2024年11月16日

オアシスの「リヴ・フォーエヴァー展」は音楽はもちろん写真や企画側の方たちの熱意も素晴らしかった(2024年11月23日まで、六本木ミュージアム)

(展覧会会場入り口)
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(※ブログ筆者撮影 以下同)

2024年8月に15年ぶりの再結成を果たしたロックバンド「オアシス(OASIS)」の足跡をたどる展覧会が東京六本木ミュージアムで開催されている。

リヴ・フォーエヴァー: Oasis 30周年特別展 英国音楽史上最強のロックンロール・バンド、オアシス。 デビュー30周年を記念する特別展が開催!
2024.11.1 FRI-11.23 SAT Roppongi Museum 10:00-18:00(最終入場17:30)

ノエルとリアムのギャラガー兄弟を擁する、英国・マンチェスター出身のロックバンド。1991年結成。1994年、1 stアルバム『オアシス』(原題:Definitely Maybe)を発表し、一躍人気となる。「ホワットエヴァー」「ワンダーウォール」「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」などのヒット曲を世に放つも、たびたび兄弟の不仲が報じられ、2009年に活動停止。このほど15年ぶりの再始動と2025年のライブツアー開催が発表された。
(※ついに来日公演決定。2025年10月25日、26日〈2024年11月22日発表情報〉)





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15年ぶり衝撃の再結成、英ロックバンド「Oasis」30周年記念展 ― 六本木ミュージアム(アイエム インターネットミュージアムより)

オアシスのファンだけではなく、写真や映像、グラフィックデザインを勉強している方もきっと楽しめる展覧会。
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90年代のイギリス音楽業界の強烈な熱気は、音楽とともに、こうした才能が集結して形作られたのだと知ることができた。

特に感動したのは、この展覧会のメインイメージになっている写真。私が展覧会に絶対行こうと思ったのはこの写真のおかげだった。


「音楽が生まれる瞬間」「兄弟」の普遍的イメージのようで、ギャラガー兄弟個人にとどまらない魅力がある。

会場の入り口の写真を見上げると、秋空に音楽が広がっていくのが聴こえるようだった。
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この写真の使用許諾をとるには紆余曲折があったそうで、

「リヴ・フォーエヴァー」というタイトルはOKだけど、この写真は2ndアルバム『モーニング・グローリー』(1995年)のときのものだから合わないって言われて。

でも、こちらの意図としてはそういうことじゃないんだって説明したんです。彼らは、1stアルバムの30周年アニバーサリーというようなニュアンスで考えてるけど、私たちとしては、レトロスペクティブ、大回顧展みたいな感じで考えています、と。このバンドと一緒に生きてきた30年を全部振り返る象徴的な写真にしたいんだって説得して、なんとかOKをもらいました。

オアシスが再始動するという見積りで進めた『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側➁ソニー・ミュージックエンターテイメント 展覧会責任者、小沢暁子さん談)

企画側の方たちが粘り勝ちでメインビジュアルに持ってきた、この素晴らしい写真の撮影者は、ジル・ファーマノフスキーさん。50年のキャリアを持ち、ノエル・ギャラガーが「親友」と呼んで、絶大な信頼を寄せる音楽写真家だ。

(ノエルとジルさん〈素敵な方だし本当に仲が良さそう〉)

私が現場に着くと、ギャラガー兄弟は(補:MV撮影中に時間を持て余して)既にかなり退屈していたこともあって、セットや周りや外で5分間だけ撮影できないかという私の要求に、気がまぎれると喜んで引き受けてくれた。この日はいい写真がたくさん撮れた。どうやらノエルとリアムの間で口喧嘩があったらしいが、私は見ていない。それどころか私が撮った写真の多くには、兄弟間の仲の良さ、協調性、尊敬の念が見てとれる。

(ジル・ファーマノフスキーさんのコメント リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展パンフレットp.3)  

パンフレットではこの他の写真でもジルさんが撮影当時のエピソードを語っている。この方の存在と作品を知ることができたのも、「リヴ・フォーエヴァー」展に行った大きな収穫だった。

(オアシスのほか、ビートルズやピンク・フロイドなど、数々のアーティストをカメラに収めた音楽史の証人とも言える方、いつか日本で彼女の仕事全体の写真展を開催していただけたらと思う)

このパンフレットは絶対買ったほうが良い。写真も文章も、作り上げた人たちの熱がこもっていて本当に見ごたえがある。

売り場のパンフレットリサイズ - コピー.JPG

ミュージアムグッズエリア(大混雑)でも、リアルタイム世代ではない、二十代らしき青年たちが、「この写真良すぎだろ……」と呟きながら、メインイメージの写真がプリントされたシャツを、「負けた」顔で、すごく仕方なさそうに一人二枚ずつ買っていた。(多分「着る用」と「保存用」)


予算的には厳しかったのだろう。こんなに観る人の心を温かくするのに、人々の財布の紐を、言うことを聞きやしない暴れ馬の手綱に変えてしまう魔力もある。撮られている人間が生み出した音楽も、撮った人も「本物」だからだ。(※現在グッズは売り切れで受注生産になっているものもあるので要注意) 

神保町「New Gallery」でジルさんと今回の「リヴ・フォーエヴァー」展のロゴを手掛けた河村康輔さんの、オアシスをモチーフとした展覧会「Oasis Origin + Reconstruction」も開かれている。こちらも必見(入場無料)。展覧会で上映されている、ジルさんとノエルが写真を見ながら思い出を振り返っている動画も、とても面白かった。

追記:企画展「Oasis Origin + Reconstruction」会期延長のお知らせ 開催中の企画展「Oasis Origin + Reconstruction」は、ご好評につき会期延長が決定いたしました。 2024年10月31日(木) - 2024年12月8日(日) ※11月25日(月)休廊 開館時間:12:00 - 20:00❞


神保町の展覧会のメインイメージポスター。ジルさんの写真を素材に、河村康輔さんのシュレッダーを用いて貼り合わせる手法で生み出された、リアムとノエルのコラージュ作品。

彼らの印象的な強いまなざしが、揺らぎ、交錯しているようで美しい



グッズ売り場を抜けるとフォトスポットがある。

デビューアルバム『Definitely Maybe(邦題『オアシス』)』(1994年)のCDジャケットが再現された小部屋。部屋に入って小道具も持って撮影ができる。

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(来た人同士が一緒に写真を撮れるように、展示スタッフの方も撮影を手伝ってくださる)

こちらは10年前に開催された展覧会でも使われていたそうだ。

来場者がそのなかに入って写真が撮れるようになってます。10年前の展覧会に来た方が、もしかしたらご家族とかができて、人数が増えてるかもしれない。オアシスと人生を一緒に歩んでる感が見えたら面白いかなって思います。

(『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側➁)

足元の見本画像リサイズ - コピー.JPG

(部屋に入った人が見える角度に「ポーズのお手本」用の写真があるこまやかな心配り)

「同じ感じ」にするために、きっちり床に寝そべる人、ギターを奏で(るフリをして)、遠い目をする人、と、撮る側も撮られる側もわきあいあいとして、順番待ち時間も楽しかった。

こちらは「リブ・フォーエバー」MV内の、外壁に付いた椅子風の画が撮れるトリックアート。

リヴフォーエヴァーの椅子 - コピー.JPG

「リヴ・フォーエヴァー」のミュージックビデオに出てきた椅子です。それがやりたくて!予算の関係でできないかも……ってなりながらも、押し通しました。いつ(プロデューサーの)武藤に、「この椅子はやめましょう」って言われるかビクビクしながら(笑)。最後はもう、絶対何がなんでも押し通すつもりだったんですけど!

(同上)

なぜ展覧会のタイトルが「リヴ・フォーエバー」になったのかについて、展覧会責任者の小沢さんはこう語っている。

当時ノエルは、破滅に向かっているようなグランジ音楽に対して、ものすごく嫌だったっていう話をしてたんですね。カート・コバーン(※1)はすべてを手に入れた末に破滅的になって、本当に亡くなってしまった。

いっぽう、ノエルたちは何も持ってなかった。地方の公団住宅に住み、生活は苦しくて、お母さんは自分たちの学校で給食を作っていて、家に帰ると父親に殴られる。そういう生活を送るなかからめちゃめちゃ勢い良く「俺たちはロックスターになるぜ!」っていう曲を書いて世に出てきた。当時のイギリスは不況で、地方都市の多くの若者は裕福じゃなかったから、オアシスの曲を聴いて、「俺のことだ」「私のことだ」ときっと思ったんですよね。「リヴ・フォーエヴァー」ではそんな彼らと、“死にたいじゃなくて、生きてやる”っていうメッセージを共有したんです。“俺とお前は永遠だ”って、何の根拠もなく。だから、本来はこの曲って、未来に向けたポジティブな楽曲と皆が思っていた。

でも、シェインに向けて歌ったときに(※2)、“俺とお前は永遠だ”が、過去も含めて、過ごしてきた時間のすべてが永遠なんだっていうふうに響いてきた。未来の話だけではなく、自分の歩んできた過去を振り返ったときにも、ちゃんと響く楽曲だっていうことにびっくりしましたね。バンドの30年を振り返るにあたって、このタイトル以外は考えられなかったですね。

同上

(ブログ筆者補1 「ニルヴァーナ」のフロントマン。1994年に27歳で急逝した)

(ブログ筆者補2 2023年に死去したザ・ポーグスのシェイン・マガウアンに向けてコンサートでノエルがこの歌を歌った時のこと)


今回この展覧会に行って、(楽曲の素晴らしさは大前提として)写真家ジルさんや、展覧会を企画したソニー・ミュージックエンターテイメントの方々など、オアシスを愛する人たちの情熱にも感動した。

この展覧会が再結成発表前から決定されたのは、企画側の方たちが、再結成の可能性を察知し、それに賭けて(叶わなくても1stアルバム30周年は祝おうという気概で)いたからだ。

ギャラガー兄弟二人のソロ活動もサポートし、「楽曲が聴かれつづけるようにCMのタイアップを決めたり、バンドの不在期間を埋められるように、バンドがいつファンの元に帰ってきても良いようにマーケットを温めつづけてきました」と嬉しそうに語る方たちの「(長年オアシスに関わってきたソニー・ミュージックエンターテイメント関係者)全員がめちゃくちゃ愛着を感じているバンド(※)」という熱い思いが、展覧会に結実している。(※『リヴ・フォーエヴァー:Oasis 30周年特別展』の裏側@より)

作品が「永遠に生きる」ためには、作り手の本物の情熱と才能が何よりも大切だが、その「本物の作品」を真剣に愛して、その素晴らしさを広めようと、自分の才能や労力をかけて挑む人たちも絶対に必要なのだ。

「本物」だからといって、同時代にそういう人たちや、「本物」を愛するファンと繋がることができるとは限らない。その意味ではオアシスは幸運なバンドだったのかもしれない。

でも「本物」でなければ絶対に30年もの間(そのうちの15年「オアシス」としての活動は止まっていたのに)、真剣に彼らの音楽を追いかける人々の思いが存在し続けることも、できなかっただろう。

予想もしなかっただろ。俺みたいな奴がまた世間を賑わすなんてSome Might Say

俺は飛びたいだけさ

生きたい こんなとこで死んでたまるかよ

俺は呼吸したいだけ

何も信じられないだけ だぶんな

でもお前も俺と同じだろ

俺らにはあいつらには見えないものが見えている

俺とお前は永遠だ

(Live Forever)訳詞:いしわたり淳治(展覧会パンフレットより)




(展覧会のタイトルになった「Live Forever」)
Oasis - Live Forever (Official HD Remastered Video)

ニルヴァーナの代表作「Smells Like Teen Spirit」
Nirvana - Smells Like Teen Spirit (Official Music Video)

同じミュージシャンとしてカート・コバーンの才能がわかっていたからこそ、その最期が悔しくて「Live Forever」が生まれたのだろう。

(ビジュアルイメージとなったあの素晴らしい写真は、この「Wonderwall」の撮影途中で生まれた)
Oasis - Wonderwall (Official Video)



【参照】
2024.11.01 ソニー・ミュージックエンタテインメント(cocotame

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posted by pawlu at 21:33| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月08日

思い切ってビルボードライブでのマキシムのピアノライブコンサートに行ったときの頭の中


けれど行く前からもう緊張して、この漫画のコマが頭から離れなかった。
追い出されるクマ -.jpg
(事前にネットで情報収集したつもりでも、自覚が無いまま場違いな行動をしたために問答無用で追い出されるイメージ)

普段「洗練」とは程遠い暮らしをしていると、ライブレストランなどという外国の映画にしかないと思い込んでいた場所に、ピアノを聴きに行くなどという行為の心理的ハードルは、断崖絶壁の上の城壁よりも高い。

それでもどうにかチケットをとった後は、「ヌン。(出禁拘束)」に加えて、この場面もずうっと頭に浮かんでいた。
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本当に「がらでもないこと」だったので、行っても入るなり「ぬんぬん」と連行の果てにつまみだされるか、何らかの結界に弾き飛ばされるんじゃないかくらい緊張したけれど、むしろとても素敵な場所だった。

アメリカの芸能メディアブランド「billboard(ビルボード)」関連施設「Billboard Live横浜
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ビルボードライブ横浜カウンター - コピー.jpg
(上下画像出典:ビルボードライブ横浜HP

(ステージ外の壁には雑誌バックナンバーが飾られていた)
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(ブログ筆者撮影)


みなとみらい線馬車道駅に直結でアクセス良好、スタッフの方たちもとても物腰柔らかにサポートしてくださった。
(ピアノコンサートだったので、お洒落な大人の観客のほか、ピアノを勉強しているのだろうなという若い方まで、年齢も服装もいろいろだった)

ライブによって異なるようだが、別のライブにはこういう説明があった。

❝【当日の服装に関して】

・本公演は、ドレスコード(服装指定)を設けさせていただきます。
Tシャツ、ショートパンツ、かかとの無い靴(ビーチサンダル、クロックス等)、CAP等、カジュアル過ぎる服装はご遠慮いただき、ジャケット・シャツ、襟付きの 服をベースとした服装でお越しください。 ※ヒールのある靴を履いてのご来場は問題ございません。


食事メニューの表紙にも音楽愛が行き届いている。
マイケルの絵のメニューリサイズ2 -.jpg
(ブログ筆者撮影)

(マイケル・ジャクソンを追悼特集した過去のビルボード誌の表紙らしい、すごく欲しい、ポスターとかグッズにしていただけないだろうか…)



1ステージ80分くらいの二回構成で、一般的なコンサートより短めかもしれないけれど、とにかく距離感がもの凄い。
(上の画像のピアノの位置にアーティストの方たちが出てくるので、感動を通り越して目を疑った)

私が行ったのは、超絶技巧のピアニスト、マキシムのコンサート。




過去の海外でのコンサート演奏動画
MAKSIM − Pirates of the Caribbean − Live at Mercedes-Benz Arena, Shanghai

MAKSIM − Mission Impossible − Live in Torino


こんなに美しい音楽の動画(しかも絶世の美男ピアニスト)を「殺人的歌声」と恐れられるジャイアンと同じページに引用するのは気が引けるが、「これだけ躊躇していた人間に、断崖絶壁の上の城壁級の心理的ハードルを超えて『がらにもない』一歩を踏み出させるだけの力を持った音楽はこちらです」、ということで。あとマイケルの格好良い絵も引用したので、それが埋め合わせということで許していただきたい。誰になんの言い訳をしているのかわからないけれど。

各国の公演動画にあるとおり、コンサートホールでの演奏活動が主な方なので、この距離で聴ける日が来るとは全く予想していなかった。

とにかく一生忘れられないだろうというくらい衝撃的な体験だった。

(あまりにもすごい音楽を生であの距離で聴くと、全身全神経が強制的にそれに殺到して、比喩ではなく本当に「目がくらむ」「心臓が波打つ」「息もできない」状態になる)

東京や大阪も同じように洗練された空間、近い距離で音楽を堪能できるらしい。

ビルボードライブ、音楽好きの方なら絶対おすすめの場所だ。

【当ブログのマキシムのライブ感想とおすすめ演奏動画集の記事】

本当に凄い演奏、そしてミュージックビデオとしても素晴らしいから、私の感想文はともかく動画だけでもご覧いただきたい


【参照】
 会場、ライブスケジュール、座席配置、食事メニューなどの情報。スタイリッシュな画像を見れば、なぜ私が足を踏み入れて大丈夫なのか不安がったかわかっていただけると思う。でも本当に大丈夫だったし、またぜひ行きたい。

【画像引用漫画】
現在「ちいかわ」で絶大な人気のナガノさんの食べ歩き漫画。
引用箇所は「カウンター天ぷら」を食べに行く前に必死でマナーの情報収集をしている場面。
こういう現実の場所や食べ物のレポ(高級天ぷらからカップうどんまで)にも、ユーモラスで鋭い状況と心理の描写が光る。「ちいかわ」好きの人にもおすすめ。
2巻には「ビルボードライブ東京」がある六本木ミッドタウンにお弁当を持ってピクニックに行く回もある)
引用箇所は「道に花を植えてきれいな町にする」というジャイアンの夢に対してのび太が放った失言。
 コールドプレイ「チャーリーブラウン」コマ - コピー.jpg
Coldplay - Charlie Brown (Official Video) ・『完全版 ピーナッツ全集 6』

  セントラルパーク・コンサート - サイモン&ガーファンクル

再結成ニュースサムネSkynews - コピー.jpg

モリコーネ 60 - エンニオ・モリコーネ


加古隆さん街角ピアノ - コピー.jpg
(画像出典:NHK HP

【当ブログ「クロアチア」のニュースご紹介記事】

クレペタンを待っているマレーナとステパンさん - コピー.jpg
Image Credit:Youtube
クロアチアの飛べなくなったコウノトリ、マレーナと、彼女を守るステパンさん、マレーナの夫になったクレペタンの物語

ラベル:音楽
posted by pawlu at 14:49| おすすめ動画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月05日

クロアチア出身のピアニスト マキシム・ムルヴィツァ(MAKSIM)圧巻のbillboardライブコンサート

マキシム・ムルヴィツァ(MAKSIM)
Youtube冒頭画像 - - コピー.jpg

超絶技巧でクラシックからロックまで多彩な音楽を奏でる美貌のピアニスト、マキシム(MAKSIM)がライブレストラン「ビルボードライブ」に登場した。

(クイーンの「The Show Must Go On」のマキシム・ヴァージョン)



(大阪、横浜でのライブは終了、東京公演(六本木ミッドタウン)が11月7日2ステージ開催される)

(日本公演のトレイラー、曲はコールドプレイの「Clocks」)
MAKSIM is coming back to Japan!
世界的に活躍するクロアチア出身のピアニスト、マキシム・ムルヴィツァ(MAKSIM)がビルボードライブツアーを開催。クラシック音楽とポップ、ロックを融合させた独自のスタイルで知られ、情熱的かつダイナミックなパフォーマンスで世界中の観客を魅了する。今回のツアーは、日本国内での貴重な機会となるビルボードライブでの公演。伝統的なクラシック音楽を革新的に再解釈し、現代のリズムやテクノビートを組み合わせてアレンジするマキシムのショーはピアノの新たな可能性を引き出し、物語を紡ぐような感動を与える。唯一無二の卓越した技術と情熱的なパフォーマンスを体感して。

ビルボード東京HP内公演情報 MAKSIM “SEGMENTI” Billboard Live Tour 2024

私が観たライブでは、一曲演奏された後、観客の中から「(指の動きが速すぎて)残像しか見えない……」と呆然とした囁きが聞こえたが、まさに凄まじい音の乱舞。

最も速い旋律のときは、指の流れどころか手の輪郭すら目が追いきれなかった。
MAKSIM − In The Hall Of The Mountain King − Live
(劇音楽「ペール・ギュント」「山の魔王の宮殿にて」(1875)/E.グリーグ)


(映画「ミッション・インポッシブル」のマキシム・ヴァージョン 0:36〜頃からの高速のタッチが圧巻)
MAKSIM − Mission Impossible − Live in Torino

(驚異的なスピードの「Bumblebee」原曲はリムスキー=コルサコフ「熊蜂の飛行」)
Bumblebee

ライトを浴びて多彩な音とともに大きな手の残像が白く光るさまは、炎の閃きが明滅するような……この言葉でも十分ではない、とにかく見たことがない。

体幹の為せる業なのか、鋭い音とともに上半身が激しく動いても「ブレ」は一切無いのが印象的だった。

ビルボードは驚くほどステージと客席が近く、どこからでも演者がよく見える。
暗がりを照らすステージの照明に、この音を生み出すために鍛え抜かれた腕や肩の筋肉の陰影が浮かび上がって、まるでアスリートのようだった。


かつて戦禍のクロアチアで、音楽学校の地下室で演奏技術を磨いた経歴から「戦場のピアニスト」とも呼ばれたマキシム。

その集中力と技術が生み出す音は、爆発的エネルギーと透き通った流麗さを併せ持つ。

音楽は空間と人体を震わせる振動なのだとこんなに実感したことはなかった。

美しい音を浴びた心臓がビリビリと波立ち、鼓動が送り出す血が電流のような痺れを帯びたまま指先までかけめぐる、耳から入る美しい音と、皮膚にぶつかる空気の揺れで、思考が(それを形作る前の脳内の電気信号の状態で)奔流に呑まれていく。音に制されて、視覚の感触がうすらいでいく。
(吸い込む空気まで振動しているようだった。たぶん錯覚ではない。手を置いたテーブルからも、超音波の湧く液体のような小刻みな揺れが伝わってきた。もしも耳をふさいだとしても、その場のうねりを感じることができただろう)

速く大きい音ならそうなるというわけではなく、力強くも巧みな音階の高低やリズムの構成、強弱緩急が、空気を複雑な波状に揺るがし、体内にはっきりと響き渡る振動を生み出すのだろう。

(ゆるやかな演奏も情感に溢れている)
MAKSIM − All of Me [OFFICIAL VIDEO]

そしてこの音の複雑な震えが、「美しいと心打たれた時に早まる鼓動」や、「曲の感情に自分の思いを重ね合わせたときの心の動き」を増幅させ、共振に揺さぶられる。

曲が終わるたびに心臓の動悸を鎮め、忘れていた息を、次の演奏が始まる前に深呼吸で急いで確保する必要があった。
(その時は理由がわからなかったし気恥ずかしかったのだけれど、聴いているといつのまにか体が斜めにかしいだりのけぞったりしていて、こっそり直さなければいけなかった。けれど、そのうちその姿勢を正す意識もどこかにいってしまった。今思い返すと、あれが文字通りの「圧倒」だった。美しい音の響きの風のような圧を、全身に浴びたからだったのだ)

「音楽を聴く」というそれまでの意識を塗り替えたライブコンサートだった。

私が行ったときには、クイーンの「Show Must Go On」「ボヘミアンラプソディ」、コールドプレイの「Clocks」を聴けたので、音の広がりに魅了されながら、彼らのファンとしても感動した。

(「ボヘミアンラプソディ」マキシム・ヴァージョン 2023年公開イタリアでの演奏動画)
MAKSIM − Bohemian Rhapsody − Live


(コールドプレイの「Clocks」マキシム・ヴァージョン 2022年公開動画)
MAKSIM − Clocks − Coldplay 

(浮遊感のあるメロディの「Clocks」も、生演奏は、柔らかく端正な音運びの中にすさまじい迫力があった。今思い出しても目がくらむ感じがする)

そして演奏の節目には、お辞儀のために、ライトを浴びた2m近い長身の大変な美男が、暗がりを突き抜けるようにすうっと立ち上がるので、それまで聴いていた音と相まって、とにかく「凄い」。
(英語で曲の説明をしてくださるときの声は、長身のためか思いのほか響きが低く、華麗な演奏とは対照的な、静かな話し方をする方だった)

私が行った回の結びの曲は、あの方の演奏の中でも特に好きな「パイレーツオブカリビアン」で本当に美しかった。

(「パイレーツオブカリビアン」マキシム・ヴァージョン 2019年5月公開の上海での演奏動画)
MAKSIM − Pirates of the Caribbean − Live at Mercedes-Benz Arena, Shanghai

(「残像」級の高速で力強いタッチののちの、光とたわむれる清流のように滑らかな旋律に聴き惚れる〈動画1:30ごろ〉)

「ピアノのコンサート」、「飲食をしながら大人が楽しむスタイリッシュなライブレストラン」という二重に洗練された世界に、結界に足を踏み入れるほどの覚悟が必要だったけれど、期待以上の新しい体験で、行って良かった。もしまた来日してくださったら、必ず行きたい。
(今回の「ビルボードライブ」は演奏開始1時間前から開場で、その時間から飲食し、演奏を楽しむという構成。店員さんは、初心者の私にもシステムやメニューをとても丁寧に説明してくださり、安心して音楽に没入できた)

ビルボード東京HP内公演情報 MAKSIM “SEGMENTI” Billboard Live Tour 2024



マキシムの楽曲や動画の一部リンク。

MAKSIM − Game of Thrones [OFFICIAL VIDEO]

MAKSIM − Exodus − Live


Maksim Mrvica - The Godfather Theme (HD)

(英語のクラシック音楽ニュース、「世界最速のピアニストの一人」として紹介、クロアチア動乱期の練習についてもインタビューしている)
Maksim Mrvica: one of the fastest pianists in the world






【参照】

2メートル近い長身と端正な顔立ちで、日本をはじめ、アジア各国やヨーロッパなどでも熱狂的な人気を誇るマキシムは、1975年5月3日、クロアチアのアドリア海沿岸にあるシベニクという美しい街の生まれ。6歳で初めてピアノに触れ、9歳で音楽学校に入学。マリア・セスコのもとでピアノのレッスンを受け始め、12歳でオーケストラをバックに演奏。1991年、ユーゴスラビア紛争が勃発。彼の住む街も戦渦に巻き込まれましたが、そうした過酷な環境のなかで、彼は明日への希望をピアノに託し、音楽学校の地下室で練習を続け、1993年にクロアチアの首都ザグレブで開催された初めての本格的なコンクールでみごと優勝!! 一番戦火の激しかった地域からの出場者が優勝したことに会場の誰もが驚き、“戦場のピアニスト”と呼ばれるようになりました。

このコンクールでの優勝を契機に、マキシムはザグレブの音楽学院に進学。アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリの弟子でもあったウラジミール・クルパン教授に5年間師事。さらに、その後の1年間をハンガリーの首都ブタペストにあるリスト音楽院で学び、その在学中にニコライ・ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールで優勝。2000年にはパリに移住し、イゴール・ラツィコのもとでさらなるレッスンを重ね、2001年にはポントワーズ・ピアノ・コンクールにおいてもみごと優勝を果たしています。

こうした数々のコンテストでの優勝により、実力が認められたマキシムは、2003年にEMIクラシックスと契約。同年にリリースされたアルバム『ザ・ピアノ・プレイヤー』で衝撃的な世界デビューを飾り、その後もコンスタントにアルバムを発表。日本を含めたアジア圏内でも爆発的人気を集め、彼のアルバムは常にシンガポール、マレーシア、インドネシア、中国などではゴールド・ディスクに輝き、台湾と母国クロアチアではプラチナ・ディスクを獲得。香港ではダブル・プラチナに輝き、HMVインターナショナル・ポップ・チャートで12週間連続NO.1に輝くという大記録を打ち立てています。これまでのアルバムの総売り上げ枚数は、日本では40万枚以上、全世界では400万枚以上をそれぞれ記録。YouTubeにアップされた彼の映像は、全世界で1,100万回以上も再生され、世界中で一大旋風を巻き起こしています。




マキシム・インスタグラムアカウント




マキシムがアレンジしたクイーンとコールドプレイの曲
The Show Must Go On (Remastered 2011)


Clocks (コールドプレイ)


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(このライブに行く前の緊張とビルボードライブ横浜の雰囲気をご紹介)

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・映画「ボヘミアンラプソディ」の重要シーンとイギリスのスタジオ「エア・スタジオズ・リンドハーストホール(AIR Studios Lyndhurst Hall)」

(引用枠付き)練習シーン - コピー.jpg


フレディ・マーキュリーの母親、ジャーさんの語る思い出

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フレディ・マーキュリーの素顔(クイーン)

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チャーリー・ブラウンとコールドプレイが歌う2つの名曲(「Charlie Brown」「Something Just Like This」)

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Coldplay - Charlie Brown (Official Video) ・『完全版 ピーナッツ全集 6』


  セントラルパーク・コンサート - サイモン&ガーファンクル

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モリコーネ 60 - エンニオ・モリコーネ


加古隆さん街角ピアノ - コピー.jpg
(画像出典:NHK HP


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クレペタンを待っているマレーナとステパンさん - コピー.jpg
Image Credit:Youtube
クロアチアの飛べなくなったコウノトリ、マレーナと、彼女を守るステパンさん、マレーナの夫になったクレペタンの物語

ラベル:音楽
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