今回もドラえもん作品のうち個人的に好きな作品を文でご紹介させていただきます。
(ネタバレですので。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス22巻に収録されています。
のび太がジャイ子に片思いしているらしいと思ったジャイアンのせいで、のび太がえらい災難に見舞われるという話です。
(以下結末までネタバレでご紹介)
道を歩きながら、どうも最近女の子につけられているらしいというのび太。
ドラえもんはギャハハと笑いながら「君が女の子につけまわされるなんて……天地がひっくり返ってもありっこない」と、全否定しますが(失礼)、じゃ、見てろ、と物陰で待ちかまえるのび太に確かに近づいてくる女の子の人影……。
二人が覗き込んでみると、女の子はなんとジャイ子。
びっくりして逃げ帰ってきた二人でしたが、ジャイ子がつけてくる理由がわかりません。
「まさか、ぼくがすきになったとか…」
「それはない!たとえジャイ子でも絶対ない」(失礼2)
そこへニコニコ笑ってジャイアンが訪ねてきます。
「のび太よ。お前幸せな奴だなあ」
きょとんとしているのび太に、最近ジャイ子の様子がおかしい(ためいきばかりついて、飯も5杯しか食べない〈←……〉)が、聞いても悩みを打ち明けようとしないので、さぐってみたところジャイ子の机からこんなものが出てきた、とジャイアンが差し出したのは、のび太の写真でした。
妹は俺に似て内気な奴だから(←……2)ひとり悩んでいたと思うといじらしくて……と涙したジャイアンは、そういうわけでからお前からデートに誘ってやってくれ、と、有無を言わさずのび太を家に連れて行ってしまいます。
しかし、無理やり部屋にジャイ子と二人きりにされると、ジャイ子はきわめてアッサリと「忙しいから用がないなら早く帰ってほしい」とのび太に言います。
ほっとされたようなバカにされたようなと思いつつ、帰り道でしずかちゃんに会ったので一緒に公園に行こうとしたところ、ジャイアンにつかまってしまいます。
帰れって言われたから……と正直に言うのび太のに、ジャイアンは、女心のわからん奴だなあ。と口をとがらせます。
(女の子は)好きな奴にはわざとツンツンするもんなんだから(今でいう「好き避け」とか「ツンデレ」?)、男のほうから好きだとうちあけるべきだと言われ、のび太が、そんな、好きでもないのに、と拒否しようとした瞬間に、ジャイアンの様子が一変。
「きらいだってのか?」
「言っとくがな、妹を泣かせる奴がいたら、俺が殺してやる!!」と、拳を固めたジャイアンに胸倉をつかまれたのび太は大慌てで「好き!大好き!」と答えます。
これで機嫌を治したジャイアンは、空き地でのび太に「女の子のハートのつかみ方をコーチ」する(笑)ことします。
土管に座ったジャイアンに
「俺をジャイ子と思ってすきだと言ってみろ」と言われたのび太は
「オエー」とわりと正直な音声をもらし、何か言おうとしてもしどろもどろになってしまいます。
「俺だと思うからダメなんだ。ジャイ子と思えってば」
「どっちにしてもなあ……」(←さすがにこれは口には出せないのび太)
で、どうにか思いついたのがこの台詞。
「ジャイ子さん友達になってくれない?いやならいいけど」
勿論ジャイアンからパンチが飛んできます。
「まるで心がこもっていない!心の底から好きだと言ってみろ!」
「す、好き!すき!ウキー」と涙ながらに言うのび太。
一応合格と思ったのか、土管の上のジャイアンは
「好きなら態度で示せ。もっとこっちに来い。手ぐらいにぎれ」
と、より具体的な指示を出してきます。
「ぼ、ぼく、ほんとにきみのことすきなんだ」
「うれしいわ、のび太さん」
……そう言いながら土管に寄り添って座るのび太とジャイアン(ジャイアンがのび太の肩を抱いている)を見つけ、完全に誤解するスネ夫。
ほうほうのていで帰ってきたのび太に、なんとかジャイ子に嫌われるようにしてくれと泣きつかれたドラえもんは「スカンタコ(笑い)」という変な顔のタコを出します。
そのスミをかぶった人間は誰からも嫌われるという、開発者の意図も元来の用途も全く分からない秘密道具ですが、なにはともあれスミをかけてもらったのび太。
これで大丈夫かと聞こうと思ったら、もうドラえもんにもママにも大いに嫌われて家から叩き出されます。
しかし、ジャイ子に嫌われるためなら仕方ないと、ジャイアンの家に行くと、出迎えたジャイアンは「すまん、俺の勘違いだった」と苦笑いして真相を話します。
なんでも、漫画家志望のジャイ子がネタにつまって悩んだ挙句、のび太の動向をギャグ漫画にしようと取材のつもりでつけまわしたり、のび太の顔をネタにおかしな顔を考えたりしていたとのこと(超失礼)。
そう話し終えた直後、はじめてまともにスカンタココーティング済ののび太の顔を見たジャイアン。
「とっとと帰れ!」
のび太を家から蹴りだします。
憤慨しつつ(無理もない)、ぼくの相手はやっぱりしずちゃんなんだ、と公園に向かいますが、しずかちゃんからも思い切り逃げられ、ドラえもんに「どこまで運のない男なんだろう」とつぶやかれるというオチです。
ドラえもんの「君が女の子につけまわされるなんて……天地がひっくり返ってもありっこない」という毒舌と、
ジャイアンとのび太の
「俺だと思うからダメなんだ。ジャイ子と思えってば」
「どっちにしてもなあ……」
と、いうやりとり、
「ジャイ子さん友達になってくれない?いやならいいけれど」
と言うときののび太の、この上なく心のこもっていない台詞と表情、
そして、
「ぼ、ぼく、ほんとにきみのことすきなんだ」
「うれしいわ、のび太さん」
を目撃したスネ夫の表情が印象に残ります。
読んでくださってありがとうございました。
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