海辺の町クローマ(イングランド・ノーフォーク州)。
ここに小さいですが魅力のある博物館があったので、ご紹介させていただきます。
RNLIヘンリー・ブロッグ博物館(RNLI Henry Blogg Museum)
RNLIはRoyal National Lifeboat Institution(王立救命艇協会)の略で、主にチャリティーによって運営され、イギリス中で活動している海難救助組織のことです。
穏やかで美しく見えるクローマの海ですが、沖に出るととたんに潮流が速くなるとかで、クローマの町では常にこのRNLIチームが人や船の安全のためにパトロールを続けています。
この救助艇乗組員のうち、最も有名な人が、クローマーのヘンリー・ブロッグ氏。(1876〜1954)

最も偉大な救助艇隊員 "the greatest of the lifeboatmen”と讃えられた人です。
18歳で初めて救助艇隊員として海に出てから71歳で引退するまで、53年間、おもに操舵手として任務に当たり、メンバーとともに873名の命を救った人です。
その功績をたたえられ、RNLIから繰り返しメダルを授与されました。
というのが彼の人物紹介の概略ですが、そういうの一切知らずにふらふら入った私が最初に驚いたのは彼の風貌です。
なんて優しそう。
100メートル先からでもいい人なのがわかる顔していらっしゃる。
ちなみに、救命艇隊員でもありますが、漁師(勿論クローマクラブ)とそれから海水浴客相手の貸しデッキチェア業・貸し小屋(※)業も営んでいらしたとか。
(※)イギリスの海水浴場には、Beach hutsという水着に着替えたり軽食をとってくつろぐための貸し小屋というのがよく見られます。(宿泊はできない模様)
カニ漁の様子

貸し小屋の前のヘンリー・ブロッグ氏と彼の愛犬モンテの人形

彼の生涯を説明した文を読んでみたところ、実は息子さんを2歳になる直前に、そして娘さんを28歳で無くすという悲しい出来事もあったそうです。
あの優しい笑い皺のひとつひとつに、そういう悲しみや、日々、命がけで海に挑む覚悟が、そっとたたみこまれているかのようです。
その風貌通りのすぐれた人柄で、どれほどその功績をたたえられようとも謙虚な姿勢を崩さず、自分のクルーたちの活躍の方を常に強調していたそうです。
彼の手紙の筆跡を見ましたが、まるでレース編みのように丁寧で繊細な字でした。
ふだんはとても口数の少ない、シャイな人だったそうです。
市井の英雄という言葉をきいたことがありますが、この人こそそんな人の一人なのではないかと思いました。
おごらず高ぶらず。
辛いことがあっても、それは自分の胸のうちにしまい、まじめに暮らしを積み重ねながら、自分にできることには命がけで挑む。
名誉はあとからついてきて、しかしそれはきてもこなくてもどうでもよい。
ただ、そのたたずまいと笑顔は、着実に静かな輝きを増していく。
そういう英雄。英雄と呼ばれることを困り顔で辞退するような。
クローマのノースロッジパークという場所には彼の胸像が据えられていて、救命艇の制服を着たヘンリー氏が、あのまじめで優しい顔で、北の海を見守っています。
そして、人々を守った彼の心意気は、彼の甥ヘンリー・トマス・デイビス氏へと引き継がれ、彼も約30年の長きにわたり、ヘンリー・ブロッグ氏と同じ操舵手として活躍されたそうです。
この博物館、二階分の広さしかないのですが、こうしたヘンリー・ブロッグ氏の市井の英雄としての勇敢にしてつつましい人柄のよくわかる品や、RNLIの現在に至るまでの船や装備などが見られます。(装備は試着でできます。)
博物館内部の様子

あと、個人的には、数は多くはないけれどヘンリー・ブロッグ氏やクルーの方たちの写真が良かったですね。何だかみなさんとても温かくて頼もしい素敵な顔つきをしていらっしゃる。


(以前記事にしたコーラスグループ
Fisherman’s Friendの方たちをなんとなく彷彿とさせます。海の男たちだからですかね。)
ちなみに二階はカフェになっていて、海を見ながらお茶も出来ます。

基本入場無料なのですが、この博物館の収益が、今のクローマのRNLI活動費につながりますので、賛同する方はこのカッコイイ募金箱へ募金してください。

次回はこの記念館の番外編記事として、ヘンリー・ブロッグ氏の愛犬モンテのお話をご紹介させていただきます。
読んでくださってありがとうございました。
参考WebページURL
ヘンリー・ブロッグミュージアムHPウィキペディア「Henry Blogg」ウィキペディア「王立救命艇協会」(日本語)RNLI公式HP「The life of Cromer coxwain Henry Blogg」
posted by pawlu at 20:42|
イギリスの旅
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