2014年02月28日

(ご紹介編)映画「セントオブウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」(アル・パチーノ主演)

 もうじきアカデミー賞授賞式。(現地時間2014年3月2日)

 今回はレオナルド・ディカプリオが悲願の主演男優賞を受賞するかどうかが話題になっていますね。

 かつて、名優アル・パチーノも同じように繰り返しアカデミー賞にノミネートされながら、受賞を逃し、最初のノミネートから実に20年後に悲願の受賞を果たしました。

 賞賛を浴び、報われるにふさわしいとても素晴らしい作品、素晴らしい演技で。

「セント・オブ・ウーマン 夢の香り(Scent of a woman)」


セント・オブ・ウーマン/夢の香り(Blu−ray Disc)

 名門高校の苦学生チャーリー(クリス・オドネル)がひょんなことから盲目の軍人フランク(アル・パチーノ)のニューヨークへの旅に付き添うことになり、彼の強烈なキャラクターに振り回されながらも、旅の中で次第に互いに心を通わせていく姿を描いたロードムービーです。

 様々な人が生きるニューヨークの魅力、真面目なあまり、損な役回りを背負わされてしまうチャーリーの、誠実で透明感あるたたずまい(本当にとてもきれいな若者です。びけえとかそういうのさておいて、いかにも聡明で性格が良い感じ。最近こういうキャラクターが出る作品があんまりなくて残念)。フランクの、言動に強烈なクセがありながら、気骨とぬくもりを秘めた人間性。人生のやるせなさと輝きの両方を描いたストーリー、胸騒がされる美しい音楽……。

「良質」というのはこういう作品のことを言うのでしょう。

このブログでちょいちょい「80年代後半〜90年代こそアメリカ映像作品の黄金期」と書かせていただいていますが、これこそがその好例です。せつないけれど温かくて人間に魅力がある。

(そのほかの例として「マイ・ルーム(そういえばこの作品で若き日のディカプリオが実に素晴らしい演技を披露しています)」「レオン」「白い犬とワルツを」をそれぞれご紹介させていただいているので、よろしければ併せてお読みください。)

上記の通りさまざまな良さを持つ作品ですが、とりあえず、アル・パチーノの眼球を動かさない迫真の演技と、彼が美しいガブリエル・アンウォーと踊るタンゴシーンだけでも一見の価値があります。
 もーこれがホントいい……。
 僕的映画鑑賞史上最も美しいシーンです。大人の魅力に満ち溢れ、映像からかぐわしさすら漂う。

 この週末に是非まずはレンタルででもご覧になってみてください。決して損はなさならないはずです。

  当ブログ内のこの作品に関する過去記事一覧はコチラです。

1,ご紹介編
2,名場面編1
3,台詞編1
※以下ネタバレ
4,名場面編2
5,台詞編2
6,名場面編3
7,台詞編3
名場面編4
台詞編4

 
 よろしければまた見にいらしてください。
 
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:01| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月27日

(ネタバレ・台詞編)『パーセプション』「神からの声」より

 先日AXNミステリーの推理ドラマ「パーセプション」についてご紹介しました。

 神経科学の権威ダニエル・ピアーズ教授と元教え子でFBI捜査官のケイトが、人間の脳の仕組みという見地から真相を探っていくという異色作です。
(番組の公式HPはコチラ。)
 (当ブログ過去の「パーセプション」ご紹介記事はコチラです。)

 ダニエル教授自身も統合失調症を患っており、現実と幻覚の区別がつかないという症状に悩まされたり、その他、自分の精神世界をうまくコントロールできないで苦しむ人が登場したりと、重いテーマを扱っている部分もありますが、その世界観は基本的に前向きで、人間の多様性について公平に描いており、登場人物たちの率直でときにユーモラスな台詞が魅力です。

 今日はその中でも個人的にラストシーンの味わいが好きな「神からの声」について、あらすじと一部台詞をご紹介させていただきます。

(以下、結末部まで相当ネタバレです。大丈夫な方だけお読みください)

 元麻薬中毒者だった青年ジャレットが何者かに殺害され、捜査にのりだすダニエルとケイト。

 殺害される数か月前、ジャレットは宗教団体「ヘイヴンハウス」で共同生活を送るようになり、自分の財産をそこに寄付していました。

 無神論者のダニエルは、この団体を詐欺師集団と決めつけていましたが、団体の中心人物カイルを気にかけるようになります。
 

 カイルはまだ少年で、神の声が聞こえるというカイルの話を聞きに多くの人が集まり、「ヘイブンハウス」は彼らの寄付金を元に募金や慈善事業を行っていました。

 ダニエルに出会ったカイルは、彼が神を信じていないことを見抜き、こんなやりとりを彼と交わします。

(以下、例によって誤りがあるかもしれませんがご了承ください〈また訳部は私的直訳です。字幕はもっとスマートな台詞になっています。〉)

(カイル、傍にあったラズベリーを手にとってダニエルに見せながら)
How could anybody work at something so perfect, and beautiful and delicious and think that it got that way by accident?
こんな完全な、美しい、おいしいものが偶然にできあがったと本当に思う?

(ダニエル)
There is a scientific answer to that Kyle.
カイル、それには科学的な答えがある。
Earlier versions of the raspberry weren’t so beautiful and deliciaous, so they couldn’t attract enough birds to spread their seeds around.
初期のラズベリーはそんなに美しくも美味しくも無かったから種を広げてもらえるほど鳥を惹き寄せられなかった。

(カイル)
I know how evolution was. I love Darwin. He was the first person in history to look behind the curtain and see how god actually makes it all work.
進化論は知っている。ダーウィンなら好きです。彼はカーテンの背後を覗き、神がすべてのことを実際にはどうなしとげるのかを見た歴史上最初の人物でした。

 この会話の後、カイル本人は賢く善良な少年だとダニエルも認めるようになりますが、一方でカイルの「頭の中に声が聞こえる」ときの状況を詳しく聞きだして、それが脳腫瘍による症状であると確信します。

 ダニエルはカイルに手術を受けなければ危険だと忠告しますが、カイルは「これが神の声を聞くために与えられた病気ならば治さない」と拒絶します。

 カイルの両親は彼に検査を受けさせるべきか迷っていましたが、ある日カイルが階段から落ち、頭に大けがをして病院に運ばれます。

 最初は症状が出て気絶したための事故だと思われましたが、ジャレット殺害事件の捜査を進めていたダニエルは、カイルが事件の真相に気づき、口封じのために襲われたのではと考えます。

ケイトは捜査に戻りますが、ダニエルは内部に犯人がいるならカイルの身が危険だと病院に残ることにします。

カイルは怪我の治療と共に、やはり発見された腫瘍を手術で除去されますが、合併症から、危険な状態に陥ります。

これより少し前から、ダニエルの幻覚として、神の声を聞いたとされる聖女ジャンヌ・ダルクが、ダニエルの前に姿を現していましたが、病院でダニエルの隣に座った彼女に、ダニエルは吐き捨てるように言います。
「神に伝言してくれよ。神はクソ野郎だってな」

