(ドラマのオープニング)
本日は第二次大戦下の地元防衛チーム(若い男性は徴兵されているためシルバー世代率高し)を描いたイギリスの大人気コメディ「Dad’s Army」より、「Ring Dem Bells」(※)のあらすじをご紹介させていただきます。(1975年製作、第八シリーズ、第67エピソード)
ちなみにドラマのエンドクレジットはこんな感じ(ほほえましい)。
(※)「Ring Dem Bells」……「鐘を鳴らせ」の意味。「Dem」は「Them」の口語。1930年にヒットしたデューク・エリントンの同名曲が由来。
以下あらすじです。結末までネタバレ+あくまで私の語学力を通過した、意訳どころか「間違ってるかもだけど多分こんなニュアンス訳」で構成されているのであらかじめご了承ください……。
拠点としている教会に集合している、ホームガードの面々。
数少ない若手メンバーであるパイク青年はウキウキしている。
「映画に出られるなんて」
髭でも生やそうかしらと浮かれるパイクに対し、フレイザー氏(スコットランド出身、葬儀社経営)は冷ややか。
「くだらない。映画ったってただの訓練用フィルムだよ」
しかし、実は執務室にいるマインワリング隊長(村の銀行支店長)もイソイソと、自分の「キメ角度」をご検討中。
(帽子をとったほうがいいかな、と、とって、頭部の艶やかな光沢を見て静かに戻してみたりしている。)
しかし、そんな男心も知らず、部屋に入ってきたウィルソン軍曹(同銀行副支店長)は、マインワリング隊長に「どっち向きの角度がいいと思う?」と聞かれ、「別に左右でどっちが良いとかない……どちらも悪くなりようはないです」とやんわりと否定する。
そうこうしているうちに、大佐と制作スタッフが到着。
(それを告げに来たパイクはさっそく髭を書いていたが、マインワリング隊長に汚れてるから拭けと言われてむくれる。)
スタッフの一人である女性が衣装係と知らされ、「この(ホーム・ガードの)制服がありますが……?」と大佐に尋ねるマインワリング隊長。
「ああ、いや、君たちはホーム・ガードではなく、ドイツ軍の役なんだ」
なんですと!?不快感をあらわにするマインワリング隊長。
いやまあ、遠くから撮るだけで、皆さん映ってもせいぜいこのくらいですから。と、スタッフに卵大の大きさを示され、しぶしぶ承諾するも、ここで新たな問題が。
「あぁらまあ……」
マインワリング隊長のサイズを測りながら繰り返しつぶやく衣装係のおねえさん(失礼)。
隊長が着られるドイツ軍将校の制服が無いとのことで、サイズの合うウィルソン軍曹とパイクが急きょ将校役に抜擢されることに。
隊の中でカッコイイ方担当であるウィルソン軍曹(悪意なき毒舌が散見されるものの、外見はロマンスグレー)に対し、
「きっと素敵な将校になるわ」
と、笑顔でなんか問題発言をする衣装係のおねえさん。
度重なる屈辱に耐えかねたマインワリング隊長、一般兵を演じることだけは拒否し、隊の引率に終始することに。
拒否権の無かったほかの人々は、この世の終わりのような顔をして、ドイツ軍一兵卒の制服に身を包み、黒いヘルメットを被ることに。
我ながらバカみたいだ、一人だけ逃げてマイワリング隊長ズルいセコい!と、愚痴るフレイザー氏に対し、バカみたいなんてことはありませんよ、そのヘルメットを被っていらっしゃると鷹のようです、と無茶な慰め方をするゴッドフリー氏(チーム最年長、温厚)、こんな鉄鍋を被ったみたいな敵兵姿を、亡くなった将軍が見たら墓の中でびっくりしてひっくり返るだろうと嘆くジョーンズ氏(軍隊経験者、肉屋経営)。
一方、将校の衣装をまとったウィルソン軍曹とパイク。
グレーのかっちりと仕立てられた服は、翼を広げた鷲の紋章やモールで彩られ、幅広のパンツの裾を細身のブーツで絞ったデザイン。制帽は黒い硬質なつばよりも天井部がせりだした独特のフォルム。
「実に洗練された制服だな(These uniforms are awfully smart aren’t they?)」
ウットリ鏡を見つめるウィルソン軍曹の大爆弾発言。
パイクの暴走ぶりはそれ以上で、頼まれてもいないのに、「っぽく見える」鎖付き片眼鏡を、ちょいちょい落としながら無理やりかけた姿で現れたかと思うと、ドイツ語アクセントらしき英語で高圧的に喋り、マインワリング隊長の椅子にふんぞりかえって机に両足を乗っける始末。
将校役楽しい♪(おい)と、足をまっすぐに上げる軍隊式行進の歩き方(「ガチョウ足行進(Goose‐step)」)の練習までしているところをマインワリング隊長に見つかり、当然叱られるも、衣装の魔力はすさまじく、指揮官マインドのまま反省しない二人。
この姿を見られて、一般の人たちに誤解されては大変だから、と、暑い日にも関わらず、運転役のマインワリング隊長を除き、全員バン(ジョーンズ肉店の車)に詰め込まれて、撮影場所の郊外まで移動することに。
しかし、到着するや否や、役者たちのスケジュール変更で撮影延期となり、抗議もむなしくすぐにバンに戻ることになった面々。
(帰りの道すがらも、バンの天窓から身を乗り出しパレードよろしく「ハイル・ヒットラー」ポーズをやりつづけて隊長に叱られるパイク。)
司令部に連絡をするために電話ボックスの前で停車したマインワリング隊長。
皆に姿を見せないようにと厳命したものの、暑さで具合が悪くなってきた面々は、こっそり後部ドアを全開にしてしまう。
その目に飛び込んできたパブ。(ビール等を提供するイギリス独特の飲み屋)
「一杯やりたいな……」
パイクをたしなめるウィルソン軍曹。
「マインワリング隊長から外に出るなと言われたろう」
「……隊長なんて一介のホームガードの責任者でしょ。僕らはドイツ軍将校だ」(違う)
「……そうだな……」(違う2)
かくしてこっそりゾロゾロパブにもぐりこむドイツ軍姿の面々(計16名)。
「いけません、軍曹」
ただひとり命令に忠実なジョーンズ氏が、ウィルソン軍曹を止めようとした。
「何にする?」
「ビールで」(←「命令に忠実な」……)
「いらっしゃい、なにになさいますか?」
店の奥から出てきた愛想の良いご主人、一同の姿を見て目をむいて凍り付く(そりゃそうだ)。
よせばいいのに、例によって調子に乗ってるパイクが「オヤジ、飲み物を持ってこい!」的な横柄な口調のドイツアクセントで話すのが追い打ちとなり、わが村に敵軍が!!と思い込んだご主人は、店の奥にいた従業員に大至急警察に連絡するようにと耳打ちする。
一方マインワリング隊長が電話を終えて戻ってくると、バンはもぬけの殻。
「やると思った……」
パブに駆け込むと、全員がなごやかに一杯やってる最中。
騒ぎを大きくしたくないと思うあまり、「誤解なんです」程度の大雑把な説明で早々に退散しようとしたのが仇となり、ご主人は「ホームガード一同=本物のドイツ軍、マインワリング隊長=売国奴(Quisling※)」と思い込み、バンが怒れる村人たちに取り囲まれる結果に。
(※)元はノルウェーの政治家の姓、ナチスに協力的だったことから、「裏切者」「売国奴」の意味を持つようになった。
駆け付けた警官に詰問され、マインワリング隊長が「彼らは本物のドイツ軍ではなく……」と説明している最中も、バンの天窓から顔を出して将校演技を続けてぶち壊すパイク(ド空気読めない子)。
というわけで、「この裏切り者!!」とおばあちゃんに杖で殴られた(強い)マインワリング隊長、慌ててバンに乗り込み、村を逃げ出す。
怒れる村人たちは、危機を知らせるべく、隣村(マインワリング隊長たちの村)に、ドイツ軍の侵攻を知らせる電話をする。
マインワリング隊長の留守中、教会にいた空襲監視員ホッジズ氏、司祭、聖堂番イェットマン氏の3人(ホームガードと建物を共用しているが、普段からあまり隊長と仲が良くない)が、パブのご主人より「イギリス人の隊長に先導されドイツ軍がそちらに向かっている」との知らせを受ける。
酔ってんの?的な感じで、本気にしていなかった3人だが、マインワリング隊長が整列するドイツ兵(まずいことに全員背中を向けている)に指示をしているのを見て、奴が売国奴か!!と震撼する。
急いで鐘楼のカギをかけ、緊急事態を告げる鐘を鳴らす3人。
(3人の様子がわかるBBCの画像はコチラ。)
「ドイツ軍襲来だ!慌てるな、慌てるな!!(Don’t panic!)」
鐘の音にドイツ軍姿でパニックを起こすジョーンズ氏をよそに、誰かが我々を見て勘違いしたんだ、と、慌てて鐘楼に向かう一同。
違うんだ、鐘を止めてくれ!!とドアを叩くも、力の限り鐘の紐を引いている3人には聞こえず、ドアの鍵を銃で撃ち壊して入ることにしたマインワリング隊長。
中の3人に弾が当たらないように警告の紙を差し入れようとするジョーンズ氏。
「避難しなさい……銃で鍵を壊します……敬具……ジョ…」
「早く入れろ!!」
ドアに立ちはだかるフレイザー氏
「弁償させられるのでは!?」
「どけ!!」
マインワリング隊長が鍵を撃った次の瞬間、別の入り口から入ったウィルソン軍曹に招き入れられた一同。
頭上には、ホッジス氏ら三人が、避難のために鐘の紐におさるのように並んでぶら下がっていた。
隊長が三人の大ブーイングを浴びる中、状況説明の電話を司令部にかけていたパイクが戻ってきて、
「海岸周辺の町全部に一時的に非常事態宣言が発令されてしまって、准将が『どこの底抜けバカの仕業だ』とカンカンでしたアハハ」
と軽いノリで言った後、
「隊長に話があるから月曜日朝に来るようにとのことです」
と付け加えると、マインワリング隊長、パイクをまじまじと見つめたながら、苦々しげに一言。
「馬鹿者が……(You, stupid boy.)」
聞こえているのかいないのか、いそいそ片眼鏡をかけなおしているパイク(まだやってる)。
(完)
「Stupid boy(馬鹿な少年)」は、マインワリング隊長がパイクに憤慨したとき(頻度高)つぶやく、言うなれば決め台詞です。
地方の小さな村で、あまり周辺の情報が流れてこなかったせいか、ドイツ軍の制服を、デザインだけ見て「洗練されている」とこともあろうに称賛しながら着た挙句、気分が高揚してマインワリング隊長の言うことをちっとも聞かなくなるという展開。
(別の話でも、パイクがドイツ軍の制服デザインを褒めて隊長に叱られているエピソードがありました。物資不足で服も限られていた分、デザイン性の高いものに飢えていたのかもしれませんね……。)
ウィルソン軍曹がイソイソ行進の練習をしていたり、パブでご主人が固まっている中、パイクが将校演技をやめなかったり、「ドイツ軍将校は(?)ホームガード隊長の言うことなんか聞かないで良い」と訳の分からない理屈で命令違反をするシーンなどには笑わされてしまいますが、一方で、人間が恰好や架空の立場などに一瞬にして強烈に洗脳されるという現実の危険性(※)を、笑いの中にさりげなく織り込んだ、奥深い作品でもあります。
(パイクはアホの子だからやらかすのわかるが、普段落ち着いているウィルソン軍曹まで命令違反するのは結構怖い。)
(※)こうした現象についてご興味のある方は、当ブログ「スタンフォード大学監獄実験」をご参照ください。
心理学実験のため、囚人服、看守服を着せられ、その役を演じることとなった被験者たちが激変したという1971年に起きた実際の事件についてご紹介しています。
個人的にこのドラマシリーズが非常に好きなのは、こういう「笑えるけれど深い、ときに深いを通り越して怖い(でも笑える)」という味わいがあり、それは、同じく40年以上不動の人気を誇る、わが日本の宝、「ドラえもん」の魅力にも相通じるものがあると思います。
題材上、日本での放送は難しそうですが、イギリスでは、日本でいうところのドラえもん、サザエさん、寅さん級の不朽の名作として現在も圧倒的支持を集める名作ドラマです。
(イギリスで販売中のコンプリートDVD‐BOX(700件を超えるレビューが全て4〜5の好意的意見で占められているという驚異の愛され度合)。イギリスのDVDの視聴が可能な環境をお持ちの方ならおすすめです。私も愛蔵しております。)
ウィキペディアの「Ring Dem Bells」あらすじ紹介記事はコチラです。
(詳細なあらすじページがある辺りイギリスでの愛され度合がわかるのですが、他国の知名度は〈アメリカですら〉低いという謎のドラマなのです。)
当ブログDad's Army関連記事は以下のとおりです。今後も時々この作品のあらすじをご紹介させていただきますのでよろしければお立ち寄りください。
読んでくださってありがとうございました。