2016年11月05日

(ネタバレ)イギリスの怪物番組Dad’s Army、「Ring Dem Bells」あらすじご紹介(メンバーがナチスの軍服を着て大暴走……の回)

Dad's Army - The Complete Sixth Series [1973] [DVD] [2006] by Arthur Lowe -
Dad's Army - The Complete Sixth Series [1973] [DVD] [2006] by Arthur Lowe -

本日は第二次大戦下の地元防衛チーム(若い男性は徴兵されているためシルバー世代率高し)を描いたイギリスの大人気コメディ「Dad’s Army」より、「Ring Dem Bells」(※)のあらすじをご紹介させていただきます。(1975年製作、第八シリーズ、第67エピソード)

(※)「Ring Dem Bells」……「鐘を鳴らせ」の意味。「Dem」は「Them」の口語。1930年にヒットしたデューク・エリントンの同名曲が由来。


最近欅坂47がナチスを想起させる衣装を着たとして問題になりました(※)が、こちらは想起ではなくそのままナチスの軍服を着たメンバーたちが大騒動を起こすという結構な過激回です。
(そもそも第二次大戦下をコメディにする時点で過激ですが。)

(※)参照:ハフィントンポスト11月1日記事「欅坂46の衣装が「ナチスそっくり」 Twitter炎上、英紙も報道」


 ちなみにこのドラマシリーズのオープニングソングはこんな感じ。
(ナチスの進攻におびえる戦況を軽やかに歌うという絶句ノリ)



 エンドクレジットはこんな感じ(ほほえましい)。




 以下あらすじです。結末までネタバレ+あくまで私の語学力を通過した、意訳どころか「間違ってるかもだけど多分こんなニュアンス訳」で構成されているのであらかじめご了承ください……。


 拠点としている教会に集合している、ホームガードの面々。

 数少ない若手メンバーであるパイク青年はウキウキしている。
「映画に出られるなんて」
 髭でも生やそうかしらと浮かれるパイクに対し、フレイザー氏(スコットランド出身、葬儀社経営)は冷ややか。
「くだらない。映画ったってただの訓練用フィルムだよ」

 しかし、実は執務室にいるマインワリング隊長(村の銀行支店長)もイソイソと、自分の「キメ角度」をご検討中。
(帽子をとったほうがいいかな、と、とって、頭部の艶やかな光沢を見て静かに戻してみたりしている。)

 しかし、そんな男心も知らず、部屋に入ってきたウィルソン軍曹(同銀行副支店長)は、マインワリング隊長に「どっち向きの角度がいいと思う?」と聞かれ、「別に左右でどっちが良いとかない……どちらも悪くなりようはないです」とやんわりと否定する。

 そうこうしているうちに、大佐と制作スタッフが到着。
 (それを告げに来たパイクはさっそく髭を書いていたが、マインワリング隊長に汚れてるから拭けと言われてむくれる。)

 スタッフの一人である女性が衣装係と知らされ、「この(ホーム・ガードの)制服がありますが……?」と大佐に尋ねるマインワリング隊長。
「ああ、いや、君たちはホーム・ガードではなく、ナチス軍の役なんだ」

 なんですと!?不快感をあらわにするマインワリング隊長。

いやまあ、遠くから撮るだけで、皆さん映ってもせいぜいこのくらいですから。と、スタッフに卵大の大きさを示され、しぶしぶ承諾するも、ここで新たな問題が。

 「あぁらまあ……」
マインワリング隊長のサイズを測りながら繰り返しつぶやく衣装係のおねえさん(失礼)。

 隊長が着られるナチス将校の制服が無いとのことで、サイズの合うウィルソン軍曹とパイクが急きょ将校役に抜擢されることに。
 隊の中でカッコイイ方担当であるウィルソン軍曹(悪意なき毒舌が散見されるものの、外見はロマンスグレー)に対し、
「きっと素敵な将校になるわ」
と、笑顔でなんか問題発言をする衣装係のおねえさん。

 度重なる屈辱に耐えかねたマインワリング隊長、一般兵を演じることだけは拒否し、隊の引率に終始することに。

 拒否権の無かったほかの人々は、この世の終わりのような顔をして、ナチス一兵卒の制服に身を包み、黒いヘルメットを被ることに。

 我ながらバカみたいだ、一人だけ逃げてマイワリング隊長ズルいセコい!と、愚痴るフレイザー氏に対し、バカみたいなんてことはありませんよ、そのヘルメットを被っていらっしゃると鷹のようです、と無茶な慰め方をするゴッドフリー氏(チーム最年長、温厚)、こんな鉄鍋を被ったみたいな敵兵姿を、亡くなった将軍が見たら墓の中でびっくりしてひっくり返るだろうと嘆くジョーンズ氏(軍隊経験者、肉屋経営)。

 一方、将校の衣装をまとったウィルソン軍曹とパイク。

 グレーのかっちりと仕立てられた服は、翼を広げた鷲の紋章やモールで彩られ、幅広のパンツの裾を細身のブーツで絞ったデザイン。制帽は黒い硬質なつばよりも天井部がせりだした独特のフォルム。

 「実に洗練された制服だな(These uniforms are awfully smart aren’t they?)」
ウットリ鏡を見つめるウィルソン軍曹の大爆弾発言。

 パイクの暴走ぶりはそれ以上で、頼まれてもいないのに、「っぽく見える」鎖付き片眼鏡を、ちょいちょい落としながら無理やりかけた姿で現れたかと思うと、ドイツ語アクセントらしき英語で高圧的に喋り、マインワリング隊長の椅子にふんぞりかえって机に両足を乗っける始末。

 将校役楽しい♪(おい)と、足をまっすぐに上げる軍隊式行進の歩き方(「ガチョウ足行進(Goose‐step)」)の練習までしているところをマインワリング隊長に見つかり、当然叱られるも、衣装の魔力はすさまじく、指揮官マインドのまま反省しない二人。

 この姿を見られて、一般の人たちに誤解されては大変だから、と、暑い日にも関わらず、運転役のマインワリング隊長を除き、全員バン(ジョーンズ肉店の車)に詰め込まれて、撮影場所の郊外まで移動することに。

 しかし、到着するや否や、役者たちのスケジュール変更で撮影延期となり、抗議もむなしくすぐにバンに戻ることになった面々。

(帰りの道すがらも、バンの天窓から身を乗り出しパレードよろしく「ハイル・ヒットラー」ポーズをやりつづけて隊長に叱られるパイク。)

 司令部に連絡をするために電話ボックスの前で停車したマインワリング隊長。

 皆に姿を見せないようにと厳命したものの、暑さで具合が悪くなってきた面々は、こっそり後部ドアを全開にしてしまう。

 その目に飛び込んできたパブ。(ビール等を提供するイギリス独特の飲み屋)

「一杯やりたいな……」
 パイクをたしなめるウィルソン軍曹。
「マインワリング隊長から外に出るなと言われたろう」
「……隊長なんて一介のホームガードの責任者でしょ。僕らはドイツ軍将校だ」(違う)
「……そうだな……」(違う2)

 かくしてこっそりゾロゾロパブにもぐりこむナチス軍姿の面々(計16名)。
 
 「いけません、軍曹」 
ただひとり命令に忠実なジョーンズ氏が、ウィルソン軍曹を止めようとした。
「何にする?」
「ビールで」(←「命令に忠実な」……)

 「いらっしゃい、なにになさいますか?」
 店の奥から出てきた愛想の良いご主人、一同の姿を見て目をむいて凍り付く(そりゃそうだ)。

 よせばいいのに、例によって調子に乗ってるパイクが「オヤジ、飲み物を持ってこい!」的な横柄な口調のドイツアクセントで話すのが追い打ちとなり、わが村に敵軍が!!と思い込んだご主人は、店の奥にいた従業員に大至急警察に連絡するようにと耳打ちする。

 一方マインワリング隊長が電話を終えて戻ってくると、バンはもぬけの殻。
「やると思った……」

 パブに駆け込むと、全員がなごやかに一杯やってる最中。

 騒ぎを大きくしたくないと思うあまり、「誤解なんです」程度の大雑把な説明で早々に退散しようとしたのが仇となり、ご主人は「ホームガード一同=本物のナチス軍、マインワリング隊長=売国奴(Quisling※)」と思い込み、バンが怒れる村人たちに取り囲まれる結果に。

 (※)元はノルウェーの政治家の姓、ナチスに協力的だったことから、「裏切者」「売国奴」の意味を持つようになった。

  駆け付けた警官に詰問され、マインワリング隊長が「彼らは本物のナチス軍ではなく……」と説明している最中も、バンの天窓から顔を出して将校演技を続けてぶち壊すパイク(ド空気読めない子)。

 というわけで、「この裏切り者!!」とおばあちゃんに杖で殴られた(強い)マインワリング隊長、慌ててバンに乗り込み、村を逃げ出す。

 怒れる村人たちは、危機を知らせるべく、隣村(マインワリング隊長たちの村)に、ナチス軍の侵攻を知らせる電話をする。

 マインワリング隊長の留守中、教会にいた空襲監視員ホッジズ氏、司祭、聖堂番イェットマン氏の3人(ホームガードと建物を共用しているが、普段からあまり隊長と仲が良くない)が、パブのご主人より「イギリス人の隊長に先導されナチス軍がそちらに向かっている」との知らせを受ける。

 酔ってんの?的な感じで、本気にしていなかった3人だが、マインワリング隊長が整列するナチス兵(まずいことに全員背中を向けている)に指示をしているのを見て、奴が売国奴か!!と震撼する。

 急いで鐘楼のカギをかけ、緊急事態を告げる鐘を鳴らす3人。
 (3人の様子がわかるBBCの画像はコチラ。) 

「ナチス軍襲来だ!慌てるな、慌てるな!!(Don’t panic!)」
 鐘の音にナチス軍姿でパニックを起こすジョーンズ氏をよそに、誰かが我々を見て勘違いしたんだ、と、慌てて鐘楼に向かう一同。

 違うんだ、鐘を止めてくれ!!とドアを叩くも、力の限り鐘の紐を引いている3人には聞こえず、ドアの鍵を銃で撃ち壊して入ることにしたマインワリング隊長。

 中の3人に弾が当たらないように警告の紙を差し入れようとするジョーンズ氏。
「避難しなさい……銃で鍵を壊します……敬具……ジョ…」
「早く入れろ!!」
 ドアに立ちはだかるフレイザー氏
「弁償させられるのでは!?」
「どけ!!」

 マインワリング隊長が鍵を撃った次の瞬間、別の入り口から入ったウィルソン軍曹に招き入れられた一同。
頭上には、ホッジス氏ら三人が、避難のために鐘の紐におさるのように並んでぶら下がっていた。

 隊長が三人の大ブーイングを浴びる中、状況説明の電話を司令部にかけていたパイクが戻ってきて、
「海岸周辺の町全部に一時的に非常事態宣言が発令されてしまって、准将が『どこの底抜けバカの仕業だ』とカンカンでしたアハハ」
 と軽いノリで言った後、
「隊長に話があるから月曜日朝に来るようにとのことです」
 と付け加えると、マインワリング隊長、パイクをまじまじと見つめたながら、苦々しげに一言。
「馬鹿者が……(You, stupid boy.)」

 聞こえているのかいないのか、いそいそ片眼鏡をかけなおしているパイク(まだやってる)。 

(完)

「Stupid boy(馬鹿な少年)」は、マインワリング隊長がパイクに憤慨したとき(頻度高)つぶやく、言うなれば決め台詞です。

 地方の小さな村で、あまり周辺の情報が流れてこなかったせいか、ナチスの制服を、デザインだけ見て「洗練されている」とこともあろうに称賛しながら着た挙句、気分が高揚してマインワリング隊長の言うことをちっとも聞かなくなるという展開。

(別の話でも、パイクがナチス軍の制服デザインを褒めて隊長に叱られているエピソードがありました。物資不足で服も限られていた分、デザイン性の高いものに飢えていたのかもしれませんね……。)
 
 ウィルソン軍曹がイソイソ行進の練習をしていたり、パブでご主人が固まっている中、パイクが将校演技をやめなかったり、「ドイツ軍将校は(?)ホームガード隊長の言うことなんか聞かないで良い」と訳の分からない理屈で命令違反をするシーンなどには笑わされてしまいますが、一方で、人間が恰好や架空の立場などに一瞬にして強烈に洗脳されるという現実の危険性(※)を、笑いの中にさりげなく織り込んだ、奥深い作品でもあります。
(パイクはアホの子だからやらかすのわかるが、普段落ち着いているウィルソン軍曹まで命令違反するのは結構怖い。)

(※)こうした現象についてご興味のある方は、当ブログ「スタンフォード大学監獄実験」をご参照ください。
 心理学実験のため、囚人服、看守服を着せられ、その役を演じることとなった被験者たちが激変したという1971年に起きた実際の事件についてご紹介しています。

 個人的にこのドラマシリーズが非常に好きなのは、こういう「笑えるけれど深い、ときに深いを通り越して怖い(でも笑える)」という味わいがあり、それは、同じく40年以上不動の人気を誇る、わが日本の宝、「ドラえもん」の魅力にも相通じるものがあると思います。

 題材上、日本での放送は難しそうですが、イギリスでは、日本でいうところのドラえもん、サザエさん、寅さん級の不朽の名作として現在も圧倒的支持を集める名作ドラマです。

 (イギリスで販売中のコンプリートDVD‐BOX(700件を超えるレビューが全て4〜5の好意的意見で占められているという驚異の愛され度合)。イギリスのDVDの視聴が可能な環境をお持ちの方ならおすすめです。私も愛蔵しております。)

Dad's Army - The Complete Collection [DVD] [1968] by Arthur Lowe -
Dad's Army - The Complete Collection [DVD] [1968] by Arthur Lowe -

 

 ウィキペディアの「Ring Dem Bells」あらすじ紹介記事はコチラです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Ring_Dem_Bells
(詳細なあらすじページがある辺りイギリスでの愛され度合がわかるのですが、他国の知名度は〈アメリカですら〉低いという謎のドラマなのです。)

 当ブログDad's Army関連記事は以下のとおりです。今後も時々この作品のあらすじをご紹介させていただきますのでよろしければお立ち寄りください。

 ・イギリスの怪物番組 『Dad's Army』
 ・「Dad’s Army」のボタン

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 11:09| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月12日

自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


先日、ウミガメ型カメラで捕えたイルカがフグ毒を好き好んで摂取している映像について書かせていただいたのですが、本日は、こうした映像をイギリスの自然番組スタッフたちがどのようにして撮影しているか、その一端についてさらにご紹介したいと思います。

カメラにおさめられた自然もすごいけど、おさめる人々もまたすんげいのです。


1、Spy‐Cam(カムフラージュした小型カメラ)で撮る

「ソックリウミガメラ(そんな名前じゃない)」同様、動物たちの生活圏にあって、特に構われない存在(岩、雪の塊、魚など)の形をしたカメラを作り、それで、ごく自然な姿をとる、という形式。

Spy‐camの紹介と、ディレクター兼プロデューサーのJohn Downer氏のインタビューが見られる動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=PbDn8LGbYM4

カメラによっては遠隔操作が可能なので、そばに寄っていくことも可能。

ウミガメラは昨今の技術で、ぱっと見わからないほどよくできており、シワもリアルな首をきょろきょろと動かして、近くで細やかな映像を撮ることに成功しています。

ウミガメラがイルカの群れに寄っていったとき、目と鼻の先で泳ぐイルカたちの「あ、カメさん、こんにちは」的穏やかなチラ見などもおさめていました。



https://www.youtube.com/watch?v=80BXZfuevkE

また、なんかちょっとフシギと思われたのか、ホッキョクグマが雪の塊型カメラに寄ってきて、レンズ付近を目いっぱいふぐふぐ嗅いでいる鼻まみれ映像も。
(わが身なら死を覚悟するでしょうが、安全圏で見るとかわいいわ……。)

しかし、別番組で、鳥たちのコロニーに卵型のカメラを置いておいたところ、別の鳥にさらわれてしまい、舞い上がる鳥の脚視点から、広大なコロニーの全景を撮るという、まさかのハプニング映像がとれてしまうことも。

また、その小型カメラを模型ではなくまんま鳥につけてもらい、美しい飛行風景を撮影するケースもありました。

Spy‐camについて詳しくまとめてくださっているページはコチラです。
「BBC野生動物ドキュメンタリーの美麗映像はどうやって撮られているのか?(GIGAZIN)」
http://gigazine.net/news/20140821-bbc-wildlife-filming/


2、人が近寄って撮る

シンプル、しかし常に危険と隣り合わせの方法です。

それでも、カメラにおさめたい瞬間はそう何度もめぐってこないので、ときに気の遠くなるほど繰り返し機を待った専門のカメラマンたちは、ここだと思った瞬間には、一気に飛び込んでいきます。

私が度肝を抜かれたのは「BBC EARTH グレートネイチャー(原題:Nature’s great event)」の撮影風景(DVD/ブルーレイでは、最後に10分程度メイキング映像がでてきます)

BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -
BBC EARTH グレート・ネイチャー ブルーレイ・デラックスBOX [episode2-6] 3枚組 [Blu-ray] -

このシリーズで、偉大なる自然番組プロデューサーにしてナレーターでもあるデイビッド・アッテンボロー氏(ここではナレーターのみ担当)を知り、そしてイギリスの自然番組の凄まじさを知りました。
(当ブログでアッテンボローさんについて書かせていただいた記事〈「デヴィッド・アッテンボローさんのサイン会」〉がありますのでよろしければ併せてお読みください。素晴らしい方です。)

どれも驚異的なのですが、光景としても撮影の苦労としても圧巻だったのは「世界最大の魚群」の回。
南アフリカで、潮流の影響によって発生する、5億匹のイワシの大移動(サーディン・ラン)、そしてそれを追う生き物たちの息をのむ捕食風景を撮影しています。

イワシたちが生き残りをかけて形作る球形群(bait ball)を狙うのは、イルカ、サメ、カツオドリ、クジラ。

自ら超音波を発し、探知する能力を持つイルカたちが、イワシの群れを見つけて、互いに情報を伝達しながら集団で移動、その姿を上空から見つけたカツオドリたちが後を追います。
時を同じくして集結するサメやクジラ。

イワシが散ってしまう前に、それぞれが銀色の群れに向かって一斉に突撃します。

数頭隊列を組んで横一列に飛び込み、イワシの群れを乱して捕えるイルカたち。
縦横無尽に泳ぎ回るサメ。口を開けて群れをすくいとるクジラ。

特に目を奪われるのはカツオ鳥たちの攻撃です。

上空で様子をうかがっていた鳥たちは、ひとたびふわりと身をひるがえすと、鋭いくちばしを水面に向け、両翼を閉じて全身を細く細く縮め、海へと突っ込んでいきます。

まるで、数百の剣が海中に撃ち込まれるような勢いと鋭さで。



https://www.youtube.com/watch?v=1Cp1n_vPvYY

この、鳥にとっても危険なダイブ(加減や角度を間違えると首の骨を折る)で潜れるのはせいぜい10メートル、しかし、優れた潜水技術を持つ個体は、そこからさらに翼で強く水をかき、深く潜ってイワシを追います。

この水中の鳥の群れのすぐそばをサメたちも泳いでいるのですが、互いにイワシしか目に入っておらず、鳥が襲われることはないようです。

こうして、銀色の花吹雪のようなイワシの群れの中、白く羽をひろげたカツオドリ、サメ、イルカがそれぞれに水泡をまとい鋭く乱舞する、驚くべき光景が繰り広げられます。



https://www.youtube.com/watch?v=DHeZrLnY3Dk


……で、その渦中にカメラマンが混じって撮るわけです。

メイキングによると、そもそも、このサーディン・ランを見つけるのに大変な苦労があり、海に入って様子をうかがっていたカメラマン氏が、サメに遭遇して慌ててボートにあがるという一幕がありました。
(イワシがいなければ人間も標的になってしまう。)

「危なかったな……」という風に声をかける他のスタッフに向かって、カメラマン氏は「(ダイビング用の)ヒレを少し噛まれた。蹴って追い払ったけど」と恐ろしい報告をしています。
(撮影に使用しているのは数人乗りの小型ゴムボートで、あんなにサメがいる地域にあんなので行く時点でイヤダ。)

それでもひるまないクルーたちは、上空からセスナで偵察していた撮影班から、「千頭近いサメが集結している、きっとサーディン・ランだ」という情報を得ると全速力でそこへ向かい(「全速力で逃げ」ではない)、カメラマン氏は、サメとイルカがぶつかりあうようにしてひしめき、カツオドリ魚雷ナイフがひゅっひゅっと鋭い音を立てて突き刺さる海に「今だ!!」と飛び込んでいます。もはや人間の防衛本能を超越している。

こうして撮影されたのが、かの銀色の花吹雪の中の捕食者たちの映像です。

そして確かに原則サメはイワシ以外は狙わないのですが、この状況で冷静なはずもなく、牙を剥いたまま、カメラマン氏の方へも繰り返し突っ込んできていました。

しかし、カメラマン氏は、おそらくは武士の気配を殺す技術のような絶妙な距離感で、サメを逆なでせず、しかしカメラは手放さずに、身をひるがえし、ときにそっと手や足やカメラでサメの方向を変えて撮影を続けていました。