 カイルみたいな善良な子が重病を負わされ、殺人犯は野放し、カイルの母親は泣いている。人間の所業は神にとって娯楽なのか、と。

 しかしこの後、犯人は逮捕され、カイルは奇跡的に命をとりとめます。

再びあらわれたジャンヌ・ダルクに
「伝言もたまには有効ね」
といたずらっぽく言われたダニエルは
「存在しない神に頼らずに人間は回復できる」
と答えます。
「存在しないならなぜ伝言を?」
「僕は変人でね」
そう言ったダニエルは、カイルの病室へ向かいます。

事件のあったヘイブンハウスは閉鎖し、代わりに学校を建てる、というカイルの一家。

ダニエルにまだ神の声は聞こえるかと尋ねられたカイルは確信に満ちた笑みを浮かべてこう答えます。
「以前のような声は聞こえないけれど、神の意思はわかる。望む者ならだれにでも」

 その言葉を聞いたダニエルは、自分の研究が受賞して獲得した賞金をカイルに全額寄付する小切手を渡し、「これで学校に本を買うといい」と言います。

 その金額に驚くカイル。以下二人のやりとりです。

(カイル)
Does this mean you believe in god now?
今は神を信じているっていうこと?

(ダニエル)
Absolutely not, but I believe in you.
ぜんぜん違う。でも僕は君を信じている。

(カイル)
I got something for you too.
ぼくからも先生にあげるものが。
(カイル、テーブルの上のフルーツからラズベリーを手に取ってダニエルに渡す。)

(カイルの母)
Kyle, what kind of present is that?
カイル、なんてプレゼントなの。

(カイル)
I think Dr. Piers will appreciate it.
ピアーズ先生(ダニエル)は喜んでくれると思う。

 ダニエルは何も言わずにラズベリーを手に病室を去り、外に出ると、ラズベリーをじっと見つめた後、少し笑ってそれを口に入れました。
(END)

 推理ドラマにしては珍しいほどに、登場人物が正直に思うところを語っていて、それでいて相手の思いを尊重してもいる。そして、ときにこの回のようにラストシーンがさわやかですらある作品です(これ以外だと最終回もそういう感じです)。

「パーセプション」よろしければご覧になってみてください。(2014年2月28日,3月3日にそれぞれ朝6時からのこりの回が放映されます。)

 読んでくださってありがとうございました
posted by Palum. at 23:46| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月26日

(ご紹介編)映画「グロリア」(「レオン」に影響を与えた作品)


グロリア

ここ数日映画「レオン」についてご紹介させていただいたので、補足として、「レオン」の原型と言われる映画「グロリア」を簡単にですがご紹介させていただきます。

当ブログ「レオン」ご紹介記事はコチラです。
ご紹介編
「(ネタバレ編@)『キッチンのブタ』」
「(ネタバレ編A)『観葉植物』」。
「(ネタバレ編B)出口へ向かうレオン
※書いといてなんですが、AとBはまだご覧になっていない場合は絶対にお読みにならないでください。

「グロリア」は、ギャングの情婦だった女グロリアが、同じギャング組織を裏切り、命を狙われることとなった会計士の一家から、襲撃の直前に6歳の息子フィルを託されたことからはじまる、都会の孤独な逃避行を描いた作品です。

フィルが父親からギャングの秘密を記した手帳を渡されていたために、二人はギャングから執拗に追われ、最初はとうていかばいきれないと、フィルから離れようとしていたグロリアでしたが、フィルは生意気な口をききながらも、彼女に追いすがり、結局一緒に逃げているうちに、二人の間に絆が生まれ育っていきます。

 確かにレオンとの共通点の多い作品ですが、キャラクターはむしろ表裏のように入れ替えてあります。(そしてそれぞれに魅力的です。)

 レオンは殺しのプロですが、反面少年のような性格を秘めています。

 レオンが守る少女マチルダは12歳。両親と不仲で、大人に心を許していません。また、弟を殺した組織の人間を復讐のために殺すつもりでいます。
 そして、レオンとのやりとりで、ときにレオンより一枚上手だったり、大人びた顔をのぞかせたりします。

 一方グロリアは組織と関わりをもっているものの、あくまで素人。しかし、いかにも長年人生の荒波にもまれた風情で、胆が据わってしたたかです。

 グロリアが守る少年フィルは6歳。家族とは愛し合っていて、襲撃の前に、子供を守ろうとした両親が、グロリアに彼をかくまってくれるように頼むことで生き延びます。反抗したり「僕は男だ」と強がるところもありますが、マチルダの尖った印象はまだ彼にはありません。
 ただ、マチルダのレオンに対する気持ち同様に、フィルもグロリアに恋に近い強い思いを抱くようになります。

 たしかにグロリアはホントいい女です……。

 若くもないし、すごく美人というわけでもないですが、ハイヒールにひらひらしたスーツで、誰も助けてはくれない都会の無関心の中、フィルをひきよせ、肩にかけた小さなバッグから出した、手のひらにおさまるくらいの華奢な銃を構えて、瞳と声だけは男まさりの強さで、追っ手を挑発し、威嚇してフィルを守る姿がカッコ美しい。
(余談ですが、彼女のファッションは着物っぽいガウンに至るまでウンガロ。ケビンコスナー主演の「アンタッチャブル」のアルマーニと並んで、衣装の魅力が映画に超貢献してます。)


アンタッチャブル

※グロリアのウンガロ衣装についての『ELLE』の記事はコチラ

 さきほども書きましたが、長身でたくましく、黒いコート姿・トランクに大量の武器を納め、常に戦闘態勢といったいでたちのレオンが、サングラスをとり、素で喋るとまだ少年のようなところがあると真逆の魅力です。

 ちなみにこの映画の監督はジョン・カサヴェデス。グロリアを演じたジーナ・ローランズの夫です。

 これだけの魅力のある作品から多くの土台を借りて、きちんと別の魅力のある作品に仕上げたという意味でも、「レオン」も凄いと改めて思います。

 またいずれ、機会がありましたら、「グロリア」の名場面も少しご紹介させていただきたいと思います。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:29| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月25日

(ネタバレ編B)映画「レオン」名場面「出口に向かうレオン」

本日は映画「レオン」のある名場面と感想を少し書かせていただきます。

レオン完全版(吹替版) -
レオン完全版(吹替版) -



当ブログ同映画ご紹介記事は以下の通りです。
ご紹介編
「(ネタバレ編@)『キッチンのブタ』」
「(ネタバレ編A)『観葉植物』」。



(今回の記事は、一番大切な場面のネタバレなんで、観ていない方は読まないでください。一度観た方が思い出す〈そしてできればもう一度観たくなっていただく〉用の文です。)

 家族を麻薬密売組織に殺された少女マチルダが、同じアパートに住む殺し屋レオンのもとに逃げ込んできたことからはじまる、奇妙な同居生活と二人の心の交流を描いた作品です。 

 マチルダは自分の大切な弟を殺したスタンスフィールドが皮肉にも表向き麻薬取締局捜査官であることを突き止め、かたきを討とうと単身彼のもとに乗り込んでいきます。

 しかし、逆に捕まってしまい、仲間(同じく密売組織に関わっている)の監視のもと、部屋に閉じ込められてしまいます。

 レオンはマチルダの置手紙で彼女の決意に気づいて、見張りの人間たちを倒して彼女を取り戻します。

 二人はその場を逃げ切ることに成功しますが、やがてスタンスフィールドがレオンたちの居場所を突き止めると、特殊部隊を率いて襲撃してきます。

 激しい銃撃の末、マチルダを換気口から逃がしたレオンは、重火器の攻撃に深手を追いますが、特殊部隊のマスクをつけ、負傷者のふりをして部屋から出てきます。

 部隊の人間たちは彼こそがレオンであると気づかず、傷の具合を確かめていましたが、このとき、物陰にいたスタンスフィールドがレオンを見つけてしまいます。

 部隊の人間たちの間をすり抜け、一人、よろけながらも階段を降りていくレオン。

 ささやかな優しいピアノの音が、レオンをいざなうように重なります。

 血しぶきがつき、くもったマスクの視界から、出口への道を見つけ歩いていくレオン。

 マスクをとった彼の目に、通路の向こうの光さす外の世界が写ります。
 

 あと少し。
 

 ここから出れば、マチルダと落ち合う約束をした場所へ行ける。
 

 マチルダと一緒に町を出て、どこか違う場所で幸せに生きていく。

 大地に根を張り、夜は穏やかに眠る日々を。


 傷つき、水の中を進むようにゆっくりと歩いていくレオンの、光を見つめる、大きく見開いた瞳。

 その背後にスタンスフィールド。

 銃口をきっちりとレオンの命に向け。

 レオンの視界が一瞬点滅し、目前だった外の景色が、ピアノのこぼれおちるような音と共にゆっくりと傾いて、冷たい床へと変わっていきます。

「スタンスフィールド?」
自分の血に染まった床に倒れるレオン。

 スタンスフィールドは笑みを浮かべて、「御用は?」と尋ねます。

 レオンは血に染まった手でスタンスフィールドの手を掴むと、何かを握らせ、かすれた声で言います。
「マチルダからの贈り物だ」

 スタンスフィールドが手を開くと、金属のリング。
 
 手りゅう弾のピン。
 
 レオンの懐にいくつも隠し持たれていた。

「クソ」
ひきつった顔で呟くスタンスフィールド。

 激しい爆音とともに、出口から炎が雪崩れるように噴き出します。

 レオンが、あと一歩のところで出ることのできなかった外の世界へと。


 ……あの、外へ出て行こうとするレオンにピアノの音楽が重なり合う場面、レオンの外の光に照らされたまなざしと歩み。そして、彼の死。

 何度観たかわからないほどに繰り返し観ましたが、この場面で必ず胸が熱くなります。

 かつて知人が、この話は悲しいからあまり観たくない、と言っていたとき、私は確かにレオンが死んでしまうのだから、これは悲しい場面なのだけれど、だけど私は何度も何度も観ているしこれからも観るつもりだ、それはなぜだろうと不思議に思いました。

 そのうち気づきました。人にとって悲しみは2種類ある。

 一つは望まないのに病気や死などの不運に見舞われること。

 そしてもう一つは、自分の生きたい人生を、自ら選び損ねること。

 マチルダと生きていきたいと思いながら、死んでいった。

 その意味ではレオンは悲しかったでしょうし、彼の死は観る者の心も悲しくさせます。

 だけど、レオンは最期まで戦い、マチルダを守った。

 マチルダのために、命の最期の瞬間を使って、マチルダを殺すであろう者を道連れに死んでいった。

 その意味ではレオンは最期の瞬間まで、自分の生きたい人生を選びきったのです。

 悲しい場面ではあるけれど、私が何度もこの映画を観ようとするのは、深く傷つきながらも、マチルダとの人生へと向かおうとするレオンの、子供でも持ちえない透き通った目の光と、そこへたどり着けないと悟った後も(おそらくはすでにそれを半ば覚悟の上で)、レオンが最後の一瞬までマチルダのために生きたというその強さに、どうしても惹きつけられるからだと思います。

 不運という一つ目の悲しみがいつ誰を見舞うか、私たちはそれを知ることができません。

 だけど私たちはいつも、二つめの悲しみの隣にいます。

 油断、怯え、迷い、身勝手、そういうものに引きずられて、大切な思いや誰かを守れない人生を生きると言う、ただ細く暗くなって尽きていく道のすぐ隣に。

 あるいは今、もうそこに足を踏み入れているのかもしれない。

 そういう不安を抱えながら生きているから、ときにレオンのあの目を、あの衝撃的な死という生き様を思い出したくなるのです。

 あの強さを、自分はいつか持てるだろうか。貫けるだろうか。

 そう自分自身に問いかけながら。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 22:23| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月24日

(ネタバレ編A)映画「レオン」名場面「観葉植物」

 本日も映画「レオン」のある名場面と感想を少し書かせていただきます。

 同映画「ご紹介編」と「(ネタバレ編)名場面@『キッチンのブタ』」はコチラ。

レオン完全版(吹替版) -
レオン完全版(吹替版) -



 家族を麻薬密売組織に殺された少女マチルダが、同じアパートに住む殺し屋レオンの元に逃げ込んできたことからはじまる、奇妙な同居生活と二人の心の交流を描いた作品です。 

 レオンはマチルダと出会うまで孤独に暮らしていましたが、唯一の友として、観葉植物の鉢をとても大切にしていました。
「無口なのが良い。それに根が無いところが俺と同じだ」

そう言うレオンにマチルダは言います。(以下私的直訳です。)
If you really love it, you should plant it in the middle of a park so that it can have roots.
大切なら植えてあげるべきだわ。根をはれるように公園の真ん中に。
Root……根
Plant……植物(名詞)、植える(動詞)
So that……〜するために


ちなみに字幕だと「大地に植えれば根を生やすわ」でした。こっちのが情緒がありますね。

I'm the one you should be watering if you want me to grow.
あなたが育てたかったら水をあげないといけないのは私よ。

こちらは字幕だと「私もその鉢植えと同じね」となっています。

英語の台詞だと、マチルダはレオンがこまやかに観葉植物の面倒をみているのにちょっとヤキモチを焼いている感じですね。

 このあと、レオンが「そうだな」と言いながら霧吹きでマチルダに水をかけて、二人は子供のように大笑いしながら追いかけっこをします。

つかの間の平和。

しかし、やがてマチルダの家族を殺した麻薬密売組織のスタンスフィールドが、自分の表向きの仕事である麻薬取締局の部隊を率いて、レオンたちを抹殺にきます。

レオンの激しい抵抗に遭い、制圧部隊は残酷なほどに数を増やし、大掛かりな武器を持ち込んできます。

もはや絶望的な状況になったとき、レオンはマチルダにこの愛した植物を持たせ、換気口を叩き壊して、彼女をそこから逃がそうとします。

この穴は狭すぎてレオンは通ることができない。

自分ひとりを逃がすつもりなら離れないと言うマチルダに、別の方法で逃げ切って見せると誓い、レオンは言います。

You've given me a taste for life. I want to be happy, sleep in a bed, have roots. You’ll never be alone again,Mathilda.
君は俺に人生の喜びを教えてくれた。幸せになりたい。ベッドで眠って、根をはって生きたい。マチルダ、君を一人にはしない。

 愛している。

 互いにそう言うと。マチルダは換気口を降り、レオンは獣のように叫んで砲撃を避けて飛びます。

 このときのレオンの、攻撃の中、マチルダを生かそうとする必死の格闘と、自分もまた生きたい、マチルダと、今まで知らなかった幸せな人生を生きてみたいという渇望が観る者の胸に突き刺さります。

 マチルダの手に託した植物、一緒に逃げて、その植物も、自分も、今度こそ根を生やし、大きな緑を広げたい。
 レオンは満身創痍ながらも、なんとかその道に向かって進んで行こうとしますが……。
 
 この後、この映画で最もせつない、忘れがたい場面が展開してゆきます。

 もしまだこの作品を観ていないという方がいらしたら、ここだけは予備知識なく観ていただきたいです。何度観ても染みる。

 また近いうちに、この最大の名場面「出口に向かうレオン(ネタバレ編B)」について書かせていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:31| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月23日

(ネタバレ編@)映画「レオン」名場面「キッチンのブタ」

 本日は映画「レオン」のある名場面と感想を少し書かせていただきます。
レオン完全版(吹替版) -
レオン完全版(吹替版) -




 当ブログ内同映画「ご紹介編」はコチラ

 家族を麻薬密売組織に殺された少女マチルダが、同じアパートに住む殺し屋レオンの元に逃げ込んできたことからはじまる、奇妙な同居生活と二人の心の交流を描いた作品です。 

 麻薬の取引に関わっていた父親が、それを一部横領したために、マチルダの家族はたまたま買い物に行っていた彼女を除き、組織から惨殺されます。

 マチルダが戻ってきたとき、組織の人間たちはまだマチルダ一家の部屋にいましたが、異変に気付いたマチルダは、部屋を素通りして、顔見知りだったレオンのもとへと逃げ込みました。

 マチルダは両親とも姉とも不仲でしたが、母親違いの幼い弟のことはとても愛していたので、彼も死んだと知って涙が止まりませんでした。
「(母親が同じ)ブタ姉貴より私になついていたの」
 話を聞いていたレオンは真面目な顔でこう言います(以下日本語部は私的直訳です。)

(レオン)
Hey, don't talk like that about pigs.
ブタをそんなふうに言うもんじゃない

(レオン)
They're usually much nicer than people
彼らはたいてい人間より上等だ

(マチルダ)
But they smell like shit.
でも匂うわ

(レオン指を左右に振って)
Not true.
それは違う

As a matter of fact, right now I have one in my kitchen
実は、今キッチンで一匹飼っている

As a matter of fact……実を言うと

that's very clean and smells very nice.
清潔だし、いい匂いだ

You don't have a pig in your kitchen.
ブタをキッチンで飼ってなんかいないわ

Yes, I do.
飼ってる

I was just in there and I didn't see any goddamn pig.
あそこ(キッチン)にいたけどブタなんか見なかったわ

Goddamn……ガッデム(God +Damn)この場合「クソッ」とか「畜生」のニュアンスを添える強意語(あまり使わないほうが良い言葉ですがドラマの台詞なんかではよく出てきます……)



Don't move, I'll get him.
そこにいろ、彼(ブタ)を連れてくる



Piggy? Piggy? Where are you?
ピギー、どこにいるんだ

Piggy……ブタの幼児語「仔豚ちゃん」的なニュアンス、ちなみに犬は「Doggy」

Ah, there you are!
ああ、そこにいたのか

フゴフゴフゴ……という鳴き声と共に柱から顔を出すピギー。

豚の顔のついたオーブン用ミトンで(親指のところを開くと、ベロや歯までちゃんと描かれている。その口をあんぐり開けて〈余談ですがこの豚のミトン、日本でも入手可能です。Amazonで画像が見られます。どうやら相当ロングランなデザインの模様。【あとよく見たらこの豚リンゴ食べてる】〉)

Hi Mathilda.
ハーイ、マチルダ(フゴフゴフゴ)
(「ピギー」を手にはめて椅子に戻るレオン)

……Hi Piggy.
……こんにちはブタさん

How are you today?
ご機嫌いかが?(フゴフゴフゴ)

I've seen better days.
悲しいわ

Seen better days≒To be in poor condition, to be worn-out
「とても悪い状態」「すりへっている」というようなニュアンスだそうです。

(レオン、ハッとして真顔に戻る)

 ……短いですが、凄腕の殺し屋レオンの不器用な優しさがにじみ出ている場面です。そして、ここから先、マチルダのレオンを見つめる瞳が変わります。

 レオンの名前を聞いて「cute name(かわいい名前ね)」と言ったり(レオン、聞きなれない言葉に飲みかけの牛乳をぶほっと噴く。)、彼が殺し屋だと知って、「Cool(ステキ)」と言ったり。

 この「キッチンのブタミトンピギー」の登場のとき、マチルダは或る意味レオンを見染めたのでしょう。光のこもった、じいっと射抜くような目でレオンを凝視します。とても熱烈に。

 それまで特に父親にはしょっちゅう理不尽に殴られ、大人を全く信用していなかったマチルダですが、レオンはそういう大人たちとは違うと確信したのです(前回記事でも描きましたが、私はマチルダとレオンの間柄を「恋」に固定した見方はしたくないんですが、でもマチルダがレオンを愛するようになった第一のきっかけはここにあると思います)。

 もうひとつ付け加えると、買い物に行く直前、レオンと言葉を交わしたマチルダは「牛乳(レオンの必須飲料)を買ってきてあげる」と言い、実はまだストックがあったけれど、彼女がまた父親にぶたれたらしいと気づいたレオンは、いらないと言えずにうなずきます。

 この、ピギー登場の直後、それをすっかり忘れていたレオンは、もう一杯飲もう(さっきのはびっくりして噴いちゃったから)として、未開封のストックをもってきます。

 おそらくこの新しい牛乳パックを見たときにも、マチルダはレオンが自分を気遣ってくれたことに気づいたのでしょう。

 その晩、レオンの部屋に泊まったマチルダは、片方の手でミトンのピギーを抱きしめ、もう片方の手でレオンの手を握り「あなたみたいな優しい大人もいるのね」と、言います。

 このとき、レオンは非常にうろたえた顔をします。

 まだこの時点では語られないことですが、実はレオンは過去になにか悲しい出来事があって、まだ少年といってもいい年頃のうちに故郷を捨てて来た男で、それっきり根無し草の孤独な生活をしていたのです。

 まして殺し屋を生業にしている身。

「優しい」と言われ、手をとられるなど、思いもよらなかったのでしょう。

 冷たい影のように「仕事」をこなすレオンの中に、故郷を捨てたときから時を止めた、青年にすらなりきっていない頃の繊細な魂が宿っていることが垣間見える場面です。

 実はこの晩、巻き込まれることを危惧したレオンは、眠っているマチルダを殺そうとしますが、結局できずに、やがてふたりは心を通わせることになるのです。

 また回をあらためて、この映画の名場面と、そこでの台詞について一部ご紹介させていただきます。

 読んでくださってありがとうございました。
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2014年02月22日

(ご紹介編)「パーセプション(Perception)」(AXNミステリー)

パーセプション(Perception )……知覚、認識、理解

AXNミステリーがご覧になれる方限定ですが、アメリカ発の面白い推理ドラマが2014年2月25日早朝6時から再放送されるのでご紹介させていただきます。
番組公式ページはコチラ

 神経科学の権威ダニエル教授が、自身の統合失調症の症状に悩まされながらも、元教え子でFBI捜査官ケイトの捜査に協力をするというストーリーです。

 キャラクターの魅力、人間の脳の不思議、台詞のユーモア、洗練された構成、そして殺人事件という題材を扱いながらも、ときにアメリカ映像作品独特の、率直な対話、他者に対する公平なまなざし、前向きな人生観が垣間見える良作です。

※すみません映画『レオン』ネタバレ編をご紹介させていただく予定でしたが、こちらの放送日が迫っているので予定を変更させていただきます。
『レオン』については日曜日中にアップさせていただきますので、よろしければまたいらしてください。

 あと、理由がわからないのですが、英語がほかのドラマより聴き取りやすいと思いました。なのでリスニング教材としてもお勧めです。

 講義シーンは区切りながらゆっくりしゃべっていますから当然ですが、それ以外の台詞もなんとなく。速度か発声が違うのかもしれません。(なんか、けだるそうに俗語一杯で早口でしゃべるタイプのドラマだと途端にわかんなくなるもんで……〈汗〉)

 今日は簡単に一部見どころを書かせていただきます。

@キャラクター
・ダニエル
 今時携帯を持ちたがらず、カセットウォークマンを愛用、物事に没頭する人並み外れた集中力ゆえに、何かを思いつけば壁にでも平気でメモをとり、日常生活の管理はとても苦手。

 失調症の症状のために、ときに現実には存在しない人間や光景を見たりするが、彼の場合、何かが深層心理でひっかかっているときにそれが生じ、状況の矛盾をときほぐすきっかけになることもある。

 療養のためにルウィッキ青年と同居して補佐を頼んでいる……が、お母さんに対する小さい子供や、結婚数十年後の夫みたいに、日常のコミュニケーションで手抜きをして彼を憤慨させることも。

 人見知りでいわゆる社交は大嫌い。
(上司に大学のパーティーに出ろと指名されて「ヤダ」みたいな態度だったダニエルが「出ろ!」と強制されたとき、心底せつなウンザリした声で「なぁんでだよう……」みたいに言った瞬間にこのドラマを見染めました〈どこきっかけ〉。アメリカ人が人付き合いにおいてあんないじらしい嫌がり方をするとは知らなかった〈何偏見〉)

・ケイト
 FBIの捜査官で元ダニエルの教え子。容疑者の心理分析等をダニエルに依頼する。
 長い髪に童顔の可愛らしい容姿とは裏腹に、結構ダイナミックな性格で、容疑者確保のために二階から階下の容疑者にとびかかるなどの行動でダニエルがあっけにとられることも。
 ときに風変りな言動で周囲から距離をとられてしまうダニエルのよき理解者で、実は学生のころからほのかに彼にあこがれを抱いている。

・ナタリー
 ダニエルの心の中の対話者。
 温厚で知的な大人の美女で、ダニエルの中では長年の良き友人で恋人的な存在。心を閉ざしがちなダニエルに前向きに生きるように諭している。
 ……なんか長い金髪と優しい性格で、いわゆる「理想の美人」の位置づけのせいか、日本人にはちょっとメーテルっぽく見えます。

Aドラマ構成

 ダニエルが大学教授のため、オープニングとエンディングは彼の講義が展開します。

 これが構成としてとてもいい。

 事件の前後に、「問題提起とそこから得た教訓、そしてさらなる問題提起」というふうに観る者の思考を誘導してくれるし、ドラマをドラマとしてまとめてくれるので、後味がすっきりしています。

 個人的には、リアルを求める「新聞記事実写化」みたいな重苦しい展開のものより、こういう「台詞が洗練され、起承転結のはっきりしたドラマ」の味のほうが好みです。

 「緻密に構成されたフィクションの魅力」と「ユーモア」を明確に意識して作っているという意味では「刑事コロンボ」や「クリスティのフレンチミステリー」が好きな方にお勧めできます。(上記作品の時代感やゴージャスな感じはありませんが、代わりに人間の脳の不思議について知識を得られます。)

 よろしければご覧になってみてください。おススメは「神からの声」。ラストが秀逸です。

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:44| 日本の海外テレビ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月21日

「からだの部品とりかえっこ」※ネタバレ(『ドラえもん』より)

 今回もドラえもんの中で好きな話をご紹介させていただきます。
 「からだの部品とりかえっこ」
 コミックス11巻収録です。(表紙カワイイ)

ドラえもん (11) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (11) (てんとう虫コミックス) -

 かなりシュールなタイトル(※)ですが、内容はもっとシュールです。

 前回ご紹介の「腹話ロボット」がどちらかというと台詞の妙で笑わせるタイプなら、こちらはずばり画面が面白い方です。

(※)ちなみにドラえもんの中には今見ると目を疑うほどシュールなタイトルが結構あります。「からだの皮をはぐ話」とか「人間切断機」とか。

(以下結末までネタバレなので、できれば先にコミックスをお読みください。)

 のび太がテレビを見ているしずかちゃんを呼び出して、屋外のある大きな機械のある場所に連れて行きます。

その名も「人体取り替え機」(すごいそのままのネーミング……)。

 二人の人間が左右のカプセルに入り、交換したい体の部分のボタンを押すと、そこを取り換えられるという機械です。
 これでしずかちゃんと頭をとりかえて、すらすら宿題を解こうというプラン。
 
 当然しずかちゃんは拒絶し、帰ろうとしますが、

「一生に一度でも冴えた頭を持ってみたいという、いじらしい願いをかなえてやってはくださるまいか」
 と、ドラえもんに悲しそうな顔でせつせつと言われ(のび太、この発言に特に気を悪くする様子もなく、ひざまずいて泣きながらしずかちゃんにおがみ倒している)、しかたなくカプセルに入ったしずかちゃん。

取り替え.png

 ですが、頭をとりかえるということは人格をとりかえるということなので、のび太がしずかちゃんの体、しずかちゃんがのび太の体に変わっただけで、しかもテレビの続きが気になっていたしずかちゃんは、それに気づかずのび太の体で帰ってしまいます。

 いいアイディアだと思ったのに……とがっかりしながら、しずかちゃんが異変に気づいて戻って来るのを待っているのび太。

 しかし、スカート姿ののび太の(しずかちゃんの)足に、突然ドラえもんが鼻息を荒くして熱い視線を送り始めます。

 気味悪がるのび太でしたが、ドラえもんいわく
「じつはね、ぼくには前からひそかに夢見ていたことがある」(妙にカッコイイ台詞)

 短足だから、いっぺんでいいからスラリと長い足になってみたかった。そう言ったドラえもんはしずかちゃんの足のまたがし(笑)をのび太に頼み込みます。

 怒られるんじゃないかとしぶるのび太に、ドラえもんは必死でくいさがり、
「そのへんをかけまわって長い足のスピード感を楽しんで、それからまたとりかえればいい」

 と、いうわけで……。
 スラー(脚線美)

この感激 11巻.png

「おお。この感激!このかっこいい姿を、記念写真にうつしてこよう」
 細くてきれいな長い足にまるっこい体を乗せて、大喜びで力強く疾走してゆくドラえもん(気分がよくなる気持ちはなんとなくわかるが、しかしどう見ても「かっこいい姿」ではない)

 すれちがったスネ夫はあっけにとられますが、やがて、しずかちゃんの上半身にドラえもんのかがみもちふたつみたいな足ののび太を見つけてもっと驚きます。

 ところが、機械のことを聞いたら、スネ夫まで
「そんなら僕にも前からの夢がある」
 スラリと長い腕と指が欲しかった。
「この腕を僕のものにしてみたいな」
 と、のび太の(しずかちゃんの)手をとって、愛着たっぷりにハートを散らし、撫でまわさんばかりの様子。(のび太、とても嫌な顔〈そりゃそうだ〉)

 のび太は一生懸命断りますが、結局押し切られ……。

まあ…….png

「まあ……」
指先の細いしなやかな手をウットリと見つめるスネ夫(なぜかまつ毛がのびている)。
「これこそ僕にふさわしい。芸術家の手だわ」
ハート目で指先をクネクネさせながら帰るスネ夫。
ジャイアンがその様子を見ていました。

「聞いたぞ!おれにもおれの夢がある!」(なんでみんなこの台詞なんだ)
いっぺんでいいからスマートに痩せてみたかった。
断ろうにも、「俺にだけは貸せないってのか!」と胸ぐらをつかまれた結果……。

小鳥になったみたい.png

「すばらしい!この身軽さ、小鳥になったみたい!」
ジャイアンのふっくら顔にしずかちゃんの細い胴、ジャイアンのふっくら下半身という、ある意味「ボンキュボン」なスタイルだけど分布がちょっとだいぶ違う感じの体型で、本人はきわめて朗らかに走って行ってしまいます。

 かくして「スネ夫の腕にジャイアンの上半身にドラえもんの足」となってしまったのび太(なんか全体的にもっちりしている)のもとに、のび太の体のしずかちゃんが戻ってきて仰天します(無理もない)。
 「僕はいやだっていったのにみんなが無理やり……」

 やがて戻ってきたドラえもん(美脚)、スネ夫(美指)、ジャイアン(華奢〈上半身のみ〉)が
「のび太と僕が腕をとりかえてね」
「待て、この腕は俺んだぞ」
「ややこしいことになったなあ」
と、入り組んだやりとりをし、しずかちゃんは知らない知らない!と呆れ怒ってしまいました。
(完)

 ドラえもんという作品はひみつ道具ゆえに、ほかの作品ではまずおめにかかれないようなシュールエキセントリックな展開に平気でなだれこんでいけるんだなとこの手の話を読んでいて気づきました。

 この手の名作はほかにもあるのですが(上記「からだの皮をはぐ話」「人間切断機」も面白いです。)、とりあえず「おお。この感激!このかっこいい姿を記念写真にうつしてこよう」と「まあ……(長まつげ)」と「小鳥になったみたい」の台詞と絵が、それぞれパンチきいていて忘れがたかったのでこちらを紹介させていただきました。(ドラえもんってさらりと読めてしまいますが、一コマを凝視するとなんかスゴイ状況になっていることが結構あるんですよ……。)

 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:26| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月20日

(ご紹介編)映画「レオン」

 BSプレミアムで2月22日(土)「レオン」が放映されます。(午後9:00〜10:51 番組情報はコチラ

レオン完全版(吹替版) -
レオン完全版(吹替版) -



 家族を麻薬密売組織に殺された少女マチルダが、同じアパートに住む殺し屋レオンの元に逃げ込んできたことからはじまる、奇妙な同居生活と二人の心の交流を描いた作品です。

 冷酷な殺し屋の腕と少年のような心を持つレオンと、幼い弟を殺した組織への復讐のためにレオンから殺しを教わりたいと思いながら、やがてレオンを愛するようになるマチルダ。
 それぞれギャップのあるキャラクターの魅力が光ります。

 また、マチルダの家族を皆殺しにした、非情と言うか崩壊しているスタンスフィールドの狂気、レオンの殺しの報酬を預かっていると言いながらおそらくは着服している、レオンと同じイタリア系のレストランオーナー(実はマフィア)のトニーの、闇社会に通じながらも情のある性格なども、作品の厚みになっています。

 都会の底知れぬ冷ややかな殺気を感じさせる、重厚でスタイリッシュな音楽と、子供が面白がってポン、ポンと小さな指で弾いている様子を思わせる、シンプルで懐かしさ漂うピアノの曲の交錯も味わい深い。

 そして、エンドロールはスティングの「Shape of my heart」。



 ギターと少し掠れた声が、物語ラストシーンで熱くなった胸に染みる名曲です。

 前回「白い犬とワルツを」ご紹介記事で書かせていただいた、私の「1980年代後半〜1990年代こそアメリカ映像作品の黄金期である」論の中にこの作品も入っております。内容が内容なだけに、この時期のアメリカ映画の長所である「シンプルで温かい前向きさ」の要素には欠けますが、もう一つの長所である「まっすぐな情」はものすごくちゃんとあります。

 この映画の公開当初のキャッチコピー「凶暴な純愛」だったのですが、コレホント見事にこの作品の良さを言い表していると思います。レオンを見つめるマチルダの、憧れに光りながら射るようなまなざしや、マチルダを大きな全身で包んで守るレオンのしぐさからそれがひしひしと伝わってきて魅了される。

 確かなことは言えないのですが、今回観られる方は観ておいていただきたいし、できれば録画をお勧めしたいな、と思うのは、どうも放送時間から察するに、今回放映されるのは劇場版のようだからです。

 レオンには完全版(約130分)と劇場版(110分)があって、個人的には劇場版の方が好きなのです。でもどうやら今は完全版のほうが一般的らしく、こっちが観られる機会はそんなにないようなので……。

 ちなみに完全版では劇場版には無い、レオンとマチルダのやりとりの場面が20分含まれています。

 レオンもマチルダも魅力的なキャラクターなのだから、長く観られるのは結構な話じゃないかと思われるかもしれませんが、また、実際私もカットシーンを観られるのを楽しみにしていましたが、観たら、「どちらかというと無い方がいい」と思いました。

 と、いうのも完全版だとマチルダのレオンに対する想いが「異性への恋心」だという印象が強くなってしまうからです。

 色々語られぬ部分を残して、深い絆をはぐくんだ二人の間柄に「『友情』、『家族』、『師弟』、『同志』、そして『恋』」みたいに含みを持たせたディレクターズカットのほうが個人的には惹かれます。

 今は「完全版」だけをご存知だという方も多いかと思いますので、もし今回の放送が劇場版でしたら、ぜひこの味わいの違いをご鑑賞いただきたいと思います。

 土曜、この放送が終わりましたら、作品の名場面についてネタバレ編を書かせていただきますので、よろしければまたいらしてください。

 当ブログレオンに関する記事は以下の通りです。
 ネタバレ編@「キッチンのブタ」
 ネタバレ編A「観葉植物」
 ネタバレ編B「出口へ向かうレオン」


 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 01:15| おすすめ映画(英米) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月19日

「腹話ロボット」(『ドラえもん』より)

 最近わりとシリアスな話題の記事が続いてしまいましたが、僕は本来そういう人間ではないので(←……)、また大好きなドラえもんのおススメエピソードをご紹介いたします。
(ネタバレです。先にコミックをお読みになることを強くおススメいたします。)
てんとうむしコミックス32巻に収録されています。

ドラえもん (32) (てんとう虫コミックス) -
ドラえもん (32) (てんとう虫コミックス) -


口下手で損ばかりしているのび太が、ごまかしでいいから要領よく立ち回りたい、とあまりにも正直にドラえもんに泣きついて出してもらった「腹話ロボット」のお話です。

ドラえもんはほのぼの子供向けと思いきや意外にアブナイ展開の作品が紛れ込んでいて、これテレビで放映できたのかな……思うことがままあるのですが、その意味でこの作品のオチが一番危険です。(現実的に最も危ないのはジャイアンシチューのオチですが、放送できなさそうなのはこっち)

そして危険だからこそ、大人にはそのギャップがたまらなく面白いのです……。

(以下結末部までネタバレです)
ある日、空き地で、ジャイアンから「ひさしぶりに新曲ができた。聴きたいか?」と言われたのび太とスネ夫。
 まあ、日本全国に知れ渡っているとおり、ジャイアンの歌声は人体に有害なほどへたくそなのですが(吐き気を催す観客〈義務参加〉続出)、スネ夫はすかさず、
「聴きたい!聴きたい!久しぶりだなあ!遅いんだよジャイアン。いつ新曲ができるのかと、待ちくたびれちゃったよ」
と作り笑顔でおだてます。
怠けて悪かった心の友よ(ジャイアン愛用語)。と、ご満悦のジャイアンから、お前はどうなんだ、と聞かれたのび太は
「遅いんだよジャイアン。もっと遅くても良かったのに。聴きたい聴きたい。どうせきかされるなら、いやなことは早くすませたい。」
と、忍耐我慢のにじみ出た顔で答え、勿論ぶんなぐられ「だれが聞かせてやるか」とジャイアンは空き地を出ていきます。

 おかげで助かった。ジャイアンの気が変わらないうちに帰ろう、とスネ夫に促されたのび太でしたが、「実は0点をとってしまって家にも帰りにくいんだ」と困り顔。
「そんなことか。ぼくも悪かったんだ。でもへいき」
とスネ夫はズルい顔をして、まあ、見てな、と家に入っていきます。
玄関で待ちかまえていたスネ夫ママにいきなりどなりつけられたスネ夫ですが、再びすかさず
「やめてお母様!」
と駆けより、
「怒ると小じわが増えるっていうよ。ママの美しい顔が皺だらけになるなんてボク耐えられない!」
と泣き叫び、
「この次頑張るから。いつまでのママに若く美しくいてほしいから」
という頃には、もうママをホロリとさせて「まあ……スネ夫ちゃんはなんて優しい……」とまで言わしめていました。
 ドアの外でこのやりとりを聞いていたのび太は「うまいことやったなあ」と感心して帰宅。

 同じころ、0点の答案を見つけて叱る気満々のママに、ドラえもんが「ぼくから、よく言い聞かせるから」と一生懸命とりなした(優しいなあ)結果、「今回は私からは何も言わない」とママも納得したのですが、そこにいきなり「やめてママ!」と飛び込んできたのび太。
「その美しい……、というほどでもない顔がしわくちゃになるじゃんか。見るにたえないよ」 
 ……かくして正座させられギャンギャンに叱られる羽目に遭っているのび太に背を向け「ばかだねえ、じつにばかだね」と心底呆れるドラえもん。

 ぼくは口下手で損ばかりしている。ごまかしでも良いからスネ夫みたいに要領よくやりたい、とのび太に泣きつかれたドラえもんは、気が進まないながら「腹話ロボット」を出してあげます。

 腹話術人形と逆に、人形が人間の口を動かし、その人の声でいかにももっともらしいことを喋るという道具だと聞いたのび太はさっそくそれを肩に乗せてみます。

 その直後、まだ機嫌の悪そうなママに草むしりを命じられますが、「ウェー」と言いかけた瞬間腹話ロボットが作動。
「ワーイ、草むしりうれしいな。腰をかがめるのがウェストの運動になるし、指から葉緑素が吸収されて肌もきれいになるんだよね」
と言ったので、ママがソソクサと自分でやりはじめます。
「ママのためなら喜んでゆずってあげよう」と、調子よく縁側で草むしりを見物していたのび太、さらにお小遣いももらえないもんだろうか、と、こっそりロボットに持ちかけると
「お年玉が年に一回と言うのは誰がきめたのでしょうか。現代人は古いならわしにとらわれることなく毎月お年玉を」
との台詞でまんまとお金をせしめることに成功します。

