2021年08月15日

コウノトリ夫婦とステパンさん(ドキュメンタリー番組「ステパンとマレーナ 老人とコウノトリの物語」によせて)

(英語版番組トレーラー〈これだけで胸に迫るほど映像も音楽も美しい〉)

 クロアチアには、おとぎ話のようなコウノトリの愛の物語がある。

 飛べなくなったコウノトリのマレーナと、彼女を保護して30年近く世話をするステパンさん。

 そして毎年春になると、海を越えてマレーナのもとに戻ってくるオスのコウノトリのクレペタン。


 番組放送予定:NHK Eテレ 2022年9月23日(金)午後11:00

(番組紹介HPより)

クロアチアの田舎町に暮らす妻に先立たれた老人と怪我をして飛べなくなったメスのコウノトリとの不思議な絆を描いた、もの悲しくも心温まるドキュメンタリー。 クロアチアで老齢の男性と暮らすメスのコウノトリのマレーナのもとには、毎年春になると夫のコウノトリが、子作りのために越冬地から戻ってくる。今年も5羽の雛が誕生、老人も、子育てのサポートに奮闘する。そして、秋になると夫のコウノトリは、飛べないマレーナを残し、子供とともに旅立ってゆく。老人は、悲しむマレーナの姿に、妻に先立たれた自分を投影する。 原題:STORKMAN(クロアチアほか 2020年)

ステパンさんとマレーナとクレペタンの物語

(ステパンさんとマレーナ、家で一緒にテレビを観ている)

一緒にテレビを観るステパンさんとマレーナ - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

(「みなさんにご挨拶しよう」とステパンさんに言われてクチバシを鳴らすマレーナ)

ご挨拶しなさいと言われて嘴を鳴らすマレナ(トレーラー) - コピー - コピー.jpg

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 1993年、釣りに行ったステパンさんは、銃で羽を撃たれた若いコウノトリを見つけた。

家に連れ帰って保護したが、彼女の片羽はもう元には戻らなかった。

 助けたからには責任がある。そう思ったステパンさんは、彼女を「マレーナ」と名付けて世話をすることにした。

妻に先立たれ、三人の息子も独立したステパンさんにとって、マレーナは新しい娘になった。

 コウノトリは渡り鳥だ。寒さを避けてアフリカまで飛んで行く彼らは、クロアチアの寒い冬を越すことはできない。

ステパンさんは、マレーナのために家の屋根に巣を作り、寒くなったらマレーナを薪ストーブで温めた倉庫に入れた

(巣材の枝を渡すステパンさんと受け取るマレーナ)

巣材を手渡すスティエパンさんと受け取るマレナ - コピー - コピー.jpg
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 この生活が続くと思っていたが、2002年のある日、一羽のオスのコウノトリがマレーナを見初めた。

「彼がマレーナの巣に降り立った時、私に4人目の息子ができました」

ステパンさんは、オスのコウノトリを「クレペタン」と名付けて、このコウノトリ夫婦の幸福を喜んだ。

(マレーナとクレペタン)

マレナとクレペタン アップ - コピー - コピー.jpg

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(マレーナのヒナたち)

マレナのヒナ - コピー - コピー.jpg

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 ステパンさんはコウノトリ夫婦とヒナたちのために、魚を釣ってくる。

釣りをするステイェパンさん - コピー - コピー.jpg

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マレーナは飛べないので、私が毎日(釣りで)食べ物をとってきます。私が彼女の翼なのです。

(ステパンさんのことば〈Youtube動画より〉)

 マレーナはステパンさんをとても信頼しているのだろう、屋根の上の巣で、ステパンさんがヒナに魚をあげるのをそばで見ている。

(その信頼ゆえか、彼らを至近距離で撮る取材班にもおびえた様子を見せない。)

ヒナに魚をあげるステイェパンさん(BBC) - コピー - コピー.jpg
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ヒナに餌をあげるステイェパンさんを見ているマレナ(BBC) - コピー - コピー.jpg
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 「おちびさんたち」とステパンさんに言われるヒナは、はた目には思いのほか「大きいさんたち」だが、巣の中に白いパンが三つ並んでいるみたいでかわいらしい。そしてつぶらな瞳はまさしくヒナのあどけなさで、ステパンさんを人懐こく見上げている

ステイェパンさんと取材スタッフを見上げるヒナたち(BBC) - コピー - コピー.jpg

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 秋になりヒナが巣立つと、クレペタンは、マレーナを気づかいつつも、越冬のためにアフリカのケープタウンへと旅立っていく。

その距離、14000km。

 マレーナはその後しばらくふさぎこんでしまうので、ステパンさんは彼女にテレビでコウノトリの映像を見せたり、車で釣りに連れていったりして、彼女に気晴らしをさせてあげる。

ステイェパンさんとドライブに行くマレナ - コピー - コピー.jpg
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 コウノトリは基本的に片方が死ぬまで一羽のパートナーと添い遂げる。クレペタンは毎年、長い距離を飛んで、マレーナのもとに帰ってきて、たくさんのヒナを生み育てた。

 毎年、春にクレペタンがマレーナのもとに戻ってきてくれるのを見るよりも大きな喜びはありません。
彼女のためにアフリカから戻ってきてくれたときは、ビンゴとロトくじの両方に当たったような気持ちです。
私の魂にとってどんな大金にも代えがたいものです。

(ステパンさんのことば〈Youtube動画より〉)
(クレペタンの帰りを待っているマレーナとステパンさん)
クレペタンを待っているマレーナとステパンさん - コピー.jpg
Image Credit:Youtube
(クレペタンが戻ってくるころになると)マレーナは落ち着かなくなり、しきりにあたりを見回すようになります。
クレペタンが到着する五日前からは、まったく何も食べなくなります。

(ステパンさんのことば〈Youtube動画より〉)

 この物語は、クロアチアの人々の心をとらえ、毎年、クレペタンが長旅の果てに巣に降り立つ姿は、変わらぬ愛の象徴として、人々に見守られてきた。

クレペタンの帰宅 - コピー - コピー.jpg

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(クレペタンの帰郷をライブ映像で観て喜ぶ人たち)

クレペタンの帰郷を喜ぶ人々 - コピー - コピー.jpg

Image Credit:Youtube

 2019年春、一度姿を見せたクレペタンが行方不明になり、八月には「クレペタンは死んだ」というニュースが流れた。(※1)
(ドキュメンタリー「ステパンとマレーナ」は、この、クレペタンが死んだと考えられていた時期の取材で幕を閉じている)
 しかし、2020年春、死んだと思われていたクレペタンが戻ってきた。
 最初は半信半疑だったステパンさんだが、やがて確信できた。

2021年夏、マレーナは天国へと旅立った

 2021年4月、クレペタンは再び無事にマレーナのもとに帰り着いた。

 クレペタンがマレーナと出会ってから19年、ステパンさんがマレーナを助けてから28年が経っていた。

 6月、マレーナは巣から落ちた。クレペタンについていきたがっているようなそぶりをしたときのことだった。

ステパンさんが看病したが、マレーナはエサも水も受け付けなくなってしまった。

 ステパンさんの目には、まるで彼女が自らの意思で生涯を終わりにしたがっているように見えた。巣から落ちるということは、コウノトリである彼女にとって、屈辱だったからだ。

 そして、11日後、マレーナは静かに息をひきとった。

(飼育下でもコウノトリの平均寿命は約35年。おそらく、それが、マレーナの寿命だったのだろう。もし、マレーナが落ちた時、自分の命が長くないことを悟ったなら、クレペタンが帰ってきてくれて、まだ南へ行かない今、生涯を閉じたいと思ったのかもしれない。)


 ステパンさんは2021年7月の取材に対し、マレーナの死を報告したあと、今の様子をこう語っている。

「私は、マレーナを彼女のお気に入りの場所に埋葬しました。いつも彼女がクレペタンを待っていた場所です」


 まだ、クレペタンは、夕暮れになると巣に戻ってくる。

ステパンさんは、彼に声をかける。

「彼女は旅立ったのだよ、クレポ」


 寒くなれば、クレペタンはアフリカにむけて飛び立つだろう。

「私はここでクレペタンを待つつもりです。そして、もしも、彼が来年またここに戻ってきたら、温かく迎えたいと思っています」

ステパンさんはそう語っている。





【ステパンさんとマレーナたちの動画】








【参照URL】




posted by pawlu at 15:16| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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