2021年12月25日

「あたしゃねぇ!あんたがシャロンを殺したと思ってる!!」(刑事コロンボ「溶ける糸」より)コロンボ激怒の瞬間

あんたが殺した - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

真顔に戻るメイフィールド - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)


「あたしゃねぇ!あんたがシャロンを殺したと思ってる!そして今度はハイデマン先生をも殺そうとしていると!」

(I believe you killed Sharon Martin, And I believe you're trying to kill Dr. Hiedeman.)

  いつものほほんとした様子でつかみどころのないコロンボが、犯人である冷酷な外科医に激怒する珍しい一瞬。

(『刑事コロンボ』第15話「溶ける糸」(1973年)の重要場面)

※2021年12月現在、動画配信サイトhuluで、新旧「刑事コロンボ」シリーズが視聴可能

(場面紹介)※ややネタバレ

 コロンボは、犯人の外科医メイフィールド(レナード・ニモイ)が、彼の共同研究者ハイデマン博士の心臓手術したときに、彼が数日以内に自然死に似た状態で死亡する「仕掛け」をしたと推理。

 何者かに殴り殺された看護師のシャロン(アン・フランシス)も、メイフィールドの工作に気付いたために口を封じられたと考えているが、メイフィールドはコロンボの話を聞いて「まさか本気で言っておられるんじゃないでしょうな」と声を上げて笑い出す。

コロンボの推理を笑うメイフィールド - コピー.jpg
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 その延々と続くあざけり笑いの間にも、二人目の死が、刻一刻と近づいている。

笑い出すメイフィールド - コピー.jpg

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メイフィールドの嘲笑に目を見張るコロンボ - コピー.jpg

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 コロンボはメイフィールドのデスクに置かれた水差しを手にとり、思い切り机に叩きつけて、メイフィールドの笑いを断ち切る。

水差しを手に取るコロンボ - コピー.jpg

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 あんたがシャロンを殺した。そしてハイデマン先生をも殺そうとしている。

 「ハイデマン先生の面倒をよく見ることだ」

 もしも彼が死んだら、必ず検死して死因を暴いて見せる。

 そう言い捨ててコロンボが出ていった後、メイフィールドは静かに電話に手をのばす。


(コロンボの推理を聞いて失笑する〈演技をする〉犯人メイフィールドと、怒りをあらわにするコロンボ)※英語音声
Columbo Tries To Trick A Surgeon | Columbo

 (ピーター・フォークの演技は凄んでいる感じ、小池朝雄さんの吹き替えは激高している感じなので、それぞれ聴き比べるのも面白い。)

 

(作品紹介)

 犯人役のレナード・ニモイは、SF映画「スター・トレック」シリーズのミスター・スポック役でよく知られている。



 計画外だった口封じのシャロン殺害から、犯行隠ぺい工作まで、顔色一つ変えずに粛々と遂行するメイフィールドを見事に演じた。


(メイフィールドがハイデマン博士の手術で何をしたか気付いたシャロン〈そして鏡越しに彼女の様子を見るメイフィールド〉)

手術後のシャロンとメイフィールド - コピー.jpg

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メイフィールドとシャロン - コピー.jpg

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(シャロン殺害の瞬間。シャロンの恐怖にゆがんだ顔と、凶器の工具(画面左側の棒)が振り上げられていなければ、何をしようとしているのかわからないほど冷静な表情)

驚くシャロン - コピー.jpg

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殺人の瞬間の表情 - コピー - コピー.jpg

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 優秀な心臓外科医でありながら、一方、その、人の生死に一切動揺しない性格で、次々と犯行を重ねていく、静かだが危険な人物。


(ちなみに、コロンボがメイフィールドを疑いだしたのは、彼がシャロン死亡の知らせを電話で聞きながら、置き時計の時間を合わせていたのを偶然目撃したため。桁外れの冷静さが、逆に犯行の綻びとなった)

時計を合わせるメイフィールド - コピー.jpg
(Image Credit:Youtube)

 愛妻家で名刑事のコロンボは、善良な女性を傷つける者と、人の命を軽く扱う者が許せない。

 ハイデマンを守ろうとしたシャロンを殺し、その罪を着せるために、ベトナム帰還兵でトラウマと戦っていた青年を罠に嵌め、メイフィールドの技術を信頼しているハイデマンも死に向かわせながら、笑い続ける演技ができるメイフィールド。


(術後入院中のハイデマン博士 メイフィールドと対照的に温かで人間味のある人物)

ハイデマン博士 - コピー.jpg

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 メイフィールドに対するコロンボの激怒が、逆上したためか、計算づくなのかはわからない。

 だが、「ハイデマン先生の面倒をよく見ることだ」という言葉は、ハイデマンの命を巡る、コロンボとメイフィールドの対決の重要な挑発になった。

 メイフィールドはハイデマンの命を時間に任せることはできなくなる。

 (コロンボがオフィスを出ていった直後の電話はそのための一手。しかし、相変わらず動揺していない。)

電話をかけるメイフィールド - コピー.jpg
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 ハイデマン博士の手術の場面は、シリーズの中でも異色の、コロンボと名犯人の対決シーンだ。

 メイフィールドの手術中、コロンボは手術室の上にある見学エリアから、彼の一挙一動を監視している。

コロンボに見張られながら手術 - コピー.jpg

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 そしてメイフィールドは、コロンボの視線を知りながら、自分が殺そうとしていた相手の手術をして、その時限爆弾のような「仕掛け」をさりげなく解除し、隠さなければなければならない。


 この時のコロンボの手術の凝視は、彼の執念を感じさせる。

 本当はコロンボは、刑事なのに血にとても弱く、この直前まで、ハイデマンが注射されても顔をそむけ、聞き込みで手術の見学室に入ったときには、即座に全身をそむけ、やたら嬉しそうに手術の実況中継をする医師に

手術の見学 - コピー.jpg

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即顔をそむけるコロンボ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

「話だけで……見るのはいいんだけど……」

と絞り出すように言っている。

手術を見たくないコロンボ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 だが、ハイデマンに施された死の仕掛け(同時にシャロン殺しの証拠)があらわになるのは、このハイデマンへの手術の時しかないとわかっているコロンボは、瞬き一つせずに、メイフィールドを見下ろしている。

手術を凝視するコロンボ アップ - コピー.jpg

(Image Credit:Youtube)

 コロンボ執念の凝視を頭上に感じながら、メイフィールドは手術を進める。

手術を続けるメイフィールド - コピー.jpg

 シャロンを殺したときのように、冷静に、淡々と……。


 この、「溶ける糸」と、続く第16話「断たれた音」(チェスのチャンピオンが犯人)は、スリリングなストーリーと、並外れた知能を持つ犯人のキャラクターが際立つ、コロンボシリーズ中期の傑作なので、是非併せてご覧いただきたい。


【当ブログ関連記事】

刑事コロンボ「断たれた音」(時代背景と前作「溶ける糸」との関係)

コロンボとクレイトン - コピー - コピー.jpg

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【画像引用動画】
※英語音声 作品の重要シーンや結末部を含む

A Doctor's Ingenious Plan For Murder | Columbo
(メイフィールドのシャロン殺害シーン)


全体(ハイデマン最初の手術から、メイフィールドの犯罪に気付いたシャロンが殺害されるまでのダイジェスト)

※(補足)シャロンを演じたアン・フランシスは、「死の方程式」で犯人ロジャーの恋人役も演じている(この中では真面目で仕事熱心だが、少しお人好しでロジャーの正体を見抜けない秘書役)。美しいだけでなく感情演技が巧みな女優

(「死の方程式」アン・フランシス登場シーン)

The Killers Agenda | Columbo
(コロンボが手術を見たがらないシーン)

全体(作品中盤から後半のダイジェスト)


The Face Of A Killer Who WON | Columbo ※結末部あり

(メイフィールドの手術を見張るコロンボ)



全体(メイフィールドを追及するコロンボ、ハイデマンの緊急手術から結末までのダイジェスト)(※ネタバレ注意)


Columbo Tries To Trick A Surgeon | Columbo
(コロンボがメイフィールドに怒りをあらわにするシーン)


(レナード・ニモイの息子で監督のアダム・ニモイ制作のドキュメンタリー映画「スポックのために」(2016)の予告編)

ラベル:名言・名場面
posted by pawlu at 18:19| 刑事コロンボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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