❝リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展 英国音楽史上最強のロックンロール・バンド、オアシス。 デビュー30周年を記念する特別展が開催!2024.11.1 FRI-11.23 SAT Roppongi Museum 10:00-18:00(最終入場17:30)
❝ノエルとリアムのギャラガー兄弟を擁する、英国・マンチェスター出身のロックバンド。1991年結成。1994年、1 stアルバム『オアシス』(原題:Definitely Maybe)を発表し、一躍人気となる。「ホワットエヴァー」「ワンダーウォール」「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」などのヒット曲を世に放つも、たびたび兄弟の不仲が報じられ、2009年に活動停止。このほど15年ぶりの再始動と2025年のライブツアー開催が発表された。
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❝「リヴ・フォーエヴァー」というタイトルはOKだけど、この写真は2ndアルバム『モーニング・グローリー』(1995年)のときのものだから合わないって言われて。
でも、こちらの意図としてはそういうことじゃないんだって説明したんです。彼らは、1stアルバムの30周年アニバーサリーというようなニュアンスで考えてるけど、私たちとしては、レトロスペクティブ、大回顧展みたいな感じで考えています、と。このバンドと一緒に生きてきた30年を全部振り返る象徴的な写真にしたいんだって説得して、なんとかOKをもらいました。(オアシスが再始動するという見積りで進めた『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側➁ソニー・ミュージックエンターテイメント 展覧会責任者、小沢暁子さん談)
企画側の方たちが粘り勝ちでメインビジュアルに持ってきた、この素晴らしい写真の撮影者は、ジル・ファーマノフスキーさん。50年のキャリアを持ち、ノエル・ギャラガーが「親友」と呼んで、絶大な信頼を寄せる音楽写真家だ。
(ノエルとジルさん〈素敵な方だし本当に仲が良さそう〉)
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❝私が現場に着くと、ギャラガー兄弟は(補:MV撮影中に時間を持て余して)既にかなり退屈していたこともあって、セットや周りや外で5分間だけ撮影できないかという私の要求に、気がまぎれると喜んで引き受けてくれた。この日はいい写真がたくさん撮れた。どうやらノエルとリアムの間で口喧嘩があったらしいが、私は見ていない。それどころか私が撮った写真の多くには、兄弟間の仲の良さ、協調性、尊敬の念が見てとれる。
(ジル・ファーマノフスキーさんのコメント リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展パンフレットp.3)
パンフレットではこの他の写真でもジルさんが撮影当時のエピソードを語っている。この方の存在と作品を知ることができたのも、「リヴ・フォーエヴァー」展に行った大きな収穫だった。
(オアシスのほか、ビートルズやピンク・フロイドなど、数々のアーティストをカメラに収めた音楽史の証人とも言える方、いつか日本で彼女の仕事全体の写真展を開催していただけたらと思う)
ミュージアムグッズエリア(大混雑)でも、リアルタイム世代ではない、二十代らしき青年たちが、「この写真良すぎだろ……」と呟きながら、メインイメージの写真がプリントされたシャツを、「負けた」顔で、すごく仕方なさそうに一人二枚ずつ買っていた。(多分「着る用」と「保存用」)
神保町「New Gallery」でジルさんと今回の「リヴ・フォーエヴァー」展のロゴを手掛けた河村康輔さんの、オアシスをモチーフとした展覧会「Oasis Origin + Reconstruction」も開かれている。こちらも必見(入場無料)。展覧会で上映されている、ジルさんとノエルが写真を見ながら思い出を振り返っている動画も、とても面白かった。
追記:❝企画展「Oasis Origin + Reconstruction」会期延長のお知らせ 開催中の企画展「Oasis Origin + Reconstruction」は、ご好評につき会期延長が決定いたしました。 2024年10月31日(木) - 2024年12月8日(日) ※11月25日(月)休廊 開館時間:12:00 - 20:00❞
この投稿をInstagramで見るこの投稿をInstagramで見る神保町の展覧会のメインイメージポスター。ジルさんの写真を素材に、河村康輔さんのシュレッダーを用いて貼り合わせる手法で生み出された、リアムとノエルのコラージュ作品。
彼らの印象的な強いまなざしが、揺らぎ、交錯しているようで美しい
グッズ売り場を抜けるとフォトスポットがある。
デビューアルバム『Definitely Maybe(邦題『オアシス』)』(1994年)のCDジャケットが再現された小部屋。部屋に入って小道具も持って撮影ができる。
こちらは10年前に開催された展覧会でも使われていたそうだ。
❝来場者がそのなかに入って写真が撮れるようになってます。10年前の展覧会に来た方が、もしかしたらご家族とかができて、人数が増えてるかもしれない。オアシスと人生を一緒に歩んでる感が見えたら面白いかなって思います。
(『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側➁)
(部屋に入った人が見える角度に「ポーズのお手本」用の写真があるこまやかな心配り)
「同じ感じ」にするために、きっちり床に寝そべる人、ギターを奏で(るフリをして)、遠い目をする人、と、撮る側も撮られる側もわきあいあいとして、順番待ち時間も楽しかった。
こちらは「リブ・フォーエバー」MV内の、外壁に付いた椅子風の画が撮れるトリックアート。
❝「リヴ・フォーエヴァー」のミュージックビデオに出てきた椅子です。それがやりたくて!予算の関係でできないかも……ってなりながらも、押し通しました。いつ(プロデューサーの)武藤に、「この椅子はやめましょう」って言われるかビクビクしながら(笑)。最後はもう、絶対何がなんでも押し通すつもりだったんですけど!
(同上)
❝当時ノエルは、破滅に向かっているようなグランジ音楽に対して、ものすごく嫌だったっていう話をしてたんですね。カート・コバーン(※1)はすべてを手に入れた末に破滅的になって、本当に亡くなってしまった。いっぽう、ノエルたちは何も持ってなかった。地方の公団住宅に住み、生活は苦しくて、お母さんは自分たちの学校で給食を作っていて、家に帰ると父親に殴られる。そういう生活を送るなかからめちゃめちゃ勢い良く「俺たちはロックスターになるぜ!」っていう曲を書いて世に出てきた。当時のイギリスは不況で、地方都市の多くの若者は裕福じゃなかったから、オアシスの曲を聴いて、「俺のことだ」「私のことだ」ときっと思ったんですよね。「リヴ・フォーエヴァー」ではそんな彼らと、“死にたいじゃなくて、生きてやる”っていうメッセージを共有したんです。“俺とお前は永遠だ”って、何の根拠もなく。だから、本来はこの曲って、未来に向けたポジティブな楽曲と皆が思っていた。
でも、シェインに向けて歌ったときに(※2)、“俺とお前は永遠だ”が、過去も含めて、過ごしてきた時間のすべてが永遠なんだっていうふうに響いてきた。未来の話だけではなく、自分の歩んできた過去を振り返ったときにも、ちゃんと響く楽曲だっていうことにびっくりしましたね。バンドの30年を振り返るにあたって、このタイトル以外は考えられなかったですね。
(同上)
(ブログ筆者補1 「ニルヴァーナ」のフロントマン。1994年に27歳で急逝した)
(ブログ筆者補2 2023年に死去したザ・ポーグスのシェイン・マガウアンに向けてコンサートでノエルがこの歌を歌った時のこと)
今回この展覧会に行って、(楽曲の素晴らしさは大前提として)写真家ジルさんや、展覧会を企画したソニー・ミュージックエンターテイメントの方々など、オアシスを愛する人たちの情熱にも感動した。
この展覧会が再結成発表前から決定されたのは、企画側の方たちが、再結成の可能性を察知し、それに賭けて(叶わなくても1stアルバム30周年は祝おうという気概で)いたからだ。
ギャラガー兄弟二人のソロ活動もサポートし、「楽曲が聴かれつづけるようにCMのタイアップを決めたり、バンドの不在期間を埋められるように、バンドがいつファンの元に帰ってきても良いようにマーケットを温めつづけてきました」と嬉しそうに語る方たちの「(長年オアシスに関わってきたソニー・ミュージックエンターテイメント関係者)全員がめちゃくちゃ愛着を感じているバンド(※)」という熱い思いが、展覧会に結実している。(※『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側@より)
作品が「永遠に生きる」ためには、作り手の本物の情熱と才能が何よりも大切だが、その「本物の作品」を真剣に愛して、その素晴らしさを広めようと、自分の才能や労力をかけて挑む人たちも絶対に必要なのだ。
「本物」だからといって、同時代にそういう人たちや、「本物」を愛するファンと繋がることができるとは限らない。その意味ではオアシスは幸運なバンドだったのかもしれない。
でも「本物」でなければ絶対に30年もの間(そのうちの15年「オアシス」としての活動は止まっていたのに)、真剣に彼らの音楽を追いかける人々の思いが存在し続けることも、できなかっただろう。
❝予想もしなかっただろ。俺みたいな奴がまた世間を賑わすなんて(Some Might Say)
❝俺は飛びたいだけさ
生きたい こんなとこで死んでたまるかよ
俺は呼吸したいだけ
何も信じられないだけ だぶんな
でもお前も俺と同じだろ
俺らにはあいつらには見えないものが見えている
俺とお前は永遠だ
(Live Forever)訳詞:いしわたり淳治(展覧会パンフレットより)