2011年07月04日

別れのワイン(刑事コロンボ)

刑事コロンボを演じた名優、ピーター・フォークさんが六月二十三日にお亡くなりになりました。

NHK BSで彼の追悼企画として本日(2011年7月4日)から刑事コロンボ3話が放映されます。

BSの番組紹介ページはコチラです。

特にお勧めは明日(2011年7月5日)火曜日22時00分〜23時38分放送の「別れのワイン」です。

ワイン作りに命を懸けていた男エイドリアンが、不仲の弟に自分のワイナリーを売却されそうになったために弟を殴り、ワインセラーに閉じ込めて窒息死させます。

ダイビング中の事故死に見せかけたエイドリアンでしたが、コロンボは彼に疑いの目を向けます。

ワインを、ワインだけを愛するエイドリアン役のドナルド・プレザンスの、ワイン作りを奪われそうになって怒りに震える姿と、殺人による虚脱感の演技は、コロンボの名犯人たちの中でも屈指の迫力と味わいを持っています。

一方、ワインに対する造詣を深めることで、犯人としてのエイドリアンを追い詰めるコロンボですが、同時に、ワインを通じて、エイドリアンとの間に敬意や共感のような気配も芽生えます。

コロンボと犯人とのやりとりの中にひそかに流れる、緊迫と親和。

これぞ「刑事コロンボ」の魅力の真骨頂であり、この点において、「別れのワイン」は「祝砲の挽歌」に並ぶ傑作です。

そもそも、「刑事コロンボ」の魅力は、どことなくワインの酔いに似ています。

人生酸いも甘いも知った後でなければ、その味わいの深みはわからず、殺人という題材を扱いながらも、その刺激はどきつくはなく、台詞や設定や演技の洗練から、どこか観る者をふわりとした非現実の心地に誘う。けれども、いつまでもそこに浸っていてはいけないような、危うさの気配。

描写も、犯人の殺伐度合いも、罪の重さもどっぷり現実的で、額面どおりに受け取ったら寝込みそうなドラマとは一線を画し、コロンボは「犯罪」ではなく「ミステリー」という、現実に疲れた大人たちをしばし酔わせる娯楽を我々に与えてくれました。

そんな「刑事コロンボ」シリーズの中で、もっとも「らしさ」が良く出ていると思われる作品。俳優陣の演技力や題材、起承転結の巧みさからいっても、これをナンバー1に推すファンは多いでしょう。

 名優への「別れのワイン」を傾けながら、ご覧になってはいかがでしょうか。


 (補足)
 エイドリアンの秘書である女性の額やあごの線の美しさに、「おや」と思う方もいらっしゃるでしょう。
 彼女はジェームス・ディーンの永遠の名作「エデンの東」で、主人公キャル(ジェームス・ディーン)を包み込むように見守るヒロイン、アブラを演じた女優、ジュリー・ハリスです。お若いときとあんまり変わらないですね。

 勿論、彼女の演技力にふさわしい、複雑な役どころを演じておいでです。併せてご注目ください


 
(さらに補足)

 刑事コロンボの過去記事がいくつかありますので、お読みいただければ幸いです。

@「祝砲の挽歌
 
A「愛情の計算(コロンボの犬ファンの方必見)」←(コロンボ記事内で一番アクセスをいただいております。私を含めてあのワンちゃんに心奪われるかた多いんですね【笑】)
 
B「ロンドンの傘」

C「サイコ」と「忘れられたスター」
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posted by Palum. at 22:33| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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