2014年03月25日

「ラファエル前派展」おススメ絵画フォード・マドックス・ブラウン作「ペテロの足を洗うキリスト」「よき子らの聖母」

 本日も現在開催中の「ラファエル前派展」について書かせていただきます。
(公式HPはコチラ

 当ブログこの展覧会に関する過去記事は以下の通りです。
 1,ラファエル前派展
 2,「オフィーリア」ミレイ作
 3,ミレイの「オフィーリア」と夏目漱石の『草枕』
 4,エリザベス・シダル(オフィーリアのモデル)
 5,「ラファエル前派展」混雑状況と展示の工夫
6,おススメ絵画ミレイ作「両親の家のキリスト」
7,おススメ絵画2ミレイ作「釈放令」


 今回の展覧会で初めて存在を知った画家の中にフォード・マドックス・ブラウンという方がいました。

 リアルと言う意味ではミレイ、装飾性や女性美という意味ではロセッティに及ばないかもしれませんが、逆に言えば、描写力と装飾美を均等に持ち合わせた画家と言う意味でミレイやロセッティには無い魅力ある絵画を残した人のようです。

 特に彼の使う緑がとても素敵です。「緑のブラウン」と言ってもいいような気がします(結局何色なんだ)。

フォード・マドックス・ブラウン作「ペテロの足を洗うキリスト」

ペテロの足を洗うキリスト.jpg

 逮捕の直前、最後の晩餐を前にして、弟子たちの足を洗うイエス・キリストの姿を描いた作品です。

展覧会公式HPの解説はコチラ(大きな画像が観られます。)
自分が死んだ後も、このように互いにへりくだり、助け合うようにという思いを込めて、無心に弟子の足を洗うイエスと、師の意思がわからずにあまりのことに足を洗われながらも息をつめるペテロ。

 背後ではその様子に、もしや自分のたくらみに気づいたのかと思いながらサンダルの紐を直しつつ、二人を射るようにみつめる裏切り者ユダ。

 そしてただならぬ事態に不安そうにささやき合う他の弟子たち。

 イエスの腕、ペテロの足などの肉体描写は非常にリアルに描かれ、登場人物の表情はそれぞれ思うところを明確に示している、緊張感のある画面構成ながら、画面を閉める、床やソファ、愛弟子ヨハネの衣の暖色と、イエス、ペテロそれぞれがまとう衣の青みがかった緑。イエス一人に輝く光輪の透き通った金色が静かな調和のとれた美しさを構成しています。

 テート美術館HP内の紹介ページは以下の通りです。
http://www.tate.org.uk/art/artworks/brown-jesus-washing-peters-feet-n01394


 同じくフォード・マドックス・ブラウンの「よき子らの聖母」
 テート美術館の画像つき紹介ページは以下の通りです。
http://www.tate.org.uk/art/artworks/brown-our-lady-of-good-children-n02684

 先ほど、「描写力と装飾性を均等に持ち合わせている」と描かせていただきましたが、この絵がまさしくそれです。

 幼いイエスキリストの体を洗う聖母マリアと、水を入れた容器を差しだし、それを手伝う天使。

 絵画後方では沈みゆく陽を背に、祈りをささげる幼児と、ひざまずいてその小さな手を握り締める天使がいます。

 なんでもイタリア旅行の記憶をもとに描いた作品だそうですが、そう言われて観ると、なんとなく黄昏の水辺の光の温かさが、ちょっと南方がかっています。(イギリスの景色を描いた作品の光はもう少し涼しい感じ)そしてまだぬくもりの残る風にそよぐような大木の枝がアーチ形の窓から真横に広がっています。

 この背景のリアルと比べると、人物の顔は中世の宗教画のようにある程度デフォルメされています(先述「ペテロの足を洗うキリスト」と比較するとよくわかります)。しとやかにほほ笑むマリアに手を洗われている幼いイエスの目がきょとんとしたようにくりくり丸くて愛くるしい。

 そして必見は、天使の衣の黄緑に散らされた細い金糸と髪飾りの色彩美と(珍しいことに翼も金色の光沢をもつ緑です)、その手にある水を入れた器、聖母子の背後の布の図案です。

 これ売っていたら普通に女性の心をわし掴みでしょう……高級輸入雑貨屋さんとかにありそうな感じ。布は繊細な青い柄の中にオレンジがかった薔薇がちりばめられ(この緻密な柄の中にふんわり浮かぶマリアの細く丸い光輪が神秘的)、先のとがった器は白地に金彩、内側は深みのある青です。

 数ある聖母子像の中でも、背景が黄昏である点や、こうした小道具のデザイン性の高さで異彩を放ちながら、色彩調和とぬくもりのある場面描写で温かい穏やかさを醸す、見れば見るほど目に快い名画です。

 なんか展覧会でもピックアップされてないし、ウィキペディアにも画像がアップされてないからブラウンの中で突出して評価の高い絵ではないのかもしれませんが、私は好きです。綺麗だし、夕暮れの平和な温かい空気を感じる。

 ところで、この絵、よく見ると、金色の額縁に円形の飾りメダルがついていて、そのなかにお祈りをする天使と鳩が素朴な線で描かれています。いっそう芸が細かいですね。

 一時期、イギリスの絵は他のヨーロッパ絵画に比べるとレベルが低いというような言われようだったそうですが、私は別にそんなことないと思います。

 しいて言うなら「バーン!!(擬音が旧いよ)」とドでかく濃密な筆致の壁一面の歴史大作……みたいなものが少ないかもしれませんが、かわりにこんなに繊細で美意識の高い愛すべき絵を描いている。

 おなじく芸が細かくて可愛らしいものをいつくしむ日本人からすれば、その魅力において決して劣るものではないと思います。

 展覧会ではブラウンの小さな風景画も何点か観ることができます。

 いずれも彼の色彩感覚が冴える良品ですが、特におススメは「干し草畑」

 テート美術館の画像つきページは以下の通りです。

http://www.tate.org.uk/art/artworks/brown-the-hayfield-t01920

 雨上りのたそがれ、紫の雲たなびく丘の緑と、複雑な色に陰る干し草を積む人々を描いた作品です。

 月が出ていてもまだ明るさの残っている時間帯の独特の色合いが温かく描かれていて、なにやら懐かしい気配。

 どうも画像や印刷で色が再現しにくいようですが、暖かい日の草の匂いがただよってくるような美しい色合いの絵でした。

 (余談ですが、この絵は詩人でデザイナーとしても名高いウィリアム・モリスの所有となったそうです。)


 「ラファエル前派展」にはこのほかにも美しい作品がたくさん展示されていますので、会期残りわずかとなりましたがおでかけになってみてはいかがでしょうか。(さすが六本木森ビル、ビル自体スゲーオサレなんで出かけて楽しかったですしね。)

 読んでくださってありがとうございました。

 参考資料 「ラファエル前派展」 朝日新聞社
posted by Palum. at 20:05| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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