2023年04月21日

横溝正史の代表作「犬神家の一族」ドラマ版NHKで放送

(NHKドラマ版『犬神家の一族』)
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Image Credit:Youtube

(犬神家を訪れる探偵金田一耕助〈吉岡秀隆〉)
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Image Credit:Youtube

 戦後間もない昭和二十年代、信州の大富豪、犬神家で起きた連続殺人事件を描いた、横溝正史の代表作『犬神家の一族』(1951)がNHK BSでドラマ化される。

(犬神家の長女松子〈大竹しのぶ〉と、彼女の息子佐清〈すけきよ〉戦争で顔を負傷し、マスクで顔を隠している)
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Image Credit:Youtube

スケキヨの不気味なマスク!菊人形と生首!湖から突き出す足!横溝正史の原作を映画テイスト満載で映像化▼戦後すぐ、財界の大物・犬神佐兵衛が他界。そして、ケガのためマスクで顔を覆った孫の佐清が復員する。だが、期待を裏切る遺言状に一族は反目、ついに第一の殺人が▼脚本:小林靖子 出演:吉岡秀隆 古川琴音 金子大地 南果歩 堀内敬子 芹沢興人 野間口徹 皆川猿時 小市慢太郎 倍賞美津子 大竹しのぶ ほか






(NHK Twitterあらすじ画像)
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 ドラマの繊細な陰影や、豪華俳優陣の演技は、原作の不吉さと凄みを継承している。

(佐兵衛の死で一堂に会した犬神家の人々)
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Image Credit:Youtube

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Image Credit:Youtube

(佐兵衛の肖像写真に反射する佐清の姿)
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Image Credit:Youtube

 とくに吉岡秀隆が演じる金田一耕助は、(犬神家の人々のむきだしの憎悪と対照的な)お人よしと天才が共存し、だから世間とは少し遊離して寂しげな雰囲気が、原作に似ていると思う。

 この作品は、傑作『獄門島』(1948)と並んで、戦争が物語に大きな影を落としている。

 (戦地で負った傷を見せるために、マスクを外す佐清)
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Image Credit:Youtube 

 (佐清の身元証明のために登場する「手形」。戦地に赴く前に「武運長久」を祈願して神社に手形を奉納する習わしがあった)
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Image Credit:Youtube

(犬神家の近くに現れた、謎の兵隊服姿の男)
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Image Credit:Youtube

 まさにその時代を生き抜いた横溝正史にしか書けない、時代のリアルな空気、人々の絶望や業が根底に流れ、推理ドラマを超えた迫力がある。

(それが、いまでも観る者を惹きつけ、製作陣を奮い立たせる、重厚な引力となっているのだと思う)


 『犬神家の一族』は今までに繰り返し映像化され、とくに市川崑監督版(1976年の角川映画)は、一度観たら思い出さない人はいない傑作だ。

 過去の名作と競うことになるためか、今回のNHK版は非常に気合が入っているように感じた。

(1976年 市川崑監督版『犬神家の一族』予告編)

はまり役の石坂浩二をはじめとする豪華キャスト。音楽やスタッフクレジットの大胆な明朝体レイアウトなども有名

(※注意、流血、死体描写など残酷な場面が含まれています)
『犬神家の一族』(1976)劇場予告編


(おすすめの書籍と映像)

(原作単行本 凄惨な事件を描きながら文章は美しく、時代の空気と名家の息詰まる悲劇を巧みに描いている。映像に満足しても読む価値がある名作。杉本一文氏の妖気漂う表紙も有名)

(1976年 映画版)

(金田一耕助の作品と当時の時代風俗用語、映像版など広範な情報が読める辞典 レトロモダンなイラストも魅力)

長尾文子作画の漫画版 横溝正史や江戸川乱歩と同時代に活躍した挿絵画家たちの達人技を彷彿とさせる、美麗な絵が素晴らしい)



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2021年05月29日

エドワード・モースの番組放送(NHKプレミアムカフェ)

(エドワード・シルヴェスター・モース〈1838〜1925〉最晩年八十七歳のときの写真、手に小さな陶器〈日本の茶入?〉を持っている)
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画像出典:Wikipedia

  2021年61日、BSプレミアムの「プレミアムカフェ」で「海の向こうに遺された江戸」が再放送される(初回2012年放送)

 公式HP情報 プレミアムカフェ 選 海の向こうに遺(のこ)された江戸(2012年) - NHK

【放送予定】
・2021年6月1日(火)午前9時00分〜午前10時41分
・2021年6月2日(水)午前0時45分〜午前2時26分

ハイビジョン特集 にっぽん 微笑みの国の物語「海の向こうに遺(のこ)された江戸」(2012年)明治初期に日本を訪れた、アメリカ人の生物学者エドワード・モースは、誰も見向きもしないような、庶民の生活道具3万点を収集した。そこからは、当時の庶民の暮らしぶりや、職人たちが持っていた「美意識」「誇り」が、あざやかによみがえる。瓦版屋にふんした中村梅雀さんのナビゲートで送る、微笑みの国にっぽんの物語。

HP内番組紹介より

 大森貝塚の発見者、生物学者、東大の教授だったエドワード・モースは、民具と陶器の熱烈なコレクターでもあった。

 専門だった生物の標本収集と同じように、希少価値のある美術品だけでなく、普段使いの雑巾や下駄、看板、お菓子など、あらゆる物を集め、町並みや家々の様子とともに生き生きとスケッチしたモースの記録は、明治初期の、今は失われた心ゆたかな日本の暮らしを伝えてくれている。

【モースのスケッチの一例】 

1,竹筒の整理棚と包丁入(花入のような洗練されたデザイン)

竹筒の整理棚と包丁入 明治日本人の住まいと暮らしより - コピー.jpg
画像出典:『明治日本人の住まいと暮らし』p.71 阿吽社編 紫紅社発行


2、下駄箱(履物の入れ方に生活感がにじむ)
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画像出典:同上p.83

3、屋内のツバメの巣
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画像出典:同上p.79

 昔の日本の家は、開け放しておくことが多かったためか、田舎でも都会でも、家の中に巣を作るツバメがいた。
 (むしろ人の出入りが多いところに好んで巣を作ったらしい。)
 家の中にツバメが住むことは幸運のしるしと考えられ、畳が汚れないように棚をつけた後は、巣立ちまで見守った。
 モースは、これを日本人の動物へのやさしさの表れと考え、屋内の巣は屋外のものよりも凝った形をしていて、日本人の芸術的才能がツバメにも乗り移ったようだった、とも、記している。(註1)

 そして、気さくで親切な人柄で沢山の人に慕われたというモースご本人も魅力にあふれている。

 (両手で同時に別々の字や絵を描けるという特技を持ち、講演では、軽妙な語りとともにそれを披露して、聴衆を沸かせたそうだ。)(註2)


【旅先での移動中に虫取りを楽しむモース〈本人画〉】

歌いながら軽装で虫とりををするモース - コピー.jpg

 彼の衣類は荷運びの人が先に持って行ってしまい、暑い日だったので、アンダーシャツにズボン下(しかもボタンがとれて安全ピンでとめている)、頭には日本の笠(かさ)という不思議な格好。

 このとき、自分以外誰も英語を話す人がいない珍しさが楽しくなり、歌いながら網を振るって虫を捕まえて歩いたという。(自由な人) (註3)


 今回参照させていただいたモースの人生とコレクションについての本と記事は以下のとおり。

 コレクション、文章、スケッチから、モースの学者としての鋭いまなざしと、日本へのあたたかな愛情が伝わってくる。


(註1)『日本人の住まい(E・S・モース)』新装版 斎藤正二・藤本周一訳 八坂書房 p.238
(註2)『日本その日その日』「序、モース先生(石川千代松著)」Kindle版
(註3)『日本その日その日』エドワード・S・モース著 石川欣一訳 日光旅行での出来事(講談社学術文庫版内では「三、日光の諸寺院と山の村落」部p.68)


【参考文献】

日本その日その日 (講談社学術文庫) - エドワード.シルヴェスター・モース, 石川 欣一
日本その日その日 (講談社学術文庫) - エドワード.シルヴェスター・モース, 石川 欣一

モース本人が日本滞在時のスケッチと日記をまとめた本

【青空文庫電子書籍版】

 モース自身の文と緒言、モースの教え子で動物学者の石川千代松氏によるモースの思い出、千代松氏の息子で訳者の石川欣一氏の言葉が収録されている。


モースの見た日本〔普及版〕 (モース・コレクション 民具編) - 四郎, 小西, 悟, 田辺
モースの見た日本〔普及版〕 (モース・コレクション 民具編) - 四郎, 小西, 悟, 田辺

モースの民具コレクションの写真と当時の暮らしの解説、モース自身の文章、スケッチで構成された図版本


日本人の住まいと暮らしをモース自身が紹介している本、建築時に使う大工道具から、茶室、台所道具、建具、トイレに至るまで詳細なスケッチと文章で記録されている。


モースが残した日本人の住まいのスケッチが、大きめのサイズで見られる。図に英語の短い説明文が付いている。

【参照URL】

エドワード・S・モース - Wikipedia

Edward S. Morse - Wikipedia

・日本その日その日 - Wikipedia

・大森貝塚 - Wikipedia

・日本その日その日(青空文庫)

Category:Japanese Homes and Their Surroundings (1885 book) - Wikimedia Commons

(Wikipediaに公開されているモースの日本の暮らしのスケッチ一覧)

・明治維新から150年。モースを魅了した日本人の住まい | Houzz (ハウズ)

 モースが残した日本の家屋や暮らしの資料本『日本人のすまい 内と外』を建築の視点からくわしく解説されている記事。

 引用されているモースのスケッチも美しい。

 日本のすまい―内と外 - エドワード・シルヴェスター・モース, 上田 篤・加藤晃規・柳美代子
日本のすまい―内と外 - エドワード・シルヴェスター・モース, 上田 篤・加藤晃規・柳美代子


ラベル:明治
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2021年04月20日

「ロンドン自然史博物館の舞台裏」(NHKドキュメンタリー番組)

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 NHKの海外ドキュメンタリー紹介番組「地球ドラマチック!」で、「ロンドン自然史博物館の舞台裏」が放送される。


 番組HP情報はこちら

 博物館公式HPはこちら 
  (※コロナ禍のロックダウンのため、現在閉館中、2021年5月17日再オープン予定)

(番組HPより)
迫力満点の恐竜の骨格標本から、珍しい生きものの標本まで、世界有数の収蔵品を誇るロンドン自然史博物館。この巨大博物館にカメラが潜入!驚きの舞台裏を大公開! およそ8千万点の収蔵品を誇る世界有数の博物館、ロンドン自然史博物館。その膨大なコレクションを管理する舞台裏にカメラが潜入した。子どもたちから大人気の恐竜のロボットが故障!果たして開館までに修理できるのか。また、博物館ではイギリスに生息する動植物6万種のサンプルを集め、300年保存する大プロジェクトが進行中。珍しい虫を探すため、職員総出で昆虫採集へ!?#SDGs(イギリス2020年)

(筆者補足)
原題は「Natural History Museum: World Of Wonder」(Channel5)全4回(各60分)のシリーズ番組。
巡回展での剥製の輸送、恐竜の骨格の組み立て、化石の発掘など、博物館の活動がより詳しく紹介されているようだ。

 (「Natural History Museum: World Of Wonder」の紹介動画)
 とても面白そうなので、ぜひNHKでも完全版を放送していただきたい。
   
 ロンドン自然史博物館は、ロンドン中心部、サウスケンジントンにある、自然科学の博物館だ。

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(自然史博物館内のクジラの骨格標本 画像出典:Wikipedia 投稿者:Murgatroyd49

(自然史博物館の象徴的人物チャールズ・ダーウィン〈『進化論』の著者〉 
教会の聖者のように彫像が飾られている。)
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 ロマネスク様式の大聖堂を模した建物の中に、動物の化石やはく製、恐竜のロボット、宝石など、膨大な数の展示があり、神秘的な建物と自然科学の融合した、壮大でダイナミックな空間に、大人も子供も魅了される。

(恐竜ロボットの展示エリア)


 (入場無料〈寄付制〉なので、家族連れや若者たちでにぎわっている。すぐ側にヴィクトリア・アルバート美術館があり、まさにイギリスの文化の粋のような場所だ。)

(学芸員の方が館内とサウスケンジントンの周辺情報を紹介している動画 独創的な建物のことを「自然の大聖堂」と形容されている。)
 ※英語字幕あり


 そして、イギリス自然番組界のレジェンド、サー・デビッド・アッテンボロー氏が繰り返し訪れ、番組を制作した場でもある。

(アッテンボロー氏が夜のロンドン自然史博物館を探検して、蘇った化石や標本達と触れ合う番組「Natural History Museum Alive」の予告動画)

 (銀髪の紳士がアッテンボローさん、階下の白い像はチャールズ・ダーウィン)
ロンドン自然史博物館館内のアッテンボローさん - コピー.jpg
(画像出典:Youtube

 博物館は、気品と温かみのある語りで、ナレーターとしても名高いアッテンボロー氏の手がけるオーディオガイド音声をHP上で公開している。
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 (博物館入口「Hintze Hall」の展示物を、アッテンボロー氏と学芸員の方たちが解説されている。)
 (Hintze Hall Take an audio-guided tour narrated by Sir David Attenborough 項目クリックで各解説の音声が再生できる



(博物館入口周辺と中の様子をYoutuberの方が撮影したツアー動画)




 もともとは大英博物館の一部で、この建物での博物館の歴史が始まったのは1880年代。

 長い伝統と素晴らしい財産を持つ博物館だが、博物館のスタッフの方々は、常により来館者の心を惹きつける展示形態を模索し、古い所蔵品を守り、新しい所蔵品を手に入れようと奔走している。

 番組は所蔵品と保存技術、進行中の標本採集プロジェクトなどとともに、そこに携わる人たちの仕事に対する姿勢も丁寧に取材している。

 修理が完了したティラノサウルスのロボットの大きな尻尾を、ペチペチぺチッと犬の背中のように優しく叩きながら「いい子だ」と、回復を喜ぶ技術者の方たち。

 色とりどりの宝石のようなハチドリの標本のガラスを「見るたびに新しい発見があります」と、特に心をこめて磨き上げる清掃担当者の方。

 蝶収集家たちから毎年2万件近く送られてくる標本を整理し(百年以上前、標本箱が一般的でなかった時代の収集家たちが使っていたお菓子やタバコの箱、蝶を包んでいた当時の新聞紙まで保管して)、「本当に、(蝶も付属の品も)観ているだけでワクワクします」と、満面の笑みを浮かべる標本管理担当の方。

 それぞれの道のプロフェッショナルが、博物館の特別な空間と所蔵品に、愛情と誇りをもって接している。 

(博物館を支える方たちの仕事風景 「恐竜配送中です」と、ここでしか聞けないアナウンスをしながら歩いているのがユーモラス。※今回のNHK番組では登場しないシーン)
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画像出典:Youtube 


 ロンドン自然史博物館は、HPと併せて、独自のYoutubeチャンネルも持ち、展示品の管理方法や、自然科学の解説、身近な自然と触れ合う方法など、興味深い情報をたくさん発信している。
 (英語字幕付きのものあり)

ロンドン自然史博物館HP内記事「ヴァーチャル博物館、家から探検する14の方法」
「ロンドン自然史博物館」Youtube 動画ページ


(ロンドン自然史博物館動画、「恐竜の化石ができるまで“How do dinosaur fossils form?”」※英語字幕付)


(現時点閲覧数第一位の動画「大王イカ:深海から展示まで(Giant squid: from the deep sea to display)」〈※生々しいので閲覧注意〉)

 また、博物館は「Google and Art Project」HPにも情報を公開していて、以下のページからオンライン展示や館内のバーチャルツアーを楽しむことも出来る。


 いまだ外出が難しく、日本もイギリスも息苦しい状況がつづいているが、番組やネットで、魅力的な博物館の様子や、自然科学の神秘に触れてみてはいかがだろうか。

参照URL
ロンドン自然史博物館公式HP

Wikipedia「ロンドン自然史博物館」
 ・英語版

Natural History Museum: World of Wonder」(Channel5)

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2021年03月25日

名探偵ポワロ「アクロイド殺人事件」ドラマ版情報


「原作に最も忠実」と言われるデヴィット・スーシェの名探偵ポワロ (Amazon Prime Video「アクロイド殺人事件〈字幕版〉」より)

 

 NHKプレミアムで2021年3月27日(土)に名探偵ポワロ「アクロイド殺人事件」が放送される

 午後4:20〜午後6:00(100分)番組公式情報はこちら


(46)「アクロイド殺人事件」

アガサ・クリスティー原作の人気作「名探偵ポワロ」をハイビジョンリマスター版で放送! 探偵を引退したポワロの前に殺人事件が。封印した灰色の脳細胞が再び動きだす! 探偵を引退し、田舎の村でのんびりと暮らすポワロ。ある日、村一番の資産家、アクロイドの屋敷に招かれる。彼は亡くなった弟の妻とその娘フローラと暮らし、養子のラルフはフローラと婚約していた。その後、村ではアクロイドの愛人で未亡人のドロシーが遺体となって発見される。アクロイドは彼女から夫殺しを告白されたことと、誰かにゆすられていたことをポワロに打ち明ける。

(NHKHP内番組紹介文より)

 「アクロイド殺人事件(アクロイド殺し)」は、アガサ・クリスティの最高傑作のひとつと言われ、また、世界中の推理小説史上でも屈指の名作とされているが、当時、各国の名だたる作家たちの間で賛否両論が巻き起こった作品としても知られている。

 ドラマをご覧になる前に、いっさいの予備知識無しに原作小説をお読みになってみると、この作品を最大限に楽しめるだろう。

 アクロイド殺し (クリスティー文庫) - アガサ・クリスティー, 羽田 詩津子, 詩津子, 羽田
アクロイド殺し (クリスティー文庫) - アガサ・クリスティー, 羽田 詩津子, 詩津子, 羽田


 そして、一体どうやってこの作品をドラマ化したのか、確かめたくなってくるはずだ。


 このシリーズでポワロを演じた俳優デヴィッド・スーシェ氏は、ポワロファンに「最も原作に忠実なポワロ」と讃えられている。

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画像出典:Wikipedia 著者Phil Chambers


 そのスーシェ版ポワロの日本語吹替をしたのは、演出家で俳優の熊倉一雄さん。

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 映画監督ヒッチコック本人の吹替でも知られ、その独特の声とテンポで、とぼけているようで底が知れないキャラクターを演じた。

 そして、この熊倉さんの名演技は、スーシェご本人から、「最もポアロの声によく合う」とお墨付きをもらったそうだ。

 この「ポアロの中のポアロ」が、最高傑作にして賛否両論の問題作に挑んだドラマ。

 どうぞお見逃しなく。


(熊倉一雄さんの吹替付「名探偵ポワロ」のDVD。パッケージ画像の「もの言えぬ証人」もおすすめ)

名探偵ポワロ DVD-SET7 - デビッド・スーシェ
名探偵ポワロ DVD-SET7 - デビッド・スーシェ


参照:Wikipedia「デヴィッド・スーシェ

 NHK人物録「あの人に会いたい 熊倉一雄さん」(動画付)

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2021年02月16日

クイーン関連の番組放送予定(BS世界のドキュメンタリー選)

2021年2月16日と17日、イギリスのロックバンド「QUEEN」にまつわる番組が2作品放送される

BS世界のドキュメンタリー選▽素顔のボヘミアン・ラプソディフレディを演じた男
(原題:Freddie Mercury The Great Pretender(2012年))


 [NHKBS1] 2021年02月16日 午後11:00 ~ 午後11:50 (50分)

 NHK番組情報はこちら

 (「Freddie Mercury The Great Pretender」トレイラー)


フレディ・マーキュリーのユーモアと皮肉にあふれたインタビューを軸に、HIVに倒れるまでステージの表と裏を駆け抜けた、希代のシンガーの音楽と人生を秘蔵映像でつづる

映画「ボヘミアン・ラプソディー」で世代を超えて共感を呼んだ「クイーン」のボーカル。ステージ上の“仮面”の裏には、孤独や愛に満ちた“静かな素顔”があった。M・ジャクソンとの未公開音源や“世界一のディーバ”モンセラート・カバリェと共演した「バルセロナ」も! (NHKの番組解説より)


(カバリエと共演した「バルセロナ」のデビューパフォーマンス〈1987年〉)





「ロックフィールドの伝説―農場の音楽スタジオ―」
(原題:ROCKFIELD THE STUDIO ON THE FARM(イギリス 2020年))


 [NHKBS1] 2021年02月17日 午後11:00 ~ 午後11:46 (46分)
  ・NHKの番組情報はこちら
  ・BBCの番組情報はこちら


映画『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』予告編 ※全96分 NHKの番組の完全版


(Rockfield: The Studio on the Farm」トレイラー



1970年代から2000年代にかけて、ブリティッシュロックの最高傑作が次々収録された音楽スタジオ「ロックフィールド」。農場の中に作られた伝説のスタジオの物語。 音楽スタジオ「ロックフィールド」では、ブラックサバス、クイーン、コールドプレイ、オアシスなど数々のロックスターが、名盤を生み出してきた。なぜ、イギリス・ウエールズの片田舎の農場に作られたスタジオで名曲の数々が誕生したのか。ロックスターたちの証言に数々の名曲を織り交ぜながら、英国ロック史をひもとく。
(NHK番組紹介より)

 2018年、記録的大ヒットとなった映画「ボヘミアン・ラプソディ」の中でも、クイーンのメンバーが泊まり込みで曲を作り上げるシーンがあるが、その舞台となったのは、華やかなロックとは正反対の、内装までのどかな、田舎の民宿のようなスタジオだった。



(映画「ボヘミアン・ラプソディ」の「ロックフィールド・スタジオ」でのレコーディングシーン)


 風変わりなスタジオの歴史と名曲を楽しめるドキュメンタリー、アーティストたちのエピソードと、彼らをサポートし、歴史を見届けたスタジオの経営者、ウォード家の人々のインタビューも楽しみだ。


ロックフィールド・スタジオ 動画内画像 - コピー - コピー.png
(画像出典:Youtube



(Youtubeの購入/レンタル、 Amazon PrimeとBlu-ray)


『ロックフィールド 伝説の音楽スタジオ』



(参照)






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2021年02月09日

(おすすめ番組)アッテンボローと世界を見る(BS世界のドキュメンタリー)

(イギリスの自然番組プロデューサー、サー・デビッド・アッテンボローさん)

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(画像出典:C21Media「Attenborough's Journey」ITV Studio)


 2021年2月10日(水)午後11:00 ~ 午後11:46 、NHKの「BS世界のドキュメンタリー 選」で「アッテンボローと世界を見る」が放送される。(再放送:2月19日(金)[BS1]後5:00)

 (原題:Attenbrough’s Journey(イギリス 2020年)制作:ITV)

 94歳になったサー・デビッド・アッテンボロー。創成期のテレビ局で自然科学番組を制作、65年あまり大御所的なプレゼンターとして名をはせた。撮影現場から飛ぶ白鳥をバックに語ったり、高い木の上でカエルと共に撮影されるなど現場で様々な演出を編みだしてきたことでも知られる。今、温暖化など地球環境保全活動に取り組むアッテンボローに密着。

(NHK番組紹介ページより)

NHK番組公式情報はこちら(一部動画が視聴可能。)イギリスの番組情報はこちら


 自然番組のプロデューサーで、名ナレーターとしても知られる、サー・デビッド・アッテンボローさん。

 (※「サー(Sir)」は、イギリスで「騎士(ナイト)」の称号を与えられた人物への敬称。偉大な功績のある人物に授与される。)


 自然ドキュメンタリー番組に革新的な演出を取り入れた功績と、知的で温かな人柄で、イギリスの人々から「国宝」と言われ、敬愛されている人物だ。


 (アッテンボローさん名場面トップ10動画)

 


 アッテンボローさんは94歳になられた今も、動物たちの生態や、環境問題を取り上げた番組の制作に携わっている。

 (現在NETFLIXやYoutubeで公開中の「A Life on Our Planet」の予告動画)

 (アッテンボローさん93歳のときの映像)


 日本でも、アッテンボローさんが制作、あるいはナレーションを担当した自然番組がたくさん紹介されているが、今回の番組「アッテンボローと世界を見る」では、環境保護活動とともに、アッテンボローさんご本人にも焦点が当てられている。


 動物たちの側に立ち、独特の気品と温かみのある声で解説をする番組スタイルで知られるアッテンボローさん。

 彼は動物たちに「インタビューをする」と言っていて、彼の作品が賞を獲得したときの受賞スピーチでは、人間のスタッフたちだけでなく、取材に協力してくれた動物たちにも感謝を伝えるような、気配りの行き届いた人物だ。


 アッテンボローさんの姿勢が動物たちにも伝わるのか、ときに、彼らはアッテンボローさんに、とても好意的に接してくる。


 パプアニューギニアの鳥について解説中、〈本来は求愛用の〉熱烈なダンスと歌を披露されるアッテンボローさん。

(※求愛音量注意)




 ゴリラの一家のそばで、そっと解説をするだけのつもりだったのに、いつのまにか温かく迎え入れられてしまうアッテンボローさん。




 アッテンボローさんの回想によると、このときカメラの外では、もう一頭の赤ちゃんゴリラに靴を脱がされそうになっていたらしい。

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 アッテンボローさんの上にねそべり、ものすごくくつろぐゴリラの赤ちゃん。

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 そんなアッテンボローさんたちのチームが制作した番組では、動物たちが喜怒哀楽とともに個性豊かに活躍し、真剣に生きている姿がとらえられ、この世界の素晴らしい奥行を私たちに教えてくれる。



 イギリスでは「紳士」という概念が、今も大切にされている。

 お金や地位や権力を得ることとは別に、自分が他者のために何ができるかを考え、洗練されたふるまいをすることが、大切なこととされているのだ。

 (成功者であっても「紳士」とは程遠い人間も大勢いるが、「紳士であれ」という考えは確かに存在し、それが多くの人々の行動の指針になっている。)

 その「紳士」の生き方を、自然番組制作という意義深い仕事とともに、今現在に至るまで、65年以上貫いているアッテンボローさん。


 イギリスの人々は誇りとともに、彼を繰り返し「国宝(National Treasure)」と称えているが、あるYoutubeのコメント欄で、海外のファンは「いいえ、国際的な宝(International Treasure)です」と賛辞を加えていた。


(2021年一月、コロナ禍のおり、自宅から新年のメッセージを送るアッテンボローさん)


 困難の中にある人々を励まし、温暖化の危機に直面する地球のために、全ての生命のために、この状況を乗り越え、私たち一人一人が、良い変化を起こしていきましょう、と、お話されている。

 動物の生態や環境問題にあまり興味がないという方にも、是非、アッテンボローさんの関わった番組と、彼ご本人を観ていただきたい。

 本当の「リーダー」とは、人々から敬愛され、目標とされる人とは、どんな人物なのか。

 アッテンボローさんは(ご本人は謙虚な方なので、否定なさるだろうが)、それを体現してくださっている。


 悲しく荒んだニュースが多い今、「この世界には、こんな素敵な方もいる」という事実が、きっと、心を温めてくれるはずだ。

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2021年02月08日

(おすすめ番組)ミニチュアの魅惑(BS世界のドキュメンタリー)

(番組に登場したハンブルグのミニチュア施設「ミニチュアワンダーランド」公式動画)




 2021年2月9日(火)午後5:00 ~ 午後5:45 (45分)、NHKの「BS世界のドキュメンタリー 選」で「ミニチュアの魅惑」が放送される。
 (原題:Miniature(カナダ 2018年) 制作:Tiny Gort Films Ltd.)

 NHK番組公式情報はこちら


世界各国で人気のミニチュア、その極意は奥深い! 鉄道模型の隣りに、飛行機の離着陸も再現するジオラマが登場。英国各地には、訪問客がガリバーになる村の模型パークも!

極小サイズの美をめでるのは紀元前から!? ヨーロッパの洞窟で、マンモスの骨で作ったミニチュア人形が発見された。アメリカでは一般の住宅の模型が人気で、専門の博物館もある。独ハンブルクの兄弟は、世界最大の鉄道網を誇る「ミニチュアワンダーランド」に、飛行場も加えた。エリザベス女王に依頼され、縫い針に乗せる極小の王冠を作ったアーティストなど、驚きの技巧にあふれた芸術作品に目を輝かせるファンの世界をのぞく。

(NHK HP番組紹介より)



 紀元前から現代にいたるまで、小さなものに心ひかれる人々の想いと、目を見張るような作品たちを紹介したとても素敵な番組だ。



(カンザスシティの「国立おもちゃとミニチュアの博物館」の動画)


 番組にも登場するミニチュア作家ロバートソンさんをはじめとする、名人たちの息をのむようなアンティーク調ミニチュアは必見。


(イギリスのミニチュアの村「モデル・ビレッジ」の一つ「ベコンスコットモデルビレッジ」の鉄道模型から見た光景)
 

 小さな世界に広がるイギリスの平和な日常と、手作りのぬくもりに心が温まる。



(イギリス、コッツウォルズのボートンオンザウォーターにあるモデルビレッジ。)

 地元の石を使って町の建物を忠実に再現している。

 モデルビレッジの中にモデルビレッジ、その中にもモデルビレッジ、さらにその中にもモデルビレッジがある……という遊び心あふれる場所。


番組に登場する施設と番組情報ページはこちら。

 (どのページも作った人たちの熱意がこもっていて、眺めるだけでも本当に楽しい。)
 
・アメリカ・カンザスシティ「国立おもちゃとミニチュアの博物館(The National Museum of Toys and Miniatures)」HP
   
 ・イギリス「ベコンスコット モデルビレッジ」HP

 ・イギリス「ボートン オン ザ ウォーター モデルビレッジ」情報ページ


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2020年05月02日

NHK「沁みる夜汽車の旅 2019年冬 愛犬タカが守ってくれる」


池田さんと愛犬タカ
池田さんとタカ - コピー (2).png


 全国各地の駅と電車にまつわる物語を紹介する、NHKの短編ドキュメンタリー「沁みる夜汽車の旅」。


 「2019年冬」編で、飼い主の池田さんとともに大畑(おこば)駅に通い続けた犬、タカの物語が紹介されていた。(BS1 2020年 5月24日(日)午後4:30~午後4:40 再放送


 大畑駅は、熊本県人吉市の無人駅で、趣深い小さな木造駅舎が残され、春には線路沿いに桜と菜の花が咲く、絵本の中のような場所だ。


 池田さんは、教師を退職した後、この駅の手入れをする名誉駅長として、軽トラックで駅まで通っていた。


 線路周辺の草を刈り、駅を綺麗にする池田さんの相棒が、愛犬タカだった。


 池田さんの教え子の家からやってきたタカは、白地にブチ模様で、耳は半分垂れ、体の大きさは中くらいだが、脚はたのもしく太い、丸い鼻と優しい目をした犬だった。


 タカは池田さんの仕事が終わるまで、いつも大人しくしていた。池田さんの手が止まると、駆け寄って甘えた。


 なんかこう、自分も癒されるような気持になっていく。

                       (池田さんの言葉)


 それがタカの大切な仕事だった。



 ある日、そんなタカが、駅の側で激しく吠え続けていた。いつもは吠えないタカが、トラックの荷台に乗って、一生懸命吠えていた。


 タカのことを知っていた列車の運転士、西門さんが、出発直前の列車を止めて様子を見に行った。


 ハチに刺されてショック症状で意識を失った池田さんが、倒れていた。



 「絶対に、(タカが)助けてくれた、と、私は思っています。」


 池田さんの奥様、京子さんは当時を振り返り、そう固く信じている、明るいがきっぱりとした声で言った。


 「ふだんは鳴かないんですよ?吠えないんですよ?それなのに、荷台の上から一生懸命、「助けてくれ、助けてくれ」みたいなことを言った(吠えた)から……。タカが教えてくれたと思いますよ」


 京子さんの言葉を聴きながら、小さくうなずく池田さんの目は、そのときの、自分は知らない、でも、自分のために一生懸命吠えてくれたタカを、しみじみと見つめているようだった。



 タカは13年間、池田さんと一緒に駅に通った。


 しかし、16才になったタカは、体が思うように動かなくなり、ご夫婦の手厚い世話を受けながらも、スポイトで栄養剤を飲むのがやっとという状態になってしまった。


 タカを心配しながら、法事で家を開けることになった池田さん。


 もしかしたら、もう、タカに会えないかもしれない。そんな思いが胸をよぎった。


 しかし、タカは、池田さんが戻ってくるまで持ちこたえた。


 目をかすかに開けてくれたので、ああ、まだ生きとった、と。


 (自分を)待っていたのかなあ……と。



 そして、池田さんが帰宅した翌朝、タカは息を引き取った。




 大畑駅の近くには、「忠犬 タカ之墓」と記された木の墓標がある。


 池田さんは、そこに手を合わせ、大畑駅の草刈りをボランティアで続けている。


 「もう、タカのような犬には、出会わないんじゃないかと思います」


  池田さんは、柔らかい声で静かにそう語る。


 それから一度も、池田さんは犬と暮らそうとしない


 番組は、そう結ばれている。




 番組では、池田さんと駅に通うタカの姿が、池田さんご本人と、タカ役の犬が演じる再現VTRで紹介されている。


 タカを演じる犬は、タカと違って茶色で、鼻面の黒い犬だが、タカに似た折れ耳の賢そうな犬を撫で、「タカ」と呼ぶ池田さんの笑顔と声は、深い懐かしみと優しさに溢れている。


 そして、番組では本物のタカの写真も数枚出てくる。


 池田さんと床に寝そべる子犬のタカ、池田さんと並んで笑う大きくなったタカ(口をちょっと開いてピンクのベロをちょろりとのぞかせ、タカは確かに笑っている)。人間の眼鏡をかけられて、いやがらずにただ目を細めるタカ。


 とても幸せだったに違いないと思わせる温かな気配が、その丸くふっくらとした鼻と口元、あどけなさと思いやり深さの両方が宿る瞳から漂っていて、小さくて愛らしい子犬の時以上に、大人になってからのタカの表情に心を動かされる。


 (京子さんが撮られたのだろうか、写真のタカは、隣の池田さんと、写真を撮った人の両方に心を許しているようなくつろいだ顔をしている。)



 西岸良平さんの漫画「三丁目の夕日」や、一篇の短編小説の中のような話であり、タカの、犬という生き物のかわいらしさ美しさを凝縮したような姿と、いかにも犬に一生涯慕われそうな、池田さんの人柄の良さがにじみ出た表情や声が、10分の短い番組の中で深く胸に刻まれる。


 「もう、タカのような犬には、出会わないんじゃないかと思います」という池田さんのしみじみとした言葉と声には、「運命の犬」に出会えた人の、寂しいけれど幸せな思いが籠っていた。


 人に運命の出会いがあるように、動物にも運命の存在がある。


 心の深い部分で分かり合い、助け合い、一緒に沢山笑い、生涯の大切な思い出を分かち合う生き物。


 その出会いの前や後に他の動物と生き、愛情をはぐくんだとしても、「運命の存在」の思い出は薄れることはない。


 池田さんにとってのタカは、そういう存在だったのだろう。そして、もちろんタカにとっても。



 番組全体が、この暗い時期に、夜汽車の灯のように、静かに心を照らしてくれる作品なので、是非繰り返し再放送をしていただきたいと思う。





【参照URL】

NHK番組紹介ページ

https://www.nhk.jp/p/ts/GQ8PWYMK6W/

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2373108/index.html


朝日マリオンコム コラム ひとえきがたり 「タカはほえた 名誉駅長を救って」(文 曽根牧子/撮影 上田頴人) 

https://www.asahi-mullion.com/column/article/station/1042


テレビ朝日ナニコレ珍百景【珍百景No.2184】「愛犬が飼い主の命を救った」熊本県人吉市

https://www.tv-asahi.co.jp/nanikore2017/contents_pre/collection/150624.html





posted by pawlu at 00:44| おすすめ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月23日

NHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」再放送のお知らせ(NHK総合)

「オバマ米大統領、広島訪問 被爆者とハグ Obama hugs Hiroshima survivor」
AFPBB News (AFP通信日本語ニュースサービス)



https://www.youtube.com/watch?v=D8MtsB636Tg

 2016年9月27日(火) 午前1時30分より、バラク・オバマ大統領広島訪問時に大統領と言葉を交わした被爆者の一人、坪井直(すなお)さん(91歳・日本原水爆被害者団体協議会代表委員)をご紹介する番組が再放送されます。
 (前出動画内で最初にオバマ大統領と言葉を交わされている方です。)

 番組公式HPはこちらです。
 もっとNHKドキュメンタリー「NEXT 未来のために『オバマと会った被爆者』」

 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2075058/index.html

 20歳のとき、爆心地から約1.2km地点で被爆、顔や手や背中に大きなやけどを負い、壮絶な光景を目の当たりにした坪井さん。
(大怪我を負い、橋の欄干近くに座り込んで救援を待つ坪井さんの姿が当時の記録写真に残されているそうです。)

 本当は原爆を投下をされたことに対する強い怒りがある。

 それでも、オバマ大統領と対面した坪井さんは、笑みを浮かべ、力強く握手を交わしながらこう伝えました。
「核兵器のない世界、私たちも行きますよ」

 チェコのプラハでやったあなたの「“核兵器のない世界”をつくろう」、そのことは今も私に脈打っていますよ。だからあなたが(来年の)1月に(大統領を)辞められても、広島へ来てください。

 坪井さんのその言葉を手を握り続けながら聞いたオバマ大統領。
 
 広島を訪れてからずっと、張り詰めた真剣な表情を浮かべていた顔に、はじめて笑みが浮かびました。

 「謝って下さい、とか悪いことをしましたとか私は一切いりません」

 そう語る坪井さん。

「憎しみを出しても、わかってもらえなければ意味がない。乗り越えんとね、平和はない。幸せはない」

 被爆の後遺症にも苦しめられながら、その心境に達するまでには、さまざまな葛藤があったはずですが、戦後71年、被爆国である日本でも戦争の記憶が薄れつつある今この時、まず必要なのは、謝罪の言葉の有無ではなく、ともに核兵器の恐ろしさを考え、平和に向かうという未来へ向けた思いであるというお考えが、このご発言になっているのだと思います。

 番組では、坪井さんに密着取材をし、被爆体験、そして怒りや憎しみを乗り越えて、「ここから」の平和への歩みを見据える思いが紹介されるそうです。

 当ブログでは、後日、この番組の内容や、同じく被爆者としてスピーチ後にオバマ大統領と言葉を交わされた、森重昭(しげあき)さん(動画内で坪井さんの後に会話をし、オバマ大統領と抱擁を交わしている方です)のご活動について紹介させていただく予定です。

 よろしければまたいらしてください。

 読んでくださってありがとうございました。


 (参照):
 ・「被爆者と抱擁も…明かされた大統領との会話」
  日テレNEWS24(2016年5月28日)
   http://www.news24.jp/articles/2016/05/28/07331263.html
 ・フジテレビ「ユアタイム」2016年5月27日 放送内容
 ・ウィキペディア記事「坪井直」
https://ja.wikipedia.org/wiki/坪井直
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2016年09月16日

クリスティのフレンチ・ミステリー「ABC殺人事件」(ドラマ独自の年の差恋愛も見どころ)


 AXNミステリーチャンネルがご覧になれる方限定なのですが、お勧めの推理ドラマがあるのでご紹介させていただきます

 クリスティのフレンチ・ミステリー
(原題:Les Petits Meurtres d'Agatha Christie−)

Les Petits Meurtres D'agatha Christie: Set 1 [DVD] [Import] -
Les Petits Meurtres D'agatha Christie: Set 1 [DVD] [Import] -

2016年9月19日(月)22:00より、「ABC殺人事件(Les Meurtres ABC)」を皮切りにシリーズの再放送が始まります。(ABC殺人事件は 10月15日 (土)22:00〜再度放送予定)

Les Petits meurtres d'Agatha Christie - Les meurtres ABC -
Les Petits meurtres d'Agatha Christie - Les meurtres ABC -

番組公式HPはこちらです。(右上に放送予定表示ボタンがあります。)
http://mystery.co.jp/programs/agatha_french

 アガサ・クリスティ作品の大筋をふまえつつ、探偵役のポアロやミス・マープルを登場させずに、ドラマ独自のキャラクター、ラロジエール警視とランピオン刑事が事件を解決するという風変わりな構成です。

 名作に手を加えて成功する例は稀だと思うのですが、このドラマに限って言えば、原作に忠実という意味では他の追随を許さない、恐ろしいほどに完璧なイギリス版ドラマには無いユーモアがあり、原作を読んだ人でも別物として楽しめる構成になっています。

 一見エリートダンディなのに、おこりんぼで毒舌で日常的に部下に八つ当たりし、女好きで、それなのに落ち込むと前後不覚の酒浸りになるという、名探偵としては稀にみるほど手に負えない性格のラロジエール警視(ランピオン曰く「長所を見つけるのが難しい人(酷)」)と、まじめで優しく、地道に捜査に臨むランピオン(ちなみに同性愛者で男女問わず結構モテる〈ラロジエールが押しの一手なのに比べ、向こうが静かに寄ってくる感じ〉)の掛け合い(半分口論)や、ここぞというときには発揮される仕事への情熱と冴えわたる推理力も見ごたえがありますし、クリスティ作品にしばしば見られる薄暗い後味を、設定を少しずつ動かすことで、印象を変えてくれている回もあります。

 見た範囲で、このアレンジが最も冴えわたっていると思ったのは今回第一回目で放送される「ABC殺人事件」と以前紹介記事(ネタバレ)を書かせていただいた「五匹の子豚(今回は10月31日 22:00〜)」です。

 「ABC殺人事件」は、本来ポアロが登場する、クリスティ作品の中でも屈指の人気を誇る作品です。

ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) -
ABC殺人事件 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) -

 異なる町で名前にA、B、Cの頭文字を持つ人物が次々と殺され、直前にラロジエールたち(原作ではポアロ)のもとに届く殺人予告。

 同じころ、戦争で受けた傷がもとで、記憶が途切れるという症状を持っていた中年男性キュスト(原作ではカスト)は不安にさいなまれていた。
 彼が得た、ストッキングのセールス業で行く先々で殺人が起こり、自分にはどうしても思い出せない記憶の空白がある……。

 もしや自分が犯人なのではという疑念が離れず、苦しむキュスト。

 しかし、普段は控えめだが優しい目をした彼に、下宿先の娘リリが年の差を超えて好意を抱き、彼の苦悩を薄々感じながらも、彼を支えようとします。

 一方、犯人の足取りがつかめないまま殺人が重ねられ、激しく自分に落胆するラロジエール。ランピオンは彼を励まし、再び捜査に乗り出します。

 原作自体、事件の全貌があまりに意外で、読み応えがありますが、このドラマでは、原作よりも登場人物を絞り込み、キュストとリリの交流を、この殺伐とした連続殺人と対比させています。

 原作にもこのリリに当たる下宿屋の娘(リリー)が登場するのですが、彼女にはトムという恋人がいて、カスト(キュスト)の境遇に同情的ながら、一方で彼が犯人ではないかという疑いもぬぐえず、恋人と彼の周辺を調べたりしています。
(なので、原作ハヤカワ文庫では完全に脇役扱いで、冒頭の登場人物紹介から外されている。)

 一方ドラマのリリは、彼女が男としての自分を好いているなどとは夢にも思わないで、ただ穏やかに話し相手をしてくれるだけのキュストをなんとか振り向かせようと、下宿屋の仕事を超えて彼に尽くし、彼の部屋の前に入る前には身だしなみをととのえたりしています。

 こういう、「好きな人に好かれたくて頑張る人」の描写ってなんか和むんですよね……それにミステリー作品に、一生懸命家事をするとか、服や髪形と気にするなどのさりげない場面が織り込まれるのも珍しいと思います。

 母子家庭で父親にいい思い出が無い様子なので、キュストに優しい大人の男を求めたのかもしれませんが、甘えるよりむしろいつもキュストを励まし、いそいそと世話を焼いているリリは、初々しいけれど包容力があるという、ある意味理想の女性です。
(ずば抜けて美人ってわけじゃないけれど、話し方に温かみがあってピンクの似合う可愛い人)

 メインは推理ドラマなので、それほど長く登場するわけではありませんが、このつつましいしぐさややりとりが心に残ります。

 最近大ヒットしている年の差恋愛漫画「恋は雨上がりのように」(※)がお好きならおススメしたい回です。

恋は雨上がりのように 1 (ビッグコミックス) -
恋は雨上がりのように 1 (ビッグコミックス) -

 (※)女子高生橘あきら(クールな雰囲気〈中身は違うけど〉の激美少女)が、バイト先の一見冴えない雇われ店長(45歳、作中では頼りないとか、なんかクサいとかさんざんな言われようだが笑顔と性格がとても良い。あきらちゃん見る目あるぞ)に片思いをして、彼の心を掴もうと奔走するストーリー。抜群に美しい絵やどこか文学的な心理描写と光景、二人以外の登場人物たちも魅力。

 この「フレンチ・ミステリー」そのほかの回も非常にレベルが高く、特に序盤にギャグ、最後に美しい余韻がある「五匹の子豚」は必見です。

 当ブログのフレンチミステリーに関連する主な記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。(一部内容が重複しています。またリンク切れが多いのであらかじめご了承ください。)
クリスティのフレンチ・ミステリー(AXNミステリー・フランスドラマ)
「クリスティのフレンチ・ミステリー」再再放送(AXNミステリー
「五匹の子豚」(クリスティのフレンチ・ミステリー※ネタバレ編)
クリスティのフレンチミステリー「ABC殺人事件」(ドラマ独自の年の差恋愛も見どころ)

 なお、私はビタ一文読めないのですが(汗)、ドラマに関するフランス語のウィキペディア記事があったので、貼らせていただきます。
「クリスティのフレンチミステリー(原題:Les Petits Meurtres d'Agatha Christie)」の紹介ページ
同上「ABC殺人事件(Les Meurtres ABC)」の項目

 読んでくださってありがとうございました。
posted by pawlu at 19:56| おすすめ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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