2014年05月18日

フィールドオブドリームス(1989年アメリカ映画)

取り急ぎご連絡まで。
NHKBSがご覧になれる方限定ですが、明日5月19日(月)午後9:00〜10:47  BSプレミアムで、ケビン・コスナー主演の映画「フィールドオブドリームス」が放送されます。
番組紹介ページ
http://www.nhk.or.jp/bs/t_cinema/calendar.html#d20140519_1
MOVIE CLIPS動画


 ある日の黄昏時、自分のトウモロコシ畑で謎の声を聞いた農夫レイ(ケビン・コスナー)。
「それを作れば、彼はやってくる」
 声の正体は?
 それとは?
 彼とは?
 戸惑っていたレイだが、やがて心に浮かんできたものを現実にしようと動き出す。
 それは、トウモロコシ畑の中の野球場。
 そこに立つ往年の名選手、シューレス・ジョー。
 八百長騒動に巻き込まれて野球ができなくなった悲運の名選手。
 もうこの世にいない。

 この途方もない夢をかなえるために大事なトウモロコシ畑の一部を潰す決断をするレイ。
 「あなたがそうしたいと思うならそうするべきよ」
 妻アニーのその言葉に背中を押されて。
 みんなに頭がどうかしたのではと言われながら野球場を作るレイ。
 そして、「彼」がやってくる日を心待ちにするが……。

 美しく果てしなく広がり風に揺れるトウモロコシ畑の緑、アメリカと共にありつづけた野球と人々の魂の底からの結びつき。夫婦、親子の情愛と絆。

 当ブログで「1980年後半から1990年代のアメリカ映像芸術がぬくもりとせつなさがあり最高」としょっちゅう書かせていただいておりますが、これもそれです。
 個人的な思い出としては、私が映像を観て泣いた二番目の作品で、「趣味、映画鑑賞」と言い出した最初の作品でもあります。人生最良の映画ベスト3に入るな……。
 登場人物がみんなとても魅力的で、演技も素晴らしいですが、中でも必見は「ムーンライト・グラハム(一瞬しか出場できずに現役を去った選手)」のその後を演じた往年の名優バート・ランカスターです。(代表作「大列車作戦」「山猫」など)



 かつての夢を心に秘めながら、積み重ねてきた日々を愛する穏やかな銀髪紳士の微笑。
 人の表情というものにあんなに心を動かされたのはあれがはじめてでした。
 音楽も美しいですし、名場面だらけというか名場面しかないような素晴らしい作品です。
 是非ご覧になってみてください。
 いずれこちらのブログでこの作品についてもう少し詳しく書かせていただきたいと思います。
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 21:44| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月11日

「ギャレス・マローンの職場で歌おう(原題:The Choir Sing While You Work) 」(BBCドキュメンタリー番組)

 取り急ぎご連絡まで。

 NHKのBS1がご覧になれる方限定ですが、イギリスのカリスマ合唱団指揮者ギャレス・マローンさんの新シリーズ「ギャレス・マローンの職場で歌おう(原題:The Choir Sing While You Work )」が明日月曜深夜(2014年5月12日0:00)から全6回にわたり放映されます。

 NHKの番組紹介ページURL
http://www.nhk.or.jp/wdoc-blog/100/187496.html
第一回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140512.html
第二回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140513.html
第三回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140514.html
第四回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140515.html
第五回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140519.html
第六回
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/140520.html


 BBC2の予告編動画はコチラ


 このいかにも頭も品も人柄も良さそうなハンサム眼鏡男子(日本人の目から見ても非常に童顔ですが既に38歳、欧米人の目から見たら10代に見えるらしい。高校生が「年下みたい」と言っていた場面も〈笑〉)がギャレス・マローン(Gareth Malone)氏。

 見た目によらず果敢なキャラクターで、「合唱は人々の心をつなぐ」という信念のもと、それまで音楽と縁のなかったコミュニティに飛び込んで合唱団を結成するというプロジェクトを続けています。
 ギャレス・マローンさんの公式HPのURL
http://www.garethmalone.com/


 映画「天使にラブソングを」(ウーピー・ゴールドバーグ主演、ある事件の目撃者として修道院に保護されたクラブ歌手デロリスが合唱団を立て直す。)や、「アンコール」(テレンス・スタンプ主演、見た目通り気難しい性格の70男アーサーが病に侵された最愛の妻を送り迎えしていたことがきっかけで、妻の所属する合唱団に加わる。)が好きな人ならきっとお気に召すであろう名シリーズです。(というか「アンコール」のほうはギャレスさんのシリーズを受けて作られたのではとすら思いますが。〈当ブログ「アンコール」ご紹介記事はコチラ〉ギャレスさんの動画も併せてご紹介しております。)

楽譜 天使にラブソングを   1


アンコール!!


 今回は病院や水道局、郵便局などで合唱団を結成し、歌声を競うという構成とのことで、イギリスで働く人々の現場も垣間見られるのではないかと期待しております。

 このシリーズ、既に去年の冬に第二シリーズが放映されており、また、ギャレスさんがあらたに結成した合唱団がイギリスをまさにこれからツアーを開始するとのことです。(メンバーはこの職場合唱団なのでしょうか?)



 BBC第二シリーズ情報URL(1部動画が観られます)
http://www.bbc.co.uk/programmes/b03hhsyt

ツアー情報URL。
http://www.garethmalone.com/tour
(ちなみにいい加減風貌に貫録をつけたいからか髭ギャレスさんになっておいででした〈笑〉) 

 まだまだギャレスさんの活躍が観られそうですね。

 当ブログ、ギャレス・マローンさん関連の記事は以下の通りです。

「地球ドラマチック『町中みんなで合唱団!〜イギリス 涙と笑いの猛特訓〜』」 (BBC原題「The choir :Unsung town」)
合唱団(クワイア)を作ろう(ギャレスさん再び)
ギャレス マローンさん(イギリス合唱団指揮者)について。補足。
ギャレス マローンさんの番組から見えたこと。
ギャレス マローンさん番組再放送!
ギャレス・マローンさんのその他のプロジェクトについて
ギャレス マローンさん再々登場!「ギャレス先生 ユース・オペラに挑戦!」
ギャレス・マローン先生週間!!
地球ドラマチック「町中みんなで合唱団!」大聖堂への道
ギャレス・マローンと“軍人の妻”合唱団!

 読んでくださってありがとうございました。


posted by Palum at 20:21| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月08日

「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編2 濤川惣助作品「藤図花瓶」)

 東京日本橋の三井記念美術館で、「超絶技巧!明治工芸の粋」が開催されています。
 公式HPのURL
 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/
 明治時代、主に海外に向けて作られた工芸品の数々を集めた「村田コレクション」が、見られる展覧会です。

 今回も観てきた中で個人的に特に素敵だと思った作品群についてご紹介させていただきます。

 ●「藤図花瓶」
以下チラシURLページ内4ページ目、「七宝」部上から二番目の作品
 http://www.mitsui-museum.jp/pdf/pressrelease140419.pdf
 高さ約30p、縦長グレー地の花瓶に、青と白の藤の花房が垂れ下がる図案。「無線七宝」の名手、濤川惣助の作品。

 濤川惣助ウィキペディア記事URL
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%A4%E5%B7%9D%E6%83%A3%E5%8A%A9

 青の花房は有線七宝で細い輪郭が描かれた中に水色から群青までのグラデーション、いくつかの花は花弁の内側が黄色く、涼しい色合いの中にうっすらと明るさがさす。

 背後の白い花房は無線七宝でグレー地に溶け込む雪のような淡さ。青地の花房の後ろで幻想的な奥行きを醸している。

 ……とか書かせていただいたところで、実は私、「有線七宝」「無線七宝」と聞いたときに、昔のラジオのメーカーか何かかとすら思っておりました。(だってそもそも「『シッポウ』って何」状態だったから)

 何工程にも分かれる、根気のいる緻密な作業を申し訳ないほどにかいつまんでしまうと、地に金属の枠で図案の線を作り、その枠部にガラス質の釉薬を流し込んでから焼くというのが「七宝」の原理だそうです。

 で、この金属の枠がある状態で仕上げるのが「有線七宝」。(前回記事でもご紹介した清水三年坂の七宝解説をご参照ください。)
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/jyosetu2.html#sipo

 そして、最後の焼成前、完全に釉薬が枠と地に定着する前の、釉薬がフルフルした状態の時に、地にめぐらした枠を引っこ抜いてしまい(こう書くとなんかお菓子作りみたいですが、おそらくはピンセットで一本一本とりのぞくものすごい集中力を要する作業)、それから焼成するのが「無線七宝」
 
 結果、地に釉薬がぼやんと少しだけにじみ、パステルと水彩のあわいのような優しい味わいを醸す作品に仕上がります。

 濤川惣助はこの「無線七宝」の開発者として、「有線七宝」の並河靖之と人気を二分し、「東京の濤川、京都の並河」と並び称されたそうです。
(ちなみに別に親戚でもなんでもないらしい。)

 彼の代表作は東京赤坂にある迎賓館「花鳥の間」の壁を飾る七宝額『七宝花鳥図三十額』
 「花鳥の間」画像URL(壁の中ほどにある丸い額が惣助の作品)
http://www8.cao.go.jp/geihinkan/img/akasaka/big/bgei09-11.html
 額の一つ「矮鶏(チャボ)」
http://www8.cao.go.jp/geihinkan/img/akasaka/big/bgei09-12.html
 
 ウィキペディア記事によると靖之もこの額を手掛ける候補にあがっていたそうですが、無線七宝の味が部屋全体の雰囲気に調和するとの理由で惣助が選ばれたそうです。 
  
 確かに、靖之の作品がその緻密さと端正さで空間を凝縮したような迫力があるのに対し、惣助の作品は無線七宝のぼやけやにじみだけでなく、地の色の優しさも含めてふんわりと周囲に広がる感じで、「その他の意匠と調和しながら部屋全体を彩る」という点では向いている気がします。

 脱線が長くなってしまいましたが、「藤図花瓶」では惣助作品の典型ともいえる優しい色合いと、有線無線二つの七宝技法の味わいの違いを見ることができます。

 しかし「青の花房や葉や蔓は有線」といっても、近くで見ないとわからないほど糸のように細い線(線といっても描いているわけじゃなくその一筋一筋が金属の枠ですからね)で、おっとりと清楚な風情の中に、どうやって作ったんだ?という驚くべき技巧が秘められたミステリアスな名品です。

 当ブログ明治工芸関連記事は以下の通りです。よろしければ併せてお読みください。

極上美の饗宴 並河靖之の七宝
極上 美の饗宴 「極上美の饗宴シリーズ“世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う」
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)


 また回を改めて展覧会の作品や明治工芸についてご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。

※今回の七宝ご説明については、展覧会図録「超絶技巧!明治工芸の粋」と、NHKの極上美の饗宴「色彩めぐる小宇宙 七宝家・並河靖之」を参照させていただきました。

(靖之の最高傑作「四季花鳥図花瓶」の一部を現在の職人さんが復元を試みるところとかもっそい面白かったです。ほかの回もとっても良かったんで再放送してほしい!!)。
posted by Palum at 01:43| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月07日

史実「戦火の馬」(ドキュメンタリー番組)

ロンドンのハイドパークにある、戦没動物たちの慰霊碑「Animals in War Memorial」馬、犬、象、ラクダ、ロバ、鳩など、人と共に戦場に赴き、犠牲となった動物たちを弔っている。
Animals_in_War_Memorial,_Hyde_Park,_London.jpg

Animals_in_War_north.jpg
http://en.wikipedia.org/wiki/Animals_in_War_Memorial (慰霊碑のウィキペディアURL)
 
 この夏、イギリスの舞台「戦火の馬(ウォーホース War horse)」が来日します。
来日舞台公式HPのURL
 http://warhorse.jp/



 第一次大戦時、軍馬としてフランスへ渡ったジョーイと、彼を連れ帰るべく戦場に向かった少年アルバート、そして、戦場でジョーイに出会ったドイツ兵フリードリヒら、戦争に翻弄された人と馬の悲劇と情愛を描いた感動作です。

 ものすごい名作なので、迷っている方には行く価値があると力強くお勧め致しますが、明日2014年5月8日木曜深夜[金曜午前 0時00分〜0時50分]BS1でこの第一次大戦時の軍馬の史実を追ったイギリスのドキュメンタリー「史実 戦火の馬」が再放送されるとのことなので、併せて番組内容を簡単にご紹介させていただきます。
 
番組紹介ページURL
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/120823.html

 イギリスでは第一次世界大戦時、100万頭もの馬を戦地に送りました。

 元は騎兵隊用の馬でしたが、機関銃、塹壕や鉄条網など、この戦争から始まった近代戦の前に苦戦を強いられます。

 このとき戦場に連れて行かれた馬の多くは、ジョーイのように、元は農場で働くなどしており、軍馬として訓練された馬ではなかったため砲撃の音に足がすくんでしまったことも、被害を大きくしました。

 それ以後、馬は騎兵隊用だけでなく、砲台や物資、負傷兵を運ぶなどの役割を担うことになりましたが、敵の攻撃だけでなく、足を取られるぬかるみや、寒さ、蹄をつらぬくために敷かれた罠、疲労や病気によって多くの馬が戦地で動けなくなり、兵士らの手で射殺されました。

 この行為は馬だけでなく、それまで世話をし、生死を共にしてきた兵士たちにとっても非常に残酷な出来事でした。

(番組では過酷な戦地での、馬と人との心の通い合いを象徴する絵や写真も出てきます。)

 BBCが動物愛護団体「ブルークロス(Blue cross)」所蔵の軍馬の絵や写真について紹介した記事URL 
(※愛馬を失って涙ながらに別れを告げる若い兵士の有名な絵画「Good bye old man」も見ることができます。)
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-oxfordshire-16550273
 
 多くの犠牲を払って、文字通り泥沼の戦争が終わりを迎えたとき、しかし、地獄を生き延びた馬たちに、なおも過酷な運命が待ちかまえていました。

 弱った馬の多くは食料として殺処分されたのです。

 それでも何割かの馬は幸運にもフランスの農家に買い取られ、荒廃した地を新たに耕すという生活を送ることができましたが、しかし、二度と故郷に帰ることはかないませんでした。

 このドキュメンタリーの中では、ウォリアーという、天性の勇猛果敢さを持ち、砲撃音を恐れず、主人である将軍ジャック・シーリーを慕い共に戦い、戦地の象徴ともなった伝説的名馬についても紹介しています。
「ミラー」誌のウォリアー紹介記事URL
http://www.mirror.co.uk/news/uk-news/the-real-war-horse-brough-scott-158362
 ウォリアーは無事シーリー将軍に連れ帰られ、故郷の美しいワイト島で緑の野を駆ける余生を送ることができましたが、勇敢に忠実に働こうとも、このような結末を迎えることができた馬は本当に少なかったのです。

 戦争の悲劇と馬の献身、人との絆を描いていて、これ自体非常に考えさせられる内容ですし、その内容や場面の多くが、舞台「ウォーホース」と重なっているので、是非ご覧になってみてください。

当ブログ「ウォーホース」関連の記事は以下の通りです。
ロンドンの舞台「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」@ あらすじと見どころご紹介
ロンドンの舞台「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」A ある名場面と、その他のおすすめ作品。
「War horse(ウォーホース)戦火の馬」 日本公演決定
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想1見どころとお客さんの反応
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想2ロンドン初演版との違い
「War horse(ウォーホース)戦火の馬)」日本公演 感想3結末部(ネタバレ注意)
「史実 戦火の馬」(ドキュメンタリー番組)

読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 20:04| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月06日

「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)

 東京日本橋の三井記念美術館で、「超絶技巧!明治工芸の粋」が開催されています。
 明治時代、主に海外に向けて作られた工芸品の数々を集めた「村田コレクション」が、見られる展覧会です。

 ・公式HPのURL
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

 ・プレスリリースPDF(チラシ)URL
http://www.mitsui-museum.jp/pdf/pressrelease140419.pdf
 ・当ブログ過去記事はコチラ


 今回から数回に分けて、観てきた中で個人的に特に素敵だと思った作品群についてご紹介させていただきます。(一応Web上で画像を見られるものについてはURLを貼らせていただきました。)

 1,桜蝶図平皿(おうちょうずひらざら)
 緑地に桜と蝶の舞う皿。(展覧会チラシ左)

 日本の七宝の美を世界に轟かせた達人、並河靖之の作品。

 彼の作品の中で最も有名なのは黒地に写実的な花鳥の図の壺ですが、この作品のような独特の緑と大胆な装飾的構図もまた彼の持ち味でした。

 生で見ると抹茶ソーダというかなんというか、ちいさな粒子の一杯浮かんだ奥深くも華やかな緑の中に、赤茶、ターコイズ、黄色、黒などこまかな配色の羽を広げた蝶々たち、そして、つぼみの先や花びらの根もとのほんのりそまった桜の花びらと、緑から黄、赤へと色を変えるやわらかな葉があでやかに配されています。
 正直もう一さじ加減間違えば変だと思ってしまうような色合わせなんですが、感性のミリ単位の着地点をあやまたず……とでもいうか、ぴたりと色も構図もおさめてあります。現代人の頭一つ上を行く大胆さに脳が刺激されて面白い。

 ちなみに、画像では見られないんですが、「すごい色彩感覚と絶妙な装飾的構図」という点では「蝶に花の丸唐草文花瓶」という作品も素敵です。

 ほっそりしたシルエットの瓶に、黒枠でふちどられて縦長に均等に配されたモスグリーン、青、モカブラウン、クリーム(いやホワイトチョコレート色かな)の地。

 その上に紋章のような丸枠を土台に花々がぽんぽんとはみだして咲き、唐草が空間をくるくる走っています。

 隣り合った色をつなぐように散らされた蝶や花のオレンジや黄色が眼に心地よいアクセントとなっている。

 令嬢が大振袖を翻したような、はっとするほど華のある作品です。女性なら「かわいい!!」と叫ぶでしょう。
 
 個人的には今回の展覧会でどちらかというとこういう並河靖之の装飾的な作品が見られたのが面白かったです。「黒地リアル花鳥」のイメージが強かったので。

 残念ながらこの「蝶に花の丸唐草文花瓶」はチラシにも三年坂美術館にも画像が無かったので(なんでだろう……コレ絶対今回の展覧会で、蝶のお皿と並んで女性人気集めますよ。飾り映えするから三年坂でもポストカードになさればいいのに)、取材許可を得て撮影をしたという方の、画像入り展覧会記事URLを貼らせていただきます。
http://tourdefrance.blog62.fc2.com/blog-entry-2340.html

 このほか、装飾的名作というと、おそらく村田さんご自慢の品であろう(よくテレビで映る〉「蝶図瓢形花瓶」も見られます。ぽてっとした瓢箪型の花瓶に大きな蝶が舞っている作品。可愛らしい形と、地の漆黒、蝶の羽の山吹色や群青などの色合いのシックさというギャップが魅力。
(並河作品に蝶が多いのは家紋が蝶だったからだとか。)

 三年坂美術館のポストカード画像URL
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/cart/shop.cgi?order=&class=all&keyword=%95%C0%89%CD&FF=10&price_sort=&mode=p_wide&id=6&superkey=1&popup=yes

 ちなみに展覧会内、並河「リアル花鳥」作品群のなかで、個人的に一番のおススメは「鳥に秋草図対花瓶」(画像が無いので拙文でご想像ください……)

 目録解説を見ると深い茶色だそうですが、非常に黒っぽく見える、口から底までぬめるようにしっとりとした地の細身の壺に、か細いながらも強弱のついた金線銀線でふちどられたススキ、おみなえし、牡丹、桔梗、萩などが伸び、そこに瑠璃色の羽に薄黄色いお腹のルリビタキという可愛らしい小鳥が飛んでいる、二組一対の作品。

 圧巻はススキ、暗い地に金色に細く長くついと伸び、小鳥が身をよじってその茎に留まっているので、そのささやかな重みに揺れて糸のような穂先が光っている……ように見える。

 この、しんとした暗闇の中の余韻が絶品です。

 並河の黒の最高傑作、「四季花鳥図花瓶(皇室所蔵)」が持つ魅力に一脈通じると思いました。

 日本人はなぜか描かれていない「間」にコーフンする性癖があるので、(理由はわかりませんが、自分を含めて、絵でも文学でも上述の「余韻」とか「ほのめかし」に弱い人が多いと思う)この並河の暗い地の中の花鳥はいかにも日本的な美といえます。

 清水三年坂美術館のHP内に並河靖之も手掛けた「有線七宝」の工程解説と動画がありましたので、併せてご覧になってみてください。
http://www.sannenzaka-museum.co.jp/jyosetu2.html#sipo

当ブログの明治工芸に関する記事(今回の物を含む)は以下の通りです。よろしければ併せてご覧ください

極上美の饗宴 並河靖之の七宝
極上 美の饗宴 「極上美の饗宴シリーズ“世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う」
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)

 また何回かこちらの展覧会作品ご紹介や明治工芸にまつわる話題を書かせていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 11:21| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月03日

「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介

 東京日本橋の三井記念美術館で、「超絶技巧!明治工芸の粋」が開催されています。
 (公式ホームページURL……http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
 「村田コレクション」とは電子部品で有名な村田製作所の元役員村田理如(まさゆき)氏が収集した約一万点の明治工芸コレクションのことです。

 普段は村田氏が館長を勤める京都の清水三年坂美術館にあるそれらの作品の一部(約160点)が、今回東京で見られることとなりました。
(清水三年坂美術館公式ホームページURL……http://www.sannenzaka-museum.co.jp/

 明治時代、幕末まで培ってきた高い美意識と技術が、怒涛のごとく押し寄せてきた西洋化の波とぶつかり合い、工芸のあらゆるジャンルにおいて、前代未聞の精緻な作品群が生まれました。

 主に海外への贈答品として制作されたために、名作のほとんどが日本から流出していた状況だったのですが、今その偉大さが見直されています。
 
 この展覧会では、以下のような作家たちの作品を見ることができます。

並河靖之(明治七宝の巨人、漆黒の地に花鳥を描いた端正な作品で有名)

濤川惣助(金属線を枠として色彩を流し込む七宝制作の工程の途中で、金属の枠を取り去る「無線七宝」を手掛けた。靖之と対照的に、淡い色彩の地に、やわらかな輪郭の作品が有名)

正阿弥勝義(しょうあみかつよし)、海野勝a(うんのしょうみん)、加納夏雄(かのうなつお)(日本近代金工の三羽烏と呼ばれた名手)
(※加納夏雄と海野勝aについての清水三年坂美術館の紹介ページURL http://www.sannenzaka-museum.co.jp/kikaku_13_2_22.html

安藤禄山(あんどうろくざん)(象牙で実物と見紛う野菜や果物を作り上げた謎の牙彫(げちょう)師)

高村光雲(たかむらこううん)(「老猿」で有名な木彫家、息子は「レモン哀歌」で知られる詩人で彫刻家の高村光太郎)

・錦光山(きんこうざん)、藪名山(やぶめいざん)(京都、大阪で技を競い合った薩摩焼の陶家。象牙色の地に金と多彩な色彩で、ときに肉眼では判別困難なほどに繊細な図案の作品を作り上げた。)

 このほか、漆芸、刺繍画、自在(金属部品を細かく組み合わせて作られた、繊細に動かすことのできる細工置物、甲冑制作技術を生かして作られた)などの作品が展示され、明治の手仕事の偉大さを総括して目の当たりにすることができます。

 ……なんか今回人名と漢字ばっかりの文になってしまいましたが、ひらたく言うと明治工芸、すごすぎて息ができなかったり逆に笑えてきたりします。

 かつてあるイギリスの方とお話した時、明治工芸を評して「生で見たとき気絶しそうになった」と極めて真顔でおっしゃっていましたが、僭越ながらわかる気がします……。

(ちなみにその方を気絶させかけたのは皇室所蔵の並河靖之作「黒地四季花鳥図花瓶」、闇の奥に小さな花や木々がさらさらと揺れて浮かび上がるような衝撃の逸品です。〈この作品について少しご紹介させていただいた当ブログ過去記事はコチラ〉)

物を見て「綺麗、ステキ」を超えてそういう感覚になるというのはなかなか無いことなので、美術鑑賞とかそういう堅苦しいことではなく、五感の体験としてお勧めしたいです。

 ちなみに、この三井記念美術館そのものの内装がクラシカルで、エレベーターの金属板とかに至るまでぬくもりのある感じでとても素敵です。当然日本橋そのものが素敵な町ですし。

 そんなわけなのでこの連休中にお出かけになってみてはいかがでしょうか。

 当ブログのこの展覧会、および明治工芸に関する記事は以下の通りです。よろしければ併せてご覧ください
極上美の饗宴 並河靖之の七宝
極上 美の饗宴 「極上美の饗宴シリーズ“世界が驚嘆した日本”七宝 幻の赤を追う」
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」 展覧会概要ご紹介(※今回記事)
「超絶技巧!明治工芸の粋(すい)‐村田コレクション一挙公開‐」おススメ作品(七宝編1 並河靖之作品)
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 23:27| 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月02日

2014年05月02日 樋口一葉生誕142周年 一葉のこぼれ話と上村一夫

 ご無沙汰してしまいました。また毎日更新を目指して頑張りますのでよろしくお願いいたします。

 本日5月2日は明治の女流作家樋口一葉の誕生日だそうです。Googleロゴで知りました。
 
Googleロゴについて解説した「MDN design」の記事URL
http://www.mdn.co.jp/di/newstopics/35899/?rm=1

 今は5000円札ですっかりおなじみの彼女、もとは士族の生まれながら、兄と父を亡くし、家計を支えるために、文筆活動を始め、「たけくらべ」「にごりえ」など、女性の悲哀を描いた作品で名を成し、その才能を文豪森鷗外に激賞されましたが、結核のため24歳の若さで世を去りました。

今日は一葉にまつわるこぼれ話を少し書かせていただきます。

 @一葉と夏目漱石の兄

 一葉は夏目漱石の家と親同士が仕事上のつながりがあったために、漱石の一番上の兄大助氏との縁談があったそうですが、樋口家の経済状況に夏目家が難色を示して破談になったそうです。
(この話が年の近い漱石本人と一葉の縁談話があったという誤解を招いたそうですが、実際に話があったのは兄さんのほうだそうです。一葉は気が強そうではあるけれど、見た目線の細い感じの美人ですから漱石のタイプだったんじゃないかと勝手に思いますけれどね。)

 漱石の兄さんと一緒になったら、どうなっていたであろうかと、漱石との兼ね合いも含めて想像したくなりますが、この兄も後に若くして一葉と同じ病気で世を去っています。(このとき兄さんの死を知って訪ねてきた元芸者の女性がいました。漱石がそれについて描いた文をご紹介した過去記事はコチラです。)

A一葉と上村一夫

以前、当ブログで「昭和の絵師」と呼ばれた漫画家上村一夫(代表作『同棲時代』『関東平野』)についてご紹介しましたが(過去記事はコチラ)、この方一葉のファンだったようで、たびたび作品に彼女が登場しています。

 戦前の芸者の世界を描いた『凍鶴(いてつる)』の中では、主人公の鶴菊が、汽車の中で一葉の「十三夜(※)」を若い軍人に朗読してもらう場面があります(この青年が、実は枕芸者〈※芸ではなく身を売る芸者〉となった腹違いの妹を探して旅をしていた。佳作揃いのこのシリーズの中でも最も切ない作品でした)。

凍鶴
(※「十三夜」夫との不仲に悩んだ女性が実家に戻るも、親に諭され家に戻ることとなる。その帰路、彼女を乗せていた人力車の車夫が、かつて両想いだった初恋の男だったと気づき、互いの不幸な結婚を知るという物語。今回のGoogleロゴのモチーフとなっている)

 また『修羅雪姫』(夫を殺された妻が刑務所で生んだ娘、雪が殺し屋となって繰り広げる復讐劇。タランティーノ監督の映画『キル・ビル』の原作となった……といっても漫画は実写化不可能なほど色々な意味で過激なので、実際にモデルとなったのは梶芽衣子の映画のようですが)の続編『修羅雪姫 復活之章』では一葉本人が登場しています。(超美人の雪が「綺麗」と褒める、落ち着いた涼しげな顔立ちに描かれています。)


修羅雪姫 上巻


修羅雪姫 復活之章上
 さらに、上村氏晩年期の作品『一葉裏日誌』では、花街の片隅で生計のために駄菓子屋を開きながら執筆活動をしていたころの一葉が主人公となり、近辺の事件の真相を暴いていくという推理物形式の物語が展開しています。(事件にはそれぞれ一葉の有名作品を彷彿とさせる登場人物が登場しています)

一葉裏日誌

 しかし実は今回、この記事で一番お伝えしたかったのは、「この文庫版の『一葉裏日誌』を買って、そして同時収録されている『帯の男』というシリーズを読んでいただきたい」ということなのです……(汗)。

 『帯の男』は芸者さんの帯を結ぶ「帯師」の中でも「帯源」と呼ばれた達人源次郎(高倉健に顔から風情から非常に似ていて、帯を結ぶときの仕草にとても色気がある)と、東京神楽坂の花柳界の人々の人間模様を描いた作品です。

『帯の男』が試し読みできる上村一夫オフィシャルページURL
http://www.kamimurakazuo.com/works/story/obinootoko.html

 もし、それまでの上村一夫の男と女の愛欲と情念と陰鬱の世界を期待して読むと全然違います(それで言うと『一葉裏日誌』も違いますが)。物語に恋や性が一部絡んでその気配は側にありますが、人生の山も谷も超えてきて、それでもときにやはり惑い涙する、そういう大人達のしっとりしんみりとした奥行きが、絶妙な空気感を醸す作品です。

 この人のこういう作品以外にこの味わいは無い。それまでの世界観からどうやって展開したのかわかりませんが、雨上りに洗われた空のような鮮やかな変貌です。

 かつて親の本棚から勝手にとりだしてきて読んで、『凍鶴』やこの『帯の男』は、子供ながらにその洒脱なたたずまいに「これが大人というものか」と心動かされた記憶があり、それは今でも変わりません。(子供は漫画となれば麻薬探知犬並みの嗅覚でどっからでも嗅ぎつけて引っ張り出しますから、読まれたくなければ金庫に隠してシリンダー錠でもつけておくしかない。)

 いずれ好きな話については細かく書かせていただきたいと思いますが、今回はご紹介まで。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum at 22:24| 番外編 おすすめ映画・漫画・本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする