2014年01月07日

クローマーライフボートステーション(海辺の町クローマーの救命艇展示)

前回から海辺の町クローマーについてご紹介していますが、今回はこの町の救命艇を収容している「Cromer lifeboat Station」と呼ばれる施設についてご紹介します。

 クローマーには、町の象徴ともなっている桟橋があります。

クローマ桟橋全体.png

 この桟橋の先に「Station」はあります。二階建ての建物で、見学することができます(入場無料)

 救命艇はこの上階に控えています。

Station内部.jpg
 
 出動となると、ここから一気にザンと海へと滑り降りるのです。

出動スロープ.jpg

 展示と実用を兼ねた、ものすごい無駄の無い作り……。

 出動の様子です(クローマーのRNLI HP画像より)※余談ですがどうも「叫ぶ」の意味を持つ「Shout」でここでは「出動」を意味しているみたいです。

16729937f66f40defa8bf86e.jpg

 二階部には、それまでのクローマーの救命艇の活躍を記録したボードや、資料が一部展示されています。
 
 内部のステンドグラスと展示の一部

Station内部のステンドグラス.jpg

 私が一番好きだと思ったのは、ボートの側に吊られたこのクローマークラブ(名物カニ)のマスコット。
 
ボートそばのマスコットのカニ.jpg

 歴代のクルーたちの写真が貼ってあるのです。お守りの意味もあるのでしょうか。

マスコットのカニに貼られた隊員の方たちの写真.jpg

 中央の写真は、クローマー伝説の救命艇操舵手ヘンリー・ブロッグ氏。(この方については過去記事で書かせていただきましたのでよろしければご参照ください。立派な方です。)

 一階にはRNLIのグッズが販売されています。(外には救命艇隊員になりきれる記念撮影ボードあり〈笑〉)

Station外観.jpg

 模型とかカードとか色々ありましたが、海らしくて色もカワイイし、結構オシャレですよ。収益が救命艇の活動費用になるので、一石二鳥でいいお土産になります。

 私を連れて行ってくださったホストマザーが、ここで水彩画のカードを買っていらして(黄昏時、救命艇が港に帰ってくる場面)、それがクリスマス・ニューイヤーカードとして、年末に日本に帰った私の元にとどきました。

 「これを送るわ。あなたが私たちと一緒にここに来たことを思い出すでしょう」

 買っていた時におっしゃっていた言葉通りに。

 カードも思い出もずっととっておこうと思います。

 読んでくださってありがとうございました。

(参照URL)
RNLIクローマーの公式HP Explore Station
http://www.rnlicromer.org.uk/index.php/station/visits
posted by pawlu at 05:48| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月06日

ヘンリー・ブロッグ氏の愛犬モンテ (RNLIヘンリー・ブロッグ博物館〈RNLI Henry Blogg Museum〉番外編)

 先日ご紹介したヘンリー・ブロッグ博物館のご紹介記事に少し補足をさせていただきます。
Monte%20Nevoso%20CR00150-Large.jpg

 クローマ伝説の救命艇操舵手ヘンリー・ブロッグ氏(写真の男性)の愛犬モンテのお話です。

 このモンテ、イタリアの船「SS Monte Nevoso」が遭難した際に、同乗していた犬だそうです。

 SS Monte Nevoso遭難救助を描いた絵

Oil_Painting_of_the_Monte_Nevoso,_Lifeboat_Museum_13_February_2010.jpg 
 
 救助の際、ヘンリー・ブロッグ氏が鳴き声に気づいてキャビンを開けたところ、セントバーナードとテリア犬がいました。

 パニックになっていたテリア犬は逃げてしまい、救助することができなかったのですが、セントバーナードはヘンリー氏によって救い出されました。(ちなみにこのとき他のクルーによって籠にいた鳥も数羽救助されています。)

 「SS Monte Nevoso」の船長は感謝のしるしとしてこのセントバーナードをヘンリー氏に贈り、彼はこの犬に、船の名にちなんで「モンテ」と名付けました。

 モンテはヘンリー氏に非常に懐き、ヘンリー氏の最初にして最後の愛犬となりました。

 このモンテ、今はヘンリー・ブロッグ博物館のマスコットキャラクターとなり、その姿はヘンリー氏のマネキンと一緒に仲良く展示されています。

 ヘンリー・ブロッグ氏と愛犬モンテの人形.jpg

 モンテのエピソードを紹介した展示。箱を開くと説明と犬用グッズが見られる。
 モンテの展示.jpg

 モンテのキャラクターが描かれたエレベーターの表示(ちなみこのエレベーターは乗っている誰かが階に着くまでボタンを押しっぱなしにしておかないと止まってしまう……という注意書きがされてます〈なんでこのときは私が押しっぱなし係やりました。〉)
 エレベーターの表示のモンテ.jpg

 補足、これはモンテではありませんが、救命艇隊員の出動に同行する犬の写真です(隊員の方たちの表情から見て、非常事態と言うよりは取材に応じている感じですね。)いかにも一員っぽくてカワイかったので併せてご紹介。
 隊員の方たちと犬.png

 犬や鳥も助けるヘンリー氏たち救命艇隊員の優しい性格と、こういう展示をするイギリス人の犬への思い入れが素敵だったのでご紹介させていただきました。

 読んでくださってありがとうございました。

 参考WEBページURL
「Rescuing Monte 80 years on: a celebration at RNLI’s Henry Blogg Museum」
※最初の写真はこちらからアップロードさせていただきました。
posted by pawlu at 06:44| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月05日

思い出を見に行く町クローマーB(RNLIヘンリー・ブロッグ博物館〈RNLI Henry Blogg Museum〉)

 海辺の町クローマ(イングランド・ノーフォーク州)。

 ここに小さいですが魅力のある博物館があったので、ご紹介させていただきます。

 RNLIヘンリー・ブロッグ博物館(RNLI Henry Blogg Museum)

 RNLIはRoyal National Lifeboat Institution(王立救命艇協会)の略で、主にチャリティーによって運営され、イギリス中で活動している海難救助組織のことです。

 穏やかで美しく見えるクローマの海ですが、沖に出るととたんに潮流が速くなるとかで、クローマの町では常にこのRNLIチームが人や船の安全のためにパトロールを続けています。

 この救助艇乗組員のうち、最も有名な人が、クローマーのヘンリー・ブロッグ氏。(1876〜1954)
Henry_Blogg_1_Feb_2008_(1).JPG

 最も偉大な救助艇隊員 "the greatest of the lifeboatmen”と讃えられた人です。

 18歳で初めて救助艇隊員として海に出てから71歳で引退するまで、53年間、おもに操舵手として任務に当たり、メンバーとともに873名の命を救った人です。

 その功績をたたえられ、RNLIから繰り返しメダルを授与されました。

 というのが彼の人物紹介の概略ですが、そういうの一切知らずにふらふら入った私が最初に驚いたのは彼の風貌です。

 なんて優しそう。

 100メートル先からでもいい人なのがわかる顔していらっしゃる。

 ちなみに、救命艇隊員でもありますが、漁師(勿論クローマクラブ)とそれから海水浴客相手の貸しデッキチェア業・貸し小屋(※)業も営んでいらしたとか。

 (※)イギリスの海水浴場には、Beach hutsという水着に着替えたり軽食をとってくつろぐための貸し小屋というのがよく見られます。(宿泊はできない模様)

 カニ漁の様子
ヘンリー・ブロッグミュージアム内展示カニ漁.jpg

 貸し小屋の前のヘンリー・ブロッグ氏と彼の愛犬モンテの人形

ヘンリー・ブロッグ氏と愛犬モンテの人形.jpg

 彼の生涯を説明した文を読んでみたところ、実は息子さんを2歳になる直前に、そして娘さんを28歳で無くすという悲しい出来事もあったそうです。

 あの優しい笑い皺のひとつひとつに、そういう悲しみや、日々、命がけで海に挑む覚悟が、そっとたたみこまれているかのようです。

 その風貌通りのすぐれた人柄で、どれほどその功績をたたえられようとも謙虚な姿勢を崩さず、自分のクルーたちの活躍の方を常に強調していたそうです。

 彼の手紙の筆跡を見ましたが、まるでレース編みのように丁寧で繊細な字でした。
 
 
 ふだんはとても口数の少ない、シャイな人だったそうです。

 市井の英雄という言葉をきいたことがありますが、この人こそそんな人の一人なのではないかと思いました。

 おごらず高ぶらず。

 辛いことがあっても、それは自分の胸のうちにしまい、まじめに暮らしを積み重ねながら、自分にできることには命がけで挑む。

 名誉はあとからついてきて、しかしそれはきてもこなくてもどうでもよい。

 ただ、そのたたずまいと笑顔は、着実に静かな輝きを増していく。

 そういう英雄。英雄と呼ばれることを困り顔で辞退するような。

 
 クローマのノースロッジパークという場所には彼の胸像が据えられていて、救命艇の制服を着たヘンリー氏が、あのまじめで優しい顔で、北の海を見守っています。

 そして、人々を守った彼の心意気は、彼の甥ヘンリー・トマス・デイビス氏へと引き継がれ、彼も約30年の長きにわたり、ヘンリー・ブロッグ氏と同じ操舵手として活躍されたそうです。

 この博物館、二階分の広さしかないのですが、こうしたヘンリー・ブロッグ氏の市井の英雄としての勇敢にしてつつましい人柄のよくわかる品や、RNLIの現在に至るまでの船や装備などが見られます。(装備は試着でできます。)

 博物館内部の様子

内部の様子.jpg


 あと、個人的には、数は多くはないけれどヘンリー・ブロッグ氏やクルーの方たちの写真が良かったですね。何だかみなさんとても温かくて頼もしい素敵な顔つきをしていらっしゃる。

クルーのみなさんの写真.jpg

クルーのみなさんの写真2.jpg


(以前記事にしたコーラスグループFisherman’s Friendの方たちをなんとなく彷彿とさせます。海の男たちだからですかね。)

 ちなみに二階はカフェになっていて、海を見ながらお茶も出来ます。

ミュージアムカフェからの眺め.jpg

 基本入場無料なのですが、この博物館の収益が、今のクローマのRNLI活動費につながりますので、賛同する方はこのカッコイイ募金箱へ募金してください。

募金箱.png

 次回はこの記念館の番外編記事として、ヘンリー・ブロッグ氏の愛犬モンテのお話をご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。

参考WebページURL
ヘンリー・ブロッグミュージアムHP
ウィキペディア「Henry Blogg」
ウィキペディア「王立救命艇協会」(日本語)
RNLI公式HP
「The life of Cromer coxwain Henry Blogg」

posted by pawlu at 20:42| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月04日

思い出を見に行く場所クローマA(町の雰囲気)

 前回、クローマの観光案内記事を書かせていただきました。

 今回は実際行ってみたときのクローマの空気をご紹介させていただきたいと思います。

 クローマは有名なブライトンに比べるとこじんまりとした観光地です。

 思えば不思議なくらい海に集う人々の年代が限られている場所でした。

 小さな子を連れている親子、祖父母。

 それから、子育てから手が離れた老カップル。

 ほかの人をほとんど見かけなかったように思います。

クローマ海辺の人々砂遊び(記事用縮小版).jpg

(うがった見方をすれば、若い人が楽しめるような派手な娯楽施設があまりなく、そして外国人がわざわざ見に行くなら、先述のブライトンのようなもっと有名で大規模な場所があるからかと。)

 しかし、その分独特の趣深さがありました。 

 場所そのものがきれいと言う以外に、その場所につどう人々によって醸される情緒というものがあるのだとはじめて知った気がします。

 海辺ではこんな光景を目にしました。

 潮の引いたまぶしい銀色の砂浜で、小さな子たちが、親や祖父母と一緒に波打ち際で遊んでいます。

 わたしが少し波を触っていたとき、「ダディ!」という声に振り向くと、小さな子たちが3人、逆光の中、お父さんを追って、はしゃぎ笑いながら走っていました。

クローマ 海辺の人々(記事用縮小版).jpg

 別の場所では、小さな孫の砂のお城づくりを、腕まくりして手伝う銀髪の紳士。

 そして、赤と白のストライプのデッキチェアを借りて、ときおり言葉を交わしながらくつろいでいる熟年カップル。

クローマ海辺の人々デッキチェア(記事用縮小版).jpg

 海辺の手すりにもたれかかって、そうした様子を眺めているときに、ホストマザーが話してくださいました。

 「子供が小さかったころは、よくここに連れてきて、ああして遊ばせたの。孫もね」

 マザーの声に、しずかな波の音と子供たちの笑い声が重なります。

「ここが世界で一番好きな場所なの」

 既にリタイアして、今は色々なところに旅行に行っているホストマザーが一番愛している場所。

 もっと青い海、もっと眩しい太陽が観られる場所をご存じでしょうけれども。

 昔と変わらない波の音、銀色の砂浜の光の中で楽しむ、影法師のような家族連れの人々。

 そこに、今でも、若い頃の自分たち夫婦、小さかったお子さん、お孫さんの面影と、笑い声がさんざめいているようなこの場所が、彼女にとって特別なのでしょう。

 ホストファーザーはご近所へのお土産にクローマクラブ(カニ)を買っていかれました。

 カニを受け取りつつ、どうだった?とご近所さんに尋ねられたホストファーザーはこうおっしゃっていました。

 「とても良かったよ。天気もよくて」

 「子供の笑い声がずっと聞こえていた。あれが何より素晴らしい」

 マザーが私に思い出を話してくださったとき、ファーザーは近くにいらっしゃらなかったのですが、おそらく二人は同じ思いであの地を訪れているのでしょう。

 私は自分が海で遊んだ経験や、誰かを連れて行った経験はあまりないのですが、あの、遊ぶ子供たちや、それをしみじみと眺める人々を観て、なにか懐かしいせつない気持ちになりました。

 そして、私もクローマを好きになりました。

 思い出を見に行く場所、思い出の中の笑い声を聞きに行く場所。

 そして、外国の人間が、この国の、家族を大切に育てて、今はその思い出をたどりに行く人々の背中をみつめる場所。

 クローマは、世界中探してもなかなか見つからないかもしれない、そういう意味を持った場所でした。

 もし、実際にクローマに行かれたら、そこはただ遊びに行くだけでもおっとりとして美しい場所ですが、よろしければ、こんな、くつろぐ人々の穏やかな姿、そして、思い出を見に行く人々の姿や、彼らの優しい、懐かしそうな表情にも目を向けてみてください。

 読んでくださってありがとうございました。

 (後日記事で、この町のそのほかの魅力、それから、この時私が覚えた感慨に少し似た風情を持つ太宰治の短編「黄金風景」についてご紹介させていただきます。よろしければこちらもご覧になってください。)
posted by pawlu at 10:42| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月03日

思い出を見に行く場所クローマー(Cromer)(海辺の町)@

 どうも最近、イギリスはおろか英語についてもロクに言及していない記事が多く、我ながら「ケンブリッジやイギリス情報を探してこのブログを開いてくださった方は呆れて閉じてしまわれていることだろう。いい加減ブログタイトルを変更するべきでは」と思う日々だったので、今日は一応「ケンブリッジに近い場所」の観光案内記事を書かせていただきます(汗)。

 クローマー(Cromer)。
クローマー全景(記事用縮小版).jpg

イングランド東部ノーフォーク州の海辺の町です。

ケンブリッジ駅からだと電車で2時間程度といったところでしょうか。

一応あちらの乗り換え案内URLを添付させていただきます。
http://ojp.nationalrail.co.uk/service/timesandfares/CBG/CMR/today/1100/dep

海と桟橋の劇場、秋のパレード、そしてクローマークラブというカニが有名な町です。

 超絶景というより、のどかな海水浴場でしたが、とても素敵な場所でした。

 ホストファミリーに連れて行っていただいた思い出の地なので、今日から何回かに分けてご紹介させていただこうと思います。

 
 行ったときの様子を書いた当時(8月中旬)のメモが出てきたので、ちょっと引用いたします。

 「電車の冷房がとても寒い」

いきなりネガティヴですね。

しかしそもそもケンブリッジ周辺の夏の暑さは日本人からするとたいしたことないので、冷房を小一時間きかされると(途中の特急列車がキンキン。ローカル電車は寒くなかった)寒がりの私には相当キツかったようです。

 「着いたら暑い。日差しが日射病になりそうなくらい強い」

 ……どっちかはガマンしろ(セルフ注意)。

しかし、どうやら温かい上着と帽子という矛盾した装備が必要だった模様です。

 このメモだと着いて早々不機嫌なようですが、そんなことはありません。こんな文が後に続いています。

「地元や国内の人々に愛されている古くからの海水浴場。赤煉瓦の重厚なもの、海岸の石を積み上げた建物、ピンクや青などカラフルに塗られた壁など街並みに味があり、親子連れがとても多い。商店街もかなり大きく、にぎわっているが、普通に人が日常生活を送っている場所のようで、治安がとても良いように感じられた。」

 実際の街並みです

クローマの町(記事用縮小版).jpg

 クローマーの象徴である桟橋。(イギリスの桟橋はお店や劇場がついていることが多いです〈ブライトンが有名〉。台風の多い日本には無い発想ですね。)

クローマー桟橋(記事用縮小版).jpg

 ここでショーとかやるそうです。
クローマ桟橋劇場(記事用縮小版).jpg


 そして名物クローマークラブ

クローマクラブ(記事用縮小版).jpg

 体より足の実をホジホジして食べるかんじでした。あまりカニを食べたことが無いので(哀)うまく言えませんが、足を割っても実がスルンとぬけるようなことはなく、透き通った繊維が細かくわかれて甘くて、舌触りがツルツルして、これはこれで違う美味しさでした。私は好きです。

 桟橋から釣り糸や籠を垂らしてカニ採りに興じる人がたくさんいました。あんなんで獲れるもんなんですね。
クローマ桟橋カニ釣り(記事用縮小版).jpg

カニ釣り籠(記事用縮小版).jpg

 左側がフィッシュ&チップスの人気店(テイクアウトには行列ができていました)。
 ちなみに右側には顔を入れて記念撮影をするボードがあります。万国共通ですね(笑い)。
フィッシュ&チップスのお店(記事用縮小版).jpg

 サクサクして身にも衣にも味がついていて美味しいです!ハズレフィッシュ&チップスだと「上から自分で塩と酢かけてなんとかしな味」なんですが、ここのは違います。
(そして写真上には見たことも無いほどとっぷり注がれたワイン……アイスコーヒーじゃないですよ。この量で赤ワインです〈ホントは白が合うはずですが、多分ちょっと体が冷えていて赤にしてしまったのでしょう。〉)
クローマのフィッシュ&チップス(記事用縮小版).jpg

 海よし町並みよし食よし。

 ケンブリッジ近辺にお住まいなら、行けばのんびり楽しめる町です。

 また回をあらためて、この町の風情や景色についてもう少し詳しくご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by pawlu at 09:29| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年09月10日

セントアイヴスのアザラシ

セントアイヴスの黄昏時、海の向こうの岬が、ふんわりとした夕日で桃色に染まり、潮の引いた浜には、たくさんのヨットが打ち寄せられたように停泊し、幻のようにかすかな灯台の影。

(画像)セントアイヴスの港の夕暮れ
セントアイヴスの港の夕暮れ.JPG

セントアイヴスのカモメ.JPG

ああ、きれいだ。来て良かったなあ……。

と、全然人を怖がらないカモメと並んで、海辺の塀に手をかけ、いい気分で海を眺めていたら、側にいらした熟年カップルの男性に、
「見えますか?アザラシですよ」
と、眼下十メートルほど先を指差されました。

本当に、なにを思ったのか一頭だけ、かわいい頭をひょっこり出して、あざらしが、ツーとこちらに向かってきていました。

アザラシ1.JPG

鼻の穴を器用に閉じたり開いたりして、その「んふー…」という鼻息まで聞こえる距離です。

わたしたちが驚いて覗き込んでいるのに気づくと、チラリと丸い目をむけて、さらに寄ってきます。

「まあ、かわいい、犬そっくりね」
本当に、人が気になる犬のように、ずうっと頭だけ見せて、んふー、んふー、と言いながら、アザラシは私たちの眼下をゆっくりと横切り、側の浜から、また沖合いへと帰っていったようでした。

アザラシ2.JPG

「オー、ナントチョーカワイイ、オシエテクダサッテアリガトウゴザイマス」
と、お礼を申し上げる私に、カップルさんたちは上品に微笑んでくださいました。

美味しいシーフード食べて、帰り道のほろ酔い散歩でフラりと海辺に立ち寄ったら、夕日と茜色に染まるヨットと、アザラシの、犬みたいな丸いおでこと、ぱちくりした目と、開閉する鼻の穴と鼻息まで堪能できるなんて運が良いなあと思いました(後半だいぶマニアック)。

という話を知人にしたら、

「一頭だけで、そんなに浜辺に近い場所を泳いでいたのなら、もしかして怪我をして、近辺で人間に世話をされながらリハビリ中かもしれない」
と言われました。
(イギリスは動物保護体制がとても手厚いのです)

そう言われると、なんだか背中に傷のようなものがあった気がします。
人の姿に反応するのも、そのせいなのでしょうか。

セントアイヴスにアザラシたちの保護活動があるかどうかは存じませんが、「アシカ&アザラシウォッチング船」はよく出ていて、彼らと交流が深いようですから、あるいはそういうケアの最中なのかもしれません。

あのアザラシは、わたしが、人生片時も忘れたことの無い、わが愛犬に似た、くるりと丸く穏やかな目と、ひこひことよく動く、可愛い鼻をしていました。

もしも療養中だったとしたら心が痛みます。どうぞお大事に……。

posted by pawlu at 05:00| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月13日

セント.アイヴスへの旅(コーンウォール地方)

(画像)セント.アイヴス遠景

St Ives.JPG

(要約文)
二〇〇九年夏、イギリスの南、コーンウォール地方の、セント・アイヴスという町に行ってきました。

明るい海と空と、芸術の両方が楽しめる、素晴らしい場所です。
特に、陶芸好きの人には、見所が多いかと。
(バーナード.リーチ氏が窯を持っていた場所なので)
遠かったですが、本当に行って良かったと思える場所でした。


セントアイヴスの、ツアリストインフォメーションセンター(旅行者向け情報センター)のホームページアドレス。
http://www.stives-cornwall.co.uk/

(本文)

コーンウォール地方は、名作漫画、『MASTERキートン』(※1)の主人公、平賀・キートン・太一の故郷です。

自然のそれは美しい場所として描かれています。

太一少年は、このコーンウォール地方の、きわまで緑に覆われた崖から、明るくきらめく海を眺めたり、丘から手製のそりでお友達とすべって、コーンウォールの風をあびたりしていたわけです。

そういうわけで、ぜひ、一度行ってみたかったのです。

セント・アイヴスは有名な観光地なので、太一少年の遊んだ、素朴なコーンウォールの風景とは少し違うだろうとは思いましたが、雰囲気だけでも味わえるかなと。


その「雰囲気だけ」のために、ロンドンから、電車で六時間以上費やしました。
ケンブリッジからなら約七時間強です。

なぜそんなに時間がかかるって、要は、電車の速度が出ないからだと思います。古い車両が現役に混じってるから遅いのではないかと。


たとえば、その日、私が乗った電車は、ドアが自動ではありませんでした。

自分でボタンを押すか、レバーをおろすかして開ける電車は、イギリスでは珍しくありません。
でも、ドアの内側にはそれも無い。

一瞬パニックを起こしましたが、よく見たら、「ドアの開き方」という注意書きが……。


(画像をご参照ください。以下筆者の意訳です。)

ドアの開け方.JPG

【1】ドア上部の、『ドアに鍵がかかっていません』という表示を待ちましょう。
 (※筆者補、電光表示が出るのです)

【2】ドアの窓を下げます。

【3】外側にあるハンドルを使い、ドアを開けましょう。


……失礼ですが、何時代のシステムですか。泥棒の侵入方法じゃあるまいし。

とにかく、あわわ、と、なりながらもその通りにして、駅に降りたら、その駅は目当ての乗り換え駅である
「St Erth」ではなく、「St Austell」でした。

揺れる電車の駅名アナウンスは、私の耳には、どっちも
「セン…ウォース……(むにゃむにゃ)」
と、聞こえてしまったのです。

余談ですが、コーンウォール周辺の地名は、聖人人口密度が妙に高く、『セント(聖)』だらけです。
(他にも、St Just、St Germansなど)。
「聖、誰なのか」まで確認しないと、えらいめに遭います。

もう少し、駅のあちこちに、駅名表示してくれれば、つづりで気づけたのですが、一ホームに二個くらいしかない。

駅の柱のあちこちに、ペタペタ縦書き表示してくれてる日本の駅が懐かしかったです。

まあ、アルファベット縦書きすると、読みにくいから、仕方ないんですが。

大慌てで、ドアを開けて、再度乗り込もうとする私に、

「あ、もうだめです、自動ロックかかっちゃったから」
と、駅員さんは、私が半端にゆるめたドアをきっちり閉めて、

「すぐ、次が来ますよ。こっちこっち」
と、その電車が停まる位置まで、連れて行ってくださいました。

どこを旅しても、親切な方に会えるというか、なにかしら間違えて、ご迷惑をかけないためしはないというか……。



そういうわけで、次の電車(これは『泥棒方式』じゃなくて、押しボタン式でしたね)に、無事乗れて、「セント・アイヴス」にたどりつきました。


いくつも岬の張り出した複雑な地形と、南国を思わせる、明るい緑や青の入り混じる海の色、陽の光が、イギリス人を惹きつけ、観光客のみならず、芸術家の活動拠点としても有名だそうです。

日本の有名な陶芸家、濱田庄司(※1)と、彼と親交が厚く、日本在住経験もある陶芸家バーナード・リーチ(1887〜1979)が窯を構えたとか。(濱田庄司氏自身も一時期ここで活動した)

……と、いうことは、ここに来てから知りました。

ツアリストインフォメーションオフィスの美術館情報や、おみやげを買いに入ったお店の、陶器コーナーに張ってあったポスターなどで。

「なんか銀髪の上品な風情のおじさんが、どことなく日本的な陶器を作っている写真がついてる、なにかの記念館のチラシ」
を見て、お店の人に

「コレドコデスカ?コノヒトダレデスカ?」
とうかがったら、
その銀髪の紳士がバーナード・リーチ氏で、いまは彼の記念館である「Leach Pottery」で、濱田庄司氏の作品が展示されているのだということを教えてくださいました。

陶芸に関心の高いここの人にとって、バーナード・リーチ氏は最も尊敬すべき芸術家のひとりで、一番有名な日本人は、彼と交流のあった濱田庄司氏で、リーチが愛した日本は、陶芸の聖地という位置付けのようです。

だから当然、セント・アイヴスまで来る日本人は、陶芸に関心が高いはずというイメージのようです。
なのに、
「コノヒトダレデスカ?」
と聞いた私に対し、ちょっと、
「彼の作品を観に来たんじゃないの?じゃあ、はるばるなにしに来たの?」
という、けげんな顔を、しないようにしている顔をされてしまいました。

すみません、『MASTERキートン』っぽいところが見たいという以外、なにも考えずに来たのです。

しかし、確かにこの町には、潮風のほかに、町全体にアートの香りがただよいます。
海辺や小道のそこここに、絵や陶芸を売るお店もたくさんある。

くねくね道を歩くと、白い壁にカラフルな扉の建物が立ち並び、光る水平線と、小さなギャラリーのオシャレショウウィンドーが交互に見られます。

想像していたのと少し違うけれど、とてもいいところに来たなあ、と、くねくね道を上ったり降りたりしながら思いました。



(画像、セントアイヴスの町と海)
セント.アイヴス 丘の上.JPG

セント.アイヴス 海辺.JPG



セントアイヴスの、ツアリストインフォメーションセンター(旅行者向け情報センター)のホームページアドレス。

http://www.stives-cornwall.co.uk/

バーナード.リーチの記念館(現代作家さんたちの作品も購入できます)「Leach Pottery」のホームページのアドレス。

http://www.leachpottery.com/index.html


(※1)「MASTERキートン」
勝鹿北星・浦沢直樹原作の青年漫画。

考古学者で、元、イギリス軍のサバイバル技術のマスター(教官)でもあった、凄腕保険調査員、平賀・キートン・太一。
(父親は日本人、母親はイギリス人のハーフ)

彼が、それぞれの仕事を通じて出会う、世界中の人々の人間ドラマに、社会(特にイギリス)の現実や歴史、サバイバル技術、考古学や美術の解説が、巧みに織り込まれている作品です。

主人公である、キートンそのもののように、たくましく、知的で洗練されていながら、人生への温かなまなざしが、作品全体から感じられます。

浦沢直樹さんの描く、さまざまな人種、性別、年齢の登場人物も、表情豊かです。


このすばらしい作品が残念なことに、原作権利問題で今は入手困難と聞きました。

原作者勝鹿北星さんが亡くなってしまったために、決着が難しくなっているようですが、どういういきさつにせよ、この作品が、知的好奇心を満たし、感動を与えてくれる傑作であることは間違いありません。

大人も子供も、読めば多くのものを得ることができる作品ですから、どうにかして、円満解決に至り、また、たくさんの人々に、漫画と人生の醍醐味を伝えてくれることを、切に願います。


※「MASTERキートン」ウィキペディアの記事のアドレス

http://ja.wikipedia.org/wiki/MASTER%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%B3



(※2)濱田庄司(1894〜1978)
日常雑器の民芸風な味わいを高めた陶芸家。(スーパー大辞林より一部抜粋)

陶器に釉薬を柄杓で素早くかけ、流麗な動きを感じさせる模様を作る技法「流しがけ」で名高い。

(以下、陶芸好きの知人からの伝聞なので、一言一句正確とは言えませんが、ご紹介させていただきます)

「流しがけ」で、ほんの一瞬で皿の模様を作り上げることについて、若干厳しい批評をされた際、濱田氏は、この模様を作るのにかかる時間を
「十五秒と六十年」と答えられたそうです。

六十年以上、たゆまぬ鍛錬を続けて、我が手の動きと、美意識が、確かなものであることを知る人だけが、こうした答えを、当意即妙に発することのできるのでしょう。

確かに、大皿に、液体を、美しい線を描くようにかけるって、とても難しいですよね……。
タラッ、あ、間違えた、修正液、というわけにはいかないのですから。

posted by pawlu at 23:07| イギリスの旅 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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