2013年03月14日

クリスティのフレンチ・ミステリー(AXNミステリー・フランスドラマ)

 もったいないことをしました。
 どうやら面白かったと思われるドラマシリーズを半分以上見逃してしまった。
 AXNミステリー(※1)で放映中の「クリスティのフレンチ・ミステリー」です。
 イギリス推理小説界の女王アガサ・クリスティの作品を、基本的な筋立てはほぼそのまま、ベテラン警視ラロジエールと、若手刑事ランピオンという独自の主人公で展開している……そうです。

 正直クリスティ作品自体にあまり詳しくない上に、まだ全十一話中一つと三分の一(終わりのほう)しか観ていないもので。

 でも十分に面白かったので、取り急ぎご連絡させていただきます。
 このシリーズのびっくりなところは、それこそクリスティに詳しくない私も知っている名探偵ポアロ(※2)やミス・マープル(※3)のシリーズを下敷きにしながら、彼らを出さないところです。クリスティ作品にはいわゆる名探偵シリーズものでないものもありますから、てっきりそちらを使っているのかと。
 度胸ありますねえ。
「ドラえもん」を原作にしながらドラえもんが出てこないようなものです(ちょっと違うんじゃ……)。
 でもとても聡明な選択です。既にイギリスが彼らを登場させたドラマをものすごく忠実に作っているそうですし、いばりんぼなラロジエール警視とお人よしなランピオン刑事のやりとりには、原作に無いお笑い要素がある。(「ユーモア」というより結構ちゃんとお笑い好きを噴き出させる場面やセリフが入っています。)
 ちなみに私が終わり三分の一というのに、この作品に惹きつけられたのは、第6話「杉の棺」で、ランピオン刑事が披露した女装姿が、いやいややってるわりに表情に温かみがあって微妙に美人で、案の定男に言い寄られてそいつを殴り倒したりしていたからです。
 ランピオンの結構美しい姿がご覧になりたい方はコチラ
 ランピオンがあの姿をしてくれなかったら平日朝7時台にミステリーを観ようとはしなかった。このシリーズの魅力に気づかずしまいだったでしょう。危なかった。(ところで、「杉の棺」の原作情報をネットで集めた限りではランピオンが女装せざるを得ない状況がよくわかりませんでした。何のためだったのかな……)
 台詞も良いです。
「五匹の仔豚」(こちらはちゃんと丸一話観ました。笑えるだけでなく人間ドラマに詩情があり、とても良かったです)では、なんのかんの言って真面目で優秀なランピオンを引き抜こうと昼食に誘ってきた探偵に対して、自分はラロジエール警視を尊敬しているから、と断るつもりが、喋っているうちに「(確かに警視は怒りっぽいけれど)寛大な一面を見せてくれたことも……一度も無いな……。長所を見つけるのが難しい人ではある」と、優しい顔して相当ひどいことを言っています。
 その頃、ラロジエールは昼ご飯を買いに行ったっきり戻ってこないランピオンに業を煮やし、「(ヤツの行ったパン屋は)粉から作ってるのか!!」と周囲に怒鳴り散らしています。
(日本でも注文した料理がなかなか出てこないとき、「米買いに行ってるのか」というオジサンセリフありますが、万国共通の発想なんですね……。)
 優れた作品を下敷きに、改めて人を感心させようとするなら、このくらい大胆な冒険があったほうがいいのかもしれません。
 それに、このユーモアのおかげで、殺人事件を扱っても安心して観ていられる作品に仕上がっている。「刑事コロンボ」好きにはそれがとてもツボです。

 AXNミステリーが視聴できる方は、明日・翌週月・火曜朝、よろしければ以下の番組を録画なさってみてください。
13/03/15(金)06:30 『字』 第9話「エッジウェア卿の死」
13/03/18(月)06:30 『字』 第10話「スリーピング・マーダー」
13/03/19(火)07:00 『字』 第11話「書斎の死体」

 元々海外ミステリを観るのは英語の勉強のためで、そのためにフランスのドラマが完全ノーマークでした。繰り返しますがもったいないことをしました。

 筋立てが確かで笑えて、でもときに人情もあり、風景もファッションも素敵です。
 再放送を切望いたします。できればコロンボみたいに何度も帰ってきていただきたい作品です。


(※1)海外ミステリーを専門とするテレビチャンネル。スカパー!プレミアムサービス、スカパー!プレミアムサービス光、ケーブルテレビ、BBTV、ひかりone、ひかりTVで視聴可能

(※2)エルキュール・ポアロ クリスティの作品に登場する探偵。ベルギー人でオシャレに整えた髭と、時折まじるフランス語がトレードマークの探偵。「オリエント急行殺人事件」などに登場し、イギリスでは、というか世界的に見てもシャーロック・ホームズに次いで知名度が高い。
イギリスBBCが制作したドラマではデヴィット・スーシェがポアロを演じ、「もっとも原作に近いポアロ」と言われている。
(前にも言及した気がしますが、そのスーシェのポアロをふき替えたのが、熊倉一雄さん。知的ながらどことなくノホホンとユーモラスで、上記ウィキペディア記事によると、彼の声が最もポアロにふさわしい、とスーシェに言わしめたそうです。つまり我々日本人はポアロの中のポアロを観られるわけですね)

(※3)ミス・マープル ポアロに並んでクリスティ作品を代表する名探偵。 田舎町の上品な老婦人で、緻密な現場調査よりは、周囲の会話などから次第に真相をつかんでいくタイプの探偵。数々の演技派女優によって演じられてきたが、とくにジョアン・ヒクソンは、クリスティ本人に「いつか(ふさわしい年齢になったら)マープルを演じてほしい(I hope one day you will play my dear Miss Marple)」とラブコールを受けたことで知られる。

当ブログのフレンチミステリーに関連する主な記事は以下のとおりです。よろしければ併せてご覧ください。

(一部内容が重複しています。またリンク切れが多いのであらかじめご了承ください。)
クリスティのフレンチ・ミステリー(AXNミステリー・フランスドラマ)
「クリスティのフレンチ・ミステリー」再再放送(AXNミステリー
「五匹の子豚」(クリスティのフレンチ・ミステリー※ネタバレ編)
クリスティのフレンチミステリー「ABC殺人事件」(ドラマ独自の年の差恋愛も見どころ)

ドラマに関するフランス語のウィキペディア記事は以下の通りです。
「クリスティのフレンチミステリー(原題:Les Petits Meurtres d'Agatha Christie)」の紹介ページ
同上「ABC殺人事件(Les Meurtres ABC)」の項目

読んでくださってありがとうございました。

posted by Palum. at 21:13| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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