2011年09月02日

ぞうとおじさん(ドラえもん)

 ※本日は英語ともイギリスとも関係のない内容です。

 明日(2011年9月3日)はいよいよ藤子・F・不二雄ミュージアムの開館です。
 
 公式HPはコチラです。

 というわけで、今回は特に大人の方にもう一度ドラえもんを手にとっていただくことを願って、名作「ぞうとおじさん」について書かせていただきたいと思います。

 あ、それ読んだ。という方はたくさんいらっしゃると思いますが、改めて読み返すと、その奥行きに改めてお気づきになると思います。

 戦時中、空襲で檻が壊れて猛獣が逃げ出すことが懸念されたために、動物園で多くの生き物が殺処分されたという出来事をモチーフにした物語です。

 なかでも、危険を察して毒のえさを食べることを拒否してしまったために、餓死という方法で死ななければならなかった象の悲劇は有名で、「かわいそうなぞう」という絵本にもなっています。覚えていらっしゃる方も多いかと存じます。

 大人になってからこの漫画を読むと、藤子Fさんが、いかにこの悲劇の中の動物と飼育員さんの無念に心を痛めて、せめて、作品の中でだけでもなんとかしてあげたかったという、優しい気持ちがひしひしと伝わってきます。

 そもそも表紙がせつない。

 可愛いくるんとした目をした象を、ドラえもんとのび太が、きっと真剣な顔で両手を広げて守っています。大人になるとこの絵だけで目頭が熱くなる……。

 物語は、のび太の父方のおじさんが、インドから仕事で帰ってきたところからはじまります。

 おじさんは、のび太とおとうさんに、不思議な話をしてくれます。

 少年時代、おじさんは象の「ハナ夫」が大好きで、動物園に足しげく通っていました。

 しかし、疎開している最中に、ハナ夫は処分されてしまったと聞き、おじさんは泣きあかしました。
 
 と、ここまで聞いたところでのび太とドラえもんは激怒。

 「しかたなかったんだよ」というおとうさんに、「しかたがないとはなんですか!」「あんなにおとなしい動物を!」と、二人は話を最後まで聞かずに出て行ってしまいます。

「助けよう!」

 と、タイムマシンに乗った二人は戦時中の動物園へ。

 ふたりが駆けつけたとき、ハナ夫はすでに餌をもらえずにやせ衰えています。

 それでも、飼育員さんが入ってくると、目をぱっちりと開き、「プオーッ」と檻の向こうから鼻を伸ばしてえさをねだります。

 そんなハナ夫に、

「おなかがすいたか?よしよし、今らくにしてやるぞ。」

と、飼育員さんはふるえる手でジャガイモをさしだしますが、「だめだ!わしにはやれん。」とハナ夫の鼻先からジャガイモをひっこめてしまいます。

 それは実は毒のえさだったのです。

 そうとは知らないドラえもんとのび太が「けち!」「かわいそうじゃないか!」とゴロゴロ檻に投げ込んでも、かしこいハナ夫はポイと毒えさを外に出してしまいます。

 餌を食べなかったことにホッとしつつも、なんでこんなことをするのかと飼育員さんを責める二人に、命令が出たからだと言いながらも、「誰が殺せるもんか……」と涙する飼育員さんと、彼のほほに擦り寄るハナ夫の鼻……。

一方、軍部の人間が、いつまでもハナ夫を処分しないことについて、園長を責めています。
毒入りの餌も食べなかったと聞いて、撃ち殺してやると飛び出す軍人に、すがりつく飼育員さんと、なだめようとするドラえもん。

「まあまあ、そうかっかしないで相談しましょうよ」
「園長、気をつけなさい。タヌキがおりを出てる」

カッとするドラえもん(大笑)。

 もめている最中に空襲がはじまり、ハナ夫のおりに爆弾が落ちます。
 危険をおかしておりに向かう飼育員さん。
 壊れたおりから出て、飼育員さんに嬉しそうにいななくハナ夫……。

 ここからがドラえもんの不思議道具の出番で、このときの出来事が、のび太のおじさんの、インドでの不思議な話につながっていくのですが、是非じかにお読みいただきたいと思うので、あらすじのご紹介はここまでにさせていただきます。

 とりあえず大人になってから読むと、ストーリーの妙味もさることながら、

 @藤子さんのお描きになる象が優しそうで可愛い。
 A飼育員さんも象が大事で辛かったのだ。

という二点が非常に染みてきます。

 藤子さんのお描きになる動物は、あらためて見ると、びっくりするほど可愛く、(蛇のツチノコでも大福みたいで超カワイイ)その意思や優しさのある目がとても魅力的ですが、このハナ夫がまた、穏やかで人を信じる光をたたえた目と、豊かな表情が素敵なのです。

 うちの犬にソックリ……(可愛いとみんなうちの犬に見える)。

 そして、象の鼻の動きの描写もまたこまやかです。

 ときどき動物番組のドキュメンタリーを見るのですが、象の鼻はどんな動物よりも表情に富み、差し出されたいちずな腕のように、ダンサーのエレガントな舞のように思いを伝えるのです。そのへんが漫画の中にちゃんと描かれている。

 そして、飼育員さんの苦悩と、ドラえもんたちの救いの手に対するとめどない涙……。

 これは本当に優しい物語であり、象と、人々の悲しみに対する、藤子さんの深いいたわりの思いに溢れていると思います、

 藤子・F・不二雄大全集「ドラえもん」4巻収録。オススメです。


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posted by Palum. at 07:46| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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