2024年01月19日

映画「ボヘミアンラプソディ」の重要シーンとイギリスのスタジオ「エア・スタジオズ・リンドハースト・ホール(AIR Studios Lyndhurst Hall)」

(映画『ボヘミアンラプソディ』で「ライブ・エイド」にかける思いを語るフレディ・マーキュリー)
(引用枠付き)最高の天国をみんなに与える - コピー.jpg

 映画の中で「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーが一度は決裂したメンバーのもとに戻り、ウェンブリー・スタジアムで開催される一大チャリティーライブ「ライブ・エイド」への出演に向けて練習をしている場面。

 ここで、フレディはメンバーに自分がエイズに感染したことを明かす。

 このシーンのロケ地は、ロンドンの有名レコーディングスタジオ「エア・スタジオズ・リンドハースト・ホール AIR Studios Lyndhurst Hall」だ。

(引用枠付き)練習シーン - コピー.jpg

 そして、この場所が使われたことが、物語の大切なメッセージにもなっている。

(※以下、物語後半重要シーン)


(場面のあらすじ)

 スタジオでリハーサルするフレディ。しかしその声は、以前とは程遠かった。

声が出ないのは、ブランクと今までの無軌道な生活のせいだけではなかった。

 フレディは、練習を終わらせようとした三人を呼び止めた。

そして告げた、自分がエイズに感染したことを。

当時は進行を抑える有効な治療法がなかった。

 言葉を失ったあと、どうにか何かを言おうとしたメンバーを、フレディは押しとどめた。同情は時間の無駄だ。

残された時間で音楽を創る。それが俺の望みだ。

エイズに侵された悲劇の主人公でいるつもりはない。

俺が何者かは俺が決める。

俺が生まれた理由、それはパフォーマーだ。

皆に望むものを与える

最高の天国を

 フレディは天を指さしていた。

(引用枠付き)フレディの決意にうなずく三人 - コピー.jpg

 フレディの覚悟を聞いた三人は、それぞれに泣かないようにしながら、ただ、うなずいた。


 フレディは誓った。

 声は本番までにきっと取り戻して見せる。そしてみんなで最高の音楽を演奏して。

「ウェンブリーの屋根に穴を開けてやろう」

ジョン・ディーコンがぽつりと言った。

「ウェンブリーに屋根はないよ」

4人みんな、少しだけ笑った。

「なら空に穴を開ける」

フレディはこぶしを突き上げた。


 そして、4人は互いの背中に手を回した。

昔、アルバムがはじめてアメリカでチャートインして、みんなで抱き合って喜んだ時のように。


フレディは三人に言った。

「泣いてもいいぞ。愛してる」

(引用枠付き)泣いてもいいぞ 愛してる - コピー.jpg

 それからメンバーは、いつもの練習終わりのように、みんなで飲みに行くことにした。


(フレディが自分の病気を明かす場面)
Bohemian Rhapsody - Freddie tells Queen that he's got AIDS

リンドハースト・ホール

(引用枠付き)スタジオ全体図 - コピー.jpg 

 細長く背の高い窓、優しい空色のアーチ状の天井、そして大きなパイプオルガン。

 イギリスの名門スタジオ「AIR」内にある「リンドハースト・ホール」は1883年に建てられた教会を、スタジオに改装している。 

 設計者はロンドンの自然史博物館も手掛けたアルフレッド・ウォーターハウス。

 教会建築の音響の良さを活かすためか、スタジオになった後もあまり構造が変わっていない。

 【補足】

映画にも登場する、クイーンのメンバーが「We Will Rock You」の足踏みでリズムを刻むパートも、使われていない教会で録音された。(註1)

QUEEN -「We Will Rock You」あの“ドンドンパン"誕生秘話 | ボヘミアン・ラプソディ | Netflix Japan


 映画の中では、この「リンドハースト・ホール」の美しさ、とくに光が、この場面で映画が伝えたいことを、言葉の代わりに表現している。

(引用枠付き)告白 - コピー.jpg

 窓からの光を浴び、苦しみを背負いながら、人々のために自分の命をかけて音楽を捧げる覚悟のフレディに、教会のキリスト像を思いだす人もいるだろう。


 このスタジオでの告白の前に、病院で病を知ったフレディは、廊下の待合席に座っていた若者と、歌声を交わし合っている。


 通り過ぎる、サングラスをかけたフレディを観た若者は、かすかな声で歌った。

「……エーオ」

フレディがライブで観客を呼ぶときの声。

蒼白の若者は、彼がフレディだと気づいていた。

 振り返ったフレディは、若者に小さく応えた。

「エオ……」

 フレディの声を聞いた若者の顔に、微笑みが広がり、お互いそれ以上なにも言わず、フレディは光差す扉を開いて病院を出て行った。

(引用枠付き)病院の光 - コピー.jpg

 彼の歌は冷えきった心臓にも熱を蘇らせる、そして喜びを生み出す。

フレディはこの瞬間、自分の残された時間をどう使うかを、決めたのだろう。

病院ではまだおぼろげだった光は、スタジオでは、彼の決意の後の心そのもののように、明るく澄んでいる。


(実際の「ライブ・エイド」の映像 フレディと観客の歌声の応酬)

Queen Live Aid 1985 - EEEEEOOOOOO

 「リンドハースト・ホール」がスタジオとして使われはじめたのは、ライヴ・エイド(1985年)の約7年後で、映画のこの場面は、事実とは異なっている。(註2)

 それでもここをロケ地としたのは、人生の痛みに立ち向かう者に、生命を超えた勝利がきっと存在すること、そして戦う人と支える人々を照らす光と、彼ら自身が放つ輝きを、物語の中に示したかったからではないだろうか。

 互いを励まし合ったあと、飲みに向かう四人に、「Somebody to Love」のピアノ演奏が重なり、スタジオのピアノの上に、かつて教会だったスタジオの、細長く伸びた窓からの光が、くっきりと反射している。

(引用枠付き)ピアノに映る光 - コピー.jpg

 音楽は人に力を与える。音楽に人生を捧げる「パフォーマー」は、そういう形で人の魂を救う。

 ピアノに映りこむ、この世を超えた神聖さを感じさせる光は、そのことを観る人たちにそっと伝えている。


Queen - Somebody To Love (Official Video)

ウォード兄弟チャールズー re - コピー.jpg



(註1)Queen's Brian May Rocks Out To Physics, Photography

(註2)Bohemian Rhapsody | 2018(Movie Locations.com)

【参照】

・AIR Studios Lyndhurst Hall

・Lyndhurst Hall, Air Recording Studios / Congregational Church Date:22 May 2005


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posted by pawlu at 03:52| おすすめ映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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