 かなり無茶な理屈でもこの人形が言えば通じてしまうものなのだというのは、ドラえもんも知らなかったようで、これを見て目を丸くしています。
 いい加減なこと言って、ロボットを止めるとごまかしもばれるんだぞ、と、ドラえもんにたしなめられますが、すっかり味をしめたのび太は「いいもん、ずーっとこのままにしておく」と暢気に散歩に出ます。

 直後、道で先生に出くわし、「あんな点をとっておいて宿題もせずに遊びまわれる身分か」とお説教を食いそうになりますが、ここでも、
「僕は自分さえ成績が上がればという考え方はどうしてもできないんです。どんなにみんなが一生懸命勉強しても、テストをすれば必ず順位がついて誰かがビリになる!!だから…だから僕が犠牲になって0点を……世の中にこんなバカが一人くらいいてもいいんじゃないでしょうか……」
と6コマにも及ぶ熱弁と共に涙し(草刈りのくだりを見る限り、この人形に涙を流させる機能は無いようなので、のび太本人の熱演と思われます)、のび太の優しさ(←……)に感動した先生に「これからもがんばって0点をとりなさい」とはげまされます。

 また、突然開催が決まった「ジャイアンリサイタル」では、歌い出しから「ひどい歌だなあ」と言って空き地の観客全員を凍り付かせた後、今にもなぐりかかりそうになっているジャイアンに「ジャイアンの歌はこんなもんじゃないはずだよ。ノドを痛めているんじゃないの?(これを受けて「昨日めざしの小骨がのどにささった」というジャイアンに)やっぱり!無理をしちゃだめじゃないか。将来の大歌手がもっとノドを大事にしてくれなくちゃ」と言う事で、見事リサイタルを中止させることに成功します。

 ……と、ここまでは良かった(?)のですが。
 

 リサイタルに遅れて来ることになっていたしずかちゃんに、中止を知らせてあげようと、どこでもドアを使ったのび太。

 ところがお約束通りしずかちゃんは入浴中だったため、怒らせてしまいます。

 「ま、まあ聞いてよ」
 と再び腹話ロボットが作動。

 ここからの演説が妙に高尚でふるっています。
 「もともとアダムとイブの時代、人間は裸だった。服を着るようになったのは、神様の言いつけにそむいて知恵の木の実を食べたからだ。神様の言うとおりにしていれば、人間はいまでも楽園で暮らせていたはずなんだ。裸のまんまで。」
「じゃ……はだかでいるほうが正しいの」
「そーなんだよ!」
(イタリアルネッサンス絵画の傑作、ボッティチェリ作『ヴィーナスの誕生』がコマに登場)

ボッティチェリ(腹話ロボット).png

「世界の美術館をみたまえ。はだかの絵や彫刻でいっぱいじゃないか。なぜか?それは美しいからだ。はだかこそ永遠の美のテーマなのであります!!」

 これを聞いたしずかちゃん、それまで湯船に身を沈めて隠れていたのにザバっと立ち上がります。
「そうか!じゃあ恥ずかしがるの間違いなのね」
「そ、そう……」
「服なんて着なくていいのね」
と、浴槽からあがってしまい、「それは……」とのび太が口ごもっている間に、
「遊びに行きましょ」
と、どこでもドアから屋外に出て行こうとします。
「極端すぎるよ!」のび太本人は止めますが、不思議そうに
「のび太さんもそう言ったでしょ」
と、ふりむいたしずかちゃんに、腹話ロボットは

そのまま町中をかけまわろう!!.png

「そうとも、そのまま町中をかけまわろう!!」と高らかに言ってしまい、どこでもドアから、生まれたままの姿で両手を広げて空き地に現れたしずかちゃんに、ドラえもん超驚愕(大笑)。

腹話ロボット.png

 大慌てでのび太が腹話ロボットを地面にたたきつけた瞬間、正気に返ったしずかちゃんは悲鳴とともにどこでもドアで浴室に逃げ帰ります。

 「みんなまだ怒っている?」
 空き地の土管の陰に身をひそめるのび太に、ドラえもんは
「当分うちへ帰れないね」
と、淡々と報告します。
 その視線の先には、まんまとだまされたことに気づいたママ、先生、ジャイアン、しずかちゃんが怒りの面持ちでのび太を探し回っていました(まあ特にしずかちゃんはそりゃ怒るわな……)。
(完)

 この作品、まず序盤ののび太とスネ夫の台詞の「似てるようで全然違う度」が見事です。
・「遅いんだよジャイアン待ちくたびれちゃった」⇔「遅いんだよジャイアン、もっと遅くても良かったのに」
・「聴きたい聴きたい。久しぶりだなあ」⇔「聴きたい聴きたい。どうせ聴かされるのなら、嫌なことは早く済ませたい」
・「ママの美しい顔が皺だらけになるなんてボク耐えられない」⇔「その美しい……、と言うほどでもない顔がしわくちゃになるじゃんか、見るにたえないよ」

 そして、旧約聖書やボッティチェリまで引用した格調高き「裸身礼賛」演説。
 とどめは「そうとも、そのまま町中をかけまわろう!!」という高らかな後押し(なにが「そうとも」なんだか……)を受けて急進的ヌーディストと化したしずかちゃんと、それに遭遇したドラえもんの表情……。

 よくこんなの小学生向け漫画雑誌に載せたもんだと思います。今だと不可能なんじゃないでしょうか。

(ところで、今回テレビ放送版についてちょっと調べてみましたが、さすがに外に出てくしずかちゃんはタオルを巻いており、また、「裸身礼賛」も「そうともそのまま町中をかけまわろう!!」もカットされている模様です。無理もない……が、最大の笑いどころが切れているとも言えます)

アブナイっちゃアブナイネタですが、この手のスレスレギャグが持ち味のイギリス・アメリカコメディでもお目にかかれないような過激さと、それでいてなんか非常にもっともらしい高尚な話題とのミックスが私には非常にツボでした。

(こんなこと宣言するものどうかと思いますが「ジャイアンの歌」ネタ以外だと、この「しずかちゃんのお風呂」ネタが大人になって読むととても笑えます。)

 ドラえもん30巻台は全体的にとても面白いので、是非お手にとってみてください。

 当ブログドラえもんご紹介記事はコチラです。(全てネタバレなのでご了承ください。)
 「ジャイアンシチュー」 
「ジャイアンへのホットなレター」
「ジャイアンリサイタルを楽しむ方法」
「きこりの泉」
「ジャイ子の恋人=のび太」
 読んでくださってありがとうございました。
posted by Palum. at 23:07| ドラえもん | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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