2011年11月13日

極上 美の饗宴 “世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う

すみません、超間際なのですが、2011年11月13日【日】中にこのブログに気づいて下さった犬好きの方にだけお知らせです。NHK Eテレで深夜0時から「地球ドラマチック 犬はこうして進化した」というアメリカのドキュメンタリー番組がやります。友人いわく面白かったそうです。) 
※ 来週11月21日0時(日曜深夜)は後編だそうです。


 今回は明日の美術番組情報をお届けさせていただきます。

 明日(2011年11月14日【月】)21:00〜21:58にNHK BSプレミアム「極上 美の饗宴」
シリーズ“世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う」
という番組が放送されます。
 
 七宝焼きとは銀や銅などの金属の表面にガラス質のうわぐすりを焼き付ける工芸技法のことです。
その作品は透明感と鮮やかさを併せ持ち、明治時代、日本の海外への重要な輸出品でした。
 過去記事でも、明治七宝工芸の巨人、並河靖之について紹介させていただきましたので、よろしければお読みください。(過去記事はコチラです。)
そのとき番組で紹介されたのは皇室所蔵の並河靖之の作品「黒地四季花鳥図花瓶」です。
 永遠に日本の四季の美しさが闇の中でたゆたうような、恐ろしいほどの神品でした。

(桜の枝や木々の緑が花瓶から浮き出て風に揺れているように見えるのですよ……)

(あのときは友人に「あまりの凄さに鼻血を吹きそうになった」とメールしたために、ふざけていると思われたのか、「花瓶で鼻血を吹けるほうが凄いです」と冷静に返されてしまったので、当ブログでもっと上品に宣伝しようと思います【書いちゃってるじゃん】。)

 このブログで明治七宝について紹介させていただくのは、もちろん品物自体が素晴らしいからというのもあるのですが、イギリスと明治工芸品がゆかりの深いものだからです。

 明治の工芸品は主に輸出品だったために、海外にコレクターが多く、V&A(ヴィクトリア&アルバート)ミュージアムでもすぐれたコレクションを見ることができました。

 個人的な話ですが、イギリスに滞在していたからこそ、日本の美術独特の構図や花鳥風月の有様に染みるほど感動したのです。
 なかでも、写実的な幕末から明治にかけてと思われる工芸品は、日本をダイレクトに思い出させて惹きつけられました。

 多分そうでなければ、造詣があるわけでもない私が、ここまで魅了される機会はなかったように思います。
 変な話ですが、これもイギリス滞在の収穫のひとつだったと真面目に考えております。

 郷愁が、私と明治美術工芸品と結び合わせてくれたのです。

 今回番組で紹介される安藤重兵衛のV&Aミュージアム所蔵作品画像はコチラです。赤の七宝ではないのですが。
(enlarge imageと書かれた虫眼鏡のマークをクリックすると作品が拡大表示されます)

ヴィクトリア&アルバートミュージアム所蔵の同作家の工房作品の一覧はコチラです。

 ただ、残念なことに、気前よく作品を画像で披露してくれているV&Aの心意気をもってしても、明治工芸品、とくに花びらの色の濃淡の移り変わりや空の揺らぎまでを表現した七宝の色彩の奥行きというものは、あまりはっきりとは見えません。

 というわけなので、ハイビジョンで透明感や釉薬の染みとおり具合までをつぶさに追った番組というのは大変貴重です。
 
 工程まで現代作家さんの力を借りて再現するというのがまた凄さをわかりやすく伝えてくれます。

 そして、今回の番組のもうひとつの魅力は、イギリスの明治美術工芸品コレクター、ナセル・ハリリさん。
(ハリリ・コレクションというとその道では憧れのラインナップらしいです。日本で里帰り展覧会やってくださらないかなあ……)

 明治美術工芸がまだ江戸に劣るものとしてほとんど評価されていなかったころから(※)、その価値を信じて集めてくださっていた、いわば恩人のような人だそうです。

 若々しい声と上品な物腰で、熱く、しかし敬意を持って明治美術の魅力を語ってくださっているところが日本人としてうれしいところです。

(※)正直言うと、明治の工芸品の中には「エキゾチックジャパン」としてウケたかもしれないけれど、こと日本人の目からはあまり趣味がいいとは言えないものもけっこうあったからのようです。

 なんか色や題材がやたら派手だったり、柄がタタミイワシみたいにひたすらぎうぎうに詰まっているだけとしか思えなかったりというような、「すごいけど……(汗)」的なものですね。

 前回、鋳金家鈴木重吉の回でハリリさんのお言葉が、明治美術工芸の凄みを端的に示してくださっていると思うので、以下に引用させていただきます。

「明治の美術工芸には二つの魅力があります。ひとつはとても強い芸術性、もう一つは信じられない技です。私の知る限り、そうした美術作品はほかにはありません」

 そして、ハリリさんは当時の匠たちの「物づくりの心」についてこのようにもおっしゃっています。

「明治の作家たちは、全身全霊をこめて、技をふるいました。なぜなら、自分たちの名前が残ろうと残るまいと、作品がそのものが語り続けると信じていたからです」

 また、前回のゲストであったゲージツ家篠原勝之さんは、作品を評して、当時の匠は、ひとが見たこともない世界を描き出そうとして、楽しみながら、しかし、ほとんど病気に近いような執着心で物を作り上げたのだろうとその心境を想像していらっしゃいました。

 その執着心は、学びたい。

 それが、同じく物をつくる彼のお気持ちだそうです。

 僭越ながら、私が、帰国後の今でも、明治の美術工芸品に魅了される理由は、ハリリさんと篠原さんがおっしゃっていたことと同じなような気がするのです。

 別に手で物を作る人生ではないのですが、努力によって磨き上げられた高い技と美意識、命を注ぎこむような、執着心という名の熱情。

 生きていくなら、そういうものを何らかの形で獲得していきたい。

 それを実現した人々の生き様が、美しく、そしてある意味、誰が見てもわかるような凄さを持つ作品に結実しているので、こうまで手放しで憧れるのかもしれません。


【補足】 V&Aミュージアムの日本の七宝についての記事(英語)は「日本の七宝の歴史 1871〜現代」はコチラです。よろしければ併せてお読みください。



当ブログの明治工芸に関する記事(今回の物を含む)は以下の通りです。よろしければ併せてご覧ください

極上美の饗宴 並河靖之の七宝
極上 美の饗宴 “世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 22:27| 番外編・おすすめテレビ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする