(エンニオ・モリコーネ 作曲家・指揮者生活60周年記念盤「モリコーネ60」ジャケット)

モリコーネ 60 - エンニオ・モリコーネ
今回は名作映画「ミッション」の音楽を手掛けた巨匠、エンニオ・モリコーネ氏と「ミッション」のサウンドトラックについて、ご紹介させていただきます。

The Mission: Original Soundtrack From The Motion Picture - Ost
(「ミッション」の作品紹介記事はコチラ。)
(エンニオ・モリコーネ氏の業績)
エンニオ・モリコーネ氏(1928年〜)は、1950年代から映画音楽の作曲を手掛け、1960年代には「荒野の用心棒」などのマカロニ・ウェスタンの映画音楽で成功。

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その後、現在に至るまで「ミッション」のような歴史大作から「エクソシスト2」まで手掛ける多彩な才能の持ち主です。
日本で最も有名な作品は、「ニューシネマパラダイス」のテーマソングだと思います。
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この他にも、「海の上のピアニスト」「アンタッチャブル」「ワンスアポンアタイムインアメリカ」など、彼の手掛けた名サウンドトラックはたくさんあります。

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ - エンニオ・モリコーネ
オノ・ナツメさんの漫画のイタリア老眼鏡紳士がそのまま抜け出てきたような、分厚い眼鏡に大きな瞳の印象的な風貌。
長年連れ添った奥様を大切にしている愛妻家で、チョコレートが好きだけれど、モリコーネ氏の体を気遣う奥様に叱られるので、こっそり食べているというチャーミングな一面もあるそうです。
マフィア映画などバイオレンス色の強い作品を手掛けることも多いのですが、ご本人は残酷な描写や流血シーンが苦手だそうです。
このため、映画史上最大の問題作とも言われる「ソドムの市」の作曲を依頼したパオロ・パゾリーニ監督は、モリコーネ氏に作品を観てもらうためにショッキングな場面を削除しました。
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モリコーネ氏はパゾリーニの配慮に深く感謝したそうです。
(バイオレンス要素の多い作品でも、彼のすすり泣くような、包み込むような透明感のある音楽が重なると、欲望のままに生きて死んでいく人々の姿に、永遠に続く人間のもの哀しい業と、神のまなざしのような象徴性が宿ります。個人的な意見としては、モリコーネの音楽が無ければ名作の地位に就けなかったではないかという作品もある)
(参照)ウィキペディア
(もう一つのおすすめ作品「ラ・カリファ」)
モリコーネ作品は名曲ぞろいですが、「ミッション」以外だと、「ラ・カリファ(「レディ・カリフ」とも呼ばれる)」がお勧めです。
「ラ・カリファ」は日本未公開のイタリア映画で、夫をストライキ中に亡くした女性が、ストライキに加わり、夫の活動を継ぐも、対立していた工場経営者と惹かれあうようになってしまうという物語だそうです。
海外のレビューを観るに、映画自体は決して評価が高くないのですが、モリコーネ作品としては、「ミッション」と並ぶ傑作とされています。
(最近フィギュアスケートの樋口新葉選手が演技曲に使用していました。「ミッション」の「ガブリエルズオーボエ」もよく演技曲に使われるのですが、あのモリコーネ作品の伸びやかな音や、静と動を併せ持つ構成が、スケートの滑走に遭うのでしょうか)
(参照)The movie DB
(小泉元首相と来日コンサート)
小泉元首相はエンニオ・モリコーネの大ファンで、任期中の2005年秋、モリコーネ氏が自身のオーケストラと共に二度目の来日を果たした際、彼のコンサートに訪れています。
(小泉首相自身による選曲のモリコーネ作品CDが出ていたくらいです。)

私の大好きなモリコーネ・ミュージック~小泉純一郎選曲チャリティ・アルバム - エンニオ・モリコーネ
私もその日、会場にいたのですが、休憩時間中なのに拍手がしたので見てみると、まったく普通に小泉首相が会場に入ってきていたので驚きました。
(まさに郵政民営化をかけた総選挙圧勝の直後で、これがオーラというものかというほど銀色に輝いて際立っていました。)
そして、瞬く間に集まってきた握手を求める人々に、席で鷹揚に応じていらしたようでした。(警備はどうなっていたのかというほど本当に「素」で会場中央付近に座っていらした)
この年のコンサートには、同じくモリコーネファンのヴァイオリニスト、葉加瀬太郎さんがゲスト出演し「ワンスアポンアタイムインアメリカ」をオーケストラと併せて演奏してくださいましたが、これも、天国から降り注ぐ小鳥のさえずりを思わせる至高の美しさでした。
なお、前年2004年の初来日コンサートでは、感動のあまり本当にまったく拍手が鳴りやまず、モリコーネ氏は、主にミッションの曲の一部を演奏して、5回もアンコールに応えてくれましたが、最後には苦笑いを浮かべ、スコアを脇に抱えると、コンサートマスターを立たせ、二人で急いで舞台を後にして観客を笑わせるという珍しい幕切れを披露してくださいました。
(90歳の誕生日を迎える今年2018年秋、ロンドンを皮切りに行われるヨーロッパ・ツアーコンサートを最後に、引退なさることを発表されたそうです。)
(エンニオ・モリコーネ コンサートDVD)
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(参照)OK Music「エンニオ・モリコーネ、この秋、英国でのラスト・コンサート開催」
(お勧めの一枚、「ヨーヨー・マ プレイズモリコーネ」)
(※Amazonページで一部試聴ができます。)
まずはモリコーネ作品を一通り聴いてみたいという方には、この「ヨーヨー・マ プレイズ モリコーネ」がお勧めです。
ヨーヨー・マ氏は、世界的チェリストで、日本でも車のCMで使用された「リベルタンゴ」や、坂東玉三郎の舞踊との競演などで有名です。
「ミッション(ガブリエルのオーボエ)」「ラ・カリファ(レディ・カリフ)」「ワンスアポンアタイムインアメリカ」「ニューシネマパラダイス」といった定番の名曲が、ヨー・ヨー・マ氏の気品に溢れ芳醇な香気漂うチェロの音色と、モリコーネ氏自身の指揮によって紡ぎ出されています。
(個人的にはこのCDがこの世から無くなったら寝込むというほど大切に思っており、私の葬式にはこの「ガブリエルズオーボエ」と「ラ・カリファ」をかけてほしいと友人に言ったら苦笑いされたけど本気)
無冠の帝王「ミッション」
(エンニオ・モリコーネ、コンサート内「『ミッション』のテーマ」の演奏動画※Youtubeページから視聴可能)
「ミッション」はキリスト教の讃美歌やスペインのギター、南米の民族音楽、楽器で構成された独特の響きを持つ作品です。
多様な音と旋律は、物語の中では微かにしか成しえなかったヨーロッパと南米の調和を実現しており、また、雄大な自然、生と死、神と人といった奥深いテーマを感じさせます。
心を洗い、そして揺さぶるこの名曲は、モリコーネ氏自身にとっても自信作であり、彼の映画音楽作曲家としての地位をさらに高めましたが、その年のアカデミー作曲賞を獲ることができませんでした。
モリコーネ氏はこの評価を不服とし、2001年の「The Gardian」インタビューでは、「ミッションはオスカーを獲るべきだと思った」と語っています。(※「Morzart of film music」より)
それでも、ファンにとっては今も「ミッション」は彼の最高傑作のひとつであり、コンサートの時、オーボエ奏者の方が立ち上がって「ガブリエルズオーボエ」の一節を奏でただけで、観客は「ミッション」の演奏が始まることに気づいて大きな拍手を送っていました。
ちなみに、上のYoutubeの「ミッションのテーマ」コンサート動画に寄せられた動画コメントにこんなものがありました。
「14歳のときに学校の授業で「ミッション」を観て、曲のカセットテープを買い、クラスメートに見せたら(ポップスやロックにはまっている世代の)友達に首を振って大笑いされた。後にCDを買ったけれど、今も一番聴いているCDだと思う。心に平和、静穏、エネルギー、インスピレーション、希望をもたらしてくれ、日々自分を新しくしてくれる作品だ。たくさんの人が同意してくれると思う」(by Mark Pope〈一部抜粋意訳〉)
このコメントに沢山の賛辞と同意(「あなたに100%同意する」「自分は6歳で買った」「俺も友達とドライブ中にこの曲をかけて笑われたよちくしょう」等)が集まっていました。
こうしたコメントを見るに、この曲は、さほど音楽に詳しくない、まして普段こうしたクラシック要素を持つ音楽を聴かない人を、急に感動に引きずり込んでしまう力があるのだと思います。
私も「急に引きずり込まれた」一人で、「ミッション」が映画音楽の魅力に気づいた最初でした。
(この曲への愛を語って、同世代の友人に引かれたのも同じ。「いきなり何言い出すんだ」と思われるらしい)
そして別の人は、こんなことを書いていました。
「私は44歳のトラックドライバーです。25年間、一日16時間、週6日働く生活を続けています。毎晩この曲を聴くことで頑張れています。彼の音楽は神様からの贈り物です。」
(by Murat Bektas)
アカデミー賞は獲れなくても、作られてから30年以上経った今も「神様からの贈り物」として、様々な立場の人々を感動させ、力づけている、音楽の真の力をたたえた名作です。
なお、アカデミー賞はこの映画音楽界に貢献し続けた巨匠に「ミッション」以後も長きにわたり正当な評価を与えず、2007年に名誉賞、2016年「ヘイトフル・エイト」でようやく作曲賞をモリコーネ氏に授与しました。
※この時のプレゼンターはファレル・ウィリアムズと、音楽家でマイケル・ジャクソンの共同プロデューサーでもあったクインシー・ジョーンズ。クインシー氏は長年の友人だったモリコーネがステージに上がったとき、祝福の抱擁をしている。
悲願の瞬間、モリコーネ氏の目には光るものがありました。
(そして、その場にいた誰もが、あまりにも長い間、何度でも受け取って当然の物を受け取れなかった巨匠の報われた瞬間に、深い敬意をこめて立ち会っていました。)
(補足)「ミッション」の「ガブリエルズオーボエ」から生まれた世界的ヒットソング「ネッラ ファンタジア」)
「ミッション」の「ガブリエルズオーボエ」の美しい旋律は、イギリスの歌姫サラ・ブライトマン(Time to say goodbyeでも有名)の心も鷲掴みにし、彼女はモリコーネ氏に、歌詞をつけて歌わせてほしいと手紙で頼み込みました。
最初モリコーネ氏は彼女の申し出を断りましたが、サラはあきらめずに2ヶ月ごとに手紙を送り続け、とうとうモリコーネ氏の許可を勝ち取ったそうです。
こうして曲の美しさとサラ・ブライトマンの執念により生まれた歌「ネッラ・ファンタジア」は今、サラの他、様々なアーティストに歌われ、世界的な名曲として愛されています。
以上、映画音楽界の巨匠、エンニオ・モリコーネ氏について、ご紹介させていただきました。本当に美しいので、是非お聴きになってみてください。
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