2014年02月18日

「War horse(ウォーホース)戦火の馬」 日本公演決定

 今日はちょっとコーフンしております。

 残念ながらどうも東京限定みたいですが、ついに!ついに!イギリスの舞台「War horse (ウォーホース)戦火の馬」が日本に来ます!!!
(……もしかしてウマ年にちなんで今年来日??)

舞台の宣伝動画をご覧ください(コレ美しくて大好きなんです……)



【上演期間】
2014年7月30日(水)〜8月24日(日)
・会場=東急シアターオーブ
・一般前売=3月16日(日)開始
・料金=S席13,000円/A席10,000円/B席8,000円
シアターオーブの公式情報はコチラです。

 どなたか知らないけれど連れてきてくださる方に心からお礼を申し上げたいです!!LION提供みたいなのでこちらにも大感謝、次歯磨き粉切れたらLIONのにします(非常に地味な感謝法)。

 第一次世界大戦中、軍馬(War horse)として連れて行かれてしまった馬ジョーイ、ジョーイを探して戦場に行った少年アルバート、そして、戦地でジョーイと出会ったドイツ兵フリードリヒらの、戦争に翻弄された数奇な運命を描いた作品です。

 戦争の悲惨さと、人と馬の心の交流を描いた心に染みる物語、日本の文楽のように3人遣いの等身大パペットが演じる馬の迫力と美しさと雄弁でカワイイ鼻息(どこに食いついているんだ)、イングランド南部デボンの土の匂いと風を感じさせる美しい音楽(これを機にロンドン舞台版サントラのCD発売されるといいのですが……。本当にいい音楽なんです〈私が持っている版はアコーディオン演奏ですが、公演、演者によって違い、ヴァイオリンのこともありました。〉)、どれをとってもイギリス舞台芸術の金字塔といっても過言ではありません。これ観て「イギリスすげえええ!!!!」と本気で思いました。私の知る限り、こんなストーリー構成を持つ、戦争を題材とした作品は他にありません。

 正直に申し上げてしまえば、映画版よりこちらのが好きです。以下、舞台でしか堪能できない見どころを一部書かせていただきますと……。

1,馬らしさ 

映画のが本当の馬を使っているのにと言われそうですが、パペットだからこそできる細かい演技というのがあって、それが「人と暮らしている馬らしさ」をすごく醸しているのです。
 不思議に思うと耳がひょきっと動くとか、恐縮すると体が斜めになっちゃうとか、鼻及び鼻息で人と会話するとか……人間と密にコミュニケーションがとれる哺乳動物固有の動きというのがありますが、それは本物の馬に演技させるのは難しいようです(少なくとも映画版にそういう場面はほとんどない)が、舞台では堪能できます。(いななきや鼻息もパペット遣いの人たちが担当)
 ああいう仕草からジョーイの優しくて人懐こい性格や、アルバートとの絆が見て取れて、「性格も耳ひょきひょきと鼻息で喋るとこもうちの犬ソックリ……」と冒頭から目頭が熱くなってしまいました。

2,音楽

 上記のとおりです。動画で一部お聴きになれますが、ノスタルジーに胸騒ぐ、イギリス独特の音楽が場面展開中に何度も使われています。

3,ガチョウ

 これは映画にも少し出てきていますが、カワイイのがいるんです。
舞台では足の部分が車輪、首が棒で操れるようになっているパペット。
アルバートの家で飼われていて、普段はわりと大人しく、クワクワ泣きながらカカカ……と地面の餌をついばんでいますが、ドアが開くと、家の中に入ってやろうと首を低くして突進していき、しかし、いつも鼻先、いやくちばし先でドアを閉められてしまい、「ガッカリ……」みたいにさびしく去っていくのが。シリアスな場面の多いこの作品の中で数少ないお笑い担当としていい味出してます。
カワイかったので、思わず「ほしいなー」と思ってしまいましたが(まあ、家で大の大人が畳の上で車輪キコキコ走らせて、首の棒動かして、くちばしカカカ……とかやって遊ぶのかと客観的に考えるとナシなんですが)、同じこと考えた人多かったらしく、ロンドンの劇場ではレプリカ売ってました。しかし、今日調べたら価格2500ポンド(約42万5千円)、高!「きれいなジャイアン」のフィギュア四十体分です(何に換算しているんだ)。劇場ではもっとオモチャっぽい廉価版売ってたと思ったんですが記憶違いかな……(汗)

 なお、馬やガチョウのほか、カラスや一部人間もパペットで表現されており、こちらもそれぞれ見ものです。

4,ドイツ兵フリードリヒ

「フリードリヒのいないWar horseはWar horseではない」
正直、そんな気さえします。

このブログではあまり不満を書かないようにしようと思っていますが、これだけは書かせていただきます。映画は映画で美しいし、舞台とは違う見どころもあるのですが、映画にはジョーイと、同じくイギリス軍馬トプソンと戦場で出会い、彼らを連れて故郷へ逃げようとする中年ドイツ兵フリードリヒが登場せず、私はそれがとても残念でした。

 ジョーイたちに乗って逃げようとする若い兄弟兵や、ジョーイたちの面倒を見る兵士が登場し、彼らがフリードリヒのポジションを分割して担っているようですが、舞台のフリードリヒはアルバートと対を成すといえるほど存在感があるのです。

 フランスの人々を描くために、フランス人少女エミリーや彼女の祖父を描くことにかなりの時間を割いていることも、フリードリヒ的存在をかすませる一因となっています。(舞台だとエミリーはフリードリヒと交流を持っているのですが、それもありません。)
 
私がこの舞台を観て一番感動したのは「馬を大切にする人の心を描くことによって、『イギリスもドイツも、敵味方も無く、本当は人間は分かり合える存在なのだ』ということを表現している」という点でした。

 こういうふうに、戦争中の敵味方に分かれていた人間たちを双方平等に描けた作品というのは私の知る限り非常に少ないのです(第二次大戦中の日米それぞれの人間ドラマを丁寧に描いたイーストウッド監督ですら「父親たちの星条旗(アメリカ側)」と「硫黄島からの手紙(日本側)」と二作品に分割しています)。そして、そこが「War horse」の画期的なところなのです。

 戦死した兵士の懐にあった家族の写真を見て涙し、フランスの少女エミリーを自分の娘に似ていると思って可愛がり、ジョーイたちはイギリスの馬だからと一生懸命英語で話しかけ、彼らの危機には両腕を広げて守ろうとする一人の優しい男フリードリヒがいてこそ、この作品は他に類を見ない名作となりえたのであり、アルバートと同じくらい彼の人物像が描けていないのなら、その偉大さの多くが失われてしまう。私はそう思ってしまうのです。

 実際、舞台版の「War horse」はロンドンでの成功を受けて、ベルリンでも上演されるようになりました。(War horseベルリン公演情報はコチラ)これはフリードリヒの存在あってこそ実現したことだと思います。

そして、「イギリスが作品の中で心温かなドイツ兵を描き、その作品をドイツが上演するようになった」というこの事実が、戦後、本当にイギリスとドイツが互いの心の傷を乗り越えて歩み寄ったということなのではないかと思います。

 真面目な話、公演地に「Berlin」と書いてあるのに気づいたとき、なんかよそながら泣きそうになりました……。これが真の「和解」というものなのではないかと……。

 ちなみに原作小説にはフリードリヒという名の兵士が登場しますが、こちらも舞台ほど登場していません。
 「アルバートと同じくらい重要な存在としてのフリードリヒ」は、舞台版で初めて現れ、今のところ舞台版でしか見ることができないのです。
 
 彼を通じてドイツ側の人の心を描いたことで、作品内でのある非常に重要な場面(これは映画でも観られます。ネタバレになってしまいますが、いずれ書かせていただきたいです)がより観客の心の奥深くに届くような作りになっています。私はフリードリヒの存在と、この場面の舞台での描かれ方を観て、イギリスの舞台芸術の偉大さを思い知りました。

 「『戦火の馬』なら映画を観たから知っている」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、是非このフリードリヒというキャラクターを観に行っていただきたいと思います。

 このように、優れた人物描写、人と動物の絆と戦争の愚かしさというテーマ、文楽に似たパペット、音楽などなど、日本人の心の琴線に触れるであろう要素がたくさんあるので、是非ご覧になっていただきたいです(歌舞伎公演みたいにNHKで舞台放映されないかな……)。

 できればこれを機に「レ・ミゼラブル」みたいに日本版もやるとか、何年かに1度は来日とかして、日本に定着していただきたいと心から思います。世の中にはこんなに偉大な作品がある、そしてそれに感動する人たちがこんなにいる。イギリスでこれを観たとき、わたしはそう思って随分勇気づけられました。一人でも多くの日本の方に、この作品を知っていただきたい。そのために今後もこのブログで舞台版「ウォーホース」については繰り返してご紹介せていただく予定です。

 当ブログ「War horse(戦火の馬)」関連過去記事は下記の通りです(※一部内容が今回の記事と重複しております。)
ロンドンの舞台「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」@ あらすじと見どころご紹介
ロンドンの舞台「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」A ある名場面と、その他のおすすめ作品。
「War horse(ウォーホース)戦火の馬」 日本公演決定
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想1見どころとお客さんの反応
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想2ロンドン初演版との違い
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想3結末部(ネタバレ注意)
「史実 戦火の馬」(ドキュメンタリー番組)
(余談)
 ところでなんで本日この公演情報に気づけたかと申しますと、当ブログアクセス解析を見ていて、なんか最近「War horse」で検索かけてきてくださってる方が増えているな……、今ボクの記事、検索サイトで何ページ目にきてるのかしらウフ。

 とかなんとか思って、まあ、ちょっとみみっちいようですが、「War horse」で検索かけてみたらこの情報を入手して、ギャー(喜)!となったわけです(あ、そういやコーフンのあまり、自分の記事何ページ目か確認するの忘れてここまで書き進めてました。まあいいか……)。ですからこのブログを見てくださった方のおかげですね……。

(さらに余談)この流れで(どの?)「Billy Elliot(映画「リトルダンサー」のミュージカル版)」ロンドン版の日本公演も実現してほしいなあ(あれは、主役が少年で労働時間が限られるとか、セットが大きいとかがネックなのかなあ……同じくイギリスの凄さが詰まった名作なんですが)。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 01:03| 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする