映画「フィールド・オブ・ドリームス」は、農場を経営する男レイ(ケビン・コスナー)がトウモロコシ畑で聴いた不思議な声に導かれ、畑の中に、今は亡き野球選手たちのための野球場を作る物語。
(トレイラー)
〇序盤あらすじ
ある日の黄昏時、自分のトウモロコシ畑で謎の声を聞いた農夫レイ(ケビン・コスナー)。
「それを作れば、彼はやってくる」
(「謎の声」のシーン)
声の正体は?
「それ」とは?
「彼」とは?
戸惑っていたレイだが、やがて再び彼の目に浮かんだ光景。
それは、トウモロコシ畑の中の野球場。そして、そこに佇む、白いユニフォームの男。
かつて、八百長試合に加担したとして、球界を追われた「シューレス(裸足の)・ジョー」。
男手一つで自分を育ててくれた、今は亡き父の英雄だった選手。
自分のトウモロコシ畑に野球場を作れば、あの世からシューレス・ジョーがやってくる。
そう感じたレイは、自分でもほとんどわけがわからないまま、予感に導かれ、野球場を作る。
どうかしているという隣人たちの目をよそに、畑を半分潰して作り上げた、空の野球場。
(野球場を作る)
きっと何か起こる。
そう信じて待つレイと、彼の願いを聞いて、野球場作りを後押しした妻のアニー。
しかし、季節が移り替わっても、何も起こらず、収穫が減ったために、レイの農園は経営難に陥る。
野球場はおろか、家を手放さなければいけなくなるかもしれない。
ある夜、帳簿を前に苛立つレイに、幼い娘のカレンがふいに声をかけた。
「野球場に誰かいるわ」
窓の向こう、トウモロコシ畑にを背にした野球場に、男が立っていた。
暗がりにもほの白く光るユニフォームの、シューレス・ジョー。
興奮を抑え、球場に出ていったレイ。
ジョーは、レイが彼のために、この野球場を作ったと聞くと、自分と同じように、八百長事件で球界を追われたまま世を去った選手たちを連れてきて、野球の練習をしたいと言った。
そして、野球場を去るとき、振り向いてレイに言った。
「ここは天国か?」
「いいや、アイオワだ」
レイたちに見送られ、トウモロコシ畑に入って行くシューレス・ジョー。
その姿が、人よりも背の高い、青々としたトウモロコシの列に透けて、消えていった。
これで、予言を果たした。
亡き選手たちがトウモロコシ畑の野球場で練習に興じる様に、目を細めていたレイだったが、その彼に、再び「声」が語り掛けてくる。
「彼の苦痛を癒せ」
いったい何のことなのか、「声」に問い返しても、返事は無い。
レイのなすべきことは、まだ終わっていなかった……。
〇見どころ
※中盤の一部ネタバレ動画が含みます。
現実を超越した展開の中に、果てしなく広がるトウモロコシ畑の緑、アメリカと共にありつづけた野球の力、夫婦、親子の絆が織り込まれた、1980年代アメリカ映画の最高傑作です。
主演のケビン・コスナーが、いつもの男性的な魅力を抑えて、普通の生活を送る中年農夫を好演。
エイミー・マディガンも、レイの突拍子もない夢を、多くを聞かずに支える、妻アニーの懐深さを自然に演じています。
(中盤、町の会合に出た彼女が、レイを変人扱いした女性を舌戦で叩きのめす場面は見ものです。)
さらに、レイが聞いた第二の「声」の後、登場する作家テレンス・マン(『ライ麦畑で捕まえて』のサリンジャーがモデル)役にジェームス・アール・ジョーンズ(※)、たった一イニングしか試合に出られなかった「ムーンライト・グラハム」の、引退後の姿をバート・ランカスターが演じるなど、演技派俳優たちが脇を固めており、その豊かな表現力(そしてそれを丁寧にカメラに収めた構成)が感動を後押しします。
(テレンス・マンとの観戦)
(※)NHKのシネマコラムによると、このアール・ジョーンズはダース・ベイダーの声を演じているそうです。確かに非常に独特の、低音と余韻漂う響きの声で、ある場面での彼の語りは、映画の山場の一つとなっています。
バート・ランカスターは、当初「ここより永遠(とわ)に」(1953)などの、ワイルドな役で成功をつかみましたが、やがて重厚な演技派へと転身し、ヴィスコンティ監督作の「山猫」では、落日迫る貴族の誇りと悲哀を演じきった伝説的名優です。
「フィールド・オブ・ドリームス」は、彼の最後の劇場映画出演作となってしまいましたが、ただ歩き、佇み、微笑み、振り向くだけで、場面に暖かくせつない情感が広がる、その圧倒的存在感と演技力に目を見張ります。
(ムーンライトグラハムとの出会い)
(個人的な思い出なのですが、彼がこの翌年出演したテレビ映画「オペラ座の怪人」での彼の名演技に、はじめて「映画を観て泣く」という体験をし、その後「フィールド・オブ・ドリームス」を観て、完全に「映画好き」になったので、自分にとって特別な存在の役者さんです。)
生きることの苦さや後悔を知りながら、人生に輝きとぬくもりを見出す、この時期のアメリカ映画特有の世界観が、優れたストーリー展開や、演技、音楽、映像美に結実した名作です。
結末部は、「アメリカ映画史上最も心打たれる場面」と言っても過言では無いと思います。ぜひご覧ください。
(2022年7月24日追記)
2021年、映画の舞台となった、トウモロコシ畑の中の野球場で、メジャーリーグの試合「The MLB at Field of Dreams Game」が開催され、ケビン・コスナーがセレモニーに登場しました。
映画の美しいテーマ音楽とともに、トウモロコシ畑から出てくるケビン・コスナーと、彼に続いて野球場に出てくる現役の選手たち(映画の中の天国からやってくる往年の名選手になぞらえている)の動画も話題となりました。
(握手を交わす選手たちと、ケビンコスナーの、それぞれに感慨深げな表情が心に残ります。この映画を胸に、選手になった人たちも多かったはず)
このメジャーリーグのイベントは2022年も8月11日に開催される予定です。
Absolute chills. #MLBatFieldofDreams pic.twitter.com/JsejH3OsWI
− FOX Sports: MLB (@MLBONFOX) August 12, 2021
(動画ロングバージョン、ケビン・コスナーのナレーション付き〈※ネタバレ注意、映画の結末シーンを含みます〉)
Kevin Costner leads Yankees and White Sox from cornfield onto the Field of Dreams | FOX SPORTS
※ブログ記事公開日:2017年12月21日、最終更新日:2022年7月27日
(参照記事)
・NHKシネマコラム「豪華名優が集結!ダース・ベイダーの声の人も! フィールド・オブ・ドリームス」坂本朋彦
・MLB at Field of Dreams game 2022年のMLB記事
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