうございました。

 

(参照)
・Smithsonian’s National Postal Museum Blog(02/15/2010 Mark Haimann )
「Philatelic Musings on Art: The Obama's Art Selections on Stamps」
http://postalmuseumblog.si.edu/2010/02/philatelic-musings-on-art-the-obamas-art-selections-on-stamps.html


・The Wall Street Jornal
「Changing the Art on the White House Walls」
By AMY CHOZICK and KELLY CROW
Updated May 22, 2009 12:01 a.m. ET
http://www.wsj.com/articles/SB10001424052970203771904574175453455287432 

・The New York Times
「Whitehouse Art」
http://www.nytimes.com/slideshow/2009/10/07/arts/design/20091007BORROW_10.html?_r=0

・The Whitehouse Blog
「New Additions to the Oval Office」
https://www.whitehouse.gov/blog/2014/02/10/new-additions-oval-office

・時事通信社「Jiji.com」「核廃絶「決意感じた」=被爆者ら高い評価−オバマ氏広島訪問」 http://www.jiji.com/jc/article?k=2016052700939&g=soc

(※)一部モランディの情報については、NHK「日曜美術館」の特集「埃(ほこり)まで描いた男〜不思議な画家・モランディ〜」を参照させていただきました。
http://www4.nhk.or.jp/nichibi/x/2016-05-15/31/2185/1902680/


 
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2016年09月25日

(※ネタバレあり)犬とイルカの友情(ナショナルジオグラフィックチャンネル「動物界の意外なお友達2 犬と野生動物の強い絆」より)

 先日、ナショナルジオグラフィックチャンネルで、素晴らしい番組が放送されていたのでご紹介させていただきます。

「動物界の意外なお友達2(Unlikely animal friends) 犬と野生動物の強い絆」です。

 犬と野生動物の間に生まれた友情を、実際の映像と周囲の証言をもとに紹介している番組です。
(犬たちの行動について、カリスマドッグトレーナー、シーザー・ミランが分析、解説。)

 番組公式情報HPはコチラです。
「動物界の意外なお友達 2(原題:Unlikely Animal Friends 3)」

 http://www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/1017(放送予定)
 http://www.ngcjapan.com/tv/lineup/prgmepisode/index/prgm_cd/1017(各回エピソード)

 ロバ、熊、鹿、キツネといった、犬と種族を超えて友情を築いた動物たちの中に、陸と海の垣根すら超えて、犬と友達になったイルカのお話がありました。

(明日2016年9月26日〈月〉18:00〜19:00のナショナルジオグラフィックチャンネルでは、同シリーズで、「 人間と動物の特別な関係 (Man's Other Best Friend) 」という人と他の野生動物の友情物語が紹介されるそうなので、併せて御覧ください。)

 以下、番組で紹介されていた犬とイルカのお話です。
(結末までネタバレなのでご了承ください。また、10月3日、10月4日放送の「最愛のベストフレンド」という傑作選回で、この二頭のエピソードが再放送される模様です。詳細は上記URLをご覧ください。)

 二頭のエピソードを紹介している「National Geographic」の記事はこちらです。(動画付き)

 http://video.nationalgeographic.com/wild/unlikely-animal-friends/ben-the-dog-and-duggie-the-dolphin?source=relatedvideo

 アイルランドのニュースを扱った「Irish Central」で引用されていた、二頭を取材している動画はこちらです。
 「Tory Island dog swimming with dolphin」(投稿者Franklin Sinclair)
 
https://www.youtube.com/watch?v=l2vU8U0j_4E

http://www.irishcentral.com/news/amazing-footage-of-a-dog-playing-with-a-dolphin-off-the-coast-of-ireland-video-127888298-237406421

 アイルランド、トリー島でホテルを経営するパトリックさんの愛犬ベン(薄茶のラブラドールレトリバー・鼻はピンクがかっており、顔はうっすら鉢割れ模様で、額の中心から鼻先にかけてが少し白い。)と雌のイルカ、ドゥギィの友情が始まったのは2006年のことでした。

 ある日、パトリックさんが購入したばかりの船にイルカがついてくるという出来事がありました。

 そして後日、パトリックさんがベンと埠頭近くを散歩をしていたときに、ベンが急に埠頭に降りてゆき、海に飛び込みました。

 そこへ姿を現したのがドゥギィ。

 彼女はベンの周りを回るように泳ぎ、そこから、この二頭の風変わりな友情は始まりました。

 何度も埠頭に訪れるドゥギィと、それをどうやってか察し、住まいのホテルから数百メートル先の船着き場まで走ってゆくベン。

 海に飛び込むベンと、彼と一緒に泳ぐドゥギィの交流は、島で評判となり、島の人々はその姿を見ようと埠頭に集まりました。
(その中にニコニコしながら二頭を見つめ、アコーディオンを演奏するおじさんがいて、アイルランドらしい風情がありました。)

 イルカは、仲間と遊ぶときに、水中で泡をポコポコと相手に向かって吹きだすことがあるのですが、ドゥギィは、泳ぐベンの体の下にもぐって、体を垂直にし、この泡を吹きだすしぐさを何度もしていました。

 「なんかめずらしーものがいる!」と、寄っていく犬と、「しょうがないわねえ」と、向こう見ずな犬が寄ってきてもとりあえず危害を加えない野生動物、という状況を超えて、ベンとドゥギィは明らかに互いにコミュニケーションをとっていたのです。

 泳ぎの得意なベンはどこまでもドゥギィと一緒に泳ごうとし、ときには3時間も海にいたことがあるそうです。

(レトリバー犬はもともと水鳥専門の狩猟犬なので水を怖がらないことが多いのです。)

 そして、ドゥギィを追って沖に行ってしまい、さすがに疲れてしまったベンに気づくと、ドゥギィは、仲間の疲れたイルカにそうするように、泳ぐベンの下にもぐりこみ、頭でベンの体を支えながら、岸辺まで運んでくれたそうです。

 ベンとドゥギィの友情は約4年続きましたが、2010年から、急にドゥギィが何らかの理由で、埠頭に姿を現さなくなりました。

 島の裏側ではイルカの姿が目撃されていたのですが、埠頭に戻ってくる気配はありません。

 それでもドゥギィを待ち続けるベン。

 パトリックさんは、ベンを船に乗せて、晴れた日の夕暮れ、島の裏側に行ってみました。

 すると岩場近くの波間にイルカの姿が見えました。

 途端に船から身を乗り出して吠えるベン。そわそわと歩き回り、海に飛び込もうとしました。

 パトリックさんはベンを一生懸命おさえました。ベンが泳ぐには波が荒すぎたのです。

 身を乗り出すベンのそばに立ち、ドゥギィの背びれを指さすパトリックさん。その指先を一心に見つめるベン。

 この夕暮れの出会いが、ベンとドゥギィの別れとなりました。

 翌年の冬、ベンは車にひかれてこの世を去ったのです。

 ベンのことを振り返るパトリックさんは、その死について語った後、一度きゅっとくちびるを噛むと、静かな、暖かな声で言葉をつづけました。

 ベンは特別な犬でした。ベンのような犬は、まずいないでしょう。私たちがドゥギィのことを話すと、いつも聞き耳を立てていました。ドゥギィが大好きだったのです、と。

 
 この番組では語られていなかったのですが、なぜドゥギィが埠頭に通うようになったのかについて、島でこんなうわさがあったそうです。

 ドゥギィが来るようになる直前に、島の岸辺近くでイルカの死体が見つかるという出来事があり、もしかしたら、あれは彼女の夫だったのではないか。ドゥギィはその死を悲しみ、彼を探しに来たのではないかと。

(Irish Central記事より)

 ドゥギィが訪れなくなった理由はわからないままですが、埠頭かその途中の道のりが安全でなくなったか、新しい家族ができて、連れていくことはできなかったのかもしれません。

 いずれにせよ、事情を抱えてふいにその場所を訪れた誰かと、その場所の住人が友情をはぐくみ、訪れた側がそこから離れた後も、その場所の住人は深い思いを胸に、相手を待ち続けるという物語が、イタリアの名作映画「イル・ポスティーノ」を思い出させ、単に仲良しの動物同士という構図を超えて心に染みます。


イル・ポスティーノ [DVD] -
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 島の夕暮れ時の金色に染まる海や、パトリックさんの優しさも美しい。
 (ドゥギィを待って芝生に寝そべるベンの黄昏時の姿や、埠頭にたたずむベンが海風をうけて、小さめの耳をひらひらさせているのも妙に胸に迫る。)

 ベンはドゥギィが来るときにはそれを察して何百メートルも歩いて埠頭に向かっていたそうですが、ドゥギィにもこの不思議な力が備わっていたのでしょうか。

 彼女はベンがこの世を去ったことを知っているのでしょうか。

 昔、ドゥギィを追って沖まで泳ぎ続けたベンの下に潜り、頭で彼を支えるようにして岸まで連れて行ってくれたドゥギィ。

 ベンがこの世から彼岸に旅立つとき、ドゥギィが彼の魂を支えて、海の向こうの天国へ連れて行ってくれたのだろうか、そうであってほしい。

 そう、思います。

 ぜひ番組や引用させていただいた記事で、この風変りだけど心温まる、そしてせつない友情のお話をご覧になってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。



(参照)
・「Irish Central」
「Amazing footage of a dog playing with a dolphin in Ireland (VIDEO)」
(Cathy Hayes September 09, 2016)
http://www.irishcentral.com/news/amazing-footage-of-a-dog-playing-with-a-dolphin-off-the-coast-of-ireland-video-127888298-237406421

・「National Geographic」
「UNLIKELY ANIMAL FRIENDS Ben the Dog and Duggie the Dolphin」
http://video.nationalgeographic.com/wild/unlikely-animal-friends/ben-the-dog-and-duggie-the-dolphin
posted by Palum. at 14:38| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月24日

森重昭さんのご活動について (NHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」によせて)


「オバマ米大統領、広島訪問 被爆者とハグ Obama hugs Hiroshima survivor」
AFPBB News (AFP通信日本語ニュースサービス)



https://www.youtube.com/watch?v=D8MtsB636Tg

 
2016年9月27日(火) 午前1時30分より、バラク・オバマ大統領広島訪問時に大統領と言葉を交わした被爆者の一人、坪井直(すなお)さん(91歳・日本原水爆被害者団体協議会代表委員)をご紹介する番組が再放送されます。
 (前出動画内で最初にオバマ大統領と言葉を交わされている方です。)

 番組公式HPはこちらです。
 もっとNHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」

 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2075058/index.html

 この再放送にちなみ、今回は、坪井さんと一緒にオバマ大統領とお話をされた森重昭(しげあき)さんの、被爆したアメリカ人捕虜の調査活動についてご紹介させていただきます。

 森さんは動画で坪井さんの後にお話をされている方で、涙を浮かべる森さんと、オバマ大統領の抱擁の瞬間は世界中のニュースで大きくとりあげられました。

 オバマ大統領の手は温かかった。

 そう、その瞬間を振り返った森さん。

「夢のようでした。今まで苦労に苦労を重ねた。大変な思いをしたけど、最高のおもてなしを今日はアメリカ側がしてくれた」
(日テレNEWS24記事より)

 その言葉どおり、森さんの活動は困難を極める地道な作業の連続だったそうです。

 森さんが被爆したのは8歳のときでした。

 「爆風で小川に飛ばされ、気が付いたらきのこ雲の中にいたのです。あまりにも暗くて、10センチメートル前の自分の指先を見ようとしても真っ暗で見えないほどでした」
(nippon.com記事より)

 家や木々も爆風で吹き上げられ、自分の側を歩いていた人や、親せきが亡くなるという出来事に遭遇した森さん。
 ご自身が無傷だったのは奇跡だ、そう思われたそうです。

 その後、歴史学の教授になりたいと、会社勤めをしながら、週末に研究を行っていた森さんは、38歳のときに、終戦間際、撃墜されたアメリカの爆撃機2機の乗組員が、捕虜として広島の憲兵隊司令部に連行されたことを知ります。

 被爆者の中にアメリカ人捕虜がいたはずだ。以前よりそう思っていた森さんは、1974年、NHKが視聴者から募集した原爆の絵2000枚の中から、米兵を描いた絵二十数枚を見つけ出し、その絵を描いた被爆者のもとを訪ね、聞き取りをすることから調査を開始しました。

 捕虜となったアメリカ兵は全部で13名。ただ一人、尋問のために後に東京に送られたトーマス・カートライト中尉を除いた12名は、原爆投下により亡くなった。

 調査の末に、この12名の犠牲者の氏名を突き止めた森さんは、遺族を探し出して、彼らのことを伝えたいと考え、国際電話オペレーターの通訳を通じ、犠牲者と同じ姓の人を探すという、気の遠くなるような作業を開始しました。(心臓がお悪かったので、現地に行くことはできず、この方法を選ばれたそうです。)

 「死ぬまでに、何とかご遺族を探し出して、亡くなった米兵捕虜の写真と名前を平和祈念資料館に原爆犠牲者として登録しようと心に決めたのです」。
(nippon.comより)

 終戦直後の混乱で調査ができなかったこともあり、アメリカ人兵士が原爆の犠牲となったことを長年認めなかったアメリカ政府。

 遺族の中には、未だ帰らない家族の状況について「行方不明」としか知らされないままの方たちも多かったそうです。

 しかし、ついに森さんは犠牲となった兵士の兄、フランシス・ライアン氏の連絡先を突き止め、乗組員たちの写真を入手することができました。

 そして、これをきっかけに唯一捕虜の中で生き残った元機長カートライト中尉と手紙でのやりとりがはじまり、カートライト氏が亡くなるまでの20年間、100通以上の手紙を交わしたそうです。

「私は、奇しくも生き残りました。ですから何としても、遺族を探し出して、愛する人の最後についてお伝えしようと、そう心に誓ったのです」。
(nippon.comより)

 森さんの約40年にもわたる調査は実を結び、12名すべての犠牲者の氏名は、原爆による死没者として広島の名簿に登録され、オバマ大統領は演説で、被爆者として、日本、朝鮮半島の方たちとともに「12人の米軍捕虜」の存在について語りました。



 こうして、森さんとオバマ大統領との抱擁という瞬間が訪れたのです。

「被爆死した12人の米兵も天国できっと喜んでいる」
(毎日新聞より)

 あの抱擁の瞬間を、そう感慨深げに振り返っていた森さん。

 今は、長崎の原爆投下で犠牲となったイギリス、オランダ兵捕虜の調査を続けていらっしゃるそうです。

 森さんのこの活動は、亡くなった米兵捕虜の親友を通じて、甥である映画監督、バリー・フレシェット監督に伝わり、感銘を受けたフレシェット監督は、森さんに連絡をとり、2年間かけて、森さんの活動を追ったドキュメンタリー映画「Paper Lanterns(灯篭流し)」を完成させました。



 森さんの執念の調査は、同国のアメリカ人の命も奪った原爆と戦争の恐ろしさを伝え、また、その一方で、幼くして死の恐怖に直面し、地獄のような光景を目の当たりにしながらも、「アメリカのご遺族も同じように原爆で愛する人を失ったのだ」と思い、数十年不屈の調査をすることができる人の心を世界に知らしめました。
 
 葛藤を乗り越え、オバマ大統領に笑顔で「核兵器のない世界、私たちも行きますよ」と伝え、未来の平和へ向かおうとされている坪井直さんのお話とともに、心に刻まれたエピソードだったので、ご紹介させていただきました。
 
 以下に今回の記事作成にあたり、読ませていただいた記事は以下の通りです。より詳しい情報が書かれていますので、ご覧になっていただければ幸いです。 

(参考資料)
 ・ウィキペディア「森重昭」

 https://ja.wikipedia.org/wiki/森重昭

 ・nippon.com「広島被爆米兵の名前を刻んだ日本の歴史家 森重昭さんのライフ・ワークを描いたドキュメンタリー」(筆者:ジュリアン・ライオール  Julian RYALL 2016.05.24)
※非常に詳しく紹介してくださっている記事です。今回の記事の多くの内容は最初にこちらで読ませていただきました。

  http://www.nippon.com/ja/people/e00097/ (日本語版記事)
  http://www.nippon.com/en/people/e00097/ (英語版記事)

 ・山陽新聞digital「被爆米兵捕虜を調査した森重昭さんに聞く 同じ犠牲者追悼したいとの思い」
 (2016年08月05日)http://www.sanyonews.jp/article/393191/1/

 ・日テレNEWS24「被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話」(2016年5月28日)
  http://www.news24.jp/articles/2016/05/28/07331263.html

 ・日本記者クラブ「記者による会見リポート 米兵捕虜12人の被爆死をたった一人で突き止めた森さん
オバマ大統領のハグに隠された意味」(日本記者クラブ顧問 中井 良則)

 http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2016/06/r00033513/

 ・毎日新聞「米大統領広島訪問 米兵の被爆調査 森さん 抱き合い、涙」
(2016年5月27日【原田悠自、鵜塚健】)

 http://mainichi.jp/articles/20160528/k00/00m/040/141000c

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:37| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月23日

NHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」再放送のお知らせ(NHK総合)

「オバマ米大統領、広島訪問 被爆者とハグ Obama hugs Hiroshima survivor」
AFPBB News (AFP通信日本語ニュースサービス)



https://www.youtube.com/watch?v=D8MtsB636Tg

 2016年9月27日(火) 午前1時30分より、バラク・オバマ大統領広島訪問時に大統領と言葉を交わした被爆者の一人、坪井直(すなお)さん(91歳・日本原水爆被害者団体協議会代表委員)をご紹介する番組が再放送されます。
 (前出動画内で最初にオバマ大統領と言葉を交わされている方です。)

 番組公式HPはこちらです。
 もっとNHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」

 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2075058/index.html

 20歳のとき、爆心地から約1.2km地点で被爆、顔や手や背中に大きなやけどを負い、壮絶な光景を目の当たりにした坪井さん。
(大怪我を負い、橋の欄干近くに座り込んで救援を待つ坪井さんの姿が当時の記録写真に残されているそうです。)

 本当は原爆を投下をされたことに対する強い怒りがある。

 それでも、オバマ大統領と対面した坪井さんは、笑みを浮かべ、力強く握手を交わしながらこう伝えました。
「核兵器のない世界、私たちも行きますよ」

 チェコのプラハでやったあなたの「“核兵器のない世界”をつくろう」、そのことは今も私に脈打っていますよ。だからあなたが(来年の)1月に(大統領を)辞められても、広島へ来てください。

 坪井さんのその言葉を手を握り続けながら聞いたオバマ大統領。
 
 広島を訪れてからずっと、張り詰めた真剣な表情を浮かべていた顔に、はじめて笑みが浮かびました。

 「謝って下さい、とか悪いことをしましたとか私は一切いりません」

 そう語る坪井さん。

「憎しみを出しても、わかってもらえなければ意味がない。乗り越えんとね、平和はない。幸せはない」

 被爆の後遺症にも苦しめられながら、その心境に達するまでには、さまざまな葛藤があったはずですが、戦後71年、被爆国である日本でも戦争の記憶が薄れつつある今この時、まず必要なのは、謝罪の言葉の有無ではなく、ともに核兵器の恐ろしさを考え、平和に向かうという未来へ向けた思いであるというお考えが、このご発言になっているのだと思います。

 番組では、坪井さんに密着取材をし、被爆体験、そして怒りや憎しみを乗り越えて、「ここから」の平和への歩みを見据える思いが紹介されるそうです。

 当ブログでは、後日、この番組の内容や、同じく被爆者としてスピーチ後にオバマ大統領と言葉を交わされた、森重昭(しげあき)さん(動画内で坪井さんの後に会話をし、オバマ大統領と抱擁を交わしている方です)のご活動について紹介させていただく予定です。

 よろしければまたいらしてください。

 読んでくださってありがとうございました。


 (参照):
 ・「被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話」
  日テレNEWS24(2016年5月28日)
   http://www.news24.jp/articles/2016/05/28/07331263.html
 ・フジテレビ「ユアタイム」2016年5月27日 放送内容
 ・ウィキペディア記事「坪井直」
https://ja.wikipedia.org/wiki/坪井直
posted by Palum. at 01:05| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月22日

「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品4 宮川香山「色絵金彩鴛鴦置物」「「菖蒲文花瓶」)

 先日概要をご紹介させていただいた上野の東京芸術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工芸」について、引き続き個人的におススメだった展示品について書かせていただきます。

 展覧会公式HPは以下のとおりです。
 http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

 初代・宮川香山(こうざん)「色絵金彩鴛鴦置物」(白磁 幅18cm 高さ11.3cm)

宮川香山 縮小版.png

 穏やかな目をしたつがいのオシドリが向かい合って寄り添う、愛らしい作品です。
 シンプルな姿のようですが、よく見ると、金で羽毛の流れが一筋一筋微細に書き込まれており、このふっくらとした質感をつくりあげています。

 宮川香山は京都の楽焼の家に生まれ、幼いころから焼き物に親しんでいましたが、のちに、輸出用陶磁器を製作するために、横浜に窯を開き、「眞葛焼(まくずやき)」を生み出しました。

 眞葛焼の特色として「金襴手(きんらんで)」と呼ばれる、彩色した陶磁器に金彩を加えた技法と、「高浮彫(たかうきぼり)」という、陶器からはみ出すように立体的な彫刻的表現があります。

 高浮彫の作例は「田邊哲人コレクション」HPで観ることができます。「渡蟹水盤」は圧巻。
 http://www.tanabetetsuhito-collection.jp/makuzu_select01.html#img_top 

 強烈な印象を残す「高浮彫」の作品は、1876年開催のフィラデルフィア万国博覧会で評判を集めましたが、一方でこのあまりにも緻密な作品は時間がかかり、焼いた際の縮みで失敗する可能性もあるという問題があったため、新たな技法として、中国清朝陶磁などに見られる「釉下彩(ゆうかさい)」技法(※下地に着彩し、上から透明な釉薬をかけて焼き上げたもの)を採り入れ、作風の幅を大きく広げ、清澄で淡く優しい色合いの作品でも高い評価を得ました。

 展覧会出品作品の中の釉下彩作品「菖蒲文花瓶」(青磁)

宮川香山 菖蒲文花瓶.jpg

 鴛鴦は、ビックリする感じの典型的高浮彫の真葛焼とは異なり、ややデフォルメしたような穏やかな曲線で作られています。
しかし、羽毛の描き方には卓越した集中力と技量が感じられ、だまし絵のようなくっきりと立体的な技巧と、釉下彩にみられるような穏やかな作風とのちょうど中間に位置するような作品です。

 当記事で参照させていただいたネット情報は以下のとおりです。

 宮川香山真葛ミュージアムHP
  http://kozan-makuzu.com/

 ウィキペディア記事
 https://ja.wikipedia.org/wiki/宮川香山

 没後百年「宮川香山」(サントリー美術館)HP
 http://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2016_1/index.html

 各地美術館、博物館、展覧会を紹介してくださっているHP「インターネットミュージアム」で記事とともに「驚きの明治工芸展」動画を公開してくださっていました。肉眼では細部の鑑賞が難しいほどの緻密な作品も数多くあるので、こちらでご覧になってみてください。

 インターネットミュージアム取材レポート「驚きの明治工芸展」( 取材・撮影・文:古川幹夫氏)
http://www.museum.or.jp/modules/topics/?action=view&id=863

(会場全体と陶磁器)

https://www.youtube.com/watch?v=ezWCq3mMgJw

(主に自在作品)


https://www.youtube.com/watch?v=1mT5K2D03-E

(壁掛、天鵞絨〈ビロード〉友禅)


https://www.youtube.com/watch?v=Qc5DF4z99Z0

(根付と木工)


https://www.youtube.com/watch?v=ZMIaeh0GxPA

 当ブログのこの展覧会関連ブログ記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。
  「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)

  「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品1 加納夏雄 「梅竹文酒燗器」)
  「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品2 海野勝a 「背負籠香炉」海野a乗「犬図薬缶」)
  「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)
 「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品3 宮川香山「色絵金彩鴛鴦置物」「「菖蒲文花瓶」)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:20| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月21日

「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)

 先日概要をご紹介させていただいた上野の東京芸術大学大学美術館で開催中の「驚きの明治工芸」について、展示作品のうち、個人的におススメだったものについて書かせていただきます。

 展覧会公式HPは以下のとおりです。
 http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

 今回ご紹介させていただくのは、虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」。

 ともに繊細にして絢爛豪華な象嵌(※)細工「芝山」の名作でした。

 (※)象嵌(ぞうがん)……象嵌、工芸技法のひとつ。
象は「かたどる」、嵌は「はめる」と言う意味がある。象嵌本来の意味は、一つの素材に異質の素材を嵌め込むと言う意味で金工象嵌、木工象嵌、陶象嵌等がある。
ウィキペディアより)


 虎爪(※)作「蒔絵螺鈿芝山花瓶」(胴径15.5p、高さ24.5cm)

(※)作者名の本当の読みがわからないのですが、一応これで「こそう」と読めるそうです。

蒔絵螺鈿芝山花瓶.png

 抑えた金色の地の花瓶に紫陽花、牡丹、菊、藤、百合、柘榴などの花や果実が活けられた姿。

 本物の花瓶の中に、鳳凰の舞う豪奢な花瓶の模様という図案の遊びも利いています。

蒔絵螺鈿芝山花瓶部分.png
 
 鳳凰の花瓶は細工のほどこされた台に乗り、そのそばにはぽってりとした茶器らしき急須。
(ちなみに本体花瓶土台は、まるっこい銀の獅子が「んあー」ってしてる顔で、上の花々の繊細な美貌とギャップ萌え)

 開いたザクロの実の粒のひとつひとつ、藤や紫陽花の小さな花びらなどが、象嵌の立体で、風に揺れて光りながら零れ落ちんばかりに緻密に描かれている。

 圧巻の技巧が、これみよがしでなくやわらかな動きを感じさせる作品です。

 私の写真では暗くてわかりにくいのですが、「驚きの明治工芸」の公式HP「みんなで作る工芸図鑑」欄に来館者の方々のツイッターがアップされていて、皆さん撮影のより鮮明な写真を観ることができます。

 以下、「芝山」について、「Google Arts&Culture 芝山象嵌」を参照しながら書かせていただきます。
出典URL:
https://www.google.com/culturalinstitute/beta/exhibit/芝山象嵌/lAIisfPbYrziIg?hl=ja
(非常に詳しくて目の保養なページです。立命館アートリサーチセンター情報提供)


「Google Arts & Culture 芝山象嵌」(制作過程と作品紹介動画)



https://www.youtube.com/watch?v=iVpUqYYowCo

 「芝山」とは、「芝山象嵌(ぞうがん)」と呼ばれる、貝(蝶貝、夜光貝、あわびなど)、サンゴ、べっ甲、象牙などで作ったモチーフを表面にはめこんで作る明治工芸のことです。

 「芝山」の名はもともと現在の千葉県の地名でした。

 江戸時代、安永年間(1772〜1881)の頃にこの地に生まれた大野木専蔵が創案した象嵌技法を、この地にちなんで「芝山」と名付け、自身の姓も「芝山」と変えたことから、この呼び方が広く使われるようになりました。

 芝山の特色は、はめこんだ模様が立体的に浮き出ていることで、この細工のみを「芝山」と呼ぶこともあります。
 
 その繊細な美は、当初裕福な武家や商人の調度品として好まれ、「大名物」と呼ばれましたが、明治に入ってからは、欧米への土産物として人気を集めました。

 特にパリ万国博覧会(1867)で日本の工芸品の超絶技巧が絶賛されるようになってからは、「東洋のモザイク」と呼ばれ、輸出品として海外向けの品が作られるようになりました。
 
 創始者「芝山専蔵」の名は代々受け継がれてきましたが、弟子たちも技術とともに「芝山」姓を受け継ぐことになり、「シバヤマ」の名はその象嵌の技法として海外にも知られるようになりました。

 (以前、明治工芸に詳しいイギリスの方と偶然お話しする機会があったのですが、綺麗な陳列品を指さして「シバヤマ」「シバヤマ」と何度も言われ、「え?シブヤマ(違った)?誰?」と思ったのでよく覚えています。ていうかその方に教えていただいてはじめて「芝山象嵌」の存在を知った。〈日本通外国人と通ジャナイ日本人あるある〉)

 ロンドンの、「ヴィクトリア&アルバート美術館」所蔵の「芝山」一覧はこちらです(展示されていない物も含む)。
http://m.vam.ac.uk/collections/search/?offset=0&limit=10&q=shibayama&commit=Search&quality=2

 非常に美しかった「Yasumasa」作の衝立にとまる鷹を描いた硯屏(けんびょう※〈英語ではシンプルに「Screen(衝立・屏風)」と呼ばれています。〉)
http://m.vam.ac.uk/collections/item/O232966/screen-yasumasa/
拡大画像
http://m.vam.ac.uk/collections/cis/enlarge/id/2006BE7281

 この写真だとちょっと明るいのですが、金色が闇をはらんだように底光りし、桃色の花散る中、柔らかい色の、少し優しい雰囲気の鷹が羽を広げ、珊瑚製と思われる紐が繊細な結び目を垂らしている、神秘的な作品でした。竹を模した象牙の彫も素晴らしかった。

 ※硯屏……硯(すずり)のそばに立てて、ちりやほこりなどを防ぐ小さな衝立(ついたて)。(コトバンクより)


 芝田易信(やすのぶ)作「蒔絵螺鈿芝山硯屏(けんびょう)」(幅13p 高さ30p)

蒔絵螺鈿柴山硯屏風2.jpg

 象牙製の枠組みの中に、上部は見開きで咲き誇る木蓮の大木と牡丹。その上で尾羽を豪奢に垂らす孔雀。

 左側の牡丹の足元には雄の孔雀の妻なのか、雌の孔雀がたたずんでいます。

蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分2.png

蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分3.png
 華やかな情景の中に、舞う白い蝶や大木の下に咲く菫など、つつましくで可憐なモチーフも描かれた、奥行きのあるデザインです。
 咲き初めの木蓮の、光を透かして輝く小さなつぼみとそれを支える細い枝が、ほろほろとした動きを感じさせます。

 下部では蒔絵の中に二匹の鯉が金の波紋を揺らして泳いでいます。
蒔絵螺鈿柴山硯屏風部分1.png

 (なお、裏側にもカラフルな花紋を散らした蒔絵があったのですが、暗くて撮れませんでした……)

 おそらく、この展覧会女性ウケという点では最も人気を集めそうな品。

 この豪華さと雅を感じさせるデザイン、奥行きのあるやわらかな透明感は、かつて美しさで騒然となった、大和和紀先生版源氏物語「あさきゆめみし」のイラストを思い出させました。

源氏物語 あさきゆめみし 完全版(1) (Kissコミックス) -
源氏物語 あさきゆめみし 完全版(1) (Kissコミックス) -

 どちらの写真も暗くて申し訳ないのですが、実物は金地があたたかく光る中に、かわいらしい色彩が緻密に華やかに舞う絶品です。

 是非お出かけになってその美をご覧になってみてください。

 当ブログのこの展覧会関連ブログ記事は以下のとおりです。よろしければ併せて御覧ください。
 「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)

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 「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品3 虎爪「蒔絵螺鈿芝山花瓶」、易信「蒔絵螺鈿芝山硯屏」)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:55| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月20日

(100日間リベンジ再び)7・8週目 (ダイエット微減、減酒継続中、運動サボり気味……)


※今回は日記です。

100日間、文書きとか悪習慣断ち(無駄酒、無駄インターネット)とか、ダイエットとか英語とか頑張ります!と宣言させていただいた、その経過とその他つれづれを書かせていただきます。
 これまでの経過一覧はコチラです。

1,ダイエット

 先々週より0.4kg減りました。ダイエットを開始した7月26日より、56日間で1.6kg減です。

 ジワジワ減ってきたのですが、最近の天候不順で思い切りウォーキングさぼってしまっています。先々週「やりたいです」と宣言していたストレッチもイマイチできていません……。
 
 それでも少し減ったのは、ネット閲覧時間を減らして寝る時間多めに確保したからかもしれません。

 あとは野菜たっぷりスープを、朝晩炭水化物と半分置き換えました。

2,無駄ネット

 ゴシップ記事閲覧禁止は相変わらず継続できています。
(きっかけをくださった本「やめてみた(わたなべぽんさん作)」についての当ブログ記事はコチラです。)

やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -
やめてみた。 本当に必要なものが見えてくる暮らし方・考え方 -

 「無駄とは言い切れないけど、今読まなきゃダメか?」的部門の「ニュース、Kindle本検索」の閲覧時間についてですが、「Kindle本検索」は激減させられました。

 注文履歴をマメにチェックするようにしたら、冷静になれた。やっぱお金の力はデカいです。
 発売されたらどうしても買いたいとすぐ頭に思い浮かぶ本以外はわざわざ時間をとって探さないことにしました。
 (『ゴールデンカムイ8』買えたから、一応一山超えた感じです。相変わらず面白かった〈そして相変わらずエキセントリックな人ばかり出ていた〉。)
ゴールデンカムイ 8 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) -
ゴールデンカムイ 8 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) -

ゴールデンカムイ【期間限定無料】 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) -
ゴールデンカムイ【期間限定無料】 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) -


 ニュース記事閲覧についてもうっかり見ている最中に、「だらだらネット閲覧はストレスのサインの一つ、こういうとき、いきなり作業に戻るのはかなり大変なので、自分は今ストレスを感じている、ということを考えると冷静になれる(『ストレスが消える「しない」健康法』(小林弘幸 著)より)」という言葉を思い出して、思い切ってリラクゼーション音楽聴きながら横になってしまうことにしました。(といわけで睡眠時間が増えたので〈寝落ちしちゃってるとも言うが〉、すこぅしダイエットになった。)

ストレスが消える「しない」健康法 (角川SSC新書) -
ストレスが消える「しない」健康法 (角川SSC新書) -

 ちなみにこちらの本も新たに読ませていただいたのですが、「パフォーマンス向上のために、まずは自律神経を整えることを優先させる」というコンセプトと、そのための様々な方法が書かれていて、具体的でためになりました。
みだれない生き方―意識するだけで結果に愛される27のヒント -
みだれない生き方―意識するだけで結果に愛される27のヒント -


3,減酒

 「人飲むとき以外飲酒禁止」なのですが、ただいま「一日おきに、アルコール度数が少ない甘いお酒を半缶くぴ飲み」が依然として残っております。

 「毎日半缶〜1缶をくぴ飲み+人と会うときは適量(日本酒なら二合、ワインならグラス二杯」→「(先々週)人と会うとき以外は1〜半缶」だったので、「一缶は飲まなくなった」というところがこの二週間の改善ポイントみたいです。
(ちなみに残り半缶代わりにコーヒーか果汁割炭酸水飲んでます。)

 最近夜の疲れが半端無いんで、それでもブログ更新するためには、もう、このくらいいいかな……という自分と、ここまで減ってんならもうやめようよ!という自分が会議中です。来週までに結論だします(汗)。

(まとめ)
 先週「自分の心をケアするという意識になる」ことを心掛け、おかげでなんかお酒でダルイ気持ちを紛らわすという悪循環をだいぶ減らせたんですが、数日後、イマイチ気持ちにエンジンがかからなくなってしまったので、「けど、無駄に自分を憐れんでいる時間は無い」というフレーズを脳内に足したら、少しマシになりました。
(何故か掃除をよくやるようになった。なんでだ?)

 ただ、気温の変化か、ちょっと疲れっぽくて運動さぼっちゃってるんで、今週は復活させる予定です。
 (暑けりゃ暑いで「夏バテで運動できていません」とか書いてるクセに。なんか運動については、「ゴシップネットを観ない」みたいに突破できた感じがまだないです〈汗〉。)

 それでもこうして書き出してみると、少しずつ改善できたんだなとわかりました。
 来週火曜はもっと良い報告ができるように頑張ります。

 以上、日記でした。読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:44| 100日間リベンジ再び | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月19日

ドラマ「夏目漱石の妻」放送お知らせ

 取り急ぎお知らせまで。

 NHK総合2016年9月24日(土)夜9時からドラマ「夏目漱石の妻」が放送されるそうです。(全4回)

 かつては文豪の妻に不似合いな、文学的素養の無い、夫をないがしろにする悪妻と言われた夏目鏡子夫人。
 
 しかし、親族の証言から、実際には、時に精神的変調から家族に暴力すら振るったという漱石の不安定な部分を支えた、気丈で裏表の無い、魅力的な人物であったことが明らかになっています。

 今回のドラマは、こうした鏡子夫人と漱石の関係を、鏡子夫人の手記『漱石の思い出』を下敷きに描いているそうです。(大変素敵な本です。)

 漱石の思い出 (文春文庫) -
漱石の思い出 (文春文庫) -

 番組公式HPはこちらです。
  ・TVドラマ「夏目漱石の妻」

   http://www.nhk.or.jp/dodra/souseki/index.html
 
 番組スピンオフのショートドラマ「漱石先生を待ちながら」の動画ページはこちらです。
 (漱石の家で、出入りする門下生たち〈スピードワゴンの小沢一敬さん、井戸田潤さん、カルマラインの柳原聖さん〉が、不在の漱石の噂話をする、という内容だそうです。)
  ・漱石先生を待ちながら 第一話「先生と悪妻」

   http://www3.nhk.or.jp/d-station/episode/souseki/6266/
 
 「ダ・ヴィンチニュース」のドラマ評はこちらです。
 ・TVドラマ「夏目漱石の妻」で長谷川博己・尾野真千子が夫婦役に! 文豪・夏目漱石のユニークな夫婦生活を描く

  http://ddnavi.com/news/296027/a/
  

 「いろんな男の人を見てきたけど、あたしゃお父様(漱石)が一番いいねぇ」
 そう、晩年に孫の半藤末利子さんに語ったという鏡子夫人。

 「病気の(精神的変調が起きている)ときは仕方がない、病気でないときのあの人ほど優しい人はいないのだから」
 そう割り切って、漱石の理不尽な言動を、その嵐が過ぎるまでは、子供たちの盾となりながら耐え、それでも普段の漱石の優しい部分を、決して忘れなかった鏡子夫人の生きざまは、普段一緒にいるからこそおろそかにしがちな、夫婦や家族の愛し方を思い出させてくれます。

 私はこの鏡子夫人の手記から、鏡子夫人の頼もしくて暖かい人柄とともに、むしろ我々が知らなかった、非常に優しくて、ときに愛すべき欠点のある漱石像を知ることができ、あのあまりにも偉大な文豪をますます敬愛するようになりました。

 漱石と鏡子夫人のドラマといえば、かつて本木雅弘・宮沢りえの強力タッグで「夏目家の食卓」(2005・TBS)という非常に魅力的なドラマがあり、鏡子夫人悪妻説の真実を広く知らしめるきっかけとなったのですが、今回のドラマでも、この夫婦の愛のある部分を描き出してくれると思うのでとても楽しみにしています。

 ご覧になり、そしてできれば「夏目漱石の思い出」もお手にとってみてください。

 当ブログでもこのドラマ、および漱石没後100年にちなんで、漱石関連のエピソードを随時ご紹介させていただく予定ですので、よろしければお立ち寄りください。

 当ブログ、これまでの漱石関連記事は以下のとおりです。併せてご覧いただければ幸いです。

あなた、私は、ちゃんとここにいますよ」(夏目漱石と鏡子夫人)
「いいよいいよ、泣いてもいいよ」(夏目漱石の命日)
月がきれいですね。(中秋の名月と夏目漱石)
ミレイの「オフィーリア」と夏目漱石の『草枕』
「兄さんは死ぬまで、奥さんを御持ちになりゃしますまいね」(随筆『硝子戸の中』と小説『行人』)

 読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum. at 23:58| 夏目漱石 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月18日

(※ネタバレ)「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」あらすじと感想(NHK BS世界のドキュメンタリー)


2016年9月15日にBS世界のドキュメンタリーで「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」が放送され、当ブログご紹介記事にもアクセスをいただきました。

(番組公式HP  url:http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=160915

 現代アートの贋作を2000点、約40年間描き続け、被害総額は45億円に上るという、贋作師ウォルフガング・ベルトラッチ(Wolfgang Beltracchi)。

 2011年にささいなミスから贋作が判明し、刑務所に入る直前の彼を取材した異色のドキュメンタリーでした。
 現在はNHKオンデマンドで、配信中です。
http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2016072496SC000/?capid=nte001

(今のところ再放送予定が無いようなのですが、いずれまた放送されるのでは?と個人的には思っています。)

 ドキュメンタリートレイラー




 作品は50分中45分、彼の絵の腕前と騙しの手口について語られ、話題としては興味深いと思いつつ、いつも脳のどこがムズムズする感じ。

 でも最後の5分で急に雰囲気が変わり、ベルトラッチ氏自身と作品の両方の、隠されていた奥行が現れます。

 この5分を観るために、45分の脳のムズムズを我慢する価値がありました。

 実在の人物の話ですが、本人と編集の妙で、よくできたフィクションのようにきっちりと、観るものをうならせる余韻が待ち構えている作品でした。

 以下、番組の流れと観ていたときの感想です。(ネタバレなのでご注意ください)

 冒頭、贋作を制作する彼と交錯して、次々とインタビューに答える、美術市場の人々。
 彼に煮え湯を飲まされ、量刑の軽さ(※)に不満を抱くオークションハウス経営者。
 (※)懲役6年が言い渡されたが、約3年で出所
 彼は新しいものを産み出していないと指摘するアートディーラー。
  同じくもっと重い処罰を望む、彼の贋作を買ってしまった美術コレクター。
 わかっているだけでも数百万ユーロの利益を得たという彼の強欲に苦笑するギャラリー経営者。(それでも才能と感性は本物、と付け加えて。)
 彼はたった一人で美術界の第一人者を出し抜いた、凄腕のカウボーイのようだと語る美術評論家。

 妻や娘と談笑しながら贋作を仕上げていくベルトラッチ。

 フランスののみの市で古い絵を物色していたベルトラッチは、気に入った物を入手し、妻と手をつないで家に帰る。

 アトリエに戻ってきたベルトラッチ。
 必要だったのは絵ではなく時代を経たキャンバス。
 手際よくカメラマンに贋作用キャンバスの作り方を説明する彼だが、実は三日後には刑務所に入ることが決まっている。

 出所後にはドイツのアトリエで仕事を続けるつもり、彼はそう語る。

 彼の友人たちは、彼の正体には驚いたが、彼の才能は尊敬する、と、ともに食卓を囲みながら語りかける。
 笑顔でそれを聞くベルトラッチ夫妻。

 アトリエに訪ねてきた美術史家に、ベルトラッチは語る。
 独学で絵を学び、いつのまにやら贋作の世界に足を踏み入れていた。
 私に描けない絵は無い。亡き巨匠の頭の中に入って描き、本当の画家よりもすぐれた絵を描く。私の絵を本物だと喜ぶ人たちは正しい。美しい絵であることに変わりはないのだから。

 別の美術史家は贋作が発生する構造を指摘する。

 絵が市場にでるとき、売り主は無論、ほかの誰も、それを贋作だと思いたがらないことが問題だ。
 鑑定士は真贋鑑定で巨額の手数料を得、オークション会社は巨匠の絵の取引で利益を得る。買い手は巨匠の絵が市場に出てきたことを喜ぶ……。

 古い絵を塗りつぶして、画集を調べながらベルトラッチは贋作のターゲットを決める。

 本物の絵を模写することはしない。製作期間に空白があるところを見つけ、それを埋める巨匠の作風の絵を描き、未発見の作品として売りに出すのが彼の手口だ。

 そうして有名美術館に並んだ自分の作品がいくつもある。それが自分の作品だと名乗れないのがくやしくもある。そう言いながら、ベルトラッチは贋作の実演を続ける。

 妻ヘレーネは語る。
 彼の仕事については、自分が何かを言って変えられるものでは無いとわかっていた。それに贋作作りは、こう言っていいのかはわからないけれど彼の天職であり、自分はそれに魅了された、と。

 絵具を乾かしたキャンバスに、時代をつけるために埃をまぶし、裏からアイロンをかける作業をするベルトラッチ。
 時には絵の来歴の証拠として、絵を掛けた部屋を準備し、妻をモデルに白黒写真を撮ったこともある。

「あえて言うなら、絵は1万ユーロで売るより、50万ユーロで売ったほうが贋作と疑われない」
(ベルトラッチ)
「需要があるものは作られるべきです。美術商が贋作を期待しているというわけではないけれど、売れるものが見つかれば彼らはとても喜びます」
(ヘレーネ)

 彼らの詐欺行為のうち、後に最も大きな問題になったのは、現代アートの殿堂、ポンビドゥー・センターの元館長、シュピース氏を騙したことだった。

 わざわざシュピース夫妻を呼び出し、自身の贋作をマックス・エルンストの真作だと鑑定させたベルトラッチ。

 シュピース氏が、この鑑定の際に受け取った巨額の鑑定料を租税回避地の口座に入れていたことにより問題は複雑化。捜査時にこの情報のことをシュピース氏が話さなかったために、真相の解明が遅れ、贋作のいくつかが再び市場に出回るという事態に陥った。

 マックス・エルンストの贋作制作を実演しながらベルトラッチは語る。
「エルンストを天才とは思わない。それにエルンストのオリジナルより、私の贋作のほうが美しい。なぜなら、私は彼の作品に加えているから」

 尊大にも見えるベルトラッチ。
 しかし、カンペンドンクの大作を描いたときに、彼の贋作に綻びが生じた。
 その時代には存在しない絵具二色を使うというミス。これが彼の逮捕の決め手となった。

 「カンペンドンクの絵の中には迫りくる戦争の悲劇の予感と、それでも絵を描こうとする勇気がありました。その見地からすると、ベルトラッチの作品の背後には何もありませんでした」(ギャラリー経営者)

(ベルトラッチ本人は画家の霊を感じながら描いていると言っているので、これについては一言言いたいでしょうね……。そして絵にこめられた感情こそ絵の価値というのは全くそのとおりでしょうが、これは鑑定の際に証明しにくい……。)

 ベルトラッチの不動産は賠償のために差し押さえられることになった。

 屋敷の窓から庭を眺め、ベルトラッチは語る。

 「この生活がいつか破たんするとは感じていました。もうこんなことはやめようと。でも、ふと思ったんです。あと2作、あと2作だけ描いて、1000万ユーロを儲けてから終わらせるのも悪くはないんじゃないかって。ヴェネツィアに豪邸を買いたいと思ったんです。……そうこうするうちに、豪邸が独房に変わったんです。」

 序盤にも登場した美術史家が、ベルトラッチ作のエルンスト、そしてすぐそばの彼本人の大作を見ている。(※)

(※)二人とも同じ服なので、序盤のやりとりと同じ日に交わされた会話なのではと思われます。

 「みんなあなたの描くベルトラッチ・エルンストを観たがっていますよ。あなたが描いたエルンストは需要が高いでしょうね、またあなた自身の名前でどんな絵を売り出すかも問題です。オリジナルの絵より、贋作のほうが好まれることもあり得ます」
 ベルトラッチは特に気を悪くした風でもなくうなずく。
 「わたしも、そんな気がしています」
 目の前に強烈だが緻密な彼本人の絵がある。
 「情熱を注いだ絵なのに?」
 「情熱なんて注いでいませんよ。単純に楽しんで描きました。情熱は家族に注ぎます。私は現実主義者なんです」
 「芸術から距離を置いているということですか?」
 「市場から距離を置いているんです」
 市場の闇や落とし穴を知り抜いて、そこを40年泳ぎ渡ったベルトラッチは、そう言い放った。

 ベルトラッチは、自身のエルンスト風の絵に、サインを入れた。
 「ベルトラッチ」と。
 「サインしたからといって、贋作を防げるとは限らないし、偽造されるかどうかは私にはどうでもいいことです。ベルトラッチの絵は偽造してはいけないとでも?誰だって描けばいいんです。この私が、そんなことを気に
するわけないでしょう。」

 屋外で作業をするベルトラッチ。
 台車いっぱいの塗料が吹き上げられ、彼の姿が青い煙に包まれる……。

(完)


 ベルトラッチが、あと2作だけ描いて足を洗おうと思っていたと語るところから、青い煙に消えていくところまでが最後の見ごたえある5分です。

 それまでの45分間、妻に愛され、美しい子供たちがいて、贋作師と知りながら彼を尊敬すると言う友人たちに囲まれ、鼻歌交じりのようにサラサラと贋作を仕上げていく姿を見、妻の「需要があるものは作られるべきです。売るものがあれば彼らは喜びます」とか、ベルトラッチ本人の「オリジナルより足している分自分の絵のほうが美しい」を聞いている間は、「凄いけど、わかるような気もするけど、なんか脳がムズムズする……」という印象がぬぐえませんでした。

 いくらなんでも人を騙して(真作よりもっとうまいんだから良いでしょというのが言い分でしょうが、贋作と知った時点で相手を怒らせしまっている)、こんなに明るく充実した勝ち組ライフを満喫していいもんかという疑問が頭のどこかにあったのでしょう。

 ですが、最後の5分間、エルンストの真贋同様、自分の真作の評価を意に介さず、自分がさんざん裏をかいてきた市場を信じず、「これは楽しんで描いたもの。情熱は家族に注ぎます」と言い切る彼には、一般的とは言えないものの、確固たる、そしてどこか魅力もある、彼独自の流儀があったのだと気づかされます。

 彼の存在を煙に巻くようなラストシーンも、この取材内容を「作品」に仕上げていて粋な演出だと思いました。

 ムズムズを我慢して最後まで観て良かった。どんでん返しが効いていて、スタイリッシュな犯罪映画のような後味でした。

 以上、あらすじと感想でした。

 もし再放送情報を入手できたら、当ブログにてお知らせいたします。
 
 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 23:56| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする