2016年09月28日

おすすめ映画放送日のお知らせ(「ラストエンペラー」と「世にも怪奇な物語」)

 本日は取り急ぎご連絡まで。

 2016年10月2日(日)おすすめ映画二作品が放送されるので、それぞれ情報ページをご紹介させていただきます。

1,「世にも怪奇な物語」(イマジカTV)※10月31日深夜再放送

世にも怪奇な物語 -HDリマスター版- [Blu-ray] -
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 タモリさんのあの名物番組ではなく、エドガー・アラン・ポーの小説を下敷きにした短編映画3作からなる作品です。

 「黒馬の哭く館(監督:ロジェ・ヴァディム)」はジェーン・フォンダとピーター・フォンダ姉弟、「影を殺した男(監督:ルイ・マル)」はアラン・ドロンとブリジット・バルドー、「悪魔の首飾り(監督:フェデリコ・フェリーニ)」は、テレンス・スタンプと、監督も俳優も驚きの顔ぶれ。

 タイトルはまがまがしそうですが、グロテスク描写はほとんどなく、むしろ幻想的な作品です。ポーを原作としながら、あの重厚な不吉の気配はそのままに、豪華監督たちが奔放に、原作超えな恐怖と映像美を作り出しています。

(ポーの中では面白いとは言えない「悪魔に首をかけるな」を、テレンス・スタンプの壮絶な演技力を生かして、ある映画俳優の破滅的心象風景に作り替えた「悪魔の首飾り」は特に圧巻。)

放送予定公式情報はこちらです。

 http://www.imagica-bs.com/program/episode.php?prg_cd=CIID105126&episode_cd=0001&epg_ver_cd=06&epi_one_flg=index.php

当ブログ内、作品ご紹介記事はこちらです。よろしければ併せてお読みください。

「世にも怪奇な物語」@「悪魔の首飾り(トビーダミット)」(『アンコール!』のテレンス・スタンプ主演)
ポー短編「悪魔に首を賭けるな」(映画『世にも怪奇な物語』「悪魔の首飾り」の補足として)
「フレデリック……」誰かの呼ぶ声(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」より)
「メッツェンガーシュタイン」(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」の原作として)※ネタバレ


2,ラストエンペラー(洋画専門チャンネル・ザ・シネマ)※10月14日、17日、22日再放送

ラストエンペラー ディレクターズ・カット  [DVD] -
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 最後の清王朝皇帝、愛新覚羅溥儀の生涯を描いた大作です。
放送予定公式情報はこちらです。


http://www.thecinema.jp/detail/index.php?cinema_id=01314

 幼くして西大后により皇帝に選ばれ、広大な閉鎖空間である紫禁城から出られないまま成人した溥儀は、清王朝の滅亡、日本軍の政治的介入に翻弄されながら清王朝復活を目指そうとし、夢敗れていきます。

 一般的に、困難な人生を送った実在の人物を映画化するのは非常に難しいと思いますが(自他の思惑や歴史的背景などがからみ、綺麗に起承転結がつくものではないから)、この作品は、音楽(坂本龍一担当)や絢爛豪華な映像、溥儀の若き日とその後を交錯させた編集で、長編ながら冗長なところなく、重厚な歴史と人間のドラマに仕上げられた名作です。
(ラストシーンは史実と違うと賛否あったそうですが、あれが一番すぐれた演出だと思います。どんな場面かはぜひご覧になってみてください。)
 
 主演のジョン・ローンは、かつてダウンタウン松ちゃんに「世界三大美男の一人」と称えられた気品あふれる美しさの持ち主で、鋭いまなざし、抑制の利いた繊細な演技力で、この壮麗にして重厚な作品の世界観に説得力を与えています。

(ちなみ松ちゃん選定の残りの二美男はというと、加藤剛と俺と言って浜ちゃんにはたかれ、アラン・ドロンと訂正していたそうなので、この日世界三大美男のうちの二人がみられることになります。)
 
 以上、おすすめ映画情報でした。読んでくださってありがとうございました。



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2016年09月17日

映画「アンタッチャブル(The Untouchables)」(1987年アメリカ映画)ご紹介(なにもかもが完璧な傑作映画)

 イマジカTVをご覧になれる方へ、取り急ぎお知らせです。

 2016年9月19日(月)16:00〜18:15、アメリカの名作映画「アンタッチャブル(吹き替え版)」(1987年 アメリカ)が放送されます。

 公式HP情報は以下のとおりです。
 http://www.imagica-bs.com/program/episode.php?prg_cd=CIID165241&episode_cd=0001&epg_ver_cd=03&epi_one_flg=index.php 
アンタッチャブル スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray] -
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 禁酒法時代のシカゴ、対立勢力を抹殺し、政府、警察をも買収して、もはや実質的な市長と言われるほどの権力を持ったマフィア、アル・カポネに立ち向かった、アメリカ財務省捜査官チーム「アンタッチャブル」の戦いを、実話をもとに描いた作品です。

 なお「アンタッチャブル」とは「あざーす!」と「横山やすしの再来」のアノお笑いコンビ様ではなく、「不可侵のもの」という意味。
 (英辞郎 on Webの「Untoucheble」の意味URL……http://eow.alc.co.jp/search?q=untouchable

 もはや財務省内部の人間も、カポネに買収されているか、怖気づいているかで、本当に捜査に携われる人間がほとんどいないという状況下、何者にも惑わされぬ意思を持った者たちというニュアンスだと思われます。

 個人的に1980年〜1990年代が、アメリカ映画の豊穣期だと思っているのですが(演技が丁寧に撮れているし、ストーリーの中で、現実のシビアさと、人の心の美しい部分の両方が描かれている、そのさじ加減が絶妙)これもそういった傑作の一つです。
 
 なお、デ・ニーロ演じるカポネが仲間が集まる食事の席で、いきなり裏切り者をバッドで殴り殺すシーンや、乳母車が転がり落ちる中での階段での銃撃シーン(※1)は有名で、他の映画でパロディ化されています(※2)。

(※1)元々「戦艦ポチョムキン」という映画の一シーンを踏襲したもの
(※2)前者は三谷幸喜の「マジックアワー」、後者は「裸の銃を持つ男33 1/3」で観ることができます。

 作品のあらすじは以下のとおりです。

 マフィアたちの抗争と腐敗がはびこる町シカゴに新たに赴任してきた財務省エリオット・ネス(ケビン・コスナー)は、アル・カポネ(ロバート・デ・ニーロ)を逮捕しようと躍起になるが、捜査に失敗し、周囲の嘲笑を浴びてしまう。
 
 市民が犠牲となる事態が相次いでいても、もはやシカゴの公の権力から、本気でカポネを倒そうとする人物はいなくなっており、孤立無援のネス。

 しかし、彼は偶然出会った初老の警官マローンに気骨を感じ、彼に協力を依頼、マローンにスカウトされチームに加わった若き射撃の名手ジョージ・ストーン(アンディ・ガルシア)、財務省簿記係のオスカー・ウォーレス(チャールズ・マーティン・スミス)とともに、チームを結成し、再び捜査を開始する。

 (マローンにチームに加わってくれるように頼むネス。〈職場の人間に聞かれることを恐れて教会に呼び出している〉)
 
https://www.youtube.com/watch?v=xPZ6eaL3S2E

 今や実現不可能と思われる豪華出演陣それぞれの名演怪演と、凶悪なマフィアとの息詰まる戦いの中で生まれた男たちの友情を描いたストーリー、衣装(ジョルジォ・アルマーニ)(※3)や音楽(エンニオ・モリコーネ)(※4)に至るまで、非の打ちどころの無い作品です。

(※3)シルエット帽にコートというエレガントないでたちで銃を構えるケビン・コスナーをはじめとして、誰の目にもわかる品の良い仕立てが映像に華を添えていますが、ショーン・コネリーは自分の役柄上ありえないと思ったのか自前の服で臨んだそうです(ウィキペディアより)。
 こちらもほどほどに着古した感じやハンチング帽との組み合わせが、うなるほどに粋。かつケビン・コスナーと並ぶと対比の妙があります。(中年〜熟年男性のファッションのお手本になると思います)
 異なる価値観がどちらも映画をより素晴らしくしたという珍しい例

(※4)エンニオ・モリコーネ
 1950年代から現在に至るまで活躍している作曲家。映画音楽作品では「ニュー・シネマ・パラダイス」や本作「アンタッチャブル」などが有名。勇壮、官能、不吉、癒し、郷愁と、あらゆる印象の名曲を作り上げる巨匠。小泉元首相、葉加瀬太郎、チェリストのヨー・ヨー・マ等、有名人のファンも多い。(この流れで書くのもなんですが私も大好きです。)

 アンタッチャブルサントラは入っていないのですがアルバム視聴動画があったので張らせていただきます。この中だと8曲目の「La Califfa」がおススメです。


https://www.youtube.com/watch?v=Jjq6e1LJHxw


 見どころ満載というか、見どころ(&聴きどころ)しかない名作なので、ぜひご覧になってみてください。

 (この日は「ハリネズミホテルへようこそ」、「クリスティのフレンチミステリー ABC殺人事件(AXNミステリー)」も再放送され、個人的には好きな作品が急に大集合しています……。よろしければ当ブログ関連記事も併せてお読みください。
「クリスティのフレンチ・ミステリー「ABC殺人事件」(ドラマ独自の年の差恋愛も見どころ)
イギリスのハリネズミ愛(地球ドラマチック「ハリネズミホテルへようこそ」によせて)

 映画「アンタッチャブル」については今後もう少し詳しくご紹介させていただく予定です。

 読んでくださってありがとうございました。


(参照ページ一覧 ※すべてウィキペディア)
 ・映画「アンタッチャブル」
 ・「アル・カポネ」
 ・エリオット・ネス
posted by Palum. at 07:30| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月09日

(ネタバレ編)七年目の浮気(マリリン・モンロー主演映画)

前回に引き続き、マリリン・モンローの代表作「七年目の浮気」をご紹介させていただきます。

妻子が避暑に出かけて単身都会に取り残された生真面目な夫リチャードが、上の階に住み始めた美女への浮気心に七転八倒するというコメディです。
(※今回は、結末部までネタバレです)

美女が(半分エアコン目当てに)部屋に遊びに来た時、出来心でキスを迫ったものの、かろうじて正気に返れたリチャード。

このままではマズい、と妻を追って避暑地に行くため休暇を願い出ますが、同じく避暑に出ている女房の不在を命一杯満喫している上司は理解を示してくれず、情緒不安定になったリチャードは、駆け出しの女優でもある美女が、生放送CM中に昨日のことを視聴者に吹聴したらどうしよう(しないしない)等とのたうちまわります。

その(存在しない)映像を妻が見ているのではと、おそるおそる避暑地に電話したリチャードは、電話を受けたベビーシッターから「妻ヘレンが知人のトムや他の人々と同じ干し草を積んだ馬車でドライブに出かけたと」聞き一安心。

ところがいけすかないトムがメンバーに加わっているということを拡大解釈しはじめ、しまいには、ヘレンがトムと干し草の上で情熱的な抱擁を交わす場面を想像してしまいます。(「他の人々」はいずこに。)

「上等だ、そっちがその気なら!(←???)」と怒りにかられたリチャードは美女を映画に誘い出します。

一方、美女は、夏の間だけ避暑に出かけた上の階の住人の留守番を引き受けたものの、エアコンのないその部屋にほとほと困っており、喜んで誘いについてきます。

(マリリン モンローの代名詞ともいえる白いドレスのスカートが舞い上がるシーンはこの帰路の一コマです。)



部屋に戻ろうとした美女を、少し涼んでいかない?と自宅に呼び(エアコン最強)、いいムードに持ち込もうとするリチャード。

しかし美女は聞いちゃあおらず、上の階は暑すぎるから、今晩はここに泊めてほしいと頼み込んできます。

翌朝、結局ソファーに寝ているリチャード。

リチャードが明け渡したベッドでスヤスヤ寝ている美女に朝ご飯を作ってあげようとしますが、こんなところを妻に見られたら大変だ、と思ったのをきっかけに、また例の妄想癖が頭をもたげ、なぜか急に避暑地から舞い戻ってきた妻に有無を言わさず銃で撃たれて息も絶え絶えという気分に陥ります。
(余談ですが、リチャードが使っている可愛らしい緑色のガラス製オレンジ絞り器〈ジューサー〉はおそらくファイヤーキング、今ではプレミアがついている人気ヴィンテージブランドです。)

一人でヨロヨロと末期のタバコを探している瀕死の(つもりの)リチャードに、「何をしているの?」と尋ねる美女(本当に何をしているんだ)。

我に返ったリチャードは、どうも自分は想像がたくましすぎるという欠点があって……と弁解しながら、実際のところは、妻は君を見たところで疑いもしないだろう、シャワーを浴びて出てきた君を見ても、配管工だと思うだろうね、と言います。

その場面の動画です。



こんな冴えない中年男を気に入る女がいるわけがない。だから疑わないし嫉妬なんかしない。

前にパーティーで女性にぶつかって服にキスマークをつけて帰ってきたときも、クランベリーソースのシミと勘違いしただけだった。

そう肩をすくめるリチャードに、それまでいつもふわふわと笑っていた美女がまじめな顔になりました。
「ひどいわ」

実際、美人は自分など素通りだから、と、苦笑するリチャードに対し、美女は「あなたは女性をみくびっているわ(You think every girl's a dope.)」(※dope=口語だと「まぬけ」の意味)、と、憤慨して、リチャードに言い聞かせます。

パーティーでよくいる、全身キザな恰好をした、女なんかすぐに落とせると思っている自信過剰な男、あんなのに女は落ちない。

(以下、セリフを引用、私なりに直訳させていただきましたので、動画と併せてご参照ください。(上記動画1:25秒頃より)

But there's another guy in the room, way over in the corner. Maybe he's kind of nervous and shy, perspiring a little.

でもその部屋に別の男性がいる、部屋の片隅に。緊張して恥ずかしがりやで、少し汗をかきながら。

First, you look past him, but then you sort of sense, he's gentle and kind and worried, and he'll be tender with you, nice and sweet. That's what's really exciting!

最初は彼のことを見過ごしてしまう。でも彼は穏やかで親切でシャイで、優しくしてくれる、いい人、素敵な人。そういう人にこそ、女はときめくの!

(手持ちのDVD字幕版では「He’s gentle……」以下が、「男の本当の優しさがわかるの、女が求めるのはこれよ」となっていて、素敵な訳だなあと思いました……)

私があなたの妻ならとてもとても嫉妬するわ。

そういうと彼女はリチャードによりそい、そっとキスをします。

そして、「あなたは最高よ(I think you're just elegant.)」と微笑みます。

うろたえながら「ありがとう」とつぶやくリチャード。

そこにドアベルが鳴り、入ってきたのは愛する妻ヘレンを奪おうとした(とリチャードが妄想した)トム。
(美女が、「あんなのには女は落ちない」と言ったそのままのキザ男の恰好。)

「いったん戻ってきたけれどすぐ避暑地に戻る。息子さんが家に忘れたカヌーのカイを持ってきてほしいそうだから預かっていくよ」と話すトム。

しかし、美女の言葉で奮い立っていたリチャードは、彼の言葉に2%程度しか耳を貸さずに、

カイは君になど託さない、自分で持っていく、妻とは離婚しないぞ!妻は私を愛してる!なぜなら私は穏やかで親切で優しいからだ!!

そう高らかに宣言してトムを殴り飛ばします。(トム、とんだ災難)

トムをつまみだすと、カイを手に避暑地へ向かおうとするリチャード。

美女に、この部屋は好きに使っていい。エアコンも、と言うと、美女は「奥様に伝言を」と彼を呼び止めます。

そして、もう一度彼にキス。

無言で唇についた口紅をぬぐおうとしたリチャードを、美女が優しくおしとどめ、こうささやきます。

「もし奥様がそれ(キスマーク)をクランベリーソースだと思ったら、彼女に『頭にサクランボの種が入っているのね』と言って(If she thinks that's cranberry sauce, tell her she's got cherry pits in her head.)」

(「tell her she's got cherry pits in her head」の字幕意訳としては、過去「『おばかさんね』と言って」というのがありました。コレが一番モンローの可愛いしゃべり方に合ってると思います。。)

有頂天になってカイを片手に靴下で飛び出していくリチャードに、窓から笑顔で靴を投げ渡す美女。

靴が脱げたり、荷物を散らばせたり、にぎやかに妻のもとへと飛んでいくリチャード。

(完)

女が本当に素敵だと思うのは、目立たなくてもとても優しい男の人。
あなたは最高よ。

こんな美しいひとに、あんな風にいわれたらもーたまんないっっ!と、シンプルにウットリもしますし、その甘くかわいらしいながらも、まじめで温かな情のこもった語りに胸を打たれつつ、それは波乱の日々と苦しい恋に生きたモンローの、心底からの思いだったのでは、そう言う人を探し続けていたのでは、という印象も抱く、かすかにせつなさの漂う名場面です。

モンロー演じる美女も、妄想たくましいけどなんか憎めないリチャードも魅力に溢れた、何度観ても笑えて愛すべき名作です。是非ご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

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2016年08月08日

七年目の浮気(マリリン モンロー主演映画)


本日は夏にちなんだ映画をご紹介いたします。

「七年目の浮気」(1955年 アメリカ)

七年目の浮気(特別編) [DVD] -
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妻子を避暑に送り出して束の間の一人暮らしをはじめた中年男リチャード(トム・イーウェル)が、上の階に越してきた美女(マリリン・モンロー〈役名無し〉)への浮気心に振り回されるという物語です。

タイトルやあらすじからもっと生々しい修羅場な展開かと思いきや(当時としては相当スキャンダラスな作品だったそうですが)、リチャードが妻への愛と美女へのヨコシマな思いに右往左往する姿や、驚くばかりにたくましい妄想癖が笑えるコメディです。

既婚者とはいえ、このうろたえっぷりや、一人でどんどん思いこむ姿は、今となるとむしろ独身非モテ男子の愛嬌と悲哀を思わせます。
(リチャードが美女の無邪気な色気に動揺する姿が、Wエンジンの「惚れてまうやろー!!」っぽい)

そしてマリリン・モンロー!

「ブロンドグラマーで白いスカートがめくれている美女」というイメージしかなかったのですが、この映画で「可愛らしくてちょっと天然で、でもとても温かい」というキャラクターを見事に演じ切っています。

波乱の人生を送り謎の死を遂げた人で、実際この撮影中も野球界の大スター、ジョー・ディマジオとの離婚を経験、精神的にも非常に不安定だったそうですが、作品の中の彼女は、まさしく男の理想といってもいいほどに明るく魅力的でした。

【あらすじ】
ニューヨークでは、夏になると妻子は夫を置いて数週間避暑地に繰り出す。

その間、夫たちは蒸し暑いニューヨークで仕事に励むわけだが、駅で見送りをして踵をかえす男たちの顔は案外晴れやか。これからしばらくの間、独身気分であれこれアソブ気満々である。

そんな夫たちに一瞬まぎれこみそうになりながらも、踏みとどまり、「俺はああはならない(No, not me.)」と呟くリチャード。

美しいが少々彼をみくびっている妻と、憎まれ口真っ盛りの息子を持つ、出版社勤務の中年男。

妻の言いつけどおり、酒もタバコも断ち、菜食主義のレストランに通って清く正しく暮らすのだ……。

そう思いながら帰ってきたその日、彼は目の覚めるようなブロンド美女に出くわす。



リチャードの妻子と同じく避暑に出かけた上の階の住人に代わって、しばらくその部屋に住むことになったとのこと。

男なら100人中1億人が鼻の下を伸ばすような美女が天井を隔てて上に……。

絶好のチャンス、いや危機的状況にリチャードの心は激しく乱れるが、上の階から鉢植えが落ちてくるというハプニングをきっかけに、ついその美女を部屋に呼んでしまう……。

 【見どころ】

この作品、「夏」がストーリーを大きく左右しているところが面白いです。

本来、カタブツを心がけるリチャードは家族と波風の無い日々を送っていたはずですが、暑いから妻子が不在となった。

そして、2階の住人もいなくなり、入れ代わりに若い美女が一人で暮らすことになった。

さらに、いかにも遊び慣れていなさそうなリチャードが、ごく自然に美女と親しくなるのは、実は彼の家にクーラーがあるからです。すごく即物的な理由です。

(ちなみに有名な白いスカートがめくれるシーンも、暑いから喜んで地下鉄通過時に吹き出す排気口からの風を受けているという状況です。)

美女の住む部屋にはクーラーが無いのでリチャードはうちに涼みに来ない?と、言えてしまうし、美女も彼の家に長居する。

当然、美女としては部屋に行くことイコール「そういうことになっていいわよ」ではないのですが、彼女も相当天然無邪気な性格で、呼ばれたら露出度の高い服でニコニコ笑って来てしまい、とりあえず、「部屋に二人っきり……」という事態になるもんだから、リチャードは、これはイケルと思い込んでしまうわけです。
 
そういう雰囲気に持っていこうとロマンチックな音楽(ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番)を準備して待ち構えるリチャード。

妄想の中では彼自身が(おそらく実際には持ってないであろうツヤツヤの赤いガウンを着て)それを自ら流麗に演奏し、セクシーなドレスの美女が、
「鳥肌が立つわ……この曲を聴くと自分が誰で何をしているのかもわからなくなるの……」と身もだえします。
(それにしても、モテに関して都合の良い妄想をたくましくしている人を見ると妙にいとしく思うのはなぜだろう。同朋愛だろうか。)



しかし現実はそうはうまくいかず、美女はラフマニノフ(レコード)そっちのけで、「チョップスティック(日本の「猫踏んじゃった」的な位置づけの曲の模様)」をリチャードと一緒に弾いて大喜びをしています。

それでも隣に美女が座って笑っているのを見て、村々してきたリチャードは、思わず美女にキスを迫ってしまい、ピアノの椅子から転げ落ちて正気に返ります。
 
反省しきりのリチャード、しかし、美女はこんな事態には慣れっこで、さほど怒りません。

むしろ、平謝りして、彼女を部屋に帰そうとするリチャードに、彼女は振り返って言います。
「立派な方ね」

リチャードは自分をケダモノだと激しく呪いますが、逆に美女はこの件をきっかけにリチャードに好感を持ったようです。

引き続き下心に煩悶しているというのに、それを知ってか知らずか、美女はリチャードと親しくなっていきます。

……二人の関係がどうなるかについてはまた改めて「ネタバレ編」で書かせていただきますが、もう一つ面白かったのは、リチャードが自分の暴走する浮気心を持て余して精神科医に泣きつくところです。

七年目の浮気2.jpg

医師は本の出版の打ち合わせに来たのですが、仕事が多忙らしく、分刻みで動いている医師と、そそくさと仕事部屋の長椅子に横たわって手馴れた様子で即席カウンセリングを受けているリチャードの姿から、既に1950年代、アメリカではカウンセリングがメジャーになっていたことがうかがえます。

ここから先は推測ですが、第二次大戦時、ドイツから、ユダヤ系知識人が多数アメリカに亡命し、その中には多くの心理学者が含まれていたそうですから、60年前にメンタルヘルスに対する意識がここまで発達しているのは、そうした歴史的背景に基づいているのかもしれません。

アメリカでのカウンセリングの浸透ぶりをうかがわせる一例として、スヌーピーのキャラクタールーシーの精神分析も挙げられます。
露店的な場所で開業しており(有料)、スヌーピーの飼い主チャーリーブラウンがしょっちゅうカウンセリングを受けている。
(なお、そのアドバイスは彼女の性格を反映して非常にストレートかつ明快で、なるほど悩んでいるのが馬鹿らしくなるという意味では優秀と言えなくもない。)

さて、ちょっと脱線してしまいましたが、『七年目の浮気』、究極の「真夏の男の愛の夢」としても、粋で愛すべきドラマとしてもとても面白いので、ぜひともご覧になってみてください。

(女性も是非!マリリン・モンローの美しさと可愛さ、そしてラストシーンの魅力は必見です。)

次回は、ラストシーンの台詞について、ネタバレ編として書かせていただきます。

読んでくださってありがとうございました。
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2016年07月30日

映画「クレアモントホテル」(イギリス/アメリカ 2005年制作)ご紹介


クレアモントホテル [DVD] -
クレアモントホテル [DVD] -

明日(2016年7月30日〈土〉午前8時〜)イマジカTVでイギリスを舞台にした素敵な映画が放送されます。(8月8日〈月〉14:30より再放送)
(イマジカTV公式情報はコチラ


「クレアモントホテル(原題「Mrs Palfrey At The Claremont」)」。

ロンドンのホテルに暮らすことになった老婦人と、物書き志望の青年の心の交流を描いた作品です。

「年を取ったらホテル暮らし」

憧れる響きですが、実際の暮らしはどのようなものかをこの映画で見ることができます。
そして、偶然出会った老婦人と青年との、名前をつけるのが難しいけれど温かな関係が印象に残ります。

原作は小説家エリザベス・テイラー(あの女優さんとは別の方です)の1970年代の同名小説、記憶がおぼろげで申し訳ないんですが、かなり忠実に映画化されていたと思います。元ネタが良ければ、この映画みたいにそれを大事に使えばいいと思うんだけどなー(←なんか他の作品で色々不満を抱いている模様)

クレアモントホテル (集英社文庫) -
クレアモントホテル (集英社文庫) -

映画の予告動画です。




以下、あらすじと見どころをご紹介させていただきます。

(あらすじ)
夫に先立たれたパルフリー夫人は、自立した生活をするために、ロンドンのホテルに引っ越してくる。
(海外には、いわゆる旅行者向け宿ではなく、長期滞在に対応する「retirement hotel(退職〈隠居〉者向けホテル)」というものがあるそうです。)

しかし、ホテルは思って以上に質素、既に同じ目的で長期滞在しているエキセントリックな人々や、愛想の悪い従業員にはどうも馴染めず……と、パルフリー夫人の期待や気合はさっそく裏切られてしまう。

ホテルの滞在者たちに、連れてきてほしいとせっつかれ、ロンドンにいる孫にも連絡をとってみるが、そもそも電話からしてつながらない始末。

独りロンドンの町を歩いていたパルフリー夫人はつまづいて転んでしまう。

その時、近くの建物から出てきた青年ルードが、「お手伝いさせてください」とパルフリー夫人に駆け寄ってきた。

ルードの部屋でケガを治療してもらったことをきっかけに、二人は意気投合。
パルフリー夫人はルードに、孫のふりをして、ホテルの皆に挨拶してほしいと頼み込む。

ハンサムなルードの登場に目を見張るホテルの人々。

ルードに感謝したパルフリー夫人は、以来、ルードを気にかけ、ルードもまた、優しくチャーミングでしっかり者のパルフリー夫人に、自分の実の母親には無い、女性の理想を見て、彼女を慕うようになる。

(見どころ)
友情、家族愛、そして恋心、そのどれでもありうるような感情が、魅力的な二人の確かな演技で表現されています

個人的な話になりますが、パルフリー夫人のくりくりして愛嬌があるけれど、はっきりと気丈さがみてとれる目と、聞いてる側が焦るほど人生を達観した台詞がなんか私の祖母に似ていて、それだけでポイント高くなってしまう……。
(あんなに毎日気合いれてオシャレしてなかったっつーか、よく髪放置爆発させてたけど、あと、あんなにウィットに富んだ喋り方じゃなく、率直すぎて過激発言連発だったけど、でも、面白くていい祖母だったんです。)

女性にはルードのハンサムっぷりを観ていただきたいです。

彼の登場シーンは、半地下からなんですが、パルフリー夫人が道で倒れた直後、階段を駆け上がってきて姿を現した瞬間からもうハンサム。転んだ直後にあんな綺麗な異性がいきなり地下から出てきて助け起こされたら、転んだことよりびっくりすると思う……。
「乙女の愛の夢(※ジャイアン作詞作曲の歌のタイトル〈なぜここに挟む〉)」全開シーンで、相手が同年代の女性だったら、都合の良い少女漫画か恋愛ゲームかと総スカン食らいそうですが、パルフリー夫人なのでなんとなくセーフ。

パルフリー夫人もそんな美しいルードに亡き夫の思い出を託して、ほのかな感情を抱いていると思われる場面がいくつかありますが、パルフリー夫人の好きな映画(「逢引き(Brief Encounter)」)を観てみようと店に入ったルードは、その時言葉を交わした女の子と恋に落ちます。

ルードと、その女の子から慕われ、一抹の寂しさを感じながらもルードの恋を応援するパルフリー夫人。

そうやって夫人とルードの穏やかな愛情の季節は少しずつ移り変わっていきます……。

派手さは無いけれど、チャーミングで味わい深い映画です。よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

(参照URL)
Wikipedia記事日本語版
同、英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Mrs._Palfrey_at_the_Claremont
(「Rotten Tomatoes」レビュー一覧ページ)https://www.rottentomatoes.com/m/mrs_palfrey_at_the_claremont/
(「Allmovie」英語あらすじ紹介ページ Mark Deming筆)http://www.allmovie.com/movie/v338298
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2014年08月24日

「星の旅人たち」(マーティン・シーン主演 アメリカ映画)

 イマジカBSチャンネルがご覧になれる方限定ですが、2014年8月25日21時から、大変素敵な映画が放映されるのでご紹介させていただきます。

 「星の旅人たち」(2010年アメリカ映画)

星の旅人たち


 巡礼の途中で事故死した息子ダニエルに代わって、旅を続けようとする初老の父親トムと、彼が旅の途中で出会った人々の物語です。

 イマジカBSの公式紹介ページはコチラ


 主演は演技派で知られるマーティン・シーン(チャーリー・シーンの父)。
 監督は彼の長男エミリオ・エステヴェス。
 監督は映画の中で息子ダニエルも演じており、父子共演となっています。

 スペインのサンティアゴ・デ・コンポステラ(聖ヤコブ大聖堂)へと続く巡礼路の、厳しくも雄大な風景と、道を歩む人々、その地に生きる人々、それぞれの思い、そして父と息子の絆が描かれています。

「シューキョーモノはちょっと」などと食わず嫌いせずに是非ごらんください。「何教を信じるように」的な押し付けはどこにもありません。

 人生を生きる私たちは皆旅人であり、痛みや願いを抱えて歩き続けている。この人たちもまたそういう旅の途中なのだ。

 ただ、それだけ思ってご覧になれば、誰の心にも届く良さを持った作品です。

【序盤あらすじ】

 カリフォルニアの眼科医トムのもとに、一人息子のダニエルの訃報が届く。

 ダニエルはサンティアゴ巡礼をする予定だったが、旅のはじまり、フランスのピレネー山脈で嵐に遭い、事故死したのだった。

 スペインに駆けつけたトムは、ダニエルの遺体と対面し、遺品のアルバムを見つける。

世界各国を旅する息子の姿に涙するトム。

 
約束されたエリートコースから外れ、旅に生きていたダニエル。

トムはそんな息子の生き方を認めることができず、二人の間には溝が生まれていた。

 互いに愛していたのに、彼が何を思ってサンティアゴ巡礼をしようとしたのか、何を見たかったのかが今の自分にはわからない。

 トムは、ダニエルの遺灰とともに、自分が巡礼の旅に出ることを決意する。

 トムにダニエルの死を知らせたフランス人の警官は、トムの旅を止めようとする。
 若くは無く、長距離(約800〜900q、徒歩で約1ヶ月の道のり)を歩く訓練もしていない、装備も無い、とても無理だと。

 しかし、トムは首を横に振る。息子の装備を使う。必ずたどりついて見せる。

 警官は、トムの決意が固いことを見て取ると、彼に巡礼についてのアドバイスをした。

「あなたも巡礼に出たことが?」
「あります」

 私も息子を亡くしました。
 トムと同年代の警官は、静かにそう言って、トムの目を見た。

  銀色の箱にダニエルの遺灰を詰め、宿を出たトムは、つぶやく。
 「さあ、行こう」

 夕日に染まる山道にさしかかったトムは、ある場所で足を止める。

 ここでダニエルは命を落としたのだ。

 ダニエルの亡き骸が見つかった場所ははっきりとわかった。

 そこには、花と、枝で作った小さな十字架が無数に置かれていたのだ。

 見知らぬ巡礼者たちのとむらいの側に膝をつき、トムはその場所に、少しだけ遺灰をさらさらとまいた。

 顔を上げたトム。

 その目に、巡礼路に立つダニエルの姿が見えた。

 自分の面差しを継いだ息子が、笑顔でトムに手を振り、やがて先に立って道を歩き出す。

 立ち上がったトムは、誰もいない道を、ダニエルのいる道を、またゆっくりと歩きだした。


【見どころ@】マーティン・シーンの演技力

 若い頃はやや華奢で、精悍な顔立ちに憂いのある大きなまなざしが魅力的だったマーティン・シーン。
(刑事コロンボ「毒のある花」の被害者役で、短いながら愛憎入り混じる巧みかつ色気漂う演技をしていました。犯人役の美女ヴェラ・マイルズともども、実に絵になっていたんで「コロンボ史上最もセクシーな被害者」と銘打って過去記事書かせていただきました。)

 すっかり貫録がついて、銀髪も皺も味わい深い、素晴らしいベテラン俳優さんになられました。

 彼の演技、表情を長時間丁寧に映像に収めている、それだけでも非常に意義深い作品です。

 以前映画「優しい嘘と贈り物」の記事でも書かせていただきましたが、ますます演技に磨きがかかった熟年以降の名優を主役に据えた作品が、残念なことに昨今滅多に出てこないからです。

やさしい嘘と贈り物 スペシャル・エディション


(日本のがロコツにそうだけど、若くてキレイな人が主役じゃないとお客さんの数は呼び込めないという潮流がありますからね……)

 マーティン・シーンはエミリオ・エステヴェスに「自分のキャリアの中でも貴重な作品になる」と感謝を述べたそうですが、それは「パパのお世辞」ではなく、実際エミリオ監督は、マーティン・シーンの実力と人柄の魅力を最大限に発揮できる作品に仕上げています。
 


【見どころA】マーティン・シーンとエミリオ・エステヴェスの父子共演

 この二人、びっくりするほど顔立ちが似ています。

 マーティン・シーンのほうが年をとっても男性的で、かつて美青年で評判だったエミリオはだいぶ雰囲気がまるくなって、温厚そうですが……。

 劇中でダニエルが黄色い登山ウェア着ているのは、父との見分けをつけやすくするためではと思うほどです。
 
 旅のおりおりに、トムは亡きダニエルの姿を見つけますが、このいかにも父子の顔をした二人が見つめ合い、既にこの世にいない息子は明るく温かく笑いかけ、遺された父は遠いまなざしをする……。

 それが、どんな展開よりも台詞回しよりも心に焼付きます。

【見どころB】脇役の力

 とにかく出ている人みんな味がある。

 トムは旅の途中で3人の巡礼者と行動を共にするようになります。

 ダイエット目的で巡礼中(笑)のオランダ人ヨルト。
(しかし痩せる気あんのかというほど各地で郷土料理に舌鼓を打ってお酒ガブ飲みしてる。基本人が良いけれど、とてもおしゃべり)

 なぜか男性を目の敵にし、とげのある発言ばかりするカナダ人サラ。(のちにその理由が明らかになります。)

 エキセントリックな言動の旅行ライター、アイルランド人ジャック。(トムの巡礼の理由を知り、「ダントツに感動的なエピソード」と記事にしようとして〈しかもそのまんまの台詞をトムに言ってしまい【汗】〉トムの怒りを買う〈あたり前〉)

 最初はたまたま一緒に歩いているだけといった感じの4人でしたが、旅の中で、それぞれの事情が垣間見え、思いやりと結束が生まれていきます。

 そして、彼ら同行者だけでなく、宿の人たちや、道すがらほんの一瞬言葉を交わすその他の巡礼者たちにいたるまで、台詞も表情も味わい深い。
 

 個人的におすすめなのは、トムを送り出してくれる物静かなフランス人警官。
 

 そして、ダニエルの遺灰を持ってくる初老の男性です。

 後者は台詞がまったくと言っていいほど無いのですが、トムの側に来るとき、そして去る時、そっと彼を見つめるそのまなざしに、いたましく思う気持ちと同情がにじみでています。
 一瞬なのですが見事な演技なのでご注目ください。

【見どころC】風景と音楽

 地平線、乾燥し、果てなく、青を通り越して黒いほどの空、石造りの時の止まったような村々といった、美しい景色が堪能できます。また、息を飲むほど壮麗なサンティアゴ大聖堂の威容も必見。

 音楽も、異国情緒と郷愁のいりまじるような、温もりのあるものが多くお勧めです。

 特に幕開け、女性の声で何かを抱きしめるように静かに歌われている曲がとても美しかったです。

 以上になります。9月になっても何度か再放送されるようなので、機会をとらえてご覧になってみてください。
イマジカBS放送予定は以下の通りです。
 08月25日(月) 21:00〜23:15
 09月02日(火) 16:30〜18:45
 09月11日(木) 05:00〜07:15
 09月21日(日) 07:45〜10:00



 その時期には、この作品の結末部についてももう少し書かせていただけたらと思っております。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 11:35| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月18日

フィールドオブドリームス(1989年アメリカ映画)

取り急ぎご連絡まで。
NHKBSがご覧になれる方限定ですが、明日5月19日(月)午後9:00〜10:47  BSプレミアムで、ケビン・コスナー主演の映画「フィールドオブドリームス」が放送されます。
番組紹介ページ
http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/calendar.html#d20140519_1
MOVIE CLIPS動画


 ある日の黄昏時、自分のトウモロコシ畑で謎の声を聞いた農夫レイ(ケビン・コスナー)。
「それを作れば、彼はやってくる」
 声の正体は?
 それとは?
 彼とは?
 戸惑っていたレイだが、やがて心に浮かんできたものを現実にしようと動き出す。
 それは、トウモロコシ畑の中の野球場。
 そこに立つ往年の名選手、シューレス・ジョー。
 八百長騒動に巻き込まれて野球ができなくなった悲運の名選手。
 もうこの世にいない。

 この途方もない夢をかなえるために大事なトウモロコシ畑の一部を潰す決断をするレイ。
 「あなたがそうしたいと思うならそうするべきよ」
 妻アニーのその言葉に背中を押されて。
 みんなに頭がどうかしたのではと言われながら野球場を作るレイ。
 そして、「彼」がやってくる日を心待ちにするが……。

 美しく果てしなく広がり風に揺れるトウモロコシ畑の緑、アメリカと共にありつづけた野球と人々の魂の底からの結びつき。夫婦、親子の情愛と絆。

 当ブログで「1980年後半から1990年代のアメリカ映像芸術がぬくもりとせつなさがあり最高」としょっちゅう書かせていただいておりますが、これもそれです。
 個人的な思い出としては、私が映像を観て泣いた二番目の作品で、「趣味、映画鑑賞」と言い出した最初の作品でもあります。人生最良の映画ベスト3に入るな……。
 登場人物がみんなとても魅力的で、演技も素晴らしいですが、中でも必見は「ムーンライト・グラハム(一瞬しか出場できずに現役を去った選手)」のその後を演じた往年の名優バート・ランカスターです。(代表作「大列車作戦」「山猫」など)



 かつての夢を心に秘めながら、積み重ねてきた日々を愛する穏やかな銀髪紳士の微笑。
 人の表情というものにあんなに心を動かされたのはあれがはじめてでした。
 音楽も美しいですし、名場面だらけというか名場面しかないような素晴らしい作品です。
 是非ご覧になってみてください。
 いずれこちらのブログでこの作品についてもう少し詳しく書かせていただきたいと思います。
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 21:44| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月18日

(台詞編2)「モロマジ!自殺電話」(アメリカのホームドラマ「ファミリータイズ(Family ties)」より)

先日から、マイケル・J・フォックスの出世作であるアメリカのホームコメディドラマ「ファミリータイズ」のおススメ回「モロマジ!自殺電話」について書かせていただいております。

 当ブログ、ファミリータイズ関連過去記事は以下の通りです。
 1,(ご紹介編)「ファミリータイズ」(ドラマ概要と登場人物ご紹介)
 2,(ご紹介編)「モロマジ!自殺電話」
 3,(ネタバレ編)「モロマジ!自殺電話」
 4,(台詞編1)「雲の向こうには銀の光」(「モロマジ!自殺電話」)
 
本日は引き続きこの作品の名台詞についていくつかご紹介いたします。
なお一応つけさせていただいた僕的直訳は話半分に見守る程度にしてあげてください(汗)


 大学の人文科学単位取得のためにアレックス(マイケル・J・フォックス)が、ライバルのジェームスと共に学内電話相談研修をしたときに、自殺をほのめかす電話がかかってくるというお話です。

@買い物から帰ってきたジェームス、「帰ってきてくれて良かった(半泣)」……とアレックス(自殺電話にテンパって保留中)にすがりつかれながらの一言
(ジェームス)You must have been very thirsty.
 (直訳)君はすごくノドが渇いていたみたいだな
 (字幕)ノドがカラカラ?
 ・must have been……〜だったに違いない
http://ejje.weblio.jp/content/must+have+been

A自殺電話がかかってきたことを告げるアレックスとそれを聞いたジェームスのやりとり
(ジェームス)take it easy. What did you tell him?
(直訳)落ち着け。彼になんて言ったんだ?
・Take it easy……気楽にやる、慌てない
http://ejje.weblio.jp/content/Take+it+easy
(アレックス〈言いにくそうに〉)……I put him on hold.
(直訳)……保留にした。
・put 目的語 on hold……(目的語を)保留にする
http://ejje.weblio.jp/content/put+on+hold

B大慌てで電話に出たジェームスの一言
Hello, Thank you for calling the Hot Line
(直訳)やあ、ホットラインにお電話ありがとう(※電話に出るときによく使う言い回し)

C相談者ビルを落ち着かせようとしたジェームスの一言
Let’s just try to be rational. What’s the problem?
(直訳)理性的になろう。何が(君の)問題だ?
・rational……理性のある・道理をわきまえた
http://ejje.weblio.jp/content/rational

D「生きる意味についてずっと考えていた」と言うビルに対するアレックスの質問
How’s it going?
(直訳)調子はどう?
(ジェームス、アレックスをにらみつける)
How is it going……具合はいかが、お変わりありませんか
http://ejje.weblio.jp/content/How+is+it+going

E気晴らしに映画を観たらとうっかり007の「死ぬのは奴らだ」を勧めてしまったアレックスに対し、ジェームス
Nice going, Alex.
(直訳)たいしたもんだなアレックス
(字幕)お前はアホか(←笑)
・Nice going……うまい、たいしたものだ(皮肉にも使われる)
http://eow.alc.co.jp/search?q=nice+going

Fジェームスの皮肉にカチンときたアレックス
Do you think you could do better?
(直訳)自分ならもっとうまくやれると思っているのか?

この後、到底任せていられないから交代しようとしたジェームスに対し、負けず嫌いのアレックスがやっぱり自分が答えると言い張り、電話を奪い合っているうちに、間違えて電話を切ってしまいます……(怖)。

幸い再度ビルは電話をかけてきて、二人はなんとか彼を説得しようとします。

ここからの台詞は次回記事でご紹介させていただきます。よろしければまた見にいらしてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 22:31| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月17日

(台詞編1)「雲の向こうには銀の光(Every cloud has a silver lining)」(「モロマジ!自殺電話「ファミリータイズ(Family ties)」(アメリカのホームドラマ)より」

先日、マイケル・J・フォックスの出世作であるアメリカのホームコメディドラマ「ファミリータイズ(1982〜89年放映・アメリカ)」のおススメ回「モロマジ!自殺電話」の前半部あらすじをご紹介させていただきました。

ファミリー・タイズ 赤ちゃんにジェラシー 編 <トク選BOX>

 当ブログ、ファミリータイズ関連過去記事は以下の通りです。
 1,(ご紹介編)「ファミリータイズ」(ドラマ概要と登場人物ご紹介)
 2,(ご紹介編)「モロマジ!自殺電話」
 3,(ネタバレ編)「モロマジ!自殺電話」

 大学の人文科学単位取得のためにアレックス(マイケル・J・フォックス)が、ライバルのジェームスと共に学内電話相談研修をしたときに、自殺をほのめかす電話がかかってくるというお話です。

(以下ネタバレですので大丈夫な方だけお読みください。)



ドラマの中で相談者ビルを励まして「生きる喜びを考えろ」と言うジェームスに、ビルは、
「『雲の向こうには銀の光(Every cloud has a silver lining)』って奴だろ」
 と言います。
 これは、英語のことわざで、直訳は「すべての雲には銀の裏地がついている」、意味は「憂いの反面には喜びがある」というものだそうです。
Weblio辞書の訳
http://ejje.weblio.jp/content/every+cloud+has+a+silver+lining
「英語ことわざ教訓辞典」解説
http://www.wa.commufa.jp/~anknak/kyoukun058.htm

 この「教訓辞典」の解説で知ったのですが、このことわざ、映画「風とともに去りぬ」の最後の台詞になっているそうです。

風と共に去りぬ

 主人公スカーレットが、運命の男バトラーが彼女の元を去ってしまった後につぶやく台詞がこれです。

 そして、日本の字幕ではこれを「明日には明日の風が吹く」と大胆に意訳したそうです。

 「I love you」を「月がきれいですね」と訳したという漱石級に見事ですね。

 ところで、このジェームスとビルのやりとりを聞いていたアレックスは、「銀は今週(市場で)値を下げている。『亜鉛の光』ほうが良い」と、彼らしい(お金もうけ命)修正を加え、ビルは死にたいと思いつつも思わず笑ってしまいますが、二人の熱意に次第に心を開き、最後にはこう言います。
「『雲の向こうには亜鉛の光』か?(Do you really think every cloud has a zinc lining?)」

 自殺を思いとどまったビルは二人に感謝して電話を切ります。

次回記事(本日中に更新いたします)ではこの回のその他の台詞の英語についてご紹介いたします。よろしければまたご覧になってください。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 07:30| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月13日

(ネタバレ編)「モロマジ!自殺電話」「ファミリータイズ(Family ties)」(アメリカのホームドラマ)

先日、マイケル・J・フォックスの出世作であるアメリカのホームコメディドラマ「ファミリータイズ(1982〜89年放映・アメリカ)」のおススメ回「モロマジ!自殺電話」の前半部あらすじをご紹介させていただきました。(余談だがなんか邦題のノリがいかにも80年代……)
 当ブログ、ファミリータイズ関連過去記事は以下の通りです。
 1,(ご紹介編)「ファミリータイズ」(ドラマ概要と登場人物ご紹介)
 2,(ご紹介編)「モロマジ!自殺電話」

(前半部あらすじ)
 大学の人文科学単位取得のためにやる気ゼロ(お金儲けに関わる勉強じゃないから)のアレックス(マイケル・J・フォックス)が、ライバルのジェームスと共に学内電話相談研修に参加することに。

 しかし、研修初日、指導教官たちが来られないために中止となる。
 
 喜んで帰る直前のアレックスにかかってくた電話の相談内容は自殺予告。

 思わず保留にしてしまった(←酷)アレックスは、ボランティア経験豊富なジェームス(しかし今は買い物に行っていて留守)を震える声で呼ぶ……。

 (以下結末部までのあらすじです。ネタバレですのでご了承ください。)

 「コーラを買ってきたぞ!」
 さっそうと戻ってきたジェームスに(普段互いに憎まれ口しかきいていないのに)ひしと抱きつくアレックス。
「よかった。君が戻ってきてくれた…神様ありがとう……(震)」
「のどがカラカラだったのか?」

 違う、自殺志望の相談者から電話がかかってきた。
 そう聞いたジェームスは真顔になり、
「落ち着け、何て言った?」
 アレックス、言いにくそうに一言。
「……待たせてある……」
 何だって!?電話に駆け寄るジェームス。
「ハーイ、ホットラインです。電話をどうも」(手馴れてるだけあって、ラジオDJみたいなもっそい良い声〈しかし作り声〉)
「……誰だ?」(律儀に待っててくれた相談者ビル)
「(コードネーム)Gidget(お転婆※)だ」
(※)
(【補足】ギジェット……アメリカで人気だったドラマの主人公のあだ名、girlとmidget(小さい人)を併せた造語〈「スペースアルク英辞郎解説」より〉〈それにしてもなんでまた……。〉)
 あんまり頼りになりそうにない名前だな、と、不信感を抱きつつも(そりゃそうだ)、「ガンジー」と「お転婆」相手に、悩み相談を始めるビル。

 しかし、「生きる意味がわからない」と語る彼に、気晴らしに映画でも見ては、と、広告にあった007の「死ぬのは奴らだ」を勧めるアレックスと、「お前はアホか」と注意するジェームス(ジェームスが正しい)が、自分が相談に乗る、と互いに電話機を奪い合っているうちに、間違って電話を切ってしまう……。
 
 ……ビルから電話がかかってくるのを待つしかない恐ろしい沈黙の中、ジェームスが、何がいけなかったか対応を振り返ってみよう、と、提案する。
 同意したアレックスのまとめ。
「自殺したいという電話がかかってきたから、保留にして待たせた。それから007の映画を勧めてこちらから電話を切った」(←「何がいけなかったか」……)
 机に両手をついてうなだれるジェームス。

 そこへ待ちわびたビルからの電話がかかってくる。
「自殺しそうだって相談しているのになんで切るんだ(←ねえ……)」
 平謝りして電話を続ける二人。

 しかし、励まそうとしてマニュアルにある台詞をそのまま読む(「『誰の人生にも明るい側面があるものだ』と、相談者の名前を呼ぶ」と次ページに書いてあったト書き部分まで読む)アレックスに、そんな態度なら電話を切るぞ!と憤慨するビル。

 初心者でどう対応していいのかわからないんだと聞かされ、
「僕だって自殺志願の初心者だがマニュアルは読んでないぞ!」(←笑)

 途方に暮れた二人は、とにかく素の自分で彼に向き合うことにする。

 長時間、アレックス(「ガンジー」)の子供時代の話などを聞かされ(素すぎる)、退屈しきっている様子のビルだったが、それでも彼らが努力してくれていることは感じ取って礼を言う。
 「でも、本当は自分のことを気にかけてくれる人間なんてだれもいない」
僕らがいる、そう言っても、ビルの声は沈んだまま。
 「たまたま電話に出ただけだろ。君らの本名すら知らないのに」
 二人は顔を見合わせ、やがてアレックスが口を開いた。
「アレックス・キートン」
「ジェームス・ジャレットだ」
 規則を破って名前を明かした二人に、驚きを隠せないビル。

 ジェームスはビルを励まし続ける。
「生きる喜びを考えろ。雪の美しさや恋する気持ち」
「『雲の向こうには銀の光(※「不幸の後には幸福が来る」を意味することわざ)』だろ」
 それを聞いたアレックス。
「銀は今週値を下げている。『亜鉛の光』ほうが良い」
 スピーカーから聞こえてきたのはビルの笑い声。
 笑ったな?笑えたってことは死ぬ気が失せただろう?
 喜ぶ二人に、「含み笑いだ」と取り合わないビル。
 ごまかすな、確かに笑い声を聞いたぞ、と食い下がると、「ああ笑ったさ。訴えろ」と開き直られる。

 一度笑ったからってなんなんだ、この空しい気持ちは消えない。生きる意味は見つからないし、みじめだし、怖い。
「誰だって怖いさ」
 アレックスがそう言うと、ビルが聞き返してきた。
「君も?……いつ?」
 ためらったがアレックスは話し始める。

 たいてい夜。
 家族が寝静まった頃、自分の将来を考えると怖くなる。
 挫折を知らないで生きてきた。
 一度失敗したら、立ち直れなくなる気がして。
 だから、立ち止まらないように必死で、もし足を止めてしまったら……。

 口調が冷静さを欠いているのに気付いたアレックスは、言葉を切る。
「……ごめん」
「謝ることない、続けてくれ、何が怖いんだ?」
 立場変わってる、と気づきつつ(←笑)話を続けるアレックス。

 もし速度を落としたら、自分じゃなくなる気がして怖い。
 自分が無になってしまう気がして。

 ビルの声に力が宿る。
「『自分が無になってしまう』。そうだ、それが僕の感じていることだ」
「誰だって感じているよ。でもその不安と戦っているんだ」
 ジェームスにうなずいて、アレックスも思い切って言った。
「電話してきたってことは、本当は死にたくないんだろ?」
 死ぬなよ……。

 沈黙。

 やがてスピーカーから聞こえてきた声。
「『雲の向こうには亜鉛の光』か?」
 ……もう切るよ。
 そう言われ、切った後は?と尋ねるアレックス。

 切ったら寝る、そして、
「明日すっきりした頭で、人生について考える」
「『明日』?」
「ああ」
 二人の顔に安どの笑みが広がる。

 不慣れゆえの対応のまずさを詫びる二人を、ああいうのも悪くない、聞いているうちに自分のほうがマシに思えてきたから、と、ねぎらうビル。(←笑)

 苦笑いしつつも、プロのアドバイスも受けてくれという二人の頼みに、そうする、と言った後、ビルはこう付け加えた。
「『ガンジー』と『ギジェット』にはかなわないと思うけど」

 ありがとう。

 そう言うと、ビルは電話を切った。

 ……ジェームスに手を差し出され、固い握手を交わしたアレックス。

 でも、ジェームス、夜になると怖いって言ったアレは、ビルに話を合わせただけだからな。

 アレックスから念を押されたジェームスはなにか言いたげに笑う。
 「わかっている。怖いわけないよな?」
 
 そして、先に出ていこうとして電気を消したジェームスにアレックスは言った。
「ジェームス、明かりは消さないで(心細げ)」

(完)

「『雲の向こうには亜鉛の光』」

「『ガンジー』と『ギジェット』にはかなわないと思うけど」

 こんなセリフで、もう一度人生の希望を探してみようという気持ちと、見知らぬ他人の必死の思いやりに対する感謝の気持ちを表現している。本当に粋な作品です。

 そしてこのひねりとユーモアゆえに、見ていて素直に心が温かくなります。

 二人のような対応がいつでも正しい結果を生むかはわかりませんが(というか前半部は明らかにダメですが)、しかし、できる限り、弱みまで含めて、自分が本当に思っていることを語り、本気で励ましている二人の言葉には誠実さが感じられます。

 これが「腹を割って話す」ということなのでしょう。なかなかできることではありませんが。

 後半部は、薄暗い一部屋の中で二人とスピーカーの声のやりとりという、ほとんど動きのない映像ながら、それぞれに台詞や間や演技に味わいがあって見応えがあります。

 この回の他にも、ドタバタあり、涙あり、多彩な味わいの名作揃いです。是非ご覧になってみてください。

 次回はこの回の中の名台詞について、英語と字幕それぞれご紹介させていただきたいと思います。よろしければ併せてご覧ください。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 22:55| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月12日

(ご紹介編1)「モロマジ!自殺電話」「ファミリータイズ(Family ties)」(アメリカのホームドラマ)

先日、マイケル・J・フォックスの出世作であるアメリカのホームコメディドラマ「ファミリータイズ(1982〜89年放映・アメリカ)」をご紹介させていただきました。(過去記事はコチラ


ファミリー・タイズ 赤ちゃんにジェラシー 編 <トク選BOX>

 本日は現在発売されているドラマDVDの中からおすすめの回の前半部あらすじと一部台詞をご紹介させていただきます。

 アレックス(マイケル・J・フォックス)は大学で人文科学を履修しなければならないと知って大いに困惑している。

 人類・宇宙・社会……どれも自分には関係ない。金のことを学びに大学に入ったのに(本人至って真顔)。

 それを聞いた妹のジェニファーに、
「お金より大事なものがある。誰かを必要するのが幸せなの」と言われても
「金があれば誰も必要じゃない(People who have money don’t need people)」と言い放つアレックス。

(彼のいいところはこういう発想を堂々と表明できるところだと思います。いっそすがすがしい。〈それにしてもこれほど思い切った台詞を言うキャラクターといえばあとはパタリロしか知らない。ギャグ漫画史上屈指の強烈キャラと同レベルの発言を見た目あんな好青年が実写でするからパンチがきいています。〉)
 

パタリロ! 選集 1

 結局、心理学の中から「ホットライン」という、学生の電話相談を受ける授業を履修することに。

 理由は、電話がかかってくるまでお金にまつわる本を読んでいればいいから(熱意ゼロ)。
(それにしても新入生に電話相談研修をさせるとは、アメリカの大学の授業ってびっくりするほど実践的ですね……。)

 授業履修の挨拶に行ったアレックスは旧友に再会する。
 ジェームス・ジャレット。
 小学校時代、主席争いをしていた宿敵だ。

 アレックスと違い心理学専攻でボランティア活動にも熱心なジェームス。
 顔を合わせれば張り合わずにいられない二人だが、研修ではペアを組むことになる。
 内心面白くないものの、
「僕が彼をリードしますよ(I should be able to pull him through)」
と同時に言った後、互いにムッとして顔を見合わせる。
pull+目的語+through……(人に)困難を切り抜けさせる、(人に)病気・けがなどを乗り切らせる

 初研修前に家族の前で予行練習をするアレックス。(そして「二度と電話するな(I told you never to call me here)」等、電話相談の根底を覆す発言をするアレックス。)

 マニュアル内にある「相談を受ける際にはコードネームを名乗ること」という取り決めをジェニファーに読んでもらったアレックスは大いに納得。
「なるほどね、負け組がウチに電話してきたら困る」

それを聞いた父スティーブン、
「まるでマザーテレサだ……」

 初研修に出たアレックスとジェームス。

 しかし、その日はたまたま指導教官たちが病気や車の故障で窓口に来られず、結局、研修は後日ということになる。

 ジェームスが食事を買いに行って席を外している最中に、研修中止の知らせを受けたアレックスは嬉々として帰り支度をはじめる。

 そこへ一本の電話。

 面倒だと思いながらも「ガンジーです(←笑)」とコードネームを名乗り、電話に出たアレックス。

 スピーカーから聞こえてきた相談者の困惑気味の声(無理もない)。
「番号を間違えたみたいだ。ホットラインにかけようと思ったんだけど。(I must have the wrong number. I wanted the Hot Line)」

 いや、切らないで、ホットラインだよ(Don’t hang up, this is Hot Line)、これはコードネームなんだ、と聞かされた相談者ビル、ためらいがちに話し始める。

「誰かに助けてほしくてね(I need some help here.)」
 声には出さないが「とっとと話せ」オーラ全開のアレックス。
 しかし、
「……僕は……自殺しようと思っている(I……I think…I think I’m gonna kill myself.)」
と耳にした瞬間、あさってを見ながら思わず保留ボタンを押し、うわずった声で、
「ジェームス!君に電話だよ!(James! It’s for you!)」
……と叫ぶ……。

 自殺電話を保留にした後(←……)アレックスたちがこの相談者にどんな対応をするのか。

 ドラマは、深刻な事態ながらユーモアと真摯さを織り交ぜて実に巧みに展開していきます。

 この「シリアスな状況に、極めて真面目だけど笑える台詞が挟みこまれていて、重くないのに最後には観ている人間の心に残るような構成」、あるいは「ドタバタだけど最後にはとても温かないい場面にたどりつく構成」というのがファミリータイズの真骨頂です。

 アレックスたちが実際にどんな話をして、結末がどうなるのかは次回の記事に書かせていただきますが、是非DVDで直にご覧になってみてください。これ以外の話も作品として素晴らしいですし(なので別の話も後日ご紹介させていただきます。)、英語自体とても聴き取りやすいです。
(『刑事コロンボ』もそうなのですが、発声とか台詞まわしそれ自体とか、最近のドラマより圧倒的にわかりやすいです。舞台の台詞に近いものがあるのでしょうか。)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:42| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月11日

(ご紹介編)「ファミリータイズ(Family ties)」(アメリカのホームドラマ)

個人的な話になってしまいますが……。

本日は元旦から数えて100日目です。

(このページで計算させていただきました。)
http://www.benricho.org/nenrei/day_calc.html

そして一応元旦から誓い通りに毎日更新し続けた当ブログの100回連続更新記念日となります。

自慢じゃありませんが100日更新しないことはザラにあっても、100日連続で更新できたことは初の快挙です。(本当に自慢にならないな)

 観にきてくださった皆様への心からの感謝のしるしとして、なにか素敵な情報を提供させていただきたいと思って、考えてみました。

1,「一応当ブログ名に添って、英語の勉強になるもの」
2,「自分の人生に大きなプラスをくれたもの」
3,「作品として非常にすぐれているもの」
4,「観ると楽しくて前向きになれるもの」

この4つの条件を満たすものとして、「ファミリータイズ(1982〜89年放映・アメリカ)」をご紹介させていただきます。


ファミリー・タイズ 赤ちゃんにジェラシー 編 <トク選BOX>

「勉強大嫌いなのに英語を聴くのは好きだった」のはこのドラマを継続して観続けたのとマイケル・ジャクソンのおかげなのです。

「バックトゥザフューチャー」のマイケル・J・フォックスの出世作(この作品での名演技が認められて映画に抜擢された。)、そして、その他の出演者たちも脇役にいたるまで魅力的で、非常に洗練された、愉快でウィットに富んだ台詞が楽しめる。

個人的に今もってこれ以上に偉大なテレビドラマを知りません。

私が憧れた「誠実で公平で温かで賢く前向きなアメリカ」像はこの作品を観ることで形成されました。(あと、当ブログで「1980年代〜90年代までがアメリカ映像作品の黄金期」と申し上げるとき、このドラマを超念頭に置いております)

「ファミリータイズ」公式HPのURLはコチラです。
http://dvd.paramount.jp/family-tise/

 主人公たちはあるアメリカの一家庭。

 よくこれだけ同じ屋根の下で違う個性が形成されるものだというほど、価値観も才能もバラバラな家族で、当然ぶつかることもありますが、共通しているのは、なにかあったとき、お互い思っていることをきちんと話すこと。

 基本わりとにぎやかなコメディタッチなのですが、何回かに一度とてもシリアスな話題を扱うこともあり、しかもしそれがうまいこと軽みを帯びていて、だからこそ、一度笑ったあとに、せつなさがこみあげてきます。(基本ひねくれてんのでいきなり「泣く人間」を観ても泣けない。途中まで笑わされたあとだと、なぜかシリアスなやりとりも一気に腑に落ちてしまい共感させられる。)

 以下、登場人物を簡単にご紹介させていただきます。

 長男アレックス(マイケル・J・フォックス)

 成績優秀でハンサムという一見よくできた息子だが、生まれて最初に喋った言葉が「Money」という天性の金の亡者(「マミー」と言ったと思って喜んだママがっかり)。
夢はウォール街の勝者。保守的で男尊女卑的発言が目立つが、実際好きになるのは強気で賢いタイプの女性。母エリスにもよく相談事をしている。
口が非常に悪いためしばしば妹二人の不興を買っているが、ここぞというときには家族や友人のために一肌脱ぐ情に厚い一面もある。

母エリス(メレディス・バクスター)

建築家としてキャリアを積んでいるさばさばした性格の美人。70年代にはリベラリストの騎手として大学で学生運動に奔走していた(その金髪をたなびかせる勇ましい姿が年下学生だったパパをノックアウト)。騒々しく型破りな性格の多い家族の中では落ち着いた理性派だが、その冷静なまなざしゆえに本人意図せずして凄い毒舌となってアレックスや夫スティーブンの心臓をえぐることがある。

父スティーブン(マイケル・グロス)
テレビ局勤務(正直視聴率はだいぶイマイチな模様)。妻エリスを若き日から今にいたるまで熱烈に愛している(基本温厚だが、エリスに近づく男がいると思い込んだが最後暴走する。)。やや頼りないところがあるため、エリスに比べると思春期を迎えた子供たちからなめられているフシも見受けられるが、よく子供の話を聞き、丁寧に教え諭す優しい父親。

長女マロリー(ジャスティン・ベイトマン)
勉強は苦手だが、ファッションには天性の才能を持つ美人。ファッション業界で生きていくのが夢。アレックスと真逆の性格のため、よくおちょくられている。華やかな外見の割におっとりとした性格で、成績にはコンプレックスを持ちながらも、我が道を進んでいる。(後にニックという、ランボーの頃のスタローンに似た雰囲気の、しかし外見にそぐわぬ同じくマイペースなアーティストと将来を誓い合う。)

次女ジェニファー(ティナ・ヨーザーズ)
スポーツ万能、成績優秀の上に正義感に溢れた性格。それゆえにアレックスに対して最も厳しい(的を得た)批評をしてくる手ごわい妹。マロリーと仲が良く、姉妹同盟を組んで口の悪い兄貴に立ち向かう。(年は若くても自分の意見をしっかりと述べるキャラクターのため、社会派の話題のときに活躍することが多い。)

次男アンディ(ブライアン・ボンソール)
 末娘ジェニファーより10歳以上年下の弟。アレックス待望の男兄弟。可愛くて素直な性格で、家族中から愛されているが、アレックスの洗脳計画により、幼い頃から政治や金融市場についての知識を吹き込まれている。

このとおり登場人物がみんな個性的で、笑えてしんみりして考えさせられる、温かみのある素晴らしい作品なのですが、残念なことにごく1部しかDVD化されていません。

多分なんか権利問題があるのでしょうが……私としては、このドラマは「刑事コロンボ」と同じだけ時代を生き残る力を持ち、広く末永く皆の目に触れるべき作品だと思うので、なんとかしてもっと多くの回が観られるようになってほしいと思います。(ニックが出てこないのが実に残念。あと私が一番笑った話とか、色々観られないのです……。)

とはいえ、今観られるだけの分でもすっごく面白いです。近々収録されている回の見どころや台詞もご紹介させていただきたいとおもいます。

読んでくださってありがとうございました。

参照 ウィキペディア「ファミリータイズ」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%BA
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2014年03月27日

(ご紹介編)映画「ワンチャンス」

 まだ観に行っていないのですが(すみません……〈汗〉)、本日は最近(2014年3月21日)公開されたイギリスを舞台とした映画「ワンチャンス!」についてと関連動画を少しご紹介させていただきます。

 公式HPはコチラ
 http://onechance.gaga.ne.jp/index.html?type=fc
予告編動画はコチラです。


 日本でも有名になったイギリス発のオーディション番組、「ブリテンズゴットタレント(Britain’s got talent)」初代優勝者ポール・ポッツのこれまでの人生を描いた作品だそうです。
 
 携帯電話販売のアルバイトをしていた冴えない風貌の男性が「誰も寝てはならぬ」を驚愕の美声で歌い上げて喝采を浴びる姿はイギリスのみならず世界中で話題になりました。

(ポール・ポッツ氏オーディション登場時の動画)


しかし、ここに至るまで、彼が夢を諦めずに努力し続けたというストーリーは、他の国ではあまり知られていないところで、映画はその部分に焦点をあてて描いているそうです。

 監督は「プラダを着た悪魔」デヴィット・フランクル。

 そして製作はこのブリテンズゴットタレントの毒舌審査員として有名な音楽プロデューサー、サイモン・コーウェルです。
(映画にも本人役で登場しています。予告編の中の「ま、どうぞ」とポールにパフォーマンスをうながす感じ悪そ……ゴホゴホ、鷹のような目をした人が彼です。)

今回公式HPを観て初めて知ったのですが、この方、ワン・ダイレクション〈ただいまdocomoのCMでおなじみボーイズグループ〉や、イル・ディーヴォ〈美男4人組オペラ歌手グループ〉のプロデュースまで手掛けているのですね。実にやり手です。

 (ところで、このサイモン氏がただの毒舌な人ではないところを実証してみせたときがありました。2009年シャヒーン・ジャファーゴリ君という少年のパフォーマンスをやりなおさせたときのエピソードです。当ブログで過去にご紹介させていただいた記事に動画を追加いたしましたので、よろしければ併せてご覧になってみてください。コチラです。最近の彼の動画も追加させていただきました。相変わらず美声で、なんかキレイカッコよくなってます……。)
 
 最近「カルテット!人生のオペラハウス」や「アンコール!」といった、イギリスを舞台にし、音楽を味付けに、苦しくもある人生を温かい味わいで良作が立て続けに公開されていますが、これもその一つのようなのでとても楽しみです。

(当ブログ「アンコール!」ご紹介記事はコチラ。主演のテレンス・スタンプは本当にいい俳優さんです。)

 さて、このオーディション番組で栄冠をつかんだポール・ポッツ氏は現在も順調にキャリアを積み重ねていて。今年は日本で公演なさるそうです。
 日本公演の情報はコチラ
 http://info.yomiuri.co.jp/event/2014/03/post-452.php

 彼も出ている、個人的に非常に好きな動画があるので結びに紹介させていただきます。

 「ブリテンズゴットタレント」の優勝者は、「ロイヤルバラエティーパフォーマンス」という舞台で、エリザベス女王をはじめとしたロイヤルファミリーにパフォーマンスを披露する権利が与えられるのですが、このロイヤルバラエティーパフォーマンス100周年記念だった2012年に、近年の優勝者と人気のパフォーマーが集結してみせたパフォーマンスです。



 メインは2009年優勝者「Diversity」(スーザン・ボイルさんをおさえて優勝したダンスグループです。兄弟や古くからの仲間達で結成された、チームワークと独創的な振付けのダンスが持ち味。そしてこういうコラボが本当に巧いです。当ブログDiversityの情報と動画ご紹介記事はコチラ。)美しいアクロバティックな演技を見せているのは2010年優勝「Spellbound」、ぽよんとしたギリシャ系オモシロ親子ダンスデュオは2009年ファイナリスト「Stavros Flatley」(当ブログ過去のご紹介記事はコチラ)。そして最後を飾るのがポール・ポッツ氏です。

 この多彩さ、そしてそれを全部楽しむお客さんのストライクゾーンの広さがイギリスの本当に魅力的なところです。
(個人的にはここで「スタブロスフラットレー」を挟んでくるセンスが心から好きだなあ……)

 この映画の公開にちなんで、個人的に好きなブリテンズゴットタレントパフォーマンス映像をご紹介させていただきました。よろしければ併せてご覧ください。
 ・シャヒーン・ジャファーゴリ(当時12歳の歌手)
 ・スタブロス・フラットレー(ギリシャ系オモシロ父子ダンス)
 ・映画「ワン チャンス」ご紹介記事(歌手ポール・ポッツ氏のオーディション動画リンクあり)
 ・Diversity(ダイバーシティ)(ダンスグループ)
 ・ジュリアン・スミス(サックス奏者)
アシュレイ&パッヅィー(少女と犬のダンスコンビ)
・(番外編)ボグダン・アリン・オータ(ピアニスト)「ノルウェイゴットタレント」のファイナリストですが、個人的に好きなので貼らせていただきました。やりとり英語なんでリスニングにも使えます。

 読んでくださってありがとうございました。
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2014年03月20日

(ご紹介編)「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!」

 先日、NHKEテレで毎週土曜日朝9時から放送中の「ひつじのショーン(Shaun the Sheep)」と、このショーンが初登場する「ウォレスとグルミット危機一髪!」についてご紹介させていただきました。


ひつじのショーン 1



ウォレスとグルミット、危機一髪!


 本日は、このウォレスとグルミットシリーズ最高傑作の呼び声も高い、「ペンギンに気をつけろ!」の前半部あらすじを簡単にご説明させていただきます。


ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!

 「ウォレスとグルミット」シリーズは、発明家のウォレスと、彼の愛犬にして有能な助手であるグルミットが主人公のコメディです。

(前半部あらすじ)

 今日はグルミットの誕生日。

 「早起きマシン(朝ベッドから食堂まで滑り台式に落下させてくれ途中でズボンをはかせ、席に着いたら上着も着せてくれ、焼いたトーストにジャムまで塗って出してくれるという、便利といえば便利、普通に自分でやれば?といえばそれまでの機械〈しかし、ウォレスのたいていの発明はこの「横着」の精神から生まれる〉)」で起きだしてきたウォレスは、グルミットにとっておきのプレゼントを渡す。

 そのプレゼントとはNASA開発の「テクノズボン」。

 プログラムをすると自動で歩き回り、引き綱と首輪をつければ犬の散歩をしてくれ、さらには足裏部にバキュームがついているために、これを履くと天井や壁も歩き回れるという優れモノだ。

 (NASAが何でそんなものをとか、グルミットは家事全般から編み物までこなし、ウォレスの発明だって手伝ってるんだから、散歩ぐらい好きな時に行って帰ってこれるとかいうツッコミをしてはいけない模様)

 しかし、このプレゼントが高額だったため、家計が火の車となってしまったウォレス(そして無駄に自動化が進んだ家なのに、その計算は子供向けのソロバンでやっているウォレス〈さらに言うなら、せめて買う前に計算しとけばいいのに……なウォレス〉)。

 仕方なく、下宿人を置くことに。

 そして、やって来たのはペンギン。(←下宿人……)

 このペンギン、ビーズ二つのようなつぶらな瞳とぴたぴた平たいカワイイ足音に似合わぬ裏のある性格で、まず、本来借りられることになっていたボロボロの空き部屋ではなく、快適なグルミットの部屋に居座り、さらには、ウォレスに取り入ることで、どんどんグルミットの居場所を奪っていく。

 夜はペンギンの(旧自分の)部屋から流れてくる騒音に悩まされ寝不足(爆睡型のウォレスはちっとも気づかない〈これが後で彼に大きな災いを呼び込むことに〉)、ウォレスはペンギンと意気投合して自分の気持ちをわかってくれない。
(そもそも貧乏の原因となった「テクノズボン」からして、有無を言わさず引きずり回されるだけで、ちっとも嬉しくない。)

 堪忍袋の緒が切れたグルミットは、とうとう家出。

 しかし、これはペンギンの周到に計算された罠だった。

 グルミットがいなくなったのを見届けたペンギンは、さて……とばかりに、ぱしっと両手(羽?ヒレ?)をすりあわせ、ある犯罪計画を実行に移す……。

……このイギリス独特のカワイサの皮を被ったブラックシュールと、陰影や小道具に至るまで緻密極まりない画面の中に、意図的にちりばめられた思いっきりなツッコミどころが素晴らしい。

 笑える作品なのですが、一方でヒッチコック作品によく似たテイストで(いや本当に。ストーリー、音楽、画面、スピード感、みんないい意味できちんと継承されています……このことについては、いずれもう少し細かく書かせていただきたいと思います。)「ひつじのショーンが好き」という子供さんはもちろんですが、古風なサスペンス映画のマニアの方に是非ご覧いただきたい作品です。

 ラスト数分のペンギンとウォレスたちの手に汗握る追跡劇(笑)は、冗談抜きで映画史史上に残る名場面です。
 
 よろしければご覧になってみてください。この作品自体や、ウォレスとグルミットシリーズについては、今後も書かせていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:03| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月19日

「ひつじのショーン」と「ウォレスとグルミット危機一髪!」(イギリスの粘土アニメ)

 
ひつじのショーン シリーズ2 1

 NHKEテレで毎週土曜日朝9時から「ひつじのショーン(Shaun the Sheep)」という粘土が放映されています。
http://www9.nhk.or.jp/anime/shaun/

 丘の上の牧場に暮らす羊のショーンと羊たち、牧羊犬ビッツァーや豚たちなどが繰り広げる物語です。

 牧場主の男性も出てくるのですが、基本台詞と呼べるものは無いので、英語の教材にはなりません。

 しかし、キャラクターは可愛いし、話はウィットに富んでいますし、イギリス郊外の生活感はおそろしくよく出ています。

 煉瓦、ペンキ塗りの窓際、木の柵、壁紙、食器などの、年月をほどほどに経た感じと、丘の穏やかな緑が本当にイギリスっぽい。

 あれを観て、ああ、こういう国なんだと思って行った方は、まさしくそのままの屋外と室内をご覧になることでしょう。

 ところで、この作品の主人公ショーン、もとは同じ制作会社アードマンの代表作「ウォレスとグルミット」シリーズの第3作目「ウォレスとグルミット危機一髪!(Wallece &Gromit A Close Shave)」に出ていたキャラクターです。

 
ウォレスとグルミット、危機一髪!


 「ウォレスとグルミット」シリーズは、発明家のウォレスと、彼の愛犬にして有能な助手であるグルミット(ぶっちゃけウォレスより全然かしこ……ゴホゴホ)が主人公のコメディ。

 「危機一髪!」は、副業として窓磨き業をしていたウォレスとグルミットが、ひょんなことからその頃頻発していた羊泥棒事件に巻き込まれるというお話です。

ちなみに原題の「Close shave」には「深剃り」と「危機一髪」の二つの意味があるそうです。

ウォレス発明の羊の毛刈りマシーンが騒動を引き起こすんでこのタイトルなのでしょう。

 当時、ショーンは羊泥棒から逃れて、ウォレス宅に迷い込んできた子羊でした。

 ちいちゃくて手足が紐のように細く、弱弱しく「フメー」と鳴く声も、コトコト室内を歩くささやかな蹄の音もとてもカワイかったのですが、そのいたいけな風情に似合わず、食欲が異様に旺盛で、ウォレスたちの不在時に家の食糧は無論、観葉植物や家具まで食い荒らすありさま。

 その後、ウォレスによって、「羊洗いマシン」に連れていかれたところ(家中のもの食い荒らして全身ベッタベタだったから)、機械が誤作動(ウォレス発明品のお約束)、付属の「乾燥」→「毛刈り」→「毛糸紡ぎ」→「編み物」部まで通過させられ、結果「本体」と「セーター」に分けられてしまったために、自分の毛で編まれたセーターを着る羽目に(笑)。

 こうして同居羊となったショーンも引き連れ窓清掃業に精を出すウォレスとグルミット(厳密には実際に拭いているのはグルミットだけ。ウォレスは依頼人の毛糸屋さんの美女ウェンドリンとお近づきになろうと必死だった)でしたが、ある陰謀により、グルミットに羊泥棒の嫌疑がかけられてしまい……。

 個人的には「ペンギンに気をつけろ!」の次に好きな作品です。

 
ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!


このときから既に器用で機転がきいていたショーンが、スピンオフ作品である「ひつじのショーン」でも、その賢さと、かつての同居人グルミットに似た、一見淡々としているけれど隠れお茶目かつ面倒見の良い性格(この性格自体私にはなんかイギリス人っぽく思われます)を生かして、牧場でもリーダー格として活躍しています。(ちなみにあの旺盛な食欲はおさまった模様〈食べ盛りだったのか?〉)

 余談ですが、この「危機一髪!」では、グルミット操作による、ウォレス唯一とも言うべき、これは本当にカッコイイし欲しいと思わせる、ある発明品が出てきますが、もしかしたらあれはグルミットが作ったものかもしれません。ドグワーツ卒(ハリーポッターたちの学校「ホグワーツ」のパロディ〈笑〉)のグルミットもインテリなんで。

 何が出てくるかは観てのお楽しみ。ウォレスと羊数十匹によるバイクでのスリリングな真犯人追跡シーンの直後に登場します。

(何言ってんだコイツと思われるかもしれませんが本当にそういう場面がある)

 ショーンたち羊がカワイイし、とても面白いので自信をもっておススメいたします。(こちらは台詞がたくさんあるのでリスニング教材にも使えます。)

 ちなみにいつも名作映画へのオマージュがほのめかされているこのシリーズ、この回は「ターミネーター2」を彷彿とさせる、ある場面が出てきますのでこちらもお楽しみに(笑)。

 いずれ、このシリーズ最高傑作「ペンギンに気をつけろ!」についても、あらすじや見どころをご紹介させていただきますので、そのときは併せてお読みいただければ幸いです。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:05| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月17日

「英国王のスピーチ」の犬(イギリスロイヤルファミリーと犬たち)

2014年3月18日(火)BSプレミアムで午後9時から11時に「英国王のスピーチ」が放送されます。


英国王のスピーチ スタンダード・エディション(Blu−ray Disc)




 NHKの番組情報はコチラ

 この作品は2010年にアカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞を受賞しました。
 公式HPはコチラ綺麗なページで面白いです。


 第二次大戦期、吃音を抱える内気な国王ジョージ六世(即位前の呼び名はアルバート王子、現エリザベス女王のお父上)が、オーストラリア人の言語矯正士ライオネルと、愛妻エリザベスとともに、症状を克服しようとする苦闘と絆の物語です。

 以前、内容についてご紹介させていただきた過去記事はコチラです。
 (ご紹介)その1
 (ご紹介)その2

 心温まる素晴らしい作品なので、とてもおススメです。

 今回は、この作品を観た日本人が「おや」と思いそうな場面と、ある魅力的な写真集についてご紹介させていただきます。
 
 その場面とは作品のクライマックス、ジョージ6世がある非常に重要なラジオスピーチを行うシーン。

 ジョージ6世の家族(まだ少女のエリザベス女王も付き添っていらっしゃいます)、医師ライオネル、チャーチルら政府の重要人物が、固唾を飲んで見守る状況下。

 そこに茶色の大きな耳の中型犬たちも来ているのです。

(現英国王室公式HP内にも似たような雰囲気の写真がありましたので添付させていただきます。)

英国王室HP内コーギーの写真1

 この犬たちの種類はウェルシュ・コーギー。

 ジョージ6世の代から王室で飼われはじめ、現在にいたるまでエリザベス女王にもつきしたがっています。

 ジョージ6世とコーギー犬(同じく王室HP内の画像)

ジョージ6世とコーギー犬.jpg

 このため、「コーギー犬」=「エリザベス女王」というイメージがイギリス人には染みついていて、テレビの中で「年配の女性の後ろ姿に、あの茶色の犬」なら、それは暗にエリザベス女王を指すほどなのです。

 イギリス人は概して犬好きで、肖像画などにもよく犬が一緒に描かれていますが、これは王室も同様で、代々犬を飼うならわしがあったそうです。

 幼いころのエリザベス女王と母王大后

幼いころのエリザベス女王と母王大后

 そんなわけで、こんな写真集がイギリスで発売されていました。
Noble Hounds and Dear Companions: The Royal Photograph Collection(Amazon情報)
Noble Hounds and Dear Companions The Royal Photograph Collection Sophie Gordon 9781902163857 Amazon.com Books.website


 写真集の中では王室の人々が、普段のかしこまった姿を離れ、よき友である犬(ときどき猫)とくつろいだ様子で接する姿を見ることができます。
(そしてどの犬もホントかしこそうな性格のよさそうな器量よし揃い)

 さて、この作品の表紙にもなっている、パグをぐるぐるまきにくるんで、スカーフまで巻いてあげ、可愛くてしかたがないというように顔をほころばせている紳士。

 実はジョージ6世(アルバート王子)の父上、先代国王ジョージ5世です。
(写真のタイトル「The Duke of York, c.1885,and a pug, wrapped in a coat and “headscarf”」)

 もともと二人の関係は決して悪いものではなく、ジョージ5世はアルバート王子の誠実な人柄を買っていたのですが、立場上、元から丈夫ではなかった彼のことを非常に厳しくしつけ、積もり積もった過度のストレスが、アルバート王子の吃音の遠因になったとも言われています。

 ただ、なんて楽しそうな素敵な紳士と犬の写真だろう、と、この写真集を表紙買いしたのち、この写真に写っている人物が誰であるかと、その後の父子の話を聞いてからもう一度この写真を見た私は、とても複雑な気持ちになりました。

 こういう立場にいる方たちには、本当に犬という、肩書や責任とは無関係に接し、愛情を注げる存在が必要なのだろう。

 しかし、もしも、せめて家族は、立場を離れ、このような優しく楽しげな様子で接することを許されていたのなら……。

 お二人は互いに愛情を持っていたのに、王室の人間だったという理由で、話したい話をしたり、笑い合ったりできず、公務の重圧意外に、本当は背負わないで良い苦労や悲しみまで背負うことになってしまったのではないか。

 それぞれに犬と一緒に笑うお優しい笑顔の写真を見ると、大きな責任の中に生きざるを得ない方々の、心中を考えさせられます。

 映画にもこの二人の、葛藤と絆が描かれていますので、ご覧になってみてください。

 余談ですが、この王家のコーギー犬、当然ながら非常に由緒正しい血統ということで、親戚筋の犬たちはそれがステイタスとなるそうです。

 日本では「サザエさん」の作者長谷川町子さんがこの王家のコーギー犬の流れをくむ犬を飼っていたというエッセイがありました。瞳の表情豊かな、とてもカワイイかしこい犬だったそうです。

 
サザエさんうちあけ話・似たもの一家

 また浦沢直樹氏の名作漫画「マスターキートン」の中でも主人公の太一・キートンのお父さん(いい人なんだが女好き)が同居しているブサ犬が思いを寄せる犬として、この血筋のご令嬢コーギーが出てきます。(すみません、何巻か思い出したら付記させていただきます)

 
MASTERキートン 1

 どちらも素敵な作品なので、コーギーの話は別に、いずれご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。

※英国王室公式HP内の写真は、下記URLのページより引用させていただきました
http://www.royal.gov.uk/TheRoyalHousehold/RoyalAnimals/Workinganimals/TheRoyalKennels.aspx
posted by Palum. at 06:53| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月16日

(ご紹介編)映画「スラムドッグ$ミリオネア」

2014年3月17日(月)BSプレミアムで午後9:00〜11:00に映画「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年イギリス・アメリカ)が放映されます。


スラムドッグ$ミリオネア(Blu−ray Disc)


(BSプレミアム番組紹介ページはコチラ

予告編動画はコチラ



映画の公式HPはコチラです。

インドのスラムで育った青年ジャマールがある決意を秘め、賞金を稼ぐために出演した「ミリオネア」というクイズ番組。

 貧しさゆえに正式な教育を受けたことが無いにも関わらず、次々と正解してゆくジャマールに疑いの目が向けられ、最終問題を前にして彼は警察に連行され、過酷な取り調べを受けますが、ジャマールは傷だ
らけになりながらも曇りの無い目ではっきり言います。

 「不正などしていない。知っていたから答えられた」

 生きていく中で、その日、問題として出された問いの答えを知る機会が自分にはあった。
 
そう言って、ジャマールは幼い日から今にいたるまでの人生(答えを知ることができた理由)と、何故彼に金が必要かについて語ります。

 母を失った日、兄と助け合って、苦しくも明るくしたたかに生きた日々、子供たちを食い物にする恐ろしい大人たちの存在、波乱の日々の中で出会った運命の少女……。

 スピーディーな展開と大胆な切り口の映像、子供たちのたくましく輝く生命力と社会の闇、兄弟の愛憎、一途な恋、様々な魅力に溢れた作品です。

 そして、個人的にも思い出深い作品でもあります。

 2008年、私は青い空も海もバカヤローだ気分で半ばヤケクソにイギリスに渡りました。

 英語と言えばたいして努力しなかった受験時の記憶と、映画とマイケル・ジャクソン好きなんでリスニングだけはそこそこという極めてあやふやな土台しかないのに、ただ、英語好きは好きだし、外国に行ってみたかったという理由で。

 しかし、イギリスは私の想像をはるかに超えて良い思い出を与えてくれて、私の「青い空も海もバカヤローだ気分」をゆるやかに正してくれました。

 その、ちょっと「やさぐれ治り状態」のときに、当時教わっていた先生が(背が高くて、目が大きくて面長で温厚で、「やさしい嘘と贈り物」のマーティン・ランドーに良く似ていらした。


やさしい嘘と贈り物 スペシャル・エディション

 あの映画を観たとき、内容それ自体も超好きでしたが、あの風貌に懐かしさがよぎりました)、「この10年で観た中で一番良い映画だった」と勧めてくださったのが、当時公開されていたこの映画でした。

「10年間」という意味の「decade」という単語を辞書で引いて覚えつつ、ランドー先生(チガウ)がおっしゃるなら良いのだろう、と初めてイギリスの映画館に観に行ったのがこの作品です。

(インドが舞台で、主人公もそこまで英語が堪能と言うわけではなく、コムズカシイ単語が出てこないのでリスニングにもとても良かった。)

 そして、本当にいい映画で感動して、原作小説「僕と一ルピーの神様」(原題「Q&A」 )も買って読んでみました。これが、自分が最初に読み通した英語の小説でした。(来る前に少しぐらい英語の本読んどけって言われれば返す言葉もございませんが……〈汗〉)

(余談ですが、原作者のヴィカス・スワラップ氏は2009年以降在日本インド総領事館総領事として大阪に赴任なさっているそうです。多彩ですね……〈ウィキペディア記事より〉日本語版はコチラ

そんなわけで、色々な意味で思い入れのある作品です。2008年ごろってなんか映画の内容が荒れてたり(人がザルから小豆でもこぼすようにザーザーと死に、その描写に命に対する敬意が無い作品が多くてイヤだった)つまんなかったりで、総合レベルとしては10年前に比べるとイマイチだなあと思っていた時期なんですが(自分がすさんでたから気づけなかっただけかもしれませんが)、これは違います。

本当に10年に1度の名作。

いずれ、この作品の見どころや原作小説との違いについても少し書かせていただきたいと思っておりますので、よろしければまたいらしてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 12:29| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月13日

(ご紹介編)映画「サンセット大通り」(刑事コロンボ「忘れられたスター」好きな方におススメ)

2014年3月15日(土)15:00〜17:08 BSプレミアムで刑事コロンボの「忘れられたスター」が放映されます。

往年のミュージカル女優グレースが再起をかけた舞台への出資を反対した富豪の夫を殺害するという筋立て。

かつてのあまりにも華やかすぎた栄光を忘れることができないというスターの苦悩と、そんな彼女への秘められた献身的な愛が根底に流れ、個人的には「祝砲の挽歌」「別れのワイン」と並ぶコロンボ3大傑作だと思っています。

(3作とも犯人が哀しい。そこいらの推理ドラマの「人を殺すだけあって本当に性格の悪い人ですね」と言いたくなるような犯人像とはまるで異なります。)

当ブログで簡単に内容をご紹介させていただいた過去記事はコチラです。

そして、この「忘れられたスター」を気に入った方なら是非併せてご覧いただきたい名作映画があります。

「サンセット大通り」(1950年・アメリカ映画)


サンセット大通り(Blu−ray Disc)




売れない脚本家ジョー・ギリスが、借金取りから逃れるために逃げ込んだ、サンセット大通りの大邸宅。

そこはかつてサイレント(無声)映画の大スターとして名声をほしいままにした、ノーマ・デズモントの館だった。

巨万の富を持ちながら空疎な館に暮らすノーマは、再起をかけて自ら主演するつもりで「サロメ(※)」の脚本を書いており、ギリスに制作を手伝うように持ちかける。

彼女の強引さと、彼女に絶対服従の執事マックスの手際により、次第に館に軟禁されているかのような状態になっていくギリス。

しかも、ノーマは次第にギリスを男として愛するようになってゆく……。

……と、筋立てだけ書くと非常に不気味な話です。

いや、実際かなり不気味なのですが……。

しかし、個人的に今まで観た映画の中で最も完成度の高い作品の一つです。

 冒頭、駆け付けるパトカー。

 プールにうつぶせに浮いている目を見開いた若い男の射殺死体。(水底から死体を見上げるように撮っている)

「プールつきの館に住むのがこの男の夢だった。皮肉なものだ」

そう語る声。

「話は半年前にさかのぼる。わたしは売れない脚本家だった」

 語っているのは、プールに死体となって浮いているギリス本人。

 彼がなぜこんな形で死ななければならなかったのかを回想する形で物語は展開していきます。

 こういう構成や映像の妙、そして、かつて妖精のように美しかったノーマが、今は色褪せた容色と名声に気づくことなく、自分の最盛期の写真や肖像画に彩られた隙間風の吹く邸宅で、ふつふつと再起への夢をたぎらせているという鬼気と哀れ。

 そんな彼女に影のように付き従う無表情な執事マックスがほのめかす、ノーマの謎めいた過去。

 おっかない話ながらこのような要素が緻密に配され、完璧ともいえる完成度を誇る作品です。

「忘れられたスター」のグレース(ジャネット・リー)がほっそりとして夢見がちで瀕死の白鳥を思わせる痛々しさなのに比べると、ノーマ(グロリア・スワンソン)は尊大で不気味ですが、しかしギリスが彼女を見捨てられないだけあって、現実が見えていないながら、情が濃いところもあり、奥行きのあるキャラクターとなっています。

 展開も面白く、特にラスト30分の妙は必見。

 結構ネタバレしている作品(下手したらジャケットに大事なことが書いてあるかもしれません)なので、レンタルの際には是非半目でレジに向かってださい。

「忘れられたスター」より、キャラからテイストから描き方から、あらゆる意味で重いですが、しかしこれもまた、華やかすぎる世界から現実に戻って来ることができない元スターと、その周辺の人間模様を描いた傑作です。

 よろしければご覧になってみてください。いずれこの映画の名場面についてもご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。

(※)「サロメ」
イエス・キリストが現れたころのユダヤの暴君ヘロデの義理の娘。自分の舞の褒美として、ヘロデに洗礼者ヨハネの首を請うた。
オスカー・ワイルドはこの聖書の逸話をもとに、サロメはヨハネに愛を拒絶されたことに怒りを覚えて彼の首を欲したという内容で戯曲「サロメ」を描き、「恋に狂った残酷な乙女の抱く聖者の首」というモチーフがその後多くの画題となった。
(つまり、サロメはノーマが演じるには若すぎる役なのですが、彼女はそこも見失っているのです)
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2014年03月10日

戦争とボタンの話 映画「ライフイズビューティフル」と陶芸家ルーシー・リー

昨日、明日2014年3月11日午後9時からBSプレミアムで放送の映画「ライフイズビューティフル」について書かせていただきましたが、本日はその中のある場面と、陶芸家ルーシー・リーのエピソードについて、ご紹介させていただきます。


(以下、映画の内容について、ややネタバレしておりますので、大丈夫な方だけお読みください)




 「ライフイズビューティフル」は、第二次大戦下のイタリアが舞台です。
 
 ユダヤ系イタリア人グィドは、愛する女性ドーラと結婚し、息子ジョズエも生まれ、陽気に、幸せに暮らしていましたが、ジョズエが五歳になったとき、一家はユダヤ人の強制収容所に送られてしまいます。

(妻ドーラは非ユダヤ系だったのですが、夫と息子を追って、自ら収容所に入ります。)
  

 幼い息子の心を恐ろしい現実から守るために、グィドは嘘をつきます。
 

 収容所にいる間、自分たちはゲームをしている、みんな競争しているけれど、「帰りたい」と言わずに、頑張って得点を集めるんだよ、と。

 
息子ジョズエは、グィドの嘘を信じますが、ある日

「自分たちはかまどで焼かれて、石鹸やボタンにされる」

 という話をほかの大人から聞かされます。

 しかし、グィドはジョズエの話を聞いて、大笑いします。

「人間がボタンに?『ボタンのフランチェスコが落ちた』なんて言うのか?馬鹿を言うな」

 この場面は、わたしにとってもっとも印象深かったシーンの一つです。

 人間はボタンにはならない、そんな馬鹿な話は無い。

 それは本来、悪い冗談としてでも思いつかないような話のはずでした。

 だけど、そんな出来事に直面させられてしまった人々がいた。

 笑ってしまうほど「馬鹿な話」が現実になってしまうのが、戦争というものなのだと、グィドのセリフから痛切に感じました。

 それを愛する息子のために笑い飛ばすグィドの強さには心を打たれますが、しかし、この「人からボタン」というのは、実際にあった出来事だったのです。



 一方、同じ時代「物資不足で金属でボタンが作れない」という状況下、素晴らしい陶器のボタンを生み出し、後に自身の作品の幅を広げた芸術家がいました。

 イギリスの陶芸家ルーシー・リー(1902-1995)です。
(彼女の展覧会について過去にご紹介させていただいた当ブログ記事はコチラ。〈すみません、この記事の中の展覧会HPリンクはすでに切れています〉)

 ユダヤ系だった彼女は、ナチスから逃れるため、オーストリアからイギリスに移住し、陶器のボタンを作ることで生計を立てました。

 戦時下の窮余の一策だったとはいえ、ルーシー・リーの陶器のボタンは、色も形も変化に富み、大変魅力的なものでした。
 
 砂糖がけのねじりクッキーのようなもの、南の海のかけらのようなもの、金属のような光沢を持つもの、とりどりの花びらのようなもの、そして、ルーシー・リーのうつわを思わせる、あたたかみのある白の、流線のまろやかなもの……。

(「イエール大学のルーシー・リー伝記記事」はコチラ。カラフルなボタンが見られます。)

 このとき試みたさまざまな色や形の創意工夫が、後のルーシー・リーのうつわ作りに大きく役立ったということです。

 そして、彼女が91歳で亡くなったとき、彼女の熱烈なファンで友人だった、デザイナーの三宅一生氏のもとに、彼女のボタンの見本が入った箱が届けられたそうです。

 彼女が、「わたしのお友達(三宅一生氏)に渡してほしい」と言い残したものでした。

 布張りの箱の中には、ありとあらゆる形のボタンが、丁寧に整理されて並べられていました。

 それは偉大な芸術家のたゆまぬ努力の結晶であり、しかし、わたしには、まるで、きれいな石やガラス、貝殻や鳥の羽を集めた、遠い思い出の中の宝箱を見たような、なにやら懐かしい心地もしました。

 この箱を最初に開けて、ボタンたちの輝きと出会ったときの三宅一生さんは、いったいどんなお気持ちだったのでしょうか。

 彼は、ルーシー・リーのうつわのミニチュアのような白い薄手のボタンを、白く、厚みと毛の素材感のある生地の上着にあしらい、見るからに上品で心地よさげで、しかし圧倒的な存在感のある作品に仕上げておいででした。

 このエピソードを紹介したNHK「新日曜美術館」の記事はコチラです。


「ある人間は人間でボタンを作ることを思いつき、実行した」

「ある人間は迫害され、理不尽に苦しんでも、綺麗な可愛い陶器のボタンを創りだして暮らし、やがてそのとき培った技術で、すぐれた芸術作品を生み出して、自他の人生を美しい色と形で彩った」

「ボタン」という小さなものにまつわるエピソードが、人間という生き物の、恐ろしさも偉大さも果てが無い有様をあまりにもくっきりと証明していると思ったので、2つ並べてご紹介させていただきました。

今度、番外編として、同じ「戦争中のボタン」について、イギリスの超有名コメディ「Dad’ s Army」の一場面をご紹介させていただきます。
(当ブログDad’s Armyご紹介過去記事はコチラ)

 読んでくださってありがとうございました。

※ルーシー・リーと三宅一生氏に関する参考記事
「うつわ U-tsu-wa」展HP 2009年開催 
http://www.2121designsight.jp/program/utsuwa/
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2014年03月08日

台詞編4「Flowers from a brook(岸辺の花)」(映画「セントオブウーマン 夢の香り」ネタバレ)



「セントオブウーマン」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。


 当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。

1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
※以下ネタバレ
4,名場面編2
5,台詞編2
6,名場面編3
7,台詞編3
名場面編4



セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)



今回もこの作品の名場面についてご紹介させていただきます。


完全にネタバレですので、一度ご覧になった方のみ続きをお読みください。


学校で起きた悪戯の目撃者として集会で証言を強要されていたチャーリー、しかし、彼は犯人の同級生の名前をいう事を拒否しました。

その罰として退学させられてしまうところだった彼を、集会に同席したフランクが「チャーリーは自分の得のために友達を売る男ではない」と力強く訴えて救います。

集会は生徒たちの喝采のうちに終わり、建物から出てきたフランクとチャーリーを太陽の色の髪をした女性が追いかけてきます。

以下その台詞と私的直訳です。

(女性)
I’m Chritine Downes, Colonel Slade.
私はクリスティーン・ドーンズです、スレード中佐(※フランクのこと)。

I teach Political Science.
政治科学を教えています。

I wanted to tell you how much appreciate your coming here and speaking your mind.
貴方がここに来てお考えを話してくださったことに心からお礼を申し上げたいと思って。

(フランク)
Thank you. Are you married?
ありがとうございます。ご結婚は?

(ドーンズ思わず笑って)
Uh……I,uh……
あの……私……


Went to an artillery school at Fort Sill with a Mickey Downes.
フォートシルの砲術学校時代に行っていたころ、ミッキー・ドーンズという男と一緒でした。
・Fort Sill……オクラホマ州の地名、軍人の訓練学校がある。
Artillery……砲術

Thought he might’ve snagged you.
あいつがあなたをさらっていったかと.
might have+過去分詞……〜したかもしれない

snag……一般的には「妨げる」「船が倒木に乗り上げる」の意味だが、米語の口語に「すばやくつかむ」の意がある。


(口元をほころばせ首を横に振るドーンズ)

Uh, no, no, I’m afraid not.
いいえ、いいえ、残念ながら違いますわ。

(チャーリー)
Uh,Colonel Slade was on, uh, Lyndon Johonson’s staff, Miss Downes.
ドーンズ先生、スレード大佐はジョンソン大統領のスタッフだったんですよ。

(ドーンズ)
Were you? Fascinating.
そうだったんですか?素晴らしいわ。
Fascinating……素敵な、うっとりさせるような

(フランク)
We should get together, talk politics sometime.
時々一緒に政治学の話をいたしましょう。

(フランク、少し間を置いて)
“Fleurs de rocailles”
「フルール・ド・ロカイユ」(フランス語〈香水の名前〉)

(ドーンズ)
Yes,
(フランク)
“Flowers from a brook.”
「岸辺の花」(香水名の意味)
brook……小川

(ドーンズ)
That’s right.
そのとおりですわ。

(フランク)
Well, Miss Downes,I’ll know where to find you.
さて、ミス・ドーンズ、(この香りで)あなたをどこで見つけられるかわかります。
(字幕訳は「これでいつでもあなたを探せます」です。美しいですね……)

Charlie.
チャーリー

(チャーリー)
Bye, Miss Dowens.
さよなら、ミス・ドーンズ

(立ち去る二人)
You don’t have to tell me, Charlie.
チャーリー、俺に教えなくていい。

5'7'',
5フィート7インチ(約170p)、

auburn hair,
赤褐色の髪、

auburn……赤褐色

beautiful brown eyes.
美しい茶色の目

以上です。この他にも素敵な場面やセリフがたくさんあるので、ぜひとも何度もご覧になって、その美しく奥深い世界観に浸ってみてください。

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 18:51| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月07日

名場面編4「岸辺の花」(映画「セントオブウーマン 夢の香り」ネタバレ)

「セントオブウーマン」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。


 当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。
1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
※以下ネタバレ
4,名場面編2
5,台詞編2
6,名場面編3
7,台詞編3



セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)



今回もこの作品の名場面についてご紹介させていただきます。完全にネタバレですので、一度ご覧になった方のみ続きをお読みください。




 ニューヨークで豪遊した後、フランクは自殺をしようとしますが、チャーリーの説得で思いとどまります。

やがてニューヨークから帰ってきた二人。そしてチャーリーは、学校に戻ります。

 その日、チャーリーは学校で起きた悪戯の目撃者として、集会で、生徒教員全員の前に立ち、証言をすることになっていました。

 しかし、彼は親しくなくとも、完全に彼らが悪いと知っていても、それでも同級生の名前を挙げないつもりでした。

 協力しなければ退学、すればハーバード大へ推薦という厳しい選択を迫られていましたが、ただ、そうするのが自分として嫌だったから。

 このチャーリーの窮地を、後から集会に入ってきたフランクが救います。

 目撃した人間の名前を、「見ていない」ではなく「言えない」と正直に言ってしまったチャーリーは、当然校長の怒りを買いますが、フランクは「この沈黙が正しいかどうかはわからないが、チャーリーは自分の得のために友達を売る男ではない」と言い放ちます。
 それが高潔と言うものであり、勇気と言うものだ。
 そしてそれこそが指導者に必要な資質だ。
 もしこの学校が指導者の揺り籠だというなら、彼にチャンスを与えてくれ。
 その選択を誇れる日がきっと来るだろう。

 そう荒っぽくも力強く語ったフランクを、チャーリーはじっと見上げ(キラキラとした瞳から喜びと信頼の念の溢れる、美しい、心に染みる顔です。本当の意味で「父」と思える人が居ず、一人で戦ってきた若者が、初めて自分を全身全霊で守ろうとしてくれる強い大人の男を見つけた瞬間の顔です)、集会に集まっていた学生たちは二人に拍手喝采を送ります。

 審議の結果、チャーリーは無事学校に残れることになり、チャーリーに付き添われながら、車に戻ろうとするフランクを一人の女性が追いかけてきます。

「中佐(※フランクのこと)!中佐!」
 背の高い、豊かな赤褐色の髪を長く伸ばした、生真面目そうだけれど優しい声の女性。
「政治科学を教えているドーンズです。先ほどのお話に一言御礼を……」
 彼女と向き合ったフランク。
「どうも、ご結婚は?」(←早い〈笑〉)
 唐突な問いかけに、え、いえ……と、笑って口ごもるドーンズ。
 サングラスをかけたフランクの顔にもやがて笑みが広がります。
「同じ隊にドーンズという男がいました。ご主人では?」
「いいえ、違いますわ」
 知的な顔に優しい笑いじわがよぎり、長い髪が空気のゆらぎと光を受けて、太陽を紡いだ糸のように輝きながら彼女の額、高い頬骨、はにかんだ微笑みをふちどります。

 それまで二人を笑顔で見守っていたチャーリーが言いました。
「先生、中佐は大統領の側近だったんです」
「まあ、すばらしいわ」
「ご一緒に政治論でも」
 黙って口元をほころばせるドーンズ。

「『フルール・ロカーユ』」
 やおらそう言ったフランク。
 それは彼女のまとうフランスの香水の名前。
「……そうです」
「『岸辺の花』」
 それが、香水の名の意味。
「そうです」
「……ミス・ドーンズ。これでいつでもあなたを探せます」

 行こう。
 チャーリーをうながして立ち去るフランク。
 ドーンズが金色の微笑のまま、それをじっと見送ります。

 「チャーリー、何も言わないで良い」
 身長170cm。
 髪は赤褐色。
 美しい茶色の瞳。

 満ち足りた声でドーンズの姿を鮮やかに言い当てながら、フランクはチャーリーと一緒に歩いていきます。

 ……これがフランクがついに夢の女とめぐりあった場面です。

 自分は暗闇の中にいると、死を選ぼうとしていたフランクに向き合って立つドーンズの、陽光そのもののような輝き。

 太陽を透かしてキラキラと温かくきらめく彼女の長い髪と、優しい微笑。
 この映画は脇役(スチュワーデスや掃除係の女性など、一瞬フランクと言葉を交わす女性)にいたるまで本当に美しく女性を撮っているのですが、ドーンズの美はことに印象的です。

 一目見てはっとさせられるような華やかで愛らしい美しさのドナ(フランクとタンゴを踊った女性)とはまた別の、夜明けの光の広がるような、冬が終わり春が来たような、人の心に柔らかく温かく染み渡る。
 
 やがて彼女のその温かい美しさと、「岸辺の花」の香りにつつまれて、フランクはようやく待ち望んだ朝を、彼女と共に迎えるのでしょう。

 ところで、私の「80年代後半〜90年代アメリカ映画賛美」の中では、この「屋外の日の光」という要素が結構大きな意味を持っています。

 50年代の映画はストーリーも明るくて登場人物の美貌も演技も技術もそろっていますが、あの透き通って優しい日の光は、それ以後の映像のものです。

 人間どんなに落ち込んでいてもやさぐれていても、寒いところから温かいところに行ったときと、太陽の光がキラキラしているときにはわりとちゃんと気づき、少し和むものです。

 そんな誰にでも覚えがある気持ちが、あの大切に撮られた陽の光によってよみがえり、登場人物の喜びや痛みから癒されていく感覚をより実感できるように作られている。

 そういうところも好きなのです。そして、このドーンズという女性の姿と笑顔は、私にとって、映画にとどめられた陽光の美のひとつの頂点になっています。

 次回はこの場面の英語の台詞について少しご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:15| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月06日

台詞編3「That I could wake up in the morning and she’d still be there. (俺が朝目覚めても、彼女はまだそこにいる)」(映画「セントオブウーマン 夢の香り」〈ネタバレ〉)

「セントオブウーマン」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。


 当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。
1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
4,名場面編2
5,台詞編2
6,名場面編3


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)



今回は前回ご紹介した名場面の英語の台詞についてご紹介させていただきます。完全にネタバレなんで、一度ご覧になった方のみお読みください。

自殺を思いとどまったフランク(アル・パチーノ)がチャーリー(クリス・オドネル)にずっと心にしまっていたある夢を語る場面です。
(英語の台詞と私的直訳を書かせていただきます。)

(フランク)
You know what’s kept me going all these years?
何がこの数年俺を生かし続けていたかわかるか?

I thought that one day……
思っていた。いつの日か……
(フランク、沈黙の後に首を横に振る)

Never mind.
忘れてくれ

(チャーリー)
The what?
どうしたんです?

(フランク)
Silly.
馬鹿げてる。

(ためらいながらも言葉を続けるフランク)
Just the thought that maybe one day, I’d……I could have a woman’s arms wrapped around me……
ただ思っていたんだ。もしかしていつの日か、俺に……ある女が腕をからめ……
Wrap……巻く(料理に使う日本の「ラップ」もここから来ています)

And her legs wrapped around me.
足も俺にからめている。

(チャーリー)
And what?
そして?

(フランク、思い切って言う)
That I could wake up in the morning and she’d still be there.
俺が目覚めてもまだ彼女はそこにいる。

Smell of her.
彼女の香り。

All funky and warm.
とても良い温かな香り。

Funky……(俗語)この場合「いかした」の意味合い

I finally geve up on it.
しまいにはその夢をあきらめたが。

(チャーリー)
I don’t know why you can’t have that.
(その女の人のことを)あきらめる理由がわかりません。

You know, when we get back to New Hampshire, I don’t know why you can’t find someone.
ニューハンプシャー(フランクたちの家がある場所)に戻れば、きっとその人が見つかります。

I mean, you're a good looking guy, and you’re fun to be with, and you’re great travel companion, sensitive, compassionate.
だって、あなたはハンサムだし、一緒にいて楽しいし、旅のつれあいとしても素晴らしいし、感受性豊かで、情が厚い。

Sensitive……この場合「感受性豊か」の意味

Compassionate……慈悲深い、情が厚い


(フランク、つくづくと苦笑いして)
Charlie,are you fuckin’ with me?
チャーリー、ふざけているのか?

(チャーリー、いたずらっぽく笑い)
Yes.
はい(笑)。

以上がフランクが自分の夢について語る場面のやりとりです。
このとき、そんなことはもうありっこないといった様子のフランクでしたが、「夢の女」が物語の最後に現れます。

温かく輝く、とても素敵な場面です。

次回はこの場面についてご紹介させていただきます。

読んでくださってありがとうございました。
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2014年03月05日

(名場面編3)「俺が朝目覚めても、彼女はまだそこにいる」(映画「セントオブウーマン 夢の香り」〈ネタバレ〉)


「セントオブウーマン」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。


 当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。
 過去記事一覧はコチラです。
1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
4,名場面編2「あるのは暗闇だけだ」(ネタバレ)
5,台詞編2「I'm in the dark」(ネタバレ)


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)

 今回もこの作品の名場面についてご紹介させていただきます。完全にネタバレですので、一度ご覧になった方のみ続きをお読みください。

 ニューヨークで豪遊した後、フランクは自殺するつもりでしたが、チャーリーの説得で思いとどまります。

 ようやく気持ちを落ち着けたフランクは、ホテルの部屋でジャックダニエルをかたむけながらこんな話をします。

 「今まで生きてこられた支えは……いつか……」

 何度もためらいながらも、チャーリーに促され、フランクは続けます。

 いつか、隣に女が眠っていて、その女の腕も足も自分にからみつき。
 その女が朝になってもまだ側にいる。
 そして、自分は彼女の香りを嗅ぐ。
 甘く温かい香り。
 生きていれば、そんな日が来るかと。
 そんな女に巡り合えるかと。

「あきらめたがね」

 しかし、チャーリーは、家に帰ればきっといい人を見つけられますと言います。「あなたはハンサムだし、思いやりがあって話していても旅をしていても楽しい人だから」と。

 この旅の間中、チャーリーにそりゃもう我儘放題だったのを自分でもわかっているフランクは、「からかっているのか?」と苦笑いをします。

 これが、映画のタイトル「Scent of a woman(女性の香り)」について語られる場面です。

 タイトルがダイレクトに「女の香り」だけだったら、日本人にはいかにも「そういうこと」しか考えてない人の話みたいな感じがしちゃうんで「夢の香り」という副題が足されたのでしょうか。
 何にせよ作品の味をすくいあげた良い副題だと思います。

 最初は女性についてホントに「そういうこと」しか考えていないみたいな言動を繰り返していたフランクが、実は、共に夜を過ごすだけでなく、共に朝を迎え、ずっと隣にいてくれる女性、彼を深く愛し、共に生きてくれる女性を求め、それを絶望の中の生きる支えにしていたという真実が明らかになる場面です。

 チャーリーが、「隣に眠る女の手も足も俺にからみつく」と言った後のフランクの言葉を促しているのもいい。

 旅の中でフランクの人となりを知ったチャーリーには、フランクの夢が、つかのま欲望を満たすことではないだろうとわかっていたのです。

女の香り。
深く愛し合う女の香りに包まれ、満たされた思いで眠る。
その夢がフランクの暗闇を灯していた。

 そして、やがて、フランクの前にその女性があらわれます。

 とても美しい場面なので、こちらも後日ご紹介させていただきたいと思います。
 
 次回は、今回ご紹介した場面の台詞編を書かせていただきます。よろしければまた見にいらしてください。

 読んでくださってありがとうございました。
 
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2014年03月04日

(台詞編2)「I’m in the dark(あるのは暗闇だけだ)」(映画「セントオブウーマン」ネタバレ)

「セントオブウーマン」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。

 今回はこの作品のうち、前回当ブログでご紹介した名場面の英語の台詞についてご紹介させていただきます。
 ※前回同様、完全にネタバレなんで、一度ご覧になった方のみお読みください。

 当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。
 
 過去記事一覧はコチラです。
1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
4,名場面編2「あるのは暗闇だけだ」


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)
 豪遊の後、ホテルの部屋で自殺をはかろうとしているフランクを見つけ、それを止めようとするチャーリー。
 出て行かないと君も撃つぞ、と言うフランク。しかし、チャーリーが動こうとしないので、カウントダウンをはじめます。

(Youtube内「Movie Clip」の動画リンク



以下、動画部の台詞+私的直訳です。

(フランク)
Five…four…three……two……one………. Fuck it.
5…4…3……2……1……畜生。
(自分の頭を打ち抜こうとするフランク。その腕をおさえたチャーリーともみあいになる)

Gimme! Fuck it!
(銃を)よこせ!畜生!
Gimme=Give me の略

Get out of here!
出ていけ!
Get out……立ち去る・逃げ出す


(チャーリー)
I’m staying right here!
ここにいます!
(繰り返し)

(フランク)
I’ll blow your fucking head off!
そのクソ頭を吹き飛ばすぞ!!
Blow off……吹き飛ばす

(チャーリー)
Then do it!
やれよ!

You want to do it? Do it! Let’s go.
撃ちたいんだろ?やれよ!さあ。

(フランク、撃鉄を起こし)
Fuck.
畜生。
Get out of here!
出ていけ!

(チャーリー)
You fucked up, all right? So what?
あなたは馬鹿をやったんだろう?だからなんだ?
Fuck up……台無しにする

So everybody does it. Get on with your life, would ya?
皆やっている、(それでも)自分の人生とつきあっているんだ。そうだろう?
Get on with……付き合う、折り合う

ya……=You

What life!? I got no life!
なんの人生だ!? 俺に人生なんて無い!

I’m in the dark here!
俺は暗闇の中にいるんだ。

Do you understand? I’m in the dark!
わかるか?暗闇の中だ!

So give up. You want to give up, give up.
じゃあ降参すればいい。そうしたいんなら。

You said I’m through. You’re right.
あなたの言った通りだ。ぼくももう終わりだ。
Be through……終わる、駄目になる。

We’re both through. It’s all over.
二人ともだ、全部おしまいだ。

So let’s get on with it. Let’s fuckin’ do it.
続けよう。やれよ。
・Get on with it……こちらは「続ける」の意味合い

Let’s fukin’pull the trigger you miserable blind mother fucker!
引き金を引けよ、このくそったれのみじめな盲人が!
Trigger……トリガー、銃の引き金
miserable……みじめな
blind……目の不自由な人

……Pull the trigger.
引き金を引け

(フランク)
Here we go, Charlie.
行くぞチャーリー

(チャーリー)
I’m ready.
いつでも

(フランク)
You don’t want to die.
死にたくないだろう。

(チャーリー)
And neither do you.
あなただって

(うなずくフランク)

Give me one reason not to.
(死なないでいいという)理由をひとつくれ

(チャーリー)
I’ll give you two. You can dance the tango and drive a Ferrari better than I’ve ever seen.
2つあります。僕が今まで見た誰よりもタンゴとフェラーリの運転が上手だ。

(フランク)
You never seen anyone do either.
他の人間がやっているのを見たことがないだろう

(チャーリー)
……Give me the gun colonel.
銃をください。大佐
Colonel……大佐(この場合フランクのこと)

(フランク)
Oh, where do I go from here, Charlie?
ああ、俺はここからどこに行けばいいんだチャーリー?

(チャーリー)
“If you’re tangled up, just tango on.”
『足がもつれても、ただ(タンゴを)踊り続ける』
Tangle up……もつれさせる

on……この場合は動作の継続を表す(例 go on=続ける)

(フランク)
You asking me to dance, Charlie?
俺に踊れと言うのかチャーリー?


 
 ……以上です。チャーリーの言っている台詞“If you’re tangled up, just tango on.”
は、かつてフランクが一緒にタンゴを踊った女性に言ったものです。(このタンゴシーンの台詞ご紹介編はコチラです。)

 暗闇にいても、馬鹿をやって台無しにしても、それでも踊り続ける。
 
 みんな、そうやって自分の人生を生きるしかない。
 
 悲しくても、理不尽でも、最後まで可能性を信じて。
 
 そういう、生きていくうえで最後の支えとなるようなメッセージがこめられた場面です。

この作品については、まだ素晴らしい場面があるので、回を改めてご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 20:47| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月03日

(名場面編2)「あるのは暗闇だけだ」(映画「セントオブウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」より〈※ネタバレ〉)

「セントオブウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」」は盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)

 前回記事でこの作品の名場面であるタンゴシーンについてご紹介させていただきました。

 過去記事一覧はコチラです。
1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1


 今回はさらに別の名場面をご紹介させていただきます(この作品本当に名場面だらけなんですが)。
 完全にネタバレなんで、一度ご覧になった方のみお読みください。


(この場面までのあらすじ)
 付き添いのアルバイトで出会ったフランクに連れ出され、彼のニューヨークでの豪遊に同行することとなったチャーリー。
 同級生が起こした問題について、証言をしなければ学校を退学になるという事態に追い込まれていたチャーリーは、それどころではなかったのですが、次第に、我儘で気難しいフランクの心の奥底にある苦しみや優しさを知ることになります。

 ラウンジで出会った美しい女性とタンゴを踊ったり、試乗したフェラーリで疾走したりとフランクが楽しそうにしているのを見て、どうやら元気になってくれたようだと思っていたチャーリーでしたが、部屋に戻ってきたフランクから買い物を頼まれた後、嫌な予感がしてすぐに引き返してきます。

 フランクは寝室で軍服に着替え、拳銃に弾丸をこめていました。
 
 旅の始まりのころ、フランクは、ここでやりたいことを全部済ませたら、死ぬつもりだと言っていました。

 まさか本気ではないだろうとは思っていましたが、一度、見えない目でなめらかに銃を組み立てているフランクを見て、不穏なものを感じたチャーリーは、付き添いを続ける交換条件として彼から弾丸を預かっていました。
 
 しかし、今、嘘をついて隠し持っていた弾丸が、フランクの銃の中に。

 チャーリーを道連れにすることすらほのめかすフランクに、チャーリーは恐怖と戦いながらも、彼の自殺を止めようとして言葉をかけます。

(以下、場面概略)

「誰だって気が滅入ることが……」
「滅入る?俺はクズだ。いや、腐った人間だ」
「苦しんでいるだけです」
 銃を渡してください。そう言いながら歩み寄るチャーリー。
 見えない目で、しかし正確にチャーリーに銃口を向けるフランク。
「今行けば撃たれないで済むぞ」
 銃を構え、カウントダウンをはじめる。
 5…4…3…2……1………。
 畜生。
 うつろな呟きと共に銃口を自分のこめかみにむけるフランク。
チャーリーがその腕にとびかかり、二人は激しくもみ合った。
 

「出ていけ!!」
 キャビネットにチャーリーを組み伏せて、拳銃を振り上げるフランク。
「嫌です!!」
「頭をブチ抜くぞ!!」
「やれよ!!」
 誰だって馬鹿はやる、だから何だ。
「それでも皆人生を生きている!!」
「俺に人生が!?」
 少し前までかすかに見えていた光も、もう完全に見えなくなった。
 名誉の負傷で視力を失ったのではない。
 昇格できなかったために自暴自棄になって起こした事故でだ。
  数少ない身内である兄にも、素直に振る舞うことができずに断絶してしまった。
「人生がどこにある!?」
 フランクの声から絶望がほとばしる。
「あるのは暗闇だけだ!!」
 この暗闇から出られない。

 震え、息をあらくしながら、チャーリーは言った。
「……じゃあ、降参を」
 僕も降参する。
 主義は曲げられない。同級生を売ることはできない。だが、そうなれば退学だ。
 あそこにいられなければ勉強を続けることはできない、それまで夢見てきた将来は失われる。
「お互いこれでおしまいだ」
 自殺しよう。
「引き金を引けよ!このくそったれの盲人が!!」
 チャーリーの罵声に、フランクはなにかをこらえるように一瞬目を閉じ、それから言った。
「……撃つぞ」
 思いのほか静かな声で。
「いつでも」
 チャーリーの声はまだうわずっていたが、その瞳はフランクを迷いなく見つめていた。
 チャーリーの早くなっている呼吸を聴きながら、フランクは尋ねた。
「死にたくないだろう?」
 その、光を見ることができない瞳に、うすく涙がたたえられていた。
 チャーリーは苦しい息を飲みこんで答えた。
「あなたも」
 フランクは、やがて、そっとうなずいた。
「……教えてくれ」
 ひとつで良い。自分が生きなければいけない理由を。
「二つあります。タンゴとフェラーリの運転が誰よりも上手だ」
 旅の中で見せてくれた。とても楽しかった。

 君はどちらもそれまで見たことはなかっただろう。
 そうつぶやくフランクの口の端がようやくかすかに上がった。

「……銃をください」

 フランクの瞳の涙がふくれあがり、まぶたのきわで小さな光を帯びる。
「俺はこれからどうすれば良い?」

 チャーリーは答えた。
「『足がもつれても、踊り続ける』」

 それは美しいドナを誘ってタンゴを踊った時、フランクが言った言葉。
 タンゴは単純だ。失敗は無い。人生と違って。
 足がもつれても、踊り続ければ良い。
 そう言っていた。
 人生は単純ではない。失敗もある。
 それでも、踊り続ければ、終わりではない。

「俺に踊れと言うのか……」
 よろけるように身を離し、うつむいたフランク。
 その口から、ため息のように歌がもれた。

 ……心の半分は別れを告げたがっていて、
 もう半分は残りたがっている……。

 チャーリーとのもみあいで乱れた前髪の陰、奥底にしまってあった苦しみを吐き出し、疲れたきった顔に、一筋の涙が伝った。

 起き上がるチャーリーの目からも涙がこぼれた。

「……この軍服はどうだ?」
「すてきです」
 大統領の就任式で来た服だ。勿論末席だったが。そう思い出を語るフランクは、チャーリーの頼みを聞いて銃を置くと、何か飲ませてくれ、と言った。
「ジョン・ダニエル氏がいい」
 フランク独特の、ウィスキージャック・ダニエルの呼び方。
 奴とは古い付き合いだから、あだ名でいいんだ。
 旅のはじめに、そう言っていた。
 

… …これが、この作品もう一つの名場面です。

Youtube内「Movie Clip」に、この場面の動画がありましたので、リンクさせていただきます。アル・パチーノとクリス・オドネルの素晴らしい演技をご覧ください。

(出ていかないと撃つぞと脅してフランクがカウントダウンするところから、チャーリーがフランクを力づけて「足がもつれても踊り続ける」と言う場面まで)



 アル・パチーノは長年アカデミー主演男優賞を獲ることができずに、ときに賞狙いの演技とすら揶揄されたそうですが、この作品で獲れて本当に良かったのではないでしょうか(うがった言い方をしますが、賞って必ずしも本当に相応しいときに貰えるものでもないので、でも、これは「まさしく」という感じがします)。
 アクまで含めた彼の個性と実力が如何無く発揮されていて、しかもストーリーも台詞も素晴らしい。

 このとき、絶望を吐露し、それでもチャーリーに留められて死の淵から戻ってきた彼の遠い目、静かに頬をつたう涙。

 映画史上に残る最高の演技でしょう。

 そして、チャーリーの台詞。

「足がもつれても踊り続ける」

私が、この90年代近辺の映画が一番好きなのは、こういう想いが作品の中でしばしば語られているからです。

生きていく日々が苦しいことを十分に知った上で、それでもくじけないことを勧め、前を向く価値を教えてくれている。

ときに、こんないい場面を観てすら、それは本当だろうかと疑いたくなる時もありますが、しかし、こういう作品があるということそれ自体が、やはり、時に暗闇と思われる私たちの人生の光になります。

次回はこの動画内の英語の台詞についてご紹介させていただきます。よろしければ見にいらしてください。
 
 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 20:40| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月02日

(台詞編1)映画「セントオブウーマン(Scent of a woman)」アル・パチーノのタンゴシーン

前回記事で映画「セントオブウーマン」の一場面についてご紹介させていただきました。(映画全体のご紹介記事はコチラ


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今回はこの場面の台詞をご紹介させていただきます。

盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。

ラウンジで出会った美しい女性ドナにチャーリーをとりもとうとして彼女に話しかけたフランクが、彼女とタンゴを踊る場面です。

 Youtube内の「Movie Clip」というサイトの動画をリンクさせていただきます。(映画の名場面を一部紹介しているサイトのようです。)



 以下台詞+私的直訳です(例によってあいまいな部分がありますがご容赦ください)。

(フランク)
Would you like to learn to tango, Donna?
タンゴを習ってみたいかね、ドナ?
Would you like to〜…… 〜してみたいですか?
(相手の意思を丁寧に尋ねる表現。)

(ドナ)
Right now?
今ここで?
Right now……今すぐに?

(フランク)
I’m offering my seivices……free of charge.
サービスを提供するよ。無料でね。

What do you say?
どうだね?

(ドナ)
Ah……I think I’d be a little afraid.
少し怖い気がするわ。

(フランク)
(Afraid)of what?
(怖いって)何が?

(ドナ)
Afraid of making a mistake.
間違えるのが。
make a mistake……間違いをおかす

(フランク)
No mistakes in the tango, not like life.
タンゴに間違いはない、人生とは違って。

It’s simple. That’s what makes the tango so great.
単純なんだ、それがタンゴの素晴らしいところだ。

If you make a mistake, get all tangled up, just tango on.
間違えて、足がもつれても、ただ踊り続ければいい。
Tangle up……もつれさせる

on……この場合は動作の継続を表す(例 go on=続ける)
Why don’t you try?
試してみては?

Will you try?
試してみるかい?

(ドナ)
All right. I’ll give it a try.
ええ、試してみるわ。
Give it try……あることを試みる

(フランク)
Hold me down,son.
見てろよ、チャーリー。
(……ここ、よくわからなかったので吹き替えを参照させていただきました。「Hold down」に「保持する」の意味があるそうですが……。「注目していろよ」というニュアンスでしょうか。)
Your arm.
腕を。
(ドナに手をとってもらうフランク)

Charlie,I’m gonna need some coordinates here, son.
チャーリー、ここの(ダンスフロアの)説明をしてもらいたい。
Coordinate……この場合、「調整」「全体をまとめること」、「案内をしてもらう」というような意味合い。


(チャーリー)
The floor’s about 20 by 30,And you’re at the long end.
フロアは約20×30フィート(の楕円形)で、あなたは長辺の端にいます。

By……この場合は「multiply(掛ける)」が略されていて「(数を)掛ける」の意味   
(例)Multiply 5 by 3, and the product is 15. 5に3を掛けると15になる。
 

There’s a tables on the outside. The band’s on the right.
外側にテーブルがあって、右側にバンドが。

(ドナと一緒に中央のダンスフロアに出ていくフランク)

以上です。チャーリー、さすが頭が良くて説明に無駄がありませんね。

一方、このときフランクが言った、「足がもつれても踊り続ける」が、この後ある場面にもう一度出てきます。とてもいいシーンなので、こちらもご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 11:41| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月01日

(名場面編1)映画「セントオブウーマン(Scent of a woman)」アル・パチーノのタンゴシーン

 本日もアル・パチーノが主演男優賞を受賞した「セントオブウーマン」(1992年)について書かせていただきます。

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前回ご紹介記事はコチラ

盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)と名門高校の奨学生チャーリー(クリス・オドネル)のニューヨークへの旅と心の交流を描いた作品です。

 本日はこの映画屈指の名場面であるアル・パチーノとガブリエル・アンウォーのタンゴシーンについて一部台詞をご紹介します。

 この映画を好きな方なら10人中12人が「ああ、あのタンゴ……!」とため息をつく場面です。

(この場面までのあらすじ)

 チャーリーは感謝祭休暇中のアルバイトでフランクの家に3日間だけ世話係として滞在する予定でしたが、普段フランクの手助けをしている姪一家が旅に出てしまうと、フランクもあれよあれよというまにチャーリーを連れ出して、ニューヨークに来てしまいます。

 実はチャーリーは学校で起きた、あるたちの悪い悪戯の犯人を目撃してしまい、そのことについて休暇明けに証言しなければ退学させる(言えばハーバード大へ推薦する)と校長に言われていました。

 せっかく入れた名門高校を退学したくない。しかし、親しくないとはいえ、同級生を売るというのは……。

 最初はチャーリーのそんな悩みを知る由もなく、口を開けば暴言か女にまつわる超下世話な話、姪の言う「芯は優しい人なのよ」の「芯」ってどこだというくらい感じの悪いフランクは、「このツアーには盲導犬がいる」と、良いように彼を引き回します。

 困り果て、憤慨もしていたチャーリーですが、フランクのこの台詞がひっかかって、フランクをおいて帰れなくなります。

「最高のホテルに泊まり、うまい料理、酒を楽しんで、ニューヨークの兄貴を訪ね、美しい女を抱いて、それから銃で頭をぶち抜く」

(余談ですが、このときフランクたちが滞在したホテル「ウォルドルフ・アストリア」は実在します。映画そのままに無茶苦茶素敵です。フランクが選んだ気持ちわかる。)

 一方、最初は名門校の勉強だけがとりえなひよっことチャーリーを馬鹿にしていたフランクでしたが、「ある事件を目撃してしまったが、同級生を売りたくない」というチャーリーの悩みを聞いてから、少し考えをあらためます。

 その後、旅の中で、チャーリーから「証言の有無によって、退学かハーバード大への推薦かが決まる」という話まで聞いたフランクは、それでもそんなことはしたくない、と言い張るチャーリーの生真面目さに、
「君は人生苦労するぞ」と言い、その苦難の前途に乾杯しよう、と豪華なラウンジに入っていきます。

 そこで、漂ってきた石鹸の香りに、近くの席に女性がいるはずだと気づいたフランク。

 そして、彼女の姿を説明するチャーリーの様子から、彼が彼女を魅力を感じているようだと察して、チャーリーを連れてその女性の席に行きます。

(ところで、このとき、彼女が使っていると言った「オグルビーシスターズの石鹸(ogleby sisters soap)」とはどこで売っているのだろうというのがネットでよく話題になっていました。一応実在するみたいです。綺麗な質のよさそうな石鹸です。
石鹸を扱っているWebページは以下になります。
https://www.oglebysisterssoap.com/
Tangoという名前の石鹸もあるそうです。嗅いでみたいなー。
http://shop.oglebysisterssoap.com/products/bar-soap-tango

海外でも、あの石鹸はどこのもの?という質問が出ていました。
http://www.topix.com/forum/indy/TF64NCA7T4Q64RCIC/p2        )

 人を待っているから、という、その美しい女性ドナ(ガブリエル・アンウォー)に「一緒に待ってもいいかな?いやらしい男が近づかんよ」とちゃっかり同席することに成功したフランクは、君はきっとチャーリーを気に入る、と推しつつ、聞こえてきた音楽をきっかけにドナをタンゴに誘います。

 以下Youtube内の「Movie Clip」というサイトの動画をリンクさせていただきます。(映画の名場面を一部紹介しているサイトのようです。)



何度観ても、ため息が出ます。なんて美しい。

ほっそりしているけれど、頬や唇はふっくらバラ色のドナの、春の日差しのようにほんのり輝く笑顔と、色とりどりの砂糖菓子のホロホロこぼれおちるような耳に心地よい笑い声。

本当に石鹸の香りがただよってきそうです。

そして、彼女の美しさとフランクの予想のつかない言動の両方に少し緊張しながらも二人を見守っているチャーリーの真面目で優しげなまなざしと、今までの暴言や気難しさとは打って変わって、チャーリーのためにドナをもてなそうとするフランクのいたずらっぽくチャーミングな色気と温かみ。

それぞれの人としての魅力が音楽を背景に映し出された後、豊穣のタンゴシーンへとつながっていきます。

少しつたなく初々しく、ときどきはにかんで笑いながら、フランクに引き寄せられて踊るドナと、目が見えないことを感じさせないほど鮮やかに彼女をリードするフランク。

 楽しげに、なめらかなステップをふみながら、ドナの肌の絹のような感触や弾力、漂う香りを、タンゴの音に絡ませ、淡く軽やかで、だからこそ心騒がせる官能に、視界以外のすべてを浸しています。

 そんな二人を笑顔で見つめるチャーリー。

 それまで思い思いにおしゃべりに興じていた人々も、二人に見とれ、品よく賞賛の笑みを向けています。

 観ているとその美しさに魅了されながら、これが、こういう時間が、基本的に楽しくもなければ報われもしない人生の日々の中で、本当に束の間だけ、世界が美しい温かい一面をみせてくれている瞬間なのだと感じ、救いとせつなさとが同時にこみあげてきます。

 こういう人生の哀歓をさりげなく描いた名場面がたくさんある映画です。

 次回、このタンゴシーンでの台詞と、ネタバレになってしまいますが、もう2つ、ある名場面についてのご紹介をさせていただきます。よろしければご覧になってください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 12:53| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月28日

(ご紹介編)映画「セントオブウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」(アル・パチーノ主演)

 もうじきアカデミー賞授賞式。(現地時間2014年3月2日)

 今回はレオナルド・ディカプリオが悲願の主演男優賞を受賞するかどうかが話題になっていますね。

 かつて、名優アル・パチーノも同じように繰り返しアカデミー賞にノミネートされながら、受賞を逃し、最初のノミネートから実に20年後に悲願の受賞を果たしました。

 賞賛を浴び、報われるにふさわしいとても素晴らしい作品、素晴らしい演技で。

「セント・オブ・ウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)

 名門高校の苦学生チャーリー(クリス・オドネル)がひょんなことから盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)のニューヨークへの旅に付き添うことになり、彼の強烈なキャラクターに振り回されながらも、旅の中で次第に互いに心を通わせていく姿を描いたロードムービーです。

 様々な人が生きるニューヨークの魅力、真面目なあまり、損な役回りを背負わされてしまうチャーリーの、誠実で透明感あるたたずまい(本当にとてもきれいな若者です。びけえとかそういうのさておいて、いかにも聡明で性格が良い感じ。最近こういうキャラクターが出る作品があんまりなくて残念)。フランクの、言動に強烈なクセがありながら、気骨とぬくもりを秘めた人間性。人生のやるせなさと輝きの両方を描いたストーリー、胸騒がされる美しい音楽……。

「良質」というのはこういう作品のことを言うのでしょう。

このブログでちょいちょい「80年代後半〜90年代こそアメリカ映像作品の黄金期」と書かせていただいていますが、これこそがその好例です。せつないけれど温かくて人間に魅力がある。

(そのほかの例として「マイ・ルーム(そういえばこの作品で若き日のディカプリオが実に素晴らしい演技を披露しています)」「レオン」「白い犬とワルツを」をそれぞれご紹介させていただいているので、よろしければ併せてお読みください。)

上記の通りさまざまな良さを持つ作品ですが、とりあえず、アル・パチーノの眼球を動かさない迫真の演技と、彼が美しいガブリエル・アンウォーと踊るタンゴシーンだけでも一見の価値があります。
 もーこれがホントいい……。
 僕的映画鑑賞史上最も美しいシーンです。大人の魅力に満ち溢れ、映像からかぐわしさすら漂う。

 この週末に是非まずはレンタルででもご覧になってみてください。決して損はなさならないはずです。

  当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。

1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
※以下ネタバレ
4,名場面編2
5,台詞編2
6,名場面編3
7,台詞編3
名場面編4
台詞編4

 
 よろしければまた見にいらしてください。
 
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:01| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月26日

(ご紹介編)映画「グロリア」(「レオン」に影響を与えた作品)


グロリア

ここ数日映画「レオン」についてご紹介させていただいたので、補足として、「レオン」の原型と言われる映画「グロリア」を簡単にですがご紹介させていただきます。

当ブログ「レオン」ご紹介記事はコチラです。
ご紹介編
「(ネタバレ編@)『キッチンのブタ』」
「(ネタバレ編A)『観葉植物』」。
「(ネタバレ編B)出口へ向かうレオン
※書いといてなんですが、AとBはまだご覧になっていない場合は絶対にお読みにならないでください。

「グロリア」は、ギャングの情婦だった女グロリアが、同じギャング組織を裏切り、命を狙われることとなった会計士の一家から、襲撃の直前に6歳の息子フィルを託されたことからはじまる、都会の孤独な逃避行を描いた作品です。

フィルが父親からギャングの秘密を記した手帳を渡されていたために、二人はギャングから執拗に追われ、最初はとうていかばいきれないと、フィルから離れようとしていたグロリアでしたが、フィルは生意気な口をききながらも、彼女に追いすがり、結局一緒に逃げているうちに、二人の間に絆が生まれ育っていきます。

 確かにレオンとの共通点の多い作品ですが、キャラクターはむしろ表裏のように入れ替えてあります。(そしてそれぞれに魅力的です。)

 レオンは殺しのプロですが、反面少年のような性格を秘めています。

 レオンが守る少女マチルダは12歳。両親と不仲で、大人に心を許していません。また、弟を殺した組織の人間を復讐のために殺すつもりでいます。
 そして、レオンとのやりとりで、ときにレオンより一枚上手だったり、大人びた顔をのぞかせたりします。

 一方グロリアは組織と関わりをもっているものの、あくまで素人。しかし、いかにも長年人生の荒波にもまれた風情で、胆が据わってしたたかです。

 グロリアが守る少年フィルは6歳。家族とは愛し合っていて、襲撃の前に、子供を守ろうとした両親が、グロリアに彼をかくまってくれるように頼むことで生き延びます。反抗したり「僕は男だ」と強がるところもありますが、マチルダの尖った印象はまだ彼にはありません。
 ただ、マチルダのレオンに対する気持ち同様に、フィルもグロリアに恋に近い強い思いを抱くようになります。

 たしかにグロリアはホントいい女です……。

 若くもないし、すごく美人というわけでもないですが、ハイヒールにひらひらしたスーツで、誰も助けてはくれない都会の無関心の中、フィルをひきよせ、肩にかけた小さなバッグから出した、手のひらにおさまるくらいの華奢な銃を構えて、瞳と声だけは男まさりの強さで、追っ手を挑発し、威嚇してフィルを守る姿がカッコ美しい。
(余談ですが、彼女のファッションは着物っぽいガウンに至るまでウンガロ。ケビンコスナー主演の「アンタッチャブル」のアルマーニと並んで、衣装の魅力が映画に超貢献してます。)


アンタッチャブル

※グロリアのウンガロ衣装についての『ELLE』の記事はコチラ

 さきほども書きましたが、長身でたくましく、黒いコート姿・トランクに大量の武器を納め、常に戦闘態勢といったいでたちのレオンが、サングラスをとり、素で喋るとまだ少年のようなところがあると真逆の魅力です。

 ちなみにこの映画の監督はジョン・カサヴェデス。グロリアを演じたジーナ・ローランズの夫です。

 これだけの魅力のある作品から多くの土台を借りて、きちんと別の魅力のある作品に仕上げたという意味でも、「レオン」も凄いと改めて思います。

 またいずれ、機会がありましたら、「グロリア」の名場面も少しご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:29| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月25日

(ネタバレ編B)映画「レオン」名場面「出口に向かうレオン」

本日は映画「レオン」のある名場面と感想を少し書かせていただきます。

当ブログ同映画ご紹介記事は以下の通りです。
ご紹介編
「(ネタバレ編@)『キッチンのブタ』」
「(ネタバレ編A)『観葉植物』」。



(今回の記事は、一番大切な場面のネタバレなんで、観ていない方は読まないでください。一度観た方が思い出す〈そしてできればもう一度観たくなっていただく〉用の文です。)

 家族を麻薬密売組織に殺された少女マチルダが、同じアパートに住む殺し屋レオンのもとに逃げ込んできたことからはじまる、奇妙な同居生活と二人の心の交流を描いた作品です。 

 マチルダは自分の大切な弟を殺したスタンスフィールドが皮肉にも表向き麻薬取締局捜査官であることを突き止め、かたきを討とうと単身彼のもとに乗り込んでいきます。

 しかし、逆に捕まってしまい、仲間(同じく密売組織に関わっている)の監視のもと、部屋に閉じ込められてしまいます。

 レオンはマチルダの置手紙で彼女の決意に気づいて、見張りの人間たちを倒して彼女を取り戻します。

 二人はその場を逃げ切ることに成功しますが、やがてスタンスフィールドがレオンたちの居場所を突き止めると、特殊部隊を率いて襲撃してきます。

 激しい銃撃の末、マチルダを換気口から逃がしたレオンは、重火器の攻撃に深手を追いますが、特殊部隊のマスクをつけ、負傷者のふりをして部屋から出てきます。

 部隊の人間たちは彼こそがレオンであると気づかず、傷の具合を確かめていましたが、このとき、物陰にいたスタンスフィールドがレオンを見つけてしまいます。

 部隊の人間たちの間をすり抜け、一人、よろけながらも階段を降りていくレオン。

 ささやかな優しいピアノの音が、レオンをいざなうように重なります。

 血しぶきがつき、くもったマスクの視界から、出口への道を見つけ歩いていくレオン。

 マスクをとった彼の目に、通路の向こうの光さす外の世界が写ります。
 

 あと少し。
 

 ここから出れば、マチルダと落ち合う約束をした場所へ行ける。
 

 マチルダと一緒に町を出て、どこか違う場所で幸せに生きていく。

 大地に根を張り、夜は穏やかに眠る日々を。


 傷つき、水の中を進むようにゆっくりと歩いていくレオンの、光を見つめる、大きく見開いた瞳。

 その背後にスタンスフィールド。

 銃口をきっちりとレオンの命に向け。

 レオンの視界が一瞬点滅し、目前だった外の景色が、ピアノのこぼれおちるような音と共にゆっくりと傾いて、冷たい床へと変わっていきます。

「スタンスフィールド?」
自分の血に染まった床に倒れるレオン。

 スタンスフィールドは笑みを浮かべて、「御用は?」と尋ねます。

 レオンは血に染まった手でスタンスフィールドの手を掴むと、何かを握らせ、かすれた声で言います。
「マチルダからの贈り物だ」

 スタンスフィールドが手を開くと、金属のリング。
 
 手りゅう弾のピン。
 
 レオンの懐にいくつも隠し持たれていた。

「クソ」
ひきつった顔で呟くスタンスフィールド。

 激しい爆音とともに、出口から炎が雪崩れるように噴き出します。

 レオンが、あと一歩のところで出ることのできなかった外の世界へと。


 ……あの、外へ出て行こうとするレオンにピアノの音楽が重なり合う場面、レオンの外の光に照らされたまなざしと歩み。そして、彼の死。

 何度観たかわからないほどに繰り返し観ましたが、この場面で必ず胸が熱くなります。

 かつて知人が、この話は悲しいからあまり観たくない、と言っていたとき、私は確かにレオンが死んでしまうのだから、これは悲しい場面なのだけれど、だけど私は何度も何度も観ているしこれからも観るつもりだ、それはなぜだろうと不思議に思いました。

 そのうち気づきました。人にとって悲しみは2種類ある。

 一つは望まないのに病気や死などの不運に見舞われること。

 そしてもう一つは、自分の生きたい人生を、自ら選び損ねること。

 マチルダと生きていきたいと思いながら、死んでいった。

 その意味ではレオンは悲しかったでしょうし、彼の死は観る者の心も悲しくさせます。

 だけど、レオンは最期まで戦い、マチルダを守った。

 マチルダのために、命の最期の瞬間を使って、マチルダを殺すであろう者を道連れに死んでいった。

 その意味ではレオンは最期の瞬間まで、自分の生きたい人生を選びきったのです。

 悲しい場面ではあるけれど、私が何度もこの映画を観ようとするのは、深く傷つきながらも、マチルダとの人生へと向かおうとするレオンの、子供でも持ちえない透き通った目の光と、そこへたどり着けないと悟った後も(おそらくはすでにそれを半ば覚悟の上で)、レオンが最後の一瞬までマチルダのために生きたというその強さに、どうしても惹きつけられるからだと思います。

 不運という一つ目の悲しみがいつ誰を見舞うか、私たちはそれを知ることができません。

 だけど私たちはいつも、二つめの悲しみの隣にいます。

 油断、怯え、迷い、身勝手、そういうものに引きずられて、大切な思いや誰かを守れない人生を生きると言う、ただ細く暗くなって尽きていく道のすぐ隣に。

 あるいは今、もうそこに足を踏み入れているのかもしれない。

 そういう不安を抱えながら生きているから、ときにレオンのあの目を、あの衝撃的な死という生き様を思い出したくなるのです。

 あの強さを、自分はいつか持てるだろうか。貫けるだろうか。

 そう自分自身に問いかけながら。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 22:23| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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