2009年07月27日

イギリスの怪物番組 『Dad's Army』

deadly attachment ending - コピー.jpg
(Image Credit:YouTube)



「Dad's Army」のDVD(注!イギリスのDVDは日本の一般的なDVDプレイヤーではご覧になれません。パソコンなら大丈夫かと……)



(要約文)

『Dad's Army』は、イギリスで大人気のシリーズドラマです。

第二次大戦期、ナチス.ドイツの侵攻を防ごうと「ホームガード」という国防組織を結成するイギリス。

しかし、若い人たちは既に兵隊にとられて男手不足。

空になってしまった地元を守るために、「ホームガード」に参加したのは、

「無理なさらないで……」

という感じの人々……。


体力と物資に不安はあっても、イギリス男の不屈の気概で、難局を乗り切ろうとする(けど、しばしば逆に騒動を巻き起こす)人々を描いた傑作コメディです。




※今回は、ドラマ紹介として、一部ネタバレ、台詞バレがあります。


『Dad's Army』は1968〜1977年のドラマです。


でも、いまだに(2009年七月)ゴールデンタイムで再放送しています。

しかも、再放送は今回に限ったことではないとか。


「なんどでも再放送する。だってなんどでも観たがる人がいるから」

ということだそうです(イギリスの知人談)。


主要登場人物を演じられた役者さんで、故人となられたかたも、かなりいらっしゃるそうですが、それでもやるのです。


こんな番組って、ちょっと日本では類例がないですよね……。

(終了後、三十年経っても、ゴールデンタイム再放送というのが)


それにしても、最初に、このドラマのオープニング映像を観たときは、目を疑いました。


だって、軽やかな中年男性声の歌とともに、アニメで、イギリスの地図から、イギリス軍を示す、国旗模様の矢印が、いくつか、わーっと、海を渡りヨーロッパへ。


それを、ナチスのマークの矢印が取り囲み、イギリスの国旗の矢印は、わーっと国内に逃げ帰り……。


追いかけてきた、ナチスの旗たくさんに対して、イギリスの国旗は、南の端っこあたりで、一生懸命うろうろしている、という映像が流れるのです。


この、一連のアニメが示す戦況の中に、あの

「ダンケルクの戦い(※補足)」

などが含まれているはずなのに、この歌とアニメでまとめちゃっていいの……?と、あっけにとられました。


誤解しないでいただきたいのですが、イギリス人の戦争観が不真面目なわけではないです。


ごく最近(2009年七月二十五日)Harry Patchさんという、第一次大戦最後の生存兵士だったかたが、百十一歳でお亡くなりになった際は、非常に大きなニュースになりました。


また、どんな小さな町にも、第一次、第二次大戦の慰霊碑はあります。


常に花が供えられ、その多くが、イギリス人に限らず、戦争で命を落とした全世界の人々への追悼の念を記しています。


ただ、そういう真剣さとは別に、よその国の人間は、あぜんとするほど易々と、深刻な事態を笑い飛ばそうとするところが、この国の人たちにはあるのです。


しかし、題材の是非はともかく、

『深刻な事態を、深刻だと嘆くより、いっそ笑っちゃえ』

というのは、不真面目ではなくて、したたかで高度な、生きる知恵なのではないかなと思います。


このドラマに関して言うと、設定として非常に上手なのは「ホームガード」を題材にしているところかと。


これが、攻撃にせよ防御にせよ、正規の軍隊の場合、きれいごとでも笑いごとでも済まされない話も多いでしょうが、

「自分たちが住んでいるところをみんなで守る」

という、シンプルなチームを描いていますから、ユーモラスに扱っても、観る側があまり抵抗を覚えないようです。


まあ、こんな真顔の分析は、後付けです。


私も、最初は、

「ええええ……?(冷や汗)」

と、あのすごいオープニングアニメを観て、


「いやー、それはまずい、それは駄目でしょう……」

と、静かにチャンネルを変えたのですが、

あとで、チャンネルを変えている最中に、ちょうどエンディング映像が流れていて、


「ご年配のかたがたが、つんのめったり、普段どおりの穏やかな笑みを浮かべたりしながらも、明らかに似合わない軍服を着て、町を守るためにがんばってます」

という映像が流れた際に、ぶっと笑ってしまい、それから試しに観てみて、ハマってしまいました。


 エンディング動画はコチラです。

(登場順にマインワリング隊長、ウィルソン氏、ジョーンズ氏、フレイザー氏、ウォーカー氏、ゴッドフリー氏、パイク青年)




以下、主要登場人物紹介です。

(まだ全部観たわけではないので、理解不足もありますが、ご了承ください)




マインワリング隊長 - コピー.jpg
Captain George Mainwaring (俳優名 Arthur Lowe氏)

マインワリング隊長(すみませんこの方の名前、すごくカタカナに乗せづらい……)。

ホームガードのキャプテンで、普段は銀行の支店長。

個性派揃いのチームを、なんとか軍隊らしく育て上げようと、日夜努力している

(そのためのアイディアが、みんなを振り回すこともしばしば)


キャプテンという立場を、かさに着た態度も、ままあるけれど、自分をえらく見せようとするときほど失敗しがち。

それでも実は人情家で、責任感は強い。


ウィルソン - コピー.jpg
Sergeant(軍曹) Wilson (俳優名 John Le Mesurier氏)

ウィルソン軍曹。

銀行ではマインワリング氏の部下。そのため半強制的に補佐役に。

最初は、銀行づとめで板についた礼儀作法が災いしてか、ホームガードの人々への、軍隊的命令口調を使えずに、苦労していた。

(いきなり、ご近所の、同年かそれより上の人たちに命令しろったって、確かに難しいですよね……)


なかなか渋い容姿なのだけれど、どうも、可愛い女性には、やや甘い模様。

口癖は「Awfully〜(ひどく〜だ)」。


ジョーンズ - コピー.jpg
Lance Corporal(槍騎兵伍長) Jack Jones (俳優名 Clive Dunn氏)

ジョーンズ伍長。

普段は肉屋さん。兵役経験を買われて(というか、肉を賄賂に)若いころの階級である「Corporal」を引き続き名乗ることに。

(しかし、周囲が特にそれについて敬意を払っているふしは見られない)


覇気はチーム一だけれど、空回りも目立つ。

「Don’t panic!! Don’t panic!!(あわてるな!!)と、自分が慌てているときに、誰よりも先に叫びまわる癖がある。


(ジョーンズ氏の「Don’t panic」傑作選動画〈笑〉)
※個人的な意見ですが、このかたは、しゃべり方から、表情、一挙一動にいたるまで、「オモシロ愛されオーラ」満点なので、どうも「お年を召した加藤茶さん」という感じがして親しみやすいです。



フレイザー - コピー.jpg
Private (兵卒※特に階級は無いという意味のようです)James Frazer (俳優名 John Laurie氏)

フレイザー氏。

普段は葬儀屋さん(副業で切手屋さんもしている模様)。

筋金入りの悲観主義論者。

チームがピンチに陥ったときは、常に最悪の事態を想定して、低い声でつぶやき続け、周囲を重苦しい空気に巻き込む。

ときどきマインワリング氏に反抗的。


口癖は「Doom and gloom(意訳、破滅【あるいは死】と憂鬱)」(笑)

スコットランド地方出身で、そのことを非常に誇りに思っている。


※イギリスにはちゃんとScotsman【woman】という言葉があります。スコットランドに限らず、出身地方に対するこだわりは強いのです。


ウォーカー - コピー.jpg
Private Joe Walker (俳優名 James Beck氏)

ジョー.ウォーカー氏。

チームの中では若手だが、健康上の理由で兵役を免除され、ホームガードに加わる。

やり手で、物資不足の折でも、なにやら不明瞭なルートで何でも調達してきて、チーム内でも商売をする。

ただし、品質は信用がおけたり、おけなかったり。

また、戦時中だからという理由で、安くはない模様。





ゴッドフリー - コピー.jpg
Private Charles Godfrey (俳優名 Arnold Ridley氏)

ゴッドフリー氏。

長年、軍で勤務していた経験を持つ(注、軍内のお店で)。

おっとりとした、微笑みの癒し系な紳士。ことあるごとに居眠りをしている。

(この方のおかげで「doze off (居眠り)」ということばを覚えました。)

居眠りといいつつ、それが数時間の熟睡に及ぶこともある。




パイク - コピー.jpg
Private Frank Pike (俳優名 Ian Lavender氏)

パイク青年(あだなはパイキー)。

チーム最年少。「ホームガード」入隊時は十七歳。

(若すぎるという理由で、正規の軍隊には入らなかった)

母親に過保護に育てられたようで、すぐに「ママが心配する」と言う。


母親であるパイク夫人(未亡人)は、どうやらウィルソン軍曹と親しい仲の模様。

このため、ウィルソン軍曹のことを「アーサーおじさん」と名前で呼ぶ公私混同ぶりを見せている。

最年少と言う理由で、よく貧乏くじをひかされているが、口答えはわりときっちりしている。

(背の高い、可愛い感じの好青年だが、そこをぜんぜん売りにしていないところが良い)




以下、このドラマが、どんなセンスなのかをわかっていただくために、一部、ドラマの概略を紹介させていただきます。


なお、台詞については、かなり省略させていただいている上に、雰囲気をお伝えする程度に書かせていただいている

(しかも、何より、わたしの怪しげな語学力を経由している)ため、厳密、正確なものではないことをあらかじめご了承ください。


こんな感じのやりとりなのかな、というくらいの姿勢でお読みくださるとありがたいです。


以下、ネタバレです。



「The Man and the hour」

シリーズ第一話(白黒映像)。


地元を守る有志として集められたばかりのメンバー。

軍服も武器も無い状態で、

(史実、こんな感じのところも多かったそうです)


「戦車が攻めてきたらどうすればいいか」

について作戦を練る。


ウィルソン軍曹が黒板に描いた戦車の絵

(「五歳くらいの子が、『ドカーン!ゴゴゴゴ〜』とか、言いながら描きました」と言っても通用しそうな画風)

の前に体育座りをして、話し合いをする人々。


お肉屋ジョーンズ氏の提案。

「ジャガイモを使うのはどうでありましょうか?」


マインワリング隊長。

「……ジャガイモ……?」

「戦車の排気パイプに詰めれば、エンジンを故障させることができます」


「……なるほど、しかしドイツの戦車の排気パイプは、とても細長いんだ」

「細長いジャガイモなら可能であります!」


(一同、同意【←ええええ……?】)

「『シャーロットビューティー』なら細くて長い!」

「『キングエドワード』もだ!」

(よくわからないけれど、日本なら『メークイン』みたいなものですかね……)


一応、「戦車対策用」のジャガイモの配給申請もすることにして、

(ダメなら揚げて食べる予定の模様【←そういう状況……?】)

本格的な対策として、

「燃料に浸した毛布を戦車にかけて、マッチで火をつける」

(これも、相当無理そうですが)

の練習のために、戦車役の人々(服装が紳士)が数人固まって

「ブルルンブルルン……(エンジン音)」

と、口で言いながら近づいてくるのに、毛布をかぶせる練習をする(涙)。


でも実際、普通に暮らしている人達が、いきなり戦争に巻き込まれても、発想も物資もこの程度ですよね……。


笑いながらも、なんだか考えさせられる場面です。


「Deadly attachment」より。

(直訳すると『致命的な付属品』ですが、すみません、適訳かは定かではありません……)



ドイツ兵が捕虜として町に連行され、正規の軍隊が引き取りにくるまで、ホームガードの本部を兼ねた教会で、監視役をつとめることになるメンバーたち。


マインワリング隊長が、ふと口にしたヒットラーへの悪口を、英語のできるドイツ兵に、聞きとがめられる。

(一貫してふてぶてしいが、拘束中に出される夕飯のフィッシュ&チップス【イギリス名物魚のフライとフライドポテト】については、

『魚はカレイじゃないと嫌だ。サクサクに揚げてあること』

と注文が細かい。

【そしてマインワリング隊長は『ベトベトした(soggy)』のを買ってこさせる】)


 とりあえず「こんな感じのやり取り」というところを書かせていただきます。

「きさま、我々の偉大なるリーダーを侮辱したな。きさまはリストに載せてやる」

(メモ帳を取り出して、マインワリング隊長の名前を書き留めるドイツ兵)

「われわれが戦争に勝ったあかつきには、きさまの名前を報告してやる。【なんか相当まずいことになるらしい】)」


(マインワリング隊長、多少いやな気がしながらも)

「好きにすればいい、お前たちが勝つ日は来ない」

「お〜、我々は勝つさ(悠々と首を振る)」

「勝つもんか」

「い〜や、勝つとも」


そこで、見張りの一人だったパイク青年、銃をかまえた格好で、ニヤニヤしながらヒットラーをからかった歌を歌いだす。

(ド空気読めない子)


(ドイツ兵、パイクをびしっと指差して。)

「きさま!!きさまもリストに載せてやる。名前はなんだ!?」

「教えるな、パイク!!」

「『パイク』……ありがとう」

(メモ帳に名前を書き留めてほくそえむドイツ兵【←お約束】。パイク、うらめしげにマインワリング隊長を見る)



この、マインワリング隊長の失言

「Don't tell him Pike!!」

はイギリス人にもツボのようで、Wikipediaでも言及されています。

(この「Deadly attachment」が、一話まるごと丁寧に解説されています。)

作品自体、シリーズの中でも屈指の名作として名高いようです。


(ロングバージョン、フィッシュアンドチップスの注文をとるシーン付)


もうひとつ印象的だったのは、

「Keep young and beautiful」(直訳、『若さと美しさをたもて』【笑】)という一話です。


現在のホームガードの人員を、もっと若い人と入れ替えようという話が、政府で持ち上がり、おなじみのメンバーたちにも動揺が走る。


(もうひとつの国防組織である、ARPというチームに再配置される可能性が高いのですが、彼らはホームガードに残りたいのです)


特に、チーム最年長である、お肉屋ジョーンズ氏、微笑みゴッドフリー氏、悲観大好きフレイザー氏の心中は穏やかでなく、三人は、軍の視察を前に、葬儀屋さんであるゴッドフリー氏の、死化粧技術を駆使し(大笑)、若返りをはかることに……。


軍の視察を前に、隊員たちを集めるマインワリング氏、三人のあまりの変わりようにあっけにとられる。


「ジョーンズ?いったいどうしたんだ!?」


(髪も口ひげも黒く染め、メガネも外したジョーンズ氏【そのため、よく方角を間違える】)

「われわれは、あなたの隊から離れたくないので、フレイザーに外見を整えてもらいました!」


(同じく黒い髪のフレイザー氏、頬と唇に紅をさし、かっと目を見開き、不自然なおちょぼ口で)

「フモフモ!モフモフモフ!」


(ジョーンズ氏、通訳をして)

「フレイザーは、いま、うまく喋れません、頬に綿を詰めているからであります!」


「ゴ、ゴッドフリーか?」


(くっきり眉毛をかき、目いっぱいアイラインを引いたゴッドフリー氏。【妙にりりしい】)


「そうです、フレイザーさんに、しわ伸ばし薬をぬってもらいました(なんかお肌がペカペカしている)」

「ばかばかしい、元に戻せ!」

「す、すぐには無理だと思います」

「なんてことだ、彼はまるで『蝶々夫人』じゃないか……(※日本を舞台にしたオペラ。名作ですが、衣装や厚塗りメークが『これぞ外国人の勘違いジャパン』なことが多い)

フレイザー!この状態はいつまで続くものなんだ?」

「モフモフモフ!!」

(ジョーンズ氏訳)

「『埋葬した後、掘り返したことがないから、わからない』そうであります!」



「年配の兵士が、戦いに参加するために髪を黒く染める」

といえば、日本では、源平の戦いの頃の、斉藤実盛という、平家方の勇敢な武士の活躍と、壮烈な最期が語り草になっています。

(死期を定めて、ひときわ美麗な鎧で戦に望み、味方の敗走後にも、一騎踏みとどまって、源氏勢に戦いを挑んだ)


『平家物語』に記された、彼の生き様、死に様は、武士の美学に鋭く貫かれ、敵味方に畏敬されたその潔さと、哀切さの胸に迫る名文です。


一見、似たような行動なのに、こうも違う話になるんだなあと感心しました。


これが、イギリスと日本の、芸術内で戦争を扱った際の、センスの相違と言っては言い過ぎでしょうが。


この「Dad's Army 」、イギリスコメディの真骨頂として有名ですし、実際とても面白いのですが、日本での放送は……難しいでしょうね……。


しかし、イギリス在住の方は今(2009年七月現在)、HMVで「Dads Army: Complete Series & Specials: 14dvd: Box Set」 という十四枚セットのDVD(※冒頭部画像)が、元値100£だったのが、なんと約38£でお買い求めになれます。

こちらは、英語の字幕がつけられるので(注)、お勉強にもピッタリ(かな……)。


※注 

イギリスのDVDは、英語の字幕がついていたり、いなかったりです。

必要な方は(含、わたし)どの作品でも、購入前に字幕があるかどうかを、必ずご確認ください。



HMVのアドレスは下記の通りです。「Dad’s Army 」で検索をかけてみてください。店頭販売もされているはずです。



この番組は、ごく最近(2009年七月)も、BBC2で再放送されていて、まだ観られると思うのですが、どうも地方により、放送時間がまちまちなようなので、すみませんが、正確なところが記載できません。ホームページ等でご確認ください。


BBC2の番組表アドレス



BBCの「Dad’s Army 」紹介ページ



BBCトップページ



こういう笑いのセンスが大丈夫な人には、間違いのない名作と思われます。個人的にはオススメです。



(※補足)

「ダンケルクの戦い」

1940年5月末から六月初めにかけて、イギリス、及びフランス=ベルギー軍が、フランスのダンケルク海岸からイギリス本土へ撤退した作戦。

ナチス.ドイツ軍からの追撃から避難するために、近隣の多くの民間船が協力した。

(※ブリタニカ国際大百科事典を参照させていただきました)


【さらに補足】

 ポール.ギャリコの短編小説に『ダンケルクの戦い』を一部下敷きにした、「スノー.グース」という作品があります。

せつない、しかし本当に美しい作品です。

新潮文庫で読めて、その他二編も、愛情あふれる素晴らしい作品なので、とてもお勧めです。挿絵も素敵です。


posted by pawlu at 22:33| おすすめ番組 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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