2024年09月10日

映画「フィールドオブドリームス」の作家テレンス・マンのことば(追悼 名優 ジェームズ・アール・ジョーンズ氏)


みんなやってくるよ - コピー.jpg


アメリカ不朽の名作映画「フィールド・オブ・ドリームス」(1987年)で、作家テレンス・マンを演じた名優、ジェームズ・アール・ジョーンズ氏が、2024年9月9日に93歳でこの世を去った。

世界的な人気映画「スター・ウォーズ」のシリーズで、主人公の宿敵、ダース・ベイダー役の声を演じたことなどで知られるアメリカの俳優、ジェームズ・アール・ジョーンズさんが亡くなりました。93歳でした。

ジェームズ・アール・ジョーンズさんは、アメリカ南部ミシシッピ州の生まれで、長年にわたって映画やテレビドラマ、ブロードウェイの舞台など幅広い分野で活躍してきました。

中でも、世界中に熱狂的なファンを持つ「スター・ウォーズ」のシリーズで主人公の宿敵、ダース・ベイダー役の声や「ライオン・キング」で主人公の父親「ムファサ」役の声を演じ、その特徴的な重厚感のある声で多くのファンに親しまれました。

また、「レッド・オクトーバーを追え!」や「フィールド・オブ・ドリームス」など数多くの話題作に出演し、アメリカで、優れたテレビ番組などに贈られるエミー賞や、演劇界で最高の栄誉とされるトニー賞、それに映画のアカデミー名誉賞を受賞しています。

複数のアメリカメディアによりますと、ジョーンズさんは9日、東部ニューヨーク州の自宅で、家族にみとられながら息を引き取ったということです。

フィールド・オブ・ドリームス」は、不思議な声に導かれてトウモロコシ畑に野球場を作った男レイ(ケビン・コスナー)と、そこに天国から訪れる亡き野球選手たちの物語。

(畑で謎の声を聴くレイ)
それを作れば彼はやって来る - コピー.jpg
(トウモロコシ畑の野球場にやってきた選手たち)
やって来た選手たち - コピー.jpg

アール・ジョーンズ氏は、レイに頼まれて野球場を見に来た、引退した往年の作家「テレンス・マン」を演じていた。

1960年代に平和と自由を求めて活動していたテレンス・マンは、やがて変わってしまった時代と人々に失望して、長年表舞台から姿を消していた。

60年代に帰れ - コピー.jpg

当初、訪ねてきたレイにも非常に冷淡な態度をとっていたが、レイに懇願されて行動をともにするうちに、少しずつ心境に変化が訪れる。

レイと一緒に悲運の野球選手「ムーンライト・グラハム」を探し、地元の人たちから、既に亡くなっていたグラハムの思い出話を聞くときや、レイが疎遠なまま死に別れてしまった父親に抱く思いに接したときの静かな表情と声。

アール・ジョーンズ氏がテレンス・マンを演じてくださったから、映画の感動が、より深くなった。

(野球選手を引退したあとの「ムーンライト・グラハム」は、医者になり、生涯町に尽くした。グラハムの人柄を懐かしむ町の人に、温かい微笑みを浮かべるテレンス・マン)
グラハムの思い出を語る町の人 - コピー.jpg
町の人の話を聞くテレンス・マン - コピー.jpg

(旅の途中、レイが父にひどいことを言ってしまって後悔していると聞かされたテレンス・マンは、父の英雄だった選手たちの野球場のために奔走しているレイに「これがその罰だよ」と、そっと言う。「罰」という言葉に責める響きはなく、柔らかないたわりがある)
親父は戻らない - コピー.jpg
これがその罰だよ - コピー.jpg


彼の見事な演技は、ほかの数々の名作とともに、「『フィールド・オブ・ドリームス』のテレンス・マン」として、映画に心を打たれた私たちの思い出の中に、生き続ける。

感動を下さったことへの、心からのお礼として、テレンス・マンがレイに語り掛けたことばをご紹介させていただく。


【場面紹介】(※注:作品後半部重要シーン)

トウモロコシ畑を野球場にしたことで破産の危機に直面したレイは、義兄マークに畑を売り渡すよう、書類にサインを迫られる。

マークには、今、目の前で野球を楽しむ天国からきた選手たちの姿が見えない。売り渡せば野球場は潰される。

その時、レイの娘のカレンが言った。
畑を売ることはない。
「皆が、来るわ」

アメリカ中からここに人が集まってくる。そしてお金を払って、天国から来た選手たちの野球を観る。
だから畑を売らなくても大丈夫。

マークはカレンの話を聞こうとしなかったが、テレンス・マンも言った。

「レイ、皆、やって来るよ」

(テレンス・マンの言葉)
Field of Dreams (5/9) Movie CLIP - People Will Come (1989) HD

何かにひかれてアイオワに来る。
なぜかわからず君の家を目指し、
無心な子供に立ち返って、過去を懐かしむ。

君は言う「遠慮せず、どうぞごゆっくり」
一人、20ドル。
皆、当たり前のように払うよ。

金はあるが、心の平和がないのだ。

彼らはここに座る。
素晴らしい天気の午後、シャツ姿で…。
そして…ベースラインの近くに席があることを思い出す。
子供のころ、そこから自分たちの英雄たちを応援した。
そして試合を観る。
魔法の水に身を浸している気分でね。
手で払いのけるほど濃い思い出が甦る。

皆、やって来るよ、レイ。

長い年月、変わらなかったのは野球だけだ。
アメリカは驀進する。
スチーム・ローラー。
すべてが崩れ、再建され、また崩れる。
だが野球はその中で踏みこたえた。
野球のグラウンドとゲームは、
この国の歴史の一部だ。

失われた善が再び甦る可能性を、
示してくれている。

皆、やって来るよ。
間違いなく、やって来る。

驀進するアメリカの中で、それでも踏みこたえた野球のように、時代の波の中で失われかけた善もよみがえる。

それを必要としている人たちがいて、それを探し求めて、皆、やってくる。

失われた善、金と引き換えにした心の平和、それを思い出すために。

テレンス・マンは、レイとの旅、そしてトウモロコシ畑の中の野球場を見たことを通じて、一度は心から消し去ろうとした、アメリカという国と、そこに生きる人々への信頼を取り戻していた。

この国には「皆」がいる。
この野球場の価値を、「善」と「心の平和」の大切さを、わかってくれる「皆」が。

集まってきた選手たちの存在を背中に感じながら、テレンス・マンの声は、彼個人を超え、より大いなるものからの呼びかけのように、低く静かに、だが、力強く、レイに語り掛けた。

「皆、やって来るよ。間違いなく、やって来る」

アメリカは驀進する - コピー.jpg
金はあるが心の平和がないのだ - コピー.jpg
テレンス・マンと選手たち - コピー.jpg
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【アール・ジョーンズ氏のもうひとつの名作映画「輝きの大地」(1995年 アメリカ・南アフリカ)】


(白人の大地主ジャービス(リチャード・ハリス)と神父クマロ(アール・ジョーンズ))
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「輝きの大地」は人種差別に翻弄された1946年南アフリカが舞台。

強盗殺人事件の加害者と被害者、それぞれの父親の苦悩の果ての対話を描いた作品。

アール・ジョーンズ氏は、加害者の父、クマロ神父を演じた。

映画「輝きの大地(Cry, The Beloved Country) 」の英語版トレイラー(BGMはEnyaの「Exile」
Cry, The Beloved Country (1995) Trailer


【映画あらすじ】

ヨハネスブルクに出て消息不明になった息子が強盗殺人の犯人として逮捕されたという知らせを受け、刑務所に駆けつけたクマロ神父。
被害者は白人の社会福祉家で、黒人の貧困を救済しようと尽力していた人物だった。
一方、被害者の父親ジャービス(リチャード・ハリス)は、人種差別に疑問を持たない大地主だったが、事件をきっかけに、平等な社会を目指していた息子の思いを知ることになる。

クマロ神父が、ジャービスと偶然出会って激しく動揺する場面と、その後の二人の会話が忘れ難い。

差別による社会の荒廃がなければ起こらなかったはずの事件を裁く場面は、観ていて息が苦しくなるが、雄大な風景と、そこを吹き渡る風のような美しい音楽、名優二人の渾身の演技に心揺さぶられる。

そして、緑の大地で独り祈るジョーンズ氏の声が、一音一音、心臓に響く。

(南アフリカのTV放送局「SABC」で映画が放送されたときの予告編動画)

日本ではDVD化されていないのか、今は入手困難、レンタルでもなかなか出会えない作品だが、ぜひもう一度観たい。NHKで放送していただけたらと思う。



【海外の訃報ニュース】

ジョーンズ氏の映画代表作のほか舞台での演技も観られる。

(悲しいのに、こんな時でも「なんて存在感のある演技と良い声だろう」と、見とれ聴き惚れる)
New York City remembers the legendary James Earl Jones


【当ブログ関連記事】

映画「フィールド・オブ・ドリームス」(1989年アメリカ映画)あらすじと2021年メジャーリーグゲームの動画ご紹介

(映画トレイラー)

映画のあらすじと、映画撮影のために作られたトウモロコシ畑の野球場を、実際にMLBの公式戦で使用した2021年「フィールドオブドリームスゲーム」についてご紹介した記事(※一部内容重複)


【参照】
'#RIP dad': Mark Hamill honors James Earl Jones with Darth Vader reference(TODAY News Sept. 10, 2024, 8:01 AM GMT+9 / Source: TODAY By Liz Calvario)



posted by pawlu at 16:03| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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