2010年03月28日

コミックリリーフ(Comic relief)の「フラッシュダンス」

(はじめに) Comic reliefとは

 Comic reliefは、イギリスのチャリティー団体です。
 
 この「コミックリリーフ」のチャリティー活動のメインとなる日が、2年に一度(odd year=奇数年)に巡ってきます。これを「Red Nose Day」と呼び、赤い鼻をつけるのが目印です。

(※ちなみに、2002年度より、偶数年【=even year】にスポーツ主体のイベントで寄付を呼び掛ける「スポーツリリーフ」という活動が生まれ、毎年交互に開催されています。)

 この日は、BBCがコミックリリーフと提携し、長時間のチャリティー番組(telethon)を放映します。

 この赤い鼻は、スーパーマーケットSainsbury'sや、リサイクルショップなどを経営するOxfamなどで誰でも簡単に購入できます。

価格は、確かひとつ1ポンドだったと思います。もちろんこの収益も募金になります。

卵のバラ売りみたいに、箱の中にゴロゴロ詰められていました。

 これはわたしも買いました。ちなみに、鼻に挟むものなので、鼻呼吸不可、かつ、付けっ放しは痛いです(苦笑)

 この「Red Nose Day」は、小学校などでも賛同してイベントを行うことがあり、ケンブリッジの町なかでも、お芝居のようにドレスアップしたり、カラフルなカツラをつけたりといった格好に、赤鼻をつけて通学する子たちをみかけました。
 
 楽しみながら、社会問題について学び、自分のできることを考えるという一日になっているようです。

  
 
 ※団体Comic reliefのHPは以下のとおりです。
  http://www.comicrelief.com/
 
 ※BBCの「Red nose day」の番組HPは以下の通りです。
  http://www.bbc.co.uk/rednoseday/


(お詫び……一時Red Nose day自体を紹介するページのURLである、http://www.rednoseday.com/を、BBCのものと混同してしまっていました。訂正させていただきます。)


 ※Comic reliefのウィキペディア記事は以下の通りです。
  http://en.wikipedia.org/wiki/Comic_Relief



(「Comic relief」のチャリティー番組と「フラッシュダンス」)
 

 2009年、BBCは「Do something funny for money」というキャッチフレーズのもと、コミックリリーフと提携して、チャリティー番組を放映しました。

 日本にも同系統の番組がありますが、このBBCの番組の場合、

「深刻な現状を伝える」
「視聴者を徹底的に楽しませる」

という住み分けが非常にきっちりしており、こんなシリアスなコンセプトの番組に、打って変わって、こんなおバカ企画を挟んじゃっていいのか……?と、日本人にはかなり衝撃的です。

 多分、日本では「困っている人がたくさんいるのにふざけるな」と苦情殺到で成立しないでしょう。

 ですが、このエンターティメントの力で、人々をチャリティーに参加させるというアイディア、もっと平たく言うと、

「いつも以上に楽しませるから、つらい現実もちゃんと学んで、そして寄付して」

という考え、テレビの「報道」と「娯楽」という二つの存在意義をきっちり活かしていて非常に合理的です。

 そして、開催するたび、日本円なら何十億円(!!)という寄付金を集めているのです。


 この、2009年コミックリリーフ番組中、個人的に、もっとも「笑わせて寄付させる」の構造が鮮やかにキマッていると思ったのは、芸能人たちのダンス対決でした。

 視聴者に、お気に入りのダンスを電話で投票してもらい、勝者を選ぶのですが、この電話料金が寄付にまわされるという、実にムダの無いシステム(笑)。
 
 で、このダンス大会ですが、アイリッシュダンスなど、「正統派の技術を見せるダンス」に果敢に挑戦して、カッコよいものを見せる人たちもいる一方で、

 ・ふくよかな熟年コメディアン女性Jo Brand、三つ編み女子高生へそだしルックで、若手ハンサムダンサーとともに、ブリトニースピアーズの曲でセクシーダンス。



  
 ・ロンドンの人気ミュージカル「Dirty dancing」の曲と衣装で、ダンサーとともに、恋人たちのダンスを踊る、ピンクのドレス姿とグラマーさが魅力の中年男性Kieth Lemon(ヒゲあり)と、彼女(?)のゴツイ体を両手で持ち上げる必要がある(Dirty dancing のトレードマークの振り付けだから)男性コメディアンPaddy McGuinness(すぐ手がヒゲの美女の胸やお尻にいく)。




なんてのもありました。これに投票することが、社会貢献につながるんですよ……。

(※補足……ややこしいのですが、厳密には、Kieth LemonとはコメディアンLeigh Francis氏のキャラ名のようです。)



僕的には、「Dirty dancing」のセクシーさや腕力(……)、待機中も余念なく手をとり、熱く見つめあう男性Paddyのたくましさと、ヒゲの美女Kiethのいじらしいまなざしにもグッときましたが(真顔)、やはり白眉はロバート・ウェブ(Robert Webb)氏の「フラッシュダンス」でした。

(※この二者のインタビュー記事がご覧になりたい方はコチラをクリックしてください。談話とともに、素敵なお姿がご覧になれます)

オーディション番組のスーザン・ボイルさんの登場等と並んで、「2009年TV界ベストパフォーマンス」に入れる人多いと思いますよホント。

 「フラッシュダンス」。元ネタはアメリカ1980年代の映画で、若い女性が(なつかしのカーリーヘアがカワイイ)ダンサーとして夢を追う青春作品です。主題歌「What A Feeling」も大ヒットしました。

 これに挑んだロバート・ウェブ氏は、デヴィッド・ミッチェル氏と「Mitchell and Webb」というお笑いコンビを組んでいます。

ちなみに双方ケンブリッジ大学出身。

 個人的には、このコンビ、「爆笑問題」に雰囲気似ているなあと思います。

高学歴でネタに学術的なくすぐりがあるところや、人間に対するシニカルなまなざし、そのわりに相方との付き合いは長いところなんかが。

 さて、ウェブ氏のダンスです。




まず、映画の主人公と同様に、カーリーヘアに溶接工のマスクと作業着姿でバーナーを手に登場。

ちょっとダンスポーズをつけた後、バーナーを手放し、何かから解き放たれたようにマスクを外すと、思いっきりのシャウト顔で、作業着を破り捨て、ちょっと切れ込みの深すぎるハイレグレオタードで、別にあまり見たい感じでもない美脚を誇示しながら「What A Feeling」に合わせて情熱のダンス。

 ……くどいようですが、チャリティーを呼び掛ける番組の一環です。
 
 これが80年代調の濃いメークと演技力で、ときおり健康的なセクシー美女に見えてしまうから不思議です。いや、原則違うのですが。
 
 彼の「フラッシュダンス」動画入りの記事がご覧になりたい方はコチラをクリックしてください。(※BBCニュースページですが、最初にCM映像が入っています)


彼の勝因としては、

  @「笑えるダンス」と「プロダンサーではない割には相当上手なダンス」をきっちり分けて見せた。

 (一例:横たわった体勢から跳ね起きる、などはしっかり失敗するが、リズム感やステップのセンスはかなりのもの。)

  Aファイナリストのうち唯一人、プロのダンサーのサポートを受けず、自分だけでステージを魅せ切った。

とくに@がイギリス的だと思います。

 日本なら、ここまで到達するまでの血と汗と涙の苦難が、かならず念入りに紹介され、パフォーマンス時、「すごいね、がんばったね……」と感涙を誘うでしょう。

 しかし、ウェブ氏の場合、訓練されたダンス技術を披露しながらも、それほどでもない跳躍力、ターンしても正面に戻れないなどという部分と、なのに、すごく「できてる感」あふれるエネルギッシュな表情との不均衡は、しっかりおマヌケです。

 つまり、どこまでいっても「熱意と努力」ではなく「娯楽」の表現者のまま。

(ちなみに、特訓風景も放映されますが、周囲のダンサー達の爽やかなハイテンションと、「ハーイ!」的なフレンドリーさ、ボディータッチに対し、人間不信の犬のように鼻面をシワシワさせるウェブ氏が出ていたりで、「血と汗と涙の感動」率低し。)
 
 日本とイギリス、どちらが勝ちというわけではなく、国民性の違いによる、「観客の感動のツボ」の違いが、TV内のパフォーマンスを変えるのでしょう。
 
 しかし、そんな理屈抜きに、あの「フラッシュダンス」はオモロイし好きですね……。


 ちなみに、彼のダンスに対し、コメンテーターたちは、

「ウェストエンドで自分のショーを持つべきだ」(←笑)
「あなたは国の宝だ」(←大笑)

などと絶賛していましたが、とくに

「ロンドンオリンピックの開会式に出演できる」

というMichael McIntyre氏(彼自身有名なコメディアン)のコメントには激しく同意します。

 やったら、わたしはイギリスを永久に尊敬します。

 北京オリンピックのチャン・イーモウ監督(※)による、圧倒的な歴史を盛り込んだ重厚美麗な開会式に、あのダンスなら、(ある意味)対抗できるインパクトを与えられるではないでしょうか。全世界(ある意味)騒然間違いなしですよ。

 
 余談ですが、わたしは、このダンスでウェブ氏のお笑い芸人としての才能にすっかり魅了され、
「彼のコントが観てみたい」
とけっこうあちこちで言ってしまいましたが、実際「Mitchell and Webb」の出演する番組いくつか観た結果、非常に面白い物がある一方で、一部、全日本人が凍りつくほどブラック、あるいは、ハレンチ(旧表現)なものもありました。

 良かった……一人で観て。

ホームステイ先で、観たいとお願いしたり、わからない単語をうっかり先生やホストファミリーに聞いたりしたら、気まずいどころの騒ぎじゃありません。

 とはいえ、あのダンス、それ自体は一見の価値ありです。

 そして、番組放映後、町なかで、立ち話をしている70代くらいの年配女性たちが

「確かに彼のダンスが一番良かったわね」

などと評している、イギリスのそんなさばけた国民性が、わたしはとても好きです。


Robert Webb氏のウィキペディア記事URLは以下の通りです。

http://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Webb_(actor)


(※さらに余談)
 チャリティーとはまるっきり関係ないのですが、
「人を笑わせるための赤いつけ鼻」という小道具で、人の優しさと、苦難の中の笑いの力を描いたフランス映画に「ピエロの赤い鼻」という名作があります。
 本当に好きな映画で、Red Nose Dayの期間中、そこらじゅうに赤い鼻が溢れているもんで、あのストーリーを思い出して目頭が熱くなりっぱなしでした。
 当ブログ映画ご紹介記事はコチラです。
 

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「Comic relief」ダンス対決で元ネタにされた「Flash Dance」
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※チャン・イーモウ監督
中国の国民的映画監督。色彩表現に長け、アクション映画とヒューマンドラマ、どちらでも高い評価を受けている。高倉健氏とも親交が厚い。

アクションものなら「HERO」、芸術作品としては、「赤いコーリャン」などが有名ですが、個人的お勧めは「初恋の来た道」、女優チャン・ツィイーの初々しい美しさと、恋、家族、師弟の絆が中国農村風景の中にきらめく、忘れがたい傑作です。


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posted by Palum. at 14:17| イギリスのテレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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