2009年08月20日

テート.セント.アイヴス(美術館)

(画像)テート.セント.アイヴスの外観。

美術館外観.JPG

(要約文)
ロンドンの大美術館の一つであるテートギャラリー、テートモダンの分館がコーンウォール地方の観光地、セントアイヴスにあります。

わたしが行った2009年夏には、陶器、現代彫刻、地元出身の画家の絵画などが展示されていました。

吹き抜けの大窓の展示室から見える海と空は、展示作品をいっそう際立たせていました。

展示品はもちろん、白亜の洒落た建物も、併設のカフェから見える景色も、とても美しいです。

テート.セント.アイヴスのHPアドレス
○Tate St Ives
http://www.tate.org.uk/stives/

テート.セント.アイヴスの、2009年五月十六日から2009年九月二十七日までの展示についての情報ページ
http://www.tate.org.uk/stives/exhibitions/summer-season-2009/

(※)展示換えなどがあるかもしれません。ご注意ください。

どうしても、この作家のコレが観たい!というものがある場合、テートに限らずどこでも、事前に美術館に直接確認なさったほうがよろしいかと思います。



(本文)
テート.セント.アイヴスは、白くすっきりとした円筒状の建物で、半月型にたわんだ、大きな正面窓は、目の前の明るい海を反射させて、建物自体が、巨大でさわやかなモダンアートの風情です。

(画像)テート.セント.アイヴスの上階のデザイン。
美術館上階.JPG

と、言っても、モダンアートにうとい私は、ロンドンのテートモダンですら、一部を除いて、一作品前に長時間いられず、
(不快というわけではなく、どこをどう鑑賞すればいいのかがわからない)
わりと、館内スタスタ歩いてしまった経験があるのですが、この、テート.セント.アイヴスは、とても面白かったです。

「せっかく、目の前に最高の海と空が広がっているのに、建物に入って芸術鑑賞なんて。そんなのほかでいくらでもできるだろうに」

と、自分でも思いましたが、なにせ、いい天気過ぎて、いくら空も海もきれいでも、アヅアヅで、日陰とか、カフェがあるという意味でも、フラフラ足が向いてしまったのです。



この時(2009年夏)は、Lucie Rie(ルーシー・リー)という日本でも人気の陶芸家さんや、
(【デザイナーの三宅一生氏は彼女の熱烈なファン】。日本でも2010年4月から六本木の新国立美術館で一大展覧会があるそうです)

漁師で画家という異色の経歴で、セントアイヴスの風景や海や船を独特の視点で描いたAlfred Wallis氏(アルフレッド.ウォリス)、

抽象彫刻家Barbara Hepworthさん(バーバラ.ヘップワース)の作品などが展示されていました。

(※彼女のパートナーBen Nicholson【ベン.ニコルソン】も有名な画家)

ルーシー・リーさんの陶器は、主に薄手で、色も形も、さりげないけれど、どこかに凜とした静寂のたたずまいがあります。

簡素清冽を愛する日本人にファンが多いのはよくわかります。

ところで、さきほど申しあげたとおり、わたしは、抽象的現代アートは一部をのぞき、観方がよくわからないという悲しい性分なのですが、今回、バーバラ.ヘップワースさんの抽象彫刻作品を観て、はじめてこうした作品の美しさというものを、うすぼんやりと解したような気がします。

彼女の作品は、大きく弧を描いた吹き抜けの展示室の、大窓の周辺に陳列され、彫刻の背後には、青い青い海と太陽の光がきらめいていました。

丸みを帯びた彫刻に、楽器のように弦が幾つもピンと張られた、その隙間から、明るく鮮やかな水平線が見えます。

(画像)美術館の外の海
美術館外の海.JPG

「ほほう、ここから海を見ると、なんか面白いですなあ」
と、頭を傾けて、まじまじと彫刻の穴をのぞきこんでいたわたしの目に、海とくっきりと対照を成す、その円みと線の、追求されつくした「形の美」が、しだいに浮かび上がってきました。

黄金比のように(※)、人間の目が、なぜかしらないけれど美しいと感じる、約束の形というものが存在する。

このかたの彫刻も、自分の表現したい思いやイメージにぴったりと沿う、美しい、無駄のない形というのを、どこまでもストイックに追い求めて出来上がった物なのだ、と、そのとき感じられたのです。

大理石のなめらかな艶に、空の青、海の青をひっそりとこもらせて、おだやかによりあつまるオブジェ。

大きな一木をくり抜いた彫刻。
そのくり抜かれた穴は、徐々に中心をずらすようにして、いくつもの円を描いていて、あたたかな木肌の丸い線が、昼の光を浴びて、白くほのめく。
そしてその向こうに、空と海が、はるか遠くの世界のように垣間見える。

この、木、ブロンズ、大理石の質感、形の味わい、それと調和する空間の、無言の神秘性というのは、「人」とか「動物」とか、それ自体がはっきりと意味を持つものでは生み出すことができない。

この、えも言われぬ形でなければ、この不思議な気配は、この世に現れないのだと、納得できたのです。

しかし、この彫刻のフォルムの美しさを、くっきりと浮かび上がらせる「背景」として、窓の向こうの、セントアイヴスの、空と海と光が果たす役割は非常に大きいと思います。

世界で一番くらい、幸運な場所に置いてもらえた現代アートなのではないでしょうか。

あるいは、この方はセント.アイヴスを拠点にした芸術家ですから、芸術家の美意識と、セント.アイヴスの自然が相まって、こうした印象深い姿に結実したのかもしれませんが。




まったく話は変わりますが、この美術館のカフェからは、海に向かって張り出す、赤茶けた屋根に白い壁の、セント.アイヴス独特の町並みと海が一望できます

(画像)カフェから見たセント.アイヴスの町。
カフェからの眺め.JPG

風光明媚なセント.アイヴスの中でも、屈指の絶景お茶ポイント(ナニソレ)なのではないでしょうか。

アートに浸ったあとは、景色を楽しみながらカフェでのんびりというのも、オススメです。


美術館、テート.セント.アイヴスのHPアドレスは以下の通りです。

http://www.tate.org.uk/stives/

テート.セント.アイヴスのカフェのページです。

http://www.tate.org.uk/stives/information/eating.htm

<2010年、日本の新国立美術館(六本木※以後各地巡回)で開催される「ルーシー・リー展」【2010年4月28日(水)から6月21日(月)まで】のHPは下記のアドレスです。

http://www.lucie-rie.jp/

日本の新国立美術館「ルーシー・リー展」について(一部作品が観られます)
http://www.lucie-rie.jp/about/index.html

テレビ東京の名物番組「美の巨人たち」でルーシー.リーさんが紹介されていたそうなので、そちらの記事のアドレスも張らせていただきます。

http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/data/090207/

また、わたしは残念ながら行かれなかったのですが、セント.アイヴスには、バーバラ.ヘップワースさんの美術館と、彫刻が展示されたお庭もあるそうなので、こちらの情報も貼らせていただきます

○Barbara Hepworth Museum & Sculpture Garden
http://www.tate.org.uk/stives/hepworth/visiting.htm

テート美術館HPで紹介されている、バーバラ.ヘップワースさんの作品一覧。(絵もとても素敵です)http://www.tate.org.uk/servlet/ArtistWorks?cgroupid=999999961&artistid=1274

(注)
実際テート.セント.アイヴスで今(2009年九月二十七日まで)ご覧になれるのは、この作品一覧のうちの、ごく一部です。
また、展示はされていたけれど、このページで作品の画像が見られるようになっていないという作品もかなりあります。


バーバラ.ヘップワースさんの作品の一例
http://www.tate.org.uk/servlet/ViewWork?cgroupid=999999961&workid=6053&searchid=9162

また、前回セント.アイヴスへの旅」で紹介させていただいた陶芸家バーナード.リーチ氏の作品も、テートが一部所蔵しているようなので、作品が観られるページのアドレスを張らせていただきます。

(注)繰り返させていただきますが、「所蔵している作品」ということであって、現在展示されているという意味ではありません。お気をつけください。

http://www.tate.org.uk/servlet/ArtistWorks?cgroupid=999999961&artistid=1478&page=1


※余談ですが、わたしがセント.アイヴスの、リーチ氏の記念館であるLeach Pottery で観た(テートではありません)あの方の作品は、また違った味わいでした。
ティーポットでしたが、淡い、水色とも緑ともつかない、透き通った愛らしい色合いで、眺めていると、心穏やかになれる風情でした。



(※)黄金比(黄金分割)

一つの線分を二つの部分にわけるとき、全体に対する大きな部分と小さな部分の比とが等しくなる分け方。
大と小の比は約1.618対1で、古代ギリシャ以来最も調和的で美しい比とされた。                    
(スーパー大辞林より)

……なんだか、よくわからない感じもしてしまいますが、研究によれば、さまざまな美術品(例、絵画や彫刻の女性のプローションとかポーズなど)や建築にも、実はひっそり、この「きれいに見える比率」が踏襲されているそうです。
posted by Palum at 04:00| イギリスの美術館 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする