2009年08月20日

遅ればせながら、補足

以前、このブログの記事としてご紹介した
ウォーターハウス氏の展覧会
のページにウィキペディアの画像リンクなどを貼らせていただきました。

ああ、つらつらと、この絵のこと語ってたのね……、みたいに、もう一度確認してみようかと思ってくださったら
(もちろん、なんのこっちゃい、どれ、見てやろうかという御方も)、上記の記事名をクリックしてください。

ラファエル前派の流れを汲む画家、ウォーターハウス、彼の作品のロンドンでの展覧会の記事です。

展覧会は2009年九月十三日までだそうです。とても美しかったので、個人的にはオススメです。
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テート.セント.アイヴス(美術館)

(画像)テート.セント.アイヴスの外観。

美術館外観.JPG

(要約文)
ロンドンの大美術館の一つであるテートギャラリー、テートモダンの分館がコーンウォール地方の観光地、セントアイヴスにあります。

わたしが行った2009年夏には、陶器、現代彫刻、地元出身の画家の絵画などが展示されていました。

吹き抜けの大窓の展示室から見える海と空は、展示作品をいっそう際立たせていました。

展示品はもちろん、白亜の洒落た建物も、併設のカフェから見える景色も、とても美しいです。

テート.セント.アイヴスのHPアドレス
○Tate St Ives
http://www.tate.org.uk/stives/

テート.セント.アイヴスの、2009年五月十六日から2009年九月二十七日までの展示についての情報ページ
http://www.tate.org.uk/stives/exhibitions/summer-season-2009/

(※)展示換えなどがあるかもしれません。ご注意ください。

どうしても、この作家のコレが観たい!というものがある場合、テートに限らずどこでも、事前に美術館に直接確認なさったほうがよろしいかと思います。



(本文)
テート.セント.アイヴスは、白くすっきりとした円筒状の建物で、半月型にたわんだ、大きな正面窓は、目の前の明るい海を反射させて、建物自体が、巨大でさわやかなモダンアートの風情です。

(画像)テート.セント.アイヴスの上階のデザイン。
美術館上階.JPG

と、言っても、モダンアートにうとい私は、ロンドンのテートモダンですら、一部を除いて、一作品前に長時間いられず、
(不快というわけではなく、どこをどう鑑賞すればいいのかがわからない)
わりと、館内スタスタ歩いてしまった経験があるのですが、この、テート.セント.アイヴスは、とても面白かったです。

「せっかく、目の前に最高の海と空が広がっているのに、建物に入って芸術鑑賞なんて。そんなのほかでいくらでもできるだろうに」

と、自分でも思いましたが、なにせ、いい天気過ぎて、いくら空も海もきれいでも、アヅアヅで、日陰とか、カフェがあるという意味でも、フラフラ足が向いてしまったのです。



この時(2009年夏)は、Lucie Rie(ルーシー・リー)という日本でも人気の陶芸家さんや、
(【デザイナーの三宅一生氏は彼女の熱烈なファン】。日本でも2010年4月から六本木の新国立美術館で一大展覧会があるそうです)

漁師で画家という異色の経歴で、セントアイヴスの風景や海や船を独特の視点で描いたAlfred Wallis氏(アルフレッド.ウォリス)、

抽象彫刻家Barbara Hepworthさん(バーバラ.ヘップワース)の作品などが展示されていました。

(※彼女のパートナーBen Nicholson【ベン.ニコルソン】も有名な画家)

ルーシー・リーさんの陶器は、主に薄手で、色も形も、さりげないけれど、どこかに凜とした静寂のたたずまいがあります。

簡素清冽を愛する日本人にファンが多いのはよくわかります。

ところで、さきほど申しあげたとおり、わたしは、抽象的現代アートは一部をのぞき、観方がよくわからないという悲しい性分なのですが、今回、バーバラ.ヘップワースさんの抽象彫刻作品を観て、はじめてこうした作品の美しさというものを、うすぼんやりと解したような気がします。

彼女の作品は、大きく弧を描いた吹き抜けの展示室の、大窓の周辺に陳列され、彫刻の背後には、青い青い海と太陽の光がきらめいていました。

丸みを帯びた彫刻に、楽器のように弦が幾つもピンと張られた、その隙間から、明るく鮮やかな水平線が見えます。

(画像)美術館の外の海
美術館外の海.JPG

「ほほう、ここから海を見ると、なんか面白いですなあ」
と、頭を傾けて、まじまじと彫刻の穴をのぞきこんでいたわたしの目に、海とくっきりと対照を成す、その円みと線の、追求されつくした「形の美」が、しだいに浮かび上がってきました。

黄金比のように(※)、人間の目が、なぜかしらないけれど美しいと感じる、約束の形というものが存在する。

このかたの彫刻も、自分の表現したい思いやイメージにぴったりと沿う、美しい、無駄のない形というのを、どこまでもストイックに追い求めて出来上がった物なのだ、と、そのとき感じられたのです。

大理石のなめらかな艶に、空の青、海の青をひっそりとこもらせて、おだやかによりあつまるオブジェ。

大きな一木をくり抜いた彫刻。
そのくり抜かれた穴は、徐々に中心をずらすようにして、いくつもの円を描いていて、あたたかな木肌の丸い線が、昼の光を浴びて、白くほのめく。
そしてその向こうに、空と海が、はるか遠くの世界のように垣間見える。

この、木、ブロンズ、大理石の質感、形の味わい、それと調和する空間の、無言の神秘性というのは、「人」とか「動物」とか、それ自体がはっきりと意味を持つものでは生み出すことができない。

この、えも言われぬ形でなければ、この不思議な気配は、この世に現れないのだと、納得できたのです。

しかし、この彫刻のフォルムの美しさを、くっきりと浮かび上がらせる「背景」として、窓の向こうの、セントアイヴスの、空と海と光が果たす役割は非常に大きいと思います。

世界で一番くらい、幸運な場所に置いてもらえた現代アートなのではないでしょうか。

あるいは、この方はセント.アイヴスを拠点にした芸術家ですから、芸術家の美意識と、セント.アイヴスの自然が相まって、こうした印象深い姿に結実したのかもしれませんが。




まったく話は変わりますが、この美術館のカフェからは、海に向かって張り出す、赤茶けた屋根に白い壁の、セント.アイヴス独特の町並みと海が一望できます

(画像)カフェから見たセント.アイヴスの町。
カフェからの眺め.JPG

風光明媚なセント.アイヴスの中でも、屈指の絶景お茶ポイント(ナニソレ)なのではないでしょうか。

アートに浸ったあとは、景色を楽しみながらカフェでのんびりというのも、オススメです。


美術館、テート.セント.アイヴスのHPアドレスは以下の通りです。

http://www.tate.org.uk/stives/

テート.セント.アイヴスのカフェのページです。

http://www.tate.org.uk/stives/information/eating.htm

<2010年、日本の新国立美術館(六本木※以後各地巡回)で開催される「ルーシー・リー展」【2010年4月28日(水)から6月21日(月)まで】のHPは下記のアドレスです。

http://www.lucie-rie.jp/

日本の新国立美術館「ルーシー・リー展」について(一部作品が観られます)
http://www.lucie-rie.jp/about/index.html

テレビ東京の名物番組「美の巨人たち」でルーシー.リーさんが紹介されていたそうなので、そちらの記事のアドレスも張らせていただきます。

http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/090207/

また、わたしは残念ながら行かれなかったのですが、セント.アイヴスには、バーバラ.ヘップワースさんの美術館と、彫刻が展示されたお庭もあるそうなので、こちらの情報も貼らせていただきます

○Barbara Hepworth Museum & Sculpture Garden
http://www.tate.org.uk/stives/hepworth/visiting.htm

テート美術館HPで紹介されている、バーバラ.ヘップワースさんの作品一覧。(絵もとても素敵です)http://www.tate.org.uk/servlet/ArtistWorks?cgroupid=999999961&artistid=1274

(注)
実際テート.セント.アイヴスで今(2009年九月二十七日まで)ご覧になれるのは、この作品一覧のうちの、ごく一部です。
また、展示はされていたけれど、このページで作品の画像が見られるようになっていないという作品もかなりあります。


バーバラ.ヘップワースさんの作品の一例
http://www.tate.org.uk/servlet/ViewWork?cgroupid=999999961&workid=6053&searchid=9162

また、前回セント.アイヴスへの旅」で紹介させていただいた陶芸家バーナード.リーチ氏の作品も、テートが一部所蔵しているようなので、作品が観られるページのアドレスを張らせていただきます。

(注)繰り返させていただきますが、「所蔵している作品」ということであって、現在展示されているという意味ではありません。お気をつけください。

http://www.tate.org.uk/servlet/ArtistWorks?cgroupid=999999961&artistid=1478&page=1


※余談ですが、わたしがセント.アイヴスの、リーチ氏の記念館であるLeach Pottery で観た(テートではありません)あの方の作品は、また違った味わいでした。
ティーポットでしたが、淡い、水色とも緑ともつかない、透き通った愛らしい色合いで、眺めていると、心穏やかになれる風情でした。



(※)黄金比(黄金分割)

一つの線分を二つの部分にわけるとき、全体に対する大きな部分と小さな部分の比とが等しくなる分け方。
大と小の比は約1.618対1で、古代ギリシャ以来最も調和的で美しい比とされた。                    
(スーパー大辞林より)

……なんだか、よくわからない感じもしてしまいますが、研究によれば、さまざまな美術品(例、絵画や彫刻の女性のプローションとかポーズなど)や建築にも、実はひっそり、この「きれいに見える比率」が踏襲されているそうです。
posted by Palum at 04:00| イギリスの美術館 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月23日

ティム.ライス氏の対談会(「Sir Tim Rice In Conversation」について)

ティム.ライス氏が手がけられたミュージカルの一部
ティムライス氏のミュージカル.JPG


(要約文)
ロンドンのロイヤルアカデミー美術館(Royal academy of Arts)で、七月は、画家ウォーターハウスの展覧会を記念して、ミュージカル作詞家として超有名な、ティム.ライス氏が、ウォーターハウスを含む、ご自身の絵画コレクションについて対談形式でお話される「Sir Tim Rice In Conversation」という催しがありました。

(※『Sir』とはイギリスに大きな貢献をした人物に、王室から送られる称号です)

お話後、会場脇の部屋でワインを片手に、参加者たちが歓談、という流れの中に、ティム.ライス氏がご登場。
彼とお話したいと思うすべての人たちに、気さくにご自分から話しかけておいででした。

ティム.ライス氏は、固まっている(理由=緊張)わたしにも笑顔で握手してくださいました。

超一流の芸術家にして、暖かな声と笑顔の、素晴らしい紳士でいらっしゃいました。



(本文)
ロイヤルアカデミー美術館では、目を疑うほどゴージャスなイベントをやっていることが、ままあります。

(バイオリニストの葉加瀬太郎さんのフリーコンサートとか。
【見逃して、地に額を擦り付けるほど残念がった人=わたし】)

「ティム.ライス氏が、ご自分の絵画コレクションについて語る会」

というような、パンフレットの宣伝文句を見ても、最初はなんのことやらよくわかりませんでした。

付け焼刃でミュージカルにハマりだしたわたしですが、
『ジーザスクライストスーパースター』
(イエス.キリストの物語を題材にしたミュージカル。衣装や画面構成に、カラフルな七十年代パワー炸裂。
でも、単に大胆なだけではなく、裏切り者となったユダの人物解釈については、非常に深いものがあります。)
は、学生の頃から映画として好きで、何度も観て、泣いたりワクワクしたりしていました。

また、こちらに来て、日本でも有名な、
『ライオンキング』、『エビータ(映画はマドンナ主演)』、『ジョゼフと不思議なテクニカラードリームコート(旧約聖書の聖人ヨセフ物語を題材にしたコメディ)』
といったミュージカルを観て、その素晴らしさにも目を見張りました。
(各ミュージカルのご紹介も、いずれ書かせていただきたいと思います。)

全部、ティム.ライス氏が作詞に携わっておいでなのです。

ミュージカルについては、アメリカのブロードウェイと並んで、世界二大聖地といわれるロンドンで、名作を生み出し続けておいでの御方。

イギリス人が、作曲家アンドリュー.ロイド.ウェバー氏と並んで(『ジーザス』、『ジョゼフ』、『エビータ』はお二人がタッグを組まれた作品)、イギリスミュージカル界にこの人ありと誇る芸術家。

……が、自分の半径数メートル単位のところにお座りになって、お話なさるのを観るなんて、そうそうある話とは思えないじゃないですか。

ですが、「ロイヤルアカデミー美術館ならやるかもしれないな……」と思い、予約。

(いずれ書かせていただきたいのですが、以前もこの美術館の別の展覧会で、こうした講演に参加させていただき、内容も講演者のかたも非常に素晴らしかったのです。)

ちなみにこうしたイベント情報はおもにホームページに載っています。

だけど、「あの!あのティム.ライス氏が!!」とか「葉加瀬太郎氏きたる!!」とか、スポーツ新聞的にドカバーンと自慢してないので、自分で隅から隅まで読まないといけません。


利きすぎの冷房と戦いながら、ウォーターハウスの絵画は泥縄式に必死に鑑賞し、会場に向かいました。

この会場は、普段は普通の展示部です。

普通の、といっても、西洋建築に漠然としたイメージしかないわたしなどには、『ベルサイユのバラ』すら思い浮かぶ、白い天井や壁に、重厚な金色の花や葉をモチーフにしたレリーフ(おそらくは金属製)がたくさんはめ込まれた、それはゴージャスな部屋です。

ワルツのひとつも踊れなきゃ、入っては申し訳なさそうですが、別にそんなことはないのです。

もちろん、普段、展示されている油絵や彫刻はそのまま飾られた中に、椅子が百ほど置かれて対談会開始です。


ティム.ライス氏がご登場なさったときは、感動しました。

大変背の高い、落ち着いた、「風格」ということばを思い出させるお方でした。

この会は、ロイヤルアカデミーの関係者の方と、ティム.ライス氏が二人、並んでおかけになり、やりとりをなさるという形で展開していました。

わたしに、もっとリスニング力と、美術の知識と、正確な記憶力があれば、良かったのですが、そのどれも無いので、
(……本当にすみません。せっかくあんなすごい場に行ったというのに、でも、あやふやなことを書くわけにはいかないので……)、
いろいろと面白い話をしてくださっていた、その詳細をご紹介できないことをお詫びいたします。

それでも画家の有名無名を問わず、自分の感性が美しいと思ったものを心から愛して大切にする、ティム.ライス氏の率直な姿勢は、お話からうかがい知ることができました。

(補)
しかし、これではあんまりバクゼンとしすぎて申し訳ないと、このブログを書くにあたってネットをいじってみたら、新聞社『The Guardian』誌が、ティム.ライス氏の絵画コレクションについて言及した記事と画像を見つけられました。

2003年度の記事のようですが、まだ(2009年七月現在)見られます、どうぞご覧ください。

ティム.ライス氏の、幅広い(古典的なものから現代アートまで)、どれも素敵なセンスの、芸術コレクションの一部が掲載されています。

コレクションの一部画像。
http://arts.guardian.co.uk/pictures/0,,1049556,00.html

過去のティム.ライス氏の芸術コレクションに関連した記事。
http://www.guardian.co.uk/uk/2003/sep/25/arts.artsnews1


この画像にも掲載されている「Nymphs Finding the Head of Orpheus(個人的意訳。『オルフェウスの首を見つけるニンフ【妖精】たち』が、今回のウォーターハウスの展覧会にも来ています。

ティム.ライス氏が大変愛着のある絵だそうですが、本当に美しい。

……にしても、わたし本人、イベントに行く前にこの記事に気づけていたら……【爆】。

この対談会のあと、隣の部屋に移り、ワインを(もちろんソフトドリンクもあったと思うのですが、すみません、メニューが思い出せない……【汗】)一杯飲んで歓談という時間が設けられています。

ワインは料金(ウォーターハウス氏の展覧会と、このお話の会と、ワイン含めて14£)に含まれているのです。

半券を渡して一杯だけ、と、そこは厳密ですが(笑)。

やっぱりゴージャスなお部屋で、ワインを片手にぽけーっと、
「うーん、ゆうがなじかんだなあ……」
と、わかったような顔をして、おとなしく立っていましたら、会場とワインあり部屋(そんな名前じゃない)の間の部屋にいた人々が、なにやら華やぐ気配が。

ひょいとその部屋を覗きこむと、ティム.ライス氏が、参加者の方々に混じって談笑なさっていました。

「ティム.ライス氏と参加者はお話ができる。 → わたしも参加者。 → わたしもティム.ライス氏とお話できるかもしれない。 → でも、みんなお話したくて待っているみたいだし、気が引ける。 VS こんなチャンス、もう冗談抜きで二度とないぞ。イギリスまで来て、ここまで来て、機会を逃すのか?お前も待て!そして行け!行くんだジョー!!(←?)」

……、と、脳内の段平のおっちゃん(傑作ボクシング漫画『あしたのジョー』より)と、延々と会議を繰り広げているわたしのそばに、気がつくと中年のご婦人が二人、立っていらっしゃいました。

「彼女もティム.ライス氏とお話したいのだけれど、緊張してしまっているの」

と、目が合ったわたしに、ご婦人のお一人が微笑なさいました。

イギリスでは、たまたまそばにいる赤の他人に、とくに気負わず声をかけておしゃべりをするという人は珍しくありません。

そこから、今日の展覧会と対談会、ティム.ライス氏のミュージカルの話、日本のお話などのお相手をしていただきました。

その、わたしには気さくに話してくださっているけれど、ティム.ライス氏にお話しようかどうしようかについては、どうしても度胸が出ない、と、はにかみ笑いをしていらっしゃったご婦人は、わたしに、

「あなたも、一緒に行きましょう『日本人はあなたの作品が大好きです』ってお伝えすればいいのよ」

と、おっしゃいました。

は……はい、しかし……。
と、われわれが、お互いかたまり気味になっているところに、ティム.ライス氏がワインあり部屋(そんな名前じゃない2)へと歩を進められました。

参加した方々それぞれと、できるだけお話をしようとなさっているみたいで、そこにいた人々に自ら歩み寄り、挨拶をし、談笑をなさっていらっしゃいました。おおお、英国紳士……。

そして、われわれにもティム.ライス氏は話しかけに来てくださいました。
きっかけがつかめたので、とてもいきいきと、今日のお話のことや、ティム.ライス氏への尊敬の念をお話なさっているご婦人のそばで、わたしは手がつめた〜くなってしまっていましたが、(緊張するとこうなる)どうにか口を開きました。

「ワ……ワタシタチ、ニホンジン、アナタノミュージカルガ、ダイスキデス……」

絵についてのお話を聞かせてくださってありがとうございました。

展示なさっていたコレクションの絵、とても美しかったです。

わたしは、『ジーザスクライストスーパースター』を何度も拝見しました。友達と一緒に熱中しました。

父は『ライオンキング』を観て男泣きしていました。

ホストマザーと一緒に『ジョゼフと不思議なテクニカラードリームコート』を観に行って、本当に楽しい素敵な作品でした。『エビータ』にも。どちらも素晴らしかったです。

と、いう、もろもろの日本語は、頭の中をいっぱいに駆け巡っていましたが、口には出せませんでした。
たぶん、日本語でも申し上げられなかったでしょう。
ご婦人にセリフ指導をしていただいた、その一言でわたしには精一杯でした……。

ティム.ライス氏は笑顔で、お礼を言ってくださり、

「わたしは日本に何度も行っています。日本のミュージカルのパフォーマンスは本当に素晴らしい!」

と、力強くおっしゃって、ごらんになった作品を、ひとつひとつ丁寧に挙げていらっしゃいました。

そのおことばを聞く、わたしの耳を、日本のミュージカル関係者の方々に、直結させてさしあげたかったです……。

(実際、『劇団四季』命で、舞台全般に詳しい友人は、『ロンドンに行ったとき、四季でも演じられている、ある作品を見比べたけれど、歌声もダンスも決してひけをとらない。わたしには四季のパフォーマンスのほうが良い』と、非常に真面目な調子で言っていたものです。)

「ありがとうございます。お会いできてうれしかったです」

と、がっしり、われわれ一人一人と握手をしてくださって、とても丁寧に、目をくばり、気を使ってくださりながら、ティム.ライス氏はその場を離れられました。

このわたしの手を、あの綺羅星のような作品たちを作った方が、握手してくださったのだなあということに関しては、もしかしたら、手から脳にまだ正しく情報が伝達されていないかもしれません。


イギリスでは、なんの資格もその道の地位も、十分な予備知識も無い人でも、参加したいという意欲と、必要に応じた入場料(個人的には、催しのすごさと照らし合わせれば、よく価格を抑えてあると思います……)さえあれば、まじめになにかを語る、超一流の人と接触できてしまう。

これは、一年のイギリス滞在で、最もこの国に対して敬服した一面です。イギリスすげえ(最終表現が貧しい)。

イギリス在住のかたは、これからもどうぞ色々情報を集めてみてください。他の国ではなかなかできない経験への扉が、ふっと開いている可能性大です。

ロイヤル.アカデミーのイベント情報については、下記のアドレスをご参照ください。わたしが参加させていただいたような講演会は、「Evening lectures」と分類されています。

http://www.royalacademy.org.uk/events/lectures/

ロイヤル.アカデミーの2009年夏のイベント情報については、下記のアドレスのページで印刷ができます。
わたしが見るたび、逃したことを残念がる、葉加瀬太郎さんのコンサート(2009年五月開催)の情報もごらんになれますよ……。

http://static.royalacademy.org.uk/files/summer-events-leaflet-472.pdf


posted by Palum at 22:41| イギリスの美術館 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月20日

訂正「The lady of Shallot」について

すみません、前回の「ウォーターハウス氏の展覧会」という記事の中で、「The lady of Shallot」という絵画を紹介する際に、「画像中央をご参照ください」と書いてしまいましたが、もう一枚の絵とまぎらわしかったと思うので訂正させていただきます。
左の、明るめの色の髪の女性の絵が、「The lady of Shallot」です。

もしも、青いドレスの女性の絵と勘違いなさった方がいらしたら、大変申し訳ありませんでした。
その絵は
「Circe Offering the Cup to Ulysses」
という作品です。
posted by Palum at 01:55| イギリスの美術館 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月19日

ウォーターハウス氏の展覧会

ウォーターハウス.JPG
展覧会のパンフレットとポストカード


(要約文)
ロンドンの「Royal Academy of Arts」という美術館では、いま、J.W.Waterhouseという画家の展覧会がやっています。
(二〇〇九年、六月二十七日から九月十三日まで)
豊かな髪と透ける肌、印象的なまなざしの女性たち、緻密な自然描写。
浪漫的なテーマがなんとも美しい。誰がどう見ても美しいです。行く価値ありですよ。


「Royal Academy of Arts」(美術館)のアドレスは下記のとおりです。

http://www.royalacademy.org.uk/


(本文)

ウォーターハウスという方は、「ラファエル前派(※)」と呼ばれる、イギリスの芸術革新運動の流れを汲む画家の一人です。
(※ほか、ロセッティ、ジョン.エヴァレット.ミレーなど【注『落穂拾い』のミレーではありません。わたしはわりと長いこと間違えてましたが】)

ラファエル前派というのは、ルネッサンスの代表画家ラファエル以前の、素朴な芸術に立ち返ろうという主張を持つ芸術家集団だそうですが、詩や神話、物語などを題材にした神秘的な作品が多い、というのが、わたしの勝手なイメージです。

美しい女の人、花や自然、ふしぎな光、
「ほおお、きれいだ……」
と、絵にくわしくない人(=わたし)でも思うものが多いです。

ロマンチックで幻想的な、漫画の絵に慣れている日本人には親しみやすい感じです。

個人的には萩尾望都さんの絵のイメージに重なるものがある。

それにしても、「見習いたくない画家」をチーム名につけなくてもいいんじゃないかと思うんですが。

ところで、私がなぜこの展覧会に行ったかというと、ミュージカル作詞界の巨人、ティム.ライス氏
(傑作ミュージカル『ジーザスクライストスーパースター』、『ライオンキング』などの作詞を手がけた方。)
が、ご自身のコレクションを貸し出し(さすが、風流でいらっしゃる……)、なおかつ、それらの作品について語るというイベントがあったからです。

平たく懺悔すると、わたしはこのウォーターハウスという画家を知りませんでした。
ただ、ひと目、ティム.ライス氏を拝見したかったのです。
(このイベントについては、また改めてご報告させていただきたいと思います。)

とはいえ、
「絵はよく知りません、生ティム氏が観たいだけです。キャーキャー!アンコール×2!(←?)」
というのは、参加する人間の態度として、ちょっとまずいなと思いましたので、
「水家?ダレソレ?」
の段階から、どうにか作品と名前が一致するくらいまでは情報収集しました。

と、申しても、ウィキペディアを読み、展覧会会場でイヤホンガイドを借り、絵に添えられた解説を読んだだけのことですが(泥縄式)。

ところで、その会場、
「絵はお刺身じゃないんだから、そうムキになって冷やさなくても……」
と言いたくなるくらい、冷房がきつく、わたしが辞書をひきひき解説を読み、絵に見とれ……。

と、各作品ごとにやっていると、一部屋見終わるころには、
「さむさむさむ……」
となるので、いったん会場外(売店付近)に出て温まり(……)、またチケットを入り口の職員さんに見せて、というのを四回(確か全五部屋でした)繰り返さねばなりませんでした。

(補足。友人が後日行った際、会場は完全なる適温だったそうです。
やっぱり誰かが『絵はお刺身じゃないんだから』と温度調節を願い出たんでしょう。
【いや、絶対その言い回しは使ってないだろうけれど】)

しかし、そう面倒くさい思いをしてでも、引き寄せられるほど、絵には魅力がありました。

ウォーターハウスの描く女性は、おもに、比較的直線的な額、くっきりと形の良い唇とあごをして、丸い目をじっと見張っているような感じです。肌はふれるとひんやりしていそうな白さ、巻き毛でも直毛でも、髪は目を引くほどに豊か。

デッサンが確かで、どの絵も比較的大きく、女性が等身大に近く、背景の草木などはとてもリアルなので、

「こんなに美しいひとが本当にいるものかな。しかしこの絵の中には、いるように見えるな」

と思わせるだけの迫力があります。


以下、個人的に印象深かった絵についての感想です。

「The Lady of Shallot」

ウォーターハウスの傑作のひとつだそうです。美しい女性が、悲しげに小船で川を下ろうとする姿(画像左をご参照ください)。
詩人テニソンの物語を題材にした作品です。
何らかの呪いで塔から出ることを許されず(この呪いについて、『誰が』『なぜ』ということについては説明がないようです)、
魔法の鏡に映る世界を、タペストリーに織ることだけが許されていた乙女シャーロットが、騎士ランスロットに恋をし、抑え切れない想いのままに、塔を出て彼のもとへ行こうとするという内容だそうです。

塔を出ることは死を意味し、彼女はランスロットに会う前に息絶えます。

熱にうかされたようなせつない表情、小船の鎖を解く手の動き。

大きな絵で、目の前に立つと、川風や、彼女のくちずさむ、かすかな最期の歌声まで感じられるようです。


ウィキペディアで見られる「The Lady of Shallot」の画像のアドレスです。

http://en.wikipedia.org/wiki/File:JWW_TheLadyOfShallot_1888.jpg



「Nymph Finding the Head of Orpheus 」

ギリシャ神話の、竪琴の名手オルフェウスが、悲劇的な死をとげ、川を流れてきた彼の首と竪琴を、妖精の少女たちが見つけるという一場面です。
ティム.ライス氏のコレクションの一枚。

普通に考えたら、川を首が流れてきたなんて、自分が発見者なら寝込むほど恐ろしいですが、あれだけリアルに描いておいて、しんとした静けさと物悲しさが漂うように仕上げた画家は確かにすごい。

澄んだ青い水に髪を解き広げて漂う美しい首と、体をねじるようにして、それを見つめる少女の、丸くつややかな肩の白さが印象深い。


ウィキペディアで見られる「Nymph Finding the Head of Orpheus」の画像のアドレスです。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Nymphs_finding_the_Head_of_Orpheus.jpg


「La Belle Dame Sans Merci(英名 A beautiful woman with no mercy)」

キーツの詩を題材にした作品だそうです。
森で謎の美しい少女に出会い、魅了されてしまう騎士の話。
彼女は、男を破滅させる魔性を持っているのですが、男はそれに抗えない。
森の草地に座る少女と、彼女の傍にひざをつく甲冑姿の騎士。
少女が自分の長い髪を騎士の首にまわし掛けて、引き寄せている瞬間を描いています。

この絵はまじまじ覗き込むと奥深さがありました。
印刷では良さが出しにくい絵のようで、一見、なんだか少女が底意地悪い微笑を浮かべているようですが、肉眼でよく見ると、その透き通った目はかすかに見張られて、むしろ不思議そうに、あどけなく騎士を見つめています。
(いや、こういう女こそおっかないんですが。)

少女は、騎士の首にまわした豊かな髪の毛先を、もうひとたばの自分の髪の毛で巻き、白い指できゅっと締めて、騎士の顔を自分へと引き寄せています。

「君、黒い長い髪で縛られたときの心持ちを知っていますか」

文豪、夏目漱石の小説『こころ』の中で、登場人物である「先生」が、恋の逃れがたい力の恐ろしさを言い表した台詞です。

「カぁッコイイ文だなあ……」
と、つくづくシビレましたが、絵も、まさしくこの台詞のような凄みがありました。


ウィキペディアで見られる「La Belle Dame Sans Merci」の画像のアドレスです。

http://en.wikipedia.org/wiki/File:La_Belle_Dame_Sans_Merci2.jpg


(これは完全ノー根拠の想像ですが、漱石はイギリス留学中に、エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』を観ていて、小説『草枕』にとりいれています。この絵だって、どこかで観ていて、何らかの影響を受けていないとも限らないですよね【絵は1893年作、漱石留学は1900年】。)


ウォーターハウスの展覧会情報は以下のとおりです。

J.W. Waterhouse: The Modern Pre-Raphaelite
27 June— 13 September 2009


美術館のアドレスです。

http://www.royalacademy.org.uk/

以下は美術館の地図のアドレスです。

http://www.royalacademy.org.uk/planyourvisit/

画家ウォーターハウスのウィキペディアの英文解説です。作品の画像が沢山見られます(【注】この展覧会に来ている以外の作品も多く含まれています)。

http://en.wikipedia.org/wiki/John_William_Waterhouse


※余談ですが、この地図にあるBURLINGTON ARCADEの入り口(ロイヤルアカデミー美術館正面入り口から出た場合、すぐのところ)にカラフルなマカロンで有名な『LUDUREE(ラデュレ)』があります。
日本人のお客さんもよく見かけます。
美味しいし、色が可愛いので、女性にさしあげるとポイント高いです。
日もちしないのですが、買った当日食せる状況の誰かへのお土産としては、オススメです。

BURLINGTON ARCADEの『LUDUREE(ラデュレ)』の情報ページです。

http://www.laduree.fr/public_en/maisons/burlington_arcade_accueil.htm

※ウォーターハウスの絵の内容については『J. W. Waterhouse Exhibition Catalogue』(2009年六月 Royal academy of Arts )を参照させていただきました。

posted by Palum at 23:53| イギリスの美術館 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする