コロナ問題に揺れる今、多くの人が健康について考えている。
ウィルスから自分を守る「免疫力」はどうしたらつけられるのか。
そして、この複雑で先の見えない時代に、ストレスとどう向き合えばいいのか。
『まんがでわかる自律神経の整え方』は、順天堂大学教授小林弘幸先生監修のもと、心と体の健康のカギを握る自律神経について、わかりやすく解説してくれている。
「自律神経って?」「自分は病院で自律神経が悪いと言われたことはない」という人にも役に立つ情報が多く、とくに今この時期、読む価値がある一冊だ。
・自律神経はすべての内臓や血管をコントロールしていて、この働きが安定していれば質の良い血液が全身に行きわたり、心と体の状態が安定していく
・自律神経には人の心や体を活動的にする「交感神経」と休ませる「副交感神経」の二種類があり、一日のうちで優位になる時間帯が異なる。
・交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れると、心や体が不健康になる
漫画の中では、作者の一色美穂さんが次のような不調を抱えている。
【ブログ筆者個人の体験】
数年前、心身疲れていた頃、夜寝ようとして蒲団に入った途端、足にじんましんが一気に浮かびあがるという症状に悩まされたことがある。
それが毎晩必ず「蒲団に入った瞬間」だったのが不気味で、病院に駆け込んだところ、お医者様に「多分、虫刺されが軽いアレルギーを起こしている」と言われた。
その病院の先生は、じんましんの発生時間と状況が決まっていることについて
「他の時間は緊張して交感神経がアレルギー症状を抑え込んでいるが、(布団に入り)気持ちが安心して、副交感神経が優位になると出てくるのだろう」
と、自律神経の仕組みを教えてくださった。
先生の、真顔だが丁寧で理路整然とした説明が、自律神経を落ち着かせてくれたのか、じんましんはその日のうちにみるみる改善。
それと同時に、自分の意志とは無関係に働く「交感神経」「副交感神経」の存在をはじめて意識した。
(人の体が、ある瞬間を境に、こんなにブレーカーが落ちたみたいに、はっきり切り替わるものかと、本当に驚いた)
自律神経は、腸の状態と深く結びついており、腸が元気なら、自律神経も一緒にうまく働けるようになる。
腸を良くする食材を取るなどして腸内環境を良くすることで、心も前向きになり、エネルギーが回復する。
さらに、腸は体の免疫機能の70%を担当していて、感染症やがんなどを遠ざけてくれる働きもある。
実は脳に負けず劣らず複雑で知的で、大切な仕事をしてくれている腸。
そんな腸に良い食材として、小林先生がおすすめするのは、ヨーグルト。乳酸菌が腸の状態を整えてくれる。(一日200g(カップのヨーグルト2個分目安)を、朝晩に分けてとると、より効果的。)
本の中では、その他の腸に良い食材、食事のとりかたについても詳しい解説がある。
落ち込みそうになったときでも、意識的に笑顔を作るといい。
作り笑いでも顔の筋肉がほぐれ、リラックスできるので、副交感神経が活発になってくれる。
(背筋を伸ばし顔を上向きにするとさらに効果的。)
笑顔になれば、免疫力を高める「ナチュラルキラー(NK)細胞」の数も増えてくれる。
落ち着こうとして深呼吸をするのは、誰でも無意識にやることだが、これにも、自律神経の働きを整える働きがある。
「4秒かけて息を吸い、8秒かけて息を吐く」と、より効果的に自律神経を安定させることができる。
日常の動作のスピードを普段の6割くらいの速さに落としてみる。
このくらいのスピードの、流れに身を任せるような自然なゆっくりとした動きは、不必要な緊張をとり、自律神経を安定させてくれる。
こうした自律神経が整った状態のゆっくりとした動きは、動きに一切の無駄がない分、実は焦っている人の動作よりも早いし、ミスも減って、落ち着いた対応ができるようになる。
【個人的補足】
この本の中で自分が一番即効性を感じられたのは、この「ゆっくり動く」と、「深呼吸」の組み合わせだった。
焦ってバタバタしている時は、心と体がばらばらに動き、それを力づくで制御するので、どうにか状況を乗り切れても、後でどっと疲れて動けなることがある。
また、失敗が多いと、動く前から見通しが暗くなり、だるさや、先延ばししたい気持ちが、はじめの一歩をさまたげてしまう。
「ゆっくり動く」と、一挙一動に気持ちが向き、その動きに必要がない思考のもつれが薄まってくれる。
私は寝ながらでも焦ってしまい「翌日の予定」「過去の後悔」と「将来の不安」などを一挙に考える非常に悪い癖に悩まされている。
一度この暴走が発生すると、思考がすさまじい勢いで右往左往し、何から手をつければいけないのかわからなくなってしまうし、何もないうちからとても疲れる(そして夜は眠れず、朝は起きたくなくなる)のだが、ゆっくり動くと「蒲団をはがす」「体を起こす」「目覚ましを止める」と、動作を順序立てて考えられ、動くのがそこまでおっくうでなくなる。
大問題だった「先延ばし」も減りつつある。
「今ここ」に意識を集中して脳疲労を癒す瞑想法として注目される「マインドフルネス」や、先延ばし防止策の「課題の細分化(大きな作業を細かい動作に分けて少しずつこなす)」にも「ゆっくり動く」ことはつながっていると思う。
(瞑想に関する脳科学の研究でも、「ゆっくり動くこと」が瞑想に代わる行動として勧められている。「スローモーションで動くことによって、「今この瞬間の体験に注意を向ける」こと、そして「思考や感情から自分を解き放つために必要なこと」を学べる」そうだ。
人が怒りを感じた時、自律神経が乱れ、血管が損傷して、老化が加速する。
そして、自律神経の乱れは、攻撃的で余裕の無い態度を通じて、周囲に伝染するから、自分の身近な人の健康までむしばまれてしまう。
自分の苦しみを「誰かのせい」だと考えてしまうと、自分ではどうしようもないと感じ、自律神経は乱れたままになってしまうが、自分でなんとかするしかないとあきらめたら、逆に自律神経が安定し、ストレスが消えていく。
愚痴や弱音などマイナスな言葉を口にせず、周囲に対して感謝の気持ちを持つと、自律神経はさらに安定していく。
小林先生のこうした言葉は、今、自律神経の不調に悩んでいなかったとしても、全ての人がより良い人生を送るため知っておくべき、大切なことを教えてくれている。
人が完全に怒らないことは難しい(特に今、世界中が余裕をなくし、暗いニュースばかりだから、誰だって怒りを爆発させたくなる)が、怒りや愚痴が自律神経、ひいては免疫力に悪影響を及ぼすということを知っていれば、怒る前に踏みとどまれるかもしれない。
そして、それが自分自身と大切な人の健康を守ることにつながるのだ。
このほかにも、本の中では、自律神経を整えてくれる習慣として、「早起き」「湯船につかること」「適度な運動」などが紹介されている。
実は、この本の中に書かれている「自律神経を整えるコツ」は、生活習慣から対人関係の心掛けまで、昔、聡明で健康的なお年寄りが言っていたようなことが多く、多くの人が「知識」としては既に知っていることだ。
だが、その理由が、そうしたほうが「いい人になれる」とか、「出世できる」とか、「ほめられる」などといった外からの評価ではなく(それは必ずしも期待通りに評価してもらえるとは限らないし、いかなかったとき落ち込む)「そういう行動を選ぶと自律神経が整い、心と体が健康になるから」と、自分自身の利点につなげて解説されているところが、この本の大きな魅力だと思う。
実際には、「落ち込み」「疲れやすさ」「やる気の低下」といった問題は、自律神経の乱れであると同時に、その人の過去の心の傷や、周囲の環境が影響していることが多い。
こうした問題を「心を癒す」という方向からケアすることももちろん非常に大切だが、「心」というつかみどころのない存在の、「過去」「環境」など簡単には動かせないものに根差した不具合を修復するには、長く複雑な道を歩まなければならない人もいるだろう。
一方、「動作」「呼吸」「食事」「生活習慣」などから、肉体を整えていくことは、とてもシンプルで、はじめやすい。
ポジティブに活動的に暮らす自分になっている未来をすぐには想像できなくても、ヨーグルトを食べ、ゆっくり動いている自分になら今、この瞬間からなれる。
まずここから、自分を大切にしてみる、そういう気持ちにさせてくれる本なのだ。
そして、この本が、漫画であることの意味もとても大きい。
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