2014年01月12日

「世にも怪奇な物語」@「悪魔の首飾り(トビーダミット)」(『アンコール!』のテレンス・スタンプ主演)

 19世紀の作家・詩人エドガー・アラン・ポーの作品を基に豪華俳優、監督が作ったという異色オムニバス映画です。

 1月10日に映画「アンコール!」のソフトが発売されたので、主演、テレンス・スタンプの若い頃の演技が見られる本作をご紹介させていただきます。

アンコール!! スペシャル・プライス [DVD] -
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(※画像左の金髪の男性が若き日のテレンス・スタンプ)

 当ブログ『アンコール!』のご紹介記事はコチラです。
 当ブログ原作者エドガー・アラン・ポーオススメ作品ご紹介記事はコチラです。よろしければご参照ください。
 

 ちなみに原題は“Don't wager your head to the devil”「悪魔に首を賭けるな」だそうです。(今は英題として同意の“Never Bet the Devil Your Head”のほうが一般的みたいです。)



 以下、映画のあらすじです(結末までネタバレですのでご了承ください。短い作品で豪華キャストなので先にご覧になることをお勧めいたします。)

 イギリスの俳優トビー・ダミットは映画の撮影の仕事でローマにやってくる。
(Dammitとは“Damn it”「畜生!」をもじった姓)※すみません、一時期Dammと書いてしまっていたので訂正いたします。
 出演報酬として、最新型のフェラーリもらえるという話に惹かれて。
 しかし、実は彼が俳優として輝いていたのは以前のこと。
 今は酒が切れてはいられないほどに身を持ち崩していた。
(しかし、どうやら皮肉にも彼が出演するのは宗教映画の模様)

 空港でフラッシュをたかれ、腹を立てた彼は記者を追い払おうと鞄を投げてしまい、罵声の中でふいに、虚空に話しかける。

「独りにしてくれる約束だろう」

 トーク番組でのインタビュー、スタッフたちがセットの裏で黙々と仕事する虚構の世界に目をやりながら、彼は意味の無い話題に答える。
 連中が彼にどんな答えを望んでいるか、投げやりだが、彼はもう知り尽くしている。

 ただ、話題が「悪魔」に触れたとき、彼は身を乗り出し、真顔で語る。

 悪魔は信じる。見たことがあると言いながら。

「私にとって悪魔は可愛くて陽気だ……少女のように」

 彼の脳裏に、暗闇で笑う白い服に金髪の少女がよぎる。

 血の気の無い顔色だが、目のふちと唇は少女に似合わぬ鮮やかな色をしている。微笑んでいるが、目は大きく見開かれ、まばたきをしない。

 映画の授賞式のスピーチに出席するダミット、壇上でも席でも、入れ代わり立ち代わり人が現れるが、そのどれもがまた虚栄と無意味。

 耐えきれずうなだれる彼の隣に、ふいに黒い毛皮に身を包んだ美しい女が座り、彼に言う。
「私がついているわ。もう逃げることはないわ。私はあなたの待っていた女。ずっと一緒よ」
 ようやく笑って、眠りこけるダミットの手に触れ、女は去る。

 静けさは束の間、ダミットは壇上に呼び出される。

 うつろな目で、なにに対してかもわからぬトロフィーを押し付けられ、「偉大な俳優」という空疎な賛辞とフラッシュの雨を浴びるダミット。

「……消えよ、消えよ、短い蝋燭よ。人生は歩く影だ。自分の役が済むと、舞台から消え去る哀れな俳優だ。阿呆がわめきちらす物語だ。さっぱりわけがわからぬ……」

 スピーチとして、シェイクスピアの『マクベス』の言葉を暗誦していた彼の言葉が止まる。

 偉大なんて嘘だ。
 そうなれたかもしれない、だが、
 もう一年間仕事をしていない。
 自分に何をさせたい。

 崩れ落ちた後、汗を拭き、マイクにすがりながら、ダミットは立ち上がる。

 酒を飲むと悲しくなる。
 だがウィスキーはいい。
 ここは眩しすぎる。
 美しい女が、「私はあなたが待っていた夢の女だ」と言った。
 待ってなんかいない。
 誰にも用は無い。

 そう言い捨てると、授賞式から逃げだした彼は、待ち望んでいたフェラーリに乗って、飛び出していく。

 何度も何度も蛇行し、ほとんどブレーキを踏むことも無く、夜のローマの町を駆け抜けるダミット。
 先の見えない夜道をライトで照らし、あてもなく。

 走っても走っても車を止めることのできなかった彼は、やがて通行止めの標示を蹴散らし、途中で崩れ落ちた高架にたどりつく。

 車から降りたダミット。

 数メートル先、途切れた道の先の暗がりに、白い毬を持ったあの少女が立っていた。

 少女が、毬を抱きしめて、長い金髪の影の、あの見開いた目、色のある唇で、彼に微笑みかける。

 ダミットは、何かを悟ったように、苦しげに、長く長く笑う。

 そして、一度車を後退させると、彼女の元へと一気に車で突っ込んでいった。

 途切れる疾走音。

 きしきしと力なく揺れ、暗闇に浮かび上がる、道に張られていた一筋のワイヤー。

 その中央が赤く染まっている。

 道の向こうにいた少女は、目を見張ったまま、同じようにほほ笑み、白い毬を手離し、かわりのものに手を伸ばす。

 道に転がるダミットの首に。

                                            (完)

 ネットで確認する限りでは、三部作の中でどうやら一番出来がいいとされている作品みたいです。

 確かに、テレンス・スタンプの、登場から既に死相が出ているような演技力と、フェリーニ監督の、あれだけたくさんの人間が出てきて、ぺちゃくちゃ喋っているのに、ダミットには誰も生きているように見えないという、空しい無機質感の表現が凄い。
 みんな、蛍光灯に照らされた動きマネキンみたいです。
 
 ダミットの隣に座った女の他には。

 しかし、おそらく彼女は人間ではないのでしょう。

 そして少女が本当に怖いです。(以下のDVD版の紫の背景に映っているのが彼女です。)

世にも怪奇な物語 [DVD] -
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 あの少女が、いつ、彼の側に来たのかはわからない。

 しかし、彼を迎えに来て、ずっと離れず、その微笑みに、彼は、自ら望んで、そこへ飛び込んで行ってしまった。

 可憐な、しかし確実に彼の命を奪う悪魔のもとへ。
 
 そういう、不吉と破滅の気配を、ただ、綺麗な顔をして笑っているだけなのに、ものすごくちゃんと醸しています。

 あんな子、夜道で見かけたら間違いなく気絶するでしょう。

 巧くて見応えがあるという点は保証しますが、好きかと言われると微妙です。何度も観させる力がありますけれどね。

 テレンス・スタンプ演じるダミットが、虚栄の人々に翻弄され、怒り、混乱し、蒼白の顔に泣き笑いを浮かべてさまよう様子や、演出や映像に、こっちまで、フラッシュと作り笑いと強烈な酒にどつきまわされて頭が痛くなるような感じがしてくるんですよね……。

 つまり、作り手・演じ手の狙い通りの効果を上げている作品なのですが、ある意味観るのに体力がいる作品なのです。
 「観てて頭痛のする名作」。
 矛盾しているようですが、これがそれです。
 だからこそラストの暗闇と沈黙が冴えるのですが……。 

(蛇足ですが、太宰治の暗い方の作品好きは、なんかこの底知れぬ暗がりに自ら望んで飛び込んでいく感じがピンとくるかもしれません。強い酒と一緒で、あんまり繰り返し堪能しちゃダメですが。)

 でも、こんな、実力はあるけど、作品通りに今にも死にそうなテレンス・スタンプが、今は、あんなに温かい演技のできるいぶし銀の役者さんであるということを考えると、演技者とか、年月の凄味というものを感じさせて、また別の面白さが出てきます。
 『イギリスから来た男』(当ブログご紹介記事はコチラです)
 テレンス・スタンプという方の見事なところは、ご紹介3作全て、「この人以上のハマり役は無い」と思わせるのに、全部全然キャラクターが違うところです。

 あれだけ容貌が目立つとイメージが固定されがちなのに、凄い演技力ですね。

 なんで、現在のテレンス・スタンプの演技に感服した方は、一回はご覧になってみるとよろしいかと。

【補足】ちなみに原作「悪魔に首を賭けるな」は創元社文庫で読めます。
・創元社文庫のURL
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488522032

 読み比べてみると、あまりにも原作とは違ったので驚きました。(勿論フェラーリ出てこない)。

 原作が気になる方は、Wikipediaで英文紹介、および全文がありましたので、ご参照ください。
 読み比べると作り手の工夫がわかって面白いかもしれません。
 ・ウィキペディアのあらすじ紹介記事
http://en.wikipedia.org/wiki/Never_Bet_the_Devil_Your_Head
 ・ポオの「悪魔に首をかけるな」全文
http://en.wikisource.org/wiki/Never_Bet_the_Devil_Your_Head 

 当ブログ『世にも怪奇な物語』関連記事(この記事を含む)は以下の通りです。

「世にも怪奇な物語」@「悪魔の首飾り(トビーダミット)」(『アンコール!』のテレンス・スタンプ主演)
ポー短編「悪魔に首を賭けるな」(映画『世にも怪奇な物語』「悪魔の首飾り」の補足として)
「フレデリック……」誰かの呼ぶ声(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」より)
「メッツェンガーシュタイン」(「世にも怪奇な物語」A「黒馬の哭く館」の原作として)※ネタバレ

 読んでくださってありがとうございました。
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posted by Palum. at 08:20| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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