サメってそっとなら蹴っていいんだ……。

いや、常人がやったなら、その足をもってかれるでしょうけれど、この人たちはおそらく繰り返し死線を乗り越えた果てに、野生動物の攻撃性を刺激しない間合いを身に着けているのでしょう。

驚異の撮影風景(一部)はコチラ。



https://www.youtube.com/watch?v=AGKa8wlXvhk

(日本でこういう番組を放送してくださる方々〈NHKやWOWWOW等〉が万が一この記事をご覧になってくださったらお伝えしたいのですが、アッテンボローさんたちの美しくて聞き取りやすい英語ナレーションと、こういう撮影秘話は絶対に削らないでいただきたいです……)

また同シリーズ「大いなる海の宴」では、アラスカが舞台となっています。

壮絶な冬を超えて生き延びているわりに無邪気なところがあるアシカたちが、カメラマン氏の水中撮影に「アラマフシギフシギ、ナニコレダレコレ」とカメラやカメラマン氏本人にコンコン鼻を近づけているというほほえましい映像がある一方、サーディン・ラン同様の魚群(今回はニシン)捕食の際、鳥たちに上空と海中から襲われ、一か所においつめられて水面スレスレでびちびちのたうっている魚群を水中撮影していたカメラマンの目と鼻の先をかすめ、水面そのものが割れ、波間に山の立ち上がるように、体長十数メートルのザトウクジラがぱっくりと大口をあけて突っ込んでいく瞬間がありました。(HPの解説によれば、「Within a feet」なのでその巨大口とカメラマン氏は約30pしか離れていなかった。)



https://www.youtube.com/watch?v=quwebVjAEJA

人なら呑みこんでも多分吐き出してくれるだろうと言ったって、そのとき無傷でいられる保証はどこにもなく(そもそも吐き出してくれる保証からしてない)まさしく命がけの映像でした。

(ザトウクジラが海面に姿を現した際、魚群近くでカメラマンを見守っていたボートから叫び声が上がっていた。)

「怖かった……」
そう言いながら上がってきたカメラマン氏、しかし、その顔は、前代未聞の映像をものにし、その目に焼き付けた達成感に紅潮していました。

スタッフたちの撮影風景ダイジェスト版動画はコチラです。


https://www.youtube.com/watch?v=qPS3mP3fIQs

壮大で厳しい自然の驚異、スタッフたちの度胸と執念、美しい音楽にアッテンボロー氏の重厚かつ熱のこもったナレーション、どれをとっても素晴らしい作品なので、是非ご覧になってみてください。

各回エピソード紹介や動画を含む「Nature's Great Event」のHPはコチラです。
(動画集はコチラ)

当ブログの海の生物にまつわる記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。

夏向き癒しのイルカ動画
イルカたち、フグ毒を回し飲みしてハイになる(イギリスBBCドキュメンタリーより)
自然番組の撮影方法(BBCドキュメンタリーより)


読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 05:01| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月03日

放送熱望!イギリス絵画鑑定番組「Fake or Fortune」

イギリスBBCで現在放送中の非常に面白い番組をご紹介させていただきます。

「Fake or Fortune(偽物か幸運か※)」 Fortuneには「財産」の意味もあります。

巨匠の作と考えられる絵画の真贋をあらゆる角度から考察する番組です。

BBCの公式トレーラーはコチラ


https://www.youtube.com/watch?v=oT7d9Mnsn-U

番組公式HPはコチラ(画家や鑑定方法情報があってここからして面白いです。動画つき。)

イギリスの鑑定番組といえば長寿番組「アンティークロードショー」(おそらく「なんでも鑑定団」が影響を受けた番組)が有名ですが、これはいわばそのスピンオフともいえるもので、同番組の司会者で有名ジャーナリストのフィオナ・ブルース(Fiona Bruce)と、同番組鑑定士フィリップ・モウルド(Philip Mould)、研究者でアート・ディーラー、バンドール・グローヴナー(Bendor Grosvenor)の3人が、主に視聴者からの依頼を受けた絵画について調査を進めていきます。

なお、フィリップ・モウルド氏は、うずもれた巨匠の作(通称スリーパー)の発掘者として有名で、「絵画のシャーロックホームズ」という異名をとり、その活躍ぶりは既にNHKのドキュメンタリー「ハイビジョン特集 スリーパー・眠れる名画を探せ 〜イギリス美術界のシャーロック・ホームズ〜」(2004年放送)でも紹介されています。

NHK番組情報はコチラ(動画つき)

美しい絵画と巨万の富をめぐり錯綜する思惑、様々な歴史的背景、古い資料から手がかりをあぶりだす執念、緻密な科学的調査、そして絵の持ち主たちの運命の明暗に圧倒され、一級の推理ドラマのように一度見始めたら目が離せない引力をもつ番組です。

日本でも美術鑑定をめぐる漫画がいくつもありますが(「ギャラリーフェイク」「オークションハウス」「キュレーター」「MASTER KEATON」の一部作品など)言うなればそれのリアル版、しかも、本物の絵(依頼品とともに、その画家の傑作が何度も大写しになって美しい)とともに、数千万円がかかったドラマが各国を又にかけてじっくり一時間かけて展開されるので見ごたえ満点です。

ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -
ギャラリーフェイク(1) (ビッグコミックス) -

オークション・ハウス 1 -
オークション・ハウス 1 -

キュレーター 1巻 -
キュレーター 1巻 -

MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -
MASTERキートン 1 完全版 (ビッグコミックススペシャル) -

現時点でシーズン5に突入していますが、既に未発見、あるいは行方不明だった名画をいくつも発掘しています。

一方で、アートマーケットの未だ不透明で権威主義な性質や、Forger(贋作家・偽造師)と呼ばれる、過去繰り返し世間を騒がせた贋作家たち(たまに足を洗った本人たちが出てきて、依頼品が自分の筆になるものかどうか確認するという荒業展開あり〈汗〉)の存在といった、芸術界の闇の部分についても詳しく紹介されます。

個人的には「デヴィット・アッテンボローさんたちが手掛けたBBCの自然番組」「Dad’s Army(村の年配男性たちが第二次大戦中にイギリス防衛に立ち上がるまさかの戦中コメディ)」「ギャレス・マローンさんの合唱ドキュメンタリーシリーズ」に引き続き、「イギリステレビ面白すぎる……(ガン見&わななき)」となった作品です。

よそのおうちのものとはいえ大金がかかってるから余計鼻息荒くなる……。

NHK様、どうかどうかなにとぞ放送をご検討ください!!

(いや、「スリーパー」が今年6月に再放送していたらしいので、既に実現に向けて動き出しているかもしれません。その情報を入手したら必ずお伝えいたします。)

放送が決定するまで(←誰もやるとは言ってない、思い込み激しい子か)、当ブログでこのシリーズ各回の魅力を一部お伝えしていきたいと思いますので、よろしければご覧になってみてください。

読んでくださってありがとうございました。

参照:ウィキペディア記事(※鑑定結果を含むネタバレ記事になっているのでご注意ください)


posted by Palum. at 04:30| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月12日

「Dad’s Army」のボタン

 先日、映画「ライフイズビューティフル」のご紹介にちなんで、戦時下のボタンにまつわる記事を書かせていただきました。

 本日は、その番外編として、イギリスの超人気コメディ「Dad’s Army」内のボタンのお話をご紹介させていただきます。(「The Showing up of Corpral Jones」のエピソードより)


「Dad’s Army」は第二次大戦下のイギリスを舞台にした、コメディドラマです。

 
 戦時下がコメディって……、という日本人の呆然をよそに、放送終了後約30年経過した昨今でも再放送を繰り返す(元々は1968〜1977に放映された)怪物番組。(当ブログの過去ご紹介記事はコチラ。)

 私があまりの不謹慎ぶりに度肝をぬかれたオープニング映像をご覧ください。こんな第二次世界大戦の戦況紹介って……(作品自体のテイストは温厚なんですがね……)



そして全員集合のエンディング、なんかほほえましい。
(登場順にマインワリング隊長、ウィルソン氏、ジョーンズ氏、フレイザー氏、ウォーカー氏、ゴッドフリー氏、パイク青年)




 この作品では、若い男手不足のせいで(既に徴兵されてしまっている)、年配の男性たちが地元の防衛に奮闘しないといけないという状況が(ちょっとドリフターズ風味で)描かれています。

 
 無論、物資も非常に不足していて(日本ほどではないみたいですが、イギリスもかなり大変だったようです)、彼らに最初に支給された武器は「pepper(※)」でした(敵の顔に投げろ的な話らしい)。

(※「コショウ」だと思うのですが、もしかしたら「トウガラシ(red pepper)」のことかもしれません。ジャッキー・チェン映画の中には、トウガラシ噛み潰して噴きつけて敵を撃退していたシーンもありましたし【目に入ると痛い。噛む方も大変だけど】。まあ、いずれにしても「無茶」な武器ですが)

 そんな彼らなので、当初は軍服が無く(主にスーツ姿で活動している)、ようやく届いても、ボタンがついていない。

 仕方が無いので、手持ちの服のボタンを外して軍服につけることになりました。


 結果、フレイザー氏は、「トグル(toggle)」と呼ばれる木の棒状ボタン(よくダッフルコートについてる)つきの軍服に。
 
(フレイザー)
They come off my patrol coat. I haven't worn it since Jutland, and the moths got at it.
このボタンはパトロールコートからとってきました。ユトランド以来着ていなかったのでコートに虫食いが。

Jutland……デンマークのユトランド半島。1916年ユトランド沖海戦の頃に着ていたという意味かと。


moth……蛾、この場合は衣類を食べてしまう衣蛾(イガ)の幼虫のこと


(みんなの格好のチェックをしていた隊長マインワリング氏、困惑しながらも)
You’re lucky you didn’t get woodworm, too.

(ボタンがコレだから)木食い虫にまでやられなくて運がよかったな

woodworm……木食い虫


 そして、ゴッドフリー氏の軍服は、なんかキラキラしてカワイイ感じに。

(マインワリング氏)
Those are rather flamboyant.
少々派手じゃないか?

rather……少々、幾分、かなり
flamboyant……けばけばしい、はでやかな

My dress studs, sir. That’s all I could manage. I’m afraid the diamonds aren’t real.

私の礼服の飾りボタンです隊長。これしかありませんでした。残念ながらボタンのダイヤモンドは本物ではありませんが。

stud……飾りボタン


 洋服にとってボタンって大事なんだなとよくわかりました。二人とも、もはや何の服だかわかりません。

 ところで、全員の軍服のボタンが無いと気づいたマインワリング隊長が家に戻って手持ちのボタンをつけてくるようにと申し渡した際、こんなことを言っています。

Be back here in 45 minutes, by which time I expect to have everything buttoned up.

45分後には戻ってくるように、その頃にはみんな出来上がっているだろう。

button up」には「ボタンを留める」と「完成させる」の意味があるそうです。ダジャレですね。

 それを傍で聞いていたウィルソン氏の「Nice little joke sir(良いジョークですな隊長)」という乾いた愛想笑い……。

 このドラマ本当に面白いんですが、多分日本では放映されることが無いでしょう。

 しかしイギリス人にとってはユーモアの中のユーモアとも呼ぶべき名作なので、このブログでは折にふれそのウィットをご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:25| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月04日

スタブロス フラットレー(オモシロ父子ダンス)


本が出ていました。(面白そうだなあ)

How to be (a Little Bit) Greek

How to be (a Little Bit) Greek

  • 作者: Stavros Flatley
  • 出版社/メーカー: Bantam Press
  • 発売日: 2009/10/09
  • メディア: ハードカバー




 ギリシャといえば「彫刻」「神話」「海」しかイメージできなかったわたしが、映画「マイビッグファットウェデング」を観て、新たに

「陽気で、歌と踊りが好きで、自分たちのルーツを誇りに思い、家族を大切にする人々」

というイメージを学んだのですが、2009年、そんなイメージをさらに補強する人々をイギリスで観ることができました。



 歌手スーザン ボイルさんの登場で知られる、イギリスのオーディション番組、「ブリテンズゴットタレント(Britain's Got Talent)」。

 優勝者は、一躍イギリス中の人気者、王室一家の前での一大コンサートに参加して、パフォーマンスを披露できるという超有名番組です。


 この番組で、スーザン ボイルさんらとともに、オモシロダンスでファイナリストにまで登りつめたギリシャ系父子がいました。

 その名はスタブロス フラットレー(Stvaros Flatley)。

 よろしければ番組の動画URLをご覧ください。



 彼らの登場時、重厚な音楽とともに、渋い声でこんなナレーションがありました。

 (※例によって「雰囲気だけはお伝えできるかと思うけど間違ってるかも意訳【どんだけアテになんないんだ】」なんで悪しからずご了承ください)

 「……遠い昔…キプロス(島の名前、南部住民はギリシャ系)にダンスを愛する男がいた……。彼は村人たちのために踊り、村人たちは彼の踊りを観ることを愛した……紳士淑女の皆様、今宵ただ一夜限り、どうかご歓迎ください、ミスター スタブロス フラットレー……」


 で、カッコイイジグ(Jig……アイルランドの活発なリズムの舞踊曲)の音楽とともに、ぽちゃ上半身裸で金髪ヅラのお父さんディミトリオス氏が、びよーん!と現れ、舞台の隅から隅まで疾走。

(よく見ると、御父上のふくよかな腹部には「キプロス」の文字と地図。)

 一通り場内を湧かせるドタバタダンスの後、足先を動かすステップを披露。
(これはかなり軽やかで上手い)

 彼が「シュワッチ」的なポーズで、舞台袖に合図をすると、そっくり同じ格好(顔も瓜二つ)の息子さんラギ君が、まりのように飛び出してきて、お父さんと二人で、ぽちゃを存分に生かした、息の合ったお茶目炸裂ダンス。

 大爆笑&総立ちで手拍子する観客に向かい、最後は二人で金髪ヅラを放り投げてフィニッシュ。

(お父さんの地頭は、年月の経過が影響したスキンヘッド)


 ほかのファイナリストたちと違い、いわゆる「うまっ!!(驚愕)」というパフォーマンスではないのですが、どうしても笑わずにはいられなかったですね。

(スーザン ボイルさんらのような、プロとして登りつめていくためのきっかけとしてではなく、本当にただ、「やってみたかった」という感じで出場したようです。そのへんのいきさつが「Daily mail」の記事にありましたので、よろしければお読みください。写真も楽しい!)
 


 以前ご紹介したコミックリリーフの記事のロバート ウェブ氏が踊ったフラッシュダンス(超傑作です)同様、

「うまいところと笑えるところの見せ分けが上手」

というのもありますが、何よりも、

「この息子さん、ホントーにお父さんが好きで、同じことしたいんだな。仲良いんだなあ」

というのがすごく伝わってくる、ほのぼの大爆笑(変な日本語だけどそうとしか言いようが無い)感が良かったです。

 息子さん、お父さんがギリシャ料理レストランの経営者だったときに(まさしく「マイビッグファットウェディング」の世界ですな)、お客さんの前でダンスを披露しているのを見て、自分もやってみたくてたまらなかった。それがオーディションに参加した理由だったそうです。


 ところで、コンビ名の由来ですが、スタブロスはギリシャ系の名前らしいです(人名でも地名でもありました)。

 そして、フラットレーは、アイリッシュダンスグループ「リバーダンス(Riverdance)」の初代メインでもあった、伝説の天才ダンサー、マイケル・フラットレー(Michael Flatley)から来ているそうです。
(ギャハハハハ!!!)


 ちなみにアイリッシュダンスは、主に背筋をぴんと伸ばし、足先しか動かさないでタップを踏むような形のダンスです。

 男女ともに、「歩く」ということの一切ない動きで、整然としながらパワフルなリズムを舞台に刻みます。

 こと、このマイケル・フラットレー氏は本当に凄い人だそうで、イギリスの知人は皆さん知っていました。

 日本だと、わたしの知る限りでは「ベスト・オブ・リバーダンス」というDVDの何割かで彼の映像が見られます。

(リバーダンスの公式HPはコチラ


ベスト・オブ・リバーダンス[期間限定スペシャル・プライス] [DVD]

ベスト・オブ・リバーダンス[期間限定スペシャル・プライス] [DVD]

  • 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
  • メディア: DVD




(ちなみに現在のマイケル・フラットレー氏はリバーダンスを離れて活動しておいでです。彼の公式HPはコチラ


 というわけでスタブロス・フラットレー父子に感動した勢いで、本家マイケル・フラットレー氏の映像を観てみました(順番おかしくね?)。


 冗談抜きで、足の動きが肉眼で追えませんでした。
 「足を動かす」に「ただ見る」が負けるってどういうことだ!?と自分でも思いますが、本当にわからなかったです。

(音で、「あ、あの残像の中に、あれだけの回数ステップがふまれているのだ」とわかる)

 あふれるパワーを眼光に宿し、疾風のごときステップで、見る者の鼓動を支配する。

 その、凄まじい存在感に、息をのまずにはいられない人でした。

 言うまでも無いことですが、スタブロス親子に似た格好(金髪、上半身裸、黒タイツ)ながら、金髪は本物で、腕も胸板も腹筋も滑らかに鍛え抜かれた、スラリとした肉体美。

(スタブロス父子は、マイケル・フラットリー氏の「Load of the dance」を参考にしたようです。)

 マイケル・フラットレー氏が、ダッと、目にもとまらぬステップを踏んで、滑るようにステージを駆け抜けたとき、それだけで常人と違うものを燦然とまき散らし、そりゃあもうカッコいかったです。

 勝気な白鳥、一閃の稲妻。

 何になぞらえても、あの驚くべき身体能力はたとえようがないのですが。
 
 アイリッシュダンスのファンだとか、そうじゃないとか抜きにして、

「うをーーー!!すっげーーーっ!!」

と、観る者のテンションを、力ずくでグィーンと上げてしまう感じです。


 というわけで、イギリス人はみんな「フラットレー」とは何者であるかを知っていて、あのスタブロス親子を見たので、

「超絶技巧と圧倒的なカリスマ性、鋼のごとき肉体美」

というイメージが、まるっと裏返されて、おかしみもひとしおだったのでしょう。

 スタブロス父子のおかげで、ワタクシ

「Loveable(アメリカ英語ではLovable)=(形容詞)愛すべき、可愛い、魅力的な」と、

「hilarious=(形容詞)とても面白い、こっけいな、陽気な、楽しい」

という単語を覚えました。 (ジーニアス英和辞典参照)

(※「hilarious」は、どうも「めちゃくちゃ笑える」クラスに面白いことについて使うみたいです。「ドリフ大爆笑」観たとき級って感じでしょうか【←そう?】。)


 ちなみにスタブロス父子は、セミファイナルの人気投票では、あの、シャヒーン ジャファゴーリ君(※)をしのぐ得票でした。

(※マイケル ジャクソンの曲を歌いこなして大センセーションを巻き起こした少年。マイケルのお葬式にも招待された。よろしければ、彼をご紹介した過去記事も併せてお読みください)
 確かに彼らのセミファイナルは傑作でした。



 白いフワフワチュチュ(バレエで女性が着るスカート状の衣装)に赤いポンポンつきの靴と帽子といういでたちで、どすこいチックに踊りまくる(このときの音楽はアイリッシュではなくギリシャ系のようです)姿は、どことなく、我らが志村けん氏の
「一丁目、一丁目、ワーオゥ!(※)」
に似てなくもなかったです。どうりでひときわ心惹かれると思った……。

(※「八時だョ!全員集合!」で、志村氏はよく、若干危険な「白鳥の湖」的衣装で踊っていた)。


 ところで、ダンス途中から出てくる、気の良い感じの男性ダンサーたちは、お父さんディミトリオス氏がレストラン経営していたときの、従業員の方々だそうです。(大笑)

 大笑い、ですが、狙ってか狙わずか、この趣向は非常に賢かったです。

 あの番組は、スーザン ボイルさんや、シャヒーン君ら、驚愕の実力者が勝ちぬく一方で、
「別にそこまで凄くないけどオモシロ系」
の人も、案外セミファイナルまで勝ち抜けます。

 ただ、セミファイナルにもなると、なにせ、イギリス中が注目する番組ですから、舞台も照明も服装も、思うがままにゴージャスにできます。

 しかし、そのゴージャス感の中だと、「愛すべき素人」は、たいていすごくちぐはぐになって浮いてしまうのです。

で、「やっぱ物足りないわ」と視聴者の支持を集められず、敗退してしまう。
(ファイナルに勝ち抜けるか否かはテレビ視聴者の電話投票で決まる。「コミックリリーフ」の記事でもご紹介しましたが、イギリスではこの形式の番組がとても人気です)

 そこを、あくまで「家庭的」にまとめたところが聡明。

 自分たちの持ち味を、決して見失わなかったのだなと思いました。

(ちなみに、ファイナルではプロダンサーと競演をしていましたが、これもまた、別の意味で良かったです。
すごい異種コラボ、それから、本番中はやたらキラキラしていたお父さんディミトリオス氏の、「取り組み後のお相撲さん」みたいなインタビューもいい。



 このスタブロス親子と、「マイビッグファットウェディング」のおかげで、ギリシャ系の人々のユーモアや絆を知ることができました。

 そして、マイケル フラットレー氏のダンスの凄さを、ちゃんと理解する一方で、こういうパフォーマンスに、大喜びで惜しみない拍手を送り、

「女王陛下の前で披露されるかも」

という番組の、決勝まで勝ち残らせてしまうという、イギリスの人々や文化もまた、おおらかで楽しいとつくづく思うのです。


 そういえば、わたしが本家マイケル・フラットレー氏のDVDを入手して、

「スタブロス父子とどのくらい違うか見比べてみます」

と、ホストファミリーご夫婦に申し上げたら、

「それはいい、多分、『ちょっとだけ違う』でしょうね」

と、ケラケラ笑っていらっしゃいました。

 いいお宅にお世話になっていると思いましたよ……(何きっかけだ)。


 以上です。読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 16:15| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月28日

コミックリリーフ(Comic relief)の「フラッシュダンス」

(はじめに) Comic reliefとは

 Comic reliefは、イギリスのチャリティー団体です。
 
 この「コミックリリーフ」のチャリティー活動のメインとなる日が、2年に一度(odd year=奇数年)に巡ってきます。これを「Red Nose Day」と呼び、赤い鼻をつけるのが目印です。

(※ちなみに、2002年度より、偶数年【=even year】にスポーツ主体のイベントで寄付を呼び掛ける「スポーツリリーフ」という活動が生まれ、毎年交互に開催されています。)

 この日は、BBCがコミックリリーフと提携し、長時間のチャリティー番組(telethon)を放映します。

 この赤い鼻は、スーパーマーケットSainsbury'sや、リサイクルショップなどを経営するOxfamなどで誰でも簡単に購入できます。

価格は、確かひとつ1ポンドだったと思います。もちろんこの収益も募金になります。

卵のバラ売りみたいに、箱の中にゴロゴロ詰められていました。

 これはわたしも買いました。ちなみに、鼻に挟むものなので、鼻呼吸不可、かつ、付けっ放しは痛いです(苦笑)

 この「Red Nose Day」は、小学校などでも賛同してイベントを行うことがあり、ケンブリッジの町なかでも、お芝居のようにドレスアップしたり、カラフルなカツラをつけたりといった格好に、赤鼻をつけて通学する子たちをみかけました。
 
 楽しみながら、社会問題について学び、自分のできることを考えるという一日になっているようです。

  
 
 ※団体Comic reliefのHPは以下のとおりです。
  http://www.comicrelief.com/
 
 ※BBCの「Red nose day」の番組HPは以下の通りです。
  http://www.bbc.co.uk/rednoseday/


(お詫び……一時Red Nose day自体を紹介するページのURLである、http://www.rednoseday.com/を、BBCのものと混同してしまっていました。訂正させていただきます。)


 ※Comic reliefのウィキペディア記事は以下の通りです。
  http://en.wikipedia.org/wiki/Comic_Relief



(「Comic relief」のチャリティー番組と「フラッシュダンス」)
 

 2009年、BBCは「Do something funny for money」というキャッチフレーズのもと、コミックリリーフと提携して、チャリティー番組を放映しました。

 日本にも同系統の番組がありますが、このBBCの番組の場合、

「深刻な現状を伝える」
「視聴者を徹底的に楽しませる」

という住み分けが非常にきっちりしており、こんなシリアスなコンセプトの番組に、打って変わって、こんなおバカ企画を挟んじゃっていいのか……?と、日本人にはかなり衝撃的です。

 多分、日本では「困っている人がたくさんいるのにふざけるな」と苦情殺到で成立しないでしょう。

 ですが、このエンターティメントの力で、人々をチャリティーに参加させるというアイディア、もっと平たく言うと、

「いつも以上に楽しませるから、つらい現実もちゃんと学んで、そして寄付して」

という考え、テレビの「報道」と「娯楽」という二つの存在意義をきっちり活かしていて非常に合理的です。

 そして、開催するたび、日本円なら何十億円(!!)という寄付金を集めているのです。


 この、2009年コミックリリーフ番組中、個人的に、もっとも「笑わせて寄付させる」の構造が鮮やかにキマッていると思ったのは、芸能人たちのダンス対決でした。

 視聴者に、お気に入りのダンスを電話で投票してもらい、勝者を選ぶのですが、この電話料金が寄付にまわされるという、実にムダの無いシステム(笑)。
 
 で、このダンス大会ですが、アイリッシュダンスなど、「正統派の技術を見せるダンス」に果敢に挑戦して、カッコよいものを見せる人たちもいる一方で、

 ・ふくよかな熟年コメディアン女性Jo Brand、三つ編み女子高生へそだしルックで、若手ハンサムダンサーとともに、ブリトニースピアーズの曲でセクシーダンス。



  
 ・ロンドンの人気ミュージカル「Dirty dancing」の曲と衣装で、ダンサーとともに、恋人たちのダンスを踊る、ピンクのドレス姿とグラマーさが魅力の中年男性Kieth Lemon(ヒゲあり)と、彼女(?)のゴツイ体を両手で持ち上げる必要がある(Dirty dancing のトレードマークの振り付けだから)男性コメディアンPaddy McGuinness(すぐ手がヒゲの美女の胸やお尻にいく)。




なんてのもありました。これに投票することが、社会貢献につながるんですよ……。

(※補足……ややこしいのですが、厳密には、Kieth LemonとはコメディアンLeigh Francis氏のキャラ名のようです。)



僕的には、「Dirty dancing」のセクシーさや腕力(……)、待機中も余念なく手をとり、熱く見つめあう男性Paddyのたくましさと、ヒゲの美女Kiethのいじらしいまなざしにもグッときましたが(真顔)、やはり白眉はロバート・ウェブ(Robert Webb)氏の「フラッシュダンス」でした。

(※この二者のインタビュー記事がご覧になりたい方はコチラをクリックしてください。談話とともに、素敵なお姿がご覧になれます)

オーディション番組のスーザン・ボイルさんの登場等と並んで、「2009年TV界ベストパフォーマンス」に入れる人多いと思いますよホント。

 「フラッシュダンス」。元ネタはアメリカ1980年代の映画で、若い女性が(なつかしのカーリーヘアがカワイイ)ダンサーとして夢を追う青春作品です。主題歌「What A Feeling」も大ヒットしました。

 これに挑んだロバート・ウェブ氏は、デヴィッド・ミッチェル氏と「Mitchell and Webb」というお笑いコンビを組んでいます。

ちなみに双方ケンブリッジ大学出身。

 個人的には、このコンビ、「爆笑問題」に雰囲気似ているなあと思います。

高学歴でネタに学術的なくすぐりがあるところや、人間に対するシニカルなまなざし、そのわりに相方との付き合いは長いところなんかが。

 さて、ウェブ氏のダンスです。




まず、映画の主人公と同様に、カーリーヘアに溶接工のマスクと作業着姿でバーナーを手に登場。

ちょっとダンスポーズをつけた後、バーナーを手放し、何かから解き放たれたようにマスクを外すと、思いっきりのシャウト顔で、作業着を破り捨て、ちょっと切れ込みの深すぎるハイレグレオタードで、別にあまり見たい感じでもない美脚を誇示しながら「What A Feeling」に合わせて情熱のダンス。

 ……くどいようですが、チャリティーを呼び掛ける番組の一環です。
 
 これが80年代調の濃いメークと演技力で、ときおり健康的なセクシー美女に見えてしまうから不思議です。いや、原則違うのですが。
 
 彼の「フラッシュダンス」動画入りの記事がご覧になりたい方はコチラをクリックしてください。(※BBCニュースページですが、最初にCM映像が入っています)


彼の勝因としては、

  @「笑えるダンス」と「プロダンサーではない割には相当上手なダンス」をきっちり分けて見せた。

 (一例:横たわった体勢から跳ね起きる、などはしっかり失敗するが、リズム感やステップのセンスはかなりのもの。)

  Aファイナリストのうち唯一人、プロのダンサーのサポートを受けず、自分だけでステージを魅せ切った。

とくに@がイギリス的だと思います。

 日本なら、ここまで到達するまでの血と汗と涙の苦難が、かならず念入りに紹介され、パフォーマンス時、「すごいね、がんばったね……」と感涙を誘うでしょう。

 しかし、ウェブ氏の場合、訓練されたダンス技術を披露しながらも、それほどでもない跳躍力、ターンしても正面に戻れないなどという部分と、なのに、すごく「できてる感」あふれるエネルギッシュな表情との不均衡は、しっかりおマヌケです。

 つまり、どこまでいっても「熱意と努力」ではなく「娯楽」の表現者のまま。

(ちなみに、特訓風景も放映されますが、周囲のダンサー達の爽やかなハイテンションと、「ハーイ!」的なフレンドリーさ、ボディータッチに対し、人間不信の犬のように鼻面をシワシワさせるウェブ氏が出ていたりで、「血と汗と涙の感動」率低し。)
 
 日本とイギリス、どちらが勝ちというわけではなく、国民性の違いによる、「観客の感動のツボ」の違いが、TV内のパフォーマンスを変えるのでしょう。
 
 しかし、そんな理屈抜きに、あの「フラッシュダンス」はオモロイし好きですね……。


 ちなみに、彼のダンスに対し、コメンテーターたちは、

「ウェストエンドで自分のショーを持つべきだ」(←笑)
「あなたは国の宝だ」(←大笑)

などと絶賛していましたが、とくに

「ロンドンオリンピックの開会式に出演できる」

というMichael McIntyre氏(彼自身有名なコメディアン)のコメントには激しく同意します。

 やったら、わたしはイギリスを永久に尊敬します。

 北京オリンピックのチャン・イーモウ監督(※)による、圧倒的な歴史を盛り込んだ重厚美麗な開会式に、あのダンスなら、(ある意味)対抗できるインパクトを与えられるではないでしょうか。全世界(ある意味)騒然間違いなしですよ。

 
 余談ですが、わたしは、このダンスでウェブ氏のお笑い芸人としての才能にすっかり魅了され、
「彼のコントが観てみたい」
とけっこうあちこちで言ってしまいましたが、実際「Mitchell and Webb」の出演する番組いくつか観た結果、非常に面白い物がある一方で、一部、全日本人が凍りつくほどブラック、あるいは、ハレンチ(旧表現)なものもありました。

 良かった……一人で観て。

ホームステイ先で、観たいとお願いしたり、わからない単語をうっかり先生やホストファミリーに聞いたりしたら、気まずいどころの騒ぎじゃありません。

 とはいえ、あのダンス、それ自体は一見の価値ありです。

 そして、番組放映後、町なかで、立ち話をしている70代くらいの年配女性たちが

「確かに彼のダンスが一番良かったわね」

などと評している、イギリスのそんなさばけた国民性が、わたしはとても好きです。


Robert Webb氏のウィキペディア記事URLは以下の通りです。

http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Webb_(actor)


(※さらに余談)
 チャリティーとはまるっきり関係ないのですが、
「人を笑わせるための赤いつけ鼻」という小道具で、人の優しさと、苦難の中の笑いの力を描いたフランス映画に「ピエロの赤い鼻」という名作があります。
 本当に好きな映画で、Red Nose Dayの期間中、そこらじゅうに赤い鼻が溢れているもんで、あのストーリーを思い出して目頭が熱くなりっぱなしでした。
 当ブログ映画ご紹介記事はコチラです。
 

ピエロの赤い鼻 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ハピネット
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「Comic relief」ダンス対決で元ネタにされた「Flash Dance」
「Dirty dancing」の映画DVD情報は下記のとおりです。


フラッシュダンス [DVD]

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  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD





ダーティ・ダンシング [DVD]

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  • 出版社/メーカー: キングレコード
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※チャン・イーモウ監督
中国の国民的映画監督。色彩表現に長け、アクション映画とヒューマンドラマ、どちらでも高い評価を受けている。高倉健氏とも親交が厚い。

アクションものなら「HERO」、芸術作品としては、「赤いコーリャン」などが有名ですが、個人的お勧めは「初恋の来た道」、女優チャン・ツィイーの初々しい美しさと、恋、家族、師弟の絆が中国農村風景の中にきらめく、忘れがたい傑作です。


初恋のきた道 [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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2010年01月29日

Shaheen Jafargholi(シャヒーン・ジャファーゴリ)君

イギリスのタレントオーディション番組「Britain’s got talent」で、マイケル・ジャクソンの歌を歌い、このことがきっかけで、マイケルの追悼式にも招かれた歌手をご存知でしょうか。

彼の名前は、Shaheen Jafargholi, (シャヒーン・ジャファーゴリ)。ウェールズ出身の、当時十二歳の少年でした。
シャヒーン君の、第一次オーディションでのセンセーションが観られる動画です。



 審査員で、常に辛口のSimon Cowel(サイモン・コーウェル)氏が、シャヒーン君の歌いだしをいきなり止めて、
「これ以外に歌える歌は?」と聞き、シャヒーン君はマイケルの「Who’s loving you」を挙げます。

 最初の歌で十分巧かったのですが、その声の伸びに、お客さんは度肝を抜かれ、熱狂します。

 確かに、アップテンポな歌より、声量を活かすバラードのほうが、彼の才能を遺憾なく発揮でき、それを一瞬聴いただけで見抜いたサイモン氏は、

「スゴい、ダテに年中その態度なわけじゃないんだね」

と、イギリス人をひそかに納得させました。

シャヒーン君は、幼いころからいくつかの舞台経験を積んだのち、マイケル・ジャクソンの歌を土台にしたライブパフォーマンス「Thriller Live」で、少年時代のマイケルの歌を歌う役を勝ち取り、続いて、このオーディション番組で一躍有名になりました。

シャヒーン君が「Thriller live」に選ばれた際のBBCのニュース記事は下記のとおりです。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/wales/south_west/6564269.stm

(前回の記事でもお伝えしましたが、「Thriller Live」のロンドン公演については、以前ご紹介させていただきましたので、よろしければ下記URLをご覧ください。【注、この記事の舞台にはシャヒーン君は出ていません】)

http://enmi19.seesaa.net/article/123448222.html


余談ですが、シャヒーン君のように、少年時代のマイケルの歌で歌唱力を披露する少年は、イギリスには結構多いそうです。

確かに、シャヒーン君級はそうはいないにしても、実際イギリスの少年少女の歌やダンスの技量は「あら〜、上手ね、可愛いわね〜」ではなく、本当にレベル高いです。

そして、若さゆえの生き生きとしたパワーで、大人とはまた別の迫力をバンバン放っています。

ところで、シャヒーン君の出身地であるウェールズ地方は、美しい声の男性が多いことで有名だそうです。

(すみません、一時期「2007年ブリテンズゴットタレント優勝者ポール・ポッツ氏も南ウェールズ出身」と書いてしまいましたが、彼はイングランド出身で、出場したのがウェールズでのオーディションでした。お詫びして訂正させていただきます。)

 理屈は不明ながら、とにかく「ウェールズ出身の男性は声がいい」というのは、イギリスでは古くから定説で、炭鉱町ごとに「男声合唱団」を形成していたりするそうです。

(ちなみに、スコットランドとアイルランド地方の音楽性も、やはり尊敬されています。)

美しい声の人が多い場所、なんだか神秘的でいいですね。

(日本なら、沖縄、奄美や、北国に、音楽的才能のある人が多いというイメージがある、みたいなものでしょうかね……。)

話をシャヒーン君に戻しますが、この、エクボと笑顔が感じの良い少年の凄まじいところは、声が大きくきれいなだけでなく、歌で哀歓を伝えられるところと、なにより、どんな大舞台でも、最大限に自分の能力を出してしまうところです。

この番組では、老いも若きも、日本なら、即座に芸能プロダクションがタックルかましそうな才能の持ち主がたくさん出てきましたが、一方、やはり「場慣れ」していないせいで、勝負どころで実力が出し切れないということが、ままありました。

(有名だろうが無名だろうが、いいノドだろうが、実はそうでもなかろうが、大観衆の前で、緊張しない「プロ」って、やっぱりすごいんだなとつくづく思いましたね……)

優勝こそできませんでしたが、彼はいつも凄かったです。

大体、大勢のお客さんの前で、手厳しいことで有名なサイモン氏に歌を止められて、次にはあの朗々とした歌声とは……、おそるべき舞台度胸です。

(家族に話したら「子どものころの美空ひばりさんみたいだね」と言っていました【笑】。)

そして、全世界の注目を集め、そうそうたる大物たちが集った、マイケルの葬送セレモニーでも、シャヒーン君の歌声は、やはり力強く響き渡りました。

シャヒーン君の追悼式でのパフォーマンスについての記事をご覧になりたい方は、下記のURLをご覧ください。

(イギリスの「Telegraph」紙のHP記事です。動画の歌の部分短いですが……。)

http://www.telegraph.co.uk/culture/music/michael-jackson/5774901/Shaheen-Jafargholi-wins-standing-ovation-at-Michael-Jackson-memorial.html

悲しい話ですが、シャヒーン君、本当はマイケルのロンドンコンサート(つまり「THIS IS IT」)で共演する予定だったのです。

しかし、その計画が実現することはなく、代わりにシャヒーン君は追悼式に招かれることとなってしまったのです……。

マイケル少年の写真を背に、シャヒーン君の力強く伸びやかな歌声が、マイケルの棺に降り注ぐ。

個人的には、マイケルの娘さんが出てきたとき以外で、最も目頭が熱くなった瞬間でした。

伝説になることと引き換えに、超有名人の苦悩を、生涯背負わされてしまった、音楽の天才マイケル。

思えば、彼は、大人になる前に、世界的知名度や、桁外れの富にまつわる人々の思惑、膨大なゴシップといったものに対峙しなければならなかった、最初の世代かもしれません。

(今や、地の果てから、家の風呂までプライヴェートが存在しない暮らしぶり、ホントだか嘘だかわかんない騒動も、お互いの宣伝のうち、マジ、タフっすよね……、というセレブリティも増えましたが……。)

マイケルは最後まで美しいもの、心躍るものを人々に届けて世を去りましたが、苦しみの多い日々だったと思います。

このシャヒーン君の、素晴らしい歌声が、マイケルのように、多くの人々を感動させてほしい。

しかし、その人生は、「有名であること」に翻弄されることのない、穏やかなものであってほしいと願います。

ブリテンズゴットタレントの番組HPは下記のURLです。
http://talent.itv.com/

シャヒーン君がマイケル追悼式について語った記事は下記のURLです。
http://news.bbc.co.uk/newsbeat/hi/entertainment/newsid_8139000/8139901.stm

シャヒーン君のウィキペディアの記事は下記のURLです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Shaheen_Jafargholi


2013年3月追記

 シャヒーン君の現在の動画を追加させていただきます。声変わりしていますが、相変わらず安定した美声で、そしてえくぼがカワイかった少年があっというまにこんな端正な雰囲気になっていました。ああびっくりした。年月が着実に実績として積み重なっています。若いのに堅実な人だなあ……。また情報を追記させていただきたいと思います。



 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 02:00| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月28日

有力情報源「Paul O’Grady Show」

わたしが、イギリスでどの舞台(とくにミュージカル)を観に行こうかという際の、強い味方になってくれたのが、Paul O’Grady Showという、イギリスの人気トーク番組です。

この番組は、トークにとどまらず、ありとあらゆるジャンルの舞台のパフォーマンスを、実際にスタジオで、一部見せてもらうというコーナーがあるので(『わらっていいとも』でもたまにありますよね)、舞台に興味のある人には、有力な情報源です。

自分が普段狙っている作品とは別に、思いもかけない出会いがあるかもしれません。

司会者であるポール氏は、元々はLily Savageという女装キャラクターでの、コメディパフォーマンスで名を挙げたかただそうです。

今はこのキャラクターを封印なさったようですが、話術の冴えゆえに、人気は衰えを知らないようで、彼の自叙伝本なども非常に人気があります。

素顔を拝見した時点で、多分そうだろうなと思いましたが、女装時、すごいゴージャス美人でした。

ちなみに、この「Paul O’Grady Show」の登場時は、二匹の愛犬のどちらかを連れて登場なさるのが恒例。

彼が、司会席で投稿された手紙を読んでいる最中も、彼を信頼しきって、司会席の上でふさふさのんびりしている愛犬の姿も、また面白いです(笑)。

もちろん、慣れもあるでしょうが、よっぽど普段からきちんと良い関係を築いていらっしゃるのでしょう。

でなければ、犬が、あんなに毎回大量の知らない人の眼前で、ああもくつろいでいられないと思います。

昔、所ジョージさんの愛犬インディ君が、どこにいようが、のほほんとしていたのや、関根勤さんの愛犬ライル君が、どう関根さんにじゃれられようと(笑)穏やかな表情のままなのを彷彿とさせます。

「Paul O’Grady Show」の公式HPのアドレスはこちらです。
http://www.channel4.com/entertainment/tv/microsites/P/paulogrady/


ポール氏の紹介、および、Lily Savageとしてのお姿が拝見できるウィキペディアのアドレスはこちらです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_O'Grady

(余談)
彼の先達である女装の名パフォーマーとして、 Danny LaRueという方がいらして、それは美しかったのだ。
(リリーさんに比べると、歌と踊りをメインに魅せるタイプの方だったようです)
という情報を入手し、情報を探していた際、ウィキペディアの「ドラッグクィーンリスト」という記事を発見、歴代の名パフォーマーたちの中に、われらが美輪明宏様のお名前を発見して、驚きました。
(ちゃんと英語で紹介記事も書かれています)

※リストのアドレスは以下のとおりです。
http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_drag_queens

この「ドラッグクィーン」という分類が、美輪様の意図なさるところと合致するかどうかはわかりませんが、さすが美輪様、ワールドワイドな知名度なのです。


posted by Palum. at 20:00| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月13日

お詫びと訂正「イギリスの怪物番組『Dad's Army』」について

前回、「イギリスの怪物番組『Dad’s Army』」という記事の中で、このドラマの主題歌について、

「『われわれはヒットラー氏をからかっているわけじゃないですよ』というような内容の歌詞(以下略)」

と書いてしまいましたが、確認したところ、わたしがその時見ていた

「Who do you think you are kidding, Mr Hitler?」

という歌に、そのような意味合いは歌詞に含まれておらず、歌全体のおおまかな意味合いは、

「ヒットラーさん、われわれは引き下がったりしませんよ」

というようなものだということでした。

逐語にすると、ことばの音遊びのような部分も多く、なかなか筋立てて理解するのが難しい歌のようですが、とにかく、わたしが以前書いてしまった文は、間違っているようなので、ここに訂正させていただきます。

大変申し訳ありませんでした。

「Dad's Army」について、この歌に関するうんちくも含めた、ウィキペディアの詳細な記事を見つけましたので、以下に紹介させていただきます。


作品全体についての解説記事。

http://en.wikipedia.org/wiki/Dad's_Army
作品内の音楽についての解説記事部分。

http://en.wikipedia.org/wiki/Dad's_Army#Music
posted by Palum. at 00:33| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月27日

イギリスの怪物番組 『Dad's Army』

「Dad's Army」のDVD(注!イギリスのDVDは日本の一般的なDVDプレイヤーではご覧になれません。パソコンなら大丈夫かと……)
DAD'S ARMYのパッケージ.JPG

(要約文)
『Dad's Army』は、イギリスで大人気のシリーズドラマです。
第二次大戦期、ナチス.ドイツの侵攻を防ごうと「ホームガード」という国防組織を結成するイギリス。
しかし、若い人たちは既に兵隊にとられて男手不足。

空になってしまった地元を守るために、「ホームガード」に参加したのは、
「いえ、あの…無理なさらないで……」
という感じの人々……。

体力と物資に不安はあっても、イギリス男の不屈の気概で、難局を乗り切ろうとする(けど、しばしば逆に騒動を巻き起こす)人々を描いた傑作コメディです。


(本文)
※今回は、ドラマ紹介として、一部ネタバレ、台詞バレがあります。

『Dad's Army』は1968〜1977年のドラマです。

でも、いまだに(2009年七月)ゴールデンタイムで再放送しています。
しかも、再放送は今回に限ったことではないとか。

「なんどでも再放送する。だってなんどでも観たがる人がいるから」
ということだそうです(イギリスの知人談)。

主要登場人物を演じられた役者さんで、故人となられたかたも、かなりいらっしゃるそうですが、それでもやるのです。

こんな番組って、ちょっと日本では類例がないですよね……。
(終了後、三十年経っても、ゴールデンタイム再放送というのが)

それにしても、最初に、このドラマのオープニング映像を観たときは、目を疑いました。



だって、軽やかな中年男性声の歌とともに、アニメで、イギリスの地図から、イギリス軍を示す、国旗模様の矢印が、いくつか、わーっと、海を渡りヨーロッパへ。

それを、ナチスのマークの矢印が取り囲み、イギリスの国旗の矢印は、わーっと国内に逃げ帰り……。

追いかけてきた、ナチスの旗たくさんに対して、イギリスの国旗は、南の端っこあたりで、一生懸命うろうろしている、という映像が流れるのです。

この、一連のアニメが示す戦況の中に、あの
「ダンケルクの戦い(※補足)」
などが含まれているはずなのに、この歌とアニメでまとめちゃっていいの……?と、あっけにとられました。

誤解しないでいただきたいのですが、イギリス人の戦争観が不真面目なわけではないです。

ごく最近(2009年七月二十五日)Harry Patchさんという、第一次大戦最後の生存兵士だったかたが、百十一歳でお亡くなりになった際は、非常に大きなニュースになりました。

また、どんな小さな町にも、第一次、第二次大戦の慰霊碑はあります。

常に花が供えられ、その多くが、イギリス人に限らず、戦争で命を落とした全世界の人々への追悼の念を記しています。

ただ、そういう真剣さとは別に、よその国の人間は、あぜんとするほど易々と、深刻な事態を笑い飛ばそうとするところが、この国の人たちにはあるのです。

わたしはイギリス人と、日本人のユーモアのセンスというのは、相当似通っていると思っていました。

でも、戦時中をギャグにするというのは、日本人にはたぶん永久に真似ができない。
こと第一次、第二次大戦については、国内外の人がそれを認められないでしょう。
そうである以上、作ってはいけないのだと思います。

(第二次大戦については、歴史的背景も、諸外国からの評価も、日本とイギリスでは違いますから。
逆にイギリスにも、こんな風には扱えば、内外から批判を受ける歴史的題材もあると思います。)


しかし、題材の是非はともかく、
『深刻な事態を、深刻だと嘆くより、いっそ笑っちゃえ』
というのは、不真面目ではなくて、したたかで高度な、生きる知恵なのではないかなと思います。

このドラマに関して言うと、設定として非常に上手なのは「ホームガード」を題材にしているところかと。

これが、攻撃にせよ防御にせよ、正規の軍隊の場合、きれいごとでも笑いごとでも済まされない話も多いでしょうが、
「自分たちが住んでいるところをみんなで守る」
という、シンプルなチームを描いていますから、ユーモラスに扱っても、観る側があまり抵抗を覚えないようです。

まあ、こんな真顔の分析は、後付けです。

私も、最初は、
「ええええ……?(冷や汗)」
と、あのすごいオープニングアニメを観て、

「いやー、それはまずい、それは駄目でしょう……」
と、静かにチャンネルを変えたのですが、
あとで、チャンネルを変えている最中に、ちょうどエンディング映像が流れていて、

「ご年配のかたがたが、つんのめったり、普段どおりの穏やかな笑みを浮かべたりしながらも、明らかに似合わない軍服を着て、町を守るためにがんばってます」
という映像が流れた際に、ぶっと笑ってしまい、それから試しに観てみて、ハマってしまいました。

 エンディング動画はコチラです。
(登場順にマインワリング隊長、ウィルソン氏、ジョーンズ氏、フレイザー氏、ウォーカー氏、ゴッドフリー氏、パイク青年)




台詞も演技もうますぎです。
(あれだけの芸達者ぞろいでなければ、この題材で笑うのは無理だったかもとすら思います。全員お見事です)


以下、主要登場人物紹介です。
(まだ全部観たわけではないので、理解不足もありますが、ご了承ください)

DAD'S ARMY のdvd.JPG


Captain George Mainwaring (俳優名 Arthur Lowe氏)
マインワリング隊長(すみませんこの方の名前、すごくカタカナに乗せづらい……)。画像前列中央。
ホームガードのキャプテンで、普段は銀行の支店長。
個性派揃いのチームを、なんとか軍隊らしく育て上げようと、日夜努力している
(そのためのアイディアが、みんなを振り回すこともしばしば)

キャプテンという立場を、かさに着た態度も、ままあるけれど、自分をえらく見せようとするときほど失敗しがち。
それでも実は人情家で、責任感は強い。


Sergeant(軍曹) Wilson (俳優名 John Le Mesurier氏)

ウィルソン軍曹。画像前列右。
銀行ではマインワリング氏の部下。そのため半強制的に補佐役に。
最初は、銀行づとめで板についた礼儀作法が災いしてか、ホームガードの人々への、軍隊的命令口調を使えずに、苦労していた。
(いきなり、ご近所の、同年かそれより上の人たちに命令しろったって、確かに難しいですよね……)

なかなか渋い容姿なのだけれど、どうも、可愛い女性には、やや甘い模様。
口癖は「Awfully〜(ひどく〜だ)」。



Lance Corporal(槍騎兵伍長) Jack Jones (俳優名 Clive Dunn氏)
ジョーンズ伍長。画像前列左。
普段は肉屋さん。兵役経験を買われて(というか、肉を賄賂に)若いころの階級である「Corporal」を引き続き名乗ることに。
(しかし、周囲が特にそれについて敬意を払っているふしは見られない)

覇気はチーム一だけれど、空回りも目立つ。
「Don’t panic!! Don’t panic!!(あわてるな!!)と、自分が慌てているときに、誰よりも先に叫びまわる癖がある。

※個人的な意見ですが、このかたは、しゃべり方から、表情、一挙一動にいたるまで、「オモシロ愛されオーラ」満点なので、どうも「お年を召した加藤茶さん」という感じがして親しみやすいです。


Private (兵卒※特に階級は無いという意味のようです)James Frazer (俳優名 John Laurie氏)
フレイザー氏。画像後列右から二番目。
普段は葬儀屋さん(副業で切手屋さんもしている模様)。
筋金入りの悲観主義論者。
チームがピンチに陥ったときは、常に最悪の事態を想定して、低い声でつぶやき続け、周囲を重苦しい空気に巻き込む。
ときどきマインワリング氏に反抗的。

口癖は「Doom and gloom(意訳、破滅【あるいは死】と憂鬱)」(笑)
スコットランド地方出身で、そのことを非常に誇りに思っている。


※イギリスにはちゃんとScotsman【woman】という言葉があります。スコットランドに限らず、出身地方に対するこだわりは強いのです。


Private Joe Walker (俳優名 James Beck氏)
ジョー.ウォーカー氏。画像後列左から二番目。
チームの中では若手だが、健康上の理由で兵役を免除され、ホームガードに加わる。
やり手で、物資不足の折でも、なにやら不明瞭なルートで何でも調達してきて、チーム内でも商売をする。
ただし、品質は信用がおけたり、おけなかったり。
また、戦時中だからという理由で、安くはない模様。




Private Charles Godfrey (俳優名 Arnold Ridley氏)

ゴッドフリー氏。画像後列左端。
長年、軍で勤務していた経験を持つ(注、軍内のお店で)。
おっとりとした、微笑みの癒し系な紳士。ことあるごとに居眠りをしている。
(わたし、この方のおかげで「doze off (居眠り)」ということばを覚えました。)
居眠りといいつつ、それが数時間の熟睡に及ぶこともある。



Private Frank Pike (俳優名 Ian Lavender氏)

パイク青年(あだなはパイキー)。画像後列右端(マフラーを巻いている)。
チーム最年少。「ホームガード」入隊時は十七歳。
(若すぎるという理由で、正規の軍隊には入らなかったようです)
母親に過保護に育てられたようで、すぐに「ママが心配する」と言う。

母親であるパイク夫人(未亡人)は、どうやらウィルソン軍曹と親しい仲の模様。
このため、ウィルソン軍曹のことを「アーサーおじさん」と名前で呼ぶ公私混同ぶりを見せている。
最年少と言う理由で、よく貧乏くじをひかされているが、口答えはわりときっちりしている。


※これをお読みになってくださっている女性に補足させていただくと、彼のルックスは背の高い、可愛い感じの好青年です。そこをぜんぜん売りにしていないところが良い。




以下、このドラマが、どんなセンスなのかをわかっていただくために、一部、ドラマの概略を紹介させていただきます。

なお、台詞については、かなり省略させていただいている上に、雰囲気をお伝えする程度に書かせていただいている
(しかも、何より、わたしの怪しげな語学力を経由している)ため、厳密、正確なものではないことをあらかじめご了承ください。

こんな感じのやりとりなのかな、というくらいの姿勢でお読みくださるとありがたいです。


以下、ネタバレです。


「The Man and the hour」
シリーズ第一話(白黒映像)。

地元を守る有志として集められたばかりのメンバー。
軍服も武器も無い状態で、
(史実、こんな感じのところも多かったそうです)

「戦車が攻めてきたらどうすればいいか」
について作戦を練る。

ウィルソン軍曹が黒板に描いた戦車の絵
(「五歳くらいの子が、『ドカーン!ゴゴゴゴ〜』とか、言いながら描きました」と言っても通用しそうな画風)
の前に体育座りをして、話し合いをする人々。

お肉屋ジョーンズ氏の提案。
「ジャガイモを使うのはどうでありましょうか?」

マインワリング隊長。
「……ジャガイモ……?」
「戦車の排気パイプに詰めれば、エンジンを故障させることができます」

「……なるほど、しかしナチスの戦車の排気パイプは、とても細長いんだ」
「細長いジャガイモなら可能であります!」

(一同、同意【←ええええ……?】)
「『シャーロットビューティー』なら細くて長い!」
「『キングエドワード』もだ!」
(よくわからないけれど、日本なら『メークイン』みたいなものですかね……)

一応、「戦車対策用」のジャガイモの配給申請もすることにして、
(ダメなら揚げて食べる予定の模様【←そういう状況……?】)
本格的な対策として、
「燃料に浸した毛布を戦車にかけて、マッチで火をつける」
(これも、相当無理そうですが)
の練習のために、戦車役の人々(服装が紳士)が数人固まって
「ブルルンブルルン……(エンジン音)」
と、口で言いながら近づいてくるのに、毛布をかぶせる練習をする(涙)。

でも実際、普通に暮らしている人達が、いきなり戦争に巻き込まれても、発想も物資もこの程度ですよね……。

笑いながらも、なんだか考えさせられる場面です。


「Deadly attachment」より。
(直訳すると『致命的な付属品』ですが、すみません、適訳かは定かではありません……)


ナチス兵が捕虜として町に連行され、正規の軍隊が引き取りにくるまで、ホームガードの本部を兼ねた教会で、監視役をつとめることになるメンバーたち。

マインワリング隊長が、ふと口にしたヒットラーへの悪口を、英語のできるナチス兵に、聞きとがめられる。
(一貫してふてぶてしいが、拘束中に出される夕飯のフィッシュ&チップス【イギリス名物魚のフライとフライドポテト】については、
『魚はカレイじゃないと嫌だ。サクサクに揚げてあること』
と注文が細かい。
【そしてマインワリング隊長は『ベトベトした(soggy)』のを買ってこさせる】)

この場面の動画です。



 今度きちんと台詞を書き起こしてご紹介させていただきますが、とりあえず「こんな感じのやり取り」というところを書かせていただきます。
「きさま、我々の偉大なるリーダーを侮辱したな。きさまはリストに載せてやる」
(メモ帳を取り出して、マインワリング隊長の名前を書き留めるナチス兵)
「われわれが戦争に勝ったあかつきには、きさまの名前を報告してやる。【なんか相当まずいことになるらしい】)」

(マインワリング隊長、多少いやな気がしながらも)
「好きにすればいい、お前たちが勝つ日は来ない」
「お〜、我々は勝つさ(悠々と首を振る)」
「勝つもんか」
「い〜や、勝つとも」

そこで、見張りの一人だったパイク青年、銃をかまえた格好で、ニヤニヤしながらヒットラーをからかった歌を歌いだす。
(ド空気読めない子)

(ナチス兵、パイクをびしっと指差して。)
「きさま!!きさまもリストに載せてやる。名前はなんだ!?」
「教えるな、パイク!!」
「『パイク』……ありがとう」
(メモ帳に名前を書き留めてほくそえむナチス兵【←お約束】。パイク、うらめしげにマインワリング隊長を見る)



この、マインワリング隊長の失言
「Don't tell him Pike!!」
はイギリス人にもツボのようで、Wikipediaでも言及されています。
(この「Deadly attachment」が、一話ごっそり丁寧に解説されています【笑】。)
作品自体、シリーズの中でも屈指の名作として名高いようです。



もうひとつ印象的だったのは、
「Keep young and beautiful」(直訳、『若さと美しさをたもて』【笑】)という一話です。

現在のホームガードの人員を、もっと若い人と入れ替えようという話が、政府で持ち上がり、おなじみのメンバーたちにも動揺が走る。

(もうひとつの国防組織である、ARPというチームに再配置される可能性が高いのですが、彼らはホームガードに残りたいのです)

特に、チーム最年長である、お肉屋ジョーンズ氏、微笑みゴッドフリー氏、悲観大好きフレイザー氏の心中は穏やかでなく、三人は、軍の視察を前に、葬儀屋さんであるゴッドフリー氏の、死化粧技術を駆使し(大笑)、若返りをはかることに……。

軍の視察を前に、隊員たちを集めるマインワリング氏、三人のあまりの変わりようにあっけにとられる。

「ジョーンズ?いったいどうしたんだ!?」

(髪も口ひげも黒く染め、メガネも外したジョーンズ氏【そのため、よく方角を間違える】)
「われわれは、あなたの隊から離れたくないので、フレイザーに外見を整えてもらいました!」

(同じく黒い髪のフレイザー氏、頬と唇に紅をさし、かっと目を見開き、不自然なおちょぼ口で)
「フモフモ!モフモフモフ!」

(ジョーンズ氏、通訳をして)
「フレイザーは、いま、うまく喋れません、頬に綿を詰めているからであります!」

「ゴ、ゴッドフリーか?」

(くっきり眉毛をかき、目いっぱいアイラインを引いたゴッドフリー氏。【妙にりりしい】)

「そうです、フレイザーさんに、しわ伸ばし薬をぬってもらいました(なんかお肌がペカペカしている)」
「ばかばかしい、元に戻せ!」
「す、すぐには無理だと思います」
「なんてことだ、彼はまるで『蝶々夫人』じゃないか……(※日本を舞台にしたオペラ。名作ですが、衣装や厚塗りメークが『これぞ外国人の勘違いジャパン』なことが多い)
フレイザー!この状態はいつまで続くものなんだ?」
「モフモフモフ!!」
(ジョーンズ氏訳)
「『埋葬した後、掘り返したことがないから、わからない』そうであります!」



「年配の兵士が、戦いに参加するために髪を黒く染める」
といえば、日本では、源平の戦いの頃の、斉藤実盛という、平家方の勇敢な武士の活躍と、壮烈な最期が語り草になっています。
(死期を定めて、ひときわ美麗な鎧で戦に望み、味方の敗走後にも、一騎踏みとどまって、源氏勢に戦いを挑んだ)

『平家物語』に記された、彼の生き様、死に様は、武士の美学に鋭く貫かれ、敵味方に畏敬されたその潔さと、哀切さの胸に迫る名文です。

一見、似たような行動なのに、こうも違う話になるんだなあと感心しました。

これが、イギリスと日本の、芸術内で戦争を扱った際の、センスの相違と言っては言い過ぎでしょうが。

この「Dad's Army 」、イギリスコメディの真骨頂として有名ですし、実際とても面白いのですが、日本での放送は……難しいでしょうね……。

しかし、イギリス在住の方は今(2009年七月現在)、HMVで「Dads Army: Complete Series & Specials: 14dvd: Box Set」 という十四枚セットのDVD(※冒頭部画像)が、元値100£だったのが、なんと約38£でお買い求めになれます。
こちらは、英語の字幕がつけられるので(注)、お勉強にもピッタリ(かな……)。

※注 
イギリスのDVDは、英語の字幕がついていたり、いなかったりです。
必要な方は(含、わたし)どの作品でも、購入前に字幕があるかどうかを、必ずご確認ください。


HMVのアドレスは下記の通りです。「Dad’s Army 」で検索をかけてみてください。店頭販売もされているはずです。
http://hmv.com/hmvweb/

この番組は、ごく最近(2009年七月)も、BBC2で再放送されていて、まだ観られると思うのですが、どうも地方により、放送時間がまちまちなようなので、すみませんが、正確なところが記載できません。ホームページ等でご確認ください。

BBC2の番組表アドレス
http://www.bbc.co.uk/programmes/b007898k

BBCの「Dad’s Army 」紹介ページ
http://www.bbc.co.uk/comedy/dadsarmy/

BBCトップページ
http://www.bbc.co.uk/

こういう笑いのセンスが大丈夫な人には、間違いのない名作と思われます。個人的にはオススメです。



(※補足)
「ダンケルクの戦い」
1940年5月末から六月初めにかけて、イギリス、及びフランス=ベルギー軍が、フランスのダンケルク海岸からイギリス本土へ撤退した作戦。
ナチス.ドイツ軍からの追撃から避難するために、近隣の多くの民間船が協力した。
(※ブリタニカ国際大百科事典を参照させていただきました)

【さらに補足】
 ポール.ギャリコの短編小説に『ダンケルクの戦い』を一部下敷きにした、「スノー.グース」という作品があります。
せつない、しかし本当に美しい作品です。
新潮文庫で読めて、その他二編も、愛情あふれる素晴らしい作品なので、とてもお勧めです。挿絵も素敵です。

posted by Palum. at 22:33| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする