2016年09月30日

ドラえもん「王冠コレクション」補足情報


 前回ご紹介の「王冠コレクション」(ドラえもんがふざけて「ジュースの王冠のコレクションがはやる」という作用のあるウィルス(ネコシャクシビールス〈笑〉)をばらまいた結果、効き目が強すぎて、大の大人が200万出してでも買おうとする事態になってしまうというお話。)に関連して補足情報(というかこぼれ話)を書かせていただきます。
 

【1】印刷ズレについて
 スネ夫が自分のレア物コレクションとして、王冠のふたからラベルの印刷がずれているものを見せていましたが、これに近いエラー品プレミアというものが実際に切手の世界であるそうです。


王冠コレクション1.png

 「何でも鑑定団」(テレビ東京)でも、印刷ミスの切手が何度か出ていました。
 番組公式HP情報はコチラ。
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20120807/05.html
 ・http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20150728/03.html(ニ色刷り切手が一色刷りで出回ってしまった珍品で、800万!)

 この他にも、切手の場合だと、パンチ穴が空いていないなどというのが価値のあるものだそうです。
(ウィキペディア記事はコチラ)

 https://ja.wikipedia.org/wiki/エラー切手#.E7.94.A8.E7.B4.99.E3.82.A8.E3.83.A9.E3.83.BC

 【2】王冠コレクションについて

 実際にネットオークション等で出回っているそうです。
 「1日眺めていても飽きないわ(ビールス保菌中のしずかちゃん談)」……とまで思うかはさておき、確かに色もデザインもさまざまで、改めて見てみるとなかなか面白いものなので、売り物になるのわかる気がします。
 コレクターズポイントとして以下のようなものがあるそうです(ちなみに英語では王冠のことをシンプルに「bottle cap」と言っている模様。)

 1、純粋にコインや切手のノリで珍しいものを集める人と、アクセサリーやキーホルダーなど創作品の材料としてまとめ買いする人がいる。
 2、価格は(上記材料としての袋買いを除くと)1個100円〜500円程度。
 3、人気があるのは以下のような条件のもの。
 ・時代が古いもの
 (なかには戦前の飲み物のキャップなどもありました。)
 ・外国の物
 (たとえばメキシコとか、東南アジアとか、購入者のいる国からすると入手が難しい国の飲み物。
  実際カラフルだったり文字がエキゾチックだったりして味があります。)
 ・未使用のもの
 (実際には瓶にとりつけられたことがないままにデッドストックとして市場に出回ったものが
けっこうあるみたいです。当然無傷なので評価が高い)
 ・スターウォーズ、スーパーカーなど、デザイン自体に人気があるもののシリーズをひととおり揃えたもの
  (これはメンコとかミニカーみたいな、わかりやすいノスタルジックな魅力があります。)
 ・くじつきのもの、さらにそれが未開封のもの
  (王冠の裏側に封がされているデザインではがすと、10円分のコインがわりになるとか、キャラクターが描いてあるなどの特典があった。これがさらにはがされていない状態だとそれはそれで評価が高い。)

 のび太が集めていたものはおそらく1970年代初期のものでしょうから、今となるとものによっては1個100円くらいにはなっているかもしれません。
 (数百円台は1960年代以前のものが多いので、たぶんバクゼンと集めていたのび太は持っていない。)
 それでも箱一杯持っているから、立派なへそくりになりそうですね。

 参照URL 
ヤフオク(コカ・コーラグッズ)
http://closedsearch.auctions.yahoo.co.jp/closedsearch/%E3%82%B3%E3%82%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%A9%E7%8E%8B%E5%86%A0/0/
・E-bey:http://www.ebay.com/sch/Soda-Bottle-Caps/35693/bn_3018786/i.html

 なお、少し違いますが、シャンパンの王冠(ミュズレ)のコレクションはよりメジャーで、こんな専門グッズも販売されています。

 シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
シャンパンミュズレ(王冠) コレクションボード 6250 インテリア その他インテリア [並行輸入品] -
 
 【3】王冠より瓶

 コカ・コーラの空き瓶、あるいは中身入りのものは、王冠以上に高値で取引されています。ものによっては数万円するものも。
 確かにレトロな味があるかんじなので、個人コレクターのほか、お店の人が飾りとして買っていくのかもしれません。

 ・参照 E-beyコカ・コーラボトルオークション情報 

 http://www.ebay.com/sch/Coca-Cola-Bottles/13603/bn_3117489/i.html

 以上、ドラえもん「王冠コレクション」補足情報でした。

 こうやって周辺情報を集めてみると、あの短編の面白いのは、王冠が、「まじまじ見るとコレクションアイテムとして結構そそる」という絶妙なラインを突いていたからかもしれません。スネ夫たちの暴走をなにやってんだかと思う一方で、ちょっと引きずり込まれそうな……。
 そしてこんな感じで実際に似たような売買が成り立っていました(笑)。

 なお、九月になったので、「芸術の秋」ということで、ドラえもん作品の中からアート・鑑定に関わる作品をもう少しご紹介させていただく予定です。よろしければお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。







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2016年09月29日

(※ネタバレ)ドラえもん「王冠コレクション」

王冠コレクション1.png

 本日は「ドラえもん」より、「王冠コレクション」をご紹介させていただきます。

 コミックス9巻収録

ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -

 物の価値について意外とシニカルな目を持つドラえもん。

 周囲のコレクション熱に振り回されるのび太を見て、ちょっとしたいたずらを思いつくというお話です。

 以下あらすじです。結末までネタバレなので、あらかじめご了解ください。
  

「ありがたぁくおがめよ」
 スネ夫の切手用ピンセットの先で燦然と輝くプレミア切手、「月に雁」(※)

(※)歌川広重の浮世絵を元にした800円切手。希少性から切手ブームのこの頃(1970年代)、価格が高騰した(購入価格1万8千円〈スネ夫談〉)。2016年現在でも状態の良いものは1万円近いプレミアがついている。

 目を丸くするのび太たちの前で、
「切手マニアならこの程度のものをひとつくらい持ちたいもんだねえ」
と、自慢を兼ねて感慨にふけるスネ夫。(たまに言動が妙に中年じみる)

 パパは骨董品、ママは宝石。道は違えど、うちの家族に共通しているのは一級品しか相手にしないってことだね。

 それを聞いたしずかちゃんとジャイアンは、それぞれシールとコインのコレクションなら自信がある、と、胸を張りました。

 のび太一人うかない顔をして家に帰り、切手を集めたいとママに資金援助を願い出るが、どうせあきるんだから無駄なことだ(一度挫折しているから)と、見事な正論で却下されてしまいます。
 「こういうわからないことを言うんだよ!」と愚痴るのび太に対し、ママに完全同意するドラえもんでしたが、自慢できるコレクションがなくて肩身がせまい、としょんぼりする姿を見て、君だってすごいコレクション持ってるじゃないの、と、押し入れから談ボール箱を出してきます。

 中にぎっしりはいっていたのは飲み物の王冠。(昔特に意味もなく集めていたモノ)

 こんなもん持ち出して僕をバカにしてるの!?と怒るのび太を笑ってなだめるドラえもん。
「そもそも物のねうちってなんだろう。みんなが欲しがるってことじゃないかな。切手だって宝石だって、みんなが欲しがらなければ、ただの紙切れや石ころにすぎない」(←おおお……〈汗〉)

 おそるべき達観を披露して終わりかと思いきや、「だからなんだっての?」とちっとも納得していない様子ののび太に対し、「ちょっとしたイタズラをやろうっての」と部屋を出ていくドラえもん。

 取り出したのは「流行性ネコシャクシビールス」。

 ウィットに富んだ名を持つこのひみつ道具、流行させたいものをビールスに言い聞かせて培養し、空中散布すると、感染した周辺の人々にブームを巻き起こすことができます。

 ドラえもんが何をしていたか知らないのび太が外出すると、ジャイアン、しずかちゃん、スネ夫が王冠コレクションを見せあっていました。

  中でもスネ夫の1ダースものコレクション (専用ケース入〈笑〉)には、印刷ズレの珍品があり、二人の羨望を集めます。

 なんにするのこんなもん集めて、と、勝手にレア物王冠を手に取り、スネ夫に派手に叱り飛ばされるのび太。
「ピンセットで扱うもんだぞ。錆がついたらどうする!」

 さっぱり状況が飲み込めずにいると、三人が「遅れてる」のび太に口々に説明します。

 切手やコインなんて時代遅れ、この一日眺めていても飽きない形の美しさ、面白さ、王冠コレクションはすぐに世界的ブームになる。  
 
 それを聞いたのび太が、3人に自宅の箱一杯のコレクションを披露すると、三人は「いつのまに!?」と言葉を失います。
「いやあ、たいしたことないよ。諸君とはちょっとばかり目の付け所が違っていただけさ」
 のび太くんは進んでいるからね。と、ブーム仕掛人のドラえもんもさりげなく煽ります。

 完敗を認めるも羨ましくてならない3人は、家に駆け戻り、「3食おやつも全部コーラにして、とママに一生のお願いとして懇願(しずかちゃん)」、「コーラ10本一気のみして、ザブンザブンのお腹を抱え、サイダーを買いに行く(ジャイアン)」、「親のビールを6本一気に開栓(スネ夫)」等の暴走をはじめます。

 町の子供達が数を競う中、悠々と登場した希代の収集家のび太は、数が少ないものにこそ値打ちがあるんだよ、と、「王冠コレクション道」を説きます。

 そしてドラえもんがピンセットで(笑)とりだしたのは、「8月12日三河屋で売れたコラコーラ」。
 この日三河屋で売れたコラコーラはこれ一本!世界中探してもこれしかないんだ。10万円だしても、100万円だしても手に入らないんだよ。と、熱弁をふるうと、素直に瞠目する子供達。

王冠コレクション2.png

 ああおもしろい、と、密かに笑う二人でしたが、ママから、「駅前の切手屋が王冠屋になった」と聞かされたり、パパが「5月7日にスーパーで売れたスポライト」を2000円もしたんだぞ!と、達成感ある笑顔で買って帰ってきたのを見て、ビールスが予想以上に広範囲に広まってしまったことに気づき、にわかに恐怖を覚えます。

 はやく効き目が消えないかな……と、落ち着かない気持ちの二人。

 そこへ、恰幅と身なりのよい紳士が訪ねてきます。

「わたくし、王冠のコレクションをやってるものです」
 のび太に丁重に名刺を差し出した紳士。

王冠コレクション3.png

「素晴らしい王冠をお持ちだとか……是非、8月12日の三河屋の王冠を200万円で売ってください」
 金額にあっけにとられ、あんなもの売るわけには!と言う二人に、どうしてもほしいのです!と札束を差し出して粘る紳士。

「おねがい!おねがい!」
 畳に手をついて懇願する紳士を前に、顔を見合わせる二人。

王冠コレクション5.png

 「いいのかなあ……」
 我が物となった三河屋のコラコーラ王冠をピンセットでとり、歓喜の面持ちで眺めていた紳士。
 しかし、急に「!?」と真顔になると、
「……なんでこんなもん欲しがったんだろう」
 と首をかしげて、王冠をぽい捨て、札束を手に帰っていきます。

 あとには「ビールスのききめが消えたらしい」と、ほっとしたの2割、残念8割みたいな顔をしたのび太とドラえもんがのこされました。

王冠コレクション6.png

(完)


 何とは言いませんが、わからない人間にはまさしく王冠をつまむのび太のごとく「こんなもん集めてどうすんの」と思うものに高値と熱狂的コレクターがつくことがありますよね……。そういう現象を実に巧みに描いています。

 なお、この「流行性ネコシャクシビールス」は、過去にもファッションの流行に一石を投じるというイタズラで登場しており(コミックス6巻)、「ドラえもん」という作品それ自体は圧倒的クオリティと知名度を誇りながら、流行や物の価値評価については一定の距離をおいていることがわかります。

ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (6) (てんとう虫コミックス) -

 こういう奥深い世界観だからこそ、40年経過した今も、流行を超えて伝説として生き延びているのかもしれません。

 先日、贋作師の人々のお話をいくつかご紹介させていただきましたが、ああいう事件は、
「『形の美しさ面白さ』が好きなら、十分ご希望に沿うものを作ってあげたでしょ、だから買ったんでしょ、たしかに『8月12日三河屋でただ一本売れた』という話は嘘だけど、それって作品の美とは関係ないでしょ、え?美じゃないところの価値ってなになにそんなに重要?」というリクツのもとに、あの200万の紳士みたいな人のお財布開かせちゃうんだろうなぁと思い当たったので、書かせていただきました。

 よろしければ当ブログ以下の記事を併せてご覧になってみてください。


「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜 (NHK BS世界のドキュメンタリー)」 番組情報ご紹介
イギリスの贋作師ジョン・マイアット(NHK BS世界のドキュメンタリー 「贋作師 ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜」によせて) 
(※ネタバレ)「贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ」あらすじと感想(NHK BS世界のドキュメンタリー)


 読んでくださってありがとうございました。
 
posted by Palum. at 23:57| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年09月02日

ドラえもん誕生日記念「地底のドライ・ライト」ご紹介(※ネタバレ)(欲に目がくらんだドラえもん大暴走の回)


 明日9月3日はドラえもんの誕生日です(2112年9月3日うまれ)。

(なんでも連載開始時、対象読者とのび太が小学4年生で、当時の小学4年生男子の平均身長129.3pにちなんで決められたそうです。)
(「ドラえもん‘s ホームページ」内「ドラえもんの誕生日に秘められた秘密」を参照させていただきました。
http://www2.anakama.com/basicofdora_2.htm

 これを記念してか、NHK BSプレミアムで9月5日午前9時より、藤子・F・不二雄ワールド誕生までと先生ご自身のエピソードを紹介したドキュメンタリー「藤子・F・不二雄ふしぎ大百科」が再放送されます。

 藤子F先生の温かなお人柄が伝わるとても良い番組でしたので是非ご覧になってみてください。

(番組公式HP http://www4.nhk.or.jp/pcafe/x/2016-09-05/10/8964/2315603/

 今日はドラえもんを勝手にお祝いして、普段とても頼りになるドラえもんが、ドラやき愛ゆえに人が変わってしまった異色作、「地底のドライ・ライト」をご紹介させていただきます。
(なんでお祝いでそういう側面を扱うのさ)

てんとうむしコミックス33巻収録

ドラえもん (33) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (33) (てんとう虫コミックス) -

以下あらすじです。(ネタバレなのであらかじめご了承ください。)




 冬のある日。

 部屋の石油ストーブを「部屋のあちこちでストーブをつけておくなんてもったいない」と、ママに消されてしまったのび太とドラえもん。

 ケチだとぶーたれるのび太に、「うちの苦しい経済事情も、わかってあげなくちゃ」と物わかりのよすぎる発言をするドラえもん。
 図星でしたが、ママは、地球には石油がもうあまり残っていないから大事に使わないと、と、ごまかします。
 それを聞いたのび太は、石油がなくなったら乗り物は止まるし、電気は止まって暗くて寒くなって……とはげしく怯えます(すなお)。
 そこで、ドラえもんが22世紀の主要エネルギー資源、「ドライ・ライト」のかけらを見せてあげます。

 太陽光線のエネルギーをドライアイスみたいにかためたものだというそれは、非常に温かく、光をはなち、寒さに触れると、暑い場所でのドライアイスのように溶けてしまうという性質を持っていました。

 実は夏の間、地面に降り注ぐ日光をドライライトにして、その鉱脈をのび太家〜町内の地下に貯蔵していたドラえもん。保温容器に入れて、いるだけ出して使うことにします。(鉱脈への入り口も要密閉。)

 カイロにも、照明にもなり、やかんに入れればお湯を沸かせるという、非常に便利なこの燃料、なんてすばらしい!と感動したのび太は、ドライ・ライトを販売する会社の設立を持ち掛けます。

 やがては世界中に輸出して大儲け……と展望を語るのび太を、きみはすぐそんなこと考える!!と強くたしなめるドラえもん。

 ところが、「安くて便利なエネルギーが手に入ればみんなよろこぶよ。悪い?」ともっともらしいことを言われた挙句、ドライライトで儲ければドラやき食べ放題とそそのかされたドラえもん、「や、や、やろう。やろう!!」 とよだれをたらしてじたばたし、いそいそ訪問販売を開始します。

 100g100円で町内の人々に売り出そうとしましたが、高いからいらないとか、友達相手に金もうけしようなんて!とか言われて、まったく売れずに寒風の中、スゴスゴもどってきます。

 やっぱりこんなことで金儲けするのはよくない……と、思いなおそうとしていたドラえもんに対し、昼寝していたのび太(おい)、
「きみを社長にしよう(提案内に出てくるドラえもん社長、なぜかチョビひげスーツ姿)。ビルなんかすぐたつ(ドラ会社)。そうだ、社長室の横にドラやき食堂を作ろう。いつでもすきなだけドラやきが食べられるの」
と、のび太が提案しているコマに描かれているのは、ドラやきをどんぶり飯に乗せた「ドラどん」、熱々の鉄板で焼いた「ドラステーキ」、あん以外にもなにやら挟んである「ドラバーガー」、カレーソースをかけた「ドラカレー」、半分に切ったドラやきを美しく並べてシソ等を添えた「ドラさしみ」。

ドライ・ライト1.png

ドライ・ライト2.png

 「ドラさしみ」がギリで(シソとかいらないけど)、後は到底一般的に食べたいと思うようなラインナップではありませんが、ドラえもん的には理性が崩壊するほど魅力的なプランだったようで、メロメロ目&よだれダラダラになってしまった挙句、なにがなんでも売ってくる!!と飛び出していきます。

(めずらしく「のび太が見送り、ドラえもんが動く」構成なので、ドラえもんの後ろ姿が多い回。かわいい。〈しかし、のび太もワルよのォ〉)

ドライ・ライト5.png


 どうしたら売れるか考えた挙句、今日のところはサービスで見本をくばることにします。

 「この便利さがわかれば、買わずにはいられなくなるよ。石油だってそうなんだ。昔の人は石油なんか使わずにちゃ〜んと暮らしていた」
(現代人全員身につまされる台詞。)

 ジャイアンたちをはじめとして、まちの人々に「とにかく使ってみて、明日からは100グラム100円」と言いながら気前よくサンプルを配ったドラえもん。

 効果は絶大で、家に戻ってくるころにはもう、大勢の人々が見本をもらいにつめかけていました。

 「そんなに大人気か!?ドラやきは近い!!」
ハート目になりつつ、見本をくばるために鉱脈の入り口を開けていたのび太に
「あけはなすなと言ったろ。溶けちゃうんだ」
と、慌てて扉を閉めました。

 有料化は明日から、と言っていたのに、あまりの反響にサンプル配布を締め切ってしまったドラえもん。それでもいいから分けてと頼む町の人に、
「100グラム100……いや200円!!」
と、いきなり倍の値段を提示します。
 のび太が販売開始早々の値上げを止めようとしても「倍に売れば、ドラやきが倍買えるよ」と、耳を貸しません。

 300円……500円!!と訪れる人ごとにうなぎ上りに値を吊り上げ、「高い!」と町の人(空き地の隣にお住いの厳格なおじさん神成さん)とのび太に驚かれますが、
「高くていやなら、買わなきゃいいんだ。ドラやき…いやドライ・ライトはここにしかないんだから!」
と、横暴論理を振りかざします。

 「500円でいいから売ってくれ」
折れざるを得なかった神成さん。
「それみろそれみろ」
経営方針に余計な口をはさもうとしたのび太に振り向いたときのワッルイ顔ときたら、もはや我々が知っているドラえもんではありませんでした。

ドライ・ライト3.png

 すぐに掘りだしてきます、と、イソイソ鉱脈へ行ったドラえもん。一方、「ドラやきのことになると人がかわったようになる」……と、長い付き合いながら知らなかった友の一面に困惑するのび太。

 そうとは知らず、ドラえもんは、大いにゴキゲンでつるはしをふるって、「おまちどおさま〜」とカモの顧客にドライライトを持っていきました。

 部屋に戻ると、来年の夏はもっと広い場所でドッサリ作ろう、と、のび太に業務拡大を提案し、
「世界中へ輸出して、世界中のドラやきを輸入しよう。ウヒョヒョ。」(ドラえもんには悪いが、どら焼きはそんなにワールドワイドな食べ物ではない。)

ドライ・ライト4.png

 そう言いながら、畳一畳分ほどによだれを派手にたらしまくりますが、ふと気づくと、なんだか暑くなっていました。

 しまった!と庭に戻るドラえもん。

 浮かれて鉱脈の扉を閉め忘れてしまい、時すでに遅し、ドライライトが溶けて町中に流れでていました。

 空き地で半そでやノースリーブ姿で汗をかきながら遊ぶジャイアン、スネ夫、しずかちゃん。

 「みんな夏すがただよ。この暑さ当分続くだろうね」
 のび太のことばに、ひげまでうなだれきったドラえもんは「フニャ……」と声にならない声をもらすだけでした……。

 一般的な味覚ではあまり魅力を感じられない「ドライ・ライトドラ会社のドラやき食堂(『体脂肪計タニタの社員食堂』的なノリで)」や、「世界中のドラ焼き」などのドラえもんの暴走するドラやき愛と、それに起因する悪徳経営者っぷりが印象に残る回です。

体脂肪計タニタの社員食堂 ~500kcalのまんぷく定食~ -
体脂肪計タニタの社員食堂 ~500kcalのまんぷく定食~ -

 ふだんは性格いいんだけど、のび太が言うとおり、ドラやきがからむと豹変してしまうドラえもん。でも、そんな奥行きがあるからこそ、大人になった今でもドラえもんから目が離せません。

 いかにも子供向けにタダシイことしか言わないし、しないキャラだったら、子供時代が終わるとともに読むのもやめていただろうなとつくづく思います。(どんな話だったかもすぐ忘れちゃっただろうなあ。)

 こんなふうにエキセントリックだったり欲にかられちゃうところがあるから余計好きなんだと思います。

 この回が収録されている33巻、あの、「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」というジャイアンの歴史的名言も読めますし(「横取りジャイアンをこらしめよう」の回)、その他名作揃いなので是非お手にとってみてください。

 引き続き当ブログで折に触れドラえもんの魅力をご紹介させていただきますので、お立ち寄りいただければ幸いです。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 23:41| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月29日

ツチノコ追加情報(ドラえもん界ツチノコとは真逆の世界ご紹介)


ちびまる子ちゃん 田中さんの証言.png

 前回、「ドラえもんに登場するツチノコは激カワ」ということをご紹介させていただきましたが、本当は(?)かわいくない(らしい)ということがわかる、作品掲載時の1970年代近辺のツチノコ情報や本について追記させていただきたいと思います。

ツチノコ3.png
(藤子F先生デザインだけ、当時からなんでこんなにかわいいのか〈×大泉逸郎〉まったく謎。)

1,『ちびまるこちゃん』「まぼろしのツチノコ株式会社」(コミックス4巻収録)

ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -
ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -

 ツチノコブームに沸いていた当時、『小学3年生』に掲載されていた、田中さん(58歳・農業)の目撃証言を固く信じたまるちゃんが、デパートの懸賞金100万円を目当てに、親友たまちゃんとエキセントリックな学級委員丸尾君とともにツチノコ探しに出かけるというお話です。

「当時、ツチノコ発見者には懸賞金が贈られるイベントがあった」
「ツチノコには毒があり、飛ぶ(らしい)」
という情報を広く後世に知らしめた作品です。

ちびまる子ちゃん ツチノコの恐怖.png

(当時の子供たちが抱いたツチノコのイメージを象徴するコマ)

※今でも岐阜県東白川村「ツチノコフェスタ」、新潟県糸魚川「ツチノコ探検隊」といったイベントでは懸賞金制度は続いているそうです。
http://higashishirakawa.info/event.htm(ツチノコフェスタHP)
http://nunagawa.ne.jp/tsuchinoko/index.html(ツチノコ探検隊HP)

 「捕獲の暁には(丸尾)スエ夫、タマエ、モモコ(まるちゃん)の頭文字をとり、スタモツチノコ株式会社を経営しましょう」という丸尾君のネーミングセンス(社長丸尾君〈予定〉)や、どう考えてもあてになりそうにない「田中さん(58歳)」の証言を、家族からクラスメートに至るまで失笑されても、熱心によりどころとするまるちゃんの純真(含100万への欲望)が味わい深い名作回です。

ちびまる子ちゃん 見ず知らずの田中さん.png

 まるちゃんの奮起を促すべく、「アナタの業績次第ではあなたをわたしの秘書にしてあげてもよいですよ。ズバリ頑張るとよいでしょう」という丸尾君の提案に対する、「そんな条件でよーしがんばるぞ、と言うとでも思っているのであろうか」というナレーションや、100万を手に入れた後の夏休み、ヨットでカクテルを飲みながら「ヘーイ、カモンジョージーイ♪(誰)」と南国を満喫するビキニ姿のまるちゃんのコマ(妄想)も大人心に響きます。
(前者はドラえもんの至言「いい!いい!どうでもいい!」に通じる一脈のわびがある。)

 2、恐怖の子供向けオカルト図鑑情報

 おそらく丸尾君も「スタモツチノコ株式会社」社長(予定)として参照したのではないかと思われる、1970年代のオカルト系図鑑や児童向け雑誌の記事では、藤子F先生のきゃわゆいぷっくりツチノコと完全に対立する、「短い凶暴なコブラ的ヘビ(跳躍力つき)」の情報が紹介されていました。
 
 この手の本ときたら、仮名遣いこそひらがなを多用していますが、それ以外は話題から絵から子供向け配慮が限りなくゼロに近く、むしろ大人でもそれなりにグロ耐性がある人でないとキビシイものがあります。

 レトロ系ライター(※)初見健一さんのブログで紹介してくださっている、1970年代の怖いツチノコ(想像)が見られるページはコチラです。(こちらは週刊誌の挿絵のようですが、幼少時の私が見たのもこんな感じの絵でした。)

 キャプションは
「『なぜなに学習図鑑』の挿絵などで、ちびっ子たちの脳内に凶悪なトラウマを植えつけまくった石原豪人画によるツチノコ画。なんか、毒性120%増しって感じ。」
……そう、そうなんです。まさに「トラウマ」としか形容しようが無い……。
http://tokyoretro.web.fc2.com/tsuchinoko.html
(ブログ、「東京レトロスペクティブ」より〈ブログ自体レトロとサブカルを満喫できてとても楽しいです〉)

 なんでこんなに質感豊かに、恐ろしく描くのでしょうか。当時「藤子F版ツチノコ」しか知らなかった(そして「カーワイー、ツチノコカーワイー♪」と思っていた)私には大ショックでした。
(しかもなんかその本〈図書館蔵〉が古い&大人気だったらしくズタボロだったのが、触ると血や湿気がつきそうなくらいのリアル画と相まって禍々しかった。)

(※)初見健一……サブカルチャー研究家、著作家。今も現役で活躍する昭和レトロな品々やデザインを紹介してくださった心温まる名作「まだある」シリーズの作者でもある。自称「懐かしがり屋ライター」(粋なフレーズ)

まだある。文具・学校編 改訂版 (今でも買える“懐かしの昭和"カタログ) -
まだある。文具・学校編 改訂版 (今でも買える“懐かしの昭和"カタログ) -

まだある。キャラクター編 改訂版 (大空ポケット文庫) -
まだある。キャラクター編 改訂版 (大空ポケット文庫) -

(※2)石原豪人……1950年代から長期にわたり活躍したイラストレーター。映画看板画家からキャリアをスタートさせ、子供向け雑誌、劇画、新聞小説、ゲーム雑誌、(別名義で)SM雑誌やゲイ雑誌まで、依頼があればジャンルを問わずに手掛けた。

石原豪人 妖怪画集 -
石原豪人 妖怪画集 -

新装版 石原豪人---「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター (らんぷの本/マスコット) -
新装版 石原豪人---「エロス」と「怪奇」を描いたイラストレーター (らんぷの本/マスコット) -

石原豪人 (らんぷの本) -
石原豪人 (らんぷの本) -

 しかし、当時の挿絵画家の方々の絵は、いい意味でも悪い意味でも妥協や手抜きが一切感じられず、高い技術と、非常に広範囲な仕事ぶりに裏打ちされた、徹底的な絶望感やケレン味、秘めた妖艶さがあって、子供のときにはあれだけ怯えまくったのに、今となるとフラフラと吸い寄せられる魅力があります。

 (ツチノコの話題があるかは未確認ですが)初見さんがこの手の子供向け(だけど全然配慮が無い)情報紙面をまとめた「昭和ちびっこ怪奇画報」という本を出版されています。
(「ちびっこ」と「怪奇」の組み合わせが既に「ナンカチガウ」感満載。)

昭和ちびっこ怪奇画報 - ぼくらの知らない世界1960s-70s (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ) -
昭和ちびっこ怪奇画報 - ぼくらの知らない世界1960s-70s (青幻舎ビジュアル文庫シリーズ) -


 立ち読みだけさせていただきましたが、当時の紙面の未だ色あせぬインパクトと、今だから言いたくなる突っ込みどころが大量にあってすごく面白かったです。初見さんの的確な評も楽しい。

 でも「欲しいんだけど家の本棚にあると、幼少期の記憶がよみがえって怖い」と未だに購入を躊躇しています……。

 ところで、ウィキペディア記事によると、ドラえもん人気に影響され、台湾の若者たちは幼少期の私同様ツチノコを非常に可愛らしいものだと思っていらっしゃるそうです。

 世の中に架空とはいえこれほどイメージギャップのある存在は無いと思うので、海を隔ててドラえもんを好いてくださっている若い人々が、これからこの手のイメージを知って、私と似たようなショックを受けるのかもしれないと思うとなんかちょっとアンニュイになります。

 以上、ツチノコ追加情報でした。

 読んでくださってありがとうございました。

※(訂正)一時「ちびまるこちゃん」引用画像のさくらももこ先生のお名前を「さくらもここ」(汗)としてしまっていたので、おわびして訂正させていただきます。なんで間違えたんだろう……(汗2)大変申し訳ありませんでした。

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2016年08月28日

(※ネタバレ)「ツチノコみつけた!」(『ドラえもん』 脇役キャラトップスター登場の回)


ツチノコ1.png

 今回はドラえもんの「ツチノコみつけた」(コミックス9巻)の一部あらすじと周辺情報についてご紹介させていただきます。
(このキャラ大好きなんで、当ブログで、今まで何度か言及させていただいており、一部内容が重複しますが、今回はどんなストーリーなのかの概要をお伝えしたいと思います。)


 コミックス9巻。
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (9) (てんとう虫コミックス) -

 のび太が体の短い幻のヘビ「ツチノコ」の第一発見者になろうと奮闘する話です。

 以下あらすじです。結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。(一部仮名遣いを改めています。)

 「この世に生まれたからには、なにかひとつ足あとを残したい!野比のび太の名前を、歴史の一ページに残したい!それにはどうしたらいいか、真剣に考えよう」
 と真剣な面持ちで目を閉じたのび太、すぐに寝落ちしてしまいましたが(……)未来から帰ってきたドラえもんにたたき起こされます。
(ちなみに、のび太はわりとこの手の思索にふけりますが、寝落ちしなかった場合、思いつくのは「逆立ちで世界一周」とか「大仏様の手で世界一のあやとりを作る」等です。〈真面目に聞こうとしていたドラえもん、このアイディアを聞いた時点で無言で寝室である押し入れにもぐりこむ〉〈コミックス26巻「歩け歩け月までも」より〉)

ドラえもん (26) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (26) (てんとう虫コミックス) -


 見せられたのは未来の百科事典の「ツチノコ」の章。

「昔は単なる想像上の生物とされていたが1975年東京の剛田武さんによって発見され……」
なんと幻のヘビの第一発見者としてジャイアンが歴史に名を残していることが判明。

 それなのに君はのんきに昼寝なんかして……とお説教するドラえもんに対し、ジャイアンの先を越して自分が見つける!と勢いよく飛び出したのび太。

 空き地を捜索中、ジャイアンとスネ夫に、「なんか落とし物か?」と聞かれて、慌てるあまり「関係ない、あっちへ行け!シッシッ!」と失礼極まりない返事をしてしまった結果、尋問にかけられ、ツチノコ探しを白状させられてしまいます。

 しかし、ツチノコの実在を信じていないジャイアンとスネ夫は失笑して立ち去りました。

 ライバルが消えた!と喜ぶのび太。
「必ず見つけてやる。たとえ何か月かかろうと、発見するまであきらめないぞ」
と空き地捜索を再開。

 「あきらめた」
 「まるっきり根性がないんだから」
 舌の根も乾かぬうちにげんなり顔で部屋に戻ってきたのび太にあきれるドラえもん。

 こんな町中にいるなんておかしいよ、と、ふて寝してしまうのび太。しかし、ドラえもんが、未来ではすでに実在が確認され、ペット化されている(笑)ツチノコを連れてきて発見者のふりをすることを思いつきます。

 さっそく、ツチノコブームが起きている2040年代へ行く二人。

 公園では人々に連れられ、たくさんのツチノコが集まっていました。
 
 ヘビがいっぱいいる公園なんてイヤダと思う方もいらっしゃるでしょうが、このツチノコは「オシシ仮面」「宇宙人ハルバルさん」など個性的なキャラを世に送り出した藤子F先生のデザインセンスがさく裂、顔も体ももっちりぷっくりしてごまつぶのような罪の無い目をして、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ!カワイイです。へびってか、オモチの妖精って感じ。

 世間では毒蛇との噂もあるツチノコですが、藤子Fワールドのツチノコは性格も可愛らしくて、おとなしくリードにつながれ、お洋服や赤ちゃん帽子を身に着け、呼ばれると喜んで人の後について歩き、直立してあーんと口をあけておやつをもらい、イイコイイコされるとニコニコ顔で短い尻尾をぴこぴこ振ります。(悩殺)

ツチノコ2.png

ツチノコ3.png

ツチノコ4.png

 ちなみに大福顔の口元にヒゲ?があるタイプと無いタイプがいます。
(大人と子供の違いでしょうか。蛇にヒゲというのが考えてみればフシギですが、それぞれ可愛い。)

 ペットショップでツチノコを入手しようとするも、未来のお金が無かったというミスがありましたが、公園で捨てられかけていたツチノコ(お巡りさんが「ノラツチノコ(←笑)が増える」と無責任な飼い主を注意していた。)を引き取り、喜びいさんで現代に戻る二人。

ツチノコ5.png

 さっそくマスコミに連絡しましたが、記者の人たちが来る前にツチノコがケージから逃げだしてしまいました。

 慌てて探しに行った二人、そこに「あっ!ツチノコ!!」という叫び声。

 興奮した様子のジャイアンの手につかまれ無心にぶら下がるツチノコ。

 ちょうど集まっていたマスコミに取り囲まれ、「僕が見つけたんです!偶然この空き地で!!」と、取材に答えるジャイアンを、二人は渋い顔で見つめるしかできませんでした……。

(完)

 この可愛らしいツチノコは、後年さまざまな形で商品化され、今やドラえもんグッズの常連ともいえる存在です。


ドラえもん ツチノコ のびのびパスケース ぬいぐるみ -
ドラえもん ツチノコ のびのびパスケース ぬいぐるみ -


ドラえもん ツチノコ ティッシュボックスカバー -
ドラえもん ツチノコ ティッシュボックスカバー -

 藤子F不二雄ミュージアムHP内のツチノコグッズ記事はコチラ。
http://fujiko-museum.com/blog/?p=8550/
(ミュージアム公式ブログ「ツチノコ」グッズが大人気!2012年12月28日より)


 しかし、実はツチノコって1970年代のオカルトブームの中では、「体の短い飛ぶ猛毒ヘビ」という存在として「発見者に贈られる懸賞金は欲しいが怖い」と当時の少年少女の間では認識されていたそうです。

 本物の(?)ツチノコのイメージで作られた、フィギュア界の名門、海洋堂さんのツチノコ。
(跳躍して口をカッと開き、攻撃を加える姿〈毒ありげ〉)

カプセルQミュージアム UMA大全 世界の未確認生物 [4.ツチノコ](単品) -
カプセルQミュージアム UMA大全 世界の未確認生物 [4.ツチノコ](単品) -

 当時の「藤子F先生版でないほうのツチノコ」の恐怖イメージについては「ちびまる子ちゃん」(りぼんコミックス4巻)で詳しく描かれています。(こちらも名作です。)

ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -
ちびまる子ちゃん (4) (りぼんマスコットコミックス (472)) -

 私は藤子F先生のツチノコしか知らなかったので、後年、図書館で、子供向けオカルト図鑑(※)的なものを見て、ツチノコのカワイイイメージが大崩壊してショックを受けた記憶があります。(海洋堂さんのフィギュア同様、短いコブラ的なものが跳躍して人に襲い掛かる図だったような記憶が……。)
(※)昔そういう絵も話題もまったく子供向けじゃない、異様に緻密で高い画力でトラウマページを繰り広げる恐怖図鑑があった。

 怖いツチノコのイメージ真っ盛りの中で、藤子F先生がどうしてツチノコをあんなに可愛らしくて人懐こい生き物として描かれたのかは謎ですが、夢と温かみに溢れた藤子Fワールドを象徴するようなエピソードです。
 
 是非コミックスをお手にとってみてください。

 次回記事ではツチノコ追加情報として上記の「ちびまる子ちゃん」の作品と、子供向けオカルト図鑑についてご紹介させていただきます。
 
 読んでくださってありがとうございました。

※(補足)今回Seesaaのネットワーク障害で8月28日中の更新ができませんでしたが、100日連続記事更新を目指している最中なので、これを28日分記事とさせていただきます。29日記事は夜更新予定です。よろしければまたご覧ください。
http://trouble.seesaa.net/article/441431247.html(障害報告)
posted by Palum. at 21:00| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月27日

(※ネタバレ)「未知とのそうぐう機」(『ドラえもん』 コワカワイイ宇宙人ハルバルさんと秀逸なオチ)



未知とのそうぐう機1.png

 今回は「未知とのそうぐう機」(コミックス17巻)の一部あらすじと幻のグッズ情報についてご紹介させていただきます。

 コミックス17巻。(前回ご紹介「驚音波発振機」も収録)

ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -

 宇宙人を呼ぶ電波を発するひみつ道具「未知とのそうぐう機」をのび太が勝手にいじったために、家に宇宙人が訪ねてきてしまうというお話です。

 ドラえもんから「触るな!」ときつく言われただけで(見ていただけなのに、非常に感じ悪く注意されたので、あてつけに触るのび太。ドラえもんもしまっときゃいいのに……)、機械の説明をしてもらわなかったので、単に「UFOが見られる機械」と思い込んで面白がって何度もボタンを押してしまいますが、繰り返すうちにそうぐう機の電波発信源をつきとめた宇宙人ハルバルさん(ハルカ星在住)がのび太の部屋にUFOで乗りこんできます。

 アザラシとおじさんと古風なオバケをミックスしたようなコワカワイイハルバルさん。(17巻表紙に登場)

 異変に気付いたドラえもんが「あー!!やってくれちゃって!!」と。部屋に飛び込んできたとき、のび太はハルバルさんの「NMwwNwW」みたいな喋りに対し、「アハハなんか言っている」とのんきにかまえていましたが、ドラえもんは、のび太を部屋の外に連れ出し、
「態度に気を付けたほうがいい、なにしろ何百光年という遠い星からはるばるくるんだからな。用もないのに気やすく呼ぶなとカンカンに怒って、宇宙戦争になりかけたことさえあるんだぞ」
 と深刻な表情で耳打ちします。

 ホンヤクコンニャクを食べたドラえもん経由でハルバルさんのお話を聞いたところ、

「いいたかないけど地球までの燃料費が二千万円もかかった。ごはんの最中に呼び出されたので、はやく用事を言ってくれ」とのこと。

(まったく個人的な話ですが、子供のときこれ読んではじめて「いいたかないけど」という言い回しを学び、以来これに類するフレーズを聴くたびハルバルさんを思い出すようになりました。児童向け漫画のわりに渋いセリフ……。)

 もちろん用なんかなかったので慌てるのび太。

 様子を察したのかハルバルさんはこうつけ加えます。

「まさか面白半分じゃあるまいな。話は変わるがハルカ星の連合艦隊はこれまでの宇宙戦争で一度も負けたことがないんだ」

 震えあがりながらも、仕方なく食事をごちそうしてごきげんをとってごまかして帰ってもらうことにした二人。
(のび太にコーラをお酌されるハルバルさんの片肘をついたポーズがいかにも接待され中のおじさんっぽい。)

未知とのそうぐう機2.png

 地球の食べ物はうまい、と、はじめて眉間のしわを消して笑顔をみせたハルバルさん(可愛い)でしたが、地球の平和を守るためにおかわりをお出ししようとしたのび太を見とがめたママ、犬か猫でも拾ってきたのかと追及した挙句、ハルバルさんを見て、
「まあっ、アザラシなんかつれこんで……。シッ、シッ」
といきなりほうきでハルバルさんの後頭部を殴り倒します。

未知とのそうぐう機3.png

未知とのそうぐう機4.png

 ドラえもんと同居しているから変わった出来事には慣れているのかもしれませんが、家にアザラシ(違うけど)がいても驚かず、しかも、いきなり派手に殴るなんてママもなかなかスゴイ感性の持ち主です。

 当然激怒したハルバルさん、宇宙艦隊で地球へ攻め寄せる!と言い残してUFOに乗り込もうとします。

 足(ヒレ?)にすがって止めようとするも、衝撃波を受けてふりほどかれてしまう二人。

 「もうだめ!地球はほろびるんだ、君のせいだぞ!」
 「そ、そんな……」
 なすすべなくへたりこむ二人。

 しかし、UFOに向かいかけたハルバルさんが畳に転がるあるものを見て立ち止まります。
 前ヒレでそれを拾い上げると、鼻息荒く、なにやら「NMwwNwW!!」とまくし立てているハルバルさん。
 「ビー玉を見て騒いでいる」
 
 実はハルカ星ではガラスができず、地球のダイヤよりも値打ちがあるとのこと。

 それを聞いたのび太は箱一杯のビー玉を差し出し、
「地球とハルカ星の友情のしるしとして、ビー玉を贈りたいと思って呼んだのです」
 と笑顔で後付けの用事を伝えました。

未知とのそうぐう機5.png

 ハートを一杯まき散らして前ヒレでのび太を熱烈に抱擁したハルバルさん、大喜びで帰宅。

未知とのそうぐう機6.png

「ついに地球は滅亡から救われたのであった!」
 安堵して抱き合うドラえもんとのび太を見て、つい先ほど、息子との共同作業で地球を滅ぼしかけたとも知らないママが、
「テレビの観すぎです」
と、口を「3」にしてあきれていました。

 (完)

 さて、ハルバルさんの交通費片道2000万円は大いなる利益をもたらしたというのはあの熱烈ハグでよくわかりましたが、具体的にハルバルさんはどのくらいうれしかったのかということがちょっと知りたくなりました。

 で、ビー玉の大きさから、きわめていい加減に、ハルカ星のビー玉の価値を予想してみました。
 (寝不足とか具合悪いとか日記回に書いておきながらこういうことには労を惜しまない人)

 一般的なビー玉(ラムネに入っている大きさ)は直径約17oだそうです。
(ウィキペディア記事「ビー玉」より)
 
 (※のび太の手との対比ではもう少し大粒のビー玉にも見えますが一応標準的なサイズとします。)

未知とのそうぐう機7.png

 複雑にカットされているので正確な体積は不明ですが、これに近い大きさのダイヤモンドは約10カラット程度と思われます。(ハリウッドセレブの指輪の記事で10カラットなら親指の爪大とあったので)

(参照:【イタすぎるセレブ達】ジェニファー・アニストンの婚約指輪、関節より大きな10カラット超のダイヤが不評 
http://japan.techinsight.jp/2012/10/yokote2012101017270.html

(本当は1カラット=200mgと重さで換算するそうですが、ダイヤとガラスでは重さが違うので、ここではおおまかな一粒の大きさで考えさせていただきます。)

 上記記事のハリウッドセレブの10カラットの指輪で、石のランクはさほどでもない(らしい)指輪が査定8000万とあるので、カット、透明度、カラーが最高位のダイヤモンドの裸石(ルース ※カット済の粒のこと)以上の価値がビー玉にあるとすると、一粒一億円程度。
(参照:ウィキペディア記事ダイヤモンド)

 箱の中に見えるビー玉は約15個、二段詰まっていると考えると合計30億円。

 しかし、ダイヤと違ってその星に存在もしない物質となると、さらに高値である可能性があります。ダイヤでもピンクダイヤ等希少性があると数倍〜数十倍の値がつくので。
(それにしても、ハルバルさんきっかけで、かつてないほどダイヤ情報を読むとは思わなかった。) 

 なんとなくハルバルさんは星でそれなりの立場のアザラ…方なのかなという印象も受けますが(逆らえない呼び出し電波を受けたとはいえ、すぐに片道2000万の交通費を出しているところとか、連合艦隊とコネがありそうなところとか、接待され慣れた感じのコーラお酌されポーズとか)、のび太のはからいで、一瞬にして超富裕層資産に匹敵する宝石を得たわけですから、そりゃほうきの一撃くらいチャラにしますよね。
 
 ところでこのコワカワイイハルバルさん、2007年に一度フィギュアになったみたいですが(ビー玉つき〈大笑〉)今は特にグッズ化されていないようです。

VCD 1/6計画限定 ハルバル メディコム・トイ -
VCD 1/6計画限定 ハルバル メディコム・トイ -

 地球を滅亡させようとはしましたが、よく見るとマニアックドラキャラの大スター「ツチノコ」(毒すら持っていると噂されるUMAヘビなのに、藤子F先生のデザインにかかるとおもちみたいで人懐こい生き物に変身。こちらはあまりの可愛さにグッズ多数。)の次くらいに可愛いと思うので、またなんかグッズ化されたら見てみたいです。

UDF ツチノコ (警戒色&アルビノセット)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF ツチノコ (警戒色&アルビノセット)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -


 藤子F不二雄ミュージアムでハルバルさんディスプレイについてご紹介なさっている記事はコチラです。巨万の富(ビー玉)に囲まれて幸せそう。
http://fujiko-museum.com/blog/?p=10608/

 是非、原作をお手に取って、この絶妙なデザインのハルバルさんとオチ(そしてママの冷静すぎる反応)をお楽しみください。

 読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 18:13| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月26日

(※ネタバレ)「あやうし!ライオン仮面」(『ドラえもん』 超マニアックキャラがまさかの人気)


ライオン仮面5.png

 今回は「あやうし!ライオン仮面」(コミックス3巻)のあらすじと、ここに登場するキャラのこぼれ話をご紹介させていただきます。

コミックス3巻。
(泣ける「ペロ生きかえって!」、ドタバタ恋愛劇(?)「ああ、好き好き好き!」が読めるおすすめ巻。〈結局全巻好きなんだろ〉)

ドラえもん (3) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (3) (てんとう虫コミックス) -


 以下あらすじです。(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)一部仮名遣いを変更させていただいています。


 「ワハハハハ、ライオン仮面。もはやのがれることはできんぞ!」
 ヒーローライオン仮面が、少女とともに悪の組織に取り囲まれ、絶対絶命のピンチに。

ライオン仮面1.png

 「ワーッ!!」
 一斉にレーザーガンで撃たれ、叫び声をあげるライオン仮面。

ライオン仮面2.png
 (10月号につづく)

 「いいところで切れちゃうんだいつも」
「ライオン仮面」を読んでいたのび太とドラえもん。
「10月号ではどうやって助かるんだろう」
 どう考えても助かりそうにないけれど、主人公が死んじゃおしまいだから、きっとなんとかするんだろう。
 でもその展開が知りたい。
 「そうだ!!本人に聞けばいいんだ」
と、ご近所にお住いの作者フニャコフニャ夫(笑)の家へ直接訪ねていくドラえもん。
(※初期ドラえもんは後ののび太の保護者っぽい性格とやや異なり、率先して動く傾向があります。)

 フニャコ先生は売れっ子らしく、家には数人の編集者が不機嫌そうに原稿待機中。

 それなのに、ライオン仮面の続きをさっぱり思いつけずに机に向かって途方に暮れているフニャコ先生。
(細身でお人柄のにじみ出た穏やかなお顔のリアル藤子F先生と異なり、ぽっちゃり体形で不機嫌そうな顔つきですが、フニャコ先生もF先生のトレードマーク、ベレー帽をかぶっています。)
 「あれからどうして助けていのか、見当もつかん」
 そんなことはじめに考えておくべきだと文句を言う担当さんと、あのとき君がせきたてたからだと言い返すフニャコ先生。

 大人同士の責任のなすり合いを見て、本人にもわかっていないんじゃしょうがないと家を出るドラえもん。

 それでも続きが知りたいので、タイムマシンで来月に行って発売済みの10月号を立ち読みします。

 ところが半分しか読んでいないうちに、古風にはたきで本屋のご主人に追い払われるドラえもん。

 今月に戻ってくると、空き地でみんなにライオン仮面の続きについて話しはじめます。

 「あれからね、場面が変わるんだ。ライオン仮面の弟のオシシ仮面が登場する」
 兄を追ってくらやみ団本部へ乗り込んでいく!けど、あとは秘密。
 と、話を終わらせようとした瞬間、「きみっ、ぜひその先を教えてくれたまえ!!」と土管から飛び出してドラえもんにすがりつくフニャコ先生。

 「あんたの描いた漫画だよ」
 「まだ描いてないんだ」
 追いかけっこの末押し問答をする二人を、担当さんが追いかけてきます。

 気分を変えて土管の中で考えていたんだ(珍しい思索スペース)、と言い訳をするフニャコ先生を、早くしてくれないと間に合わない、と急かす担当さん。

 早く続きを教えて!!と先生に激しく揺さぶられ、しかたなくもう一度来月に行って続きを買ってくることになりました。

 担当さんを部屋から追い出し、来月号を読み始めるフニャコ先生。
「死んだはずのライオン仮面をどうやって助ける?」
「それが、オシシ仮面もつかまるよ」

 ドラえもんの言葉通り、紙面の中には、縛り上げられて吊るされ、悪の組織にとりかこまれているオシシ仮面。

ライオン仮面3.png

(獅子舞の面をかぶり、うずまき模様風呂敷風マント(?)姿。アメコミヒーローを思わせる二枚目マッチョの兄と自身を比べてなにか思うところがないのかが、どうしても気にかかる。)

「グエーッ!!」という絶叫とともに、炎に包まれるオシシ仮面。

ライオン仮面4.png

(11月号に続く)

「なんだこりゃ?こんな終わらせ方じゃあ、あとが困るじゃないか!」
「描いたのあんたでしょ」
フニャコ先生の逆ギレに唇が「3」になるドラえもん。

「あとのことは来月号までに考えようというわけか。」
「そうらしいね」
「なんという無責任なわしだ!!」
「ぼくは知らないよ」

 そうは言っても続きが気になって仕方がないフニャコ先生のために11月号を買いに行くドラえもん。

 「場面が変わって、オシシ仮面のいとこのオカメ仮面が出てる」(もはや「獅子」ですらない。)

 ここで「原稿まだですかっ!」と担当さんに怒鳴られ、12月号に物凄い不安を残しながらも、丸写しをはじめるフニャコ先生。

 その他雑誌の担当者も我慢できずに急かしはじめ、パニックを起こしたフニャコ先生は、ドラえもんにすべての雑誌の来月号を買ってこさせます。

 ドラえもんが戻ってくると、机の前で過労とストレスで倒れていた先生。

 「きみ、その雑誌を見て描き写してくれ」
そう言って強引に仮眠に入ったフニャコ先生を背に、とりあえずベレー帽をかぶらされ、一生懸命模写をするドラえもん。
 「ぼくのうつしたまんががのって、この雑誌がでるとすると……、まんがのほんとうの作者はだれだろう??」

(完)

 読者に期待させておいて難しい物語構成は来月に先送りする大人の事情とか、その渦中で「ライオン仮面」→「オシシ仮面」→「オカメ仮面」と、どんどんキャラ設定からしてシュールになるところとか、そんな自身の仕事ぶりに対するフニャコ先生の「なんという無責任なわしだ!!」という一部大人の深い共感を呼ぶ(含僕)セリフが見所です。

この作品、発表より約40年の月日を経て(1971年「小学4年生」掲載)現実世界で後日談が発生します。

1、2008年「オシシ仮面フィギュア化」
たった二コマしか登場しない、しばりあげられて「グエーッ!!」と叫ぶだけのこのキャラが、フィギュア化されて発売。

しかも、捕まって吊り下げられている姿の「通常バージョン」と、炎に包まれている「グエーッ!!」姿の「バーニングバージョン(大笑)」の二種類。

UDF オシシ仮面 (ノーマルVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF オシシ仮面 (ノーマルVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -


UDF オシシ仮面 (バーニングVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF オシシ仮面 (バーニングVer.)(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
アマゾンの購入者レビューには、「友人の誕生日プレゼント用に購入しました」、「会社の机に飾っています」等、原作ファンの方たちのお喜びの声が届いていました。
ちなみに二個セットで買った方が多い模様です。

 (補足、このフィギュアを作られた「メディコム・トイ」様、かの「きれいなジャイアン」等、原作マニア心をくすぐるセレクトのフィギュアを多く作っておいでて、商品紹介ページと愛に溢れた購入者レビューを見ているだけで楽しいです。なお、つい先日〈2016年8月24日〉「美男子のび太(コミックス8巻「消しゴムでのっぺらぼう」)」「カッコイイドラえもん(コミックス2巻「うそつき鏡」)の普及版が発売されたそうです。当ブログの同原作ご紹介記事はコチラです。)

UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

2、「オシシ仮面Lineスタンプ化」

藤子・F・不二雄プロ制作の公式高品質カラー作品。
「ドラえもん(泣いて笑って)」から購入可能。「グエーッ!!」という気持ちを表明したいときにおススメです。

(結局いつ使うんだと思いましたが、ご紹介者様いわく、「大ピンチを表すときに使えます」とのことです。なるほど……)

(参照:Neverまとめ 【ジワジワくる】よく使う?「LINEスタンプ」10選 まとめ作成者:eight-threeさん http://matome.naver.jp/odai/2143990485605740001) 

 この文を書くにあたり、ウィキペディア記事も参考にさせていただきましたが、こちらも非常にこまやかなウィットに飛んだ名文で、みなさんのオシシ仮面愛に胸が熱くなります。

 なんでよりによってこのキャラにこれほどの人気が発生するのかとやや不思議ですが、あの前代未聞のキャラデザインと(兄との差異と)、「グエーッ!!」のインパクトの前には理屈など無力です。

 フィギュア化情報を得てパソコンの前でギャハハと笑った僕もまた、心のどこかで長年オシシ仮面を愛していたのですから。

 たった2コマを約40年間ファンの記憶に刻み付けたフニャコ……いや藤子F先生はやはり素晴らしい。

 ときにはフニャコ先生同様ご苦労をして、土管にこもったこともあったかもしれませんが(それはないんじゃない?)先生の努力の結晶は、こうして不滅のものとして、2コマであってすら多くの方々を魅了し続けています。(オリンピック閉会式にもドラえもんが出てきてくれてうれしかったなあ……。)

 すぐれた作品構成、鮮烈なキャラデザインとギャグセンス、そしてファンの方々の不滅の愛情に心なごむ名作です。是非お手にとってみてください。

 読んでくださってありがとうございました。



posted by Palum. at 06:10| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月25日

(※ネタバレ)ドラえもん「ホンワカキャップ」(飲めばホンワカ、でも飲みすぎると……)

ホンワカキャップ.png

本日はドラえもんのひみつ道具「ホンワカキャップ」(コミックス30巻収録)についてご紹介させていただきます。

(コミックス30巻 表紙でドラえもんが持っているのがホンワカキャップです。〈※この巻、前回ご紹介の「ねむりの天才のび太」も入っていておススメです〉)

ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -

 これを瓶につけて注いだ液体はホンワカ放射能なるものを帯びて、アルコールによく似たホンワカした気分になれるというひみつ道具です。

 なんと素晴らしい、と、思ったら、酔いすぎると危険というところまでアルコールに似ていて、大人の飲み会そっくりのトラブルが起こってしまいます。

 以下あらすじです。
(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)
一部仮名遣いを変更させていただいています。

 自慢の切手コレクションを、「一緒に切手を集め始めて、おまえばっかりたまるのはどういうわけだ」と逆ギレされたジャイアンと公平に分ける(=大量に持っていかれる)ことになったスネ夫。

 この件についてのび太に愚痴ったら「見せびらかしたりするからだよアハハ」とノー同情だったのに腹を立て、「他人の不幸を笑うな!!」と膝を蹴っ飛ばしてむしゃくしゃ顔で家に帰ります。

 口を滑らせたとはいえ、いきなり蹴られたのび太も非常に面白くない思いで家に帰ると、パパがお友達と家呑み中でした。
「いやなことはみんな忘れて楽しくやろうじゃないの」

 「大人はいいよな。お酒飲んで良い気持ちになれて」
不公平だと嘆くのび太に、ドラえもんが「ホンワカキャップ」を出してくれます。

 ジュースにキャップを付けて注いだものを飲んでみると、ホワ〜といい気持ちになるのび太。

 一口だったのですぐ覚めましたが、これはいい、と、キャップを持ってドラえもんと一緒にしずかちゃんの家に遊びに行きます。

 ホームサイズのコーラでさっそく家呑み開始。

 真っ赤な顔で、飲めや歌えの楽しい時間を過ごします。(しずかちゃんもちゃんと加わってる。)

 楽しかったけど飲みすぎたな、と、千鳥足で帰る途中、ジャイアンに出くわした二人は、
「いいものやるぞ!!いいからとっとけって」
と、ホンワカキャップを渡してしまいますが、酔いが醒めてから半べそで大後悔。

 「宴会やるからコーラ持って俺んちへ来い」
塾へ行こうとしていたのにそんなことをジャイアンに言われたスネ夫は断ろうとしましたが、
「俺とじゃ飲めねえってのか!?」
と嫌な先輩みたいな脅しをかけられ、仕方なしにコーラを一ケース持ってジャイアンの家に行きます。

 「じゃ、かる〜く一杯……」
「せこいこといわねえでガバガバやれ!」
(注、小学生の発言)

 しかし、一杯飲んだらいい気分になったスネ夫は、喜んでグラスを重ねていきます。
「もりあがったところで、カラオケといこう。」
「いよっ、待ってました!!」
 完全にどこかで見た光景です。

ホンワカキャップ2.png

 ジャイアンの家をゆるがす、あの有名な歌声。

 いつもならじっと耐えるスネ夫ですが、その日は違いました。
 しだいに歌を聴く表情が険しくなっていったかと思うと、コーラを手酌でガバっと飲み干し、吐き捨てるように言いました。
「ケッ!やめろやめろ、へたくそ」
「今なんと言った!?」
激怒するジャイアンの顔に激しくあびせかけられたコーラ。
「へたくそをへたくそといってなにが悪いへたくそ!!」

ホンワカキャップ3.png

 さらに、ジャイアンにかけたから空になったグラスをさしだし、
「ほれ、つげよ!!」
と酌を要求するスネ夫。

 「お前コーラぐせが悪いな……」
完全に圧倒されて、コーラをしたたらせながら言われたとおりにするジャイアン。
そろそろ塾へ行かなくていいの?と愛想笑いをしますが、るせえ!もっとつげ!!と命じられ、もうない、と答えた瞬間コーラ瓶が飛んできます。
「買ってこい!!」

ホンワカキャップ4.png

 もはや瓶から直飲みしながら、空瓶のいくつも転がる部屋にあぐらをかき、
「でっかい顔しやがって!!てやんでえ!!みんな泣かされてんだぞ。お前なんか町の公害だぞ!!バーロー」
と、こめかみに青筋を立てながら、日ごろのうっぷんをぶつけるスネ夫に対し、次第にうなだれるジャイアン。

 「グス……なにもそんなに……言わなくても……」
 そしてシャツで顔を覆い、肩を震わせ、さめざめと泣きだします。
「心の中では……みんなに悪いと……あたし、つらい!」

ホンワカキャップ5.png

 何故かオネエ化したジャイアン、その胸ぐらを容赦なく掴んだスネ夫、
「悪いと思ったら切手返せ!!」
と恫喝。
「返すわよ!!ほかの人のおもちゃも本もみーんな返すわよ!!(泣)」

ホンワカキャップ6.png

 家の前でホンワカキャップを手にしたドラえもんと、数冊の本を抱えるのび太。
「さっさと次の家へまわれ!!」
 巨大なふろしきを背負い、涙を浮かべるジャイアンの尻を蹴って追い立てるスネ夫を見て、のび太とドラえもんは
「さめた後が思いやられるなァ」
と、つぶやきます。

 大人の知人に、ドラえもんって大人になってから読むと違った面白さがあるんだよ、と伝えたいとき、一番例示に向いている回かもしれません。

 (絵的なインパクトとしては、ひみつ道具に煽られたしずかちゃんがとんでもない行動に出る「腹話ロボット」や、現代アートをもしのぐシュールさの「からだの部品とりかえっこ」が良いと思いますが。)

 ジャイアンのホンワカハラスメント(≒アルコールハラスメント)と、スネ夫の前代未聞の豹変ぶり(酔ってからの表情や台詞がやたら生々しい)が、大人心にツボです。

 彼らが口にしたのはあくまでホンワカ放射能ですが、私同様アルコールのもたらすいい気分につい惹かれてしまう方も、その先に待ち受けている危険を心に刻みたいとき、あのジャイアンにコーラを浴びせかけるスネ夫を思い出してみるといいかもしれません。

 もう数作、ドラえもん作品についての記事を書かせていただきますので、よろしければおつきあいください。

 読んでくださってありがとうございました。
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2016年08月23日

(※ネタバレ)ドラえもん「驚音波発振機」(ジャイアンの歌による害虫・ネズミ駆除)

 
 今日もドラえもんの話題です。(好きなんで……。)

 害虫に悩まされるこの時期、「あんなこといいな、できたらいいな」と言うにはリスクが高いけれど、しかし駆除効果抜群のひみつ道具のお話です。(コミックス17巻収録)

ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (17) (てんとう虫コミックス) -


(以下、結末までネタバレですのであらかじめご了承ください)一部仮名遣いをひらがなから漢字に一部改めさせていただいています。

 冒頭、不機嫌そうに町を歩くジャイアン。
 
 新曲を作ったのに(作ったから)、突如子供たちが町から姿を消したのでストレスが溜まっています。

 ドラえもんに何とかしてもらおうとジャイアンから身を隠しながら逃げ帰ってきたのび太でしたが、家から飛び出してきたドラえもんと正面衝突します。

 ジャイアンのことを話そうとしてもテンパってて聞きもしないドラえもん。家でドラえもんの天敵、ネズミに出くわしてしまったのです。
「おおそうだ!爆弾で家もろともふっとばしてやれ!」

驚音波発振機1.png

 なんて物市販してんだ未来デパート。
 
 ドラえもんをなだめて、未来のネズミ取り機を使えば良い、とアドバイスをするのび太。

 浮かない顔で、「驚音波発振式ネズミ・ゴキブリ・南京虫・家ダニ・シロアリ退治機(※)」を出すドラえもん。(※全ドラえもんのひみつ道具の中で最長の名前を持つそうです。ウィキペディアより。)
 超音波で害虫、害獣を駆除する機械を発展させたものだけれど、その驚音波のテープは無くしてしまって手元にない状態。

 するとのび太が、ジャイアンの新曲を使うことを思いつきます。
 のび太の提案に瞠目するドラえもん。
「そうか!!歌わせてこの機械にかけて、音波の中でも特に有毒な部分を取り出し、うんと強めれば……」
 ひどいこと言ってる。
驚音波発振機2.png

 ジャイアンに、是非新曲を家で聴かせてほしいと頼みに行く二人。

 「心の友よ!!」と感涙するジャイアンを連れて戻ってきますが、有毒音波を流すにあたりママを避難させなければなりません。(ジャイアンの歌≧バルサン)

 しかし、なんのことかわからないママからぴしゃりと断られてしまったので、やむをえずタケコプターを付けてはるか上空へ強制退避させることに。
「ママの命をまもるためしかたがなかった」

(地味に笑いを誘う一コマ)
驚音波発信機3.png

 ひそかに耳栓をして、度胸を決めると、部屋にある驚音波発振機については「歌の力を強める機械」とボヤかし、歌い始めてもらう二人。

 耳栓すらも貫通する驚音波に耐えていると、押し入れからゴキブリがよろけ出てきて、力尽きて息絶えます。

 「すごいすごいその調子!」「もっともっと」
二人の喝采に気を良くして歌いまくるジャイアン、やがて、窓や壁にひびが走ります。

 そして激しく揺れきしむ天井。

 敵とはいえ、ネズミたちの阿鼻叫喚に、

 「ものすごい悲鳴!この世のものとも思えない」
と戦慄して身を寄せ合うドラえもんとのび太。

驚音波発信機4.png

 劇場の大シャンデリアを揺らしたという伝説のオペラ歌手マリア・カラスに匹敵するほどの超絶声量です。(質はともかく。)

 「あっ、見ろ!」
窓からネズミ一家が命からがら逃げ出してゆくのを確認したドラえもんは
「よかった!!」
とのび太にしがみついて泣き崩れます。

「喜んでくれて俺も嬉しい」
食い違ったまま満足げに汗をぬぐうジャイアン。

驚音波発信機5.png

 数日後。

「ネズミ・ゴキブリ・南京虫・家ダニ・白アリ!! 全滅させます。料金――百円 のび太消毒社」
部屋に散らばるチラシを見て大慌てするドラえもん。

 のび太はしずかちゃんからの白アリ駆除依頼電話応対中でした。
「うんすぐ行く。あぶないから誰も家に残っていちゃいけないよ」
 そしてすぐにジャイアンに電話。
「やあジャイアン。またきみの芸術にひたりたくなったんだけど……」(←笑)
 今日の会場はしずかちゃんの家だよ、とワルイ顔で電話を切るのび太に、ドラえもんは「ばれたら殺されるぞ」と警告します。
 方法は秘密にしてあるんだからばれっこない、と、聞き入れようとしないのび太。

 「ジャイアンもよろこぶ。しずちゃんもよろこぶ。ぼくはもうかる。こんないいことやめられないや」
……とドラえもんの心配をよそに、笑顔で驚音波発振機を持って出かけてしまいます。

 しかし、さらに数日後。

 「心の友よ、頼みがある」
のび太宅を訪ねてきたジャイアン。
「スネ夫の家のゴキブリを退治したそうだな。うちも頼む」

 ジャイアンの家。
「なんだ、歌の機械じゃないか。それでどうやってゴキブリとるんだい。はやくやってみせろよ」
 笑顔で興味津々のジャイアン。無言で機械を操作するしかないのび太。

 その顔をうかがい知ることはできませんが、その後ろ姿からは幾筋もの冷たい汗が流れていました……。

驚音波発信機6.png

(完)

 かけたものがなんでもおいしくなる「味のもとのもと」をかぶってしまったジャイアンを一口でいいから食べようと目のイってしまったのび太たちが追いかけまわす「ジャイアンシチュー(コミックス13巻収録)」と並ぶホラーエンディング。

ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -

 前者がパニックムービー調なら、こちらは迫りくる惨劇をほのめかしながら無情にもフェードアウトしていく静的構成です。

 100円で全害虫害獣が駆除できるなら(窓と壁の修繕費が発生するかもしれないけど)破格だから、アイディア自体は良かったんですけどね……。

 のび太はよくドラえもんの道具を活用(≒悪用)して(しばしば無断で)新商売を始めるのですが、軌道に乗るかと思いきや何らかの理由で水泡に帰すというのが定番です。その中でも一番恐ろしい結果になった(に違いない)のがこの回。

 このコミックス17巻には、この他にも、ふりかけたものが五分おきに倍になる薬(一個の栗饅頭にかけたら二時間で1677万7216個に増える)「バイバイン」、宇宙人を呼び寄せてしまう「未知とのそうぐう機」など、扱いを間違えると恐ろしいことになるひみつ道具(そしてもちろんのび太は間違える)が登場して面白いです。
 是非お手にとってみてください。(当ブログ「未知とのそうぐう機」ご紹介記事はコチラです。)

 読んでくださってありがとうございました。

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2016年08月21日

(※ネタバレ)のび太、オリンピック選手候補に?「ねむりの天才のび太」


ねむりの天才のび太5.png


 前回、射撃のオリンピック出場者(張 富升選手〈中国〉)がのび太に似てるとのウワサが……という話題をご紹介させていただきましたが、原作内でのび太が未来のオリンピック選手としてその才能を嘱望された回がありました。

 種目名は「いねむり」(スポーツじゃない)。

 どうして誰も射撃の選手になることを勧めてあげなかったのかということについては残念ですが、ネット上の、
「のび太がオリンピックのクレー射撃に出たら、金メダルですか?」
「出たら金メダルですが、のび太君の場合、寝坊→遅刻→失格という天敵がいます」
という秀逸なやりとりどおり、大いにありうること(※)なので、ならば種目「いねむり」のほうがより選手として安定した活躍が見込めそうです。

(Yahoo!知恵袋よりhttp://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13142800933

 (※)大人になっても、愛するしずかちゃんとの結婚式にすら寝坊して遅刻しかけている。(日にちを間違えるというダブルミスでセーフ)(「のび太の結婚前夜」コミックス25巻)

ドラえもん (25) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (25) (てんとう虫コミックス) -

 こののび太のいねむりの才能について余すところなく堪能できるのが、「ねむりの天才のび太」(コミックス30巻)です。

ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (30) (てんとう虫コミックス) -


 のび太が「もしもボックス」で世の中を「ねむればねむるほどえらいという世界」に変えた結果、身の回りの人々はおろか、日本中から尊敬を集めるというお話です(笑)。



 以下あらすじです。(結末までネタバレですのであらかじめご了承ください。)



 今日も学校で居眠りをして先生にきつく叱られたのび太。

 学校からの電話を受けてお説教をするママの前ですら寝てしまい、怒りを倍増させてしまいます。

 「いねむりしながらおきていられるくすり(難しい)をだして」とドラえもんに泣きつこうとしますが、ドラえもんが部屋にいなかったのでまたひるね。

 帰ってきたドラえもんが「ゆめグラス」でのび太の夢の中を覗いてみると、見ていたのはひるねの夢(南国でハンモックにゆられているという、なかなか大人心をくすぐるリラクゼーション夢)。

ねむりの天才のび太2.png

 あきれかえるドラえもんに、
「むりしておきたってべつにいいことがあるわけじゃなし……」
と、何やら目の奥がツンとするセリフで反論し、おきてりゃえらいなんて誰がきめたんだろう、と、また眠りかけたのび太。
 しかし、ここで、「もしもボックス」を使って、逆に眠ればえらいという世界にすることを思いつきます。

 翌日より、授業中の居眠りも先生から絶賛され、眠れない他のクラスメート全員が廊下に立たされる羽目に。

 女の子たちや出木杉君にまでその能力を羨望のまなざしで称えられ、いい気分で帰宅するのび太
(ジャイアンとスネ夫は「へんな世の中になったなあ」と腑に落ちない顔。)

 昼寝をせずに家事をしているママを見とがめて、
「やる気がないんだ、ねむくないからとおきていれば、いつまでたっても眠れないよ」
 と正座でお説教、ママは優秀な息子に頭が上がりません。

 うとうとしかけていたのにのび太の帰宅で目がさめてしまったというドラえもんに、こんなことくらいで目が覚めるのは本物じゃないからだ、と、一蹴するのび太。
「ぼくなんかこうだぞ」
 枕代わりの座布団を手に、本物のいねむり(?)を披露するのび太。
 見事、たたまれた座布団が床に落ちると同時に眠りに落ちます(本当にすごいはすごい)。

 そこにしずかちゃんが訪ねてきて、中学進学時の「ひるねテスト」を習得するべく、のび太先生の指導を申し込みます。

「体の力を抜いて、頭の中をからっぽにして、なんにも考えないで……」
 のび太にそう言われても、テストのことなど考えてしまうしずかちゃんはなかなか眠れません。
「頭の中をからっぽ!ど〜してこんなかんたんなことができないの!?」
「そりゃのび太の頭はもともとからっぽだもの」
 隠れ失言王ドラえもんの冷酷な指摘から口論になる二人。やかましくて眠れないとしずかちゃんが起きてしまいます。

ねむりの天才のび太1.png


 「やりかたをかえよう。目を閉じて……なにか楽しいことでも考えよう。と、いっても、ワクワクこうふんするようなことはだめだよ。なにかおだやかな、のんびりした……そうだ春の野原を想像しよう。お日様、そよ風、一匹の蝶がひらひらと……つづいて二匹目のちょうがひらひら……」
 今流行の瞑想を先取りしたような見事な誘導で、しずかちゃんを眠りにいざなうことに成功します。
(真面目な話、今個人的に、眠りに落ちるためのリラクゼーション音声とかちょいちょい聞いていますが、結構、誘導時の間の取り方とかイメージするものとかが似ています。のび太すげえ。)

 涙すら浮かべて感謝するしずかちゃんの口コミで先生のもとへつめかける女の子たち。

 さらに、教養番組「正しいひるね」への出演依頼が舞い込みます。

 いねむり評論家由目見さんから
「眠りは世界を救う!!ねむりながら戦争はできません。平和のため、のび太先生をお手本にして、みんなねむりましょう」
と、部屋に入ったロケカメラの前で紹介されます。

ねむりの天才のび太3.png

 さっそくもはん演技として、かの「座布団落下時にはもう寝ている」技を披露するのび太。

 この驚異の早業に対し、スローモーションによる分析が入ります。
 
 今回は頭の上で手を組んで寝るスタイルだったのですが、実は中空ですでに両手を上げて、たたまれかけた座布団の上で目を閉じ、眠りのポージングをとっています。(「う〜む、むだのないアクションですなあ」〈by由目見さん〉)
 眠りに落ちるまでの時間は驚異の0.93秒。(「おそらく世界新記録でありましょう!!」)

ねむりの天才のび太4.png

 「あのねすがたのみごとなこと。一すじのよだれがなんともいえませんねえ。ねむりの天才というほかありません」

 テレビの中でアップになるのび太のスヤ顔(一すじのよだれ付)。
「オリンピックのいねむり種目に、日本代表として、大活躍が期待されます」
(そりゃもうウサイン・ボルトばりの伝説の絶対王者ぶりを発揮することでしょう。)

 テレビでののび太の圧倒的ないねむりぶりを知り、これまでの非礼を土下座して泣きながら詫びるジャイアンとスネ夫。
 絶対王者は、王者の風格漂う笑みを浮かべ
「つまらないうらみは水に流し、手をとりあってねむりの道をきわめよう」
と二人を赦します。

「しずかだねえ……この平和が永久につづくよう祈ってぼくらもねむろうか」
 ねむりの天才がゆったりと見つめる先には美しい満月。
 天才の慈悲深さに感涙するジャイアンとスネ夫。

 しかしその前に晩御飯たべなくちゃ、と、空腹を抱えて家に戻るのび太。

 息子の言いつけどおり寝ていたママは食事の準備はおろか買い物も済ませておらず、あくび混じりにでかけましたが、みんなすでに眠っていて何も買えませんでした。

 愕然とするのび太、しかし次の瞬間に居眠り運転のダンプが突っ込んできて、居間が大破。
 さすがの天才もたまらず「もとに戻して!!」と「もしもボックス」に駆け込んだのでした。

(完)

 中学入試の「ひるねテスト」って何とか、由目見さんって誰とか、ねむりの道って極めた先はどことか、気にになるところまみれですが、のび太の「あたまをからっぽに」という誘導とか(ドラえもんには酷いこと言われていたけど……)、のどかな野原を想像させるところとかは、ヨガや瞑想の世界に通じていると気づいて、ちょっと真面目に感心してしまいました。

 クライマックスは、放り投げた座布団の着地点を確認せずに中空で眠りのポージングに入っているスローモーション映像。スピードを妨げないという点において、今回王者ボルトのいるジャマイカチームに次いで銀メダルをとった男子陸上400mリレーのバトンパス技術をも彷彿とさせます(しないよ)。

 のび太がもしもボックスに入って世の中の価値観を逆転させるエピソードは他にも数編あり(お金のいらない世界とか)、いずれもこの回に劣らぬウィットに富んでいます。いずれまたご紹介させていただきたいです。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:03| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年08月20日

きれいなのび太、オリンピック射撃競技に出場?(歴代きれいなのび太ご紹介つき)


きれいなのび太.png

 オリンピックで盛り上がる2016年8月中旬、こんな話題がネット上をにぎわせました。


 「中国の射撃の選手にのび太ソックリな人がいる」

 「男子25mラピッドファイアピストル」という種目で、決勝進出まで果たしたその選手の名前は張 富升(チャン フーシェン)。

 惜しくも4位でメダルを逃しましたが、丸いメガネにかっちりとした前髪で射撃の名手というスペックがまんまのび太だろと日本で騒がれ、果ては中国までその話題が波及していったとのことです。

 ちなみに、のび太の射撃能力についてですが、「未来のシューティングゲームで世界最高記録をたたき出す」「タイムマシンで西部に行った際に、たったひとりでならず者の集団を(麻酔銃で)壊滅させる」など、けた外れのものがあります。(コミックス24巻「ガンファイターのび太」より)

 ドラえもん (24) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (24) (てんとう虫コミックス) -

 世界最高得点獲得時には、ドラえもんからも興奮した口調で天才とたたえられますが、興奮が過ぎて「じつにふしぎだ!ほかになんのとりえもない、頭も悪い、のろまでぐずで……」とド失礼な感想が付け加えられています。
(大人ドラファンの間では有名ですが、ドラえもんはちょいちょいのび太にシビアな発言をします。)

 のび太の射撃シーンとしておそらくもっとも名高いのは大長編「のび太の宇宙開拓史」のクライマックス。

大長編ドラえもん (Vol.2)  のび太の宇宙開拓史(てんとう虫コミックス) -
大長編ドラえもん (Vol.2) のび太の宇宙開拓史(てんとう虫コミックス) -

 悪役ギラーミンから、「腕利きのガンマンときいた。おまえと対決できるのを楽しみにしていたぞ」と決闘を申し込まれています。

 これに対し「ぼくにまかせてくれ。なあにまけるもんか」とみんなを下がらせて受けて立つのび太。繰り返しますがのび太。

のび太の宇宙開拓史.png

 射撃がかかるとのび太はこんなにも頼もしくてカッコイイのです。

 (補足)のび太の射撃について、驚くべき緻密さで統計をとっていらっしゃるサイトを見つけました。
射撃エピソードを含む全タイトルや標的、命中率まで読むことができます!
 「遠足新報」(のび太の特技分析・射撃編―「スナイパーのび太」の射撃シーン全リスト より)
 http://www.hatosan.com/ensoku/2011/05/post-32.html


 そんなかっこいいほうののび太実写版と日本をざわつかせた張 富升選手の画像が見られるURLはコチラ。(おそらくオリンピック期間中限定公開と思われます。)
「男子ラピッドファイアピストル決勝見逃し」(8月14日)

http://sports.nhk.or.jp/video/element/video=27319.html

 張選手は17:10ごろに登場します。黒いサンバイザーが目の上ギリギリの直線前髪みたいに見えるから余計似ているんですね。

張選手についての「R25」掲載のニュースはコチラhttp://r25.jp/off/00052263/ 
(「東京五輪ではメダル獲得なるか のび太が射撃で五輪出場?「思った以上に似てる」の声」)

 読ませていただいた範囲で、一番張選手について細かに情報を集めてくださっていたニュースはコチラです。(芸能ニュースJP 8月18日「【画像】リオ五輪に野比のび太現る…&彼女持ちか??」)
(原作のび太の華麗な拳銃さばき画像も見られます。)

 さて、動画や写真を観ていただくとおわかりになると思いますが、張選手は鋭い目に整った顔立ちで、クールなイケメンです。

 しかも身長184pで立ち姿がきれいですし、あの無造作な髪形やメガネ男子っぷりもスタイリッシュに見え、のび太だとしても「表参道を歩く個性派モデルのび太」といった趣です。

 メガネの形がちょっと違えば、普通にカッコイイ選手と認識されたでしょうが、僕としては「きれいなのび太」として好感度うなぎのぼりです。
 まだ22歳とのことなので、東京オリンピックにも是非そのままのスタイルでいらしてください!!

 ところで、張選手ほどかどうかはわかりませんが、コミックス内には「きれいなのび太」が見られるエピソードがいくつかあります。
(※「ドラえもん」全作品内でも屈指のレジェンド「きれいなジャイアン」についての当ブログ記事はコチラ

以下にまとめさせていただきましたので、是非コミックスをお手にとってみてください。

 1,「うそつき鏡」(コミックス2巻)

ドラえもん (2) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (2) (てんとう虫コミックス) -

 「今までぼくの顔はまんがみたいだと思っていたけど、こ、これはほんとにぼくだろうか!?」
と鏡をのぞき込むのび太。(当記事冒頭引用画像)

 今となるときれいなのび太の側に時代を感じるところがまたいい。

 人間に偽りの美貌を見せて虜にした挙句、もっと美しくなるためにと無茶苦茶なアドバイスをする、なんのために開発されたのか、まったくわからないタチの悪い鏡の話。

 まんまとそそのかされてキメ顔(と、うそつき鏡に言われた変顔)をするのび太は、ドラえもんに叱られても鏡にへばりついておせじを聞くのをやめられなくなります。(怖い)

 なお、この作品のタイトルページにすらりと足の長い、ダンディなドラえもんが登場するのですが、こちらは「かっこいいドラえもん」の名でフィギュア化されています
((笑)と書こうと思ったら、限定版は現在8万円近辺でひっくりかえりそうになった。)。

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 かっこいいドラえもん 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

VCD かっこいいドラえもん ワンダーフェスティバル2010(冬)開催記念限定 -
VCD かっこいいドラえもん ワンダーフェスティバル2010(冬)開催記念限定 -



2,「消しゴムでノッペラボウ」(コミックス8巻)

ドラえもん (8) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (8) (てんとう虫コミックス) -

 しずかちゃんが、絵の上手な五郎君の描いた絵を素敵とほめたことから、この絵の少年のような顔になりたいと考えたのび太。

 それではとドラえもんが「取り消しゴム」と「目鼻ペン」を使い、のび太の元の顔を消して書き直すことを提案します。
(最初はドラえもんが絵を元に描いてくれようとしたが、失敗した福笑いみたいにされてしまったので、五郎君のもとに紙袋をかぶって尋ねていく羽目に〈笑〉)

 五郎君作ののび太(後で嫉妬したスネ夫に加筆されて台無しになります。)

きれいなのび太2.png


 こののび太のフィギュアも「美男子のび太」として8月24日発売予定だそうです。(スネ夫に加筆されちゃった顔付〈笑〉)張選手効果で売れ行きアップしそうですね。

UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -
UDF ウルトラディテールフィギュア 「藤子・F・不二雄作品」シリーズ8 美男子のび太 『ドラえもん』 ノンスケール PVC製塗装済み完成品 -

 ところでこのとき、容姿にこだわるのび太に対し、ドラえもんが「くだらないことを気にするんじゃないよ。男の価値は顔じゃないぞ。中身だぞ。……もっとも君は中身も悪いけど……」と、はげますつもりでうっかりのび太の価値を全否定してしまっていました。


3,「顔か力かIQか」(コミックス40巻)←シビアなタイトル……

ドラえもん (40) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (40) (てんとう虫コミックス) -

 出木杉君との全方位的な差異を嘆くのび太に、「いいとこ選択しボード」を貸してあげるドラえもん。

 自身の総力の範囲内で、顔、力、IQの数値を変更できる(なにかの力を上げるなら代わりになにかを下げなければいけない)ボードを利用し、「体力を下げてでもかっこよくなったのび太」

きれいなのび太3.png

 なお
「たいしたことないな」
と鏡の前で不満げなのび太に
「もとがもとだからね、ぜいたくいっちゃいけない」
と、またしても問題発言を混ぜ込むドラえもん。
(この後、きれいなのび太がジャイ子に惚れられてしまい、大トラブルに発展していました。)

 以上です。全エピソードとても面白くておススメです。(個人的にはエキセントリックな「うそつきかがみ」が推し回です。)

 当ブログでは今後もドラえもんご紹介をさせていただきますので、よろしければまたお立ち寄りください。(次回記事は原作のび太が実際オリンピック選手候補になりかけた「ねむりの天才のび太」についてです。)

 読んでくださってありがとうございました。

(訂正)引用画像内の藤子先生のお名前を一度「不二夫」と誤記してしまいましたので、お詫びして訂正させていただきます。大変申し訳ありませんでした。

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2014年02月21日

「からだの部品とりかえっこ」※ネタバレ(『ドラえもん』より)

 今回もドラえもんの中で好きな話をご紹介させていただきます。
 「からだの部品とりかえっこ」
 コミックス11巻収録です。(表紙カワイイ)

ドラえもん (11) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (11) (てんとう虫コミックス) -

 かなりシュールなタイトル(※)ですが、内容はもっとシュールです。

 前回ご紹介の「腹話ロボット」がどちらかというと台詞の妙で笑わせるタイプなら、こちらはずばり画面が面白い方です。

(※)ちなみにドラえもんの中には今見ると目を疑うほどシュールなタイトルが結構あります。「からだの皮をはぐ話」とか「人間切断機」とか。

(以下結末までネタバレなので、できれば先にコミックスをお読みください。)

 のび太がテレビを見ているしずかちゃんを呼び出して、屋外のある大きな機械のある場所に連れて行きます。

その名も「人体取り替え機」(すごいそのままのネーミング……)。

 二人の人間が左右のカプセルに入り、交換したい体の部分のボタンを押すと、そこを取り換えられるという機械です。
 これでしずかちゃんと頭をとりかえて、すらすら宿題を解こうというプラン。
 
 当然しずかちゃんは拒絶し、帰ろうとしますが、

「一生に一度でも冴えた頭を持ってみたいという、いじらしい願いをかなえてやってはくださるまいか」
 と、ドラえもんに悲しそうな顔でせつせつと言われ(のび太、この発言に特に気を悪くする様子もなく、ひざまずいて泣きながらしずかちゃんにおがみ倒している)、しかたなくカプセルに入ったしずかちゃん。

取り替え.png

 ですが、頭をとりかえるということは人格をとりかえるということなので、のび太がしずかちゃんの体、しずかちゃんがのび太の体に変わっただけで、しかもテレビの続きが気になっていたしずかちゃんは、それに気づかずのび太の体で帰ってしまいます。

 いいアイディアだと思ったのに……とがっかりしながら、しずかちゃんが異変に気づいて戻って来るのを待っているのび太。

 しかし、スカート姿ののび太の(しずかちゃんの)足に、突然ドラえもんが鼻息を荒くして熱い視線を送り始めます。

 気味悪がるのび太でしたが、ドラえもんいわく
「じつはね、ぼくには前からひそかに夢見ていたことがある」(妙にカッコイイ台詞)

 短足だから、いっぺんでいいからスラリと長い足になってみたかった。そう言ったドラえもんはしずかちゃんの足のまたがし(笑)をのび太に頼み込みます。

 怒られるんじゃないかとしぶるのび太に、ドラえもんは必死でくいさがり、
「そのへんをかけまわって長い足のスピード感を楽しんで、それからまたとりかえればいい」

 と、いうわけで……。
 スラー(脚線美)

この感激 11巻.png

「おお。この感激!このかっこいい姿を、記念写真にうつしてこよう」
 細くてきれいな長い足にまるっこい体を乗せて、大喜びで力強く疾走してゆくドラえもん(気分がよくなる気持ちはなんとなくわかるが、しかしどう見ても「かっこいい姿」ではない)

 すれちがったスネ夫はあっけにとられますが、やがて、しずかちゃんの上半身にドラえもんのかがみもちふたつみたいな足ののび太を見つけてもっと驚きます。

 ところが、機械のことを聞いたら、スネ夫まで
「そんなら僕にも前からの夢がある」
 スラリと長い腕と指が欲しかった。
「この腕を僕のものにしてみたいな」
 と、のび太の(しずかちゃんの)手をとって、愛着たっぷりにハートを散らし、撫でまわさんばかりの様子。(のび太、とても嫌な顔〈そりゃそうだ〉)

 のび太は一生懸命断りますが、結局押し切られ……。

まあ…….png

「まあ……」
指先の細いしなやかな手をウットリと見つめるスネ夫(なぜかまつ毛がのびている)。
「これこそ僕にふさわしい。芸術家の手だわ」
ハート目で指先をクネクネさせながら帰るスネ夫。
ジャイアンがその様子を見ていました。

「聞いたぞ!おれにもおれの夢がある!」(なんでみんなこの台詞なんだ)
いっぺんでいいからスマートに痩せてみたかった。
断ろうにも、「俺にだけは貸せないってのか!」と胸ぐらをつかまれた結果……。

小鳥になったみたい.png

「すばらしい!この身軽さ、小鳥になったみたい!」
ジャイアンのふっくら顔にしずかちゃんの細い胴、ジャイアンのふっくら下半身という、ある意味「ボンキュボン」なスタイルだけど分布がちょっとだいぶ違う感じの体型で、本人はきわめて朗らかに走って行ってしまいます。

 かくして「スネ夫の腕にジャイアンの上半身にドラえもんの足」となってしまったのび太(なんか全体的にもっちりしている)のもとに、のび太の体のしずかちゃんが戻ってきて仰天します(無理もない)。
 「僕はいやだっていったのにみんなが無理やり……」

 やがて戻ってきたドラえもん(美脚)、スネ夫(美指)、ジャイアン(華奢〈上半身のみ〉)が
「のび太と僕が腕をとりかえてね」
「待て、この腕は俺んだぞ」
「ややこしいことになったなあ」
と、入り組んだやりとりをし、しずかちゃんは知らない知らない!と呆れ怒ってしまいました。
(完)

 ドラえもんという作品はひみつ道具ゆえに、ほかの作品ではまずおめにかかれないようなシュールエキセントリックな展開に平気でなだれこんでいけるんだなとこの手の話を読んでいて気づきました。

 この手の名作はほかにもあるのですが(上記「からだの皮をはぐ話」「人間切断機」も面白いです。)、とりあえず「おお。この感激!このかっこいい姿を記念写真にうつしてこよう」と「まあ……(長まつげ)」と「小鳥になったみたい」の台詞と絵が、それぞれパンチきいていて忘れがたかったのでこちらを紹介させていただきました。(ドラえもんってさらりと読めてしまいますが、一コマを凝視するとなんかスゴイ状況になっていることが結構あるんですよ……。)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:26| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月19日

「腹話ロボット」(『ドラえもん』より)

 最近わりとシリアスな話題の記事が続いてしまいましたが、僕は本来そういう人間ではないので(←……)、また大好きなドラえもんのおススメエピソードをご紹介いたします。
(ネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス32巻に収録されています。

ドラえもん (32) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (32) (てんとう虫コミックス) -


口下手で損ばかりしているのび太が、ごまかしでいいから要領よく立ち回りたい、とあまりにも正直にドラえもんに泣きついて出してもらった「腹話ロボット」のお話です。

ドラえもんはほのぼの子供向けと思いきや意外にアブナイ展開の作品が紛れ込んでいて、これテレビで放映できたのかな……思うことがままあるのですが、その意味でこの作品のオチが一番危険です。(現実的に最も危ないのはジャイアンシチューのオチですが、放送できなさそうなのはこっち)

そして危険だからこそ、大人にはそのギャップがたまらなく面白いのです……。

(以下結末部までネタバレです)
ある日、空き地で、ジャイアンから「ひさしぶりに新曲ができた。聴きたいか?」と言われたのび太とスネ夫。
 まあ、日本全国に知れ渡っているとおり、ジャイアンの歌声は人体に有害なほどへたくそなのですが(吐き気を催す観客〈義務参加〉続出)、スネ夫はすかさず、
「聴きたい!聴きたい!久しぶりだなあ!遅いんだよジャイアン。いつ新曲ができるのかと、待ちくたびれちゃったよ」
と作り笑顔でおだてます。
怠けて悪かった心の友よ(ジャイアン愛用語)。と、ご満悦のジャイアンから、お前はどうなんだ、と聞かれたのび太は
「遅いんだよジャイアン。もっと遅くても良かったのに。聴きたい聴きたい。どうせきかされるなら、いやなことは早くすませたい。」
と、忍耐我慢のにじみ出た顔で答え、勿論ぶんなぐられ「だれが聞かせてやるか」とジャイアンは空き地を出ていきます。

 おかげで助かった。ジャイアンの気が変わらないうちに帰ろう、とスネ夫に促されたのび太でしたが、「実は0点をとってしまって家にも帰りにくいんだ」と困り顔。
「そんなことか。ぼくも悪かったんだ。でもへいき」
とスネ夫はズルい顔をして、まあ、見てな、と家に入っていきます。
玄関で待ちかまえていたスネ夫ママにいきなりどなりつけられたスネ夫ですが、再びすかさず
「やめてお母様!」
と駆けより、
「怒ると小じわが増えるっていうよ。ママの美しい顔が皺だらけになるなんてボク耐えられない!」
と泣き叫び、
「この次頑張るから。いつまでのママに若く美しくいてほしいから」
という頃には、もうママをホロリとさせて「まあ……スネ夫ちゃんはなんて優しい……」とまで言わしめていました。
 ドアの外でこのやりとりを聞いていたのび太は「うまいことやったなあ」と感心して帰宅。

 同じころ、0点の答案を見つけて叱る気満々のママに、ドラえもんが「ぼくから、よく言い聞かせるから」と一生懸命とりなした(優しいなあ)結果、「今回は私からは何も言わない」とママも納得したのですが、そこにいきなり「やめてママ!」と飛び込んできたのび太。
「その美しい……、というほどでもない顔がしわくちゃになるじゃんか。見るにたえないよ」 
 ……かくして正座させられギャンギャンに叱られる羽目に遭っているのび太に背を向け「ばかだねえ、じつにばかだね」と心底呆れるドラえもん。

 ぼくは口下手で損ばかりしている。ごまかしでも良いからスネ夫みたいに要領よくやりたい、とのび太に泣きつかれたドラえもんは、気が進まないながら「腹話ロボット」を出してあげます。

 腹話術人形と逆に、人形が人間の口を動かし、その人の声でいかにももっともらしいことを喋るという道具だと聞いたのび太はさっそくそれを肩に乗せてみます。

 その直後、まだ機嫌の悪そうなママに草むしりを命じられますが、「ウェー」と言いかけた瞬間腹話ロボットが作動。
「ワーイ、草むしりうれしいな。腰をかがめるのがウェストの運動になるし、指から葉緑素が吸収されて肌もきれいになるんだよね」
と言ったので、ママがソソクサと自分でやりはじめます。
「ママのためなら喜んでゆずってあげよう」と、調子よく縁側で草むしりを見物していたのび太、さらにお小遣いももらえないもんだろうか、と、こっそりロボットに持ちかけると
「お年玉が年に一回と言うのは誰がきめたのでしょうか。現代人は古いならわしにとらわれることなく毎月お年玉を」
との台詞でまんまとお金をせしめることに成功します。

 かなり無茶な理屈でもこの人形が言えば通じてしまうものなのだというのは、ドラえもんも知らなかったようで、これを見て目を丸くしています。
 いい加減なこと言って、ロボットを止めるとごまかしもばれるんだぞ、と、ドラえもんにたしなめられますが、すっかり味をしめたのび太は「いいもん、ずーっとこのままにしておく」と暢気に散歩に出ます。

 直後、道で先生に出くわし、「あんな点をとっておいて宿題もせずに遊びまわれる身分か」とお説教を食いそうになりますが、ここでも、
「僕は自分さえ成績が上がればという考え方はどうしてもできないんです。どんなにみんなが一生懸命勉強しても、テストをすれば必ず順位がついて誰かがビリになる!!だから…だから僕が犠牲になって0点を……世の中にこんなバカが一人くらいいてもいいんじゃないでしょうか……」
と6コマにも及ぶ熱弁と共に涙し(草刈りのくだりを見る限り、この人形に涙を流させる機能は無いようなので、のび太本人の熱演と思われます)、のび太の優しさ(←……)に感動した先生に「これからもがんばって0点をとりなさい」とはげまされます。

 また、突然開催が決まった「ジャイアンリサイタル」では、歌い出しから「ひどい歌だなあ」と言って空き地の観客全員を凍り付かせた後、今にもなぐりかかりそうになっているジャイアンに「ジャイアンの歌はこんなもんじゃないはずだよ。ノドを痛めているんじゃないの?(これを受けて「昨日めざしの小骨がのどにささった」というジャイアンに)やっぱり!無理をしちゃだめじゃないか。将来の大歌手がもっとノドを大事にしてくれなくちゃ」と言う事で、見事リサイタルを中止させることに成功します。

 ……と、ここまでは良かった(?)のですが。
 

 リサイタルに遅れて来ることになっていたしずかちゃんに、中止を知らせてあげようと、どこでもドアを使ったのび太。

 ところがお約束通りしずかちゃんは入浴中だったため、怒らせてしまいます。

 「ま、まあ聞いてよ」
 と再び腹話ロボットが作動。

 ここからの演説が妙に高尚でふるっています。
 「もともとアダムとイブの時代、人間は裸だった。服を着るようになったのは、神様の言いつけにそむいて知恵の木の実を食べたからだ。神様の言うとおりにしていれば、人間はいまでも楽園で暮らせていたはずなんだ。裸のまんまで。」
「じゃ……はだかでいるほうが正しいの」
「そーなんだよ!」
(イタリアルネッサンス絵画の傑作、ボッティチェリ作『ヴィーナスの誕生』がコマに登場)

ボッティチェリ(腹話ロボット).png

「世界の美術館をみたまえ。はだかの絵や彫刻でいっぱいじゃないか。なぜか?それは美しいからだ。はだかこそ永遠の美のテーマなのであります!!」

 これを聞いたしずかちゃん、それまで湯船に身を沈めて隠れていたのにザバっと立ち上がります。
「そうか!じゃあ恥ずかしがるの間違いなのね」
「そ、そう……」
「服なんて着なくていいのね」
と、浴槽からあがってしまい、「それは……」とのび太が口ごもっている間に、
「遊びに行きましょ」
と、どこでもドアから屋外に出て行こうとします。
「極端すぎるよ!」のび太本人は止めますが、不思議そうに
「のび太さんもそう言ったでしょ」
と、ふりむいたしずかちゃんに、腹話ロボットは

そのまま町中をかけまわろう!!.png

「そうとも、そのまま町中をかけまわろう!!」と高らかに言ってしまい、どこでもドアから、生まれたままの姿で両手を広げて空き地に現れたしずかちゃんに、ドラえもん超驚愕(大笑)。

腹話ロボット.png

 大慌てでのび太が腹話ロボットを地面にたたきつけた瞬間、正気に返ったしずかちゃんは悲鳴とともにどこでもドアで浴室に逃げ帰ります。

 「みんなまだ怒っている?」
 空き地の土管の陰に身をひそめるのび太に、ドラえもんは
「当分うちへ帰れないね」
と、淡々と報告します。
 その視線の先には、まんまとだまされたことに気づいたママ、先生、ジャイアン、しずかちゃんが怒りの面持ちでのび太を探し回っていました(まあ特にしずかちゃんはそりゃ怒るわな……)。
(完)

 この作品、まず序盤ののび太とスネ夫の台詞の「似てるようで全然違う度」が見事です。
・「遅いんだよジャイアン待ちくたびれちゃった」⇔「遅いんだよジャイアン、もっと遅くても良かったのに」
・「聴きたい聴きたい。久しぶりだなあ」⇔「聴きたい聴きたい。どうせ聴かされるのなら、嫌なことは早く済ませたい」
・「ママの美しい顔が皺だらけになるなんてボク耐えられない」⇔「その美しい……、と言うほどでもない顔がしわくちゃになるじゃんか、見るにたえないよ」

 そして、旧約聖書やボッティチェリまで引用した格調高き「裸身礼賛」演説。
 とどめは「そうとも、そのまま町中をかけまわろう!!」という高らかな後押し(なにが「そうとも」なんだか……)を受けて急進的ヌーディストと化したしずかちゃんと、それに遭遇したドラえもんの表情……。

 よくこんなの小学生向け漫画雑誌に載せたもんだと思います。今だと不可能なんじゃないでしょうか。

(ところで、今回テレビ放送版についてちょっと調べてみましたが、さすがに外に出てくしずかちゃんはタオルを巻いており、また、「裸身礼賛」も「そうともそのまま町中をかけまわろう!!」もカットされている模様です。無理もない……が、最大の笑いどころが切れているとも言えます)

アブナイっちゃアブナイネタですが、この手のスレスレギャグが持ち味のイギリス・アメリカコメディでもお目にかかれないような過激さと、それでいてなんか非常にもっともらしい高尚な話題とのミックスが私には非常にツボでした。

(こんなこと宣言するものどうかと思いますが「ジャイアンの歌」ネタ以外だと、この「しずかちゃんのお風呂」ネタが大人になって読むととても笑えます。)

 ドラえもん30巻台は全体的にとても面白いので、是非お手にとってみてください。

 当ブログドラえもんご紹介記事はコチラです。(全てネタバレなのでご了承ください。)
 「ジャイアンシチュー」 
「ジャイアンへのホットなレター」
「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」
「きこりの泉」
「ジャイ子の恋人=のび太」
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:07| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月08日

「ジャイ子の恋人=のび太」(『ドラえもん』より)

今回もドラえもん作品のうち個人的に好きな作品を文でご紹介させていただきます。
(ネタバレですので。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス22巻に収録されています。


ドラえもん 22

 のび太がジャイ子に片思いしているらしいと知ったジャイアンのせいで、のび太がえらい災難に見舞われるという話です。

 「笑える」という点では、過去記事で書かせていただいたものと並びトップ10に入る名作だと思います。

 (以下結末までネタバレでご紹介)

 道を歩きながら、どうも最近女の子につけられているらしいというのび太
 ドラえもんはギャハハと笑いながら「天地がひっくり返っても絶対無い」と、全否定しますが(ドラえもんちょいちょい超失礼)、じゃ、見てろ、と物陰で待ちかまえるのび太に確かに近づいてくる女の子の人影……。

 二人が覗き込んでみると、女の子はなんとジャイ子。

 びっくりして逃げ帰ってきた二人でしたが、ジャイ子がつけてくる理由がわかりません。
「まさか、ぼくがすきになったとか…」
「それはない!たとえジャイ子でも絶対ない」(ドラえもんちょいちょい…〈以下略〉)

 そこへニコニコ笑ってジャイアンが訪ねてきます。
「のび太よ。お前幸せな奴だなあ」
 きょとんとしているのび太に、最近ジャイ子の様子がおかしい(ためいきばかりついて、飯も5杯しか食べない〈←……〉)が、聞いても悩みを打ち明けようとしないので、さぐってみたところジャイ子の机からこんなものが出てきた、とジャイアンが差し出したのは、のび太の写真でした。

 妹は俺に似て内気な奴だから(←……2)ひとり悩んでいたと思うといじらしくて……と涙したジャイアンは、そういうわけでからお前からデートに誘ってやってくれ、と、有無を言わさずのび太を家に連れて行ってしまいます。

 しかし、無理やり部屋にジャイ子と二人きりにされると、ジャイ子はきわめてアッサリと「忙しいから用がないなら早く帰ってほしい」とのび太に言います。

 ほっとされたようなバカにされたようなと思いつつ、帰り道でしずかちゃんに会ったので一緒に公園に行こうとしたところ、ジャイアンにつかまってしまいます。

 帰れって言われたから……と正直に言うのび太のに、ジャイアンは、女心のわからん奴だなあ。と口をとがらせます。

(女の子は)好きな奴にはわざとツンツンするもんなんだから(今でいう「好き避け」とか「ツンデレ」?)、男のほうから好きだとうちあけるべきだと言われ、のび太が、そんな、好きでもないのに、と拒否しようとした瞬間に、ジャイアンの様子が一変。
「きらいだってのか?」

すき!大すき!.png


「言っとくがな、妹を泣かせる奴がいたら、俺が殺してやる!!」と、拳を固めたジャイアンに胸倉をつかまれたのび太は大慌てで「好き!大好き!」と答えます。(かわいそう)

 これで機嫌を治したジャイアンは、空き地でのび太に「女の子のハートのつかみ方をコーチ」する(笑)ことします。

 土管に座ったジャイアンに
「俺をジャイ子と思ってすきだと言ってみろ」と言われたのび太は
「オエー」とわりと正直な音声をもらし、何か言おうとしてもしどろもどろになってしまいます。

「俺だと思うからダメなんだ。ジャイ子と思えってば」
「どっちにしてもなあ……」(←さすがにこれは口には出せないのび太)

 で、どうにか思いついたのがこの台詞。

ジャイ子さん、友達になってくれない?22巻.png

「ジャイ子さん友達になってくれない?いやならいいけど」

 勿論ジャイアンからパンチが飛んできます。

「まるで心がこもっていない!心の底から好きだと言ってみろ!」
「す、好き!すき!ウキー」と涙ながらに言うのび太。

 一応合格と思ったのか、土管の上のジャイアンは
「好きなら態度で示せ。もっとこっちに来い。手ぐらいにぎれ」
 と、より具体的な指示を出してきます。

うれしいわ、のび太さん22巻.png



「ぼ、ぼく、ほんとにきみのことすきなんだ」
「うれしいわ、のび太さん」
……そう言いながら土管に寄り添って座るのび太とジャイアン(ジャイアンがのび太の肩を抱いている)を見つけて完全に誤解したスネ夫顔面蒼白(大笑)。

 ほうほうのていで帰ってきたのび太に、なんとかジャイ子に嫌われるようにしてくれと泣きつかれたドラえもんは「スカンタコ(笑い)」という変な顔のタコを出します。

 そのスミをかぶった人間は誰からも嫌われるという、開発者の意図も元来の用途も全く分からない秘密道具ですが、なにはともあれスミをかけてもらったのび太。

 これで大丈夫かと聞こうと思ったら、もうドラえもんにもママにも大いに嫌われて家から叩き出されます。

 しかし、ジャイ子に嫌われるためなら仕方ないと、ジャイアンの家に行くと、出迎えたジャイアンは「すまん、俺の勘違いだった」と苦笑いして真相を話します。

 なんでも、漫画家志望のジャイ子がネタにつまって悩んだ挙句、のび太の動向をギャグ漫画にしようと取材のつもりでつけまわしたり、のび太の顔をネタにおかしな顔を考えたりしていたとのこと(ド失礼)。

 そう話し終えた直後、はじめてまともにスカンタココーティング済ののび太の顔を見たジャイアン。
「とっとと帰れ!」
 と、とたんにのび太を家から蹴りだします。

 憤慨しつつ(無理もない)、ぼくの相手はやっぱりしずちゃんなんだ、と公園に向かいますが、しずかちゃんからも思い切り逃げられ、ドラえもんに「どこまで運のない男なんだろう」とつぶやかれるというオチです。

「俺だと思うからダメなんだ。ジャイ子と思えってば」
「どっちにしてもなあ……」
と、
「ジャイ子さん友達になってくれない?いやならいいけれど」
ののび太の、本当にこの上なく見事に心のこもっていない台詞と表情、
そしてやっぱり
「ぼ、ぼく、ほんとにきみのことすきなんだ」
「うれしいわ、のび太さん」
 を目撃してしまったスネ夫の驚愕の表情が最高です。

 全コマ全台詞脳裏に焼付くゆるぎない完成度という点で、ドラえもんとサザエさんって本当に圧巻ですね(国民的ほのぼの作品の皮をかぶって結構シビアなところも共通している)。忘れがたいという意味でなら別腹で岡田あーみん先生(※)もいらっしゃいますが……。
(※)岡田あーみん……「りぼん」誌で活躍した伝説のギャグ漫画家。代表作は娘を溺愛するあまり、周囲に迷惑をかけまくる奇抜な中年佐々木光太郎氏が主人公の「おとうさんは心配性」(こちらも機会があったらご紹介したいものです)。

 
お父さんは心配症 1

 さて、ジャイアンがらみの作品のご紹介に偏ってしまったので、今度は別の味わいの名作もご紹介させていただきたいと思います。よろしければまた見にいらしてください。
 過去記事はコチラになります。(全てネタバレですのでご注意ください)
 「ジャイアンシチュー」 
「ジャイアンへのホットなレター」
「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」
「きこりの泉」

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 19:22| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月29日

「ジャイアンシチュー」※ネタバレあり (『ドラえもん』より)


 今回もドラえもん作品のうち個人的に好きな作品を文でご紹介させていただきます。
(なのでネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
 てんとうむしコミックス13巻、あるいはこのドラえもんジャイアン編に収録されています。

ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (13) (てんとう虫コミックス) -


ドラえもん (ジャイアン編) (小学館コロコロ文庫) -
ドラえもん (ジャイアン編) (小学館コロコロ文庫) -

 その存在自体はご記憶の方も多いと思われる「ジャイアンシチュー」

 この話、オチのシュールさ加減が児童漫画の領域を超えています。

カワイイ絵と子供たちのやりとりという一見なごやかな画面に隠された、このシュール&シビアと台詞のひねり。

私が「ドラえもんは卒業した」という大人の方々と、全世界に知っていただきたいのはこの魅力なのです。(ほかにも色々ありますけどね←どんだけ好きなんだ。)

以下結末までのあらすじです。

「人間はさ、趣味を広く持たなくちゃいけない」

かっこいいことを言ってジャイアンがはじめたのは「料理の研究」でした。
(だいたい初心者がレシピ通りに作らず、『研究』などという名のもとに、ありもしない勘に頼ってアレンジしたらドロドロのものができあがると相場が決まっているのです〈経験者談〉)

こうして「ジャイアン料理研究会」に招待されたのび太たち。

既にジャイアンの料理がどの程度のものか、ハイキングで食べて知っているのですが(「後ではいた」〈スネ夫談〉)、「食べないと殺される」という理由で、仕方なしにできるだけおなかを空かしていくことにします。

というわけで、ママの作った昼食を食べたがらないのび太。
「食べると命にかかわるんだよ!」
誤解したママ激怒(笑)。

とりなしにいったドラえもんがわけを聞いて、そんなことなら簡単だ、とひみつ道具「味のもとのもと」を出してくれます。
これさえかければどんなまずい料理でもおいしく食べられる。
「たとえばママの料理でも」
(ドラえもんってば、あんな人を和ませる容姿をしているくせにちょいちょい相当毒舌)

ふりかけられたママの料理(多分スパゲティ)は、匂いだけでもあらがえないほど魅力的で、「こ、こんなおいしいの、食べたことないや」というほどの味になります。

「ジャイアン料理研究会」は夕方から実施されました。

食卓にのび太たちをつかせ、エプロン姿のジャイアンシェフが挨拶に来ます。
「よしきた。今日はたっぷり食べてもらうからたのしみにな」
「ちょっぴりでいいのに」
「悪いけどもうちょっと待て」
「おそいほどありがたい」
 かろうじて笑顔を作りながらもダダ漏れてるスネ夫の本音は、なぜかジャイアンには届きません。

青ざめているスネ夫としずかちゃんのもとに、なにやら得体の知れない不気味な異臭がただよってきます。

こうして満を持して登場したのが、後に伝説の一皿として語り継がれることとなる「ジャイアンシチュー」です。

もう「ジャイアン」と「シチュー」っていうコラボを聞いた時点で、全日本国民「きっとおいしくないだろう」と察せてしまうのですが、……まあやっぱりそういうことです。

内容物は

・ひきにく
・たくあん
・しおから
・ジャム
・にぼし
・大福
・そのほかいろいろ

……とくに明らかに「シチュー」と名のつく料理と系統が違うであろう「ジャム」「大福」、あと「そのほかいろいろ」のくだりが気になるところです。

(ところで、驚いたことにネットの世界では実際にジャイアンシチューを作ってみたという話が散見されます。なかには本格的な料理ページみたいに画像・動画つきで見られるものも。意外とおいしいという意見もある一方で、ほんとうに具合が悪くなるほどマズイという話も。ググってみてください。世の中色々な方がいるなあと思いました。ただ、個人的には色とか本当に見てるだけで無理です……。)

「どう?うまいか、おいしいか、どっちだ」
 ……と感想を尋ねるジャイアンに、スネ夫は一言。
「……すごい!(蒼白涙目)」

うまいか、おいしいか、どっちだ.png


「と、とても、お、おいしいわ」
さすがしずかちゃんは「おいしい」の一言をどうにかしぼりだしていますが、実際はそうでないことは表情が物語っています。

のこり二人の悶絶をよそに、のび太だけは心の底から幸せそうにシチューをたいらげ、
「こんなうまいものはじめて食べたよ。おかわりほしいな」
と、笑顔でカラになった皿をさしだします。
唯一の味がわかる人間(……)としてジャイアンは「君こそ親友だ。心の友だ(ジャイアンの愛用語)」とのび太の手をにぎりしめます。(あっけにとられるスネ夫)

 しかし、おかわりを出された際に、のび太が「味のもとのもと」をかけているのに気付いたジャイアンは、
「なにをかけたんだ、見せろ」
 と、いやがるのび太からそれをとりあげようとして、もみあいになります。

 そのとき、はずみで蓋がとれ、「味のもとのもと」をドバっと自分の頭にかけてしまうジャイアン。

 ジャイアンの全身からただよう、あのえもいわれぬ香り……。

うまそう、ひとくちでいいからたべさせて.png

「うまそう」
「ひとくちでいいから食べさせて」

完全に目の中が「渦巻き」や「十」になってしまって、よだれをたらしたのび太たち3人(しずかちゃんまで……)がフォークとナイフをふりかざして、ジャイアン本人を追いまわし、「助けてくれえ!」と必死の形相で逃げ出すジャイアン。
(完)

たった6ページでこんなスゴイ話を書いてしまう藤子F先生はやはり本当に天才だったのだとつくづく思います。

そして、ジャイアンシチューは勿論ですがオチのブラックなパンチは全ドラえもん作品でも間違いなくナンバー1でしょう。

余談ですが、藤子F不二雄ミュージアムでは、このジャイアンシチューにちなんだお皿が販売中だそうです。

ドラえもん ジャイアン シチュー皿 藤子・F・不二雄ミュージアム限定 -
ドラえもん ジャイアン シチュー皿 藤子・F・不二雄ミュージアム限定 -

シンプルな白いお皿の底にエプロン姿のジャイアン
例の
「どう?うまいか、おいしいか、どっちだ」
の台詞入り
そして、ジャンアンが書いた達筆とは言えないジャイアンシチューのレシピつき(紙が「剛田雑貨店(ジャイアン宅のご家業)」のメモ用紙なのが泣かせる)。


さっきのジャイアンシチュー実作とかこのお皿とか、「きれいなジャイアン」のフィギュアの存在とかを聞くと、世の中は思っていたより、案外シャレのきいた面白いところかもしれないとふと思うのです。

ドラえもん きれいなジャイアン 藤子・F・不二雄ミュージアム限定 フィギュア -
ドラえもん きれいなジャイアン 藤子・F・不二雄ミュージアム限定 フィギュア -


藤子F不二雄ミュージアムのHPのURLはコチラです。
http://fujiko-museum.com/pc.php


読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 07:09| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月28日

「いい!いい!どうでもいい」(至言)(『ドラえもん』「ジャイアンへのホットなレター」より)

今回はドラえもんの作品をご紹介させていただきます。

ネタバレなので、大丈夫な方だけお読みください。

 このエピソードは「てんとうむしコミックス35巻」、


ドラえもん 35

 または小学館コロコロ文庫ドラえもん[ジャイアン編]に収録されています。(こちらジャイアンの傑作が集結していて、今からとりあえず一冊読んでみようかという方にお勧めです)


ドラえもん ジャイアン編

 ドラえもんの中で、大人になってから気づく面白みのひとつにジャイアンの存在があります。

 ジャイアン本人というより、ジャイアンの腕っぷしを前にして、言いたいことが何も言えない、さらには心にも無いことを言わざるを得ないという周囲の反応が。
 そして、押し殺した本心をバレないようにぽつりともらしている、その一言が。
 誰でも身を守るためにそういう対応をとらざるをえないときがあります。
 彼らの描写はそんな人生のほろにがい側面を彷彿とさせるのです。
 
 しかし、そこは世界最強の漫画(否定意見不受理)、ほろにがい、ではなく、おおいに笑える、に、ちゃんと変えてくれています。

 その好例が「ジャイアンへのホットなレター」

 歌手ジャイアンに熱い思いのこもったファンレターを書こう、という、根本的に不可能な企画の顛末を描いた回です。

 有名な話ですが、ジャイアンは昔懐かしい言い方をするとガキ大将で、のび太や周囲にしょっちゅう八つ当たりもしていますが、彼の腕力以上に恐れられているのはその歌声です。
(スネ夫が「(彼の)歌よりゲンコツのほうがましだ」と明言し、泣いてチケット購入を拒否していたことがある。)

 気を抜くと気絶するほど酷く、大長編「のび太の魔界大冒険」では怪獣のような化けクジラまで「オエー!」と、尾ひれがクルクルよじれるほどの吐き気を催して退散しています。
(この化けクジラのところまで、ローレライ伝説のように人魚の美声が惹き寄せてしまうのですが、ジャイアンが対抗して歌ったらそういう結果に。)
 
大長編ドラえもん 5 のび太の魔界大冒険

 そりゃ、そんな音声を2〜3時間聴かされる催し(「ジャイアンリサイタル」)に出席しないとぶんなぐられるのは嫌でしょう。

 しかし、本人はそのような反応にあまり気づいておらず(盛り上がりに欠けることはうすうす感じてはいるが、「真の芸術は理解されにくい」という方面に苦悩している)、アイドル伊藤つばさちゃんの人気に激しく嫉妬します。(ポジティブ)
 
 スネ夫が書いた彼女へのファンレターがコンクールで優勝し、サイン入りパネルをもらったという話を聞いたジャイアンは、対抗意識を燃やして、自分のファンにもそのような活動をさせるようにとのび太とドラえもんに強要します。
 
 具体的な企画例として、ジャイアン本人が
「みんなでごちそうを持ちより、ジャイアンを呼び、ジャイアンはサービスに歌を数曲ふるまう)『ジャイアンを囲む夕べ』」
を提示すると、二人は真顔で
「だれもかこみたがらなかったりして」
と、つい本当のことを言ってしまい、慌てて「やたらそんなことすると安っぽく見えるよ」とごまかします。

 それではということで、ファンレターコンクールをやり、優勝者にはジャイアンのサイン入りパネルをプレゼントすることになります。

 ドラえもんの道具を使って、自らデザインしたステージ用の格好に変身したジャイアン(ヘアスタイルはアフロにターバン、片目をふちどりしたアイメークに口紅、ほっぺに☆、衣装は素肌に毛皮調ノースリーブ、ピタピタのヘソだしシャツ、ブリーフ、編み上げサンダルという、ある意味奇跡的なセンス。〈そっぽをむいて「おぞましい……」と吐き気に耐えるのび太〉)はマイクを片手にウィンクをしながら
「ポーズはこれでいいか?」
と、撮影者であるドラえもんに確認をとります。

いい、いい、どうでもいい.png

 ドラえもんは冷や汗を浮かべながらもどうにか笑顔を作って
「いい!いい!」
と、あわせますが、どさくさまぎれに
「どうでもいい」
と、付け加えています……。

 こうして撮影の済んだパネル、大きさはジャイアンが決めるということで、その間ドラえもんとのび太は周囲にファンレターを応募するようにと呼びかけます

(さすがのしずかちゃんですら「そんなの(パネル)もらっても置き場が……」と困惑、ドラえもんが「かざっておけば魔除けになるよ」と無茶苦茶な説得をします)

 最後は投票を呼び掛ける車よろしく、タケコプターで町を巡って、応募を促すのび太とドラえもん。
「ださないとたたりがあるよー」
ジャイアンが聞いたら激怒するであろう一言もまじっています。

 結果、集まったのは、いかにも投げやりな汚い字で書かれた13通。

「(カナクギ字で)どうか入選させないでください。パネルがあたりませんように。とく名希望」
 これはまだ良い方。

 ここぞとばかりに、積年の鬱屈をしたためた手紙も入っています。

ジャイアンの歌にはしびれる.png

「ジャイアンの歌にはしびれる。しびれて気が遠くなって熱が出る。ジャイアンの歌を聴いていて一番うれしいのは終わった時だ」
「この世で恐ろしいのは核兵器とジャイアンの歌だ。世界平和のため、核兵器とジャイアンの歌を追放しよう!!」
 こんなの見せたら殺される。と震え上がるのび太とドラえもん。

 仕方ないので、誰でも心を打つ文章が書ける「模範手紙ペン」でのび太がファンレターを書くことにします。
「ぼくには不思議でたまらないのです。どうして紅白歌合戦にジャイアンが出ないのでしょうか。これからも男の心を歌い続けてください。世界人類のために!!」
……当然これが一等に。

 この「ホットなレター」を読んだジャイアンは、涙ながらに、
「心の友よ!きみのようなファンをもって僕は幸せ者だ!!」
とのび太を抱きしめます。(のび太、うんざりして目が「十」になってる)

 というわけで、ジャイアンが持参した賞品の超特大パネル。

 窓際の天井からドア側の床まで斜めに置いてもまだ「アノステージ衣装のジャイアンの笑顔」いっぱいいっぱいで、部屋の片隅で「ぼくたちの居場所がない!!」
と、のび太とドラえもんが嘆き悲しむというオチ。

 個人的にあまたある傑作のなかでも屈指の作品だとおもっています。

 セリフも名言揃い。

 とくに撮影中のドラえもんの
「いい!いい!」
「どうでもいい」
は、自分にはとても染み入ります。

 集団において平穏に生きていくためには、したくもない同意をしなければならないときがあると悟ってから、人生で何度このフレーズ、しかたなく笑うドラえもんの表情を思い出したことか……(遠い目)←わりと早い時期に悟った模様。

 よろしければ、コミックを手に取ってみて読んでください。
(当然このご紹介文より、藤子Fさんの、あの丸っこくてカワイクて優しい線のキャラがああいうシビアなことを言うコントラストのが圧倒的に面白いですから。)

 そして、ときに本心を押し殺して生きざるをえない人間のせつなさを、爆笑でそっとつつんでみてください。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 04:32| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月20日

「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」(『ドラえもん』より)

今回もドラえもん作品のうち個人的に好きな作品を文でご紹介させていただきます。
(なのでネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス24巻、あるいは小学館コロコロ文庫『ドラえもんジャイアン編』に収録されています。

ドラえもん  24

「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」
ご存知の通り、ジャイアンと言えばゴキブリから魔物にいたるまで逃げ出す、逆奇跡の歌声の持ち主ですが、そんな彼のリサイタルを生き延びるために、のび太とドラえもんがある奇策に打って出るという異色作です。

以下結末までのあらすじです。

 パパがまたしても禁煙に挫折したのを知ったのび太は、ママの言っていた「ニコチン中毒」という言葉の意味をドラえもんに尋ねます。
「ニコチンという成分が体にしみつくとタバコを吸わずにはいられなくなる。頭がボーッとしてイライラして仕事も手につかない」
という説明を聞いたのび太は、怖いものだと思いつつ、中毒を治す薬を持ってない?と聞きます。

 無いけど中毒にする薬はある、とドラえもんが出したのは
「ヤメラレン」(笑)
 嫌いなものを好きにさせるときに使うとのこと。
(使用例:ニンジン嫌いの子にこの薬と一緒にニンジンを食べさせると、ニンジンが好きでたまらなくなる。)

 と、そこにジャイアンが尋ねてきた声がします。

「隠れろ!居留守を使え!!」
突然押入れに飛び込むドラえもん。

 なんでそんなことしなきゃならないんだと、忠告を聞かずに降りて行ったら、ジャイアンに手渡されたのは、間もなく開始のリサイタル「ジャイアン激唱」(笑2)のチケット。

 友達全員(居)留守で見つからなかったが、のび太がいてくれて助かった、と、喜ぶジャイアンは、残りの観客も草の根分けても探し出して聴かせる、と言いながら出ていきます。

 自分の分までチケットもらってくるなんて酷い、と、泣いて責めるドラえもんですが、なすすべもなく、おそらく、たったふたりであの殺人的な歌をたっぷり聞かされることになるであろう事態を思い浮かべ、
「はたして無事に耐えきれるだろうか!?」
「神様、お救いください!!」
と、互いにすがって泣きます。(かわいそう)

 しかし、そのときのび太に妙案が浮かびます。
 どうせ聞かされるなら、「ヤメラレン」を飲もう。
「『ジャイアンの歌中毒』になろうっていうこと?」
 ドラえもんはあまり気が進みませんでしたが、しかし、ほかに道はありません。

 会場(空き地)に集まった観客はやっぱり二人だけ。

 ジャイアンはおかんむりでしたが、
「君たち二人は真の芸術の理解者だ」
と、のび太たちをねぎらい、
「のどがさけるまで俺は歌うぞ!!」との熱い決意表明(「ありがたいなあ」と拍手する二人、涙目)とともに
「歌こそ命〜、我が命よ〜。オ〜オオ〜オ〜」
と熱唱しはじめます。
 
 聴くなり大急ぎで薬を飲んだ二人。

 「ボエ〜」
 響き渡る人体に有害な音波の前で顔を見合わせ、
「それほど悪くないんじゃない?」
「わるくないどころか……」
「天才だよこりゃ」
 とたちまち目を見張り、
「いいぞいいぞ」
「日本一!いや世界一!」
とステージ(木箱)上のジャイアンに声援を送ります。

「ほんとか、おい。ありがとよ…歌一筋に生きてきた甲斐があった」
感涙にむせび、歌い続けるジャイアンに
「キャー!ジャイちゃーん!!」
「しびれるぅ!!おしっこもれそう!!」
と、マイケル・ジャクソン相手にも言わないような声援とともにスタンディング・オベーションで大熱狂するのび太とドラえもん。

ジャイちゃーん1.png

 一方、こっそり様子を見に来たスネ夫たちは、空き地をのぞきこんで、
「ここから聴いててさえ寒気のする歌なのに」
「ありゃお世辞じゃなさそうだぜ」
「どういう神経しているんだ」
と、あきれ返ります。

 二時間で終わるはずのコンサートに、アンコールを要求したのび太とドラえもん。
 「そ、そんなにも俺の歌を……」
 熱い涙で頬を濡らし、二人を抱きしめたジャイアンは再び歌い続けます。(あまりの感動に泣き叫び、鼻水まで流してテープを投げて声援を送る二人)
ジャイちゃーん.png

 さすがに夜になって声がかれ、立ち上がることもできなくなってしまったジャイアンは、「かんべんしてくれよう、明日続きをやるから」と頼み込んでコンサートを終わらせます。

「根性がないぞ!!」
「そんなことでプロになれるか」
 と不満そうな二人でしたが、
「約束を忘れるなよ!!」
 と、ジャイアンの家の前までついてきて念押しをしてから家に帰ります。

 いいクスリだ、と、すっかり満足の二人。

 そのときパパの禁煙問題を思い出したのび太は、パパをチューインガム中毒にすることを思いつきます。(ガムを噛みながらタバコは吸えないから)

 「ガムってうまいものだなあ!」
 最初はしぶっていましたが、まんまとチューインガム中毒になったパパ。

 これで一安心と思っていたのですが、その翌日。

 「約束破るなんてそれでも男か!!」
 怒りながらジャイアンを探し回るのび太とドラえもん。
(ジャイアンは物陰に隠れて、目の前のスネ夫に「しーっ」の仕草〈スネ夫あっけ〉)

 「ああ聴きたいなあ」
 「頭がボーッとしてイライラする」
 食事をしながらも、二人とも中毒症状でうわのそらです。

 一方パパはママが呼んでも食事に出てきません。
「今口に入れたこの一枚を噛み終わるまで待って」
 ソワソワしながらも一生懸命ガムを噛むパパを見たドラえもんはのび太に
「あの薬効き目が強すぎるのかな」
 と、言います。
                                              (完)

 とにかく、全ドラえもん作品中二度と観られない、「ジャイアンの歌にマジ熱狂するのび太とドラえもん」が観られるところが最大の魅力です。

「キャー!ジャイちゃーん!!」
「しびれるぅ!!おしっこもれそう!!」
 ……このコマは子供の時読んでも大爆笑だった記憶が残ってます。(そして、それにドン引きなスネ夫たちの反応も。)

 あと、草の根わけても観客を探そうとしていたジャイアンが、のび太たちから逃げ惑う逆転現象ですね。

 しかし、中毒になってしまったあとの状況については、逆に大人になってから読むと、ひやりとするところもあります。

 こういう作品を読むと、やっぱり、藤子F先生は、ドラえもんを子供たちだけに向けて書いていないんじゃないかなと思わされます。

 子供はもちろん、その子の親も笑わせ、その子が大人になったらそのときも笑わせ、となるような仕掛けがたくさん盛り込まれています。

 だから、いくつになっても、何度読んでも面白いのです。

 もし、この文がもう一度ドラえもんを手に取ってくださるきっかけになれば幸いです。

 読んでくださってありがとうございます。
posted by Palum. at 08:01| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月19日

伝説的名作(『ドラえもん』「きこりの泉」きれいなジャイアン登場)※ネタバレあり

 ドラえもんコミックスアメリカ発売情報を知ったことに勝手にちなんで(そのご紹介記事はコチラ)、今回はドラえもん作品のうち個人的に好きな作品を文でご紹介させていただきます。

(なのでネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス36巻収録です。この時期のドラえもん脂乗り切ってますんでコミックス全体面白いです。)

ドラえもん (36) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (36) (てんとう虫コミックス) -

あるいはこの文庫版『ドラえもんジャイアン編』に収録されています。(こちらも傑作揃い、またの機会にご紹介させていただきたいです。)

ドラえもん (ジャイアン編) (小学館コロコロ文庫) -
ドラえもん (ジャイアン編) (小学館コロコロ文庫) -

 おそらく、全ドラえもん作品の中でも最高傑作に挙げる方も多いであろう「きこりの泉」

 特に一コマのパンチという点では間違いなく最高の力を持っています。

 私も大人になってから漠然と「なつかしー。好きだったなー子供のころ」てなノリでドラえもんを読み返し、「……今読むともっと面白い」と気づいたのはこの作品からだったと記憶しています。

 これを読まなければ、「ドラえもんの」魅力を見過ごしていたかもしれません。ああゾッとする(←どんだけ好きなんだ)。

 以下結末までのあらすじです。

 のび太が大事にしていたぴかぴかのグローブを、
「のび太はエラーばっかりでボールに触っていないからグローブがきれいなんだ。ジャイアンの(ボロボロの)ととりかえたほうが良いよ。グローブも役に立てて喜ぶさ」
というスネ夫の残酷にして無茶苦茶な提案で強引に交換させられてしまったのび太。

 当然、「ドラえも〜ん!」と泣いて帰ってきますが、「のび太〜!」とドラえもんも泣きながら出迎えます。

 ドラえもんの大事などら焼きをパパが知らずにかじってしまったのです。

 残り半分になってしまったどら焼きをあきらめきれないドラえもんが、出した秘密道具が
「きこりの泉」。
 
 童話「しょうじきなきこり(※)」を下敷きにした機能をもつ道具です。
(※)きこりが大切なオノを泉に落としてしまったら、泉の中から女神が現れ、「あなたの落としたのは、この金のオノか銀のオノか」と尋ねてきたので、正直に「いいえ、鉄のオノです」と答えたら、そのオノと一緒に金銀のオノも貰ったという話。

 ドラえもんが食べかけのどら焼きを泉に落とすと座布団大のどら焼きを持って女神があらわれ、「あなたの落としたのはこの大きなドラやきですか」と尋ねます。

 ドラえもんが正直に「いえいえ、食べかけのどら焼きです」と答えると、女神は正直のご褒美に座布団大のどら焼きをくれて、泉の底に戻っていきました。
(ただし、童話と違い、最初に落としたものは戻ってきません。あくまで交換です。)

 これにならってボロボログローブをぴかぴかのにしたのび太は、しずかちゃんにも使わせてあげることにします。

 小さくなって着られなくなった洋服を、素敵な服に交換してもらい喜ぶしずかちゃん。

 その様子を通りがかりに見たジャイアンは、自分にも使わせろと言います。

 のび太のグローブも平然と強奪したジャイアンのこと。当然、欲の皮つっぱってますから、家から大きな段ボール山盛りに古い品物を持って出てきます。

 しかし、その重さによろけて、ザンブと泉に転落。

「これですか」
現れた女神が連れて出てきたのは「ジャイアンのフォルムに出木杉君をもしのぐ端正な目鼻立ちの少年」。
いえ、もっときたないの.png

 驚いたのび太とドラえもんが反射的に
「いえ、もっときたないの」
と、正直にもほどがある返答をしてしまうと、女神は微笑み

「しょうじきのごほうびに、きれいなジャイアンをあげましょう」

どうする?.png

「どうする?」
 二人にフレンドリーに手を置いてすがすがしい笑顔を見せる「きれいなジャイアン(心もきれいな模様)」を見上げ、迷う(←……)のび太とドラえもん。

 背後では「交換されたきたないの」として泉の底に回収されそうになっているジャイアンが、女神の白い御手に引っ張られながら
「たすけてくれ〜〜!!」
と、必死で叫んでいます。

(完)

 とにかく、それまでいかにも児童漫画的にわりとのんきに、それこそ「あんなこといいな、できたらいいな♪」風に進んでいた展開が、突然「きれいなジャイアン」のビジュアルと、ドラえもんとのび太の「いえ、もっときたないの」という、思わず言うには失礼すぎるセリフに続くところがすごい。

 だいたい背後で人が泉の底に引きずり込まれそうになっているのに「どうする?」って、あなた……。

 ところで、この話にちなんだきれいなジャイアンのフィギュアというものも存在します。

UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -
UDF きれいなジャイアン(ノンスケール PVC製塗装済み完成品) -

 ※2014年当時限定版が1万円程度で販売されていましたが、そちらは完売済みの模様です。

 作った方と買った方のセンスと英断に心から賛辞をお送りしたいと思います。

(また、藤子F不二雄ミュージアムでは、この話にちなんだきれいなジャイアンが登場するスポットというのがあり、人気を集めているそうです。やっぱりファンにとっては最も印象深い作品のひとつなんですね。)

 よろしければ是非、コミックスの中のあの奇跡の一コマ(「これですか(Withきれいなジャイアン)」「いえもっときたないの」)をお楽しみください。
 
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 07:00| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月18日

続ドラえもんアメリカへ(アメリカ版Amazon電子書籍でドラえもん発売)読者レビュー概要ご紹介

先日、ドラえもんの電子書籍版がアメリカのアマゾン(ネット通販会社)で販売開始(2013年末より)というニュースをご紹介いたしました。過去記事はコチラ
(商品購入ページはコチラ

 今回は、この商品についてアメリカの方たちがどう言っていらっしゃるかの概要をご紹介したいと思います。(レビューページはコチラ
(わたしのアテにならない語学力による上、とてもざっくりと意訳しただけなので、だいたいこんな感じのことを言っているんだなくらいに思っておいてください〈汗〉)
 
(タイトル:ついにアメリカに。間違いなく待っただけの価値のある作品です)

 ドラえもんのキャラクターを最初に見たのは香港に旅行に行ったときでした。
 以来、どうしてアメリカの誰もこの漫画を輸入しようとしないのかと不思議に思ったものです。結局これは今に至るまで実現しませんでした。アジアの多くのファン(そしてアメリカのディープなオタク)が言うとおり、このシリーズは間違いなく良作です。
 このシリーズの中心人物はノビー(日本名はのび太)というほとんど日本版チャーリー・ブラウン(補:スヌーピーの飼い主の少年)のような少年です。
 のび太は近所でもっともツイていない子で、何をやってもまともにできません。それが彼の未来の子孫に恐ろしい影響を及ぼすため、彼のひ孫のソビー(セワシ)が、彼を助けるためにロボット使用人(補:ドラえもんのこと)をのび太のもとに送り込みます。
 このシリーズは子供と同様に大人をも失望させませんし、「ナルト」や「ワンピース」のような、日本のアニメや漫画によくある暴力的場面もありません(どちらもいい作品ではありますが、小さな子を持つ親からすると好ましくないでしょう)。
 ドラえもんは子供からコアなオタクにまで訴えかけるものをもち、先ほど述べたような作品とは異なるタイプの魅力を持つ漫画として、親も安心して子供に読ませることができるものです。キンドル等を持っているなら、ホリデーシーズンにお子さんに買ってあげる作品として強くお勧めします。

 原文は以下の通りです

(It's finally in the US, and was definitely worth the wait)
I remember first seeing the Doraemon character on a trip to Hong Kong back in June 2007. From that point on, I was wondering why no one in the United States was willing to import this Japanese franchise to the United States. It's true, this manga series has never made it to the US, until now. I have to say this series is as good as many of its fans in Asia say it is (and of course the few American otaku who have heard of him just by being basement dwellers). The series focuses on a boy named Noby (or "Nobita" as he's called in Japan) who is pretty much like a Japanese Charlie Brown. He is the unluckiest kid on the block and just can't seem to get anything right. It has a horrible effect on his future descendants, so his great grandson, Soby (Sewashi), to send his robotic servant out to help him. This series does not disappoint when trying to appeal to kids and adults alike, as anime and manga in general are being stereotyped as violent action shows thanks to the likes of Naruto and One Piece (which are both still good, but probably wouldn't be liked by parents of young children), Doraemon is an example of a series that can appeal to kids and hardcore otaku alike, and parents can trust the stories in this manga to be appealing without the tropes I mentioned before that they most associate with anime nowadays. It's a definite must in my book if you have a Kindle and want to shop for eBooks for your children online here at Amazon.com this holiday season.
(Matt Norcross氏のレビュー)

 のび太がチャーリーブラウンに似ている(a boy named Noby who is pretty much like a Japanese Charlie Brown.)というのはナルホドと思いました。確かに二人とも心優しいけれど何をやってもうまくいかないというところがあります。
 それに人間以外の相棒(ドラえもんとスヌーピー)がいるところも。

 余談ですが、ここで、「非常にツイテない子で、何をやってもだめという性質が、彼の未来の子孫に恐ろしい影響を及ぼす(He is the unluckiest kid on the block and just can't seem to get anything right. It has a horrible effect on his future descendants)」というのが具体的にどういうことかご説明させていただくと、のび太が就職できずに立ち上げた会社が火事を起こし(そのときの写真を見る限り社長自ら花火で遊んでいたかららしい〈なんでだ〉)、おそらく元からうまくまわっていなかったことも手伝って借金まみれになるという展開です(その返済が曾孫セワシ君の代まで続いている)。会社丸やけ記念.png

 借金取りに詰めかけられて胸ぐらをつかまれているのび太を、子だくさんの妻ジャイ子(歴史が変わる前は彼女がのび太の嫁〈そして年を追うごとにジャイ子はふくよかに、のび太はやつれていく……〉)がなんとかしろ的になじっている様子が記念写真におさめられています(誰が撮ったんだ)。

借金取りおしかけ記念.png


 この方のおっしゃるとおり、子供に最適な漫画なんですが、こういうシビアさはむしろ「ナルト」にも「ワンピース」にも無いよな……。

 ちなみにこのエピソードはてんとう虫コミックス1巻、第一話に収録です。

ドラえもん 1

 もう少しの読者レビューも簡単にご紹介いたします。

 (タイトル:ドラえもん……ついに!イエーイ!)←明るいなあ……。
 これは昔の、1960年代の漫画です。
 アジアの漫画レイアウトなので、普通に読もうと画面をスワイプしてみたら何も起きませんでしたハッハッハ(アメリカの漫画は左から右に展開するので、逆に動かさないといけないということかと)ドラえもんはとても面白いです。日本版ミッキーマウスとでもいうキャラクターで、アジア中で人気があります。アメリカは日本での最初の発売から40年以上経ってからこれを見出しました。そして驚くべきことに発売から40年経った作品なのに、物語、冒険、秘密道具は今の我々にも新鮮に映ります。

(Doraemon…finally! Yay!)
OK, these are the older comics, tracing back to the 1960s. Doraemon will look better. Funny that pages turn the "Asian" book way so that when I first swiped the screen the "normal" way, nothing happened. Ha ha! Doraemon is so much fun. It is the Mickey Mouse of Japan and wildly popular across Asia. America is only discovering it more than 40 years after it was first published. And the amazing thing is that even if it's 40 years ago that Doraemon was first published, the stories, the adventures, and gadgets remain fresh in our time.
(wonkifer氏のレビュー)


 他にも数件レビューがありますが、皆さんかなり予備知識があるようで、概して「やっとアメリカにも到着したか」「全く古びていない作品」「大人にも子供にも面白いよ」ということを好意的に書いていらっしゃいます。とても的確な意見だと思い、それこそ日本のコアなオタクである私も読んでいて嬉しく思います。

 確かに日本の漫画が海外で支持されている理由の一つである「絵の華やかさ」がドラえもんにはありませんが、一番丁寧にレビューを書いてくださっている方が触れている通り、代わりにこの作品にはスヌーピーのようなキャラクターの個性とセリフの機微があります(あと子供の世界も案外大人同様せちがらいってさりげなく書かれているとか……)。スヌーピー同様にキャラがまるっこくてカワイイのに、言ってることは深いってギャップも相通ずるものがある。
 
 お子さんたちは言うまでもありませんが、スヌーピーのカワイサの裏にある哲学を愛するアメリカの大人が、併せてじっくり読んでくださるといいなあと思います。

 しかし今回思ったのですが、「ドラえもん」がようやくアメリカ上陸ということは、おそらく「サザエさん」(4コマのほう)もまだ一般には知れ渡っていないでしょう。それにこれはもっと売り出しにくいかもしれません(完全に「日本の普通の人の暮らし」がベースですから)。

 それから、文学の世界だと、現代作家や、耽美的ないかにも日本らしい作品を書いている作家に比べ、意外と夏目漱石のウケが悪いです。(いちおうイギリスの本屋で傾向を確認してきた。なくはないのですが、あんま置いてないのです。)
 わたしは上記3つが日本の漫画・小説の最高峰、世界にも類を見ない名作だと思っているので、よりにもよってこの作品群が無冠の帝王状態になっているのがなんか残念です。

 今後この良さがもっと広まってくれることをせつに願います。勿論日本の人たちにも。だってホントすごいんだから。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 11:24| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月17日

ドラえもんアメリカへ(アメリカ版Amazon電子書籍でドラえもん発売)朝日新聞デジタル記事より

 今日は明るめにドラえもんについてご紹介させていただきます。

2013年11月22日からアメリカのAmazonでドラえもんのコミック電子書籍が配信開始されたそうです。
  (朝日新聞デジタル記事はコチラ
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  (アメリカ版Amazonの配信ページはコチラ
 
 というか、今まで売っていなかったんですね。

 アジアやスペインでは有名なんですが(なぜスペインかは知りませんが、この素晴らしい作品を紹介しようと思い立った賢くて立派な人がいたに違いありません〈真顔〉)。

 
 私にとってドラえもんは世界最強の漫画(否定意見不受理)。

 なんの冗談でもなく幼少時代ドラえもん読みたさに必死で字を覚えたので、もはや好きなどというレベルではなく、私の脳の言語野はドラえもんによって形成されたといっても過言でもありません。

 長ずるにつれ一応読書や映画鑑賞も趣味になりましたが、むしろそうやって色々なものに触れてからドラえもんを読み返すと、そのセリフやギャグの抜群のセンスや、あたたかさに気づかされ、ますます惚れこんでしまいました。

 今は私のような大人ドラえもん崇拝者の方も多いと思いますが、まだまだ「子供の時に読んでいずれ卒業するもの」と思われているのが無念でなりません。

 ホント笑えるし泣けるのに。

 朝日新聞の記事によると、「頼りないのび太はアメリカではウケないのでは」という懸念で今まで先送りにされてきたそうですが、是非そうおっしゃらずにちゃんと読んでほしいです。

 それにのび太は頼りなくないです。

 射撃の超達人で、タイムマシンに乗ってアメリカ西部の町に行った際はならず者の集団を麻酔銃ですべて眠らせたし(コミックス24巻)、大長編「のび太の宇宙開拓史」では、のび太の友達ロップル君たちの住む星から彼らを追い出そうとした悪役ギラーミンと、クライマックスシーンで、早撃ちの決闘を繰り広げています。


ドラえもん 24


大長編ドラえもん 2 のび太の宇宙開拓史

「ノビタとかいう奴前に出ろ。腕利きのガンマンと聞いた。決闘だ」

(のび太、ショックガン〈相手を気絶させる銃〉をとりだしながら皆の間から出てくる)
「ぼくにまかせておけ。なあに負けるもんか」

 
 ギャー!!超頼もしー!!(←あー変態だ)

 まあ、この特技以外にも人間として優しくて味わい深いキャラなので、そこがわかるまでちゃんと読み続けてくれる方が多いといいなあと思います。(もちろん日本の方たちも)

 それはそれとして、朝日デジタルの記事で紹介されていた画像から英語を拾い読みして、アメリカでドラえもんたちの紹介文(アメリカ向けに設定が変更されている部分を含め)で面白かった部分を一部訳せていただきたいと思います。
引用画像はコチラです。

@ドラえもんの好物

 どら焼きがFudgy Pudgy Pie(ふかふかのパイ)に変更されています。

 具体的にそういうお菓子があるのかと思いましたが、ちょっと見つかりませんでした。

 パイじゃないけど似た名前のケーキがありましたので、一応レシピを貼らせていただきます。美味しそうなクリーム入りのチョコケーキです。

 レシピはコチラ
(でもこれバクバク食べるのお金かかりそうだなあ……。)


 これで、あの、

「どら焼きをしばらく食べていないと、ウォーアオーと苦悶の声をあげて部屋でのたうちまわる」

「『(ドラえもんが作った太陽光燃料を売って)もうけたお金で会社を作れば、社長としてどら焼き食堂(ドラ焼きカレーなど傍目にはあまりそそられないメニュー多数)で食べまくれる』というのび太の甘言に目がくらみ、燃料を買いに来たご近所の方たちに対して売り値をつり上げまくる」

という、小学生向け漫画じゃヤバいんじゃないか的な(私はそこが好きなんですが)狂気にも似たどら焼き愛が伝わるといいのですが。

Aのび太(Noby〈米向けあだ名〉)

 A good kid who needs to learn to stick up for himself and stop being so lazy.
 
Stick up for で「〜を守る、支持する」という意味だそうです。(すみません一時「指示する」と誤植で書いてしまっていました。訂正させていただきます。)
 なので、
「自分自身を守ることと、すごい怠けぐせを直すことを学ぶ必要がある気立ての良い子」
 といったところでしょうか。

 のび太理解入門編(なに?)としては的確ですね。

 屁理屈(ただし本人は正論だと信じている)は禅問答の和尚並みに巧い(※)とかはおいおい読んでいただくとわかるんですが。

(※)部屋を散らかし、ドラえもんに「穴の開いたグラスなんていらないだろ」と捨てるように促された際、「のどが渇いていないときに使える」と真顔で拒否していた。

(でもむしろこういうセンスこそ、台詞がすごく哲学的なスヌーピー〈コミック名は「Peanuts」〉を生んだアメリカには届くんじゃないかと思うんですが。)

 
Bジャイアン(米版あだ名Big G〈←カッコイイ【笑】〉)

A typical schoolyard bully. His singing is the terror of the neighborhood.
schoolyard bullyで「学校でのいじめっ子」だそうです。

「典型的な学校でのいじめっ子、彼の歌は近隣住民の恐怖となっている」ですかね。

 ちゃんと大長編では非常に男気がある(※)というところもゆくゆくはアメリカに伝わるといいのですが。

(※)「のび太の海底鬼岩城」ではのび太が数十メートルの大王イカに襲われた際に、バットを持って「こらあお化けイカ!のび太をはなせ!!」と、ためらうことなく飛び出して行っていた。
このほかにも感動エピソード多数なんで、これは回をあらためてご紹介させていただきます。

大長編ドラえもん 4 のび太の海底鬼岩城

 ところで今回「neighborhood」という語で気づいたんですが、あの子供たちが全員顔面蒼白で参列し、公演中は気絶しないようにと腹に力を入れて必死で耐える「ジャイアンリサイタル」、会場である空き地を囲むお宅の方々は何も言わないんでしょうかね。

 一度かあちゃんが「近所迷惑な歌はおやめと言っているだろ!」とジャイアンを叱りつけていますが、それでも結構頻繁に実施されているんですが……。

 以上です。この話題について英語版のページもありましたので、よろしければご覧になってください。

 英語版朝日新聞の記事はコチラです。

 この記事の続編として、アメリカ版のレビューを大まかに訳した記事もアップさせていただきました。よろしければ御参照ください。(続編記事はコチラ

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 09:21| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月02日

ぞうとおじさん(ドラえもん)

 ※本日は英語ともイギリスとも関係のない内容です。

 明日(2011年9月3日)はいよいよ藤子・F・不二雄ミュージアムの開館です。
 
 公式HPはコチラです。

 というわけで、今回は特に大人の方にもう一度ドラえもんを手にとっていただくことを願って、名作「ぞうとおじさん」について書かせていただきたいと思います。

 あ、それ読んだ。という方はたくさんいらっしゃると思いますが、改めて読み返すと、その奥行きに改めてお気づきになると思います。

 戦時中、空襲で檻が壊れて猛獣が逃げ出すことが懸念されたために、動物園で多くの生き物が殺処分されたという出来事をモチーフにした物語です。

 なかでも、危険を察して毒のえさを食べることを拒否してしまったために、餓死という方法で死ななければならなかった象の悲劇は有名で、「かわいそうなぞう」という絵本にもなっています。覚えていらっしゃる方も多いかと存じます。

 大人になってからこの漫画を読むと、藤子Fさんが、いかにこの悲劇の中の動物と飼育員さんの無念に心を痛めて、せめて、作品の中でだけでもなんとかしてあげたかったという、優しい気持ちがひしひしと伝わってきます。

 そもそも表紙がせつない。

 可愛いくるんとした目をした象を、ドラえもんとのび太が、きっと真剣な顔で両手を広げて守っています。大人になるとこの絵だけで目頭が熱くなる……。

 物語は、のび太の父方のおじさんが、インドから仕事で帰ってきたところからはじまります。

 おじさんは、のび太とおとうさんに、不思議な話をしてくれます。

 少年時代、おじさんは象の「ハナ夫」が大好きで、動物園に足しげく通っていました。

 しかし、疎開している最中に、ハナ夫は処分されてしまったと聞き、おじさんは泣きあかしました。
 
 と、ここまで聞いたところでのび太とドラえもんは激怒。

 「しかたなかったんだよ」というおとうさんに、「しかたがないとはなんですか!」「あんなにおとなしい動物を!」と、二人は話を最後まで聞かずに出て行ってしまいます。

「助けよう!」

 と、タイムマシンに乗った二人は戦時中の動物園へ。

 ふたりが駆けつけたとき、ハナ夫はすでに餌をもらえずにやせ衰えています。

 それでも、飼育員さんが入ってくると、目をぱっちりと開き、「プオーッ」と檻の向こうから鼻を伸ばしてえさをねだります。

 そんなハナ夫に、

「おなかがすいたか?よしよし、今らくにしてやるぞ。」

と、飼育員さんはふるえる手でジャガイモをさしだしますが、「だめだ!わしにはやれん。」とハナ夫の鼻先からジャガイモをひっこめてしまいます。

 それは実は毒のえさだったのです。

 そうとは知らないドラえもんとのび太が「けち!」「かわいそうじゃないか!」とゴロゴロ檻に投げ込んでも、かしこいハナ夫はポイと毒えさを外に出してしまいます。

 餌を食べなかったことにホッとしつつも、なんでこんなことをするのかと飼育員さんを責める二人に、命令が出たからだと言いながらも、「誰が殺せるもんか……」と涙する飼育員さんと、彼のほほに擦り寄るハナ夫の鼻……。

一方、軍部の人間が、いつまでもハナ夫を処分しないことについて、園長を責めています。
毒入りの餌も食べなかったと聞いて、撃ち殺してやると飛び出す軍人に、すがりつく飼育員さんと、なだめようとするドラえもん。

「まあまあ、そうかっかしないで相談しましょうよ」
「園長、気をつけなさい。タヌキがおりを出てる」

カッとするドラえもん(大笑)。

 もめている最中に空襲がはじまり、ハナ夫のおりに爆弾が落ちます。
 危険をおかしておりに向かう飼育員さん。
 壊れたおりから出て、飼育員さんに嬉しそうにいななくハナ夫……。

 ここからがドラえもんの不思議道具の出番で、このときの出来事が、のび太のおじさんの、インドでの不思議な話につながっていくのですが、是非じかにお読みいただきたいと思うので、あらすじのご紹介はここまでにさせていただきます。

 とりあえず大人になってから読むと、ストーリーの妙味もさることながら、

 @藤子さんのお描きになる象が優しそうで可愛い。
 A飼育員さんも象が大事で辛かったのだ。

という二点が非常に染みてきます。

 藤子さんのお描きになる動物は、あらためて見ると、びっくりするほど可愛く、(蛇のツチノコでも大福みたいで超カワイイ)その意思や優しさのある目がとても魅力的ですが、このハナ夫がまた、穏やかで人を信じる光をたたえた目と、豊かな表情が素敵なのです。

 うちの犬にソックリ……(可愛いとみんなうちの犬に見える)。

 そして、象の鼻の動きの描写もまたこまやかです。

 ときどき動物番組のドキュメンタリーを見るのですが、象の鼻はどんな動物よりも表情に富み、差し出されたいちずな腕のように、ダンサーのエレガントな舞のように思いを伝えるのです。そのへんが漫画の中にちゃんと描かれている。

 そして、飼育員さんの苦悩と、ドラえもんたちの救いの手に対するとめどない涙……。

 これは本当に優しい物語であり、象と、人々の悲しみに対する、藤子さんの深いいたわりの思いに溢れていると思います、

 藤子・F・不二雄大全集「ドラえもん」4巻収録。オススメです。


posted by Palum. at 07:46| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月09日

「藤子・F・不二雄 ふしぎ大百科」(NHK BS h)


取り急ぎご連絡まで。(英語ともイギリスとも関係の無い話題ですが……)

 明日(2011年3月10日【木】)NHK BS hで「藤子・F・不二雄 ふしぎ大百科」という番組がやるそうです。

 言わずと知れた「ドラえもん」の作者、藤子Fさんの素顔が紹介されるそうです。

 わたしは冗談抜きで「ドラえもん」で字と言葉を学んだクチで、今でもあの漫画にメロメロに惚れています。
(当ブログでもケンブリッジという町ひさしぶりトランクという記事の一部で、ドラえもんの内容を引用させていただいております。)

 夢も、笑いも、涙も、愛も、友情も、賢さも、世知辛さも、毒も、シュールさも、みんなあの丸っちくて心温まる絵の中にある。

 間違いなく、世界最強の漫画のひとつです。

 イギリスでの一年間の暮らしの中で、スペインやアジアの人とお話する機会がありましたが、あちらでもドラえもんは人気だそうで、大人のかたに、真面目な、やや心配そうな顔で「ドラえもんの最終回は『全部のび太の夢だった』というのは本当ですか?」と聞かれたこともあります。(そんなの寂しいと思われたそうで)

 そのくらい年代も国籍も超えて人の心をつかめる作品だということです。

(とくに大人になって再読すると、「禅問答を思わせるスケールや、大人をギクリとさせるウィットを内包する台詞(※1)」と、「かわいらしい絵(※2)」のコントラストがたまらない……)

 この偉大な漫画の作者である藤子・F先生。

 詳しくは存じませんが、大変優しい方だったというお話は、以前のドラえもんの声優さん、大山のぶ代さんの著書「ぼく、ドラえもんでした」で読んだことがあります。

 明日は、藤子・F先生のどんな人物像が語られるのか。藤子不二雄A先生や、元編集者、ご家族の方々も取材に応じていらっしゃるそうなので、本当に楽しみです。皆様もよろしければご覧になってみてください。では。

(前回予告させていただいた、ミュージカル「ヨセフ」や映画「英国王のスピーチ」の記事も近々更新させていただきますので、しばらくお待ちください……)

(※1)【例】自称歌手ジャイアンに(大長編では、魔物も吐き気をもよおし逃げ去るという、ある意味奇跡の歌声の持ち主)ファンレターを書いて、パネルを貰うというコンクール企画を強制された近所の子供たち(「ジャイアンリサイタル」では定期的に死ぬ思いをさせられている)。届いた手紙はいずれも投げやりな字で、十三通。

 中身は「ジャイアンの歌にはしびれる。しびれて気が遠くなって熱が出る。ジャイアンの歌を聴いていて一番うれしいのは終わったときだ」など。

 ちなみにパネル撮影を担当したドラえもんは、ヘソ出しルックでビジュアルメイクにカラフルウィッグのジャイアンにウインクされながら「ポーズはこれでいいか。」と聞かれ、「いい!いい!どうでもいい。」と満面の作り笑いをしていた。

(「ジャイアンへのホットなレター」より【大人が再読するとこのタイトルのセンスにもしびれます(本来的な意味で)】」てんとう虫コミックス第35巻)

(※2)ドラえもん自身も、丸くて、笑顔がいかにもお人よしな感じで、カワイイのですが、最高傑作は「ツチノコ(かつて日本中を騒がせた幻の短い蛇)」。
一般的にはコブラを短く太くしたような姿(跳ねるとも毒があるとも噂されたそうです)とされていたようですが、藤子ワールドでは、「大きめの大福もちを二つくっつけたような頭と体に、ちょっと引っ張ってちんまりした尻尾をつくったような姿。ゴマ粒のような小さくて罪の無いまなこで、しま模様、個体によっては何故かヒゲ」という世にも愛くるしい姿をしています。
 ちなみに未来の世界ではツチノコはペットとして大人気で、犬みたいにお洋服や赤ちゃん風の帽子姿でお散歩したり、餌を食べるために「アーン」と口を開けて立ったり、人に撫でられてあの尻尾をピコピコ振ったりしています。

(「ツチノコ見つけた!」より。てんとう虫コミックス9巻)

 あんなに可愛くて人懐こいなら、うちにも一匹いてほしいくらいですが、これはドラえもんファンには伝説のキャラのようで、フィギュアが売り出されたこともあるそうです。  
あのしま模様のお餅の妖精のような全身には、藤子Fさんの夢見る力と、子供たちへの優しさと、希代のデザインセンスが詰まっています……。
posted by Palum. at 22:50| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする