2014年03月23日

ラファエル前派展おススメ絵画 ミレイ作「両親の家のキリスト」

本日は現在開催中の「ラファエル前派展」で展示中のおススメ絵画について少しご紹介させていただきます。
 この展覧会に関する当ブログ過去記事はコチラ。
 1,ラファエル前派展
 2,「オフィーリア」ミレイ作
 3,ミレイの「オフィーリア」と夏目漱石の『草枕』
 4,エリザベス・シダル(オフィーリアのモデル)
 5,「ラファエル前派展」混雑状況と展示の工夫

  ジョン・エヴァレット・ミレイ作「両親の家のキリスト」(ウィキペディアより。←大きい画像をご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。)

両親の家のキリスト.jpg

 「オフィーリア」(こちらも展示中)で漱石をも魅了した画家ミレイ。

 ラファエル前派一と言っても良い技量(物が本当にそこに在るように描くという点ではこの人が一番だと思います)の持ち主で、美女を描いても知的ではかなげで絶品ですが(「マリアナ」というシェークスピア作品を題材にした絵も素晴らしかったです。物憂げに腰を伸ばして立ち上がる女性の額のなめらかな光沢と、ドレスの青のあざやかさが生で観ると本当に凄い!)、ほかのジャンルの作品を描いても一流なんだなというのがこの宗教画でよくわかりました。

 少年のキリストが父ヨセフの大工仕事を手伝っている際に、手を釘で傷つけてしまい、心配する母マリアに口づけをしている場面。

 傷口を洗う水を持ってきている少年はイエスのいとこヨハネです。

 イエスの、十字架に打ち付けられて処刑されるという死、ヨハネの後に洗礼者としてイエスに洗礼を施すという運命がそれぞれ暗示されている場面です。

 マリアの表情がただの怪我を見る以上に悲しく苦しそうなのは、その傷に、いずれ訪れる我が子の最期を感じ取ったからなのでしょうか。
 
 ミレイらしい卓越した質感描写(この人の絵、何を見てもとくに肌の光沢が美しいです。)と、どこか寂しげながら優しい感情表現が見られる作品です。

 ところで、この場面の奥で、羊たちが、塀のところにつめかけて様子を見ています。

「キリスト(羊飼い)に導かれる世の人間(迷える羊)」の寓意なのかもしれませんが、あるいは羊そのものとしてイエスを慕っているのかもしれません。

(漫画「聖☆おにいさん」の中で動物たちがイエスとブッダに尽くそうと必死なように……)

 
聖(セイント)☆おにいさん 1

 羊たちがみっちり顔を寄せて、いかにも異口同音に「メー」「メー」とか言ってそうな感じで鼻先を突き出したり、顎を塀にのっけたりしています。(展覧会図録解説によると肉屋から羊の頭部を貰ってきて描いたそうですが……そんな様子はおくびにも出さず〈←シャレか?〉暢気そうな穏やかな顔をしています。)

 これと、それからよく見ると背後中央のハシゴに留まっている鳩が「つむ」と押すと指が沈みそうなふっくら丸い感じで首をすくめて様子を見ているのがカワイイ。

 図録によれば梯子は磔刑(刑死者の遺骸を降ろす時に用いる)を暗示しているそうですし、鳩はおそらく父神の聖霊の寓意なのでしょうが。

 でも人を描いても美しく優しげなミレイが動物を描くと、寓意を超えて普通に可愛らしいのです。

 この絵画に関するテート・ギャラリーの解説(英文)URLは以下の通りです。
 http://www.tate.org.uk/art/artworks/millais-christ-in-the-house-of-his-parents-the-carpenters-shop-n03584/text-summary

次回の記事では同じくラファエル前派展に展示中で、人も動物も魅力的なミレイの絵画「釈放令」と、この絵にまつわる逸話を少しご紹介させていただきます。

読んでくださってありがとうございました。

 参考資料
 「ラファエル前派展」朝日新聞社
 
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posted by Palum at 00:08| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする