2017年07月21日

清水三年坂美術館の村田理如館長と、ロンドンの大富豪ナセル・ハリリ氏(明治工芸の名コレクターたち)

 京都の清水寺近くに、日本が誇る明治工芸の殿堂、清水三年坂美術館があります。

 先日(2017年6月末〜7月初旬)BS7の『極上お宝サロン』で、4週にわたり、京都清水三年坂美術館が特集され、その素晴らしい収蔵品の数々が紹介されました。

・番組内、清水三年坂美術館と村田館長についての記事はコチラです。


 清水三年坂美術館は、村田製作所の役員だった村田理如(まさゆき)氏が、明治工芸の美に魅せられ、1980年代後半から、20数年かけて収集したものです。(※)

 村田理如館長の、美術館設立にまつわるお話がよめるページはコチラです。
 http://www.sannenzaka-museum.co.jp/abut.html

(村田理如館長の著作の一部)
清水三年坂美術館 村田理如コレクション 明治工芸入門 -
清水三年坂美術館 村田理如コレクション 明治工芸入門 -

幕末・明治の工芸―世界を魅了した日本の技と美 -
幕末・明治の工芸―世界を魅了した日本の技と美 -

 もともと主に海外への輸出品として作られ、世界中に散逸していた明治工芸の作品群を買い集めて、里帰りさせてくださった、村田さん。


 この方無くしては、現在「超絶技巧」と讃えられ、もはや再現不可能とすら言われる圧巻の美が、国内で再評価されることは無かったかもしれません。

(※)この「村田コレクション」は、京都のほか、他美術館にも貸し出しされ、現在、北海道函館美術館で8月20日まで、東京では三井記念美術館で、今年9月16日〜12月3日にかけて観ることができるそうです。



 そんな日本明治工芸界の大功労者の村田館長ですが、村田館長よりも初期に、恐るべき質量の明治工芸を収集した、もう一人の名コレクターがいらっしゃいます。

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 ナセル・D・ハリリ氏。(Nasser Khalili)
(画像出典:Wikipedia 提供者:Malkalior )



 ロンドン在住のイラン系大富豪であるこの人物は、巨万の富と審美眼を武器に、明治工芸の一大コレクションを築き上げました。


 かつてNHKのドキュメンタリー番組の中で、「(ハリリ氏より収集が)10年遅かった……」と、村田さんの温厚なお顔を実に悔しそうに曇らせ、唇を噛ませた人物です。


 ナセル・D・ハリリ氏は彼がまだ20代だった1970年代から、イスラム系の美術品や細密画(細やかに装飾された文字や挿絵の入った絵画や文書)を収集し始め、やがて、同じく高い技術と細やかな装飾性を持つ明治美術に目を向けます。


 当時、明治工芸は、海外への土産物として量産された粗悪品が多い、というイメージで、江戸美術よりはるかに劣るものとされていました。

(実際、細かいけどゴテゴテしているだけでオーラが無い作品がある。)


 しかし、こと明治初期には、ウィーン万国博覧会(1873年)をはじめとして、ヨーロッパの富裕層を瞠目させた、数多くの名作があり、ハリリ氏は己の美意識を信じて次々とそれらを収集しました。



 NHKのドキュメンタリー番組に出演されたときのお話によると、美術品売買を営む家に生まれ、子供のときから既に「ほしいものを手に入れるためなら昼食代を犠牲にした(確か切手収集)」そうで、物心つくなり己の美意識と執念を磨きぬいた、「天才コレクター」とも形容すべき人物です。

(日本では忘れ去られていた作品を一気に収集し、価値の再発見への道をつないだという点では、今や大スターとなった伊藤若冲のコレクター、ジョー・プライス氏を彷彿とさせます。日本美術界の恩人と呼ぶべき方だと思います。<村田さん的には火花バチバチのライバルでしょうけれど。>)



 このハリリ氏は、過去NHKの番組に何度か出演し、その圧巻の逸品を垣間見させてくださっています。


 「七宝、幻の赤を追え」で、ハリリ氏のオフィスに飾ってあった実に見事な安藤重兵衛の赤七宝の壺を手に取り、チュッとキスしていたのがすごく印象的でした。


 あと、いかにも「抜け目ない知的なビジネスマンにして紳士」という感じなのに、優れた作品を前にすると、ニタアッと笑っていたのが面白かった。


 先述の村田さんのホントに悔しそうな顔と並び、名士たちなのに「マニアの熱」がある。

 この方たちの審美眼と執念、そしてわかりやすい表情と物に対する熱愛は、人気漫画「へうげもの」で、名物(美術品)を我が手にと奔走した武人、茶人たちを思い出させます。

へうげもの(1) (モーニングコミックス) -
へうげもの(1) (モーニングコミックス) -

 ハリリ氏のコレクションは、残念ながらまだ来日したことが無いようです(本当に残念……)が、彼の作品は、書籍『ハリリ・コレクション』ほか、公式HP(英文)でも高画質で観ることができます。

ナセル・D・ハリリコレクション―海を渡った日本の美術 (第1巻) -
http://www.khalilicollections.org/all-collections/japanese-art-of-the-meiji-period/

(※下部「LOAD MORE」をクリックすると次の作品群が表示され、画像をクリックすると拡大写真と説明が表示されます。)

(明治工芸がネットで観られるページとして、今まで、清水三年坂美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館、ウィキペディア<主にロサンゼルスの美術館lacmaの所蔵品>を見つけましたが、画質の良さと掲載品数はこちらのページが一番だと思います。<一方、清水三年坂は工程動画があるので勉強になります。>)

 過去NHKの番組で紹介された作品の一つはおそらくコチラです。
象の香炉)


 個人的に素敵だと思った作品はコチラです。

対の七宝花瓶(赤坂迎賓館の壁面装飾を担当した明治七宝の名手、濤川惣助作)

 ・飾り棚(一部、濤川惣助作と考えられる品)


 ハリリ氏は明治工芸、イスラム美術ほか、日本の着物やスペインの工芸品など、8部門のコレクションをしており(計約3万点〈ぴんとこない……〉)それらも一部HP上で公開されていますが、いずれも逸品そろい。本当に卓越したセンスです。

 是非ご覧になってみてください。

 公式HP内、8部門のコレクション目次ページはこちらです。
 http://www.nasserdkhalili.com/the-eight-collections/

 読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum. at 06:17| 美術・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする