2014年05月08日

「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編2 濤川惣助作品「藤図花瓶」)

 東京日本橋の三井記念美術館で、「超絶技巧!明治工芸の粋」が開催されています。
 公式HPのURL
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/
 明治時代、主に海外に向けて作られた工芸品の数々を集めた「村田コレクション」が、見られる展覧会です。

 今回も観てきた中で個人的に特に素敵だと思った作品群についてご紹介させていただきます。

 ●「藤図花瓶」
以下チラシURLページ内4ページ目、「七宝」部上から二番目の作品
 http://www.mitsui-museum.jp/pdf/pressrelease140419.pdf
 高さ約30p、縦長グレー地の花瓶に、青と白の藤の花房が垂れ下がる図案。「無線七宝」の名手、濤川惣助の作品。

 濤川惣助ウィキペディア記事URL
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%A4%E5%B7%9D%E6%83%A3%E5%8A%A9

 青の花房は有線七宝で細い輪郭が描かれた中に水色から群青までのグラデーション、いくつかの花は花弁の内側が黄色く、涼しい色合いの中にうっすらと明るさがさす。

 背後の白い花房は無線七宝でグレー地に溶け込む雪のような淡さ。青地の花房の後ろで幻想的な奥行きを醸している。

 ……とか書かせていただいたところで、実は私、「有線七宝」「無線七宝」と聞いたときに、昔のラジオのメーカーか何かかとすら思っておりました。(だってそもそも「『シッポウ』って何」状態だったから)

 何工程にも分かれる、根気のいる緻密な作業を申し訳ないほどにかいつまんでしまうと、地に金属の枠で図案の線を作り、その枠部にガラス質の釉薬を流し込んでから焼くというのが「七宝」の原理だそうです。

 で、この金属の枠がある状態で仕上げるのが「有線七宝」。(前回記事でもご紹介した清水三年坂の七宝解説をご参照ください。)
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/jyosetu2.html#sipo

 そして、最後の焼成前、完全に釉薬が枠と地に定着する前の、釉薬がフルフルした状態の時に、地にめぐらした枠を引っこ抜いてしまい(こう書くとなんかお菓子作りみたいですが、おそらくはピンセットで一本一本とりのぞくものすごい集中力を要する作業)、それから焼成するのが「無線七宝」
 
 結果、地に釉薬がぼやんと少しだけにじみ、パステルと水彩のあわいのような優しい味わいを醸す作品に仕上がります。

 濤川惣助はこの「無線七宝」の開発者として、「有線七宝」の並河靖之と人気を二分し、「東京の濤川、京都の並河」と並び称されたそうです。
(ちなみに別に親戚でもなんでもないらしい。)

 彼の代表作は東京赤坂にある迎賓館「花鳥の間」の壁を飾る七宝額『七宝花鳥図三十額』
 「花鳥の間」画像URL(壁の中ほどにある丸い額が惣助の作品)
http://www8.cao.go.jp/geihinkan/img/akasaka/big/bgei09-11.html
 額の一つ「矮鶏(チャボ)」
http://www8.cao.go.jp/geihinkan/img/akasaka/big/bgei09-12.html
 
 ウィキペディア記事によると靖之もこの額を手掛ける候補にあがっていたそうですが、無線七宝の味が部屋全体の雰囲気に調和するとの理由で惣助が選ばれたそうです。 
  
 確かに、靖之の作品がその緻密さと端正さで空間を凝縮したような迫力があるのに対し、惣助の作品は無線七宝のぼやけやにじみだけでなく、地の色の優しさも含めてふんわりと周囲に広がる感じで、「その他の意匠と調和しながら部屋全体を彩る」という点では向いている気がします。

 脱線が長くなってしまいましたが、「藤図花瓶」では惣助作品の典型ともいえる優しい色合いと、有線無線二つの七宝技法の味わいの違いを見ることができます。

 しかし「青の花房や葉や蔓は有線」といっても、近くで見ないとわからないほど糸のように細い線(線といっても描いているわけじゃなくその一筋一筋が金属の枠ですからね)で、おっとりと清楚な風情の中に、どうやって作ったんだ?という驚くべき技巧が秘められたミステリアスな名品です。

 当ブログ明治工芸関連記事は以下の通りです。よろしければ併せてお読みください。

極上美の饗宴 並河靖之の七宝
極上 美の饗宴 「極上美の饗宴シリーズ“世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う」
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)


 また回を改めて展覧会の作品や明治工芸についてご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。

※今回の七宝ご説明については、展覧会図録「超絶技巧!明治工芸の粋」と、NHKの極上美の饗宴「色彩めぐる小宇宙 七宝家・並河靖之」を参照させていただきました。

(靖之の最高傑作「四季花鳥図花瓶」の一部を現在の職人さんが復元を試みるところとかもっそい面白かったです。ほかの回もとっても良かったんで再放送してほしい!!)。
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posted by Palum. at 01:43| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする