2016年09月10日

「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)


狸置物 縮小版.png
(狸置物 大島如雲作 銅)

 上野の東京芸術大学大学美術館で2016年9月7日(水)〜10月30日(日)まで、台湾のコレクター宋培安氏による明治工芸コレクションが公開されています。
(その後、京都 細見美術館、埼玉 川越市美術館に巡回します。)

 今回はこの展覧会の見所をご紹介させていただきます。
 公式HPは以下のとおりです。(解説が丁寧で楽しいページです)
 http://www.asahi.com/event/odorokimeiji/

 1,「自在」の一大展示

 今回の展覧会では、「自在」と呼ばれる甲冑作製技術を基とし、非常に細かな可動性のある鉄製の工芸品の一大コレクションを観ることができます。

 入るなり、全長3メートルの竜の「自在」が宙づりになってお出迎え。
 
自在竜(縮小版).jpg
(自在龍 無銘 鉄)


 ほかにも、美味しそうな緻密なイセエビや、ヤドカリ、鷹、あらゆる角度に動かせるニョロニョロヘビなどを観ることができます。
 (いかに細かく動かせるかがわかるように、体を複雑にくねらせ、首を台にちょこんと乗せた敬意ある展示も見所。)

自在蛇(縮小版).png
(自在蛇 宗義作 鉄)

 展覧会作成のセンスあふれる明珍宗春(※)作「自在蛇(明珍宗春作)」のコマ撮り動画はコチラです。(ベロも動くんですね)


https://www.youtube.com/watch?v=JEVWHf7d890

(※)「明珍」は元々甲冑師の一派の名前だそうですが、すぐれた作品を残した明珍の名を冠した職人たちの生涯については、わかっていないことが多いそうです。

 動きの滑らかさを感じさせる細やかな細工、金属の重厚感、とても緻密に作られているけれど、意外と顔は可愛かったりするギャップ、など、別に明治工芸好きでなくてもグッとくるポイントの多い美術品です。
(オモチャとかメカ好きの人も見て楽しいと思う。)

 ちなみにミュージアムショップにものすごーくよくできている、名門海洋堂さんの高級自在フィギュアが売られていました。こういう形で技術が受け継がれているのですね。

 たしかこちらの作品だったと思います。
タケヤ式自在置物 龍 鉄錆地調 ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア KT-003 -
タケヤ式自在置物 龍 鉄錆地調 ノンスケール ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア KT-003 -


2、個人コレクションの醍醐味

 台湾の大コレクター宋培安さんについては、あまり詳しいことがわからなかったのですが、展覧会HP情報をまとめると、「漢方の薬剤師で、健康薬品の販売や生命科学の講座を開設し、思想家カントの研究者であり、明代清代の美術品のコレクターでもある」方だそうです。
 多彩にしてミステリアスな御方……。

 ただ明清の作品は完璧という点において世界的にも屈指のものだと思うので、同じく否の打ちどころの無い高い技術と端正な美を誇る明治美術にも興味を抱いたというのは自然な流れだと思われます。
(こういっては何ですが、当時は予算のある方からすると、すでにゆるぎない評価を得ていた明清の作品に比べ明治工芸は「レベルが高いわりにお買い得」だったそうですし。)

 こうした個人コレクションの展覧会の面白さは、センスの良い個人が、欲しいから集めた品が見られるところです。

 美術館のコレクションだと、「有名な作家のもの」「珍しいもの」「歴史的に意義のあるもの」ということが重視されるだろうけれど、個人コレクションだと「カワイー、カッコイー、スキー、家ニ飾リターイ」みたいな思いで収集されるから、さほど有名な作品でなくても見てて楽しい。
(実際、今回の展示品は、見事な出来だけれど作者が不明な「無銘」のものが数多く含まれています。)

 鬼凝った超合金的な「自在」のほかにも、「超リアルな作品」や、「肉眼で見えないほどに細かい作品」、「ユーモラスで面白い作品」、「色彩を抑えた中に浮かび上がるいぶし銀の渋い作品」といった感じで、多様なコレクションを観ることができます。

(展示品の一例)

秋草鶏図花瓶 縮小版.png
(濤川惣助作 秋草鶏図花瓶 七宝)※今話題の赤坂迎賓館の「花鳥の間」を彩る七宝額を手掛けたことでも知られる世界的七宝作家です。

三猿根付写真 縮小版.png
(三猿根付 小林盛良作 金)※全長約2.5pなのですが、細かすぎて味のある表情が撮れなかったんで拡大写真写真〈?〉のほうを使わせていただきました。

猫置物 縮小版.jpg
(猫置物〈部分〉 善拙作 木)

(渋い作品は渋すぎて僕の撮影技術ではほとんど映りませんでした。残念。「月下狸図硯箱」という、池に歩み寄る可愛くてきれいな狸と朧月という非常にセンスの良い作品がありました。)

 以下WEBページで図録が販売されています。
http://shop.asahi.com/eventplus/7.1/CTB16009

 また、ご覧のとおり、写真撮影を許可してくださっている珍しい展覧会ですので(フラッシュ不可、一部撮影禁止マークのある作品は撮影不可)、そういった意味でも面白かったです。

 当ブログの「驚きの明治工藝」展に関する記事は以下のとおりです。
 「驚きの明治工芸」(台湾の宋培安コレクション 東京芸術大学で開催中)

 「驚きの明治工芸」(おすすめ展示作品1 加納夏雄 「梅竹文酒燗器」)
「驚きの明治工藝」(おすすめ展示作品2 海野勝a 「背負籠香炉」海野a乗「犬図薬缶」)

 次回記事では、展覧会作品のうち個人的に好きだと思ったものについて、少し追記させていただきますので、よろしければまたお立ち寄りください。

 読んでくださってありがとうございました。

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posted by Palum at 23:34| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする